説明

皮膚外用組成物

【課題】実用上十分な防腐性があり、かつ皮膚刺激が少ない皮膚外用組成物等の提供。
【解決手段】炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとクロロブタノールとを含み、クロロブタノール以外には化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まない皮膚(粘膜を除く)外用組成物。該組成物中の、クロロブタノールと該多価アルコールとの比率(クロロブタノール:炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコール)が、重量比で、1:10〜1000であり、さらにエタノールを含む皮膚外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚刺激が少ない皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤は、消費者に届くまでの間、及び消費者がその製品を使用している間、雑菌汚染による製品劣化を防ぐために、通常、防腐殺菌剤が添加されている。例えば、多くの化粧品には、パラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)が添加されている。
しかし、防腐殺菌剤の種類によっては、添加量が多くなると、皮膚刺激があり、化粧品の本来の効果が損なわれる。また、敏感肌や乾燥肌などでは、特に防腐殺菌剤の刺激に弱い場合が多いため、防腐殺菌剤の種類によっては添加量に工夫が必要である。従って、雑菌による劣化が起こり難く、かつ皮膚刺激が少ない皮膚外用組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、実用上十分な防腐性があり、かつ皮膚刺激が少ない皮膚(粘膜を除く)外用組成物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、比較的防腐殺菌力が弱いクロロブタノールと、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとを組み合わせることにより、クロロブタノール以外には、化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まなくても、十分な防腐殺菌力が得られ、しかも、皮膚刺激が少ない皮膚外用組成物になることを見出した。
【0005】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の皮膚(粘膜を除く)外用組成物等を提供する。
項1. 炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとクロロブタノールとを含み、クロロブタノール以外には化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まない皮膚(粘膜を除く)外用組成物。
項2. 炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールの含有量が、組成物の全量に対して、3〜30重量%である項1に記載の皮膚外用組成物。
項3. クロロブタノールの含有量が、組成物の全量に対して、0.01〜1重量%である項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
項4. 組成物中の、クロロブタノールと炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとの比率(クロロブタノール:炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコール)が、重量比で、1:10〜1000である項1〜3の何れかに記載の皮膚外用組成物。
項5. さらにエタノールを含む項1〜4のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
項6. クロロブタノールと炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとを混合し、化粧品基準のポジティブリストに含まれるクロロブタノール以外の防腐剤を混合しない、皮膚刺激性を抑制しつつ、クロロブタノールの防腐性能を向上させる方法。
項7. さらに、エタノールを混合する項6に記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚外用組成物は、比較的防腐殺菌力が弱いクロロブタノール以外には、化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まないにもかかわらず、十分な防腐殺菌力を有する。また、皮膚刺激が少なく、敏感肌用の皮膚外用組成物としても実用できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の皮膚外用組成物は、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとクロロブタノールとを含み、クロロブタノールの他には、化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まない皮膚外用組成物である。
皮膚
本発明の皮膚外用組成物は、点鼻用組成物、点眼用組成物、点耳用組成物、口腔咽頭用組成物、及び外用坐剤組成物を含まない。即ち、本発明において、「皮膚」からは、鼻、眼、耳、咽頭、口腔、直腸などの粘膜は除かれる。
【0008】
多価アルコール
多価アルコールは、一般に、保湿剤として、化粧品や医薬外用剤に添加されている。本発明では、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールを使用する。
具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール(ペンタメチレングリコール)、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ジグリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオールなどの4価アルコール等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、ジグリセリンが好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンがより好ましい。
炭素2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールの含有量は、組成物の全量に対して、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、7重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、十分な防腐殺菌力が得られ、かつ皮膚刺激が十分に抑えられる。
また、多価アルコールの含有量は、組成物の全量に対して、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、べたつきの無い良好な使用感が得られる。
【0009】
クロロブタノール
クロロブタノールは殺菌力が弱く、それ単独では大量に配合しないと、十分な防腐殺菌力は得られない。本発明では、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールを含むために、クロロブタノールの使用量を少なくしても十分な防腐殺菌力が得られる。
クロロブタノールの含有量は、組成物の全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、十分な防腐殺菌力が得られる。
また、クロロブタノールの含有量は、組成物の全量に対して、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.3重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、他成分との相溶性が損なわれず、種々の剤型の組成物を容易に調製できる。
