説明

皮膚レプリカ剤に好適な固化性の皮膚粘着組成物

【課題】
不具合を生じずに、極めて短時間に固化性の皮膚粘着組成物を作製するための組成物キットを提供する。
【解決手段】
水溶性高分子と、次に示す粉体から選択される1種乃至は2種以上及び/又はシリコーンポリマーとを含有することを特徴とする、固化性の皮膚粘着組成物であって、極めて短時間に固化性の皮膚粘着組成物を作製する。
(粉体)シリカ、ナイロンパウダー、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、中空構造を有していても良い、アクリル樹脂粉体、ポリエチレン粉末、高重合度メチルポリシロキサン、メチルポリシロキシケイ酸、メチルシロキサン網状重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化性の皮膚粘着組成物に関し、更に詳細には、皮膚の立体形状を転写すべき、皮膚レプリカを作成するのに好適な固化性の皮膚粘着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の分野で、固化性の皮膚粘着組成物は、密着性、角栓などの固定性を生かして、パック化粧料等に広く応用されている。この様な応用範囲に近年新たに、レプリカ材料としての応用が加わってきている。これは化粧料の個人の肌質への対応のニーズが高まり、皮膚レプリカが個人個人の肌質の鑑別に有用なことが実証されてきているからである。
即ち、レプリカは、高分子を皮膚の形状に即して変形硬化させて形状を転写する、皮膚機能を非侵襲的に計測する手段であり、これを利用した種々の皮膚状態の鑑別法や、化粧料の選択法等が既に多種考案されている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。この「レプリカ」の基本技術は比較的古くから存在するが、皮膚に負担なく、再現良く、正確に皮膚の起伏などの立体的形状を転写することが技術的課題であり、当初のプラスチック板の溶剤による一部融解、再硬化を利用した方法から、粘ちょう性を有する被膜形成組成物を硬化させる方法に転じたことで大きな飛躍を見た。この様な方法の開発によって、手技が極めて容易になり、素人が手軽にレプリカの作製ができるようになった為である。現在では、化粧品の販売現場に於けるカウンセリングツールにも使用されるようになっている。その反面、固化が不十分な状態で剥離させてしまい、皮膚の起伏が読み取れずに、再度レプリカを取り直す例も存しており、かかるレプリカ剤に於いて、より重要な課題は、固化・硬化時間(乾燥時間)を短縮化すること及び皮膚立体形状を明瞭に転写することに推移してきている。この様な固化・硬化時間の短縮化は、それを利用したカウンセリングの効率化にもつながる。この様な固化・硬化の短縮化の目的から、ポリビニルアルコールを被膜形成剤として用いることにより固化・硬化時間を短縮し、粉体を含有させることにより皮膚立体形状を明瞭に転写する技術(例えば、特許文献4参照)、部分的にアセチル化されていても良いポリビニルアルコールとポリビニルピロリドン及びポリ酢酸ビニルを含有して、固化・硬化時間をより短縮し、粉体を含有させることにより皮膚立体形状を忠実に転写する技術(例えば、特許文献5参照)も開示されているが、失敗なく、販売現場に於けるカウンセリング等を円滑に進めるためには、さらなる固化・硬化時間の短縮及び皮膚立体形状の明瞭な転写が望まれていた。
【0003】
一方、エポキシ樹脂を含有する第一剤と有機アミンを含有する第二剤を使用時に混合し反応させて用いる方法(例えば、特許文献6参照)、アクリル酸エチル・メタクリル酸エチルコポリマーを被膜成分に使用する方法(例えば、特許文献7参照)、硬化性を有するシリコーンを用いる方法(例えば、特許文献8参照)、アルギン酸の塩を用いる方法(例えば、特許文献9参照)等の硬化時間を短縮する技術も開示されているが、この様な方法に於いては、固化・硬化の不十分さに起因しない、別の要因により、得られたレプリカ標本に於いて多くの不具合箇所を有する様になる場合が存した。この原因としては、硬化が早すぎて形状を転写する前に硬化してしまうこと、皮膚との接着性が高く、一部が皮膚上に残存してしまうこと、硬化時に急激な収縮等の現象が起こり、皮膚形状の忠実な転写が出来ないこと、被膜としての形態維持性に課題が存し、転写したものの形態が維持できず壊れてしまうことなどが存する。即ち、適度な剥離性、固化・硬化後の形態維持性の向上も大きな課題となっている。
【0004】
粉体を含有せしめる理由として、皮膚立体形状を明瞭に転写することが言われていたが(例えば特許文献4、特許文献5参照)、シリカ、ナイロンパウダー、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、中空構造を有していても良いアクリル樹脂粉体などの粉体及び/又はシリコーンポリマーを被膜組成物中に含有することによって、固化・硬化時間の驚愕すべき短縮を図り、皮膚立体形状が明瞭に転写され、皮膚に残存物がない優れた皮膚レプリカを作製する技術を得た。かような粉体及び/又はシリコーンポリマーを含有する固化性の皮膚粘着組成物は全く知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−165777号公報
【特許文献2】特開2001−170028号公報
【特許文献3】特開2000−315257号公報
【特許文献4】特開平04−022340号公報
【特許文献5】特開2005−164517号公報
【特許文献6】特開2002−355235号公報
