説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】皮脂やメイク汚れの除去性能に優れ、使用後、肌のヌルツキ、べたつきが少なく、安定性に優れた皮膚洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(C):(A)炭素数8〜22の脂肪酸とポリオキシエチレンがエステル結合したポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる非イオン性界面活性剤、(B)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体のような特定の3種のモノマーを、ラジカル重合して得られる共重合体の少なくとも1種、(C)水を含有し、成分(A)を3.5質量%以上10質量%以下、成分(C)を75質量%以上96質量%以下含有し、成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が、0.01以上0.05以下である皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メイクアップ化粧料の多様化や、消費者ニーズに応じて種々の洗浄剤が開発されている。例えば、特許文献1、2では、洗浄剤に特定の水溶性ポリマーを加え、特殊な液性を付与することにより、洗浄剤のマッサージ性を向上させ、メイク汚れや、皮脂汚れに対する洗浄性能を高める洗い流すタイプの洗浄剤が記載されている。
【0003】
これに対し、特許文献3では、皮膚や眼粘膜に対して刺激が少なく、メイク汚れや、皮膚汚れを除去できる洗い流さないタイプの洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献4では、平均HLBが10〜15の非イオン性界面活性剤と、液状の油分、多価アルコールを含有する洗浄剤をシート材に含浸させて、皮膚の汚れを拭き取る洗い流さないタイプの洗浄剤が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−144183号公報
【特許文献2】特開2000−178592号公報
【特許文献3】特開2010−70521号公報
【特許文献4】特開2001−181134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のような洗い流すタイプの洗浄剤は、洗浄性が高く、水で濯いだ後は、界面活性剤等が皮膚に残らず、また、使用後のうるおいが保持されやすい。しかし、洗い流すことが条件であるため、使用する場所が洗面台などに限定され、簡便性に欠ける。これに対し、特許文献3、4に記載の洗浄剤は、洗い流さないタイプの洗浄剤であり、使用場所が限定されないという利便性がある。しかし、洗浄基剤である界面活性剤が皮膚に残るため、使用後のべたつきがどうしても残る。このため、使用後の感触が問題となっていた。
【0006】
本発明は、皮脂やメイク汚れを速やかに除去することができ、洗い流さなくとも、使用後の肌のヌルツキやべたつきなどが抑制され、さっぱりとした使用感に優れる皮膚洗浄剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の非イオン性界面活性剤と特定の水溶性ポリマーを特定の割合で組み合わせることにより、皮脂やメイク汚れの除去性能に優れ、使用後、肌のヌルツキ、べたつきが少なく、安定性に優れた皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数8〜22の脂肪酸とポリオキシエチレンがエステル結合したポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる非イオン性界面活性剤、
(B)モノマー(b−1)、(b−2)及び(b−3)を、ラジカル重合して得られる共重合体、
(b−1)次の一般式(1)で表わされるモノマー
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは-O-、-NH-、-CH2 -又は-O-CH2 CH(OH)-基を示し、Zは炭素数1〜4(ただしYが-CH2 -のときは炭素数0〜3)の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。〕
(b−2)次の一般式(2)で表わされるモノマー
【0011】
【化2】

【0012】
〔式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、R6及びR7は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を示す。ただし、R6及びR7が同時に水素原子の場合を除く。〕
(b−3)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルから選ばれる架橋性ビニル単量体の少なくとも1種、
(C)水
を含有し、
成分(A)を3.5質量%以上10質量%以下、成分(C)を75質量%以上96質量%以下含有し、
成分(B)と成分(A)の質量比が、(B)/(A)=0.01〜0.05である皮膚洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、皮脂やメイク汚れの除去性能に優れ、使用後、肌のヌルツキ、べたつきが少なく、安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(A)は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる非イオン性界面活性剤である。
【0015】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、炭素数8〜22の脂肪酸とポリオキシエチレンがエステル結合したもので、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンミリスチン酸エステル、ポリオキシエチレンパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリル酸エステルなどが挙げられる。
【0016】
ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンエステルとしては、炭素数8〜22の脂肪酸がグリセリンとエステル結合し、ポリオキシエチレンとグリセリンがエーテル結合したものである。具体的には、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリンエステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレンラウリン酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレンパルミチン酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレンステアリン酸グリセリンエステルなどが挙げられる。
【0017】
これらの非イオン性界面活性剤は、HLBが10〜15であるのが好ましく、更に、HLB12〜14である場合、特に、皮脂汚れや、メイク汚れの洗浄性に優れ、好ましい。なお、HLBとは親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lypophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
【0018】
【数1】

【0019】
これらの非イオン性界面活性剤は、後述する成分(B)との組み合わせにおいて、成分(A)の乾燥際のベタツキを抑制することができる観点から好ましい。また、これらの非イオン性界面活性剤の中で、洗浄性、得られた洗浄剤組成物の見た感じ(みずみずしい感じ)から、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリンエステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリンエステルが好ましい。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリン酸エステルとしては、エマノーン1112(HLB13.7)(商品名,花王社製)など、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリンエステルとしては、例えば、CETIOL HE810(HLB14)(商品名,コグニス ジャパン社製)、ソフチゲン767(商品名,サソール社製)、L.A.S(商品名,ガテフォッセ社製)など、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリンエステルとしては、例えば、CETIOL HE(HLB12)、MファインオイルCOG−7M(商品名,何れもコグニス ジャパン社製)、グリセロックスHE(商品名,クローダジャパン社製)などを例示することができる。特に、洗浄性、配合後の液外観の点から、ポリオキシエチレンラウリン酸エステルが好ましい。
【0020】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(A)の含有量は、効果的な洗浄性と、使用後のベタツキの少なさの観点から3.5質量%以上であり、4質量%以上が好ましく、10質量%以下であり、7.5質量%以下が好ましい。特に4質量%〜7.5質量%が好ましい。
【0021】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(B)は、下記の一般式(1)で表わされるモノマー(b−1)、下記の一般式(2)で表わされるモノマー(b−2)、及び(b−3)を、ラジカル重合して得られる共重合体である。
【0022】
モノマー(b−1):
【0023】
【化3】

【0024】
式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは-O-、-NH-、-CH2 -又は-O-CH2CH(OH)-基を示し、Zは炭素数1〜4(ただしYが-CH2-のときは炭素数0〜3)の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。
【0025】
モノマー(b−1)との塩を得るために用いる好ましい酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、スルファミン酸などが挙げられ、4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等が挙げられる。
【0026】
モノマー(b−1)の具体例として、これらの中で、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、又は、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを前記の4級化剤で4級化した4級アンモニウム塩等が挙げられ、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイトが好ましい。
【0027】
モノマー(b−2)
【0028】
【化4】

【0029】
〔式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、R6及びR7は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を示す。ただし、R6及びR7が同時に水素原子の場合を除く。〕
【0030】
モノマー(b−2)の具体例として、具体的には、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらのうち、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを用いた場合に使用感が好ましく、さらにはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等が、特に好ましい。
【0031】
モノマー(b−3):
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等から選ばれる架橋性ビニル単量体の少なくとも1種が挙げられ、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
これらのなかで、成分(B)としては、(b−1)としてN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートジエチルサルフェイト、(b−2)としてN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(b−3)としてポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの共重合体が好ましい。本品は、ソフケアKG−301W(INCI名:POLYQUATERNIUM-52)として、花王社より発売されている。
