説明

監視システム

【課題】駅のホームからの転落者の有無を判定する監視システムを提供する。
【解決手段】撮像手段1が駅のホーム及び線路に関する監視対象の領域の画像を撮像し、境界線設定手段2、3がホームと線路との境界線を設定し、特徴条件設定手段2、3が特徴に関する条件を設定し、物体検出手段2が撮像画像に含まれる物体の画像を検出し、特徴検出手段2が物体の画像の特徴を検出し、特徴条件判定手段2が特徴が条件を満たすか否かを判定し、位置変化検出手段2が物体の画像の位置の変化を検出し、境界線判定手段2が物体の画像が境界線を横切ったか否かを判定し、転落者判定手段2が特徴が条件を満たすことが判定され且つ物体の画像が境界線を横切ったことが判定された場合に物体の画像が転落者の画像であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象となる領域を監視する監視システムに関し、特に、駅においてホームから線路へ転落する人を自動的に検知する監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駅のホームなどから線路へ人が転落した場合には、速やかに転落者の存在を当該ホームに進入する電車などの車両の運転士などに伝達し、安全確保のために当該車両を止める必要がある。目視による転落者の発見及びその伝達は、監視員に掛かる負担が大きく、監視員が転落者を発見してから通信機などを使用して伝達するまでの動作にも時間を要するため、一瞬を争う状況では危険に繋がる可能性がある。
そこで、マットセンサやワイヤセンサなどの外部センサを用いることで、転落者を自動的に検知する手法が試みられてきたが、線路上は電車が通過するため、これらのセンサが設置可能な場所には制限があり、転落者がセンサ設置場所以外で転落する場合には見逃しが発生するなどの問題があった。
【0003】
こうしたことから、従来からある指定領域内に侵入する物体を画像処理によって検知する技術を駅のホームからの転落者検知に応用する方法が考えられる。画像処理によれば、マットセンサやワイヤセンサのように設置位置に起因する見逃しを低減することが可能になる。このような画像処理による物体検知技術では、入力画像と背景画像との差に基づいて物体を検知するいわゆる差分法による方法が広く用いられる。
【0004】
ここで、差分法とは、撮像装置などから得られた入力画像と、予め用意した検出すべき物体が映っていない背景画像との画素毎の差分を計算して得た差分画像において、当該差分画像の各画素と予め用意したしきい値(例えば、20など)との比較を行い、しきい値以上の差分値を持つ画素の位置より、検出すべき物体を見つける手法である。但し、差分法に基づく転落者検知では、ホーム上に存在する人の影や、ホームへ進入する電車やそのヘッドライトなどのように、転落者以外の外乱ノイズを誤検知する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−157599号公報
【特許文献2】特開2007−233919号公報
【特許文献3】特許第4087045号公報
【特許文献4】特開2006−82618号公報
【特許文献5】特許第3607653号公報
【特許文献6】特開2008−176768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、撮像装置を用いて監視対象領域内に侵入する物体を監視する監視システムにおいて、駅などでホームから線路への転落者を検知する場合、画像処理に基づく監視によるホームから線路への転落者の監視では、ホーム上に存在する人の影や、ホームへ進入する電車やヘッドライトなどの外乱を転落者として誤検知する可能性があるといった問題があった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、ホーム及び線路を撮像する監視カメラの映像(画像)を画像処理し、ホーム監視における外乱と転落者を区別し、転落者のみを正確に検出して発報等することができる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る監視システムでは、次のような構成により、駅のホームからの転落者の有無を判定する。