【特許文献7】特開平10−314146号公報
【特許文献8】特開平11−169453号公報
【特許文献9】特開2004−173801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下為されたものであり、固化・硬化時間が短いなど、使用性に優れる固化性の皮膚粘着組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる状況に鑑みて、本発明者らは、使用性に優れる固化性の皮膚粘着組成物を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、水溶性高分子と、シリカ、ナイロンパウダー、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、中空構造を有していても良い、アクリル樹脂粉体、ポリエチレン粉末、高重合度メチルポリシロキサン、メチルポリシロキシケイ酸、メチルシロキサン網状重合体等の粉体及び/又はシリコーンエマルションを含有する固化性の皮膚粘着組成物が、その様な特性を具備していることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す技術に関する。
(1) 水溶性高分子と、次に示す粉体から選択される1種乃至は2種以上及び/又はシリコーンポリマーとを含有することを特徴とする、固化性の皮膚粘着組成物。
(粉体)シリカ、ナイロンパウダー、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、中空構造を有していても良い、アクリル樹脂粉体、ポリエチレン粉末、高重合度メチルポリシロキサン、メチルポリシロキシケイ酸、メチルシロキサン網状重合体
(2) 前記水溶性高分子が、水酸基の一部乃至は全部がアセチル化されていても良いポリビニルアルコール、及び、ポリビニルピロリドン、であることを特徴とする、(1)に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
(3) 前記粉体の含有量は、前記組成物全量に対して5〜15質量%であることを特徴とする、(1)乃至(2)に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
(4) 前記粉体の粒径が、1〜20μmであることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
(5) 前記シリコーンポリマーが、ジメチコン及び/又はシクロメチコンであることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
(6) 前記シリコーンポリマーの含有量は、前記組成物全量に対して1〜4質量%である、(1)〜(5)何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
(7) 皮膚の立体形状を転写すべきものであることを特徴とする、(1)〜(6)何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固化・硬化時間が短いなど、使用性に優れる固化性の皮膚粘着組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<本発明の固化性の皮膚粘着組成物の必須成分である水溶性高分子>
本発明の固化性の皮膚粘着組成物は、必須成分として水溶性高分子を含有し、該水溶性高分子は被膜形成能を有することが望ましい。かような水溶性合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン系(可溶性デンプン、メチルデンプン等)、アルギン酸プロピレングリコール、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガンド、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、プルラン、デンプン(トウモロコシデンプン等)等が例示できる。これらの水溶性高分子の、本発明の固化性の皮膚粘着組成物における好ましい含有量は、総量で、固化性の皮膚粘着組成物に対して1〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%である。かかる水溶性高分子の総含有量が少なすぎると被膜を形成しにくい場合が存し、多すぎると、被膜の均一性を損なう場合が存する。かような水溶性高分子の中でも、特に、水酸基の一部乃至は全部がアセチル化されていても良いポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを組み合わせたものであることが好ましい。これは該水溶性高分子の組合せが均一性及び形態維持性に優れる被膜を形成する為である。
【0010】
