説明

皮膚用組成物及びその製造方法

【課題】簡便な製造工程で、安定性と使用感に優れ、界面活性剤の含有量が少なく、かつ、セラミド類を含む油性粒子を含有する皮膚用組成物の提供。
【解決手段】水相と当該水相中に分散されている油性粒子を含有し、室温における粘度が1000〜100000mPa・sの皮膚用組成物であって、
前記油性粒子が、平均粒子径が0.1〜2mmで、かつ15〜60質量%のセラミド類を含有するものであり、皮膚用組成物中の油性粒子の含有量が0.5〜15質量%であり、
前記水相が0.1〜1.0質量%の高分子を含有するものである、皮膚用組成物。
50〜90℃に加熱した水相に当該水相の上部から溶解した油相を添加した後、又は溶解した油相に当該油相の上部から50〜90℃に加熱した水相を添加した後、水相と油相の混合物を撹拌しながら室温まで冷却して油性粒子を得る、前記皮膚用組成物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用組成物に関し、特に、水相と水相中に分散された油性粒子を含む皮膚用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層に存在する角質層は、外部からの物質の進入・皮膚内部からの水分の蒸散を抑制すると同時に、自身が水分を保持することにより皮膚の柔軟性やなめらかな外観を保つ機能を持っている。角質層を構成する角質細胞の間隙には、角質細胞間脂質と呼ばれる脂質が角質細胞のすきまを埋めるように存在している。
【0003】
この角質細胞間脂質の脂質組成の約50%はセラミド類で、その他コレステロール、コレステロールエステル、脂肪酸エステル等からなる。一般に角質細胞間脂質、特にセラミド類が減少すると、荒れ肌、乾燥肌、老化肌等の好ましくない肌状態を引き起こすことが知られている。従って、角質層機能の改善成分としてセラミド類を外用で補うことにより、機能が低下した角質層状態を改善することができる。
【0004】
しかし、セラミド類は、結晶性が高く、また融点が高いため、製剤中で安定化が難しいという問題がある。そこで、セラミド類を皮膚外用剤に安定に配合するためには、各種合成界面活性剤や多種、多量の油剤等との併用が避けられず、その結果、使用感が低下することや、製剤の性状が限定されることが避けられなかった。また、セラミド類に対して多量の乳化剤の使用が必要であり、使用感がべたつくという課題があった。
【0005】
さらに、従来のセラミド類を含む乳化物の多くは白色乳液状、白色クリーム状の外観であり、セラミド類を含有していない製品と外観上区別がつかないので、消費者から見れば外観上はいずれの差異も無かった。
【0006】
既に、油分及びその他の機能性成分、化粧品等の皮膚用組成物の中に含有させられる油性粒子、マイクロカプセル、顆粒、水中油型組成物等が提案されている。例えば、特許文献1には、液状油分の平均粒子径が0.05〜10mmの油性粒子を水相中に分散してなる、油性粒子を含有する外用組成物が開示されている。また、特許文献2に開示される水中油型皮膚用組成物は、その油性粒子にビタミンAの脂肪酸エステル、常温で液状の油分、及び融点が45〜75℃の両親媒性物質等が含有され、かつ油性粒子の平均粒子径が10〜1000μmである。
【0007】
しかしながら、前述の特許文献1及び2に記載されるマイクロカプセルはセラミド類を含有していないので、いずれもスキンケアの効果がない。また、特許文献1及び2に添加される高分子によって、使用上の問題が生じる場合もある。さらに、従来、このような油性粒子を含有する皮膚用組成物を製造するには、通常、製造工程が複雑でコストが高いという欠点がある。
【0008】
また、特許文献3には、セラミド類を含むハイドロゲル粒子の製造方法が開示されている。しかし、その粒子の製造方法は非常に煩雑な操作および特殊な設備を必要とするため、製造工程が複雑となりコストが高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第1980634号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1738724号明細書
【特許文献3】特開2002-20227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、簡便な製造工程で製造でき、安定性と使用感に優れ、界面活性剤の含有量が少なく、かつ、セラミド類を含む油性粒子を含有する皮膚用組成物を提供することである。本発明において、セラミド類を含む油性粒子は肉眼で観察できる大きさを有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定条件を満たし、セラミド類を含む油性粒子を水相に分散されることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、水相と当該水相中に分散されている油性粒子を含有し、室温における粘度が1000〜100000mPa・sの皮膚用組成物であって、
前記油性粒子が、平均粒子径が0.1〜2mmで、かつ15〜60質量%のセラミド類を含有するものであり、皮膚用組成物中の油性粒子の含有量が0.5〜15質量%であり、