すなわち、撮像手段が、駅のホーム及び線路に関する監視対象の領域の画像を撮像する。境界線設定手段が、前記ホームと前記線路との境界線を設定する。特徴条件設定手段が、物体の画像が転落者の画像であるか否かを判定するための特徴に関する条件を設定する。物体検出手段が、前記撮像手段により撮像された画像に含まれる物体の画像を検出する。特徴検出手段が、前記物体検出手段により検出された物体の画像の特徴を検出する。特徴条件判定手段が、前記特徴検出手段により検出された特徴が前記特徴条件設定手段により設定された条件を満たすか否かを判定する。位置変化検出手段が、前記物体検出手段により検出された物体の画像の位置の変化を検出する。境界線判定手段が、前記位置変化検出手段による検出結果に基づいて、前記物体検出手段により検出された物体の画像が前記境界線設定手段により設定された境界線を横切ったか否かを判定する。転落者判定手段が、前記特徴条件判定手段により前記特徴検出手段により検出された特徴が前記特徴条件設定手段により設定された条件を満たすことが判定され、且つ、前記境界線判定手段により前記物体検出手段により検出された物体の画像が前記境界線設定手段により設定された境界線を横切ったことが判定された場合に、前記物体検出手段により検出された物体の画像が転落者の画像であると判定することで、転落者の有無を判定する。
【0008】
従って、駅のホームからの転落者の有無の判定の精度を高めることができ、例えば、ホーム及び線路を撮像する監視カメラの映像を画像処理し、ホーム監視における外乱と転落者を区別し、転落者のみを正確に検出して発報等すること、などができる。
【0009】
ここで、駅のホーム及び線路に関する監視対象の領域としては、転落者の有無を監視するための種々な領域が用いられてもよく、例えば、ホームの一部又は全部と当該ホームに隣接した線路(複数の駅にわたって続く線路の一部)を含むような領域を用いることができる。
また、ホームと線路との境界線としては、種々な境界の線が用いられてもよく、また、線としては、直線や曲線など、種々な線が用いられてもよい。
【0010】
また、物体の画像が転落者の画像であるか否かを判定するための特徴としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、幅や高さなどの大きさや、速度などを用いることができる。
また、このような特徴に関する条件としては、例えば、「所定値以上(又は、所定値より大きい)」、「所定値以下(又は、所定値より小さい)」、「所定の範囲の内(又は、所定の範囲の外)」といった条件を用いることができる。
【0011】
また、境界線や条件などの情報を設定する方法としては、種々な方法が用いられてもよく、例えば、人による操作に応じて設定する方法や、予めシステム(例えば、ある装置)に初期設定される方法などを用いることができる。設定された情報は、例えば、システム(例えば、ある装置)のメモリに記憶される。
また、撮像された画像に含まれる物体の画像は、例えば、その物体が存在しないときの背景画像との比較(差分等)、或いは、その物体のテンプレートを画像中で検索した結果、に基づいて検出することができる。
【0012】
また、物体の画像の位置の変化としては、例えば、その物体が移動した軌跡を検出することができる。
また、物体の画像が境界線を横切ったか否かを判定することに関して、境界線を横切る方向を設定する態様を用いることもでき、この場合、物体の画像が設定された方向で境界線を横切った場合にのみ、物体の画像が境界線を横切ったと判定し、物体の画像が異なる方向で境界線を横切っても、物体の画像が境界線を横切ったとは判定しない。
【0013】
本発明に係る監視システムでは、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、車両状況判定手段が、前記監視対象の領域における車両の存在の状況を判定する。判定停止手段が、前記車両状況判定手段による判定結果に基づいて、前記監視対象の領域に車両が存在しない状況から存在する状況となったことが判定された場合(例えば、車両が進入してきた場合)には、転落者の有無の判定を停止する。判定再開手段が、前記判定停止手段により転落者の有無の判定が停止させられた状態において、前記車両状況判定手段による判定結果に基づいて、前記監視対象の領域に車両が存在する状況から存在しない状況となったことが判定された場合(例えば、車両が退出した場合)には、転落者の有無の判定を再開する。
【0014】
従って、例えば、監視対象の領域に車両が進入してきて滞在しているときには転落者の有無の判定を停止して、その後、監視対象の領域から車両が退出したときには転落者の有無の判定を再開することができ、これにより、車両を転落者であると誤って検出してしまうことを防止することができる。
【0015】
ここで、監視対象の領域における車両の存在の状況としては、種々な状況が判定されてもよく、例えば、車両の進入、滞在、退出などの1以上の状況を判定する構成を用いることができる。
また、監視対象の領域における車両の存在の状況を判定する方法としては、種々な方法が用いられてもよく、例えば、監視対象の領域における車両の存在の状況を示す情報を含んだ所定の信号(例えば、外部からの信号)を受信してその信号の内容に基づいて判定する方法や、或いは、監視対象の領域の画像(例えば、リアルタイムの画像)と車両が存在しないときの背景画像との差分等に基づいて判定する方法や、或いは、これら両方の方法を組み合わせて使用する方法などを用いることができる。
