説明

皮膚化粧料の製造方法

【課題】液安定性に優れ長期保存が可能な皮膚化粧料を、製品粘度のフレを抑えて安定して製造できる方法の提供を目的とする。
【解決手段】下記の(A)〜(E)成分と水とを含み、(A)成分の質量Mと(D)成分の質量Mの質量比(M/M)が4以上で、かつ(A)成分の質量Mと(E)成分の質量Mの質量比(M/M)が0.05〜0.2の皮膚化粧料の製造方法であって、(A)成分〜(D)成分を、質量比(M/M)が4〜8となるように混合する工程(1)と、工程(1)の後、(D)成分の残部と(E)成分と水を混合する工程(2)とを有する皮膚化粧料の製造方法。(A)成分:水膨潤性粘土鉱物、(B)成分:疎水性成分由来の構成単位を有するポリエーテル化合物、(C)成分:親油性成分、(D)成分:親水性有機溶剤、(E)成分:(メタ)アクリル酸系共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚化粧料としては、使用時の肌のさらさら感に優れる点から、水膨潤性粘土鉱物を用いた様々な化粧料が示されている(例えば、特許文献1〜4)。このような皮膚化粧料は、一般に親油性成分、ポリオキシエチレンシリコーン、非イオン界面活性剤、多価アルコール等を含む油相中に水膨潤性粘土鉱物を分散させて変性させた後、それを水溶性溶媒や水に分散させることにより製造されている。
【0003】
しかし、水膨潤性粘土鉱物は製品のロットによって粘度が異なっているため、水膨潤性粘土鉱物を用いて製造すると、皮膚化粧料の製品粘度のフレ(ばらつき)を小さく抑えることが難しく、品質管理が困難である。このような皮膚化粧料における製品粘度のフレを抑える方法としては、水膨潤性粘土鉱物に対する多価アルコールの混合比率を増加させる方法が考えられる。しかし、該方法では、製品の液安定性が劣化して水相と油相が分離しやすくなり、長期保存が困難となる。
また、多価アルコールは保湿成分でもあることから、皮膚化粧料においてはできるだけその配合量が多いことが好ましいが、前記理由により従来ではその配合量を多くするのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−179076号公報
【特許文献2】特開2002−255724号公報
【特許文献3】特開2007−039612号公報
【特許文献4】特開2007−039416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、著しい粘度上昇を生じさせることなく、液安定性に優れ長期保存が可能な皮膚化粧料を、製品粘度のフレを抑えて安定して製造できる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、液安定性を低下させずに、保湿性の向上も期待される多価アルコール等の親水性有機溶剤の量を増加させることで皮膚化粧料の製品粘度のフレを抑えることを検討した。そして、親水性有機溶剤と共に特定量の(メタ)アクリル酸系共重合体を用いることにより液安定性の低下を抑制しつつ製品粘度のフレを抑制できることを見い出した。
また、親水性有機溶剤と(メタ)アクリル酸系共重合体を用いても液安定性の低下及び製品粘度のフレの抑制効果が安定して得られないことがあった。そこでさらに検討を進めたところ、予め水膨潤性粘土鉱物と親水性有機溶剤を一定の混合比率に制御した混合工程を必須の工程として設けることで、該問題を解決できることを見い出し、本発明を完結するに至った。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]下記の(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(E)成分と水とを含み、(A)成分の質量Mと(D)成分の質量Mの質量比(M/M)が4以上で、かつ(A)成分の質量Mと(E)成分の質量Mの質量比(M/M)が0.05〜0.2の皮膚化粧料の製造方法であって、(A)成分〜(D)成分を、質量比(M/M)が4〜8となるように混合する工程(1)と、工程(1)の後、(D)成分の残部と(E)成分と水を混合する工程(2)とを有する皮膚化粧料の製造方法。
(A)成分:水膨潤性粘土鉱物
(B)成分:疎水性成分由来の構成単位を有するポリエーテル化合物
(C)成分:親油性成分
(D)成分:親水性有機溶剤
(E)成分:(メタ)アクリル酸系共重合体
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、著しい粘度上昇を生じさせることなく、液安定性に優れ長期保存が可能な皮膚化粧料を、製品粘度のフレを抑えて安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の製造方法に使用できる撹拌機のディスパー翼の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法は、(A)成分である水膨潤性粘土鉱物と、(B)成分である疎水性成分由来の構成単位を有するポリエーテル化合物と、(C)成分である親油性成分と、(D)成分である親水性有機溶剤と、(E)成分である(メタ)アクリル酸系共重合体と水とを含む皮膚化粧料を製造する方法である。