前記水相が0.1〜1.0質量%の高分子を含有するものである、皮膚用組成物を提供するものである。
【0013】
また本発明は、50〜90℃に加熱した水相に当該水相の上部から溶解した油相を添加した後、又は溶解した油相に当該油相の上部から50〜90℃に加熱した水相を添加した後、水相と油相の混合物を撹拌しながら室温まで冷却して油性粒子を得る、前記の皮膚用組成物を製造する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚用組成物は、簡便な製造工程で製造することができ、安定性と使用感に優れ、界面活性剤の含有量が少なく、かつ、セラミド類を含む油性粒子を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の皮膚用組成物において、油性粒子中のセラミド類の含有量は15〜60質量%であるが、20〜60質量%が好ましく、更に30〜60質量%が好ましい。セラミド類の含有量が下限値15質量%よりも低いと、セラミド類の効果、例えば、スキンケア保湿効果が十分に得られず、肉眼で観察できる油性粒子も得られにくく、油性粒子が柔らかくなるため好ましくない。一方、セラミド類の含有量が上限値60質量%を超えると、油性粒子が硬くなるため好ましくない。
【0016】
セラミド類は、天然型セラミド及び擬似型セラミドから選ばれる1種以上のものである。天然型セラミドは、下記一般式(1)で表される。
【0017】
【化1】

【0018】
〔一般式(1)中、R1はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Zはメチレン基又はメチン基を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X4は水素原子を示すか、或いは隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Zがメチン基の時、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり他方は存在しない。X4がオキソ基を形成する時は、X3は存在しない。);R2はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R3は水素原子、或いは炭素数1〜4のアルキル基を示し;R4はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。〕
【0019】
一般式(1)において、好ましくは、R1が炭素数7〜19の直鎖アルキル基、さらに好ましくは炭素数13〜15の直鎖アルキル基であり;R4が炭素数9〜27のヒドロキシ基が置換してもよい直鎖アルキル基、又はリノール酸がエステル結合した炭素数9〜27の直鎖アルキル基である。また、X4は水素原子を示すか、或いは酸素原子とともにオキソ基を形成するのが好ましい。特に、R4としては、トリコシル、1-ヒドロキシペンタデシル、1-ヒドロキシトリコシル、ヘプタデシル、1-ヒドロキシウンデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したノナコシル基が好ましい。
【0020】
天然型セラミドの具体的な例示として、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミド類Type1〜7が挙げられる。さらに、これらのN-アルキル体(例えばN-メチル体)も含まれる。
【0021】
天然型セラミドの市販のものとしては、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、Goldschmidt社製)、Ceramide TIC-001(高砂香料(株)製)、CERAMIDE II(Quest International社製)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社製)、CERAMIDE2(セダーマ社製)が挙げられる。
【0022】
次に、擬似型セラミドは、下記一般式(2)で表される。
【0023】
【化2】

〔一般式(2)中、R5は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R6はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R7は水素原子を示すか、又はヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜8のアルキル基を示す;R6としては、特にノニル、トリデシル、ペンタデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したウンデシル基、ω位にリノール酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位に12-ヒドロキシステアリン酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位にメチル分岐イソステアリン酸がアミド結合したウンデシル基が好ましい。R7のヒドロキシアルコキシ基又はアルコキシ基としては炭素数1〜8のものが好ましい。〕