多価アルコールとクロロブタノールとの比率
本発明の組成物中の、上記多価アルコールとクロロブタノールとの配合比率については、クロロブタノール:上記多価アルコールが、重量比で、約1:10〜1000が好ましく、約1:50〜500がより好ましく、約1:100〜300がさらにより好ましい。上記範囲であれば、十分な防腐性能が得られると共に、十分に皮膚刺激が抑えられる。
【0010】
エタノール
本発明の皮膚外用組成物は、さらに、エタノールを含むことができ、これにより、皮膚刺激を抑えたままで、一層強い殺菌力が得られる。
エタノールの含有量は、組成物の全量に対して、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらにより好ましい。この範囲であれば、十分な殺菌力が得られる。
また、エタノールの含有量は、組成物の全量に対して、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、刺激がなく、良好な使用感が得られる。
【0011】
化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤
本発明の組成物は、クロロブタノールの他には、化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まない。但し、それ単独で防腐殺菌効果を奏さない程度の少量の化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤が含まれる場合、例えば、製造過程で不可避に混入する場合や、本発明の組成物に配合される他の原料(例えば、植物エキスなど)中に化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤が微量含まれている場合などは、本発明でいう「含まない」に該当する。
クロロブタノール以外の、化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤としては、安息香酸、安息香酸塩類、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、感光素、クロルクレゾール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(別名トリクロサン)、パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルなど)、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、亜鉛・アンモニア・銀複合置換型ゼオライト、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、銀―銅ゼオライト、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミンT、クロルキシレノール、クロルフェネシン、クロルヘキシジン、1,3―ジメチロール―5,5―ジメチルヒダントイン、臭化アルキルイソキノリニウム、チアントール、チモール、トリクロロカルバニリド、パラクロルフェノール、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアナイド、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液、N,N”―メチレンビス[N’―(3―ヒドロキシメチル―2,5―ジオキソ―4―イミダゾリジニル)ウレア]、ヨウ化パラジメチルアミノスチリルヘプチルメチルチアゾリウムなどが挙げられる。
【0012】
製剤形態
本発明の外用組成物は、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコール、及びクロロブタノール、さらに必要に応じて、エタノールを、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤と共に混合して、医薬品、医薬部外品、又は化粧品用の皮膚外用組成物とすることができる。
【0013】
医薬品用の皮膚外用組成物の形態は特に限定されず、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、又はパップ剤などが挙げられる。これらの製剤は、第15改正日本薬局方製剤総則に記載の方法等に従い製造することができる。中でも、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、エアゾール剤、又はパップ剤が好ましく、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤がより好ましい。
医薬部外品又は化粧品用の皮膚外用組成物とする場合も、上記の医薬品と同様の形態にすることができる。それ以外でも、リップスティックのようなスティック剤、不織布等のシートに薬液を含浸させたシート剤、パウダー剤なども挙げられる。中でも、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、エアゾール剤、スティック剤、シート剤、パウダー剤、又はパップ剤が好ましく、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、シート剤がより好ましい。
医薬部外品又は化粧品用の皮膚外用組成物とする場合の用途としては、具体的には、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、マスク、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ボディーシャンプー、シャンプー、リンス、トリートメントのような洗浄用化粧料などが挙げられる。
【0014】
基剤又は担体
基剤又は担体としては、流動パラフィン、スクワラン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジンのようなシリコーン油;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カラギーナン;ポリビニルブチラート;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ブチレングリコールアジピン酸ポリエステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリットのようなエステル類;デキストリン、マルトデキストリンのような多糖類;イソプロパノールのような低級アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルのようなグリコールエーテル;ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;水などの水系基剤などが挙げられる。
基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
添加剤
本発明の外用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に添加される公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、刺激軽減剤、キレート剤、着色剤、香料、パール光沢付与剤等を添加することができる。
化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤(クロロブタノールを除く)以外の成分であれば、保存作用又は防腐殺菌作用のある成分を含んでいてよい。例えば、食品の雑菌繁殖を抑えるために使用されている成分などを含む場合が考えられる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸、L−システイン塩酸塩などが挙げられる。
