説明

皮膚改質方法及び器具

【課題】皮膚を改質すること。
【解決手段】皮膚の改質希望箇所の表面をアルカリ石鹸によって洗浄する洗浄工程(ステップS1)と、前記洗浄後の改質希望箇所のpHを中性化するために酸性電解水を噴霧する噴霧工程(ステップS2)と、前記pHの中性化後の改質希望箇所の角質層を溶解化するオイルを塗布する塗布工程(ステップS3)と、前記角質層の溶解化後の改質希望箇所の湿潤環境を維持するためにドレッシングするドレッシング工程(ステップS4)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚改質方法及び器具に関し、特に、ドレッシング創傷治療理論を応用した皮膚改質方法及び器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、皮膚老化を調節するために、化粧品組成物中におけるレチノイン酸を使用することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、皮膚老化を処理するために、乳酸、グリコール酸またはクエン酸等のα-ヒドロキシ酸を使用することが開示されている。
【0004】
特許文献3には、β-ヒドロキシ酸は、皮膚の剥離特性が好ましい点が開示されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4603146号
【特許文献2】欧州特許公開第413528号公報
【特許文献3】国際特許公開第93/10756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1−3に開示されている、レチノイン酸等の組成物は、新陳代謝によって、角質層表面に現れる死んだ皮膚の除去作用を備えている。
【0007】
しかし、上記組成物を用いると、死んでいない皮膚が除去されることもあり、ユーザが、不快に感じる刺激、つっぱり感、過熱および赤みなどの副作用が生じる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記手法とは異なる手法によって、皮膚を改質することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の皮膚改質方法は、
皮膚の改質希望箇所の表面に存在している病原菌を除菌する第1工程と、
前記改質希望箇所の湿潤環境を維持する第2工程とを含む。
【0010】
一例としては、
第1工程では、前記改質希望箇所をアルカリ石鹸によって洗浄し、及び/又は、前記洗浄後の改質希望箇所に酸性電解水を噴霧し、
第2工程では、前記改質希望箇所をドレッシングする。
【0011】
なお、必要に応じて、前記改質希望箇所に角質層溶解作用を有する、スクワランオイルなどのオイルを塗布してから、第2工程を行うとよい。
【0012】
また、本発明の皮膚改質器具は、
皮膚の改質希望箇所の表面に存在している病原菌を除菌する酸性電解水と、
前記改質希望箇所をドレッシングするドレッシング材とを備える。
【0013】
すなわち、本発明は、ユーザの皮膚に擬似的な創傷状態を生じさせ、ユーザの創傷修復機能を活性化させることによって、ユーザの皮膚の新陳代謝を図り、皮膚の美容的効果を得る。
【発明の実施の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の皮膚の改質方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の皮膚の改質方法は、典型例として、アルカリ石鹸による洗浄工程(ステップS1)と、酸性電解水の噴霧工程(ステップS2)と、スクワランオイルの塗布工程(ステップS3)と、ドレッシング工程(ステップS4)とに大別される。
【0015】
以下、図1を用いて、各ステップについて説明する。
【0016】
(アルカリ石鹸による洗浄工程:ステップS1)
まず、この洗浄工程(ステップS1)では、皮膚の改質希望箇所の表面に付着している汚れを落とし、かつ、その改質希望箇所の除菌を行う。なお、本工程は、必ずしも必要ではなく、皮膚の汚れ具合などに応じて実行の有無を決定すればよい。したがって、皮膚の改質希望箇所を、単に水道水、或いは、蒸留水などで水洗いするだけでもよい。また、本工程は、後述するステップS2の後に行ってもよい。
【0017】