【0024】
一般式(2)で示される擬似型セラミドとしては、R5がヘキサデシル基、X4が水素原子、R6がペンタデシル基、R7がヒドロキシエチル基であるもの((N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシヘキサデカナミド);R5がヘキサデシル基、X4が水素原子、R6がノニル基、R7がヒドロキシエチル基であるもの((N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシデカナミド);R5がヘキサデシル基、X4がグリセリル基、R6がトリデシル基、R7が3-メトキシプロピル基である擬似型セラミド(N-[2-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)-3-ヘキサデシルオキシプロピル]-N-3-メトキシプロピルテトラデカンアミド)が好ましい。その中でも、一般式(2)中のR5がヘキサデシル基、X4が水素原子、R6がペンタデシル基、R7がヒドロキシエチル基であるもの((N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシヘキサデカナミド)が特に好ましい。
【0025】
さらには、前記一般式(1)で示される天然型セラミドのうちタイプI〜VIの天然型セラミド、及び前記一般式(2)で示される擬似型セラミドのうちN-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルデカナミド等の擬似型セラミドが好ましい。このうち、N-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミドが好ましい。
【0026】
本発明の皮膚用組成物中の油性粒子の平均粒子径は、良好な使用感を有し、及び油性粒子を肉眼で観察できるものとする観点から、0.1〜2mmであるが、0.1〜1mmが更に好ましい。
【0027】
前記油性粒子には、さらに融点が40〜90℃である両親媒性固体油を含むこともできる。このような両親媒性固体油としては、高級アルコール、高級脂肪酸、脂肪酸グリセリドが挙げられる。高級アルコールとして、セチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸として、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。このうち、セチルアルコール、パルミチン酸が好ましい。
【0028】
油性粒子中の両親媒性固体油の含有量は、必要に応じて選択することが可能であるが、油性粒子の総質量に対して、0〜50質量%が好ましく、更に0〜30質量%が好ましく、特に0〜10質量%が好ましい。
【0029】
また、油性粒子中には、上記の成分以外に、一般に化粧品に使用される液状、固体状及び半固体状の合成及び天然由来の油性成分、例えば流動パラフィン、スクワラン(水添ポリイソブテン)、ワセリン等の炭化水素油;イソノナン酸イソトリデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸コレステリル等のエステル油;オリーブ油、大豆油、ヒマシ油等の植物油;ミツロウ、ラノリン等の動物性油;揮発性及び不揮発性のメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロポリエーテル等のフッ素油等を含むことができる。
【0030】
本発明の皮膚用組成物における水相又は油相には、発明の効果を損ねない範囲で適当な量の界面活性剤、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤を配合することができる。
【0031】
前記非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、アルキルグリセリンエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル類、アルキルポリグルコシド類、ショ糖脂肪酸エステル類、アミンオキシド類等が挙げられる。なかでも、ソルビタンステアリン酸エステルが好ましい。
【0032】
アニオン界面活性剤の例としては、アルキルサルフェート類、アルキルアミドエーテルサルフェート類、α-オレフィンスルホン酸類、アルキルアミドスルホナート類、アルキルアリールスルホナート類、アルキルスルホカルボン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸類、アルキルホスファート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスファート類、アシルグルタミン酸塩類、アシルサルコシナート類、アシルタウリン塩類等が挙げられる。
【0033】
両性界面活性剤の例としては、アルキル酢酸ベタイン類、アルキルイミダゾリニウムベタイン類、アルキルアミドベタイン類、アルキルスルホベタイン類等が挙げられる。
