説明

皮膚病変の診断方法

皮膚病変の診断方法が開示される。一般に、この方法は、場合によって無症状性病変を可視にさせることを含む、皮膚病変の外観の可視変化を引き起こすために有効な期間および量で、IRM化合物を処理領域に局所的に投与する工程を含む。適切なIRM化合物としては、1以上のTLRの作動薬が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非メラノーマ皮膚癌は米国で最も一般的な癌であり、1,000,000件より多い年間発生率が推定される。基底細胞癌(BCC)は、70%〜80%の非メラノーマ皮膚癌の原因となる。扁平上皮癌(SCC)は、約20%のみの非メラノーマ皮膚癌に相当するが、それらの転移能力のため重要であり、年間2300人の死亡が推定される。非メラノーマ皮膚癌の発生率は増加し続けている。早期診断は救命となり得、そしていずれの処理方法手段が最も有効であるかを医師が知ることは重要である。
【0002】
癌細胞を切除または殺す様々な手順を使用して、非メラノーマ皮膚癌を処理してよい。腫瘍の再発、そして場合によって転移を予防するためには、全腫瘍の除去が必要である。しかしながら、臨床的に可視の病変部分は、全体的な病変の一部分のみを表すものであり、全部の病変の切除を困難にさせている。現在、正確な手術前診断によってさえも、非メラノーマ皮膚癌の完全な切除が常に達成されるとは限らない。これらの癌腫の不完全な切除によって、例えば、残存腫瘍を除去するための第2の切除手段のようなさらなる処理が必要とされる。従って、かかる病変の完全な辺縁を識別する改善された診断方法が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
皮膚病変の診断および処理のために、特定の小分子免疫応答変性剤(IRM)化合物を使用することができることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、皮膚病変の診断方法を提供する。一般に、この方法は、処理領域における皮膚病変の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、IRM化合物を皮膚の処理領域に投与する工程を含む。
【0005】
もう1つの態様において、本発明は、皮膚病変の辺縁の視覚化法を提供する。一般に、この方法は、処理領域における皮膚病変の辺縁の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、IRM化合物を皮膚の処理領域に投与する工程を含む。
【0006】
もう1つの態様において、本発明は、皮膚病変の辺縁を可視的に強調する方法を提供する。一般に、この方法は、皮膚病変の辺縁を可視的に強調するために十分な期間および量で、IRM化合物を、臨床的に可視の皮膚病変を含む処理領域に投与する工程を含む。
【0007】
もう1つの態様において、本発明は、皮膚病変の切除の前に皮膚病変を前処理する方法を提供する。一般に、この方法は、皮膚病変の辺縁を可視的に強調するために十分な期間および量で、IRM化合物を、皮膚病変を含む処理領域に投与する工程を含む。
【0008】
もう1つの態様において、本発明は、無症状性皮膚病変の視覚化法を提供する。一般に、この方法は、処理領域における無症状性皮膚病変を明白にさせるために十分な期間および量で、IRM化合物を処理領域に投与する工程と、次いで、皮膚病変を視覚化する工程と、を含む。
【0009】
もう1つの態様において、本発明は、皮膚病変の処理法を提供する。一般に、この方法は、皮膚病変の辺縁の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、IRM化合物を、少なくとも1つの皮膚病変を含む処理領域に投与する工程と、次いで、皮膚病変に切除手順を施す工程と、を含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、様々な方法は、例えば、モース・マイクログラフィック外科手術、外科的切除、寒冷療法または放射線療法のような切除手順を皮膚病変に施す工程をさらに含んでよい。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、皮膚病変は、腫瘍性皮膚病変、無症状性病変、非メラノーマ皮膚癌または前悪性皮膚病変であり得る。いくつかの実施形態において、皮膚病変は、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性ほくろ、ボーエン病または日光性角化症であり得る。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、IRMは、少なくとも1つのTLRの作動薬であり得、TLR4、TLR7、TLR8、またはTLR7およびTLR8の両方の作動薬が挙げられる。
【0013】
以下の詳細な説明、実施例および請求の範囲を参照することによって、本発明の様々な他の特徴および利点は容易に明白となるであろう。明細書を通して、いくつかの箇所で、例の一覧によってガイダンスが与えられる。それぞれの例において、列挙された一覧は、代表的な群としてのみ与えられ、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、皮膚病変の診断方法、皮膚病変の辺縁を強調する方法、無症状性皮膚病変の視覚化法および皮膚病変の処理法を提供する。一般に、この方法は、皮膚病変を含む処理領域にIRM化合物を投与する工程を含む。病変へIRM化合物を投与することによって、病変が臨床的に可視であってもなくても、IRM化合物が投与される時に患者の免疫系における病変の免疫性刺激に対する応答が誘導され得、それによって病変に対する局在性免疫応答が開始されるか、または増強される。この局在性免疫応答は、病変の外観における可視変化を導き得る(病変が無症状性であっても、病変を明白にさせる)。かかる可視変化は、例えば、病変への免疫細胞の炎症および/または浸潤から生じ得、そして1以上の、例えば、びらん、紅斑(発赤)および浮腫(腫脹)が挙げられる。
【0015】
病変周囲の変化のない組織は、IRM化合物の投与によって誘導された免疫応答による標的ではない。結果として、病変周囲の変化のない組織は、IRM化合物が投与される時に病変において観察される可視変化(例えば、びらん、発赤および/または腫脹の増加)を示さない。従って、病変組織を周囲の変化のない組織から視覚的に識別するために、病変のびらん、腫脹の増加および/または発赤を使用することができる。病変の外観における可視変化によって、病変の辺縁を強調することができて、より正確に病変の辺縁を決定することが可能となる。
【0016】