【0016】
また、転落者の有無の判定を停止する態様としては、例えば、転落者の有無の判定に関する全ての処理を停止する態様が用いられてもよく、或いは、最終的な転落者の有無の判定は停止して行わないが、例えば物体の画像の特徴の検出や位置の変化の検出などの一部の処理は停止しないで行うような態様が用いられてもよい。
また、転落者の有無の判定を再開する態様としては、例えば、停止させられた処理の全てを再開させる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る監視システムによると、駅のホームからの転落者の有無の判定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る監視システムの構成例を示す図である。
【図2】撮像装置によって撮像された入力画像の一例を示す図である。
【図3】ホームから線路への進入を検知するための設定を行った画像の一例を示す図である。
【図4】転落者を検知した時に表示装置に表示される出力画像の一例を示す図である。
【図5】監視領域に車両が進入している時の入力画像の一例を示す図である。
【図6】車両の進入の有無を判断するための設定の一例を示す図である。
【図7】車両進入時の入力画像の一例を示す図である。
【図8】矩形に鳥が入った場合の入力画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
なお、本実施例において、画像に対するしきい値やライン等の設定処理や、画像中における所定の対象やその矩形領域や位置変化(軌跡)等の検出(検知)処理などの各種の画像処理は、種々な方法を用いて行われてもよく、公知の様々な技術が利用されてもよく、例えば、差分法などは公知の技術である(例えば、特許文献6など参照。)。
【0020】
図1には、本発明の一実施例に係る監視システムの構成例を示してある。
本例の監視システムは、撮像装置1と、物体検出装置2と、指示装置3と、警報出力装置4と、表示装置5を備えている。
また、物体検出装置2は、映像入力回路11と、画像処理プロセッサ12と、プログラムメモリ13と、ワークメモリ14と、外部I/F(インタフェース)回路15と、映像出力回路16と、データバス(通信路)17により構成されている。
【0021】
撮像装置1は、例えばカメラを用いて構成され、監視の対象となる領域を撮像する。この撮像された入力画像は、物体検出装置2における映像入力回路11を介してワークメモリ14へ記録される。
物体検出装置2では、例えば、撮像装置1で撮影された入力画像を処理して監視領域の物体を抽出し、抽出した物体が転落者など検知すべき対象であるか否かを判定して、監視領域中の物体を検出する。
設定装置(本例では、指示装置3)は、物体検出装置2における画像処理などで使用されるパラメータを調整する。
警報出力装置4は、物体検出装置2における検出結果などに基づいて、警報を出力する。
表示装置5は、物体検出装置2における検出結果などに基づいて、出力画像を画面に表示する。
【0022】
物体検出装置2において、画像処理プロセッサ12は、プログラムメモリ13に記録されているプログラムに従って、ワークメモリ14内に記録された入力画像を処理し、その処理結果を映像出力回路16を介して表示装置5へ表示する。また、画像処理プロセッサ12は、画像処理の結果、警報の発報が必要であると判断された場合には、外部I/F回路15を介して警報信号を出力し、これにより、警報出力装置4により警報を発報する。
【0023】
また、画像処理プロセッサ12は、外部I/F回路15を介して入力される、例えばマウス、キーボードなどの指示装置3を使ったオペレータ(人)からの指示に基づいて、前記したプログラムのパラメータを変更や修正しながら前記した入力画像を処理する。
また、映像入力回路11と、画像処理プロセッサ12と、プログラムメモリ13と、ワークメモリ14と、外部I/F回路15と、映像出力回路16は、データバス17に接続されている。
【0024】
図2には、撮像装置1によって撮像された入力画像の一例を示してある。
本例の監視システムでは、特に、ホーム101から線路102付近へ進入する人を転落者として自動的に検知し、警報を発報することを目的とする。
【0025】
図3には、ホーム101から線路102への進入を検知するための設定を行った画像の一例を示してある。
具体的には、検知ライン111と、矢印112で示される方向が設定されている。本例では、転落者はホーム101から線路102へ移動するため、検知ライン111を矢印112が示す方向に超えた物体のみを検知する。これにより、影や日照変化などの誤検知を削減することができる。
【0026】