前記水酸基の一部乃至は全部がアセチル化されていても良い、ポリビニルアルコールは化粧料の汎用原料のものを使用することができる。この内、特に好ましいものは、一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコールであり、該一部の水酸基がアセチル化したポリビニルアルコールとしては、全水酸基の5〜20%がアセチル化されているものが好ましい。この様なポリビニルアルコール乃至はその一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコールは、唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有することもできる。かかるポリビニルアルコール乃至はその一部の水酸基がアセチル化されたポリビニルアルコール等の皮膚レプリカ組成物の水溶性高分子の好ましい含有量は、総量で、組成物全量に対して、1〜20質量%であり、更に好ましくは、3〜15質量%である。この様な水酸基の一部がアセチル化されたポリビニルアルコールとしては、既に市販されているものが存し、それを購入して利用することができる。かかる市販品としては、例えば、日本合成株式会社製の「ゴーセノールEG−30」(登録商標)が好ましく例示できる。又、前記ポリビニルピロリドンとしては、化粧料などで使用されているものであれば、特段の限定無く使用することができる。ポリビニルピロリドンと前述の水酸基の一部乃至は全部がアセチル化されていても良いポリビニルアルコールと組み合わせて使用することで、より固化・硬化時間の短縮を得られることがあり、より好ましい。この様なポリビニルピロリドンとしては、既に市販のものが存し、かかる市販品を購入して利用することができる。好ましい市販品としては、例えば、BASF社製の「ルビスコールK−90」等が例示できる。本発明の固化性の皮膚粘着組成物に於いて、かかるポリビニルピロリドンの好ましい含有量は、1〜5質量%、より好ましくは1.5〜4.5質量%である。又、特に好ましい形態に於いて、水酸基の一部乃至は全部がアセチル化されていても良いポリビニルアルコールと、ポリビニルピロリドンの質量比は1:2〜2:1が好ましく、より好ましくは、2:3〜3:2である。
【0011】
<本発明の固化性の皮膚粘着組成物の必須成分である粉体>
本発明の固化性の皮膚粘着組成物は、後記に示す粉体群から選ばれる粉体及び/又は後記シリコーンポリマーを必須成分として含有する。前記粉体は化粧料の汎用原料のものを使用することができる。かかる粉体の好ましい形状は、球状であることが好適に例示できる。この様な球状の形態をとることにより、被膜の皮膚からの剥離性が改善されるとともに、被膜の形態維持性、固化・硬化時間の短縮化が促進される。又、その平均的な粒径は、1〜20μmが好ましく、2〜15μmがより好ましい。この様な粉体は、予め一般的な原料を分級し、前記の粒径範囲に収まるように調整し使用することも出来るし、市販品でこの様な特性値に入るものを選択し、使用することも出来る。かかる市販品としては、例えば、触媒化成工業株式会社製の「HOLLOWY−N15」(無水ケイ酸、平均粒径9〜13μm;球状)が例示できる。かような球状粉体の含有量は、総量で、組成物全量に対して、5〜15質量%であり、さらに好ましくは7〜10質量%である。これが多すぎると塗布時の感触が悪くなる場合が存し、少なすぎると固化・硬化時間の短縮が見込めなくなる場合が存する。
(粉体)シリカ、ナイロンパウダー、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、中空構造を有していても良い、アクリル樹脂粉体、ポリエチレン粉末、高重合度メチルポリシロキサン(但し、溶媒可溶性のものは除く)、メチルポリシロキシケイ酸、メチルシロキサン網状重合体
【0012】
<本発明の固化性の皮膚粘着組成物の必須成分であるシリコーンポリマー>
本発明の固化性の皮膚粘着組成物は、後記に示す粉体群から選ばれる粉体及び/又は後記シリコーンポリマーを必須成分として含有する。前記シリコーンポリマーとしては、例えば、高重合度のジメチコンであって、シクロメチコンなどの溶媒に可溶な弾性体のもの(シリコーンエラストマー)、架橋型メチルポリシロキサン、アクリル変性メチルポリシロキサン、アルキル変性メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、ジメチコン、フェニルメチコン、シクロメチコン、アミノ変性メチルポリシロキサン、パーフルオロアルキル変性メチルポリシロキサン等の1種又は2種以上の組み合わせが好適に例示でき、特にジメチコン及び/又はシクロメチコンが好ましい。前記シリコーンポリマーの好ましい含有量は、前記組成物全量に対して1〜4質量%であり、より好ましくは1.5〜3.5質量%である。これは多すぎると、形態維持性を損なう場合が存し、少なすぎると添加効果を発現しない場合が存する。かかるポリマーは、他の製剤成分に可溶化し含有せしめることも出来るし、予め、水性成分と油性成分とを用いて乳化し、シリコーンエマルションの形態として使用することも出来る。特に好ましい形態は、シリコーンエマルションの形態で含有させることである。これは、本発明の固化性の皮膚粘着組成物の被膜特性がより向上するためである。又、界面活性剤類としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類等が例示でき、非イオン界面活性剤類の1種又は2種以上の組み合わせが好ましく例示できる。この様なシリコーンエマルションには市販されているものが存し、かかる市販品を購入し利用することが出来る。好ましい市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製の「BY22−019」等が好ましく例示できる。又、自ら製造してもよい。なお、「BY22−019」には、50質量%のジメチコン及びシクロペンタシロキサンが総和量として含有されている。
【0013】
<製造例1>
以下に、本発明に使用するシリコーンエマルションの製造例を示す。即ち処方成分イ、ロを80℃で加温可溶化し、減圧に調整し、攪拌下イにロを徐々に加え乳化し、ホモミキサーで乳化粒子を均一化した後、攪拌冷却し、シリコーンエマルション1を得た。


