説明

皮膚及び/又は半粘膜の外観を変えるための、ビニルピロリドン及びアルケンのコポリマーの化粧的使用

【課題】皮膚及び/又は半粘膜の外観、特に光学的効果を変えるための手段を提供すること。
【解決手段】生理学的に許容される媒体を含む化粧品組成物中に、皮膚及び/又は半粘膜の外観を変えるための薬剤として、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとのコポリマーを含むものを化粧的に使用する。コポリマーとしては、ビニルピロリドンと、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、ドコセン、及びトリアコンテンから選択されるアルケンとのコポリマーが好ましく、具体的には、PVP/ヘキサデセンコポリマー、PVP/エイコセンコポリマー、及びトリコンタニルPVPより選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的に許容される媒体を含む化粧品組成物中において、皮膚及び/又は半粘膜の外観を変えるための薬剤としての、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとの少なくとも1のコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、皮膚及び/又は半粘膜の外観、特に光学的効果を変えることを目的としている。「外観を変える」の表現は、皮膚の表面についての触知及び視認できる異常、即ち以下のもの:
- 皮膚の起伏(レリーフ)の欠陥、例えばしわ、細かいしわ、毛穴、 -皮膚の色の欠陥、特に目の周りの隈(rings)により構成されるもの、
- 皮膚の明るい領域であって、一般に額や鼻の脇の平面に丁度位置しているもの、
のあらゆる修正・変更も意味すると理解される。
【0003】
これは更に、半粘膜の外観の変化、特に唇の艶消(mattification)やその色及び起伏の均一化であるとも理解される。
【0004】
皮膚の色は、種々のパラメータにより影響を受けるが、これにはメラニンの量、血液循環、及び温度が含まれる。皮膚は高温下においては赤くなる傾向を示すが、それは動脈の血流が増加するからである。更に温度の低下時には、青くなる傾向にあるが、これは血流の低下と、代謝による酸素消費量の増大のためである。代謝、及び外来因子が皮膚の色に与える影響は、特に目の領域においては、顕著に現れるが、それはこの部分においては皮膚が薄いからである。これらの影響は、隈(rings)の外観となって明らかになるが、これはアレルギー現象により激しくなったり、目の領域のくぼみの場合には、光の反射の変化により影が生じるために激しくなったりする。隈はさらに、寝不足によっても生じることが知られるが、これはおそらく目の回りの血液の停滞によるものである(Oresajo C. et al., Cosmetics and Toiletries, 102, 29-34 (1987))。
【0005】
隈の原因は、これまでのところ完全には解明されていないが、3つのタイプの隈が臨床的に区別されている。即ち、青い隈(おそらくは微小循環の低下によりヘモグロビンレベルの低下が引き起こされたことによるもの)、茶色の隈(メラニン色素が、年齢及び/又は紫外線の影響により蓄積したことによるもの)、そして赤色の隈である。
【0006】
しかしながらこれらの隈は、決して美的なものではなく、マスキングしたり取り除こうとさえする努力が絶えず行われている。
【0007】
この目的のために先行技術においては、血管の弱化により生じる隈を、植物抽出物、具体的にはナギイカダやセイヨウトチノキ等の血管強壮剤(venotonics)や;ビタミンA、K、E、B5や、C等のビタミン類や;カフェイン等の排水性(draining)薬剤;であって、血液循環を改善したり、毛細血管を強くしたり、血管を強化してその破壊を防ぐことができるもので処置することが提案されている。他の解決方法は、光学的効果(シリカ、雲母、二酸化チタン等)によるか、タツナミソウ、クワ、カンゾウや、カツミレの抽出物などの脱色剤を使って、目の領域を明るくすることにより、隈をかくすことからなる。
【0008】
特許出願EP-1 090 629においては、硫酸デキストランとエシン(escin)との組合せにより、毛細管の拡張を抑えることが可能になり、目の回りの隈の治療に有益である抗浮腫効果が示された。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1090629号明細書
【非特許文献1】Oresajo C. et al., Cosmetics and Toiletries, 102, 29-34 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら本出願人は、驚くべきことに、ビニルピロリドンとアルケンとのある種のコポリマーを、化粧品組成物中で使用すると、この組成物が隈を弱めたり、更には隈を消失させるようにすることを発見した。
