説明

皮膚改善剤、血管機能改善剤、並びにこれらを含む医薬組成物、食品、飼料及び化粧品

【課題】アレルギー症状等のおそれがなく、活性を保持したままで血液中に到達できる割合が高い皮膚改善剤、血管機能改善剤、並びにこれらを含む医薬組成物、食品、飼料及び化粧品を提供する。
【解決手段】皮膚改善剤及び血管機能改善剤は、ジペプチドPro−Gly、その塩及びその誘導体からなる群より選択される1又は複数の化合物を有効成分として含み、それぞれ、皮膚線維芽細胞におけるエラスチン産生促進活性及び血管内皮細胞の増殖促進活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚改善剤、血管機能改善剤、並びにこれらを含む医薬組成物、食品、飼料及び化粧品に関し、より具体的には、活性を保持したままで血液中に到達できる割合が高い皮膚改善剤、血管機能改善剤、並びにこれらを含む医薬組成物、食品、飼料及び化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
エラスチンは、弾性線維の主要な構成成分で、脊椎動物の結合織に広く分布する不溶性タンパク質である。生体内では動脈壁や項靭帯、肺、皮膚等、弾力性及び伸縮性が必要とされる組織に多く分布し、生体内で弾性の維持、細胞の機能調節等、様々な役割を果たしている。血管や項靭帯におけるエラスチン含量は、全乾燥重量あたり50%以上、皮膚中では2%程を占めている。生体内のエラスチンは、紫外線や加齢等の要因によって減少や変性することが知られており、皮膚でのこのような変化は、皮膚のシワやたるみ及び弾力性低下の原因となる。遺伝的にエラスチン形成能のないマウスの皮膚は弾力性がないこと(非特許文献1参照)や、紫外線照射後の弾性線維の構造変化により皮膚での弾力性低下やシワ形成が起こる可能性(非特許文献2参照)が報告されている。このため、エラスチンの産生を促進する物質は、肌の弾力性やハリを保ち、シワの予防及び改善に繋がると考えられる。
【0003】
血管内皮細胞は血管の内膜を構成する細胞で、血圧、血液凝固、線溶系をコントロールする生理活性物質を産生し、血管環境を維持している。しかし、加齢や酸化ストレスの蓄積によって血管内皮細胞は恒常的に障害を受けており、その機能は低下する。動脈硬化症や血栓症の進展は内皮機能の低下が要因であると考えられており、血管内皮細胞を修復し、増殖促進作用を高めることは、これらの血管系疾患の予防及び改善に重要であると考えられる。
【0004】
従来知られているエラスチン産生促進物質の例としては、ナルコユリ属植物抽出物(特許文献1参照)、アオギヌゴケ科植物の抽出物(特許文献2参照)、グミ科ヒッポファエ属植物の抽出物(特許文献3参照)等の植物中抽出物、Leu−Glu−His−Ala(特許文献4参照)等のオリゴペプチドが挙げられる。
【0005】
また、従来知られている血管内皮細胞増殖活性物質の例としては、山梔子抽出物(特許文献5参照)、そば抽出物(特許文献6参照)等の植物抽出物、水溶性高分子又はその誘導体にペプチド鎖が2個以上結合しているペプチド複合体(特許文献7参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−513509号公報
【特許文献2】特開2005−60341号公報
【特許文献3】特開2005−22993号公報
【特許文献4】特開2008−74788号公報
【特許文献5】特開1994−025001号公報
【特許文献6】特開2001−199898号公報
【特許文献7】特開2008−044915号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yanagisawa H.他著、「Fibulin−5 is an elastin−binding protein essential for elastic fibre development in vivo」、Nature、Nature Publishing Group(英国)、第415巻、第6868号(2002年1月10日)、p.168−171
【非特許文献2】Imokawa G.他著、「Degree of Ultraviolet−Induced Tortuosity of Elastic Fibers in Rat Skin Is Age Dependent」、J. Invest. Dermatol.,Nature Publishing Group(英国)、第105巻、第2号(1995年8月)、p.254−258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1〜3、5及び6記載のもの等の植物の抽出物は、種々の成分を含むために、投与を受けた者の感受性によっては、かぶれや湿疹等のアレルギー症状が発現するおそれがある。また、独特の臭い、配合時の着色や物性から利用が制限される可能性がある。また、特許文献4及び7に記載のもの等のペプチド及びその誘導体では、経口摂取の場合、生体内での消化吸収の過程で分解されてその構造を失ってしまう可能性が高いことが考えられ、効能が得られない可能性がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、アレルギー症状等のおそれがなく、活性を保持したままで血液中に到達できる割合が高い皮膚改善剤、血管機能改善剤、並びにこれらを含む医薬組成物、食品、飼料及び化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑みて新規な皮膚改善剤及び血管機能改善剤について鋭意検討を行った結果、ジペプチドPro−Gly(L−プロリルグリシン)が皮膚線維芽細胞におけるエラスチン産生促進活性及び血管内皮細胞の増殖促進活性を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