【0014】
本発明の固化性の皮膚粘着組成物に於いては、前記粉体とともにかかるシリコーンポリマーを含有することが好ましい。両者を併用することにより、固化・硬化の短縮化、形態維持性の向上など相乗的な効果が発現される。
本発明の固化性の皮膚粘着組成物の内、レプリカ剤は、前記水溶性高分子と、粉体及び/又はシリコーンポリマーを含有し、極めて短時間に、皮膚に残存物がない皮膚のレプリカを作製しうることを特徴とする。従来、前述したような、2液混合反応型、硬化性シリコーンタイプ及びアルギン酸塩タイプ等を除いた、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子によって被膜を形成する水性組成物タイプのレプリカの固化・硬化時間は、塗布する部位の皮膚温や採取するレプリカの厚さにより異なるが、10〜30分程度の固化・硬化時間を要する。しかしながら、本発明は、水溶性高分子と、球状粉体及び/又はシリコーンエマルションを含有することを特徴とする、皮膚レプリカ作製用の組成物であり、かような組成物に於いては固化・硬化時間の少なくとも半分以下という驚愕すべき時間短縮を可能にし、極めて短時間に精度の高いレプリカ標本を得るという効果を有する。
【0015】
<固化性の皮膚粘着組成物に於けるその他の成分>
本発明の固化性の皮膚粘着組成物は、前記必須成分を含有することを特徴とする。本発明の固化性の皮膚粘着組成物は、レプリカ剤、パック化粧料、経皮吸収促進マトリックスなどとして利用が出来るが、レプリカ剤として利用することが特に好ましい。これはレプリカ剤としての使用に於いて、優れた被膜形態維持性と、固化・硬化の短時間化特性を発現し、その結果、レプリカとしての失敗率が顕著に低下するためである。本発明の固化性の皮膚粘着組成物では、上記以外の任意成分として、通常化粧料などで使用される任意の成分を含有することができる。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、等が例示できる。
【0016】
又、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキシレングリコール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアーガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、等が例示できる。
【0017】
さらに、前記の粉体以外に、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。これらの内、特に好ましいものとしては、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類等の粉体類が好ましく例示できる。
【0018】
又防菌防腐剤としては、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール等、抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、トリクロサン、感光素、フェノキシエタノール等が好ましく例示できる。本発明の組成物は、この様な必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより、製造することが出来る。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、これにより本発明の範囲がかかる実施例にのみ、限定を受けないことは言うまでもない。
【0020】
<実施例1>
以下に示す処方・方法に従って、本発明の固化性の皮膚粘着組成物である、皮膚レプリカ作製用の組成物1を作製した。即ち処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却、減圧下脱泡し、本発明の皮膚のレプリカ作製用の組成物1を得た。