【0010】
隈以外の、皮膚の表面における別のタイプの視覚的異常としては、局所的な脂性外観がある。
【0011】
しかしながら皮膚のマット(艶消)効果を得ることは、混合肌(combinationskin)又は脂性皮膚を有する者により強く望まれ、また同様に暑い気候又は湿気の多い気候において使用することを意図する化粧品組成物の場合にも望まれている。皮膚表面における過剰な皮脂による光沢は、実際に美的ではないものと一般には考えられている。同様に、美的理由により、艶消効果を唇に付与することが望ましいであろう。クリーミーでスムーズな感触を有するが、光沢や輝きの少ない口紅の必要性を感じる者も実際に存在する。
【0012】
現在までに、皮膚や唇の輝きを抑えるための使用されている手段は、タルク、デンプン、雲母、シリカ、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリβ-アラニン粉末や、ポリメチル(メタ)アクリレート粉末等の充填剤を使用することを必須としている。しかしながらこのような充填剤には、皮膚や唇に対して不自然な粉状の外観を付与し、皮膚や唇の欠陥を強調してしまいかねないという不利益がある。更にこれらの組成物は一般に、皮膚や唇の、長期にわたる乾燥を引き起こし、また、これらを滑らかにすることは困難である。それらのマット(艶消)効果はしかも、長続きしない。更には、このような粉末や充填剤を、粘性のオイル(ラノリン等)を含む口紅等の組成物へ導入することには困難を伴うが、それはこのような組成物は粘度が高過ぎて成型中に空気をトラップしてしまうからである。
【0013】
しかしながら本発明者らは、ビニルピロリドンとある種の長鎖アルケンとのコポリマーにより、先行技術の不利益を呈することなく皮膚及び唇にマット感を付与することが可能であることを発見した。
【0014】
抗日光性組成物(WO 00/41672, WO 95/19161, WO 97/42933)や、ベビークリーム(WO 94/14413)へ耐水性を付与したり、メークアップ用組成物(EP-0 997139, WO 99/22710, WO 98/16196, WO 97/17057, EP-0 819 428)へ耐移り性を付与することが可能な膜形成性化合物として、このようなコポリマーが既に文献に記載されている。これは、マスカラの構成成分としても文献に記載されている(EP-0 792 636, US-5,389,363)。
【0015】
これらの先行技術文献の全てにおいて、このようなコポリマーは、これを含有する化粧品組成物の物理的特性を改善するために使用されていて、特には当該組成物の、保持性、耐移り性、及び耐水性を改善するために使用されている。このようなコポリマーを含む組成物は、より具体的には口紅(リップスティック)、ファンデーション、マスカラ、アイライナー、日焼け剤(self-tanning agents)、日焼け止め製品や、蚊よけ剤である。
【0016】
しかし本発明者らの知るかぎり、ビニルピロリドンとアルケンとのコポリマーを使用して皮膚及び/又は半粘膜の外観を変えるということはこれまでに一切示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとのコポリマーについてのこのような新規の応用により、新規の目的に使用すること、具体的には脂性の皮膚や混合肌用の組成物や、皮膚の老化の兆候、及び/又は皮膚における疲労の兆候を正す組成物において上記の物質を使用すること、を考えついた。
【0018】
従って本発明の主題は、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとの少なくとも1のコポリマーの、生理学的に許容される媒体を含む化粧品組成物中における、皮膚及び/又は半粘膜の外観を変えるための薬剤としての、美容的使用である。
【0019】
本発明によれば、このコポリマーは特に皮膚及び/又は唇にマット感を付与するため、及び/又は目の回りの隈を穏やかにするため、及び/又は皮膚のしわ及び細かいしわ及び/又は毛穴を隠すために使用することができる。
【0020】
本発明の主題は更に、脂性の皮膚又は混合肌の美容処理において、又は皮膚に現れた老化及び/又は疲労の兆候の処理において、生理学的に許容される媒体中に、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとの少なくとも1のコポリマーを含む組成物を使用することでもある。
【0021】
本発明の主題は更に、皮膚にマット感を付与すること、及び/又は唇にマット感を付与すること、及び/又は皮膚の、隈、及び/又はしわおよび細かいしわ、及び/又は毛穴を隠すための美容方法であって、皮膚又は唇に対して、生理学的に許容される媒体中に、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとの少なくとも1のコポリマーを含む組成物を局所的に適用することを含む方法でもある。