更に、本例では、検知した物体が発報するべき転落者であるかどうかの識別精度を上げるために、検知した物体の大きさや速度が一定範囲内であった場合にのみ、検知した物体を警報の対象と判断する。
本例では、一例として、1人の人間が高さ2mの箇所から自由落下した場合に想定され得る大きさと速度を転落者の条件とし、具体例として、検知した物体が幅0.5m〜2.0m、高さ0.5m〜2.0m、速度3.0m/s〜7.0m/sの範囲内であった時にのみ、物体が転落者であると判定する。
ここで、検知ライン111、方向(本例では、矢印112)、及び転落者の大きさや速度などの条件は、オペレータが指示装置3を用いて物体検出装置2に任意に入力して設定することができる。
【0027】
図4には、転落者を検知した時に表示装置5に表示される出力画像の一例を示してある。
検知により発見した転落者121に対して、物体検出装置2により当該転落者121の位置を示す矩形122及び移動の履歴を示す軌跡123が入力画像に付与されて出力される。本例では、これらの矩形122や軌跡123は、検知ライン111を矢印112の方向に超えた物体の中で、特に大きさや速度などが前述した転落者の条件に合致したものに対してのみ表示される。また、転落者121を検知すると同時に、警報出力装置4に警報信号が送信されて、警報が発報される。
【0028】
なお、警報の発報時に、出力画像をワイヤレスネットワークなどを介して遠隔で運転士などの表示装置へ送信し、運転士などにより現場の様子を視覚的に容易に確認できるようにしてもよい。
また、転落者の進入がホームからの一方向によらない場合には、複数の検知ラインを設置する方法や、進入方向によらず踏切などに進入した物体を検知すべき転落者の候補とするための検知エリアを検知ラインの代わりに設定する方法が用いられてもよい。
【0029】
また、ホーム101からの転落者の監視では電車などの車両が監視領域内に進入することから、車両を転落者と誤検知する可能性があるため、本例では、電車が監視領域内に滞在している間は物体検出処理を止める。
図5には、監視領域に車両131が進入している時の入力画像の一例を示してある。
更に、車両131が一定時間停車することで背景差分法における背景画像に車両131が映り込んで異常な背景画像が生成される可能性があるため、本例では、車両131の入退出時は背景画像の更新を行わないようにする。
【0030】
ここで、車両の進入及び退出を判断する方法としては、種々な方法が用いられてもよく、例えば、踏切信号などの車両の入退出の情報を持った外部信号を外部I/F回路15より入力することが確実であり、具体的には、車両の進入を知らせる信号が入力された時に、物体検出処理及び背景画像の更新を停止し、更に、車両の退出を知らせる信号が入力された時に、物体検出処理及び背景画像の更新を再開する。なお、このような信号が入力されてから、入力画像の監視領域の中に車両が実際に進入してくるまで、信号の仕様やカメラの設置場所によって時間差がある場合があるが、例えば、時間差が予測可能である場合には、物体検出処理や背景画像更新の停止及び再開は、予測した時間分ずらすのがよい。
【0031】
また、車両の接近を伝達する信号を利用することができない場合や、又は、このような信号を利用することはできるが信号の入力と実際の車両の監視領域内への進入の時間差を予測することができない場合には、例えば、特定の領域で、入力画像と背景画像との間でテンプレートマッチングなどを実施し、相関値の大小によって車両の進入の有無を判断する方法で代替することが可能である。
【0032】
これについて、図6及び図7を参照して説明する。
図6には、車両の進入の有無を判断するための設定の一例を示してある。
本例では、設定装置(本例では、指示装置3)によって相関値を計算する領域を矩形141、矩形142のように1つ以上描写し、それぞれの矩形141、142で入力画像と背景画像との間の相関値を、SSD(Sum of Squared Difference)法などのテンプレートマッチングなどにより測定する。
【0033】
この測定の結果、例えば、矩形141、矩形142のいずれかの領域で相関値がしきい値を下回った時に、車両が進入したものと判断する。車両が進入したと判断する相関値のしきい値としては、本例では、0.5とする。図6の例では、矩形141、142の範囲内に車両などが進入しておらず入力画像と背景画像(本例では、車両などが存在しないときの画像)が類似しているため、例えば、入力画像と背景画像との相関値が矩形141で0.95、矩形142で0.90などといったように高い値を示し、物体検出処理及び背景画像更新は継続して実施される。
【0034】
図7には、車両進入時の入力画像の一例を示してある。
