説明

皮膚洗浄料

【課題】本発明は、泡立ちが持続し、洗浄性に優れ、洗い上がった後のつっぱり感のない弱酸性皮膚洗浄料を提供する。
【解決手段】両性界面活性剤を主成分として含み、更に脂肪酸塩と多価アルコールを含んで成る、弱酸性皮膚洗浄料である。本発明の弱酸性皮膚洗浄料は、洗浄性に優れ、主成分である両性界面活性剤の泡立ちが洗浄を続けても持続するため、洗浄に要する界面活性剤の量が少なくて済む他、泡くずれにより洗浄料が流れ落ちることがない。加えて、pHが皮膚に近い弱酸性であるため、皮膚への刺激性が低く、更に洗い上がった後のつっぱり感の比較においても優れるという肌にやさしい特長を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱酸性皮膚洗浄料に関するものであり、更に詳しくは、泡立ちが持続し、洗浄性に優れ、洗い上がった後のつっぱり感のない弱酸性皮膚洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚洗浄料において、脂肪酸石鹸(アルカリ性)が、起泡力および洗浄力等に優れることから多用されているが、これらは一方で、皮膚への刺激性や、洗浄後の肌のつっぱり感といった問題を有している。これは、人の肌が本来弱酸性であるため、これらアルカリ性の石鹸で洗うと、肌のpHが一時的にアルカリ性に傾き、洗浄後肌が弱酸性に戻るまでに一定の時間がかかるため肌に対して負担が大きい事や、洗浄による過度の脱脂によるためである。
このような問題点を解決するために、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸を特定比率で配合することにより、皮膚刺激性を低減した皮膚洗浄料(特許文献1)、高級脂肪酸塩にアミドエーテルサルフェート型陰イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型界面活性剤及び非イオン性高分子を配合することにより、泡立ち性の向上および皮膚刺激性を低減した洗浄剤組成物(特許文献2)、陽イオン性高分子及びポリエチレングリコールを添加することにより、泡立ち性等を改善し、洗浄後のなめらかさを向上した液体セッケン組成物(特許文献3)などが提案されているが、脂肪酸石鹸特有の問題をある程度解決しても、逆にすすぎ後のぬるつきやベタつきなどの新たな問題を生じるなど、全体として諸問題の解決には至っておらず、未だ満足しうるものではない。
また、アミノ酸系界面活性剤を主成分とする弱酸性洗浄料が脂肪酸石鹸のアルカリ性に基づく欠点を解消すべく開発されているが、この様な洗浄料は、脂肪酸石鹸と比較して、泡立ち、泡持ちなどの面で劣るものであり、またぬるぬる感が残って洗い流しにくいものである。アルカリ性の脂肪酸石鹸は、酸性条件下において難溶であるという性質を有しており、弱酸性洗浄料において、脂肪酸石鹸の長所を同時に取り入れることは、技術上大変困難であり、実現に至っていない。
さらに、両性界面活性剤を主成分とする場合には、泡立ちは比較的よいものの洗浄力が弱いという問題がある。
【0003】
そもそも、従来の洗浄料は、ファンデーション、口紅、皮膚から浮き上がった皮脂等の汚れを界面活性剤が取り囲んでミセルを形成することにより洗浄効果を発揮すると考えられているが、この時、当初泡立てられた界面活性剤は、これらの汚れを取り込んでミセルを形成するにつれて、泡の形態ではいられなくなる。即ち、界面活性剤の泡が、ファンデーション、口紅、皮脂等の汚れを取り込むにつれて消失していく。このため、汚れを取り込めば取り込む程泡が消失するので、更に洗浄を続けるには、追加的に洗浄料をとって泡立てることが必要になり、結果として、多量の界面活性剤を使用することとなる。また、泡が消失するとその結果液状となって流れ出すため、特に化粧料のクレンジングの際などは、立った姿勢を維持できず、コットンなどに含浸させて使用するなど、使用面においても制約が出るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−76514号
【特許文献2】特開平10−158686号
【特許文献3】特開平2−142900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、泡立ちが持続し、洗浄性に優れ、洗い上がった後のつっぱり感のない弱酸性皮膚洗浄料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、両性界面活性剤を主成分として、酸性条件下、脂肪酸塩及び多価アルコールを配合すれば、洗浄を続けても泡立ちが持続し、洗浄性にも優れ、かつ、洗い挙がった後のつっぱり感もない皮膚洗浄料を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)両性界面活性剤を主成分として含み、更に脂肪酸塩と多価アルコールを含んで成る、弱酸性皮膚洗浄料、
(2)脂肪酸塩の量が洗浄料全体に対して0.05重量〜3重量%である、上記(1)の弱酸性皮膚洗浄料、
(3)脂肪酸塩の量が洗浄料全体に対して0.1重量〜0.5重量%である、上記(1)の弱酸性皮膚洗浄料、
