説明

皮膚外用剤

【課題】 これまで肌にハリを感じるような使用感にするには、増粘剤を配合していたが、ハリ感を求めるあまり高配合すると、ぬめりやべたつき等の不快な使用感が出る欠点があった。
【解決手段】 グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液およびPEG20000を高配合することで、ぬめりやべたつきがなく、肌に強いハリ感を持たせることができ、肌のたるみを改善することを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液と高重合ポリエチレングリコールを高配合することで、ぬめりやべたつきがなく、肌に強いハリ感を持たせ、肌のたるみを改善する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肌のたるみは、皮膚の弾力と筋肉の張力と皮膚脂肪量の三つの力学的なバランスが加齢とともに崩れたことによって起こる。この肌老化の一つであるたるみを改善するために肌のハリ・弾力を持たせる皮膚外用剤に配合する成分の検討が行われてきた。
【0003】
グリコシルトレハロースは、とうもろこしデンプンを由来とするトレハロースに数個のグルコースが結合したものであり、高い保水機能を持ち、水分保持機能を高めます。主に保湿効果が優れているので保湿剤として使われており、また、グリコシルトレハロースを配合することにより、泡立ちも良く、きめ細やかな弾力のある泡ができるので、ボディソープ等に使われている。
【0004】
高重合ポリエチレングリコールは、酸化エチレンの重合体(高分子体)で、平均分子量10,000以上の基剤である。分子量が大きくなれば、水に溶解させるために加温が必要である。一般にクリームや乳液、シャンプー、リンスなどの基剤、乳化安定化剤、粘度調整剤として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
例えば、グリコシルトレハロースを用いたものには、グリコシルトレハロース、水溶性高分子、及び界面活性剤を含有することを特徴とする皮膚洗浄剤組成物(特許文献1)、非還元性糖質生成酵素とその製造方法並びに用途(特許文献2)等があり、ポリエチレングリコールを使用したものには、肌改善用の化粧料(特許文献3)、高重合ポリエチレングリコールと水溶性還元剤と水を含有することを特徴とする化粧料(特許文献4)等が開示されている。さらに、皮膚のたるみを改善するものには、シソ科タイム属植物の抽出液とビタミンE及び/又はその誘導体を配合する皮膚外用剤により、皮膚のたるみを防ぎ、ハリ感をアップさせる効果の高い皮膚外用剤(特許文献5)等があり、増粘剤による肌のハリを改善するものには、フコースを含む多糖類と増粘剤を配合してなる化粧料(特許文献6)等が開示されている。
【特許文献1】特開2006−193484号公報
【特許文献2】特許第3557235号公報
【特許文献3】特許第3914384号公報
【特許文献4】特開2000−86434号公報
【特許文献5】特開2000−86486号公報
【特許文献6】特開平11−269059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、肌にハリを感じるような使用感にするには、増粘剤を配合していたが、ハリ感を求めるあまり高配合すると、ぬめりやべたつき等の不快な使用感が出てしまう欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液と高重合ポリエチレングリコールを高配合することで、ぬめりやべたつきがなく、肌に強いハリ感を持たせ、肌のたるみを改善することを見出したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液と高重合ポリエチレングリコールを高配合することで、ぬめりやべたつきがなく、肌に強いハリ感を持たせ、肌のたるみを改善する皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】伸ばした回数と平均摩擦係数の関係を示したグラフ。
【図2】平均摩擦係数の最大値と官能的ハリ感の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いるグリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液は、マルトシルトレハロース、マルトテトライトールおよびマルトイリイトールからなる水溶液であり、林原生物科学研究所製の「トルナーレ(登録商標)」が好ましい。
【0011】
本発明で用いる高重合ポリエチレングリコールは、平均分子量10000〜25000が好ましく、平均分子量15000〜25000がより好ましく、PEG20000(表示名称PEG−400)が最も好ましい。
【0012】
本発明で用いるグリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液および高重合ポリエチレングリコールの配合量は、皮膚外用剤全量に対して各々5.0〜10.0質量%用いるのが好ましく、各々6.0%用いるのが最も好ましい。
【0013】
本発明で用いる高配合とは、皮膚外用剤全量に対して5.0〜10.0質量%用いることをいう。
【0014】
本発明にかかる皮膚外用剤は、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等、種々の剤型で提供することができる。また、乳液、クリーム、美容液等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム等の下地化粧料、乳液状、油性、固形状等の各剤型のファンデーション、アイカラー、チークカラー等のメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ネッククリーム、ボディローション等の身体用化粧料等として提供することができる。
【0015】
本発明で用いる皮膚外用剤は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、保湿剤、界面活性剤、植物抽出物、抗炎症剤、抗菌剤、増粘剤、酸化防止剤、着色料、香料等を添加してもよい。
【実施例】
【0016】
[実施例1]

