説明

皮下組織の除去方法

【課題】表皮を通して皮膚腺を観察できるようにして、表皮を傷つけずにアポクリン腺などを除去できるようにする。
【解決手段】皮膚を透過する近赤外線を、LED6またはレーザーダイオードにより発生して皮膚に照射する。皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラ7で、赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影する。CCDカメラ7で撮影された皮膚内部の組織の画像を、表示装置2に表示する。表示装置2の画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織に、皮膚の内部の組織を加熱して破壊できるレーザー光の焦点を、照準機構10で合わせる。アポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺を、CCDカメラ7で撮影された画像を表示した画面上で観察しながら、加熱して破壊する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下組織の除去方法に関し、特に、赤外線カメラで皮膚を観察しながらレーザーなどで皮下組織を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の皮膚を観察して、皮膚の健康状態などを調べる装置がある。例えば、皮膚のしみやそばかすなどの分布状態を測定して、最適な化粧方法を知るためなどに役立てている。しかし、この方法では、皮膚の表面はよく観察できても、皮膚の内部の組織は観察できない。人間の皮膚は、図2(a)に示すようになっている。人間の表皮から1mm以内の真皮や皮下組織に、エクリン汗腺やアポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺の組織がある。アポクリン腺は腋臭の原因となり、皮脂腺はニキビや脂蝋腺湿疹の元になるので、これらの皮膚腺を取り除きたいという要望があるが、表皮を傷つけずにアポクリン腺などを迅速に取り除く適当な方法がなかった。そこで、メスで皮膚を切開することなく、光で皮下組織を破壊するPDT(フォトダイナミックセラピー)法が提案された。これは、艟アミノレブリン酸を服用し、薬の成分を毛根や皮脂腺に集め、そこに光を当てて活性酸素を発生させて、毛根や皮脂腺を破壊する方法である。以下に、皮膚を観察する従来技術の例をあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「表面状態解析システム」は、皮膚表面のしみ・そばかすを形成するメラニン顆粒の存在する深さとその分布や、しみ・そばかすの色の濃さ分布等を決定するものである。図2(b)に示すように、トリスペクトラルカメラにより、近紫外画像(400nm±10nm)、可視画像(550nm±10nm)、及び近赤外画像(700nm±10nm)を同時に撮影して2値化する。それらを比較することによって、しみ・そばかすのもととなるメラニン顆粒の深さを推定する。2値化に使用したスライスレベルに対応するL*値を算出する。最も濃い部分のL*値との間で3等分することにより、等分点に対応する輝度レベルを決定する。それを用いて、しみ・そばかす画像の濃さを分類する。
【0004】
特許文献2に開示された「肌撮影用テレビカメラ装置」は、シンプルで生産性がよく、皮膚表面撮像、皮膚内部撮像、高機能カラー撮像ができる照明機構を持ったものである。図2(c)に示すように、閉じたケース内に、複数の水平発光素子列からなる照明用発光素子群を、光軸の上下2面に分離配置する。ケース先端に開口した撮影窓に当接した被写体像を、内部から照明する。被写体からの反射光は、近接撮影用レンズにより、撮像素子に結像させる。照明用発光素子群の前面と反射光の光路上に、振動方向が直交する2種類の方形偏光板を配する。皮膚表面撮像、皮膚内部撮像の2種類に対応した照明モード切替えを行う。また、静止画シャッタースイッチにより、フレーム単位で照明モードを切り替える制御回路を備える。更に、発光素子を、赤、緑、青、あるいは赤、緑、青、紫外、赤外の各色を持つ発光素子の組によって置換し、高機能カラーカメラの照明系を構成することも可能である。
【特許文献1】特開平07-019839号公報
【特許文献2】特開2004-187248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の皮膚観察方法では、皮下組織を見ることができないので、レーザー光を正確に目的の皮膚腺に当てることが困難であるという問題がある。そのため、表皮を傷つけずにアポクリン腺などを除去することが簡単にはできない。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、表皮を通して皮膚腺を観察できるようにして、表皮を傷つけずにアポクリン腺などを正確かつ簡単に除去できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、皮膚観察装置を、皮膚を透過する近赤外線を発生するLEDまたはレーザーダイオードを有する光源装置と、赤外線を皮膚に照射するように光源装置を制御する照明制御手段と、皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラと、赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影するようにCCDカメラを制御する撮影制御手段と、CCDカメラで撮影された皮膚内部の組織の画像を表示する表示装置と、これらを操作するための操作装置とを具備する構成とした。