本工程によって、皮膚の改質希望箇所の表面のアクネ菌、黄色ブドウ球菌などの病原菌と称されるもの、その他にも、皮膚常在菌であるところの表皮ブドウ球菌が除菌される。その一方で、毛穴内部に存在している上記各菌は、本工程によって除去されることはない。
【0018】
本実施形態で使用する石鹸は、いわゆる自然材料から成るアルカリ性が好ましい。具体的には、アルカリ石鹸であって、脂肪酸ナトリウムなどのナトリウム石鹸、又は脂肪酸カリウムなどのカリウム石鹸を用いる。なお、石鹸カスが残らないように、きちんと洗顔できるのであれば、弱酸性石鹸を用いてもよい。
【0019】
アルカリ石鹸を用いた場合には、石鹸カスが皮膚の改質希望箇所表面に残っても、差し支えない。アルカリ石鹸の石鹸カス自体は、表皮ブドウ球菌のエネルギー源となり、表皮ブドウ球菌にとって悪因とはならない。このため、毛穴内部に存在していた表皮ブドウ球菌は、アルカリ石鹸の石鹸カスによって皮膚の改質希望箇所の表面で繁殖する。
【0020】
表皮ブドウ球菌は、弱酸性物質を産出し、皮脂膜の生成を促進することが知られている。したがって、表皮ブドウ球菌が繁殖することによって、皮膚の改質希望箇所の表面は、弱酸性に保たれることになる。
【0021】
この結果、アルカリ性の環境下を好む病原菌は、皮膚の改質希望箇所の表面で増殖することができず、更には、皮膚の改質希望箇所内部に侵入することもできない。
【0022】
(酸性電解水の噴霧工程:ステップS2)
つぎに、皮膚の改質希望箇所に、例えば、酸性電解水を噴霧等によって塗布する。酸性電解水は、微酸性のものであっても、強酸性のものであってもよい。酸性電解水には、次亜塩素酸が含まれるものを用いてもよい。
【0023】
酸性電解水を噴霧すると、皮膚の改質希望箇所の表面から、ステップS1を実行することのみによって、除去できなかった微生物を殺菌することができる。
【0024】
また、上記のように、本実施形態で使用する石鹸がアルカリ性であるため、本工程により、皮膚の改質希望箇所表面が中性化されるという側面も有する。
【0025】
(スクワランオイルの塗布工程:ステップS3)
つづいて、皮膚の改質希望箇所の表面に、スクワランオイル、パルミチン酸デキストリン、金、オリーブオイル、ダイズエキス、加水分解酵母エキス、ヒアルロン酸ナトリウム、グリシンなどを含む化粧品を塗布する。ただし、本工程は、角質層の硬化がない場合には割愛することもできる。
【0026】
スクワランオイル等は、角質層の溶解作用を有している。このため、本工程を行うことによって、角質層の硬化している場合であっても、皮膚の改質希望箇所の角質層が皮膚から剥離しやすくなる。また、スクワランオイル等は、乳化剤の役割も担い、体内で生成される皮脂とともに、皮膚の改質希望箇所を被覆することとなり、当該部分の乾燥が防止される。
【0027】
なお、スクワランオイル、ダイズエキス、ヒアルロン酸ナトリウムは、皮膚損傷時の滲出液に含まれる成分と同種であるため、後述するように、創傷状態が生じた場合と同様の症状に近づけることが可能となる。ただし、ダイズエキス等は、必須の成分ではなく、スクワランオイルように、少なくとも角質層溶解物質を含む化粧品であればよい。
【0028】
さらには、スクワランオイルに代えて、オリーブオイル、美容オイル、馬油、ローズヒップオイル、ホホバオイル、サージオイル、エミューオイル、モリンガオイルなど、種々のオイルが代用できる。
【0029】
(ドレッシング工程:ステップS4)
その後、皮膚の改質希望箇所を、例えば、ポリウレタン又はポリエチレン製のラップフィルムなどのドレッシング材を用いてドレッシングする。こうして、皮膚の改質希望箇所が酸素に接触しにくい状態とする。この結果、皮膚細胞は、創傷状態が生じた場合と同様の症状となる。これにより、大脳から皮膚の修復指令が出され、皮膚の修復反応が活性化される。皮膚の修復反応が活性化されると、皮膚細胞の働きが活発となり、特に、コラーゲンの生成効果が高まり、正常な肌の状態を取り戻す。
【0030】
ここで、本実施形態の皮膚改質方法は、ドレッシング創傷治療の原理を採用したものである。ドレッシング創傷治療とは、(1)湿潤と、(2)感染と、(3)異物・壊死組織と、(4)温度と、(5)酸素濃度と、(6)pHという6つの環境影響因子をコントロールすることで、創傷を治癒させるものである。
【0031】
本実施形態では、上記6つの環境影響因子を、以下のようにコントロールしている。
【0032】
(1)湿潤