IRM化合物を投与することによって、すでに臨床的に可視である病変の外観における可視変化を誘導することができる。また、IRM化合物を投与することによって、無症状性病変を可視にさせる無症状性病変における変化を誘導することができ、それによって無症状性病変の検出および診断を補助することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「臨床的に可視の」病変は、可視であるか、明白であるか、あるいはIRM化合物を投与せずに検出される病変である。本明細書で使用される場合、「無症状性」病変は、存在するが、それらの位置または小サイズのため、可視でないか、明白でないか、あるいは検出されない病変であり、すなわち、臨床的に可視ではない病変である。明確性と一貫性のため、IRM化合物の投与の結果として可視となる無症状性病変は、IRM化合物の投与後に病変が、可視になっても、明白になっても、あるいは検出されても、無症状性病変と示される。
【0018】
本明細書で使用される場合、「辺縁」およびその変形は、腫瘍または病変の周囲の組織を指す。特に、本明細書で使用される場合、「辺縁」は、病変の縁、境界または限界を指す。辺縁は、病変の周囲の領域であり、正常の健康な組織が病変の存在によって変化したものである。例えば、腫瘍辺縁は、可視的に認識できる腫瘍の縁を超えて成長した腫瘍細胞を含み得、そして腫瘍の存在のため変化した間質領域を含み得る。病変の切除の場合、辺縁は、認識できる病変と一緒に除去される、肉眼では正常であるように通常見える組織を含む。辺縁は、一般に初期の病変から約0.2cm〜約3cm延在し得るが、初期病変の大きさ次第でより大きくなり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「処理領域」は、IRM化合物が投与される皮膚の領域である。いくつかの場合、処理領域は、1以上の臨床的に可視の病変の存在によって定義されてよい。かかる場合、処理領域は、辺縁を含む臨床的に可視の病変、ならびに臨床的に可視の病変の間に位置する組織を含んでよい。他の場合、処理領域は、臨床的に可視の病変がない、IRM化合物が投与されるいずれかの領域であってよい。例えば、領域が、特定の種類の皮膚病変の発達の危険にあるため、例えば、顔、頭皮、首および手の領域が、特に日光性角化症、基底細胞癌、メラノーマ等の発達の危険にあるため、処理領域を選択してもよい。かかる病変の診断を、より感応性にさせるための処理として、定期的にかかる領域へIRM化合物が投与されてもよい。
【0020】
本発明の方法によって診断され得る病変としては、皮膚、粘膜表面、組織および器官の病変が挙げられる。病変は、例えば、腫瘍、斑、丘疹、結節、粥腫(plaque)、小疱(vesicle)、水疱(bulla)、疱疹(blister)、膨疹、鱗屑(scale)、びらんおよび潰瘍のようないずれかの既知の組織形態のものであり得る。皮膚病変としては、限定されないが、前悪性皮膚病変、悪性皮膚病変、腫瘍性皮膚病変、非メラノーマ皮膚癌、前悪性表皮病変、悪性表皮病変、表皮病変、真皮病変および表在性皮膚癌が挙げられる。また皮膚病変としては、皮下病変および皮膚病変を含む非腫瘍性病変も挙げられる。かかる非腫瘍性病変としては、例えば、いぼ(例えば、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)によって引き起こされたもの)、いぼ状表皮異形成、伝染性軟属腫、リーシュマニア症の病変、およびケロイドを挙げることができる。本発明の方法によって診断される非メラノーマ皮膚病変としては、限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮癌、日光性角化症および生体位の扁平上皮癌(ボーエン病とも呼ばれる)を挙げることができる。
【0021】
本発明の方法によって診断され得る病変としては、基底細胞癌(BCC)が挙げられる。非メラノーマ皮膚癌の亜型であるBCCは、表皮基底細胞から生じる悪性腫瘍である。BCCは、日光暴露に関連した潜在的に致命的な疾病である。BCCの自然経緯は、ゆっくりと拡大し、局所的に浸潤する腫瘍のものである。破壊度および再発の危険性は、腫瘍の大きさ、期間および位置;組織学的亜型;再発疾病の存在;ならびに様々な患者の特徴によって変化する。中心顔面(例えば、鼻、鼻唇溝、または眼窩周囲もしくは口周囲領域)、耳、あるいは頭皮に位置する病変は、より高い危険と関連している。小結節、色素性、嚢胞性または表在性BCCは、処理によって良好な反応を示す。大きい結節、小結節性(micronodular)、結節性潰瘍性(noduloulcerative)、アデノイド、潤滑性、および特にモルフェア型(morpheaform)BCCは、より攻撃的である傾向がある。BCCによる死亡率は低いが、その発生率の増加および長引く罹患率は、この疾病の処理費が高いことを意味する。病変の進行によって潰瘍化が生じ、そして骨格および顔面洞(facial sinuses)の広範囲な局所浸潤が生じ得る。従って、早期認識および有効な処理が重要である。
【0022】
BCCのための現在の処理としては、電気乾燥療法(electrodessication)および掻爬術(ED&C)、外科的切除、モース・マイクログラフィック外科手術(MMS)、冷凍外科、放射療法、ならびに5−フルオロウラシルによる処理が挙げられる。より新しい処理方法手段としては、光力学療法および5%イミキモドクリームの局所的適用が挙げられ、これはBCC病変を有効に分解する。選択される療法の様式は、腫瘍の特徴、年齢、医療状態、患者の選択、および他の要因に依存する。ED&Cは、低リスクの腫瘍(例えば、有利な位置で攻撃的ではない亜型の小さい初期の腫瘍)に対して一般的に利用される方法である。外科的切除は、組織コントロールの利点を提供し、より攻撃的な腫瘍または高リスクの位置のものに対して、あるいは多くの場合、審美的理由のため選択されることが多い。特定の低リスク腫瘍においては、液体窒素を使用する冷凍外科を使用してもよい。放射線療法は、外科的方法手段として利用されることは多くないが、多くのケースのBCC治療に対して優れた機会を提供する。外科的候補として考慮されない患者において、そして高リスク腫瘍の外科的補助として、これは有用である。MMSは、組織コントロールの最終段階および関与しない組織の保護を可能にする外科的切除の特殊型である。再発病変、または高リスク位置にあるか、大きく不明瞭な病変であって、最大限の組織保存が重要であるもの(例えば、まぶた)に関して好ましい。5−フルオロウラシル(5FU)クリームのような薬剤による局所的化学療法は、BCCの管理に関して限定的な有用性を有し、表面的なBCCの処理に関して使用される。光感作療法は、可視光による光活性薬剤の選択的活性化を利用し、多数の腫瘍を有する患者において有用となり得る。皮膚癌の処理のために、レーザーを使用することもできる。BCC処理方法手順の概説に関しては、例えば、ストックフレス(Stockfleth)およびステリー(Sterry)(リーセント リザルツ イン キャンサー リサーチ(Recent Results Cancer Res)(2002)160:259−68)、ならびにクイジパーズ(Kuijpers)ら、(アメリカン ジャーナル オブ クリニカル デマトロジー(Am J Clin Dermatol)2002;3(4):247−59)を参照のこと。