また、本発明の製造方法は、(A)成分〜(D)成分を混合する工程(1)と、そこにさらに(D)成分の残部と(E)成分と水とを混合する工程(2)とを有する。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分は水膨潤性粘土鉱物である。
水膨潤性粘土鉱物は、スメクタクト属に属する層状ケイ酸塩鉱物であり、例えば、天然又は合成されたベントナイト、モンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト粘土、膨潤性フッ素雲母(Na型、Li型合成マイカ)が挙げられる。また、前記粘土鉱物に対してイオン交換反応を行い、さらに膨潤性を向上させた高金属イオン置換粘土鉱物を用いることもできる。
なかでも、(A)成分としては、皮膚化粧料の液安定性の点から、スメクタイト粘土であることが好ましく、ベントナイトであることがより好ましい。
(A)成分の水膨潤性粘土鉱物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
(A)成分の市販品としては、例えば、ポーラゲル(アメリカンコロイド株式会社製)、ラポナイト(日本シリカ工業株式会社製)、ベンゲル(豊順鉱業株式会社製)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社製)、クニピア(クニミネ工業株式会社製)、ベンクレイ(水澤化学工業株式会社製)、ビーガム(バンダービルト株式会社製)(以上、商品名)が挙げられる。
【0013】
皮膚化粧料(100質量%)における(A)成分の配合量は、0.5〜4質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。(A)成分の配合量が0.5質量%以上であれば、塗布時に手からたれ落ちないレベルの粘度が確保しやすい。また、(A)成分の配合量が4質量%以下であれば、容器に残らない程度の粘度が確保しやすい。
【0014】
[(B)成分]
(B)成分は疎水性成分由来の構成単位を有するポリエーテル化合物である。
疎水性成分は、25℃の水100gに対する溶解度が1g以下の成分である。疎水性成分としては、ジアルキルポリシロキサン、高級アルコール、高級脂肪酸、及び炭化水素基を有するフェノール類からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
ポリエーテル化合物におけるポリオキシアルキレン鎖は、炭素数2〜4のアルキレンオキシドの開環重合により得られる鎖である。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。ポリオキシアルキレン鎖は、1種のアルキレンオキシドからなる鎖であってもよく、2種以上のアルキレンオキシドからなる鎖であってもよい。また、2種以上のアルキレンオキシドからなる鎖の場合、ランダム重合してなる鎖であってもよく、ブロック重合してなる鎖であってもよい。なかでも、オキシエチレン鎖を有するものが特に好ましい。
【0015】
(B)成分としては、以下のものが挙げられる。
成分(B1):ジアルキルポリシロキサン由来の構成単位を有するポリエーテル化合物。
成分(B2):高級アルコール由来の構成単位を有するポリエーテル化合物。
成分(B3):高級脂肪酸由来の構成単位を有するポリエーテル化合物。
成分(B4):炭化水素基を有するフェノール類由来の構成単位を有するポリエーテル化合物。
【0016】
成分(B1)のジアルキルポリシロキサンのアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましい。また、該アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
成分(B1)としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体が好ましい。
【0017】
成分(B2)の高級アルコールの炭素数は12〜30であることが好ましい。また、高級アルコールは飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。
成分(B2)としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテルが好ましい。
【0018】
成分(B3)としては、例えば、高級脂肪酸の炭素数は12〜30であることが好ましい。また、高級脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。
成分(B3)としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油が挙げられる。
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(12)ジイソステアレート、ポリオキシエチレン(2)モノオレエートが挙げられる。
【0019】