(4)両性界面活性剤の量が洗浄料全体に対して3重量%〜30重量%である、上記(1)〜(3)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(5)両性界面活性剤の量が洗浄料全体に対して3重量%〜10重量%である、上記(1)〜(3)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(6)多価アルコールの量が洗浄料全体に対して2重量%〜15重量%である、上記(1)〜(5)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(7)多価アルコールの量が洗浄料全体に対して3重量%〜8重量%である、上記(1)〜(5)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(8)脂肪酸塩が脂肪酸アルカリ金属塩である、上記(1)〜(7)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(9)両性界面活性剤が、ベタイン型両性界面活性剤、アシルグルタミン酸型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤、イセチオン酸型両性界面活性剤、メチルタウリン型両性界面活性剤及びサルコシン酸型両性界面活性剤からなる群から選ばれる1又は2以上のものである、上記(1)〜(8)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(10)多価アルコールが、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソペンチルジオール、グリセリン及びキシリトールからなる群から選ばれる1又は2以上のものである、上記(1)〜(9)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(11)pHが5.0〜7.0未満の範囲である、上記(1)〜(10)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(12)pHが5.5〜6.5の範囲である、上記(1)〜(10)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(13)有機酸を含む、上記(1)〜(12)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(14)有機酸がクエン酸又は乳酸である、上記(13)の弱酸性皮膚洗浄料、
(15)洗顔料として使用する、上記(1)〜(14)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(16)泡立て器に充填して使用する、上記(1)〜(15)のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料、
(17)泡立て器がポンプフォーマーである、上記(16)の弱酸性皮膚洗浄料、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弱酸性皮膚洗浄料は、洗浄性に優れることに加え、主成分である両性界面活性剤の泡立ちが洗浄を続けても持続するため、洗浄に要する界面活性剤の量が少なくて済む他、泡くずれにより洗浄料が流れ落ちることがないため、特に化粧料のクレンジングの際などは、立った姿勢、仰向けの姿勢など自由な姿勢を維持できるという特長を有する。
加えて、本発明の弱酸性皮膚洗浄料は、pHが皮膚に近い弱酸性であるため皮膚への刺激性が低く、更に洗い上がった後のつっぱり感の比較においても優れるという肌にやさしい特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は 被験者の手の甲にファンデーションとマスカラを塗った状態を示した図面代用写真である。
【図2】図2は ファンデーションとマスカラを塗った被験者の手の甲に、1プッシュの泡(約0.8g)をとった状態を示した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る両性界面活性剤としては、通常の皮膚用洗浄料に用いることができるものであれば、特に制限はないが、例えば、ベタイン型、アシルグルタミン酸型、アミンオキシド型、イセチオン酸型、メチルタウリン型、サルコシン酸型など種々のものを用いることができる。
【0011】
