説明

監視システム

【課題】監視場所において異常音が発生した場合に、複雑な設備や配線なしで監視カメラの向きを変え、効率的に監視を行う。
【解決手段】
撮影方向変更可能なカメラ101とマイク102と制御装置103と外部PC104からなり、マイク102から供給される音をPC104に送信し、その音データがPC104に予め登録された音データと一致した場合、指定したカメラ方向のデータをカメラ101に送信し、カメラ101がそのデータに基づき監視方向を変えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音に対応して監視場所を切り替える、監視カメラおよび監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、「特定の監視対象に向けて自動的にビデオカメラを動かすことができるようにした画像監視装置を提供すること」という課題に対し、「マイク群102として、音源(侵入物体)Sの方位を、水平面内で異なる方位に向けて配置した複数のマイク1〜5を用いて特定し、電動雲台103を制御して、ビデオカメラ101を音源Sの方向に自動的に向けるようにしたもの」という解決手段を用いることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002-344957
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
監視分野においては、監視カメラにより撮影された映像をモニタリングしたり、ハードディスクレコーダ装置に記録したりする映像監視システムが広く用いられている。このような監視システムにおいて広範囲を監視するには、複数台の監視カメラを用いて異なる場所を撮影すればよいが、カメラ台数を増やすとそれだけ費用がかかる。そこで、パン方向やチルト方向の回転制御やズーム操作可能な監視カメラ(以下PTZカメラ)を用いてカメラの向きや画角を変えて広範囲の監視を行う方法がある。
【0005】
この方法は、カメラを動かして撮影範囲を変更するのであるが、手動でカメラを操作する場合は、オペレータがモニタを監視している必要がある。オペレータなしで監視するには、定期的にカメラ向き方向を変更する方法がある。しかし必要な時に必要な場所を監視しているとは限らない。このため、異常があった場合のみ指定場所を監視する方法をとることもある。この場合は、異常を検出するセンサを設置しておき、それをカメラのアラーム端子に入力する。センサが異常を感知すると、カメラ向きがそちらの方向を向くようパン・チルト・ズーム位置を予めPTZカメラに登録しておく。さらに効率よく監視するため、例えば前記特許文献1に開示されたシステムでは、複数のマイクにより集音される音声信号に基づき、音源の方向を計算し、その音源方向にPTZカメラを向けるようにすることで、異常音があった場所のみを監視する。これにより効率的に監視を行うことができる。
【0006】
しかしながら、センサを使用する場合は、センサや配線等の設備が必要となりコストアップとなる。また複数のマイクを使用して音の方向を特定する方法では、室内の形状や障害物によっては音の伝わり方が一定とはならず、方向の特定が難しかったり、方向を特定できたとしてもマイク位置の制限や、または調整等が簡単でなかったりということが考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、なるべく簡単な方法で、カメラを目的の場所に自動的に向ける、監視機器システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、コントローラによりパン・チルト・ズーム動作が可能なPTZカメラと、任意の場所に設置された一つ以上のマイクと、前記パン・チルト・ズーム動作をコントロールする装置を有する監視システムであって、前記マイクで検出した音が、登録されている登録音と同じであることを判定する登録音検出判定手段と、前記登録音に対応した方向データを特定するカメラ方向決定手段と、前記カメラ方向データをPTZカメラに送信する送信手段とを備え、前記カメラが前記カメラ方向決定手段により決定した方向に監視場所を変更することを特徴とする監視システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクと異常時に発生する音源があれば、センサ等の配線なしに実施可能である。また異常音が発生した時のみ指定の場所の監視を行うことで、異常時に監視したい場所を効率的に撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の監視システムの構成を説明した図である。同図において、監視システム1は、PTZカメラ101と、マイク102と、監視装置103と、外部PC104を備えている。また、映像と音声を確認するためのモニタ105とスピーカ106を監視装置103に接続する。