成分(B4)の炭化水素基の炭素数は、6〜18であることが好ましい。また、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよい。また、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
成分(B4)としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテルが挙げられる。
(B)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分としては、成分(B1)が好ましく、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体がより好ましい。
【0020】
(B)成分の市販品としては、例えば、商品名「EMALEX 505H」(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル、日本エマルション株式会社製)、商品名「SH3772C」、「SH3773C」、「SH3775M」(以上、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製)、商品名「SH3748」、「SH3749」(以上、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
【0021】
皮膚化粧料(100質量%)における(B)成分の配合量は、1〜10質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましい。(B)成分の配合量が1質量%以上であれば、さらさら感が向上する。また、(B)成分の配合量が10質量%以下であれば、べとつき感が低減される。
【0022】
[(C)成分]
(C)成分は親油性成分である。親油性成分とは、25℃の水100gに対する溶解度が1g以下のものを指す。
親油性成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。
成分(C1):鉱物油由来の炭化水素類。
成分(C2):動植物油。
成分(C3):シリコーン油。
成分(C4):合成油。
【0023】
成分(C1)としては、ワセリン、流動パラフィンが好ましい。
成分(C2)としては、例えば、スクワラン、オリーブ油、ホホバ油、コーン油、大豆油、ヤシ油、パーム油が挙げられる。
成分(C3)としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイルが好ましい
成分(C4)としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピルが挙げられる。
(C)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
皮膚化粧料(100質量%)における(C)成分の配合量は、5〜15質量%であることが好ましく、8〜12質量%であることがより好ましい。(C)成分の配合量が5質量%以上であれば、保湿性能が向上する。また、(C)成分の配合量が15質量%以下であれば、分散安定性が向上する。
【0025】
[(D)成分]
(D)成分は、親水性有機溶剤である。親水性有機溶剤は、(A)成分の分散剤としての役割を果たし、また保湿成分としても働く。親水性有機溶剤は、常温(25℃)の水に容易に溶解する有機溶剤であり、溶解度として25℃の水100gに対し10g以上溶解する有機溶剤を意味する。親水性有機溶剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
成分(D1):炭素数4以下の低級アルコール。
成分(D2):炭素数4以下の多価アルコール。
成分(D3):ジエチレングリコールと炭素数4以下の低級アルコールのエーテル。
成分(D4):炭素数5〜12の多価アルコール。
【0026】
成分(D1)としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられる。
成分(D2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンが挙げられる。
成分(D3)としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
成分(D4)としては、例えば、ソルビトール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0027】
(D)成分としては、成分(D2)、成分(D3)、成分(D4)が好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、エチルアルコール、プロピルアルコール、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
【0028】
皮膚化粧料(100質量%)における(D)成分の配合量は、10〜30質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。(D)成分の配合量が10質量%以上であれば、保湿性が向上する。また、(D)成分の配合量が30質量%以下であれば、ゲル化増粘を抑制しやすい。