【0017】
<製造方法>
製法:(1)〜(7)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(8)〜(11)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。冷却後40℃にて(13)を加え、均一に混合する。
【0018】
[実施例2]
<ハリ感の評価法>
*平均摩擦係数の測定
処方・使用感の異なる5種類の美容液(処方A、美容液A、美容液B、美容液C、美容液D)を摩擦感テスター(カトーテック社製)にて測定を行った。それぞれサンプルを50μL測りとり、人工皮革の上にのせた。サンプルの上に25mgの摩擦子(指紋センサータイプ)を接触させ、1cm/minで一方向に滑らせた。その時のMIU(平均摩擦係数)を測定した。計測後、摩擦子を元の位置に戻した。戻した際には計測は行わない。この操作を11回繰り返し行った。
【0019】
「人工皮革における平均摩擦係数」(以下、平均摩擦係数又はMIUともいう)は、摩擦係数、すなわち、2つの物体の接触面(本発明においては、摩擦子と人工皮革の接触面を意味する)にはたらく摩擦力の大きさFと2面を垂直に押しつけている力(垂直荷重)の大きさPとの比、μ=F/Pの、摩擦子を人工皮革上で動かす過程における平均値である。すなわち、
【0020】
【数1】


(式中、Lは摩擦子の移動距離、μは摩擦係数である)等の数式で表される。
【0021】
実施例2で得られた結果を表1および図1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
[実施例3]
*ハリ感の官能評価値の導出
肌のハリ感の官能的な評価は、普段スキンケア開発業務及び肌測定に従事する専門評価者(7名)によって行った。5種類の美容液を顔に塗布したときに感じるハリ感を7段階評価し、結果にはその評価の平均値を用いた。
【0024】
実施例3で得られた結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
[実施例4]
*官能的ハリ感を表わす式の導出
官能的ハリ感を式で表わすために、官能的ハリ感と平均摩擦係数の最大値、最小値、のばした11回までの傾きの最大値との相関を求めた。(結果は表3に示す)
【0027】
この際、上記5種類の美容液から得られた結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

[ ]内はスピアマンの相関結果 **:p<0.01
【0029】
その結果、官能的ハリ感は平均摩擦係数の最大値と最も高い有意な相関を示した。その相関関係のグラフを図2に示す。
【0030】
以上の結果から、平均摩擦係数の最大値を用いることにより、官能的ハリ感を求めることができることを確認した。
【0031】
[実施例5]
*ハリ感を導く原料の検討(PEG20000、トルナーレ(登録商標)での検討)
処方Aが与えるハリ感について評価を行うために、処方A[実施例1]から、PEG20000を含まないもの(比較例1)、トルナーレ(登録商標)を含まないもの(比較例2)、PEG20000及びトルナーレ(登録商標)を含まないもの(比較例3)で比較検討を行った。比較は前述した方法と同様に摩擦感テスターを用いた。それぞれサンプルを50μL測りとり、人工皮革の上にのせた。サンプルの上に25mgの摩擦子(指紋センサータイプ)を接触させ、1cm/minで一方向に滑らせた。その時のMIU(平均摩擦係数)を測定した。計測後、摩擦子を元の位置に戻した。戻した際には計測は行わない。この操作を11回繰り返し行った。11回までの平均摩擦係数の最大値を用いた。その結果を表4に示す。
【0032】
【表4】

