説明

皮膚用乳化組成物

【課題】電解質を配合した乳化組成物において、保存安定性に優れるとともに、塗布時の使用感にも優れた皮膚用乳化組成物の提供。
【解決手段】(A)電解質、(B)非イオン性界面活性剤、(C)ローカストビーンガムおよび/又はキサンタンガム、並びに、(D)デンプンおよび/又はその誘導体を含有してなる皮膚用乳化組成物とする。デンプン誘導体としては、アルケニルコハク酸デンプンの金属塩を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物に電解質を高配合すると、電解質の塩の影響により、乳化構造が崩壊して経時的な減粘が生じるといった問題があるため、電解質高配合乳化系を安定化させることは非常に困難である。
【0003】
従来より、電解質を配合した乳化系の安定性を向上させるために、種々の増粘剤を配合する試みがなされている。具体的には、アスコルビン酸の無機酸エステル、キサンタンガムおよびヒアルロン酸ナトリウムを含有する皮膚化粧料(例えば、特許文献1を参照)、ショ糖脂肪酸エステル、油剤、電解質、水およびアクリル酸系ポリマーを含有する水中油型乳化化粧料(例えば、特許文献2を参照)、アスコルビン酸、高級アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸ショ糖エステルおよび特定の増粘剤の一種または二種以上を含有する乳化型皮膚外用剤(例えば、特許文献3を参照)、特定のアスコルビン酸塩、特定の直鎖飽和高級アルコールおよびキサンタンガムを含有する水中油型乳化組成物(例えば、特許文献4を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これら試みに拠って、ある程度安定性を付与することはできるものの、電解質が高配合されている場合には、凝集を引き起こし易く、充分な増粘効果が得られ難いといった問題がある。また、電解質の塩の影響を低減するために、これら増粘剤を高配合とすると、塗布時の延展性に劣り、ムラ付きするために、べたつき感などの使用感に劣るといった問題がある。また、延展時にダマやカスが発生するといった問題もある。
【0005】
そこで、電解質高配合乳化系の安定化に適していると言われる非イオン性多糖系増粘剤を用いた試みもなされている。具体的には、ビタミンC誘導体、ガム質およびセルロース系高分子を含有する化粧料(例えば、特許文献5を参照)、化粧品用活性剤、電解質およびセチルヒドロキシエチルセルロースを含有するゲル化局所用組成物(例えば、特許文献6を参照)、キサンタンガム又はカッパカラギーナン、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸若しくはその塩又はヒドロキシエチルセルロース、多価金属塩を含有する皮膚外用剤(例えば、特許文献7を参照)、メチルセルロース、乳化剤、液状油剤および電解質を含有する水中油型気泡含有化粧料(例えば、特許文献8を参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、これら試みに拠って、ある程度安定性を高めることはできるものの、非イオン性多糖系増粘剤は、それ自体の増粘効果が弱く、高配合しなければ充分な安定性を付与することができないといった問題がある。また、高配合せざるを得ないことから、べたつくなど、使用感に悪影響を及ぼすといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−345714号公報
【特許文献2】特開2008−106043号公報
【特許文献3】特開2006−16327号公報
【特許文献4】特開2009−67723号公報
【特許文献5】特開平4−77409号公報
【特許文献6】特開平9−202708号公報
【特許文献7】特開平7−233045号公報
【特許文献8】特開2006−273752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、電解質を配合した乳化組成物において、保存安定性に優れるとともに、塗布時の使用感にも優れた皮膚用乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕(A)電解質、(B)非イオン性界面活性剤、(C)ローカストビーンガムおよび/又はキサンタンガム、並びに、(D)デンプンおよび/又はその誘導体を含有してなる皮膚用乳化組成物、並びに
〔2〕(D)成分のデンプン誘導体が、アルケニルコハク酸デンプンの金属塩である前記〔1〕に記載の皮膚用乳化組成物
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚用乳化組成物は、電解質による組成物の経時的な減粘を抑え、保存安定性に格段に優れた効果を奏する。また、塗布時のべたつき感がなく、延展性に優れムラ付きしないことから、延展時にダマやカスが生じ難く、優れた使用感を有するといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚用乳化組成物は、(A)電解質、(B)非イオン性界面活性剤、(C)ローカストビーンガムおよび/又はキサンタンガム、並びに、(D)デンプンおよび/又はその誘導体を含有する。
【0012】
(A)成分の電解質は、通常、美白効果、保湿効果、消炎効果、収斂効果、紫外線吸収効果などを期待して配合されるものである。本発明においては、通常、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定されず、目的に応じて適宜配合すればよい。
【0013】
用いられる(A)成分のとしては、例えば、有機酸およびその塩、無機酸およびその塩が挙げられる。具体的には、例えば、無機カルシウム塩、無機カリウム塩、無機ナトリウム塩、無機マグネシウム塩などの無機塩;乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウムなどの乳酸塩;コンドロイチン硫酸ナトリウム、ステアロイルコンドロイチン硫酸ナトリウムなどのコンドロイチン硫酸塩;デルマタン硫酸ナトリウムなどのデルマタン硫酸塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどのリン酸塩;グリチルリチン酸ジカリウム塩などのグリチルリチン酸塩;アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウムなどのアスコルビン酸塩;ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどのピロリドンカルボン酸塩;グリシン、トレオニン、アラニン、チロシン、バリン、ロイシン、アルギニン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンなどのアミノ酸およびこれらの誘導体;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびそのナトリウム塩などの紫外線吸収剤などを例示することができる。これら(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0014】