【0022】
10乃至40個の炭素原子を含むアルケン類の中では、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、ドコセン、トリアコンテンを挙げることができる。
【0023】
好ましくは、本発明におけるコポリマーの重量平均分子量は、5000乃至30000の間、好ましくは6000乃至20000の間にある。
【0024】
本発明において使用できるコポリマーの中では、PVP/ヘキサデセンコポリマー(CFTA名)、PVP/エイコセンコポリマー(CFTA名)、及びトリコンタニルPVPコポリマー(CFTA名)を挙げることができる。
【0025】
商品としては、ISP社によりAntaronV-220(これは約20-28重量%のピロリドン単位を含み、8600の重量平均分子量を有するPVP/エイコセンコポリマーである)、及びGanexV-220の名称で販売されるPVP/エイコセンコポリマー、並びにUnimerU-15の名称でInduchem社より販売されるもの;AntaronV-216及びGanexV-216の名称でISP社より、UnimerU-151の名称でInduchem社より販売されるPVP/ヘキサデセンコポリマー;AntaronWP-660及びGanexWP-660の名称でISP社より、UnimerU-6の名称でInduchem社より販売されるトリコンタニルPVPコポリマーを挙げることができるが、これらのリストには限定されない。
【0026】
本発明で好ましいコポリマーは、トリコンタニルPVPである。
【0027】
本発明のコポリマーは、これを含む化粧品組成物中において、所望の効果を得るために有効な量で存在するであろう。例えば、皮膚へ適用する場合には、このコポリマーは、組成物の全重量に対して、0.1乃至20%、更に好ましくは0.5乃至10%、更に好ましくは0.5乃至5%を占める。唇等の半粘膜に適用する場合には、このポリマーは好ましくは、組成物の全重量に対して、3%未満、より好ましくは0.1乃至2%を占める。この濃度範囲により、心地よく(乾燥させず)、少なくとも4時間もの間、良好に保持される唇用の組成物を得ることが可能になる。
【0028】
本発明の組成物は、多少液状であってもよく、また、白色若しくは着色クリーム、軟膏、乳液、ローション、漿液、ペースト、フォームの外観を有してもよい。これはエアロゾル又はパッチの形態で皮膚に適宜適用してもよい。固体の形態、具体的にはリップスティックの形態で提供することもできる。これは皮膚又は唇用の、ケア製品及び/又はメークアップ製品として使用できる。
【0029】
本発明の組成物は、既知の用にして、化粧品分野で通常のアジュバント、例えば親水性又は親油性のゲル化剤、親水性又は親油性の活性剤、保存料、抗酸化剤、溶媒、香料、充填剤、遮蔽剤、顔料、臭気吸収剤、及び着色物質を含んでもよい。これらの種々のアジュバントの量は、検討する分野において通常使用されるものであり、例えば組成物の全重量に対して0.01乃至20%である。このようなアジュバントは、その性質により、脂肪性相又は水性相へ導入することができる。如何なる場合にも、このようなアジュバントのみならずその比率も同様に、本発明のコポリマーの望ましい性質を損なわないようにして選択される。
【0030】
本発明の組成物は、化粧品分野で通常使用される何れのガレン製薬の形態で提供することもでき、また、特に、任意にゲル化した油性溶液、脂肪性相を水性相中に分散して得られるか(O/W)又はその逆の(W/O)エマルジョン、三重エマルジョン(W/O/W、又はO/W/O)、イオンタイプ(リポソームやオレオソーム)、及び/又は非イオンタイプ(ニオソーム)の小胞分散物及び/又はナノカプセル又はナノスフェアの分散物とすることも可能である。
【0031】
脂性の皮膚又は混合肌を美容的に処理するための使用の場合、本発明の組成物は、好ましくはO/W型のエマルジョン形態をとり、その外部水性相により冷却効果が得られる。リップスティックの形態での適用の場合、この組成物は対照的に、好ましくは無水性であろう。
【0032】
本発明の組成物がエマルジョンである場合、脂肪性相の比率は、当該組成物の全重量に対して5乃至80重量%、好ましくは5乃至50重量%の範囲である。エマルジョン形態の組成物中において使用されるオイル、乳化剤、及び共乳化剤は、検討する分野において通常使用されるものより選択される。乳化剤及び共乳化剤は、一般的には組成物中において、組成物の全重量に対して0.3乃至30重量%、好ましくは0.5乃至20重量%の範囲の比率で存在する。変形例としては、本発明のエマルジョン形態の組成物は、乳化剤を含まなくても良い。
【0033】
本発明の組成物において使用できるオイルとしては、以下のものを例として挙げることができる:
- 動物起源の炭化水素性油、例えばペルヒドロスクワレン;