【0033】
これまでの結果より、平均摩擦係数の最大値はハリ感と有意な相関を持つことから、PEGとトルナーレ(登録商標)の両方が官能的なハリ感に大きく関わっていることを見出した。また、PEGとトルナーレ(登録商標)の両方を併用することにより、肌に強いハリ感を持たせ、肌のたるみを改善することを見出した。
【0034】
[実施例6]
<見た目のたるみ評価法>
(1)見た目のたるみ感を機器測定による客観的な数値で表わすために、下記の項目について検討を行った。
*見た目のたるみスコアの算出
顔写真を顔画像解析装置VISIA(インテグラル社)によって撮影を行った。この装置で撮影したパネル(20代〜60代)の顔写真に対し、専門パネルが見た目のたるみ感の目視評価判定を5段階評価で行った。結果には専門パネルのたるみ感スコアの平均値を用いた。
*キュートメーターの測定
吸引法を用いた測定機器Cutometer SEM575(Courage-Khazaaka slectronic GmbH, Cologene社, Germany製)を使用した。これは平滑な皮膚表面に2mmの円形の開口部を有するプローブを軽く密着させた後、プローブ内を一定の陰圧状態にすることで皮膚がプローブ内に吸引され、盛り上がり変形する際の変位した量や吸引終了までの変位量を測定することで皮膚の弾性を計測するものである。測定部位は頬部とする。肌のハリ値として短時間での戻り率=R7(Ur/Uf、吸引解除後0.1秒までの皮膚の戻り率)を用いた。
*超音波エコーによる脂肪厚測定の測定
超音波診断装置(SSD−Prosound6,アロカ社)の専用のジェルを塗布した後、プローブを右頬にあて、肌内部の脂肪の厚さを測定した。
*3次元レーザーを用いた振幅の測定
顔に振動を加え、その時の振れ幅の測定を行った。口元から2cmの位置にレーザー(LK−G152,キーエンス社製)を当て、あごをミニシェーカー(MS−1 Minishaker,IKA社製)におき、600rpmの回転数で顔に振動を与えた。レーザー光源からレーザー照射点までの距離を測定することにより、振れ幅を測定した。
【0035】
以上の結果をもとに見た目のたるみスコアとの相関を求めた。その結果を表5に示す。
【0036】
【表5】

[ ]内はスピアマンの相関結果 **:p<0.01 *:p<0.05
【0037】
(2)相関結果をもとに重回帰分析を行い、たるみスコアを算出する式を求めた。
その結果、

見た目のたるみスコア=0.37×振幅(mm)+0.52×脂肪厚(mm)−4.82×ハリ値+2.80

という式を得た。
この式は重相関係数0.83、p<0.01であり、見た目のたるみスコアを機器測定により、客観的に評価できることを確認した。
【0038】
(3)(2)で導いた式を用いて、20代〜60代のパネラー3名に対して処方Aの効果を測定した。使用前と使用2ヶ月後の効果を比較した。
【0039】
使用前後の比較
【0040】
【表6】

【0041】
以上の結果から、処方Aのように、グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液(トルナーレ(登録商標))と高重合ポリエチレングリコール(PEG20000)を高配合することで、ぬめりやべたつきがなく、肌に強いハリ感を持たせ、肌のたるみを改善する効果を有することを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液(トルナーレ(登録商標))と高重合ポリエチレングリコール(PEG20000)を高配合することで、ぬめりやべたつきがなく、肌に強いハリ感を持たせ、肌のたるみを改善する皮膚外用剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液および高重合ポリエチレングリコールを高配合することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
高重合ポリエチレングリコールの平均分子量が10000〜25000である、請求項1に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241743(P2010−241743A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93129(P2009−93129)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】