前記目的に沿う本発明の第1の態様は、ジペプチドPro−Gly、その塩及びその誘導体からなる群より選択される1又は複数の化合物を有効成分として含み、皮膚線維芽細胞におけるエラスチン産生促進活性を有することを特徴とする皮膚改善剤を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0012】
本発明の第2の態様は、ジペプチドPro−Gly、その塩及びその誘導体からなる群より選択される1又は複数の化合物を有効成分として含み、血管内皮細胞の増殖促進活性を有することを特徴とする血管機能改善剤を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0013】
本発明の第1の態様により提供される皮膚改善剤及び本発明の第2の態様により提供される血管機能改善剤は、ジペプチドであるため、大部分がアミノ酸まで分解されずに腸管より吸収され、活性を保持した状態で血液中に到達できると共に、安価で大量に供給することができ、必要に応じて塩や誘導体を容易に得ることができる。そのため、多様な剤形及び用途に容易に対応できる。更に、免疫源性や毒性を有しないため、副作用のない安全な皮膚改善剤及び血管機能改善剤を提供できる。
【0014】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に係る皮膚改善剤及び本発明の第2の態様に係る血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む医薬組成物を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0015】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様に係る皮膚改善剤及び本発明の第2の態様に係る血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む食品を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0016】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に係る皮膚改善剤及び本発明の第2の態様に係る血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む飼料を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0017】
本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様に係る皮膚改善剤及び本発明の第2の態様に係る血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む化粧品を提供することにより上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、副作用、固有の臭気、安全性等に関する従来技術の課題を解決し、幅広い用途に応用が可能な、皮膚線維芽細胞におけるエラスチン産生促進活性を有する皮膚改善剤、血管内皮細胞の増殖促進活性を有する血管機能改善剤、及びこれらを含む医薬組成物、食品、飼料、及び化粧品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施の形態に係る皮膚改善剤及び血管機能改善剤は、ジペプチドPro−Gly(L−プロリルグリシン)、その塩及びその誘導体からなる群より選択される1又は複数の化合物を有効成分として含んでいる。皮膚改善剤及び血管機能改善剤に用いられるジペプチドPro−Glyは、L−プロリンとグリシンより構成されるジペプチドである。
【0020】
Pro−Glyの塩としては、Pro残基中のアミノ基及びGly残基中のカルボキシル基の一方又は双方が、それぞれ生体に対し無害な酸及び塩基と塩を形成した任意の塩を使用することができる。アミノ基の塩の具体例としては、(1)塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、(2)酢酸塩、プロピオン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、シュウ酸塩、ステアリン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、アジピン酸塩、グルコン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。カルボキシル基の塩の具体例としては、(1)ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、(2)アンモニウム塩、ピリジニウム塩、塩基性アミノ酸との塩等の有機塩基との塩が挙げられる。或いは、いわゆる分子内塩(双性イオン:Zwitter ion)を形成していてもよい。
【0021】
Pro−Glyの誘導体としては、Pro残基中のアミノ基及びGly残基中のカルボキシル基の一方又は双方と、生体に対し無害な他の化合物との反応生成物であり、生体において酵素分解を受け遊離のPro−Glyを生成することができるものであれば、任意の誘導体を使用することができる。誘導体の具体例としては、N−アシルアミド、O−アルキルエステル等が挙げられる。
【0022】
皮膚改善剤及び血管機能改善剤に原料として使用されるジペプチドPro−Glyの由来は問わず、上述のジペプチドPro−Gly、その塩及びその誘導体からなる群より選択される化合物をそれぞれ1種単独で用いてもよく、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ジペプチドPro−Glyは、動物性及び植物性タンパク質を多く含む、魚介類、家畜、家禽、鯨等の肉、大豆等の豆類及びそれらの加水分解物等にも含まれている。これらを原料として、例えば、水抽出、温水抽出、熱水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の従来公知の抽出方法によりジペプチドPro−Glyを含む抽出物を得ることができる。