【0016】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO−40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO−50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80などの硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミンのようなアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのようなシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0017】
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、アルギン酸、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、セルロース系増粘剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなど)などが挙げられる。
【0018】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0019】
安定化剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ビチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
刺激低減剤としては、甘草エキス、アルギン酸ナトリウム、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどが挙げられる。
キレート剤としては、エデト酸塩、グルコン酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸塩などが挙げられる。
【0020】
添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
有効成分
本発明の皮膚外用組成物には、種々の有効成分を添加することができる。有効成分の具体例としては、例えば、保湿成分、抗炎症成分、美白成分、抗しわ成分、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進成分などが挙げられる。
【0022】
保湿成分としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリントレハロースのような多価アルコール;ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサンのような高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0023】
抗炎症成分としては、植物(例えば、コンフリー)に由来する成分、アラントイン、グリチルリチン酸又はその誘導体、酸化亜鉛、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロール、サリチル酸又はその誘導体、ε-アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0024】
美白成分としては、アスコルビン酸又はその塩、アスコルビン酸誘導体又はその塩、アルブチン、ハイドロキノン、トラネキサム酸又はその塩などが挙げられる。
【0025】
抗しわ成分としては、レチノール又はその誘導体、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0026】
紫外線吸収剤としては、2-〔4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル〕安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、2,4,6-トリス〔4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕-1,3,5-トリアジン、オクトクリレン、2,4-ビス-〔{4-(2−エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル〕-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0027】
紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛、二酸化チタンなどが挙げられる。これらは効果を上げるために表面処理が施されていてもよい。
【0028】
ビタミン類としては、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等のレチノール誘導体、レチナール、レチノイン酸、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、d−δ−トコフェリルレチノエート、α−トコフェリルレチノエート、β−トコフェリルレチノエート等のビタミンA類;dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;ニコチン酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、ニコチン酸1−(4−メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類;アスコルビゲン−A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L−アスコルビルなどのビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類、γ−オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩;チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D−パンテサイン、D−パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、ビオチシン等のビオチン類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸誘導体であるビタミンC類;カルニチン、フェルラ酸、α−リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0029】
ペプチド又はその誘導体としては、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)などが挙げられる。
【0030】
アミノ酸又はその誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、β−アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、タウリン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチンなどが挙げられる。
【0031】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノプロン酸などのアミノ酸類;レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類;グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類;タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、感光素301号などが挙げられる。
老化防止成分としては、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N−メチル−L−セリン、メバロノラクトンなどが挙げられる。
【0032】
血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、ウイキョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カミツレ、ローマカミツレ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、ローズマリー、ローズヒップ、チンピ、トウキ、トウヒ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシ)に由来する成分;グルコシルヘスペリジンなどが挙げられる。