- 植物起源の炭化水素性油、例えば4乃至10個の炭素原子を含む脂肪酸の液体のトリグリセリド及びシアバターの液体画分;
- 合成のエステル及びエーテル、例えば式R1COOR2及びR1OR2(式中、R1は8乃至29個の炭素原子を含む脂肪酸残基を表し、R2は、3乃至30個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖の炭化水素鎖を表す)のオイル、例えばプルセリンオイル、イソノニル=イソノナノエート、イソプロピル=ミリステート、2-ヘキシルエチル=パルミテート、2-オクチルドデシル=ステアレート、2-オクチルドデシル=エルケート(erucate)、イソステアリル=イソステアレート;ヒドロキシル化エステル、例えばイソステアリル=ラクテート、オクチル=ヒドロキシステアレート、オクチルドデシル=ヒドロキシステアレート、ジイソステアリル=マレート、トリイソセチル=シトレート、脂肪アルコールのヘプタノエート、オクタノエート、及びデカノエート;ポリエステル、例えばプロピレングリコール=ジオクタノエート、ネオペンチルグリコール=ジヘプタノエート、及びジエチレングリコール=ジイソノナノエート;並びにペンタエリトリトールのエステル、例えばペンタエリトリチル=テトライソステアレート等の脂肪酸のエステル及びエーテル;
【0034】
- 無生物(inorganic)又は合成起源の、直鎖又は分枝鎖の炭化水素、例えば揮発性又は無揮発性のパラフィンオイル及びその誘導体、ワセリン、ポリデセン、水素化ポリイソブテン(パーリーン(parlean)オイル等)等;
- 8乃至26個の炭素原子を有する脂肪アルコール、例えばセチルアルコール、ステアリルアルコール、及びこれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール等;
- 一部が炭化水素ベース及び/又はシリコーンベースのフッ素化油、例えばJP-A-2-295912に記載されるもの;
- シリコーンオイル、例えば揮発性又は不揮発性のポリメチルシロキサン(PDMS)であって、直鎖状又は環状のシリコーン含有鎖を有し、室温で液状又はペースト状のもの、具体的には、シクロヘキサシロキサン等のシクロポリジメチルシロキサン(cylopolydimethylsiloxane)(シクロメチコーン)、シリコーン含有鎖の末端に又は当該鎖の中から張り出して、2乃至24個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、又はフェニル基を含むポリジメチルシロキサン;フェニル化シリコーン(例えばフェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチル=シロキシシリケート、及びポリメチルフェニルシロキサン);
- これらの混合物。
【0035】
本発明で使用できる乳化剤及び共乳化剤としては例えば、O/W乳化剤(脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル等、具体的にはPEG-100=ステアレート、及び脂肪酸とグリセリンのエステル(グリセリル=ステアレート等))、並びにW/O乳化剤、例えばオキシエチレン化ポリ(メチルセチル)(ジメチル)メチルシロキサン(Degussa Goldschmidt社よりABIL WE09の名称で入手可能なもの)や、エチレングリコール アセチル=ステアレート、及びグリセリル=トリステアレートの混合物であって、Guardian社よりUNITWIXの名称で販売されているものを挙げることができる。
【0036】
親水性のゲル化剤としては、特にカルボキシビニルポリマー(カルボマー)、アクリル酸コポリマー、例えばアクリレート/アルキルアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカリド、天然ゴム及びクレーを挙げることができ、そして親油性ゲル化剤としては、ベントン等の変性クレー、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカ、及びポリエチレンを挙げることができる。
【0037】
本発明の組成物中において使用できる充填剤としては例えば、顔料以外に、シリカ粉末;タルク;無水オクテニルコハク酸で架橋されたデンプンであって、National Starch社よりDRY FLO PLUS(28-1160)の名称で販売されているもの;ポリアミド粒子、具体的にはAtochem社よりORAGSOLの名称で販売されているもの;ポリエチレン粉末;アクリルコポリマーベースのミクロスフェア、例えばエチレングリコール=ジメタクリレート/ラウリル=メタクリレートコポリマーであって、Dow Corning社よりPOLYTRAPの名称で販売されているもの;発泡粉末、例えば中空ミクロスフェア、特にKemanord Plast社よりEXPANCELの名称で販売されるミクロスフェアや、Matsumoto社よりMICROPEARL F 80 EDの名称で販売されるもの;シリコーン樹脂ミクロビーズ、例えばToshiba Silicone社よりTOSPEARLの名称で販売されるもの;並びにこれらの混合物を挙げることができる。これらの充填剤は、本願発明の組成物又は調製物の全重量に対して、0乃至20重量%、好ましくは1乃至10重量%の範囲の量で存在することができる。