【0008】
また、皮下組織除去装置を、皮膚を透過する近赤外線を発生するLEDまたはレーザーダイオードを有する光源装置と、赤外線を皮膚に照射するように光源装置を制御する照明制御手段と、皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラと、赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影するようにCCDカメラを制御する撮影制御手段と、CCDカメラで撮影された皮膚内部の組織の画像を表示する表示装置と、皮膚の内部の組織を加熱して破壊できるレーザー光またはマイクロ波の加熱線を発生する加熱線源装置と、表示装置の画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織に加熱線の焦点を合わせる照準手段と、加熱線源装置からの加熱線の発生開始と停止を制御する加熱線制御装置と、これらを操作するための操作装置とを具備する構成とした。
【0009】
また、皮下組織除去方法を、皮膚を透過する近赤外線をLEDまたはレーザーダイオードにより発生して皮膚に照射し、皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラで、赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影し、CCDカメラで撮影された皮膚内部の組織の画像を表示装置に表示し、表示装置の画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織に、皮膚の内部の組織を加熱して破壊できるレーザー光またはマイクロ波の加熱線の焦点を合わせ、アポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺を、CCDカメラで撮影された画像を表示した画面上で観察しながら加熱して破壊する方法とした。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したことにより、表皮を通して皮膚腺を観察できるようになり、表皮の上からアポクリン腺などを除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例は、皮膚を透過する1.1ミクロン近傍の波長の近赤外線をLEDにより発生して皮膚に照射し、近赤外線が照射された皮膚の内部の組織をCCDカメラで撮影して表示し、画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織にレーザー光の焦点を合わせ、アポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺を、画面上で観察しながら加熱して破壊する皮下組織除去装置である。
【0013】
図1は、本発明の実施例における皮下組織除去装置の概念図と、皮膚の赤外線透過率のグラフである。図1において、操作装置1は、皮下組織除去装置を操作する手段である。表示装置2は、皮膚の赤外線カメラ映像を表示する装置である。撮影制御装置3は、CCDカメラと表示装置を制御して皮膚を撮影する装置である。照明制御装置4は、照明装置を制御する装置である。照明装置5は、赤外LEDで皮膚を照明する装置である。LED6は、波長1.1ミクロンの近赤外線を発生する素子である。CCDカメラ7は、波長1.1ミクロンの近赤外線に感度があるカメラである。加熱線制御装置8は、レーザーダイオードを制御する装置である。レーザーダイオード9は、皮膚腺を焼くことができる光線を発生する素子である。照準機構10は、レーザー光線の焦点を目的の位置に合わせる手段である。
【0014】
上記のように構成された本発明の実施例における皮下組織除去装置の機能と動作を説明する。図1(b)に示すように、1.1ミクロン周辺の波長の近赤外光は、皮膚の表皮を少ない損失で透過できる。このことを利用して、1.1ミクロン周辺の波長の近赤外光で、皮膚の内部を観察する。図1(a)に示すように、1.1ミクロン近傍の波長の近赤外線を発生するLED6を有する照明装置5で、皮膚を照明する。LED6の代わりにレーザーダイオードでもよい。1.1ミクロン近傍の波長で発光するLEDあるいはLD(Laser Diode)は、周知のものである。照明制御装置4で照明装置5を制御して、適当な強さの赤外線を皮膚に照射する。
【0015】
撮影制御装置3でCCDカメラ7を制御して、赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影する。CCDカメラ7は、1.1ミクロン近傍の波長の近赤外線に対して感度を有する。1.1ミクロン近傍の波長に感度を持つCCDカメラも周知である。CCDカメラ7で撮影された皮膚内部の組織の画像を、表示装置2に表示する。波長1.1ミクロンの赤外光を皮膚の表面から照射して、表示装置2の画像を見ながら操作装置1を操作して、CCDカメラ7の焦点を皮膚の内側に合わすことによって、皮膚の内側を見ることができる。このとき、焦点距離に基づいて目的の組織の距離を測定する。即ち、アポクリン腺や皮脂腺を、近赤外光を用いてCCDカメラ7の画像上で見ることができる。