【0033】
有効成分は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
使用方法
本発明の皮膚外用組成物は、使用対象の皮膚の状態、年齢、性別、成分の種類や量などによって異なるが、1日数回、適量を皮膚に塗布すればよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)組成物の調製
下記の表1、表2に示す成分を混合し、撹拌により溶解、又は乳化して、各例のローション剤を調製した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
(2)防腐殺菌効果試験
表1、表2に記載の各製剤を用いて、第15改正日本薬局方解説書に記載の保存効力試験を、カテゴリーIBの製剤(非無菌の非経口剤)について行った。簡単に説明すると、以下の通りである。
<試験菌株>
細菌:Escherichia coli ATCC 8739
Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027
Staphylococcus aureus ATCC6538
真菌:Candida albicans ATCC 10231
Aspergillus niger ATCC16404
【0039】
<菌の培養>
上記の細菌を33℃で24時間、C.albicansを24℃で48時間、A.nigerを24℃で10日間培養した。これらの培養菌体を、滅菌生理食塩水に浮遊させ、約10個/mlの生菌を含む菌液を調製した。A.nigerの場合は、菌液にポリソルベートを0.05%添加した。これらの菌液を接種菌液として使用した。
【0040】
<試験手順>
製剤を含む容器5個の中に、それぞれ、Escherichia coli 、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Candida albicans、及びAspergillus nigerの接種菌液を、無菌的に注入し、均一に混合した。接種量は、組成物の1ml当たり、10〜10個の生菌数になるようにした。
これらの容器を遮光下で20〜25℃に保存し、14日目、及び28日目に、組成物から1mlをサンプリングし、生菌数を寒天平板混釈法により測定した。
【0041】
<結果>
細菌については、14日目に接種菌数の1%以下になった場合、28日目に14日目と同等又はそれ以下になった場合に、それぞれ、保存効力あり(○)と判定した。それ以外の場合は保存効力なし(×)と判定した。
真菌については、14日目、28日目に接種菌数と同等又はそれ以下になった場合に、それぞれ、保存効力あり(○)と判定した。それ以外の場合は保存効力なし(×)と判定した。
結果を以下の表3、表4に示す。
【0042】
【表3】

表3から明らかなように、エタノールを含まない場合、クロロブタノール単独、又は1,3−ブチレングリコール単独では、十分な保存効力は認められなかった(比較例2、3)。さらに、クロロブタノール単独のとき、エタノールを添加しても、十分な保存効力は認められなかった(比較例1)。これに対して、クロロブタノールと1,3−ブチレングリコールを組み合わせることにより、細菌、真菌に対して十分な保存効力が認められ、この効果はエタノールを含まなくても同様であった(実施例1、2)。
【0043】
【表4】

表4から明らかなように、1,3−ブチレングリコール単独でも、防腐殺菌剤のメチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)を含むとき、細菌、真菌に対して十分な保存効力が認められた(比較例4)。
【0044】
(3)皮膚刺激試験
表2に記載の各製剤を用いて、皮膚障害を持たず、刺激を感知し易い男女10名が、各組成物を目の下に塗布し、ほてり、痛み、チクチク感等の刺激(スティンギング)を感じるか否かを評価した。
刺激なしの場合をスコア0、弱い刺激を感じる場合をスコア1、刺激を感じる場合をスコア2、強い刺激を感じる場合をスコア3と評価した。10名のスコアの平均値は、実施例3の組成物では0.3、比較例4の組成物では1.5であった。
【0045】
クロロブタノールと1,3−ブチレングリコールを組み合わせることにより、皮膚刺激は極めて少なかった。これに対して、クロロブタノールを含まず、1,3−ブチレングリコール単独の場合は、十分な保存効力を得ようとすると、メチルパラベンのような化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐殺菌剤を添加せざるを得ず、これが肌質や皮膚状態によっては刺激に感じる場合があることが分かる(比較例4)。
【0046】
このことから、本発明は、
(i) クロロブタノールと炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとを混合し、化粧品基準のポジティブリストに含まれるクロロブタノール以外の防腐剤を混合しない、皮膚刺激性(特に、粘膜を除く皮膚に対する刺激性)を抑制しつつ、クロロブタノールの防腐性能を向上させる方法、及び
(ii) クロロブタノールを含む組成物(特に、皮膚(粘膜を除く)外用組成物)に、炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールを添加し、化粧品基準のポジティブリストに含まれるクロロブタノール以外の防腐剤を添加しない、クロロブタノールを含む組成物(特に、皮膚(粘膜を除く)外用組成物)の皮膚刺激性(特に、粘膜を除く皮膚に対する刺激性)を抑制しつつ、防腐性能を向上させる方法も包含する。
成分の種類、配合量、配合比率、組成物の性状は、本発明の組成物について説明した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の皮膚外用組成物は、高い防腐殺菌力と低皮膚刺激性を兼ね備えたものであり、化粧品、医薬部外品、医薬品の皮膚(粘膜を除く)外用剤として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとクロロブタノールとを含み、クロロブタノール以外には化粧品基準のポジティブリストに含まれる防腐剤を含まない皮膚(粘膜を除く)外用組成物。
【請求項2】
炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールの含有量が、組成物の全量に対して、3〜30重量%である請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
クロロブタノールの含有量が、組成物の全量に対して、0.01〜1重量%である請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
組成物中の、クロロブタノールと炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとの比率(クロロブタノール:炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコール)が、重量比で、1:10〜1000である項1〜3の何れかに記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
さらにエタノールを含む請求項1〜4の何れかに記載の皮膚外用組成物。
【請求項6】
クロロブタノールと炭素数2〜6、水酸基数2〜4の多価アルコールとを混合し、化粧品基準のポジティブリストに含まれるクロロブタノール以外の防腐剤を混合しない、皮膚刺激性を抑制しつつ、クロロブタノールの防腐性能を向上させる方法。
【請求項7】
さらに、エタノールを混合する請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2012−158567(P2012−158567A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20691(P2011−20691)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】