ベタイン型両性界面活性剤としては、アミドプロピルベタイン型のもの、アミノ酢酸ベタイン型のもの、スルフォベタイン型のもの、イミダゾリニウムベタイン型のもの、アルキルベタイン型のものなどを挙げることができる。より具体的には、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(表示成分名称「コカミドプロピルベタイン」)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(表示成分名称「ラウラミドプロピルベタイン」)、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン(表示成分名称「パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン」)、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン等のアミドプロピルベタイン型のもの;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型のもの;N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸塩、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩等のスルフォベタイン型のもの;2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(表示成分名称「ココアンホ酢酸Na」)、N−ラウロイル−N‘−カルボキシメチル−N‘−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(表示成分名称「ラウロアンホ酢酸Na」)、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N‘−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(表示成分名称「ココアンホプロピオン酸Na」)、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン型のもの;ヤシ油アルキルベタイン(表示成分名称「ココベタイン」)、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン型のもの等を例示することができる。
【0012】
また、アシルグルタミン酸型両性界面活性剤の例としては、N−ココイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムなどを、アミンオキシド型の例としては、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド(表示成分名称「ココアミンオキシド」)、アルキルジメチルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシドを、イセチオン酸型の例としては、ココイルイセチオン酸ナトリウムを、メチルタウリン型の例としては、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウムを、サルコシン酸型の例としては、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸トリエタノールアミン塩、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを挙げることができる。これらのうち、ベタイン型のもの及びアミンオキシド型のものが好ましい。
ベタイン型のものとしては、好ましくは、アミドプロピルベタイン型のもの、イミダゾリニウムベタイン型のもの、及びアルキルベタイン型のものが挙げられ、さらに好ましくは、アミドプロピルベタイン型のものが挙げられる。
【0013】
アミドプロピルベタイン型のものとして、好ましくはヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(表示名称「コカミドプロピルベタイン」)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(表示成分名称「ラウラミドプロピルベタイン」)、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン(表示成分名称「パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン」)などが挙げられ、イミダゾリニウムベタイン型のものとして、このましくは、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(表示成分名称「ココアンホ酢酸Na」)、N−ラウロイル−N‘−カルボキシメチル−N‘−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(表示成分名称「ラウロアンホ酢酸Na」)、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N‘−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(表示成分名称「ココアンホプロピオン酸Na」などが挙げられ、アルキルベタイン型のものとして、好ましくはヤシ油アルキルベタイン(表示成分名称「ココベタイン」)などが挙げられる。
アミンオキシド型のものとして、好ましくはヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド(表示成分「ココアミンオキシド」)などが挙げられる。