【0034】
カチオン界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレン化されていてもよい、第1級、第2級又は第3級脂肪アミンの塩類、及び、第4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚用組成物中における界面活性剤の含有量は、0.001〜0.5質量%が好ましく、更に0.001〜0.3質量%が好ましく、更に0.1〜0.2質量%が好ましい。水相又は油相への界面活性剤が多過ぎると、油性粒子の粒子径が小さくなり肉眼で観察できないものとなってしまう。本発明で使用する界面活性剤は、好ましくは非イオン界面活性剤である。
【0036】
本発明の皮膚用組成物の水相に含まれる高分子としては、例えば、植物系高分子化合物、微生物系高分子化合物、動物系高分子化合物、変性デンプン、変性セルロース、アクリル酸系高分子化合物、ポリオキシエチレン系高分子化合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体系高分子化合物、アクリル系高分子化合物、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0037】
前記植物系高分子化合物は、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシードから選ばれる一種以上の高分子化合物である。
【0038】
前記微生物系高分子化合物はデキストラン、プルランから選ばれる一種以上の高分子化合物である。
【0039】
前記動物系高分子化合物は、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンから選ばれる一種以上の高分子化合物である。
【0040】
前記変性デンプンは、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンから選ばれる一種以上である。
【0041】
前記変性セルロースは、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれる一種以上である。
【0042】
前記アクリル酸系高分子化合物は、カルボキビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる一種以上である。なかでも、カルボマーが好ましい。
【0043】
前記アクリル系高分子化合物は、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミドから選ばれる一種以上の高分子化合物である。
【0044】
さらに、油相と水相の混合時、本発明の皮膚用組成物中の水相の50〜90℃における粘度は、好ましくは1000〜20000mPa・s、更に好ましくは1000〜8000mPa・sである。最終組成物の粘度は、好ましくは1000〜100000mPa・s、更に好ましくは1000〜90000mPa・sである。油相と水相の混合時の水相の粘度が1000mPa・sよりも低いと、油相が水相の上方に浮かんでしまい、均一な粒子を製造できない。また、混合時の水相の粘度が20000mPa・sよりも高いと、製造される粒子が小さ過ぎ、肉眼で観察できる大きさの粒子を製造できない。
【0045】
また、最終組成物の粘度が1000mPa・sより低いと、粒子の浮上が起こり易く、組成物の安定がよくない。また、最終組成物の粘度が100000mPa・sより高いと、撹拌過程中に油性粒子が崩壊し易く好ましくない。
【0046】
本発明の水相の粘度は、回転式粘度計(B型粘度計又はB8R型粘度計)で測定している値である。
【0047】
さらに本発明の皮膚用組成物には、上記の成分に加えて、目的に応じて本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧品等の皮膚用組成物に含まれる他の成分、例えば、液状油、ビタミン、植物エキス、乳化剤、ゲル化剤、安定剤、防腐剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤等を含有することもできる。
【0048】
本発明の皮膚用組成物は、以下の製造方法により製造される。
すなわち、溶解した油相を所定温度に加熱した水相に当該水相の上部から添加した後、又は所定温度に加熱した水相を溶解した油相に当該油相の上部から添加した後、油相と水相の混合物を撹拌しながら室温まで冷却して油性粒子を得る。
【0049】
界面活性剤は予め水相又は油相のいずれか一方に添加してもよく、又は、水相と油相との両者に添加しておいてもよい。本発明の皮膚用組成物の製造方法において、前記所定温度に加熱した水相の粘度は1000〜20000mPa・sが好ましく、更に1000〜8000mPa・sが好ましい。なお、前記所定温度は50〜90℃であるが、60〜90℃が好ましく、70〜90℃が更に好ましい。また、油相の温度については、油相の各成分を混合・溶融できる温度であれば特に限定されない。
【0050】
水相には、前記高分子、pH調整剤、ゲル化剤、前記界面活性剤等を含むことができる。