【0023】
本発明の方法によって診断され得る病変としては、扁平上皮癌(SCC)も挙げられる。非メラノーマ皮膚癌の亜型であるSCCは、老人の日光暴露された皮膚に生じる最も一般的な腫瘍である。日光に加えて素因として関係があるとされるものは、工業的な発癌性物質(タールおよび石油)、慢性潰瘍、古い火傷瘢痕、ヒ素剤の摂取、電離性放射線、ならびに(口腔において)タバコおよびビンロウジ咀嚼である。初期の皮膚SCCは、表皮細胞を角質化する悪性腫瘍である。低転移性を有するBCCとは異なり、SCCは転移し、迅速に成長し得る。SCCの臨床的特徴は広範囲に変化し得る。一般的に、SCCは最初に、潰瘍結節または表在性びらんとして皮膚または下唇に現れる。腫瘍の辺縁は不明瞭であり、基底構造への固定化が生じ得る。外科的切除、MMSおよび放射がSCC処理の標準方法である。特に小さい初期腫瘍の処理のためには、冷凍外科およびED&Cを使用することができる。リンパ節解離、放射または療法によって、転移を処理することができる。シスプラチンを含む全身化学療法の組み合わせも、転移性SCCの処理のために使用されてよい。
【0024】
表皮の顕性悪性腫瘍の発達の前に、一連の進行性異形成変化が生じる。SCCは、いくつかの前悪性形態(例えば、日光性角化症、日射性口唇炎およびいくつかの皮角)、ならびに表皮に限定された生体位の形態(例えば、ボーエン病)を有する。
【0025】
本発明の方法によって診断され得る病変としては、日光性角化症(AK)も挙げられる。日光性角化症は、角化性の丘疹、および日光暴露領域において生じる丘疹である。電離性放射線への暴露、炭化水素およびヒ素剤が同様の病変を誘導し得る。一般的に影響を受ける皮膚部位としては、顔、腕、頭皮および手の背側が挙げられる。同様の病変は唇上で発達し得、日射性口唇炎と呼ばれる。個々の病変において悪性変質の可能性は低いが、多数のAK病変によってSCCのリスクが高まる。AK病変は、これらの潜在的な病変前駆体の局所的根絶を保証するためにしばしば十分である悪性となる。これは、通常、掻爬術、寒冷療法、または化学療法剤の局所的適用によって達成される。
【0026】
本発明の方法によって診断され得る病変としては、ボーエン病の病変も挙げられる。ボーエン病は、前がん状態の病変であり、落屑(scaling)、紅斑粥腫として存在する。これは、20%までのケースで浸潤性SCCへと発達する。従って、生体位の病変またはボーエン病の処理は、浸潤疾病のその後のリスクを減少する。これはしばしば、外科的切除および直接閉鎖によって処理される。別の処理としては、寒冷療法、掻爬術および焼灼術、放射、超音波外科的吸引(オータニ(Otani)ら、プラスチック アンド リコンストラクティブ サージェリー(Plast Reconstr Surg)(2001)108(1):68−72)、ならびに光感作療法(ロング(Wong)ら、デマトロジック サージェリー(Dermatol Surg)(2001)27(5):452−6)が挙げられる。
【0027】
本発明の方法によって診断され得る病変としては、悪性ほくろの病変も挙げられる。悪性ほくろは、長期蓄積の紫外線傷害によって誘導されたメラノーマの前浸潤形態である。悪性ほくろは、典型的に、表皮に限定された病変を指すが、悪性ほくろメラノーマは、典型的に、真皮を犯すことによって転移の可能性を確立する病変を指す。早期メラノーマを示唆する最も頻繁に発見されるものは、新しい色素性の病変または存在するほくろの大きさまたは色の変化である。悪性ほくろは、最も一般的に、頭および首の日光暴露された皮膚に作用し、鼻および頬に好発する。一般的ではない部分としては、腕、脚および胴体が挙げられる。結膜および口腔粘膜は、皮膚の悪性ほくろが粘膜表面上に広がった時に関与する。悪性ほくろを処理するために、放射線療法、寒冷療法、化学療法および/または外科手術を使用してよい。病変の実際の辺縁は通常、臨床的に明白な辺縁を超えて延在するため、全体的な病変の除去は困難である。
【0028】
本発明の特定の実施形態を実施するために適切な切除法は、生体位の位置から皮膚病変を物理的に除去するために使用される全ての方法を含む。皮膚病変の切除のための現在の臨床的な処理としては、限定されないが、電気乾燥療法および掻爬術(ED&C)、冷凍外科、放射療法、光力学療法、ならびに例えば、外科的切除およびモース・マイクログラフィック外科手術(MMS)のような切除手段が挙げられる。MMSは、非メラノーマ皮膚癌の除去のためには過酷な外科技術である。この技術は、薄層の関与組織の連続的除去を必要とする。それぞれの層は組織試験を受け、層をミトクローム上で切断し、そして顕微鏡で試験する。連続層の組織試験から、組織地図を作成して、残存する腫瘍、ならびに正常の関与していない組織の領域を描写する。顕微鏡試験によって指示されるように連続組織層を除去し、全腫瘍が切除されるまで工程を繰返す。顕微鏡コントロールのため、基底および扁平細胞癌に関して治療率は極めて高い。
【0029】
全ての切除法によって、全病変の除去は、腫瘍の再発、いくつかの場合は転移を本質的に制限および予防する。しかしながら、これは達成することが困難であり得る。正確な手術前診断によっても、非メラノーマ皮膚癌の完全な切除は常に達成されるとは限らない(ハロック(Hallock)およびルッツ(Lutz),プラスチック アンド リコンストラクティブ サージェリー(Plast Reconstr Surg)(2001)107(4):942−7)。例えば、世界中の医療センターの間で、BCCの不完全切除率は5%〜25%で変化し得る(ダイ(Die)およびマクレオド(Macleod),ANZ ジャーナル オブ サージェリー(ANZ J.Surg.)(2002)72(3):219−21)。1つの難点は、病変の辺縁は視覚化が困難であり得ることである。もう1つの難点は、病変の臨床的に可視の部分は、全体的な病変のわずかな部分のみを表している可能性があることである。病変は、臨床的に不可視の増殖または付属体を有し得る。また、病変の完全な切除は、いくつかの解剖学的部位においてより困難となり得る。BCCの不完全な切除の頻度は、まゆ、耳後部の領域、鼻およびこめかみに位置する病変に関してより高い(クマー(Kumar)ら、,ブリティッシュ ジャーナル オブ プラスティック サージェリー(Br J Plast Surg)(2002)55(8):616−22)。再発および転移のリスクのため、不完全な切除は、さらなる外科手術または長引く経過観察を導き、従って、患者結果に著しく影響する。
【0030】
本発明の1つの実例となる実施形態において、IRM化合物は、処理期間中にAK病変数の増加を経験した、臨床的に可視のAK病変を有する被験者を処理するために投与された(表1、実施例を参照のこと)。従って、IRM化合物による臨床的に可視のAK病変の処理の驚くべき追加的な利点は、処理が無症状性病変を有効に明らかにしたことであった。ベースラインAK病変の完全な分解を経験した被験者は、ベースラインAK病変の完全な分解を経験しなかったものよりも高い速度で、処理期間中にAK病変数の増加も経験した。従って、IRMによって処理されたものにおいて観察されたAK病変数の増加は、新しい病変の形成ではなくて無症状性病変の出現によるものであることは明らかである。