【0014】
両性界面活性剤は、上記したもの1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、これら両性界面活性剤は、商業的にも容易に入手しうるものである。その例としては、川研ファインケミカル株式会社:ソフタゾリン(登録商標)CH(表示成分名称「ココアンホ酢酸Na」)、東邦化学工業株式会社:オバゾリン(登録商標)BC(表示成分名称「ココベタイン」)、クラリアントジャパン株式会社:Genagen(ゲナゲン)CAB818J(表示成分名称「コカミドプロピルベタイン」)などある。
本発明に係る両性界面活性剤の配合量は、特に制限されるものではないが、所定の量を超えるとより一層の洗浄力向上が期待できないので、経済的に不利であると共に、環境への配慮の点でも好ましくない。一方、所定の量を下回ると、十分な洗浄力を発揮することができない。これら所定の量は、洗浄料を構成する各成分の配合比率により変化するが、通常、両性界面活性剤の配合量は、皮膚洗浄料全量に対して、約3重量%〜約30重量%の範囲であり、好ましくは約3重量%〜約10重量%、更に好ましくは、約5重量%〜約8重量%である。
本発明の皮膚洗浄料において、主成分とは、洗浄料としての主たる成分であることを意味する。したがって、本発明の皮膚洗浄料は、両性界面活性剤が洗浄料の主たる成分として配合されているものであるが、このことは、他の界面活性剤が一切配合されていないことを意味するものではなく、本発明の効果を妨げない限り、比較的少量乃至微量の他の界面活性剤成分が含まれ得るものである。
【0015】
本発明に係る脂肪酸塩に用いられる脂肪酸としては、通常、皮膚洗浄料に配合され得るものであれば特に限定されないが、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜22の脂肪酸、天然油脂(例えば、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、綿実油、アプリコット核油、アボガド油、オリーブ油、ククイナッツ油、くるみ油、グレープシードオイル、コーン油、ココアバター、ココナッツ油、ごま油、小麦胚芽油、米ぬか油、シアバター、スイートアモーンド油、ショートニング、大豆油、月見草油、椿油、菜種油、パーム油、パーム核油、ピーナツ油、ひまし油、ひまわり油、ヘーゼルナッツ油、サフラワー油、マカデミアナッツ油、マンゴバター、みつろう、綿実油等の植物性油脂若しくは魚油、馬油、牛脂等の動物性油脂)由来の脂肪酸などを例示することができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。炭素数12〜22の脂肪酸のうち、好ましくは炭素数12〜18の脂肪酸が挙げられ、更に好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、さらにより好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸が挙げられる。天然油脂のうち、好ましくは植物性油脂が挙げられ、特に、ヤシ油が好ましく、かかる油脂由来の脂肪酸として、特に、ヤシ油脂肪酸が挙げられる。
【0016】
脂肪酸塩の塩としては、脂肪酸をアルカリ剤でケン化又は中和した、アルカリ金属塩や有機アミン塩等を例示することができる。用いられるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の有機アルカリが挙げられる。脂肪酸塩の塩としてはアルカリ金属塩が好ましく、好ましいアルカリ剤としては、無機アルカリが挙げられ、特に、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムなどが好ましい。
【0017】
これら脂肪酸塩のうち、好ましい例として、天然油脂と無機アルカリとを用いて、けん化塩析法又は炊き込み法により製造した脂肪酸塩を挙げることができ、更に好ましくは、例えばカリ石鹸素地などが挙げられる。カリ石鹸素地は、天然油脂に水酸化カリウム(苛性カリ)を加えて加熱する炊き込み法により製造した脂肪酸石鹸の一種であり、主たる成分として、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウムなどを含有すると共に、かかる製法上必然的に由来する未反応の油脂、分解して生成されるグリセリンなどを含むものである。
脂肪酸塩は、上記したもの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
本発明の皮膚洗浄料は、弱酸性であるため、加えられた脂肪酸塩は、当該洗浄料中で脂肪酸となり、洗浄力を補助する油剤として機能する。したがって、脂肪酸塩を所定量以上を加えると、洗浄料中で油状物として分離し、洗浄料が均一にならない。かかる所定の量は、洗浄料の各成分の配合量により変化する。なお、脂肪酸塩は、通常、アルカリ性の洗浄料においては、アニオン性界面活性剤として機能するが、本発明においては、上記のとおり、その機能が異なるものである。