【0033】
成分(B)は、僅かに架橋した水溶性のカチオンポリマーである。しかし、成分(A)と組み合わせ使用することにより、剤を皮膚に塗布した際の乾き際に強くなるベタツキ感が抑制されることを見出した。これは、ポリマーの水に対する溶解性が低下し、僅かに不溶化した状態を取るためであると考えられ、乾燥際に発現される水溶性ポリマーにあるベタツキ感を抑制することができる。更に、乾燥後は、さらさらとした感触が得られることがわかった。このように僅かに不溶化したポリマーは、本発明の洗浄剤組成物の外観を半透明にする。半透明の外観は、保存安定性も良好であり、さらに、保湿力が高いといった印象を与えることができることもわかった。半透明の外観は、上記観点から、透過率は94%以下が好ましく、更には、88%以下が好ましい。また、58%以上が好ましい。このような観点から成分(B)は、成分(A)との質量比、成分(B)/成分(A)において、0.01以上であり、0.02以上が好ましく、0.05以下であり、0.03以下であることが好ましい。特に0.02〜0.03であることが好ましい。更に具体的には、成分(B)の含有量としては、0.03質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.22質量%以下が更に好ましい。このように設定することで、液はコットンにしみ込みやすい粘度を保ちながら、塗布後に感じられる成分(A)のベタツキ、ヌルツキが抑制されることがわかった。
【0034】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(C)水は、イオン交換水、蒸留水などが挙げられる。成分(C)は、成分(A)、(B)の溶媒として働く。また、成分(A)、(B)の関係において、成分(B)の溶解性の調整の観点から、成分(C)の含有量は、75質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、96質量%以下であり、92質量%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中には、更に、成分(D)ポリプロピレングリコールとグリセリン又はポリグリセリンとの縮合物、好ましくは、ポリプロピレングリコールとグリセリン又はジグリセリンとの縮合物を含有できる。具体的には、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルが挙げられる。ポリオキシプロピレングリセリルエーテル及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルは、洗浄性の観点から、プロピレングリコールの付加モル数は3〜20モルが好ましく、更に9〜16モルが好ましく、特に9〜14モルが好ましい。これらの化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
より具体的には、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルとしては、ニューポールGP−250、ニューポールGP−600、ニューポールGP−1000(いずれも、三洋化成社製)、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルとしては、SY−DP9、SY−DP14(いずれも、阪本薬品社製)が挙げられる。
【0036】
これらの中で、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルやポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、剤の肌なじみをよくする効果があり、使用後のべたつきを抑制し、しっとりとした感触を向上させる点から好ましい。また、成分(A)、(B)の組み合わせにおいて、洗浄性、および高温での安定性を向上させる観点から、ポリオキシプロピレンが9〜14モル付加したポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルが特に好ましい。
【0037】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中成分(D)の含有量は、洗浄性、安定性、使用後の肌感触を向上する点から、0.5質量%以上であり、好ましくは1質量%以上であり、5質量%以下であり、3質量%以下が好ましい。
【0038】
また、成分(A)と成分(D)の質量比、成分(D)/成分(A)において、塗布時の使用感、使用後のべたつきのなさの観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、1以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。特に、0.2〜0.6であることが好ましい。
【0039】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に成分(E)エタノールを含有することができる。エタノールは、成分(A)界面活性剤や成分(B)ポリマーの成分(C)水への溶解性を高め、安定性向上、塗布時の冷感付与の点から好ましい。エタノールの含有量は、1質量%以上、5質量%以下が好ましく、更に1質量%以上、2質量%以下が好ましい。この範囲であれば、エタノールは、本発明の洗浄剤組成物の使用後の乾き際のベタツキを抑制し、乾燥後のベタツキ、ヌルツキを抑制する点から好ましい。
【0040】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に成分(D)以外のポリオールを含むことができる。ポリオールは、各成分の溶解性、保湿効果を高める点から含有することが好ましが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下、更には、2.5質量%以下であることが、成分(B)の溶解性をコントロールする点から好ましい。この範囲であれば、ポリオールは本発明の使用後の乾き際のベタツキを抑制する効果を損なうことなく、保湿効果を高めることができる。ポリオールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、イソプレングリコールなどが挙げられ、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールが好ましい。