【0012】
次に、監視システム1を構成する各装置について説明する。
【0013】
PTZカメラ101は、監視装置103から供給される制御信号により、パン、チルトおよびズーム動作を行い、撮影範囲を変更することが可能であり、また撮影した映像を映像信号に変換して監視装置103に出力する機能を有する。
【0014】
マイク102(またはマイク付きカメラのマイク)は、任意の場所に設置され、発生する音を集音して音声信号に変換し、監視装置103に出力する。
【0015】
監視装置103は、PTZカメラ101から供給された映像信号と、マイク102から供給された音声信号と同期をとり、デジタルデータとして内蔵あるいは外付けした記録装置に記録する。また、制御信号によりカメラ101をコントロールする。また監視装置103に接続したモニタとスピーカにより記録またはライブの映像と音を確認することができる。また監視装置103は、マイクによって供給された音と映像のデジタルデータを、ネットワーク経由により外部PC104に送信する。
【0016】
外部PC104では、ネットワーク経由で監視装置103から送られてきた映像と音のデジタルデータを、専用ソフトウェアによりデコードする。これにより外部PC104に接続または内蔵されているスピーカやモニタで監視装置103に入力されたのと同じ映像と音を確認することができる。また、外部PC104では、あらかじめ設定されている比較用登録データと、監視装置103からネットワーク経由で配信された音データとの比較を行い、パターンが一致するか判定する。パターンが一致していた場合、ネットワーク経由でカメラ101にカメラ制御用データを送る。
【0017】
図2により、監視装置103について説明する。監視装置103の働きは図のような各処理部に分けて説明できる。
【0018】
CPU201は、各処理部に接続され、これに接続されている各機能の制御や処理を実行する。
【0019】
映像処理部204はカメラ101から入力される映像信号を圧縮したデジタルデータへ変換を行い、また圧縮された画像の伸張処理を行い、外部モニタ105に映像を表示する。
【0020】
記録装置207は、映像データと音声データまた監視装置で扱う各種情報を記録するもので、各処理で必要となるデータがCPU201により読み書きされる。また記録装置207はハードディスクだけではなく、USBメモリやDVD媒体であってもよく、監視装置103の外部にあってもよい。
【0021】
メモリ206はプログラムの保存や、CPU201が処理や演算時に使用するデータを一時的に保存するために使用する。
【0022】
音処理部202では、マイク102から入力された音声信号の圧縮処理を行う。また伸張処理を行うことで、接続されたスピーカ106により音声を出力する。
【0023】
カメラ制御部203では、PTZカメラを制御するデータを制御信号に変換し、PTZカメラ101に送信する。
【0024】
ネットワーク制御部205では、デジタル圧縮された映像データと音声データとを、ネットワーク上に配信する。ネットワークに映像/音声デコードを行う専用ソフトウェアがインストールされている外部PC104が接続されていれば、これと通信を行い、遠隔で映像と音を確認することができる。
【0025】
次に図4を用いて実際の動作について説明する。
PTZカメラ101からの映像と音声は、監視装置103に記録されると同時に、ネットワーク制御部205から外部PC104に送信される。外部PC104で受信された音は、音の登録がすでになされている場合に、音の比較解析が行われる(処理401、402)。処理402で音データが登録されていない場合は、フローチャートを終了する。
【0026】
登録音は、外部PC104に接続されたマイクにより集音された音データを取り込み登録するか、あるいは監視装置103から送信されたある長さの音データを切り取り登録する。
【0027】
次にその音が発生した場合に監視したい画角を登録する。任意の範囲が撮影されるように、PTZカメラのパン・チルト・ズーム位置のデータを送り画角を調整する。画角が決まれば、それを外部PC104に登録する。登録では、このパン・チルト・ズームデータを保存する。またはPTZカメラにプリセット機能がある場合には、プリセット保存命令をPTZカメラ101に送信し、PTZカメラ側にパン、チルト、ズームの位置を登録しておき、登録したプリセット番号を外部PC104に保存する。
【0028】
登録データは図3の301の様になり、各音パターンに対してパン、チルト、ズームの各データとカメラを識別するカメラNoで構成される。または、カメラ側にプリセット機能がある場合には、302の様にプリセットNoを登録する。