本発明の皮膚洗浄料への脂肪酸塩の配合量は、本発明の皮膚洗浄料の効果を発揮できかつ酸性条件下生成する脂肪酸が油状物として洗浄料中で分離しない範囲であれば制限はない。つまり、脂肪酸塩の量が所定の量より少ないと、皮膚洗浄料の洗浄力が弱くなる一方、所定の量より多いと酸性条件下生成する脂肪酸が油状物として分離し均一な洗浄料がえられない。これら所定の量は、洗浄料を構成する各成分の配合比率により変化するが、通常、脂肪酸塩の配合量は、洗浄料全体に対して約0.05重量%〜約3重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2重量%、更に好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲である。
本発明の皮膚洗浄料に脂肪酸塩を配合する場合、脂肪酸とアルカリ剤とから予め脂肪酸塩を調製した後に配合するのが通常であるが、脂肪酸とアルカリ剤をそれぞれ配合して洗浄料を調製することもできる。
【0019】
本発明に係る多価アルコールとしては、特に限定なくいずれのものも使用することができるが、好ましくは、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソペンチルジオール等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコール、キシリトール等のそれ以上の価数のアルコールが挙げられる。これらのうち、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソペンチルジオールが好ましい。
多価アルコールは、上記したもの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
多価アルコールは、脂肪酸塩から生じる脂肪酸を洗浄料に溶かしこむための溶剤として機能していると考えられる。したがって、所定の量より少ない場合には、脂肪酸が油状物として分離し洗浄料が均一とならない。一方、所定の量より多いと、両性界面活性剤の泡の持続性が低下する。これら所定の量は、洗浄料中の各成分の配合量により変化するが、本発明の皮膚洗浄料への多価アルコールの配合量としては、通常、洗浄料全体に対して、約2重量%〜約15重量%の範囲であり、好ましくは、約3重量%〜約10重量%の範囲であり、更に好ましいのは約5重量%〜約9重量%である。
【0020】
本発明の皮膚洗浄料は、pHが弱酸性を示す洗浄料であり、この場合の弱酸性とは、概ねpHが約5〜7未満の範囲にあることをいう。好ましいpHの範囲は、約5.5〜約6.5の範囲であり、更に好ましくは約5.7〜約6.3の範囲である。本発明の皮膚洗浄料は、弱酸性とするために、必要に応じ、有機酸を配合することができる。かかる有機酸の配合量は、洗浄料の組成に応じて適宜決定され、本発明の皮膚洗浄料が目的とするpHに調節される。かかる有機酸としては、クエン酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、フィチン酸、リンゴ酸、酢酸、エチドロン酸等が挙げられ、このうち、クエン酸、乳酸が好ましい。有機酸は、上記したもの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
本発明の皮膚洗浄料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常皮膚用洗浄料に用いられる成分、例えば、動植物由来油脂、シリコーン類、低級アルコール、動植物由来抽出エキス、保湿剤、清涼剤、紫外線吸収剤、消炎剤、金属封鎖剤、ビタミン類、酸化防止剤、防腐・殺菌剤、pH調整剤、抗酸化剤、着色剤、各種香料、各種溶剤などを適宜、その用途、目的などに応じて配合することができる。
【0022】
本発明においては、洗浄料の全量が100重量%となるように、残部に水が用いられる。かかる水の種類には限定がなく、一般に、精製水を用いることができる。
本発明の皮膚洗浄料は、液状の形態(液体)、好ましくは水溶液の形態のものであり、常法により製造することができる。また、更に、常法により、ジェル状、クリーム状などの種々の剤型にすることもできる。
本発明の皮膚洗浄料の用途としては、例えば、洗顔料の他、ボディーソープ、ハンドソープ、ボディーシャンプーなどのその他の皮膚用洗浄料としての用途が挙げられる。なかでも、本発明の皮膚洗浄料は、泡の持続性や洗浄力に優れるとともに、洗いあがった後のつっぱり感の比較においても優れることから、洗顔料として好ましく用いることができる。
本発明の皮膚洗浄料は、泡立て器に充填して使用することができる。かかる泡立て器としては、ポンプフォーマー、スポンジ、泡立てネット、海綿(スポンジ)、不織布などが挙げられる。
【0023】
本発明の皮膚洗浄料は、従来のものには見られない泡の持続性及び優れた洗浄性を示し、かつ洗い上がった後のつっぱり感も少ないが、そのしくみについては、以下の(a)〜(e)の如きに考えられる。即ち、
(a)本発明の皮膚洗浄料によれば、主成分たる両性界面活性剤は、皮膚から剥がれた汚れを取り込んでミセルを形成するという役割よりも、むしろ当該汚れを分散させる媒体としての役割をより果たしている。