【0031】
特定の実施形態において、本発明は、皮膚病変の処理法を提供する。最初に、IRM化合物は、皮膚病変の辺縁の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、皮膚病変を含む処理領域に投与される。次いで、皮膚病変に、例えば、モース・マイクログラフィック外科手術、外科的切除、寒冷療法または放射線療法のような切除手順を施す。皮膚病変の辺縁の改善された視覚化は、より完全な皮膚病変の切除を可能にする。
【0032】
本発明の方法において有用なIRM化合物としては、例えば、抗ウイルス性および抗腫瘍性のような強力な免疫調節活性を有する化合物が挙げられる。特定のIRMは、サイトカインの産生および分泌を調節する。例えば、特定のIRM化合物は、例えば、タイプI インターフェロン、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1および/またはMCP−1のようなサイトカインの産生および分泌を含む。もう1つの例として、特定のIRM化合物は、IL−4およびIL−5のような特定のTH2サイトカインの産生および分泌を抑制し得る。加えて、いくつかのIRM化合物は、IL−1およびTNFを抑制するといわれている(米国特許第6,518,265号明細書)。
【0033】
特定のIRMは、例えば、米国特許第4,689,338号明細書、米国特許第4,929,624号明細書、米国特許第4,988,815号明細書、米国特許第5,037,986号明細書、米国特許第5,175,296号明細書、米国特許第5,238,944号明細書、米国特許第5,266,575号明細書、米国特許第5,268,376号明細書、米国特許第5,346,905号明細書、米国特許第5,352,784号明細書、米国特許第5,367,076号明細書、米国特許第5,389,640号明細書、米国特許第5,395,937号明細書、米国特許第5,446,153号明細書、米国特許第5,482,936号明細書、米国特許第5,693,811号明細書、米国特許第5,741,908号明細書、米国特許第5,756,747号明細書、米国特許第5,939,090号明細書、米国特許第6,039,969号明細書、米国特許第6,083,505号明細書、米国特許第6,110,929号明細書、米国特許第6,194,425号明細書、米国特許第6,245,776号明細書、米国特許第6,331,539号明細書、米国特許第6,376,669号明細書、米国特許第6,451,810号明細書、米国特許第6,525,064号明細書、米国特許第6,541,485号明細書、米国特許第6,545,016号明細書、米国特許第6,545,017号明細書、米国特許第6,558,951号明細書、米国特許第6,573,273号明細書、米国特許第6,656,938号明細書、米国特許第6,660,735号明細書、米国特許第6,660,747号明細書、米国特許第6,664,260号明細書、米国特許第6,664,264号明細書、米国特許第6,664,265号明細書、米国特許第6,667,312号明細書、米国特許第6,670,372号明細書、米国特許第6,677,347号明細書、米国特許第6,677,348号明細書、米国特許第6,677,349号明細書、米国特許第6,683,088号明細書、欧州特許第0 394 026号明細書、米国特許出願公開第2002/0016332号明細書、米国特許出願公開第2002/0055517号明細書、米国特許出願公開第2002/0110840号明細書、米国特許出願公開第2003/0133913号明細書、米国特許出願公開第2003/0199538号明細書、および米国特許出願公開第2004/0014779号明細書、ならびに国際公開第01/74343号パンフレット、国際公開第02/46749号パンフレット、国際公開第02/102377号パンフレット、国際公開第03/020889号パンフレット、国際公開第03/043572号パンフレット、国際公開第03/045391号パンフレット、および国際公開第03/103584号パンフレットに開示されるもののような小さい有機分子(例えば、約1000ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量であり、タンパク質、ペプチド等のような大きい生体分子とは対照的である)である。
【0034】
小分子IRMの追加的な例としては、特定のプリン誘導体(例えば、米国特許第6,376,501号明細書および米国特許第6,028,076号明細書に記載のもの)、特定のイミダゾキノリンアミド誘導体(例えば、米国特許第6,069,149号明細書に記載のもの)、特定のイミダゾピリジン誘導体(例えば、米国特許第6,518,265号明細書に記載のもの)、特定のベンズイミダゾール誘導体(例えば、米国特許第6,387,938号明細書に記載のもの)、特定の5員窒素含有複素環に縮合した4−アミノピリミジンの誘導体(例えば、米国特許第6,376,501号明細書、米国特許第6,028,076号明細書および米国特許第6,329,381号明細書、ならびに国際公開第02/08595号パンフレットに記載のアデニン誘導体)、ならびに特定の3−β−D−リボフラノシルチアゾール[4,5−d]ピリミジン誘導体(例えば、米国特許出願公開第2003/0199461号明細書に記載のもの)が挙げられる。
【0035】
他のIRMとしては、オリゴヌクレオチド配列のような大生体分子が挙げられる。いくつかのIRMオリゴヌクレオチド配列は、シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含有し、そして例えば、米国特許第6,194,388号明細書、米国特許第6,207,646号明細書、米国特許第6,239,116号明細書、米国特許第6,339,068号明細書および米国特許第6,406,705号明細書に記載されている。いくつかのCpG含有オリゴヌクレオチドは、例えば、米国特許第6,426,334号明細書および米国特許第6,476,000号明細書に記載のもののような合成免疫調節性構造モチーフを含有し得る。他のIRMヌクレオチド配列は、CpG配列を含まず、例えば、国際公開第00/75304号パンフレットに記載されている。
【0036】
他のIRMとしては、リン酸アミノアルキルグルコサミニド(AGPs)のような生体分子が挙げられ、そして例えば、米国特許第6,113,918号明細書、米国特許第6,303,347号明細書、米国特許第6,525,028号明細書および米国特許第6,649,172号明細書に記載されている。
【0037】