また、皮膚化粧料に含まれる(D)成分の配合量は、質量比(M/M)が4以上であり、6〜16であることが好ましく、8〜12であることがより好ましい。皮膚化粧料中の(D)成分の配合量を質量比(M/M)が4以上となるようにすることにより、(A)成分のロットごとの水膨潤液粘度の違いが皮膚化粧料の製品粘度に与える影響を小さくすることができる。
【0029】
[(E)成分]
(E)成分は、(メタ)アクリル酸系共重合体である。(E)成分は、(A)成分の粘度が皮膚化粧料の粘度に与える影響を小さくし、同等の粘度を有する皮膚化粧料が得られる。また、皮膚化粧料が(E)成分を含有することにより、優れた液安定性が得られる。
(E)成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。
成分(E1):メタクリル酸とアクリル酸アルキルエステルの共重合体。
成分(E2):アクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルの共重合体。
【0030】
成分(E1)としては、例えば、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸プロピルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸ブチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸エチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸プロピルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチルエステル・アクリル酸プロピルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸プロピルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸エチルエステル・アクリル酸プロピルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸エチルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸プロピルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸エチルエステル・アクリル酸プロピル・アクリル酸ブチルエステル共重合体が挙げられる。
【0031】
成分(E2)としては、例えば、アクリル酸・メタクリル酸メチルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸エチルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸プロピルエステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸ブチルエステル共重合体が挙げられる。
【0032】
(E)成分は、成分(E1)が好ましく、メタクリル酸・アクリル酸プロピルエステル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体がより好ましい。また、(E)成分は、混合効率の点から、エマルション形態であることが好ましい。
(E)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
皮膚化粧料(100質量%)における(E)成分の配合量は、(A)成分の質量Mと(E)成分の質量Mとの質量比(M/M)が、0.05〜0.2であり、0.07〜0.15であることが好ましい。質量比(M/M)が0.05以上であれば、(A)成分の粘度の違いに関わらず同等の粘度を有する皮膚化粧料が安定して得られる。また、優れた液安定性を有する皮膚化粧料が得られる。また、(質量比(M/M)が0.2以下であれば、製品粘度が大きくなりすぎて皮膚化粧料として使用できなくなることを防止できる。
【0034】
[任意成分]
本発明における皮膚化粧料は、該皮膚化粧料の性能を悪化させすぎない範囲内であれば、前述の(A)成分〜(E)成分に加えて、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、水溶性高分子、防腐剤、抗菌剤、アルカリ剤、色素、香料が挙げられる。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルが挙げられる。
抗菌剤としては、例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
色素としては、例えば、アシッドレッド138、Polar Red RLS、アシッドイエロー203、アシッドブルー9、青1号、青色205号、ターコイズP−GR、緑201号(いずれも商品名)が挙げられる。