(A)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、望む効果を付与する観点から、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。また、保存安定性の観点から、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。
【0015】
(B)成分の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の他、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。これら(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0016】
グリセリン肪酸エステルとしては、本発明においては、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれをも意味し、具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを例示することができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどを例示することができる。
【0017】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。
【0018】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルを例示することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどを例示することができる。
【0019】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどを例示することができる。
【0020】
上記した(B)成分のうち、保存安定性の観点から、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤を少なくとも1種用いるのが好ましい。
【0021】
(B)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性の観点から、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。また、塗布時の使用感の観点から、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。
【0022】
(C)成分のローカストビーンガムとは、ガラクトースとマンノースの繰り返し単位からなる鎖状多糖類である。また、キサンタンガムとは、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる鎖状多糖類である。本発明においては、ローカストビーンガムおよび/又はキサンタンガムを配合することで、電解質による化粧料の減粘を抑え、優れた保存安定性を付与することができる。
【0023】
尚、(C)成分は、市販品をそのまま用いることもできる。ローカストビーンガムの市販品としては、例えば、イナゲル ローカストビーンガムCS(商品名,伊那食品工業社製)、メイプロ−LBG フレール M−175、メイプロ−LBG フレール M−200、メイプロ−LBG ラック(商品名,Danisco社製)、ゲニューガム RL−200−J(商品名,CP Kelco社製)などを例示することができる。また、キサンタンガムの市販品としては、例えば、エコーガムT(商品名,大日本住友製薬社製)、ノムコートZZ(商品名,日清オイリオグループ社製)などを例示することができる。
【0024】
(C)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性の観点から、組成物中、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上である。また、塗布時の使用感の観点から、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%である。
【0025】
(D)成分のデンプンとは、グルコース分子がグリコシド結合によって重合した鎖状多糖類であり、植物の根、茎、種子、果実から抽出されるものである。原料となる植物としては、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、サツマイモ、米、キャッサバ、クズ、カタクリ、緑豆、サゴヤシ、ワラビなどを例示することができるが、本発明においては、何れの植物由来であっても特に限定されない。
【0026】
また、デンプン誘導体としては、例えば、グリセリルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、ヒドロキシアルキルリン酸の金属塩、アルケニルコハク酸デンプンの金属塩などが挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などの2価又は3価の金属塩を好適に用いることができる。
【0027】
より具体的なデンプン誘導体としては、例えば、ヒドロキシプロピルデンプンなどのヒドロキシアルキルデンプン;ヒドロキシプロピルリン酸ナトリウムなどのヒドロキシアルキルリン酸の金属塩;オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムなどのアルケニルコハク酸デンプンの金属塩などを例示することができる。
【0028】