矩形141、142の範囲内に車両などが進入すると、入力画像と背景画像のパターンが大きく異なり、例えば、矩形141における入力画像と背景画像との相関値は0.3などといったように低い値を示す。この時、相関値はしきい値とした0.5を下回るため、車両が監視領域内に進入したものと判定し、物体検出処理及び背景画像更新を停止する。
【0035】
なお、テンプレートマッチングなどによる車両進入の判定で、例えば小動物などのように車両以外の物体が矩形141、142内に進入した場合などにおいても、相関値が下がるため、車両進入の誤判定を起こす可能性がある。
図8には、矩形142に鳥151が入った場合の入力画像の一例を示してある。
この時、矩形142で鳥151の進入により相関値が0.4になったとすると、相関値がしきい値を下回るため、誤って車両の進入と判断し、車両が進入していないにも関わらず、物体検出処理や背景更新処理を誤って停止してしまう。
【0036】
そこで、車両進入の誤判定の頻度を軽減するための有効な方法として、本例では、複数の矩形を連動させて、特定の順番で相関値が変動した場合にのみ、車両の進入とみなすなどの方法を用いる。
例えば、車両が画面奥から手前に向かって走行する場合、矩形141の方が矩形142より早く車両が到達するので、相関値についても矩形141、矩形142の順でしきい値を下回るようになるため、車両進入の判定についても、この順序通りに相関値がしきい値を下回った場合にのみ動作する(車両の進入とみなす)ものとし、例えば、矩形142単体でしきい値を下回った場合には車両の進入とみなさない、などというように、複数の矩形141、142を組み合わせて車両の進入判定条件を変える。これにより、矩形142に鳥151が入ったような場合においても、矩形141では変動が小さく相関値がしきい値を下回らないため、車両の進入とはみなさないことが実現される。
【0037】
また、検知ライン111を転落者と予測される物体が通過した直後に、矩形141若しくは矩形142で相関値がしきい値を下回った時には、転落者が矩形141、142内に進入したことがその原因である可能性が高いため、例えば、物体検出処理の停止は実施しない。また、車両の進入判定としては、外部信号により車両が接近していると分かっている時間又はその時間の前後数分間のみ判定を実施するなどというように、外部の情報と組み合わせて行うことで、車両進入判定の誤作動を低減することができる。
【0038】
以上のように、本例では、監視領域を撮像レンズ及び撮像素子を有する撮像装置1によって撮像して得られた入力画像を処理し、当該入力画像から物体を抽出して監視領域内の物体を検出する監視システムにおいて、次のような処理を行う。
すなわち、検知ライン設定機能により、撮像装置1によって駅におけるホーム101と線路102の映像を撮像した映像上に、仮想的なホーム・線路境界線(本例では、検知ライン111)を設定する。物体追跡機能により、検出した物体の位置変化(本例では、軌跡123)を得る。物体特徴抽出機能により、検出した物体の大きさ、速度などの少なくとも1つ以上の物体の特徴を抽出する。ライン交差判定機能により、物体追跡機能によって得た物体の位置変化によって、物体が検知ライン設定機能によって設定されたホーム・線路境界線を横切ったか否かを判定する。転落判定機能により、物体特徴抽出機能によって抽出された物体の特徴と、ライン交差判定機能による判定結果(物体が境界線を横切ったか否かの判定結果)に基づいて、転落者の有無を判定する。
【0039】
これらの機能により、例えば、ホーム101と線路102の境界を横切って線路側に移動した所定範囲の大きさ(又は、所定の範囲の速度、など)の物体を転落者と判断することで、監視領域内の転落者を自動的に検知する。これにより、例えば、ノイズと転落者を識別して、監視領域内の転落者のみを検知する(又は、その確実度を高める)ことが可能となる。
【0040】
また、本例の監視システムでは、次のような処理を行う。
すなわち、外部信号入力機能により、監視領域への車両の進入の有無についての情報を外部信号によって入力する。転落判定停止機能により、監視領域への車両の進入時及び滞在時には、前記した転落者の有無の判定を停止する。転落判定再開機能により、車両の退出後に、前記した転落者の有無の判定を再開する。
【0041】
更に、本例の監視システムでは、次のような処理を行う。
すなわち、相関計算機能により、監視領域への車両進入時に(例えば、外部信号によってそれを知らされた時に)、入力画像と背景画像との相関値を計算する。車両判定機能により、相関値が所定の値を下回る場合(又は、相関値が所定の値以下となる場合)に、監視領域内に車両が進入、滞在していることを判定する。そして、車両判定機能によって監視領域内への車両の進入がないことが判定された場合に、前記した転落判定機能により転落者の有無を判定する。
【0042】