香料としては、例えば、特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物A、B、C、Dが挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚化粧料は、その実用上粘度を12000mPa・s以下とする必要がある。
皮膚化粧料の粘度とは、B型粘度計M型(東京計器株式会社製)により、回転数30rpm、ロータ回転時間20秒、測定温度25℃の条件で測定する粘度を意味する。
【0036】
[製造方法]
本発明の製造方法は、前述の皮膚化粧料を製造する方法であり、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を混合する工程(1)と、工程(1)の後に、(D)成分の残部と(E)成分と水をさらに添加して混合する工程(2)とを有する。
【0037】
工程(1)では、(A)成分〜(D)成分を混合する。工程(1)における(D)成分は、皮膚化粧料に含有させる全量のうち一部又は全部を使用し、(A)成分の質量Mと(D)成分の質量Mとの質量比(M/M)が4〜8、好ましくは5〜7となるようにする。質量比(M/M)が4以上であれば、用いる(A)成分のロットによる粘度の違いが、得られる皮膚化粧料の粘度に与える影響を小さくすることができ、同等の粘度を有する皮膚化粧料を安定して製造できる。また、質量比(M/M)が8以下であれば、液安定性に優れた皮膚化粧料が得られる。
【0038】
工程(1)における各成分の混合方法は、混合する成分を充分均一になるまで混合できる方法であれば特に限定されず、各種撹拌機を使用することができる。例えば、アジホモミキサー(HV−M型、プライミックス株式会社製)等を使用することができる。
工程(1)における混合温度は、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがより好ましい。混合温度が20℃以上であれば、各成分の混合が容易になる。また、混合温度が60℃以下であれば、(A)成分の粘度の違いによる皮膚化粧料の粘度のフレが小さくなるため、同等の粘度を有する皮膚化粧料が得られやすい。
【0039】
また、工程(1)では、(A)成分と(D)成分の質量比(M/M)が4〜8であれば、(A)成分〜(D)成分を混合する順序は特に限定されない。例えば、(A)成分〜(D)成分の全てを同時に添加混合する方法であってもよく、(A)成分と(D)成分を混合し、そこに(B)成分と(C)成分を添加混合する方法であってもよく、(A)成分〜(C)成分を混合したものに(D)成分を添加混合する方法であってもよい。ただし、(C)成分を2種以上用いる場合は、それら(C)成分を予備混合しておくことが好ましい。これにより、粘度のフレの小さい同品質の皮膚化粧料が得られやすくなる。
【0040】
工程(2)では、工程(1)で得られた混合液に、(D)成分の残部と(E)成分と水を添加混合する。すなわち、工程(1)で(D)成分の全量を混合した場合は、(E)成分と水のみ、工程(1)において皮膚化粧料に含有させる(D)成分の一部を混合した場合は(D)成分と(E)成分と水を混合する。
工程(2)における混合方法は、各成分を充分均一に混合できる方法であればよく、工程(1)と同じ撹拌機により行うことができる。
【0041】
また、工程(2)においては、(E)成分は水と同時に添加混合するか、水を添加混合した後に添加混合する。これにより、混合液の粘度が急激に上昇して皮膚化粧料の粘度が高くなりすぎることを防止できる。工程(2)における(D)成分と、水および(E)成分との添加混合の順序は特に限定されない。
また、皮膚化粧料に任意成分を配合する場合は、工程(1)での(A)〜(D)成分の相互作用を阻害させないことや、混合の効率化の点から、工程(2)において添加することが好ましい。
【0042】
本発明の製造方法は、(A)成分のロットごとの粘度の違いによる皮膚化粧料の製品粘度のフレを抑制するものであるが、(A)成分の粘度とは、以下に示す方法で測定する4%水溶液粘度(単位:mPa・s)を意味する。
(4%水溶液粘度)
容器に蒸留水384.0gを仕込み、攪拌機により緩やかに攪拌(回転数600rpm)しながら16.0gの試料((A)成分)を数回に分けて加え、試料全体が濡れてから1,000rpmで10分間攪拌する(操作1)。その後、攪拌を停止して容器内をヘラでかき混ぜ、容器の内壁や攪拌翼等に付着したペーストをほぐす(操作2)。操作1及び操作2をさらに2回繰り返し、合計攪拌時間を30分間とする。
次いで、容器を密栓して25℃の恒温水槽中に一夜放置した後、攪拌機により1,000rpmで5分間攪拌し、直ちにB型粘度計M型(東京計器株式会社製)を用いて、測定温度20℃で粘度を測定する。
【0043】
以上説明した本発明の製造方法によれば、質量比(M/M)が4以上の(D)成分と、質量比(ME/MA)が0.05〜0.2の(E)成分とを用いることで、皮膚化粧料の液安定性の低下及び製品粘度の著しい上昇を生じさせずに、製品粘度のフレを抑制できる。