(b)この場合、弱酸性条件下脂肪酸塩から生じた脂肪酸が、汚れが皮膚から剥がれること、及び、皮膚から剥がれた汚れが両性界面活性剤の泡の中を分散することを助けている。
(c)したがって、両性界面活性剤の泡がいつまでも長持ちする。
(d)両性界面活性剤は、そのカチオン部が肌に付着して膜を形成することによって、汚れの再付着防止効果を果たしている。
(e)弱酸性条件下脂肪酸塩から生じた脂肪酸は、皮膚洗浄料を洗い流す際、脂肪酸カリウムや脂肪酸ナトリウムなどの塩となる。このため、簡単に洗い流せるので、従来の油分を配合したオイルクレンジング剤とは異なり、使用後ぬるぬる感などはなく、二度洗いする必要もない。
【0024】
本明細書において、%の表示がある場合、特に指定がなければ重量%(wt%)を表すものとする。
以下、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
以下の実施例及び比較例において、各処方(全体で100%)は、それぞれ示された各成分を、全量が200gになるようにビーカーにとり、これを過熱しながら攪拌して良く溶かし、室温にまで放置することにより調製した。
【0026】
実施例1
両性界面活性剤+脂肪酸塩(pH:5.8)
コカミドプロピルベタイン 7.2%
(Clariant Internatinal Ltd.社製、
Genagen(ゲナゲン)CAB818J。
比較例において同じ。)
1,3−ブチレングリコール(BG) 6.0%
クエン酸 0.08%
カリ石鹸素地 0.33%
(ミヨシ油脂株式会社製、
コスメチックソープKS100。
他の実施例、比較例において同じ。)
メチルパラベン 0.3%
精製水 残部
【0027】
実施例2
両性界面活性剤+脂肪酸塩(pH:5.8)
コカミドプロピルベタイン 6.0%
(Evonik Industries社製、
Tego Betain(テゴベタイン)L7。)
1,3−ブチレングリコール(BG) 3.0%
カリ石鹸素地 0.33%
メチルパラベン 0.3%
精製水 残部
【0028】
比較例1
両性界面活性剤+脂肪酸塩(PH:9.5)
コカミドプロピルベタイン 7.2%
1,3−ブチレングリコール(BG) 6.0%
アルギニン 0.05%
カリ石鹸素地 0.33%
メチルパラベン 0.3%
精製水 残部
【0029】
比較例2
両性界面活性剤+ノニオン界面活性剤(pH:6.4)
コカミドプロピルベタイン 7.2%
1,3−ブチレングリコール(BG) 6.0%
オレイン酸ポリグリセリル−10 0.3%
(太陽化学株式会社製、サンソフトQ−17S。
他の比較例において同じ。)
メチルパラベン 0.3%
精製水 残部
【0030】
比較例3
両性界面活性剤+脂肪酸塩+ノニオン界面活性剤(pH:9.5)
コカミドプロピルベタイン 7.2%
1,3−ブチレングリコール(BG) 6.0%
アルギニン 0.05%
カリ石鹸素地 0.33%
オレイン酸ポリグリセリル−10 0.3%
メチルパラベン 0.3%
精製水 残部
【0031】
実験例1(安定性)
実施例1及び比較例1〜3の各皮膚洗浄料を、冷蔵庫(4℃)に入れ、それぞれの温度が4℃になるまで十分放置した。その後、各皮膚洗浄料を確認したがいずれも、その性状に変化はなかった。
【0032】
実験例2(泡の持続性/洗浄後のつっぱり感)
予め手洗いした被験者(5名)の手の甲に、マスカラ(「ファシオ(登録商標) ハイパーステイマスカラスポーツ ディープトリック」、株式会社コーセー製)を幅約5mm、長さ約25mmで塗り、マスカラに重ならないようにファンデーション(「ラバンセ(登録商標) リキッドファンデーション」、株式会社ドゥ・ベスト製)を直径約70mmの丸型に塗り広げ、(図1)、当該塗った部分を、ドライヤーで1分間乾燥した。実施例1及び比較例1〜3の各皮膚洗浄料を、それぞれポンプフォーマーに充填し、1プッシュの泡(約0.8g)をそれぞれの手の甲に取り(図2)、かかる泡で包むようにして優しく洗い、泡の持続性を、以下の基準で評価した。その際、泡の持続時間は、5人の平均値を計算しそれを使用した。
◎:3分以上泡が持続した
○:2分半以上3分未満で泡が消失した。
△:2分以上2分半未満で泡が消失した。
×:2分未満で泡が消失した。
次に、泡が消失した時点で、水で洗い流し、洗浄後のつっぱり感を以下の基準で評価した。
◎:全員がつっぱらないと感じた
○:3〜4人がつっぱらないと感じた
△:1〜2人がつっぱらないと感じた
×:つっぱらないと感じた人が0人
【0033】
実験例3(洗浄性)
被験者(1名)の手の甲に、実験例2と同様にファンデーションとマスカラを塗り、その後についても実験例2と同様に操作して洗浄を行い、泡が消失した時点を終了として、水で洗い流した。洗浄性について、以下の基準で評価した。
◎:ファンデーションとマスカラのいずれもが落ちた
△:ファンデーションは落ちたが、マスカラが一部残った
×:ファンデーションもマスカラも落ちなかった
【0034】
(実験結果)
実験例2及び実験例3の結果を下表に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