【0021】
<実施例2>
以下に示す処方・方法に従って、本発明の固化性の皮膚粘着組成物である、皮膚レプリカ作製用の組成物2を作製した。即ち処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却、減圧下脱泡し、本発明の皮膚のレプリカ作製用の組成物2を得た。


【0022】
<実施例3>
以下に示す処方・方法に従って、本発明の固化性の皮膚粘着組成物である、皮膚レプリカ作製用の組成物3を作製した。即ち処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却、減圧下脱泡し、本発明の皮膚のレプリカ作製用の組成物3を得た。


【0023】
<比較例1>
以下に示す処方・方法に従って、比較例の皮膚レプリカ作製用の比較組成物1を作製した。即ち処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却、減圧下脱泡し、比較例の皮膚のレプリカ作製用の比較組成物1を得た。


【0024】
<試験例1>
上記組成物1〜3及び比較組成物1を用いて、被験者の頬部に塗布した後、固化・硬化時間を測定した。又固化・硬化が確認できた約4分後に剥離して皮膚のレプリカを作製した。皮膚レプリカの評価は、専門の評価者3名にて、以下の評価項目を基準に従って実施した。
固化硬化時間(5=5分未満、4=5〜8分、3=8〜11分、2=11〜15分、1=15分以上)
剥がれ易さ(5=非常に容易、4=容易、3=使用できるレベル、2=剥がれにくい、1=肌にレプリカが残り使用不可)
微細構造(5=非常に明瞭、4=明瞭、3=使用上できるレベル、2=部分的に不明瞭、1=不明瞭・使用不可)
被膜強度・均一性(5=非常に強く均一、4=強く均一、3=使用上問題なし、2=部分的に弱く不均一な部分あり、1=使用不可)
【0025】
図1〜3に、それぞれ実施例1〜3のレプリカ画像を、図4に比較例1のレプリカ画像を示す。又皮膚レプリカの評価結果を表1に示す。実施例1〜3は、比較例1に比べて約1/3〜2/3の短時間で皮膚レプリカを採取でき(表1)、且つ、その拡大画像も比較例1に比較して格段に鮮明な微細構造を示し良好であった(図1〜4)。今回作製した実施例の中で、固化・硬化時間、剥がれ易さ、微細構造、被膜強度・均一性に於いて実施例1が最も優れた効果を有していた。
【0026】
【表1】

【0027】
<実施例4>
以下に示す処方・方法に従って、本発明の固化性の皮膚粘着組成物である、皮膚レプリカ作製用の組成物4を作製した。即ち処方成分を80℃で良く混練り、混合、攪拌冷却、減圧下脱泡し、本発明の皮膚のレプリカ作製用の組成物4を得た。


【0028】
<試験例2>
上記組成物4及び比較組成物1を用いて、試験例1と同様に皮膚レプリカを作製し、評価を行った。
【0029】
皮膚レプリカの評価結果を表2に示す。市販品のシリコーンエマルションを使用して作製した上記組成物4に於いても、固化・硬化時間、剥がれ易さ、微細構造、被膜強度・均一性に於いて、上記組成物1と同等の優れた効果を有していた。
【0030】
【表2】

【0031】
<実施例5>
実施例1と同様に、下記の処方に従って、本発明の固化性の皮膚粘着組成物である、皮膚レプリカ作製用の組成物5を作製した。このものの固化・硬化時間、剥がれ易さ、微細構造、被膜強度を表3に示す。予めシリコーンエマルションを作製し、含有せしめる方が好ましいことが判る。


【0032】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明はカウンセリングの際に用いるレプリカなどに応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1の皮膚レプリカ画像を示す図である(図面代用写真)。
【図2】本発明の実施例2の皮膚レプリカ画像を示す図である(図面代用写真)。
【図3】本発明の実施例3の皮膚レプリカ画像を示す図である(図面代用写真)。
【図4】比較例1の皮膚レプリカ画像を示す図である(図面代用写真)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子と、次に示す粉体から選択される1種乃至は2種以上及び/又はシリコーンポリマーとを含有することを特徴とする、固化性の皮膚粘着組成物。
(粉体)シリカ、ナイロンパウダー、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、中空構造を有していても良い、アクリル樹脂粉体、ポリエチレン粉末、高重合度メチルポリシロキサン、メチルポリシロキシケイ酸、メチルシロキサン網状重合体
【請求項2】
前記水溶性高分子が、水酸基の一部乃至は全部がアセチル化されていても良いポリビニルアルコール、及び、ポリビニルピロリドン、であることを特徴とする、請求項1に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
【請求項3】
前記粉体の含有量は、前記組成物全量に対して5〜15質量%であることを特徴とする、請求項1乃至2に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
【請求項4】
前記粉体の粒径が、1〜20μmであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
【請求項5】
前記シリコーンポリマーは、ジメチコン及び/又はシクロメチコンであることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
【請求項6】
前記シリコーンポリマーの含有量は、前記組成物全量に対して1〜4質量%である、請求項1〜5何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。
【請求項7】
皮膚の立体形状を転写すべきものであることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の固化性の皮膚粘着組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291232(P2009−291232A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144526(P2008−144526)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】