【0041】
本発明の皮膚洗浄剤組成物中には、上記成分のほか、通常の皮膚洗浄剤に用いられる成分を目的に応じて適宜配合できる。このような成分としては、例えばpH調整剤、ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤等が挙げられる。
【0042】
本発明の皮膚洗浄剤組成物の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。成分(C)水と成分(B)とを混合し、約80℃にて、撹拌して溶解する。必要に応じて、ポリオール、酸、塩基、防腐剤、酸化防止剤を加え、撹拌して溶解する。50℃以下に冷却した後、成分(A)を混合し、均一にする。40℃以下に冷却後、必要に応じて、エタノール、香料を加え、本発明の皮膚洗浄剤組成物を得る。
【0043】
本発明の皮膚洗浄剤組成物を使用する時には、直接皮膚に塗布し皮脂汚れや、メイク汚れとなじませ、拭き取ったり、水で洗い流すことが可能であり、シート材に本発明の皮膚洗浄剤組成物を含浸させ、当該シート材で、皮脂汚れやメイク汚れを拭き取ることが好ましい。このように使用することで、皮脂汚れや、メイク汚れを容易に除去することができる。また、拭き取ったのちは、水で洗い流してもよいが、洗い流さなくてもよい。洗い流さない使用方法は、使用する場所が限定されず、簡便に使用できる点で優れている。即ち、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、洗い流さないタイプ(又は、「ふき取りタイプ」とも言われる)の皮膚洗浄剤組成物であることが好ましい。
【0044】
本発明に用いるシート材としては、織布、不織布、コットン(脱脂綿)から選ばれるものが好ましい。織布、不織布に使用される繊維としては、天然繊維、再生繊維、合成繊維が挙げられる。具体的繊維としては、セルロース繊維(コットンを含む)、ポリエチレンテレフタレート(PET) 、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリエステル系繊維及びポリオレフィン系繊維が挙げられる。
【0045】
シート材としては、セルロース繊維を含むものが好ましく、セルロース繊維を70質量%以上、特に100質量%含むシートが、皮膚洗浄剤組成物を含浸しやすいため好ましい。また、織布と不織布とでは、不織布の方が、肌さわりが柔らかく好ましい。特に、コットンやセルロース繊維を含む不織布が使用時に上滑りせず、しっかりと汚れが拭き取られる感触を出せる点で好ましい。また、不織布は、なめらかな肌感触を与える点から水流交絡法により得られるものが好ましい。
【0046】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、全身の皮脂を除去することに使用することができるが、好ましくは、顔の皮脂、メイク汚れを除去することに適している。また、コットンのようなシート材に組成物を含浸させ、当該シート材で拭き取ることにより、効率的に、且つ、洗浄場所を限定されずに使用することができる。
【0047】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、次の成分(A)〜(D):
(A)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(B)N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体、
(C)水
(D)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル
を含有し、
成分(A)を4質量%以上7.5質量%以下、成分(C)を75質量%以上96質量%以下含有し、
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が、0.02以上0.03以下であり、成分(A)と成分(D)の質量比((D)/(A))が、0.2以上0.6以下である皮膚洗浄剤組成物であるのが好ましい。
【実施例】
【0048】
実施例1〜15及び比較例1〜8
表1〜表3に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、外観の透明性、液の感じ、コットンへのしみ込みやすさ、使用感、メイク落ち及び保存安定性を評価した。結果を表1〜表3に併せて示す。
【0049】
(製造方法)
(1)実施例1〜15、比較例2、3、5:
成分(C)水と成分(B)を混合し、約80℃にて、撹拌して溶解する。必要に応じて、成分(D)を加える。更に、ポリオール、コハク酸、アルギニンを加え、撹拌して溶解する。50℃以下に冷却した後、成分(A)を混合し、均一にする。更に40℃以下に冷却後、エタノールを加え、撹拌して均一にし、目的の皮膚洗浄剤組成物を得た。
【0050】
(2)比較例1:
成分(A)を配合しない以外は、全て実施例と同様に製造した。
(3)比較例4:
成分(B)を配合しない以外は、全て実施例と同様に製造した。
(4)比較例6:
成分(A)の換わりにラウリン酸ポリグリセリル−10を配合した以外は、全て実施例と同様に製造した。
(5)比較例7:
成分(A)の換わりにポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルを配合した以外は、全て実施例と同様に製造した。
(6)比較例8:
成分(B)の換わりにポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウムを配合した以外は、全て実施例と同様に製造した。
【0051】
(評価方法)
(1)外観の透明性(透過率):
各洗浄剤組成物について、島津社製、UV-VIS SPECTROPHOTOMETER(UV mini 1240)を用いて、10mmセルで、550nmにおける透過率を測定した。
【0052】
(2)液の感じ:
各洗浄剤組成物を透明なガラス瓶に充填し、7名の専門パネラーにより、液の外観の感じについて以下の3段階で評価した。これらの値を平均し、以下の基準で示した。
(液の外観の感じ)
スコア3:みずみずしく、しっとりする感じがする。
スコア2:みずみずしく、ややしっとりする感じがする。
スコア1:しっとりした感じがしない。
(平均スコアを以下の基準で示した)
◎:平均スコア 3.0〜2.5。
○:平均スコア 2.4〜1.5。
▲:平均スコア 1.4〜1.0。
【0053】
(3)コットンへの浸み込みやすさ:
コットン(リリーベル パッティングコットン、スズラン社製)に、各洗浄剤組成物を約50mgのせ、浸み込む速さを目視で評価した。
◎:1秒以内にしみ込む。
○:5秒以内にしみ込む。
▲:5秒以内にしみ込まない。
【0054】
(4)使用感:
各洗浄剤組成物をコットン(リリーベル パッティングコットン、スズラン社製)に1.0gしみ込ませて肌を拭き取った。この後、洗い流さずに肌感触について以下の3段階で評価した。これらの値を平均し、以下の基準で示した。
(使用後の肌の感じ)
スコア3:べたつかない。或いは、ほとんどべたつかない。
スコア2:ややべたつく。
スコア1:べたつきが強い。
(平均スコアを以下の基準で示した)
◎:平均スコア 3.0〜2.5。
○:平均スコア 2.4〜1.5。
▲:平均スコア 1.4〜1.0。
【0055】
(5)メイク落ち(1):
前腕に口紅(花王社製、AUBE ルージュピュアリーステイ(PK723))を直径2cmの円になるように塗布した。この口紅の上に、各洗浄剤組成物約1.0gのせ、指で円を書くようになじませた。この円を描く回数で、メイクと洗浄剤とが完全に混和し、塗布時の口紅の形状が残らなくなる早さについて評価した。
◎:25回以下。
○:26回〜40回。
▲:41回以上。
【0056】
(6)メイク落ち(2):
前腕に口紅(メイベリン、カラーセンセーショナルラスティングBE32S)を直径2cmの円になるように塗布した。30分放置して乾燥後、コットン(リリーベル パッティングコットン、スズラン社製)に各洗浄剤組成物を50mg含浸させ、拭き取った。これを1回とする。同様にして、コットンに各洗浄剤組成物を含浸させ、色がなくなるまでの拭き取り回数で評価した。
◎:2回以下。
○:3回〜5回。
▲:6回以上。
【0057】
(7)保存安定性:
各洗浄剤組成物を透明なガラス瓶に充填し、室温および50℃の保存庫にて1週間放置した。1週間後の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:均一な外観を保っている。
▲:分離している。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
実施例16〜19
以下に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を、実施例1と同様にして製造した。得られた皮膚洗浄剤組成物を、コットン不織布(ユニチカ社製、コットンエースC040S/A01,坪量40g/m2)に含浸させ、メイク汚れに対する洗浄性を評価した。
【0062】
実施例16
(成分)
1.ポリオキシエチレン(10)モノラウリン酸エステル(HLB13.7)*1
3.5(質量%)
2.N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体*3 0.11
3.エタノール 1.0
4.コハク酸 0.01
5.L−アルギニン 0.025
6.精製水 95.355
合計 100.000
得られた皮膚洗浄剤組成物は、適度な濁りがあり、メイク汚れに対する洗浄性に優れ、且つ、使用後ベタツキのない、安定性に優れていた。
【0063】
実施例17
(成分)
1.ポリオキシエチレン(10)モノラウリン酸エステル(HLB13.7)*1
5.0(質量%)
2.N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体*3 0.11
3.ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテル*13 3.00
4.エタノール 1.0
5.コハク酸 0.01
6.L−アルギニン 0.025
7.精製水 90.855
合計 100.000
*13:SY−DP14(阪本製薬社製)
得られた皮膚洗浄剤組成物は、適度な濁りがあり、メイク汚れに対する洗浄性に優れ、且つ、使用後ベタツキのなく、安定性に優れていた。
【0064】
実施例18
(成分)
1.ポリオキシエチレン(10)モノラウリン酸エステル(HLB13.7)*1
5.0(質量%)
2.N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体*3 0.11
3.ポリオキシプロピレン(9)グリセリルエーテル*14 3.00
4.エタノール 1.0
5.コハク酸 0.01
6.L−アルギニン 0.025
7.精製水 90.855
合計 100.000
*14:ニューポールGP−600(三洋化成社製)
得られた皮膚洗浄剤組成物は、適度な濁りがあり、メイク汚れに対する洗浄性に優れ、且つ、使用後ベタツキのなく、安定性に優れていた。
【0065】
実施例19
(成分)
1.ポリオキシエチレン(10)モノラウリン酸エステル(HLB13.7)*1
5.0(質量%)
2.N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体*3 0.11
3.ポリオキシプロピレン(16)グリセリルエーテル*15 3.00
4.エタノール 1.0
5.コハク酸 0.01
6.L−アルギニン 0.025
7.精製水 90.855
合計 100.000
*15:ニューポールGP−1000(三洋化成社製)
得られた皮膚洗浄剤組成物は、適度な濁りがあり、メイク汚れに対する洗浄性に優れ、且つ、使用後ベタツキのなく、安定性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)炭素数8〜22の脂肪酸とポリオキシエチレンがエステル結合したポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる非イオン性界面活性剤、
(B)モノマー(b−1)、(b−2)及び(b−3)を、ラジカル重合して得られる共重合体、
(b−1)次の一般式(1)で表わされるモノマー
【化1】

〔式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは-O-、-NH-、-CH2 -又は-O-CH2 CH(OH)-基を示し、Zは炭素数1〜4(ただしYが-CH2 -のときは炭素数0〜3)の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。〕
(b−2)次の一般式(2)で表わされるモノマー
【化2】

〔式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、R6及びR7は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を示す。ただし、R6及びR7が同時に水素原子の場合を除く。〕