以上の結果より、本発明の皮膚洗浄料(実施例1)は、泡の持続性、洗浄性、洗浄後のつっぱり感のいずれにおいても優れた特性を示した。一方、比較例1及び比較例3からは、pHがアルカリ性では当該優れた特性が現れず、比較例2及び比較例3からは、脂肪酸塩をノニオン性界面活性剤に替えるあるいは脂肪酸塩に更にノニオン性界面活性剤を加えると、やはり当該優れた特性が現れないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の皮膚洗浄料は、泡立ちが持続し、洗浄性に優れ、洗い上がった後のつっぱり感もないという優れた特性を有するため、皮膚の洗浄料、とりわけ洗顔料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性界面活性剤を主成分として含み、更に脂肪酸塩と多価アルコールを含んで成る、弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項2】
脂肪酸塩の量が洗浄料全体に対して0.05重量〜3重量%である、請求項1の弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項3】
脂肪酸塩の量が洗浄料全体に対して0.1重量〜0.5重量%である、請求項1の弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項4】
両性界面活性剤の量が洗浄料全体に対して3重量%〜30重量%である、請求項1〜3のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項5】
両性界面活性剤の量が洗浄料全体に対して3重量%〜10重量%である、請求項1〜3のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項6】
多価アルコールの量が洗浄料全体に対して2重量%〜15重量%である、請求項1〜5のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項7】
多価アルコールの量が洗浄料全体に対して3重量%〜8重量%である、請求項1〜5のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項8】
脂肪酸塩が脂肪酸アルカリ金属塩である、請求項1〜7のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項9】
両性界面活性剤が、ベタイン型両性界面活性剤、アシルグルタミン酸型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤、イセチオン酸型両性界面活性剤、メチルタウリン型両性界面活性剤及びサルコシン酸型両性界面活性剤からなる群から選ばれる1又は2以上のものである、請求項1〜8のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項10】
多価アルコールが、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソペンチルジオール、グリセリン及びキシリトールからなる群から選ばれる1又は2以上のものである、請求項1〜9のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項11】
pHが5.0〜7.0未満の範囲である、請求項1〜10のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項12】
pHが5.5〜6.5の範囲である、請求項1〜10のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項13】
有機酸を含む、請求項1〜12のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項14】
有機酸がクエン酸又は乳酸である、請求項13の弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項15】
洗顔料として使用する、請求項1〜14のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項16】
泡立て器に充填して使用する、請求項1〜15のいずれかの弱酸性皮膚洗浄料。
【請求項17】
泡立て器がポンプフォーマーである、請求項16の弱酸性皮膚洗浄料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−168553(P2011−168553A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35181(P2010−35181)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(510047258)株式会社コスメキュア (1)
【出願人】(509347930)株式会社マーヴェラス・クィーン (1)
【Fターム(参考)】