【0038】
本発明において使用することが好ましい充填剤は、シリカ、雲母、及び二酸化チタンである。
【0039】
更に皮膚における老化及び/又は疲労の兆候を美容的に処理するために使用する場合は、本発明の組成物は好ましくは、血管強壮性植物抽出物(ナギイカダ及び/又はセイヨウトチノキの抽出物等);ビタミン(ビタミンA、K、E,B5、及び/又はC);キサンチン塩基(カフェインなど);充填剤;脱色剤(タツナミソウ、クワ、カンゾウ、及び/又はカツミレの抽出物等)から選択される少なくとも1の化合物を含むであろう。
【0040】
脂性の皮膚又は混合肌の美容処理において使用する場合には、本発明の組成物は好ましくは、ビタミンB3及びB5;亜鉛の塩、特には酸化亜鉛や、グルコン酸亜鉛;サリチル酸及びその誘導体、例えば5-(n-オクタノイル)-サリチル酸;トリクロサン;カプリロイルグリシン;丁子抽出物;オクトピロックス(octopirox);ヘキサミジン;及びアゼライン酸及びその誘導体より選択される少なくとも1の活性剤を含むであろう。
【0041】
不適合性が生じる場合、又は安定化する場合には、上記の活性剤のうちの少なくとも一部は、球状体中に、特にはイオン性又は非イオン性の小胞及び/又はナノ粒子(ナノカプセル及び/又はナノスフェア)中に導入することができる。
【0042】
本発明の組成物中には、UVA及び/又はUVB遮蔽剤であって、有機性の遮蔽剤及び無機性の遮蔽剤(適宜コーティングされて疎水性にされたもの)を導入することも可能である。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は例示のためであり限定目的のものではないが、これを参照することにより、本発明はより明確に理解できるであろうし、更に本発明の利点についてもより明らかになるであろう。
【0044】
実施例1:水中油型エマルジョンのコンシーラ
A相
グリコール 7%
保存料 0.5%
カフェイン 0.2%
塩化ナトリウム 0.27%
水 100%まで
B相
シクロペンタシロキサン 5.85%
水素化ポリイソブタン 2%
カルボマー 0.3%
ジメチコノール(ゴム) 0.15%
ステアリル=ヘプタノエート及びステアリル=カプリレート4%
B2相
トリコンタニルPVPコポリマー(Induchem社のUnimer U-6)3%
C相
アンモニアで架橋及び中和した、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸) 1.2%
D相
トリエタノールアミン 0.4%
水 3%
E相
ヒアルロン酸ナトリウム 1%
【0045】
(方法)A相を80℃で撹拌して完全に溶解し、次に65℃まで冷却した。B1相を65℃に加熱した。B2相を次にB1相へ、撹拌しながら可溶化し、そして得られたB相をA相に添加し、Moritz装置を使用して乳化した。C相をA+B相の混合物上に散布し、Moritz装置を使用して、分散させた。次にD相を、撹拌しながらA+B+Cの混合物中へ添加し、その全体を室温まで冷却した。次にE相の成分をまず可溶化してから、E相を撹拌しながら添加した。
【0046】
実施例2:コンシーラ効果の実証
3つの調剤を比較した。調剤1は、実施例1の組成物のB2相におけるトリコンタニルPVPを、3重量%のシリカで置換したものに対応している。調剤2は、実施例1の組成物のB2相におけるトリコンタニルPVPを、8重量%の、シリカ及び酸化亜鉛の混合物(40乃至60重量%のシリカと、60乃至40重量%の酸化亜鉛を含むもの)で置換したものに対応している。調剤3は、実施例1の組成物に対応している。
【0047】
これらの3つの調剤を、異なるタイプの隈(青色、赤色、及び茶色)を有する被験者に適用した。隈の領域と、その近傍の隈のない素肌との間の反射率の差を、輻射分光器(spectroradiometer)で測定して、反射率の差の曲線を、波長の関数として可視領域全体にわたってプロットした。
【0048】
上記の3つの調剤に関して得られた曲線を、それぞれ添付の図1乃至3に示した。
【0049】
図中、T0は、検討する調剤の適用の直前に対応し、Timmは、検討する調剤の適用直後に対応している。
【0050】
反射率は、照射した対象物の、異なる波長への挙動に対応している。仮に、隈のある領域を処理した後でもその差がほぼ0である場合には、その隈のある領域の挙動は、隈のない近傍の素肌のものに近いことになるが、これは調剤の効果を示すものである。
【0051】