ドレッシング創傷治療では、皮膚創傷の湿潤を十分に保つ必要があるといわれている。
【0033】
本実施形態では、ステップS4によってドレッシング材によって皮膚の改質希望箇所を被覆することで、皮膚の湿潤を十分に保っている。なお、ステップS3によってスクワランオイルを含む化粧品を皮膚の改質希望箇所に塗布することも、湿潤に寄与する。
【0034】
(2)感染
ドレッシング創傷治療では、皮膚創内に対して外来細菌が浸入しないようにし、細菌感染を防止する必要があるといわれている。
【0035】
本実施形態では、ステップS2によって、酸性電解水を噴霧することによって、皮膚の改質希望箇所の微生物を殺菌して、細菌感染を防止している。なお、ステップS1によってアルカリ石鹸などによって、皮膚の改質希望箇所を洗浄に塗布することも、感染防止に寄与する。
【0036】
(3)異物・壊死組織
ドレッシング創傷治療では、皮膚創内に対して異物が付着することを防止し、壊死組織が生じないようにする必要があるといわれている。
【0037】
本実施形態では、ステップS1によって皮膚の改質希望箇所をアルカリ石鹸などによって洗浄している。なお、本実施形態では、実際に皮膚に創傷が生じているわけではないため、壊死組織が存在することはない。
【0038】
(4)温度
ドレッシング創傷治療では、皮膚創傷を30度以上に保つ必要があるといわれている。
【0039】
本実施形態では、ステップS4によって皮膚の改質希望箇所をドレッシングすることによって、皮膚の改質希望箇所を30度以上に保っている。
【0040】
(5)酸素濃度
ドレッシング創傷治療では、皮膚創傷を低酸素状態とする必要があるといわれている。
【0041】
本実施形態では、ステップS4によって皮膚の改質希望箇所をドレッシングすることによって、皮膚の改質希望箇所の低酸素状態を実現している。
【0042】
(6)pH
ドレッシング創傷治療では、皮膚創傷を酸性環境で保つ必要があるといわれている。
【0043】
本実施形態では、ステップS2によって皮膚の改質希望箇所に、酸性電解水を噴霧することによって、皮膚の改質希望箇所を酸性環境で保っている。
【0044】
上記皮膚改質方法を実行するためには、以下のような器具を用意すればよい。すなわち、ステップS1で用いるアルカリ石鹸、ステップS2で用いる酸性電解水、ステップS3で用いる化粧品、ステップS4で用いるドレッシング材を用意すればよい。
【実施例】
【0045】
図2は、図1に示すフローチャートで示す皮膚改質のための概要説明図である。図2には、顔の皺軽減を目的とした、皮膚改質のための手順を示している。
【0046】
まず、図2(a)に示すように、ユーザは、ナトリウム石鹸などのアルカリ石鹸を用いて洗顔を行う。こうして、顔に付着している汚れを落とし、かつ、顔表面の除菌を行う。
【0047】
洗顔回数は、顔の汚れ具合等に応じて適宜決定すればよい。本実施例の皮膚改質を行うことによって、特段の洗顔方法が必要となるわけではない。
【0048】
つぎに、図2(b)に示すように、次亜塩素酸が含まれる微酸性電解水を、顔に向けて噴霧する。噴霧量は、10〜20ml程度でよい。ただし、顔全体に満遍なく、微酸性電解水が噴霧されるようにすべきである。
【0049】
なお、洗顔してから、微酸性電解水の噴霧までの時間は、短いほど好ましい。さもないと、病原菌が増殖する可能性が高まるためである。目安としては、1分以内が好ましく、最大でも10分以内とするとよい。
【0050】
つづいて、図2(c)に示すように、顔全体に、スクワランオイル等を含む化粧品を塗布する。塗布量は、3〜7ml(小豆1,2粒大)程度でよい。ただし、顔全体に満遍なく、当該化粧品が塗布されるようにすべきである。
【0051】
なお、微酸性電解水を噴霧してから、上記化粧品を塗布するまでの時間は、短いほど好ましい。さもないと、殺菌効果が薄れてしまうためである。目安としては、1分以内が好ましく、最大でも10分以内とするとよい。
【0052】
その後、顔全体を、例えば、食品用ラップフィルムでドレッシングする。もっとも、食品用ラップフィルムのうち、目、鼻、口回りに対応する部分を開口することを妨げるものではない。ラップ時間は、1回あたり通常、1〜5分程度とするとよい。目安としては、スクワランオイルの乳化作用によって、ラップが皮膚から剥がれてきたら、本系低を終了するとよい。
【0053】