【0016】
レーザーダイオード9で、皮膚の内部の組織を加熱して破壊できるレーザー光を発生する。レーザー光の代わりにマイクロ波でもよい。表示装置2の画面上で皮膚を見ながら、目的の皮膚腺を狙ってレーザー光を照射すれば、アポクリン腺や皮脂腺などを焼いて除去できる。表示装置2の画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織に、照準機構10で、焦点距離から求めた位置に基づいてレーザー光の焦点を合わせる。操作装置1の操作により、レーザーダイオード9からのレーザー光の発生開始と停止を、加熱線制御装置8で制御する。このようにして、アポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺を、CCDカメラ7で撮影された画像を表示した画面上で観察しながら、加熱して破壊する。
【0017】
上記のように、本発明の実施例では、皮下組織除去装置を、1.1ミクロン近傍の波長の近赤外線をLEDにより発生して皮膚に照射し、赤外線が照射された皮膚の内部の組織をCCDカメラで撮影して表示し、画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織にレーザー光の焦点を合わせ、アポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺を、画面上で観察しながら加熱して破壊する構成としたので、表皮を通して皮膚腺を観察でき、表皮を傷つけずにアポクリン腺などを除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の皮下組織除去装置は、赤外線カメラで皮膚を観察しながらレーザーなどで皮下組織を除去する装置として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例における皮下組織除去装置の概念図である。
【図2】皮膚の断面模式図と従来の皮膚観察装置の概念図である。
【符号の説明】
【0020】
1 操作装置
2 表示装置
3 撮影制御装置
4 照明制御装置
5 照明装置
6 LED
7 CCDカメラ
8 加熱線制御装置
9 レーザーダイオード
10 照準機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を透過する近赤外線を発生するLEDまたはレーザーダイオードを有する光源装置と、前記赤外線を皮膚に照射するように前記光源装置を制御する照明制御手段と、皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラと、前記赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影するように前記CCDカメラを制御する撮影制御手段と、前記CCDカメラで撮影された皮膚内部の組織の画像を表示する表示装置と、これらを操作するための操作装置とを具備することを特徴とする皮膚観察装置。
【請求項2】
皮膚を透過する近赤外線を発生するLEDまたはレーザーダイオードを有する光源装置と、前記赤外線を皮膚に照射するように前記光源装置を制御する照明制御手段と、皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラと、前記赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影するように前記CCDカメラを制御する撮影制御手段と、前記CCDカメラで撮影された皮膚内部の組織の画像を表示する表示装置と、皮膚の内部の組織を加熱して破壊できるレーザー光またはマイクロ波の加熱線を発生する加熱線源装置と、前記表示装置の画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織に前記加熱線の焦点を合わせる照準手段と、前記加熱線源装置からの前記加熱線の発生開始と停止を制御する加熱線制御装置と、これらを操作するための操作装置とを具備することを特徴とする皮下組織除去装置。
【請求項3】
皮膚を透過する近赤外線をLEDまたはレーザーダイオードにより発生して皮膚に照射し、皮膚を透過する近赤外線に対して感度を有するCCDカメラで、前記赤外線が照射された皮膚の内部の組織を撮影し、前記CCDカメラで撮影された皮膚内部の組織の画像を表示装置に表示し、前記表示装置の画面上で指示された点に対応する皮膚の内部の組織に、皮膚の内部の組織を加熱して破壊できるレーザー光またはマイクロ波の加熱線の焦点を合わせ、アポクリン腺や皮脂腺等の皮膚腺を、前記CCDカメラで撮影された画像を表示した画面上で観察しながら加熱して破壊することを特徴とする皮下組織除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−259631(P2008−259631A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103984(P2007−103984)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(591246791)財団法人応用光学研究所 (4)
【出願人】(501079831)株式会社ジェイメック (2)
【Fターム(参考)】