また、さらに(A)成分と(D)成分の質量比(M/M)を4〜8に制御して混合する工程(1)を必須の工程として設け、(D)成分が多い場合にはその混合を2回に分けることにより、工程(1)における(C)成分の分散性向上のために液安定性の低下が抑えられるため、製品粘度のフレの抑制効果を安定して得ることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
本実施例で用いた各成分を以下に示す。
[(A)成分]
A−1:クニピアF(商品名、ベントナイト、クニミネ工業株式会社製)
化合物(A−1)のクニピアFは2つのロット(以下、それぞれ「ロット1」、「ロット2」という。)を用意した。これらロット1、2それぞれについて、後述する方法により4%水溶液粘度を測定したところ、ロット1は220mPa・s、ロット2は320mPa・sであった。
【0045】
(4%水溶液粘度)
クニピアFのロット1、2についての4%水溶液粘度は、以下の方法により測定した。
400mLの広口瓶(マヨネーズ瓶)に蒸留水384.0gを仕込み、該広口瓶を図1のディスパー翼1を有する攪拌機に設置した。ディスパー翼1は、液面の高さに対して1/3の高さとなる深さに設置した。
次いで、攪拌機により緩やかに攪拌(回転数600rpm)しながら16.0gの試料を数回に分けて加え、試料全体が濡れてから1,000rpmで10分間攪拌した(操作1)。その後、攪拌を停止して広口瓶内をヘラでかき混ぜ、広口瓶の内壁やディスパー翼1等に付着したクニピアペーストをほぐした(操作2)。操作1及び操作2をさらに2回繰り返し、合計攪拌時間を30分間とした。
次いで、広口瓶を密栓して25℃の恒温水槽中に一夜放置した後、前記攪拌機により1,000rpmで5分間攪拌し、直ちにB型粘度計M型(東京計器株式会社製)で粘度を測定した。測定温度は25℃とした。ロータは最適なものを使用した。すなわち、ロータを60rpmで1分間回転させてスケールの読みが10以下の場合はロータを変更した。
ロット1の測定に使用したロータは4番、ロット2の測定に使用したロータは4番であった。
【0046】
[(B)成分]
B−1:ポリエーテル変性シリコーンSH3775M(商品名、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、東レ・ダウコーニング株式会社製)
B−2:EMALEX 505H(商品名、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル、日本エマルション株式会社製)
【0047】
[(C)成分]
C−1:KF96−30cs(商品名、30cstジメチルシリコーン、信越化学工業株式会社製)
C−2:流動パラフィン350−S(商品名、流動パラフィン、三光化学工業株式会社製)
C−3:サンホワイトP−200(商品名、ワセリン、日興リカ株式会社製)
【0048】
[(D)成分]
D−1:プロピレングリコール(ダウ・ケミカル株式会社製)
D−2:1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学株式会社製)
D−3:ジプロピレングリコールDPG−FC(商品名、ジプロピレングリコール、旭硝子株式会社製)
D−4:濃グリセリン(商品名、グリセリン、新日本理化株式会社製)
D−5:ブチルカルビトール95−P(商品名、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、協和発酵工業株式会社製)
D−6:95vol%合成エタノール(商品名、エチルアルコール、NEDO製)
【0049】
[(E)成分]
E−1:レオアールMS−200(商品名、メタクリル酸・アクリル酸エチルエステル・アクリル酸ブチルエステル共重合体、一方社油脂工業株式会社製)
【0050】
[任意成分]
F−1:ルビスコールK−90(商品名、ポリビニルピロリドン、BASFジャパン株式会社製)
F−2:パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン、上野製薬株式会社製)
F−3:トリイソプロパノールアミン(TIPA、三井化学ファイン株式会社製)
【0051】
[調製方法]
本実施例における配合品(皮膚化粧料)の調製方法を以下に示す。本実施例では、化合物(A−1)のロット1、ロット2のそれぞれについて、同じ方法で配合品を調製した。以下、ロットごとに得られたそれぞれの配合品を「ロット1配合品」、「ロット2配合品」という。
まず、(C)成分を複数使用する場合は、それら複数の(C)成分を45°傾斜つきパドル1段を用いて均一になるまで予備混合した。
次いで、工程(1)において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分をアジホモミキサー(HV−M型、プライミックス株式会社製)に添加し、回転数80rpmで10分間攪拌した。
次いで、工程(2)において、(D)成分と水、又は水のみ(比較例1〜3)を添加し、パドルミキサーにて回転数80rpmで10分間攪拌し、さらにホモミキサーにて10,000rpmで45秒間攪拌した。次いで、(E)成分と任意成分を添加し、パドルミキサー回転数80rpmで10分間攪拌して配合品を得た。