調剤1について図1に示されるように、赤色及び茶色の隈を有する被験者の隈の領域を処理した後では、隈を有する領域と、隈のない近傍の素肌との間の差の増加が見られるが、これは隈の増強を実証するものである。青色の隈の場合には、処理の前後におけるこのような差の変化は観察されなかった。これにより、調剤1は青色の隈に与える効果がないと結論付けられる。
【0052】
調剤2の場合、3つのタイプの隈の処理の後、隈を有する領域と隈のない素肌との間の反射率の差の変化は見られなかったが、これはこの調剤には効果がないことを示している(図2参照)。
【0053】
調剤3の場合、赤色及び青色の隈を有する被験者の処理後、反射率の差の低下は見られたが、これはビニルピロリドン/1-トリアコンテンコポリマーを含むこの調剤が、赤色及び青色の隈に対して効果があることを実証するものである(図3参照)。
【0054】
実施例3:水中油型エマルジョン
以下の組成物を、当業者らにとって通常の方法で調製した。
【0055】
【表1】

【0056】
エマルジョンは、65℃にまで加熱した油性相を、撹拌しながら、加熱した水性相へ添加して調製した。
【0057】
皮膚の明るさを取り除く、マット化(艶消)組成物が得られた。
【0058】
実施例4:マット化(艶消)効果の実証
マット感の程度を、本発明の実施例3の組成物(3%のトリコンタニルPVPを含む)と、比較例の組成物(脂肪相中の3%のトリコンタニルPVPの代わりに3%のシリカを水性相中に含む)について測定した。測定は、以下のようにして行った。組成物をゴム製支持体上に、2g/cm2の量で広げ、乾燥させ、次に反射測角器を使用して反射率を測定した。測定結果は、正反射と拡散反射との間の比率Rである。マット化効果がより高い程、Rの値はより低い。
【0059】
【表2】

【0060】
これらの結果はインビトロのものであるが、これは(活性物質として)3%の濃度のトリコンタニルPVPで、(活性物質として)3%のシリカで得られるものよりもかなり高い、ある程度のマット感効果が得られることを示している。
【0061】
実施例5:無水性リップスティック
以下の無水性リップスティック組成物を、当業者らに通常の方法で調製した。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
実施例6:マット化効果の実証
全体として、実施例5中の成分を使用して、3つのリップスティック組成物を調製した。より正確には、組成物Aは0.5%のトリコンタニル-PVPを含み、組成物Bは、トリコンタニル-PVPを含まず、組成物Cは、0.5%のポリブテンを含んでいる。このリップスティックを、ラミネート化した試験カードに適用し、形成されたフィルムの明るさを、輝度計(BYK Gardener, micro-PRI-gloss、モデル4525)で測定した。結果は、反射率(%)で以下に示した。率が低いほど、当該フィルムのマット感が高い(輝度が低い)。それぞれの組成物について、7乃至9回測定し、その平均を計算した。結果を以下の表に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
この表に明らかに示されているように、0.5%のトリコンタニル-PVPを含有する、本発明の組成物Aは、比較例として挙げられている他の二つの組成物と比較して輝度はかなり低くなっているが、これはこのリップスティックで得られるマット感を実証するものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この図は、調剤1が、隈を有する領域及び有しない領域の反射率の差に与える効果を示すグラフである。
【図2】この図は、調剤2が、隈を有する領域及び有しない領域の反射率の差に与える効果を示すグラフである。
【図3】この図は、調剤3が、隈を有する領域及び有しない領域の反射率の差に与える効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体を含む化粧品組成物中における、皮膚及び/又は半粘膜の外観を変えるための薬剤としての、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとのコポリマーの化粧的使用。
【請求項2】
皮膚にマット感(艶消)を付与するための、請求項1に記載のコポリマーの化粧的使用。
【請求項3】
唇にマット感(艶消)を付与するための、請求項1に記載のコポリマーの化粧的使用。
【請求項4】
目の回りの隈(rings)を穏やか(ソフト)にするための、請求項1に記載のコポリマーの化粧的使用。
【請求項5】
皮膚のしわ及び細かいしわ、及び/又は毛穴を隠すための、請求項1に記載のコポリマーの化粧的使用。
【請求項6】