特定のIRM化合物は、トール様受容体(TLR)作動薬としても機能することができ、すなわち、それらの免疫調節の影響は、TLR媒介細胞経路を通して作用される。例えば、いくつかの小分子IRMは、TLR受容体系統群、TLR2、TLR4、TLR6、TLR7およびTLR8の1以上の構成員の作動薬として識別されており、特定のAGPは、TLR4の作動薬として識別されており、そしていくつかのCpGは、TLR9の作動薬として識別されている。多くの場合、TLR媒介細胞経路を活性化することによって、活性化された特定のTLRにかかわらずNF−κBを活性化することにより、遺伝子転写、サイトカインまたは共刺激マーカー発現が生じる。
【0038】
本発明の特定の実施形態において、IRMは、少なくとも1つのTLRの作動薬である。特別な実施形態において、IRM化合物は、TLR7、TLR8および/またはTLR9の作動薬であり得る。別の実施形態において、IRM化合物は、TLR4の作動薬である。特定の特別な実施形態において、IRMは、TLR7の作動薬であるか、またはTLR7およびTLR8の両方の作動薬である。IRMは、1以上のサイトカインの産生を含み得、限定されないが、タイプI インターフェロン、TNF−α、およびIL−10が挙げられる。例えば、ギブソン(Gibson)ら、セル イミュノロジー(Cell Immunol.)218(1−2):74−86(2002)を参照のこと。IRMは、限定されないが、マクロファージ、樹状細胞およびランゲルハンス細胞を含む脊髄細胞系の細胞の成熟、活性化および/または遊走をもたらし得る。
【0039】
適切なIRM化合物としては、限定されないが、5員窒素含有複素環に縮合した2−アミノピリジンを有する上記小分子IRM化合物が挙げられる。かかる化合物としては、例えば、限定されないが、アミド置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン、および6−、7−、8−もしくは9−アリールまたはヘテロアリール置換イミダゾキノリンアミンを含むイミダゾキノリンアミン;限定されないが、アミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンエーテル、およびチオエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミンを含むテトラヒドロイミダゾキノリンアミン;限定されないが、アミド置換イミダゾピリジンアミン、スルホンアミド置換イミダゾピリジンアミン、尿素置換イミダゾピリジンアミン、アリールエーテル置換イミダゾピリジンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾピリジンアミン、アミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン、尿素置換イミダゾピリジンエーテル、およびチオエーテル置換イミダゾピリジンアミンを含むイミダゾピリジンアミン;1,2−架橋イミダゾキノリンアミン;6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン;イミダゾナフチリジンアミン;テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン;オキサゾロキノリンアミン;チアゾロキノリンアミン;オキサゾロピリジンアミン;チアゾロピリジンアミン;オキサゾロナフチリジンアミン;チアゾロナフチリジンアミン;ならびにピリジンアミン、キノリンアミン、テトラヒドロキノリンアミン、ナフチリジンアミン、またはテトラヒドロナフチリジンアミンに縮合した1H−イミダゾダイマーが挙げられる。所望により、IRMの様々な組み合わせを使用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、IRM化合物は、例えば、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンまたは4−アミノ−α,α−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールのようなイミダゾキノリンアミンである。1つの特定の実施形態において、IRM化合物は、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンである。
【0041】
別の実施形態において、IRM化合物は、例えば、2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c][1,5]ナフチリジン−4−アミンまたは1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c][1,5]ナフチリジン−4−アミンのようなイミダゾナフチリジンアミンである。
【0042】
もう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、例えば、N−[4−(4−アミノ−2−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミドのようなスルホンアミド置換イミダゾキノリンアミンである。
【0043】
もう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、例えば、N−{2−[4−アミノ−2−(エトキシメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−1,1−ジメチルエチル}シクロヘキサンカルボキサミドのようなアミド置換イミダゾキノリンアミンである。
【0044】
もう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、例えば、2−ブチル−1−[2−(プロピルスルホニル)エチル]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンのようなチオエーテル置換イミダゾキノリンアミンである。
【0045】
なおもう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、例えば、N−{2−[4−アミノ−2−(エトキシメチル)−6,7−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル]エチル}ベンズアミドのようなイミダゾピリジンアミンである。
【0046】
特定の実施形態において、IRM化合物は、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミンまたはチアゾロナフチリジンアミンであってよい。
【0047】
特定の実施形態において、IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミンまたはチアゾロナフチリジンアミンであってよい。
【0048】