各工程における各成分の配合量、混合温度は表1及び表2に示す通りである。
【0052】
[評価方法]
本実施例では、各例のロット1配合品及びロット2配合品について、以下に示す配合品粘度のフレ率及び配合品の安定性を評価した。
(配合品のフレ率)
各例のロット1配合品、ロット2配合品それぞれについて、B型粘度計M型(東京計器株式会社製)により、使用ロータをロータ4番とし、回転数30rpm、ロータ回転時間20秒、測定温度20℃の条件でそれぞれ粘度測定を行い、ロット1配合品の粘度(単位:mPa・s)とロット2配合品の粘度(単位:mPa・s)から下式(I)により配合品粘度のフレ率(単位:%)を算出した。
Z=(Y−X)/Y×100 ・・・(I)
ただし、式(I)中のZは配合品粘度のフレ率、Xはロット1配合品の粘度、Yはロット2配合品の粘度である。
【0053】
(配合品の安定性)
各例で得られたロット1配合品、ロット2配合品のそれぞれ50mLを直径35mm、高さ50mmのバイアル瓶に充填し、該バイアル瓶を50℃の恒温槽に一定期間静置し、外観を目視にて観察して以下の基準で評価した。
◎:3ヶ月経過後に配合品に分離が生じていなかった。
○:2ヶ月経過後は配合品に分離が生じておらず、3ヶ月経過後に分離が見られた。
△:1ヶ月経過後は配合品に分離が生じておらず、2ヶ月経過後に分離が見られた。
×:1ヶ月経過後に配合品に分離が見られた。
実施例及び比較例における各配合品の粘度及び配合品粘度のフレ率、並びに安定性の結果を表1及び表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1及び表2に示すように、本発明の製造方法により製造した実施例1〜20の配合品は、配合品粘度のフレ率が低く、(A)成分として4%水溶液粘度が異なるロット1、ロット2のいずれを用いても、同等の粘度を有する配合品が安定して得られた。また、得られた配合品の安定性も優れていた。
実施例1、11及び12を比較すると、工程(1)及び工程(2)において各成分を混合する混合温度は、60℃に比べて30℃、50℃の方が得られる配合品の安定性に優れていた。また、混合温度は、60℃よりも30℃、50℃の方が得られる配合品の配合品粘度のフレ率が低く、同等の粘度を有する配合品がより安定に得られた。
実施例1、2、5、9、10及び13〜18を比較すると、工程(1)におけるM/Mの値が5〜7の配合品の方が、M/Mの値が4、8の配合品よりも配合品粘度のフレ率が小さかった。
【0057】
一方、M/Mの値を0.27(特許文献1の実施例と同等の条件)として製造した比較例1の配合品は、配合品粘度のフレ率が大きく、使用する化合物(A−1)のロットによって得られる配合品の粘度にばらつきがあった。
比較例1と同様の配合量で混合温度を30℃にした比較例2についても、比較例1と同様に配合品粘度のフレ率が大きく、使用する化合物(A−1)のロットによって得られる配合品の粘度にばらつきがあった。
(E)成分を用いずに、工程(1)における(D)成分の配合量を増やした比較例3では、配合品粘度のフレ率が大きかったうえ、得られた配合品の液安定性も劣っていた。
工程(1)におけるM/Mの値が4未満である比較例4では、比較例3に比べて配合品の安定性は優れていたものの、(E)成分を添加しているにも関わらず使用する化合物(A−1)のロットによって得られる配合品の粘度にばらつきがあった。
工程(1)におけるM/Mの値が8を超える比較例5では、(E)成分の配合により配合品粘度のフレ率が小さくなったものの、配合品の液安定性が劣っていた。
(E)成分の配合量が少ない比較例6では、配合品粘度のフレ率が大きく、配合品の安定性も劣っていた。
(E)成分の配合量が多い比較例7では、配合品粘度のフレ率が小さく、配合品の安定性も優れていたものの、配合品の粘度が大きくなりすぎて実用に適さなかった。
【符号の説明】
【0058】
1 ディスパー翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分と(E)成分と水とを含み、(A)成分の質量Mと(D)成分の質量Mの質量比(M/M)が4以上で、かつ(A)成分の質量Mと(E)成分の質量Mの質量比(M/M)が0.05〜0.2の皮膚化粧料の製造方法であって、
(A)成分〜(D)成分を、質量比(M/M)が4〜8となるように混合する工程(1)と、
工程(1)の後、(D)成分の残部と(E)成分と水を混合する工程(2)とを有する皮膚化粧料の製造方法。
(A)成分:水膨潤性粘土鉱物
(B)成分:疎水性成分由来の構成単位を有するポリエーテル化合物
(C)成分:親油性成分
(D)成分:親水性有機溶剤
(E)成分:(メタ)アクリル酸系共重合体

【図1】
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【公開番号】特開2010−241729(P2010−241729A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92453(P2009−92453)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】