(b−3)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルから選ばれる架橋性ビニル単量体の少なくとも1種、
(C)水
を含有し、
成分(A)を3.5質量%以上10質量%以下、成分(C)を75質量%以上96質量%以下含有し、
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が、0.01以上0.05以下である皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
洗い流さないタイプの皮膚洗浄剤組成物である請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(B)において、
モノマー(b−1)がN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートジエチルサルフェイト、
モノマー(b−2)がN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、
モノマー(b−3)がポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
である請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分(A)が、HLB10〜15である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分(A)が、HLB12〜14である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項6】
成分(A)を4質量%以上7.5質量%以下含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項7】
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が、0.02以上0.03以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項8】
更に、(D)グリセリン又はポリグリセリンとポリプロピレングリコールとの縮合物を含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項9】
成分(D)が、ジグリセリンとポリプロピレングリコールとの縮合物である請求項8記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項10】
成分(D)において、ポリプロピレングリコールの付加モル数が9〜14モルである請求項8又は9記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項11】
成分(D)を0.5質量%以上5質量%以下含有する請求項8〜10のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項12】
成分(D)を1質量%以上3質量%以下含有する請求項8〜11のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項13】
成分(A)と成分(D)の質量比((D)/(A))が、0.1以上1以下である請求項8〜12のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項14】
成分(A)と成分(D)の質量比((D)/(A))が、0.2以上0.6以下である請求項8〜13のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項15】
更に、成分(E)エタノールを含有する請求項1〜14のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項16】
成分(E)を1質量%以上5質量%以下含有する請求項15記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項17】
更に、成分(D)以外のポリオールを含有する請求項1〜16のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項18】
次の成分(A)〜(D):
(A)ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
(B)N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートジエチルサルフェイト/N,N−ジメチルアクリルアミド/ポリエチレングリコールジメタアクリレート共重合体、
(C)水
(D)ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル
を含有し、
成分(A)を4質量%以上7.5質量%以下、成分(C)を75質量%以上96質量%以下含有し、
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))が、0.02以上0.03以下であり、成分(A)と成分(D)の質量比((D)/(A))が、0.2以上0.6以下である皮膚洗浄剤組成物。
【請求項19】
織布又は不織布、コットンから選ばれるシート材に、請求項1〜18のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を含浸させ、当該シート材で拭き取ることにより、皮膚を洗浄する洗浄方法。
【請求項20】
不織布が、コットン又はセルロース繊維を含むものである請求項19記載の洗浄方法。
【請求項21】
不織布が、セルロース繊維を70質量%以上含むものである請求項20記載の洗浄方法。
【請求項22】
織布、不織布及びコットンから選ばれるシート材に、請求項1〜18のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物を含浸させ、当該シート材でメイク汚れを拭き取る洗浄方法。

【公開番号】特開2013−53148(P2013−53148A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188829(P2012−188829)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】