【0023】
以上のようにして得られた抽出物を溶液のまま使用する場合には、溶液を所望の用途に好適なpHに調整し、必要であれば脱塩を行う。脱塩は、限外ろ過法、イオン交換法等の任意の方法により行うことができる。
また、不溶物が存在する場合には、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の任意の方法を用いて除去することができる。ろ過による除去の場合には、必要に応じて、不純物を除去するために活性炭、ベントナイト、セライト等の吸着剤やろ過助剤を添加してもよい。特に溶液のまま使用する場合には、メンブレンフィルター等による除菌ろ過を併せて行うことが好ましい。必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、再沈殿、再結晶等の任意の公知の方法或いはこられの組み合わせを用いて、ジペプチドPro−Glyを単離してもよい。
【0024】
このようにして得られるジペプチドPro−Glyを含む抽出物は、そのまま溶液として用いてもよく、又は、再結晶、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の任意の公知の方法を用いて、用途及び組成物の形態に応じて、結晶、粉末、顆粒等の任意の好適な形態を有する固体の形態で用いてもよい。或いは、適当な酸、塩基及び化合物のいずれかと反応させ、適当な塩又は誘導体として用いてもよい。この場合においても、ジペプチドPro−Glyを含む抽出物は、そのまま溶液のまま用いてもよく、結晶、粉末、顆粒等の任意の好適な形態を有する固体の形態で用いてもよい。
【0025】
皮膚改善剤及び皮膚改善剤の原料として、或いは塩又は誘導体合成の原料として、必要に応じてジペプチドPro−Glyの純品を使用することもできる。純品についてもその由来は特に制限されず、市販品を購入し、必要に応じて更に精製を行った上で使用してもよいが、任意の公知の方法により合成したものを使用してもよい。合成法については特に制限されず、有機化学的合成手法(液相及び固相合成)、遺伝子工学的合成手法等の任意の公知の合成法を使用することができる。
【0026】
合成されたジペプチドPro−Glyを溶液として使用する場合には、溶液を所望の用途に好適な濃度及びpHに調整する。或いは、ジペプチドPro−Glyを固体として使用する場合には、再結晶、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の任意の公知の方法を用いて、用途及び組成物の形態に応じて、結晶、粉末、顆粒等の任意の好適な形態を有する固体とすることができる。ジペプチドPro−Glyを適当な酸、塩基及び化合物のいずれかと反応させ、適当な塩又は誘導体として用いてもよい。この場合においても、ジペプチドPro−Glyを含む抽出物は、そのまま溶液のまま用いてもよく、結晶、粉末、顆粒等の任意の好適な形態を有する固体の形態で用いてもよい。
【0027】
ジペプチドPro−Gly(特に断らない限り、塩又は誘導体も含まれる。以下同じ。)は、皮膚線維芽細胞におけるエラスチンの産生促進活性を有している。上述のとおり、エラスチンは、皮膚の弾性に関与する成分としてコラーゲンと共に真皮結合組織に存在しており、加齢、紫外線等による皮膚中のエラスチンの減少及び変性は、皮膚のたるみやしわの一因である。したがって、皮膚線維芽細胞におけるエラスチンの産生を促進することにより、加齢等に伴う皮膚のたるみやしわの発生を抑制し、皮膚機能を改善できる。
【0028】
また、ジペプチドPro−Glyは、血管内皮細胞増殖促進活性を有している。加齢や糖尿病等に起因する酸化ストレスの増大等により血管内皮細胞が減少すると、血管内皮細胞から産生されるNO、PGI等の血管弛緩因子の低下、凝固抑制因子の産生の減少に伴う血栓の形成、血小板や単核球の血管内皮への接着に伴う血管内壁の狭窄等が挙げられる。ジペプチドPro−Glyは、血管内皮細胞の増殖を促進することにより血管の機能を改善できる。以上のように、ジペプチドPro−Glyは、血管機能改善剤として使用することができる。
【0029】
ジペプチドPro−Glyを担体等と混合することにより、皮膚改善効果及び血管の機能を改善する効果の一方又は双方を有する医薬組成物として用いることができる。医薬組成物のヒトあるいは動物に対する投与形態としては、経口、経直腸、非経口(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与など)等が挙げられ、投与量は、医薬組成物の製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される投与対象の年齢、体重、症状によって適宜設定され一義的に決定することは困難であるが、ヒトの場合、一般には製剤中に含有される有効成分の量で、好ましくは成人1日当り0.1〜2000mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0030】
経口投与製剤として調製する場合は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、コーティング剤、液剤、懸濁剤等の形態に調製することができ、非経口投与製剤にする場合には、注射剤、点滴剤、座薬等の形態に調製することができる。製剤化には、任意の公知の方法を用いることができる。例えば、ジペプチドPro−Glyと、製薬学的に許容し得る担体又は希釈剤、安定剤、及びその他の所望の添加剤を配合して、上記の所望の剤形とすることができる。
【0031】