【0029】
外部PC104では、ネットワーク経由で入力された音データが、登録されている音パターンと一致するか比較を行う(処理403)。この時、誤動作を防ぐため、あるレベル以上の音を比較対象とする。もし同じ音のパターンが見つかれば、そのパターン番号に対応するデータ301、または302から送信カメラ制御データを選択する(処理404)。処理403で登録音データと入力された音が一致しなかった場合は、フローチャートを終了する。選択したデータは、監視装置103にネットワーク経由でPTZカメラ101に送信する(処理405)。この時データの送出方法は、PTZカメラ101の種類により、パン、チルト、ズームデータを同時に送出したり、夫々のデータを別々に送出したりする場合がある。またPTZカメラ101のプリセット機能を使用する場合は、プリセット番号をPTZカメラ101に送る。
【0030】
パン、チルト、ズーム位置データまたはプリセット位置データを受けたPTZカメラ101は、要求情報に基づいて画角を変更する。
【0031】
図4に示すフローチャートは、監視している間繰り返し実行されるものである。
【0032】
ここで、ネットワークを介して音をPC104で解析比較したが、監視装置103の音処理部202で、音の比較を行ってもかまわない。この場合、比較音データと対応パターンデータも監視装置103に登録保存する。音処理部202で音を比較し、カメラ制御部203を通じてPTZカメラ104へ制御信号を送り、カメラの画角を変更する。
【0033】
以上詳述したように、本監視システムによれば、登録音を発生させることで、PTZカメラ101の撮影範囲を指定の画角に変更することが可能である。これにより必要なタイミングで指定の場所の監視を行うことができ、必要な場所のみを効率的に撮影することができる。例えば警報器等音を発生する装置が予め設置されていれば、センサ等の装置や配線なしに実施が可能である。また、マイク付きのカメラが設定されていればマイク設置の必要もなく、設置コストを抑えることが可能である。
【0034】
また、超音波を集音可能なマイクを使用することで、発生音を人間に聞こえなくすることで、不審者に気づかれることなく監視することも可能である。
【0035】
また、複数マイクがある場合、301、302にマイクNoもパラメータとすることで、指定マイクで集音した音の場合に、任意のカメラを動作させるなど複雑な制御が可能である。
【0036】
さらに、音処理部に音声認識機能を組み込むことで、登録した言葉に反応して方向を変えることも可能である。
【0037】
さらに、時計などの時報音を登録しておけば、定期的に指定場所を監視することも可能である。
【0038】
本発明は、不審者等が侵入した場合に警報器等の音により、監視カメラの向きを侵入者の逃走場所に変更することで、不審者の映像を確実に記録することを目的とした監視システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による監視システムの一実施形態を示す構成図
【図2】本発明による実施形態の監視装置ブロック図
【図3】本発明による保存データ構成の例を示した図
【図4】本発明の実施形態によるPTZカメラ制御データ送信処理を説明するためのフローチャート
【符号の説明】
【0040】
1 監視システム
101 PTZカメラ
102 マイク
103 監視装置
104 外部PC
105 モニタ
106 スピーカ
201 CPU
202 音声処理部
203 カメラ制御部
204 映像処理部
205 ネットワーク制御部
206 メモリ
207 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラによりパン・チルト・ズーム動作が可能な監視カメラと、
任意の場所に設置された一つ以上のマイクと、
前記パン・チルト・ズーム動作をコントロールする装置を有する監視システムであって、
前記マイクで検出した音が、登録されている登録音と同じであることを判定する登録音検出判定手段と、前記登録音に対応した方向データを特定するカメラ方向決定手段と、前記カメラ方向データを監視カメラに送信する送信手段とを備え、前記監視カメラが前記カメラ方向決定手段により決定した方向に監視場所を変更することを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−62961(P2010−62961A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227745(P2008−227745)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】