前記のコポリマーが、ビニルピロリドンと、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、ドコセン、及びトリアコンテンから選択されるアルケンとのコポリマーより選択されることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記のコポリマーの重量平均分子量が、6000乃至20000の間にあることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記のコポリマーが、PVP/ヘキサデセンコポリマー、PVP/エイコセンコポリマー、及びトリコンタニルPVPより選択されることを特徴とする、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
前記のコポリマーが、トリコンタニルPVPであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記のコポリマーが、組成物の全重量の0.5乃至5%を占めることを特徴とする、請求項1、2、4、又は5の何れか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記のコポリマーが、組成物の全重量の0.1乃至2%を占めることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項12】
生理学的に許容される媒体中に、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとの少なくとも1のコポリマーを含む組成物の、脂性皮膚又は混合肌(combination skin)の美容処理のための使用。
【請求項13】
前記の組成物が、ビタミンB3及びビタミンB5;亜鉛の塩、特に酸化亜鉛及びグルコン酸亜鉛;サリチル酸及びその誘導体、例えば5-(n-オクタノイル)サリチル酸;トリクロサン;カプリロイルグリシン;丁子抽出物;オクトピロクス;ヘキサミジン;並びにアゼライン酸及びその誘導体、より選択される少なくとも1の活性剤を更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記の組成物が、水中油型エマルジョンの形態をとることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
生理学的に許容される媒体中に、請求項9に規定される少なくとも1のコポリマーを含む組成物の、老化及び/又は疲労に関する皮膚の兆候の美容処理における使用。
【請求項16】
前記の組成物が、血管強壮性(venotonic)植物抽出物;ビタミン;キサンチン塩基;充填剤;及び脱色剤より選択される少なくとも1の化合物を更に含むことを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記の血管強壮性植物抽出物が、ナギイカダ及び/又はセイヨウトチノキの抽出物より選択されることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記のビタミンが、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンE、ビタミンB5、及び/又はビタミンCより選択されることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記のキサンチン塩基が、カフェインであることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記の充填剤が、シリカ、雲母、及び二酸化チタンより選択されることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項21】
前記の脱色剤が、タツナミソウ、クワ、カンゾウ、及び/又はカツミレの抽出物より選択されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項22】
生理学的に許容される媒体中に、ビニルピロリドンとC10-C40アルケンとの少なくとも1のコポリマーを含む組成物を、皮膚又は唇へ局所的に適用することを含む、皮膚にマット感を付与するための、及び/又は唇にマット感を付与するための、及び/又は皮膚の隈(rings)、及び/又はしわ及び細かいしわ、及び/又は毛穴を隠すための美容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−145873(P2007−145873A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67189(P2007−67189)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【分割の表示】特願2002−37425(P2002−37425)の分割
【原出願日】平成14年2月14日(2002.2.14)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】