従って、本例の監視システムでは、例えば、少ない誤発報で、ホームから線路への転落者を正確に検出することができる。これにより、監視員や車両の運転士などがすぐに転落のあった監視領域のリアルタイムの映像を確認することができ、誤発報が減少することでシステムの信頼性も高まり、以前より少ない労力での転落監視が可能となり、迅速な危険回避行動が行えるようになる。
【0043】
なお、本例の監視システムでは、撮像装置1の機能により撮像手段が構成されており、指示装置3及び物体検出装置2の機能により境界線(本例では、検知ライン)設定手段や特徴条件(本例では、幅や高さや速度の条件)設定手段が構成されており、また、物体検出装置2の画像処理プロセッサ12が入力画像を処理する機能により、入力画像に対する物体検出手段や、その物体の画像の特徴検出手段や、その物体の画像の特徴が条件を満たすか否かを判定する特徴条件判定手段や、その物体の画像の位置変化検出手段や、その物体の画像が境界線を横切ったか否かを判定する(本例では、横切った方向も判定する)境界線判定手段や、特徴や境界線の判定結果に基づいて転落者の有無を判定する転落者判定手段が構成されている。
また、本例の監視システムでは、外部信号や画像処理により物体検出装置2が監視領域における車両の存在状況を判定する機能により車両状況判定手段が構成されており、その判定結果に応じて物体検出装置2が転落者の有無の判定を停止や再開する機能により判定停止手段や判定再開手段が構成されている。
【0044】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・撮像装置、 2・・物体検出装置、 3・・指示装置、 4・・警報出力装置、 5・・表示装置、 11・・映像入力回路、 12・・画像処理プロセッサ、 13・・プログラムメモリ、 14・・ワークメモリ、 15・・外部I/F回路、 16・・映像出力装置、 17・・データバス(通信路)、
101・・ホーム、 102・・線路、 111・・検知ライン、 112・・矢印、 121・・転落者、 122、141、142・・矩形、 123・・軌跡、 131・・車両、 151・・鳥、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のホームからの転落者の有無を判定する監視システムであって、
駅のホーム及び線路に関する監視対象の領域の画像を撮像する撮像手段と、
前記ホームと前記線路との境界線を設定する境界線設定手段と、
物体の画像が転落者の画像であるか否かを判定するための特徴に関する条件を設定する特徴条件設定手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に含まれる物体の画像を検出する物体検出手段と、
前記物体検出手段により検出された物体の画像の特徴を検出する特徴検出手段と、
前記特徴検出手段により検出された特徴が前記特徴条件設定手段により設定された条件を満たすか否かを判定する特徴条件判定手段と、
前記物体検出手段により検出された物体の画像の位置の変化を検出する位置変化検出手段と、
前記位置変化検出手段による検出結果に基づいて、前記物体検出手段により検出された物体の画像が前記境界線設定手段により設定された境界線を横切ったか否かを判定する境界線判定手段と、
前記特徴条件判定手段により前記特徴検出手段により検出された特徴が前記特徴条件設定手段により設定された条件を満たすことが判定され、且つ、前記境界線判定手段により前記物体検出手段により検出された物体の画像が前記境界線設定手段により設定された境界線を横切ったことが判定された場合に、前記物体検出手段により検出された物体の画像が転落者の画像であると判定することで、転落者の有無を判定する転落者判定手段と、
を備えたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記監視対象の領域における車両の存在の状況を判定する車両状況判定手段と、
前記車両状況判定手段による判定結果に基づいて、前記監視対象の領域に車両が存在しない状況から存在する状況となったことが判定された場合には、転落者の有無の判定を停止する判定停止手段と、
前記判定停止手段により転落者の有無の判定が停止させられた状態において、前記車両状況判定手段による判定結果に基づいて、前記監視対象の領域に車両が存在する状況から存在しない状況となったことが判定された場合には、転落者の有無の判定を再開する判定再開手段と、
を備えたことを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−166243(P2011−166243A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23680(P2010−23680)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】