以上説明した4工程を含む皮膚改質工程を開始した場合には、その開始から約1〜2ヶ月後に、皮膚の改質が見られ、しわも少なくなった。皮膚の改質の具体的な効果として、一日約30分のラップ時間として、皮膚改質工程を毎日実行したところ、実行開始から数週間後には、浅い傷や火傷はすぐに治癒が確認できた。
【0054】
具体的には、上記皮膚改質方法を実行後数週間後に、偶然、指にいわゆる第I度の火傷を負ったが、その際、患部を氷で冷やしただけで、軟膏を塗布するなどの他の処置を行わなかった。その場合であっても、火傷を負った日に患部に僅かな水泡ができたものの、その翌日には、白色の火傷痕が生じたが痛みを伴わず、その翌日には、火傷痕すら目視できないくらいに回復した。
【0055】
また、上記皮膚改質工程とは異なる毎朝の洗顔後には、化粧水をつけるなどのスキンケアが不要となった。具体的には、スキンケアがなくとも、肌に突っ張り感が生じなかった。
【0056】
さらに、皮膚の改質に伴って、体質の改善が確認できた。疲れやすい体質のユーザに対して、本実施例の皮膚の改質工程を実行したところ、その症状が和らいだという報告を受けた。体質の改善は、既述のドレッシング創傷治療によって生じるとされる自然治癒力の向上に基づくと考えられる。
【0057】
ここで、ドレッシング創傷治療とは、患部をドレッシング材で覆うことによって、患部を滲出液で湿った状態にしておき、自然治癒力を高めるという治療法である。本実施例の皮膚改質工程を実行しているときの顔の皮膚は、既述のように、ドレッシング創傷治療を行っているときの患部と同じような状態となる。このため、本実施例の皮膚改質工程を実行した場合にも、自然治癒力が高まると考えられる。
【0058】
また、皮膚の免疫細胞を活性化することによって、表皮の樹状細胞であるランゲルハンス細胞からケミカルメディエーターとしてヒスタミンが分泌され、その結果、レプチンというホルモンが活性化することが知られている。
【0059】
レプチンが活性化すると、(1)食欲抑制効果と体脂肪の減少効果に基づくダイエット効果の向上、(2)骨量増加に伴う骨粗鬆症の予防、(3)骨芽細胞の分化や機能の促進及び軟骨細胞に作用することに基づく腰痛の緩和、(4)インスリン分泌抑制に基づく糖尿病の予防、(5)生殖機能調節の向上に基づく婦人科系疾患の緩和などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態の皮膚の改質方法を示すフローチャートである。
【図2】図1に示すフローチャートで示す皮膚改質のための概要説明図である。
【符号の説明】
【0061】
S1 アルカリ石鹸による洗浄工程
S2 酸性電解水の噴霧工程
S3 スクワランオイルの塗布工程
S4 ドレッシング工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の改質希望箇所の表面に存在している病原菌を除菌する第1工程と、
前記改質希望箇所の湿潤環境を維持する第2工程とを含む皮膚改質方法。
【請求項2】
さらに、角質層溶解作用を有するオイルを塗布する工程を含む、請求項1記載の皮膚改質方法。
【請求項3】
前記第1工程は、前記洗浄後の改質希望箇所に酸性電解水を塗布する工程を含む、請求項1記載の皮膚改質方法。
【請求項4】
前記第1工程は、前記改質希望箇所をアルカリ石鹸によって洗浄する工程を含む、請求項1記載の皮膚改質方法。
【請求項5】
前記第2工程は、前記改質希望箇所をドレッシングする工程とを含む、請求項1記載の皮膚改質方法。
【請求項6】
皮膚の改質希望箇所の表面に存在している病原菌を除菌する酸性電解水と、
前記改質希望箇所をドレッシングするドレッシング材とを備える、皮膚改質器具。
【請求項7】
前記改質希望箇所を洗浄するアルカリ石鹸を備える、請求項6記載の皮膚改質器具。
【請求項8】
さらに、前記改質希望箇所に塗布する角質層溶解作用を有するオイルと、請求項6記載の皮膚改質器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−73272(P2008−73272A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256632(P2006−256632)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(506279230)有限会社エルバM&K (1)
【Fターム(参考)】