これら(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。好適な(D)成分としては、電解質による化粧料の減粘を抑え、優れた保存安定性を付与する観点から、デンプン、アルケニルコハク酸デンプンの金属塩を用いることが好ましく、中でも、デンプン、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムを用いることがより好ましい。
【0029】
尚、(D)成分は、市販品をそのまま用いることもできる。デンプンの市販品としては、例えば、JPバレイショデンプン(商品名,日澱化学社製)、JPトウモロコシデンプン(商品名,日澱化学社製)などを例示することができる。また、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムの市販品としては、例えば、ドライフローPC(商品名,日本エヌエスシー社製)、オクティエ(商品名,日澱化学社製)などを例示することができる。
【0030】
(D)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、保存安定性の観点から、組成物中、0.05質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。また、塗布時の使用感の観点から、7質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、好ましくは0.05〜7質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0031】
本発明においては、電解質による化粧料の減粘を抑え、優れた保存安定性を付与するだけでなく、塗布時の延展性を良好にし、延展時のダマやカスの発生を抑え、べたつき感のない優れた使用感を有する皮膚用乳化組成物とすることができる観点から、上記した(C)成分と(D)成分の夫々の含有量が、下記質量含有比、
(C):(D)=1:1〜1:60
を満たす範囲内で調製されることが好ましい。
【0032】
また、本発明の皮膚用乳化組成物には、塗布時の使用感を更に高める観点から、多価アルコールを含有させることができる。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0033】
多価アルコールの含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、使用感を高める観点から、組成物中、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上である。また、べたつきの観点から、40質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。これらの観点から、多価アルコールの含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜25質量%である。
【0034】
本発明の皮膚用乳化組成物には、乳化系とするために油剤が配合される。用いられる油剤は特に限定されないが、例えば、高級アルコール、脂肪酸、油脂、炭化水素油、エステル油、シリコーン油などを例示することができる。これら油剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0035】
具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸;ヤシ油、パーム油、水素添加パーム油、アボカド油、ゴマ油、オリーブ油、ククイナッツ油、ブドウ粒子油、サフラワー油、アーモンド油、トウモロコシ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油などの油脂;オレフィンオリゴマー、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリンなどの炭化水素油;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどのエステル油;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどのシリコーン油などを例示することができる。
【0036】
油剤の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、乳化の観点から、組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、塗布時の使用感の観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、油剤の含有量は、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0037】
本発明の皮膚用乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、低級アルコール、金属封鎖剤、防腐剤、植物抽出エキス、香料、pH調整剤などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0038】
尚、本発明の皮膚用乳化組成物は、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いた転相乳化法などにより乳化することにより製造することができる。また、混合と乳化は別々に行っても同時に行ってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0040】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1〜6および比較例1〜12の各皮膚用乳化組成物を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表1〜表3に併記する。
【0041】
(試験例1:保存安定性の評価)
各実施例および各比較例で得られた皮膚用乳化組成物を、50mL容の透明ガラス容器にそれぞれ封入し、50℃の恒温槽に夫々3週間保存したときの乳化系の状態を目視観察して以下の評価基準に従って評価した。
【0042】
<保存安定性の評価基準>
◎:製造直後と全く変化が認められない
○:僅かな減粘が認められるものの、ほとんど変化は認められない
△:明らかな減粘が認められる
×:液状へと変化している、若しくは、分離している
【0043】
(試験例2:塗布時の評価)