本明細書で使用される場合、置換イミダゾキノリンアミンは、アミド置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン、あるいは6−、7−、8−もしくは9−アリールまたはヘテロアリール置換イミダゾキノリンアミンを指す。本明細書で使用される場合、置換イミダゾキノリンアミンは、はっきりと明確に、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンおよび4−アミノ−α,α−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールを除く。
【0049】
特記されない限り、化合物に対する言及は、いずれもの薬剤的に容認できる形態の化合物も含み得、いずれの異性体(例えば、ジアステレオマーまたはエナンチオマー)、塩、溶媒和化合物、多形体等が含まれる。特に、化合物が光学的に活性である場合、化合物に対する言及は、化合物のエナンチオマーのそれぞれ、ならびにエナンチオマーのラセミ混合物を含み得る。
【0050】
IRM化合物は、被験者への投与に適切ないずれかの製剤で提供されてよい。製剤の適切な種類は、例えば、米国特許第5,736,553号明細書、米国特許第5,238,944号明細書、米国特許第5,939,090号明細書、米国特許第6,365,166号明細書、米国特許第6,245,776号明細書、米国特許第6,486,186号明細書、欧州特許第0 394 026号明細書、および米国特許出願公開第2003/0199538号明細書に記載されている。化合物は、限定されないが、溶液、懸濁液、乳濁液または混合物のいずれかの形態を含むいずれかの適切な形態で提供されてよい。化合物は、いずれかの薬剤的に容認できる賦形剤、担体または媒体との製剤で送達されてもよい。例えば、製剤は、例えば、クリーム、軟膏、エアゾール製剤、非エアゾールスプレー、ゲル、フォーム、溶液、懸濁液、分散系、乳濁液、ミクロエマルジョン、ペースト、粉末、固体スティック(例えば、ワックスまたは石油ベースのスティック)、ワイプ、オイル、ローション等のような従来の局所投薬形態で送達されてよい。1つの特定の実施形態において、IRM化合物は、局所投与に適切なクリーム製剤で提供される。
【0051】
本発明の実施のために適切な製剤は、例えば、もう1つのIRM化合物、抗生物質、鎮痛剤、皮膚透過増強剤または局所麻酔剤のような1以上の追加的な活性成分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、IRM化合物は、例えば、日焼け止め、スキンローション、スキンモイスチャーまたは化粧品中に組み入れられてもよい。あるいは、IRM化合物は、皮内または経皮送達に適切ないずれかの媒体中に組み入れられてもよい。
【0052】
適切な製剤の組み合わせは、限定されないが、IRM化合物の物理的および化学的特性;担体の特性;投薬療法;被験者の免疫系の状態(例えば、抑制、易感染性、刺激);IRM化合物の投与法;ならびに所望の結果(例えば、辺縁の強調、無症状性病変の視覚化等)を含む当該分野で既知の多くの要因に少なくとも部分的に依存し得る。従って、全ての可能な適用のための皮膚病変を診断するために適切な単一製剤を一般に明らかにすることは実際的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因の考慮によって、適切な製剤を決定することが容易にできる。
【0053】
適切な製剤は、例えば、約0.001%、約0.002%、約0.005%、約0.01%、約0.015%、約0.02%、約0.025%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約25%または約50%の活性IRM化合物を含有してよい。1つの特定の実施形態において、組成物は、約5%のIRM化合物を含む。
【0054】
投与されるIRM化合物の量、および投与される期間は、実施される本発明の特定の実施形態に少なくとも部分的に依存し得る。一実施形態において、IRM化合物は、病変の辺縁の視覚化を可能にするために十分な期間および量で定期的に病変に投与されてよい。いくつかの場合、IRM化合物の投与は、無症状性病変の視覚化を可能にし得る。他の場合、IRM化合物の適用は、臨床的に可視の病変の実際の辺縁のより正確な視覚化を可能にし得る。処理によって、臨床的に可視ではなかった病変組織が可視となり、それによって全体的な病変が可視となる可能性が増加する。切除手順の前に起こる場合、IRM化合物による前処理は、切除手順の間に全体的な病変が除去される可能性を増加し得、それによって完全な処理結果の可能性を改善する。
【0055】
病変の視覚化は、補助がなくても(例えば、肉眼で)、または例えば、拡大レンズによって補助されてもよい。
【0056】
別の実施形態において、IRM化合物は、皮膚病変の辺縁を可視強調するために十分な量および期間で定期的に病変に投与されてよい。いくつかの場合、病変の辺縁は、いくらか不明瞭に現れ、例えば、ぼやけているか、または不規則な辺縁を有してもよい。IRM化合物の投与は、病変の辺縁を可視強調をすることができ、すなわち、病変の辺縁をより明確にする。
【0057】
もう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、病変内の局在性免疫応答を誘導することによって、病変の辺縁を「ライトアップ」するために十分な期間および量で定期的に病変に投与されてよい。病変内の局在性免疫応答は、軽度から中程度であってよい。病変内の局在性免疫応答は、中程度から重度であってよい。病変内の局在性免疫応答は、例えば、病変のびらん、浮腫(腫脹)または紅斑(発赤)の1以上を含み得る病変内の炎症をもたらし得る。
【0058】
被験者の病変の診断を可能にするために必要とされるIRM化合物の特定の量は、1以上の要因に少なくとも部分的に依存する。かかる要因としては、限定されないが、投与される特定のIRM化合物;被験者の全体的な健康状態;被験者の免疫系の状態(例えば、抑制、易感染性、刺激);IRM化合物の投与経路;病変の特定の種類;病変の組織学的亜型;再発疾病の存在;ならびに所望の結果(例えば、辺縁の強調、無症状性病変の視覚化等)が挙げられる。従って、IRM化合物の有効量を構成する量を一般に明らかにすることは実際的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因の考慮によって、適切な量を決定することが容易にできる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、被験者に対して、例えば、約100ng/kg〜約50mg/kgの用量を提供するために十分なIRM化合物を投与する工程を含むが、いくつかの実施形態において、この方法は、この範囲外の用量でIRM化合物を投与することによって実行されてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、この方法は、被験者に対して、約10μg/kg〜約5mg/kgの用量、例えば、約100μg/kg〜約1mg/kgの用量を提供するために十分なIRM化合物を投与する工程を含む。