油相には、セラミド類のほか、両親媒性固体油、油性成分、前記界面活性剤等を含むことができる。
【実施例】
【0051】
実施例1〜2
表1に示すように、室温において、容器の中で水とグリセリンを攪拌し、その中に高分子であるカルボマーとカラギーナンを添加して、カルボマーとカラギーナンを均一に分散させた。その後、攪拌しながら50℃まで加熱した。そして、それにメチルパラベン、塩化ナトリウムを添加して、50℃を維持しつつ攪拌した。メチルパラベン及び塩化ナトリウムが溶解した後に、48%水酸化カリウム水溶液(KOH)を添加して、水相とした。
また、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、セチルアルコール、イソステアリン酸コレステリル、水添ポリイソブテンを50℃に加熱して混合溶解して油相とした。
50℃の上記水相に、当該水相の上部から前記油相を加えて、200rpmで攪拌し、混合物が均一となった後、攪拌しながら室温まで冷却した。室温に冷却後、48%水酸化カリウム水溶液を加えてpHを中性に調整して、本発明の皮膚用組成物を得た。
【0052】
実施例3〜19
実施例1に準じた方法により、表1及び2に示す実施例3〜19の皮膚用組成物を調製した。
【0053】
比較例1〜8
実施例1に準じた方法により、表3に示す比較例1〜8の皮膚用組成物を調製した。
【0054】
各実施例及び各比較例の組成物について、下記の基準で評価した。評価結果は表1〜3に示す。
【0055】
〈外観〉
○:油性粒子が肉眼で観察できる。
×:油性粒子が肉眼で観察できない。
【0056】
〈安定性〉
得られた組成物を50℃で1ヶ月保存して、1ヶ月保存後の組成物の中で油性粒子の浮上及び油性粒子の大きさの変化を観察した。
○:油性粒子の浮上が見られず、かつ油性粒子の大きさの変化も見られない。
×:油性粒子の浮上が見られ、または油性粒子の大きさの変化が見られる。
【0057】
〈油性粒子の硬度〉
良好:油性粒子の硬度がちょうど良いと感じられ、軟らかすぎたり硬すぎる感じがない。
軟らかい:明らかに油性粒子が軟らかすぎると感じられる。
硬い:明らかに油性粒子が硬すぎると感じられる。
【0058】
〈使用感〉
○:既存市販品を使用した場合の感覚を想起して、それより優れると感じる。
×:既存市販品を使用した場合の感覚を想起して、それより劣ると感じる。
【0059】
〈保湿効果〉
○:保湿効果があると感じる。
×:保湿効果がないと感じる。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と当該水相中に分散されている油性粒子を含有し、室温における粘度が1000〜100000mPa・sの皮膚用組成物であって、
前記油性粒子が、平均粒子径が0.1〜2mmで、かつ15〜60質量%のセラミド類を含有するものであり、皮膚用組成物中の油性粒子の含有量が0.5〜15質量%であり、
前記水相が0.1〜1.0質量%の高分子を含有するものである、皮膚用組成物。
【請求項2】
油性粒子中のセラミド類の含有量が20〜60質量%である請求項1記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
油性粒子中のセラミド類の含有量が30〜60質量%である請求項1記載の皮膚用組成物。
【請求項4】
水相に含有される高分子が、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる一種以上のアクリル酸系高分子化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚用組成物。
【請求項5】
セラミド類が、タイプI〜VIの天然型セラミド、並びにN-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド及びN-(2-ヒドロキシ-3-ヘキサデシロキシプロピル)-N-2-ヒドロキシエチルデカナミドを含む擬似型セラミド類から選ばれる一種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚用組成物。
【請求項6】
50〜90℃に加熱した水相に当該水相の上部から溶解した油相を添加した後、又は溶解した油相に当該油相の上部から50〜90℃に加熱した水相を添加した後、水相と油相の混合物を撹拌しながら室温まで冷却して油性粒子を得る、請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚用組成物を製造する方法。
【請求項7】
50〜90℃に加熱した水相の粘度が1000〜20000mPa・sである請求項6記載の皮膚用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−265268(P2010−265268A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112384(P2010−112384)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】