専門パネル20名により、各実施例および各比較例で得られた皮膚用乳化組成物を顔面へ塗布して使用試験を行い、塗布時の「べたつき感」、「延展性」および「使用感」に関し、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0044】
<べたつき感の評価基準>
◎:20名中16名以上がべたつき感がないと回答
○:20名中11〜15名がべたつき感がないと回答
△:20名中6〜10名がべたつき感がないと回答
×:20名中5名以下がべたつき感がないと回答
【0045】
<延展性の評価基準>
◎:20名中16名以上がムラ付きなく延展性に優れると回答
○:20名中11〜15名がムラ付きなく延展性に優れると回答
△:20名中6〜10名がムラ付きなく延展性に優れると回答
×:20名中5名以下がムラ付きなく延展性に優れると回答
【0046】
<使用感の評価基準>
◎:20名中16名以上が延展時にダマ又はカスが生じないと回答
○:20名中11〜15名が延展時にダマ又はカスが生じないと回答
△:20名中6〜10名が延展時にダマ又はカスが生じないと回答
×:20名中5名以下が延展時にダマ又はカスが生じないと回答
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
表1〜表3に示された結果から、各実施例で得られた皮膚用乳化組成物は、各比較例で得られた皮膚用乳化組成物と対比して、電解質である(A)成分が配合されているにもかかわらず、保存安定性に優れた効果を奏していることが分かる。また、塗布時のべたつき感がなく、延展性に優れ、ムラ付きしないことから、延展時にダマやカスが生じていないことが分かる。
【0051】
一方、本発明の(C)成分と(D)成分を併用しない、若しくは、他の増粘剤へ置き換えた各比較例の皮膚用乳化組成物では、保存安定性に劣るだけでなく、塗布時の使用感にも劣っていることが分かる。
【0052】
以下、本発明に係る皮膚用乳化組成物の処方例を示す。尚、含有量は質量%である。
【0053】
(処方例1)
デンプン 1.0
オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム 1.0
キサンタンガム 0.1
1,3−ブチレングリコール 5.0
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 2.0
1,2−ペンタンジオール 0.5
塩化マグネシウム 0.5
乳酸 1.0
ピロリン酸ナトリウム 0.01
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.01
モノステアリン酸デカグリセリル 0.7
モノステアリン酸グリセリル 1.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
流動パラフィン 5.0
エチルヘキサン酸セチル 3.0
ベヘニルアルコール 1.5
防腐剤 適 量
金属キレート剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0054】
(処方例2)
デンプン 2.0
ローカストビーンガム 0.1
キサンタンガム 0.05
1,3−ブチレングリコール 7.0
グリセリン 10.0
オクタンジオール 0.1
1,2−ペンタンジオール 0.5
オクトキシグリセリン 0.2
乳酸マグネシウム 2.0
ピロリン酸ナトリウム 0.01
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.01
モノステアリン酸デカグリセリル 0.7
モノステアリン酸グリセリル 1.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
スクワラン 5.0
メチルポリシロキサン 1.5
ベヘニルアルコール 1.0
防腐剤 適 量
金属キレート剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0055】
(処方例3)
デンプン 2.0
ローカストビーンガム 0.1
キサンタンガム 0.05
1,3−ブチレングリコール 7.0
グリセリン 10.0
オクタンジオール 0.1
1,2−ペンタンジオール 0.5
オクトキシグリセリン 0.2
アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム 3.0
モノステアリン酸デカグリセリル 0.7
モノステアリン酸グリセリル 1.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
スクワラン 5.0
メチルポリシロキサン 1.5
ベヘニルアルコール 1.0
防腐剤 適 量
金属キレート剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0056】
(処方例4)
デンプン 2.0
ローカストビーンガム 0.1
キサンタンガム 0.05
1,3−ブチレングリコール 7.0
グリセリン 10.0
オクタンジオール 0.1
1,2−ペンタンジオール 0.5
オクトキシグリセリン 0.2
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム 3.0
モノステアリン酸デカグリセリル 0.7
モノステアリン酸グリセリル 1.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
スクワラン 5.0
メチルポリシロキサン 1.5
ベヘニルアルコール 1.0
防腐剤 適 量
金属キレート剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)電解質、(B)非イオン性界面活性剤、(C)ローカストビーンガムおよび/又はキサンタンガム、並びに、(D)デンプンおよび/又はその誘導体を含有してなる皮膚用乳化組成物。
【請求項2】
(D)成分のデンプン誘導体が、アルケニルコハク酸デンプンの金属塩である請求項1に記載の皮膚用乳化組成物。

【公開番号】特開2011−201799(P2011−201799A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69404(P2010−69404)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】