【0060】
投薬療法は、限定されないが、IRM化合物の物理的および化学的特性;担体の特性;投与されるIRM化合物の量;IRM化合物が投与される期間;被験者の免疫系の状態(例えば、抑制、易感染性、刺激);IRM化合物の投与法;ならびに所望の結果(例えば、臨床的に可視の病変の辺縁の強調、無症状性病変の視覚化等)を含む当業者に既知の多くの要因に少なくとも部分的に依存する。従って、全ての可能な適用に有効な一般の投薬療法を明らかにすることは実際的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因の考慮によって、適切な投薬療法を決定することが容易にできる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態において、IRM化合物は、例えば、1用量から複数用量まで投与されてよく、1日あたり複数回投与されてもよい。特定の実施形態において、IRM化合物は、1週間あたり約1回から1日あたり約1回まで投与されてよい。1つの特定の実施形態において、IRM化合物は、1日あたり1回、1週間あたり2日で投与される。別の実施形態において、IRM化合物は、1日あたり1回、1週間あたり3回で投与される。
【0062】
本発明を実施するために十分な期間は、例えば、IRM化合物の物理的および化学的特性;担体の特性;投与されるIRMの量;IRM化合物が投与される頻度;被験者の免疫系の状態(例えば、抑制、易感染性、刺激);IRM化合物の投与法;ならびに所望の結果(例えば、臨床的に可視の病変の辺縁の強調、無症状性病変の視覚化等)のような要因に少なくとも部分的に依存し得る。従って、全ての可能な適用に十分な期間を一般に明らかにすることは実際的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因の考慮によって、適切な期間を決定することが容易にできる。
【0063】
いくつかの実施形態において、十分な期間は、少なくとも1日〜約6ヶ月の範囲であり得るが、いくつかの実施形態において、本発明は、この範囲外の期間でIRM化合物を投与することによって実行されてもよい。いくつかの実施形態において、IRM化合物は、少なくとも1週間投与されてよい。別の実施形態において、IRM化合物は、少なくとも4週間投与されてよい。もう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、少なくとも8週間投与されてよい。もう1つの別の実施形態において、IRM化合物は、少なくとも16週間投与されてよい。
【0064】
本発明の方法は、いずれの適切な被験者にも実施することができる。適切な被験者としては、限定されないが、動物、例えば、限定されないが、ヒト、ヒト以外の霊長目動物、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギまたはウシが挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の特徴、利点および他の詳細をさらに説明するために選択されただけに過ぎない。しかしながら、実施例はこの目的を果たしているが、使用される特定の材料および量、ならびに他の条件および詳細は、本発明の範囲を過度に限定する内容で解釈されないことは明白に理解される。特記されない限り、全てのパーセントおよび比率は重量による。
【0066】
実施例1:イミキモドによるAK病変の前処理
25cm2処理領域内に位置する4〜8箇所の臨床的に診断されたAK病変を有する志願者が研究のため登録された。この研究は、事前研究期間、16週の処理期間、および8週の後処理期間からなる。登録された参加者には、無作為に、5%イミキモドクリーム(アルダラ(ALDARA)、ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN)の3M ファーマシューティカルズ(3M Pharmaceuticals))、または生物学的活性成分を含有しないプラシーボクリームのいずれかを受けさせた。
【0067】
被験者は、使い捨ての小袋からクリームを局所的に投与するように指示された。イミキモドを含有した小袋は、250mgのクリームを含有した。被験者の第1群は、6週間、週2日クリームを適用した。投薬日は、最低3日の間隔をあけた。被験者の第2群は、6週間、週3日クリームを適用した。投薬日は、少なくとも2日の間隔をあけた。
【0068】
前処理の往診時、ベースラインのAK病変数を各被験者に対して確定した。処理の4週間、8週間および16週間後の往診時に最新のAK病変数を計算した。各個人に対して、「新しい」AK病変を、最新のAK数とベースラインAK数との間の差異として計算した。従って、アルダラ(ALDARA)クリームによる処理後、無症状性AK病変が明らかとなる。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2:イミキモドによるBCC病変の前処理
病変の外科的切除前に、アルダラ(ALDARA)(ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN)の3M ファーマシューティカルズ(3M Pharmaceuticals))として市販される5%イミキモドクリームによって、BCC病変を有する患者を前処理する。5〜7週間、週5〜7回のBCC病変への5%イミキモドクリームの局所的適用によって、BCC病変の顕著なびらん、紅斑および/または浮腫が生じ、それによって病変の辺縁が強調される。
【0071】
実施例3:イミキモドによるボーエン病変の処理
病変の外科的切除前に、アルダラ(ALDARA)(ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN)の3M ファーマシューティカルズ(3M Pharmaceuticals))として市販される5%イミキモドクリームによって、ボーエン病を有する患者を前処理する。1〜3週間、週2〜3回の病変への5%イミキモドクリームの局所的適用によって、病変の顕著なびらん、紅斑および/または浮腫が生じ、それによって病変の辺縁が強調される。
【0072】
実施例4:イミキモドによる悪性ほくろ病変の処理
病変の外科的切除前に、アルダラ(ALDARA)(ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN)の3M ファーマシューティカルズ(3M Pharmaceuticals))として市販される5%イミキモドクリームによって、悪性ほくろを有する患者を前処理する。1〜3週間、週2〜3回の病変への5%イミキモドクリームの局所的適用によって、病変の顕著なびらん、紅斑および/または浮腫が生じ、それによって病変の辺縁が強調される。