皮膚改善剤及び血管機能改善剤の一方又は双方を含む食品としては、ジペプチドPro−Glyをそのまま食品として調製したもの、他の食品に添加したもの、あるいは、カプセル、錠剤等、食品又は健康食品に通常用いられる任意の形態をとることができる。
【0032】
食品中に配合して摂取あるいは投与する場合には、適宜、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料等と混合し、用途に応じて、粉末、顆粒、錠剤等の形に成形することができる。また、適宜、食品原料中に混合して食品を調製し、皮膚改善効果を有する機能性食品として製品化することによって摂取することができる。
【0033】
皮膚改善剤及び血管機能改善剤の一方又は双方を含む飼料としては、ジペプチドPro−Glyをそのまま調製したもの、あるいは飼料に配合したもの等、様々な形態をとることができる。飼料中に混合して、家畜などの動物に投与する場合には、予め飼料の原料中に混合して、機能性を付与した飼料として調製することができる。また、飼料に添加して投与することもできる。すなわち、ジペプチドPro−Glyを有効成分として含む皮膚改善剤は、ブタ、ニワトリ、ウシ、ウマ、ヒツジ等の家畜や、魚類、ペット(イヌ、ネコ、鳥類)等の飼料に添加することにより、安全で、皮膚改善効果及び老化した血管を改善する効果の一方又は双方を有する機能性飼料として用いることができる。
【0034】
皮膚改善剤を含む化粧品としては、ジペプチドPro−Glyを化粧水、クリームに配合したもの等、様々な形態をとることができる。
化粧品等に配合して投与するには、適宜液状あるいはクリーム状化粧品中に混合して機能性化粧品等として調製することができる。その場合、化粧品等の調製に際してよく知られている、可溶化剤、安定剤、乳化剤等を用いることができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0036】
実施例1:エラスチン産生促進活性の測定
正常ヒト真皮線維芽細胞(DSファーマ)を、1%FBSを含むD−MEMに懸濁し、96穴プレートに細胞数2×10となるよう播種し、COインキュベーター内で24時間培養した。次いで、Pro−Gly(国産化学株式会社)の濃度が0.1、1、10μg/mlとなるよう調製した培地に交換し、培養を行った。Pro−Gly添加より3日後の培養上清を採取し、線維芽細胞から産出されたエラスチン量をELISA法にて定量した。コントロールのエラスチン産生量を100とし、Pro−Gly添加群のエラスチン産生量の相対値を求めた。
【0037】
測定結果を表1に示す。Pro−Glyを0.1、1、10μg/ml添加した細胞群は、コントロールに対し危険率1%未満で有意なエラスチン産生促進作用を示すことがわかる。なお、表中の「*」は、t検定における有意確率p値に対し、有意確率1%未満(p<0.01)であることを表したものである。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2:血管内皮細胞増殖促進活性の測定
正常ヒト血管内皮細胞HUVEC(クラボウ)をEG−2培地に懸濁し、96穴プレートに細胞数1×10となるよう播種した。同時に、PBSに溶解させたPro−Gly(国産化学株式会社)を培養液の1/10量添加した。COインキュベーター内で4日間培養後、Cell Counting Kit−8(同仁化学研究所)を添加し、37℃で2時間保持した。色素が発色している事を確認し、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。PBSのみを添加したウェルの内容物をコントロール(対照群)とした。コントロールの吸光度を100とし、Pro−Gly添加群の吸光度の相対値を求めた。
【0040】
結果を表2に示す。Pro−Glyは濃度依存的に血管内皮細胞に対して増殖促進効果を示し、50、100ng/ml添加区ではコントロールに対して危険率1%未満で有意な血管内皮細胞増殖作用を示した。なお、表中の「*」は、t検定における有意確率p値に対し、有意確率1%未満(p<0.01)であることを表したものである。
【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジペプチドPro−Gly、その塩及びその誘導体からなる群より選択される1又は複数の化合物を有効成分として含み、皮膚線維芽細胞におけるエラスチン産生促進活性を有することを特徴とする皮膚改善剤。
【請求項2】
ジペプチドPro−Gly、その塩及びその誘導体からなる群より選択される1又は複数の化合物を有効成分として含み、血管内皮細胞の増殖促進活性を有することを特徴とする血管機能改善剤。
【請求項3】
請求項1記載の皮膚改善剤及び請求項2記載の血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1記載の皮膚改善剤及び請求項2記載の血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む食品。
【請求項5】
請求項1記載の皮膚改善剤及び請求項2記載の血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む飼料。
【請求項6】
請求項1記載の皮膚改善剤及び請求項2記載の血管機能改善剤のいずれか一方又は双方を含む化粧品。

【公開番号】特開2010−202578(P2010−202578A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49863(P2009−49863)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000251130)林兼産業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】