【0073】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明への様々な修正および変更は当業者に明らかであろう。実例となる実施形態および実施例は、例としてのみ提供されており、本発明の範囲を限定するように意図されていない。本発明の範囲は、明らかにされた請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理領域における皮膚病変の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、IRM化合物を皮膚の上記処理領域に投与する工程を含んでなる、皮膚病変の診断方法。
【請求項2】
前記皮膚病変の切除をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膚病変の切除が、モース・マイクログラフィック外科手術、外科的切除、寒冷療法または放射線療法による、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記皮膚病変の切除がモース・マイクログラフィック外科手術による、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記皮膚病変が腫瘍性皮膚病変である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記皮膚病変が無症状性病変である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記皮膚病変が非メラノーマ皮膚癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記皮膚病変が前悪性皮膚病変である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記皮膚病変が、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性ほくろ、ボーエン病および日光性角化症よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記IRM化合物が、少なくとも1つのTLRの作動薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記IRM化合物が、TLR7、TLR8、またはTLR7およびTLR8の両方の作動薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記IRM化合物が、局所適用媒体を介して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記IRM化合物が、イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミンまたはチアゾロナフチリジンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記IRM化合物が少なくとも1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記IRM化合物が週に2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記IRM化合物が週に3回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記IRM化合物が1週間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記IRM化合物が4週間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記IRM化合物が8週間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
皮膚病変の辺縁の視覚化法であって、
処理領域における皮膚病変の辺縁の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、IRM化合物を前記処理領域に投与する工程と、
前記皮膚病変の辺縁を視覚化する工程と、
を含んでなる方法。
【請求項21】
前記IRM化合物を投与する工程が、前記皮膚病変の辺縁の視覚化を可能にする局在性免疫応答を誘導する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
皮膚病変の辺縁を可視的に強調する方法であって、皮膚病変の辺縁を可視的に強調するために十分な期間および量で、IRM化合物を、少なくとも1つの臨床的に可視の皮膚病変を含んでなる処理領域に投与する工程を含んでなる方法。
【請求項23】
皮膚病変の切除の前に皮膚病変を前処理する方法であって、皮膚病変の辺縁を可視的に強調するために十分な期間および量で、IRM化合物を、少なくとも1つの臨床的に可視の皮膚病変を含んでなる処理領域に投与する工程を含んでなる方法。
【請求項24】
皮膚病変に切除手順を施す工程をさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記切除手順が、モース・マイクログラフィック外科手術、外科的切除、寒冷療法および放射線療法よりなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記切除手順がモース・マイクログラフィック外科手術である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
無症状性皮膚病変の視覚化法であって、
処理領域における無症状性皮膚病変を明白にさせるために十分な期間および量で、IRM化合物を前記処理領域に投与する工程と、
前記無症状性皮膚病変を視覚化する工程と、
を含んでなる方法。
【請求項28】
前記皮膚病変が日光性角化症である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
皮膚病変の処理法であって、
前記皮膚病変の辺縁の視覚化を可能にするために十分な期間および量で、IRM化合物を、少なくとも1つの皮膚病変を含んでなる処理領域に投与する工程と、
前記皮膚病変に切除手順を施す工程と、
を含んでなる方法。
【請求項30】
前記切除手順が、モース・マイクログラフィック外科手術、外科的切除、寒冷療法および放射線療法よりなる群から選択される、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523212(P2006−523212A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507225(P2006−507225)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007946
【国際公開番号】WO2004/080293
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】