説明

監視用画像処理装置

【課題】人物をマスク画像で効果的に隠しプライバシー保護を十分に図ることができる監視用画像処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 監視対象エリアの現在の画像である現画像を記憶する現画像記憶手段と、前記現画像と比較するための比較用画像を記憶する比較用画像記憶手段と、前記現画像と前記比較用画像とを比較し変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、前記変化領域内の各輝度値を所定の閾値で2値化し、該2値化後の結果に基づいて前記現画像内のマスキングする領域を設定するマスク領域設定手段と、前記マスク領域内を覆う第1のマスク画像を作成する第1のマスク画像作成手段と、前記現画像の前記マスク領域に前記第1のマスク画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する重ね合わせ手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プライバシー保護のために画像の一部をマスキング処理する監視用画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
個人情報保護法の制定、肖像権の範囲の拡大などの個人情報を尊重する社会背景があり、より慎重な個人情報の扱いが求められている。画像による監視システムにおいても、肖像権を含む個人情報である「顔情報」は、慎重に取り扱うことが要請されており、それら解決の為、各種手段が提供されている。従来の監視システムに用いられる監視用画像処理装置においては、撮影される人物のプライバシーの保護が必要な画像領域に予め作成したマスク画像を重ね合わせ、その画像領域を見えなくすること(マスキング)によりプライバシーの保護を図っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4311255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の監視用画像処理装置では、マスク画像が重ね合わせられるマスク領域は予め固定で設定されていた。そのため、人物が移動してマスク領域から出てしまうとその人物をマスク画像で隠せなくなり、プライバシー保護を図ることができないという課題があった。また、個人情報の尊重と効率的な監視の要請を両立させるためには、下記の条件1〜3を満たすようなマスク処理を実行することが好ましい。
条件1:画面中の歩行者を、個人が分からないように目隠しする。
条件2:個人を特定できなくても、歩行者が通過したことは認識出来る様にしたい。
条件3:マスク画像は画面全景の2割程度とし、8割程度は常時撮影したい。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、人物をマスク画像で効果的に隠しプライバシー保護を十分に図ることができる監視用画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る監視用画像処理装置は、監視対象エリアの現在の画像である現画像を記憶する現画像記憶手段と、前記現画像と比較するための比較用画像を記憶する比較用画像記憶手段と、前記現画像と前記比較用画像とを比較し変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、前記変化領域内の各輝度値を所定の閾値で2値化し、該2値化後の結果に基づいて前記現画像内のマスキングする領域を設定するマスク領域設定手段と、前記マスク領域内を覆う第1のマスク画像を作成する第1のマスク画像作成手段と、前記現画像の前記マスク領域に前記第1のマスク画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する重ね合わせ手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の監視用画像処理装置は、現画像と比較用画像とに基づいて作成したマスク画像を現画像に重ね合わせるので、人物の移動に追従した動的なマスキング処理をすることができ、撮影される人物のプライバシー保護を十分に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1の監視用画像処理装置を示す構成図。
【図2】現画像の一例を示す図。
【図3】比較用画像の一例を示す図。
【図4】現画像と比較用画像とを比較して抽出した変化領域を示す概念図。
【図5】図4の変化領域を2値化したシルエットを示す概念図。
【図6】人物領域を示す図。
【図7】第1のマスク画像の一例を示す図。
【図8】現画像と第1のマスク画像との重ね合わせ画像を示す図。
【図9】実施の形態1の動作を説明するフローチャートを示す図。
【図10】1〜4フレームの重ね合わせ画像を示す図。
【図11】人物領域内の上方2分の1をマスク領域と設定した第1のマスク画像を示す図。
【図12】人物領域内の上方2分の1をマスク領域と設定した第1のマスク画像と図10の現画像との重ね合わせ画像を示す図。
【図13】第2のマスク画像の一例を示す図。
【図14】第2のマスク画像と現画像との重ね合わせ画像を示す図。
【図15】実施の形態2の監視用画像処理装置を示す構成図。
【図16】マスク領域に比較用画像データの対応画素が入力された第2のマスク画像と現画像との重ね合わせ画像を示す図。
【図17】実施の形態2の動作を説明するフローチャートを示す図。
【図18】実施の形態3の動作を説明するフローチャートを示す図。
【図19】実施の形態4の監視用画像処理装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図12を用いて実施の形態1を説明する。図1は、実施の形態1の監視用画像処理装置を示す構成図である。
【0010】
図1に示すように、監視用画像処理装置は、ビデオ入力手段1と、A/D変換手段2と、現画像記憶手段3と、比較用画像記憶手段4と、比較用画像更新手段5と、変化領域抽出手段6と、マスク領域設定手段7と、第1のマスク画像作成手段8と、重ね合わせ手段9と、D/A変換手段10と、ビデオ出力手段11とを有する。
【0011】
ビデオ入力手段1は、監視カメラ等の外部装置からビデオ信号を入力する。
【0012】
A/D変換手段2は、ビデオ入力手段1に入力されたビデオ信号を監視用画像処理装置で処理するため量子化し、デジタルデータに変換する。例えば、1画素あたり8ビットの多値データに変換する。
【0013】
現画像記憶手段3は、A/D変換手段2の出力を受け監視対象エリアの現在の画像である現画像のデータを受け取って記憶する。図2は、現画像の一例を示す図である。この例では、現画像は屋内の通路を撮影した画像で、通路をドア方向に向かって移動する人物が撮影されている。
【0014】
比較用画像記憶手段4は、現画像記憶手段3に記憶される現画像と比較するための比較用画像データを作成し、記憶する。具体的には現画像との差分処理を行う比較対象として背景画像を蓄積している。図3は、比較用画像の一例を示す図である。図3の比較用画像は、図2の現画像と比較して、カメラ視野内の移動物が消去された画像(背景画像)となっている。
【0015】
比較用画像更新手段5は、所定のルールに基づいて比較用画像記憶手段4の比較用画像データの作成、記憶、更新処理を指示する。これら比較用画像記憶手段4、比較用画像更新手段5の処理についての詳細は後述する。
【0016】
変化領域抽出手段6は、現画像記憶手段3に記憶される現画像データと、比較用画像記憶手段4に記憶される比較用画像データとを比較して差分を取り、変化領域を抽出する。なお、比較とは画素単位で輝度差(または色差)を求める処理のことをいい、例えばA/D変換手段2が8ビットで量子化を行っていれば、輝度差は0〜255の値をとる。この輝度差を全画面で求めたものが図4に示す変化領域になる。
【0017】
図4は、図2の現画像と図3の比較用画像とを比較して抽出した変化領域を示す概念図である。図2での人物が撮影されている領域及び人物の影があった領域が変化領域として抽出されている。
【0018】
マスク領域設定手段7は、変化領域抽出手段6で抽出された変化領域より人物と思われる領域を特定する処理を行う。具体的には、変化領域抽出手段6で抽出された変化領域内の各輝度値を所定の閾値で2値化する。2値化とは、0〜255の値をとる変化領域を特定のしきい値より上か下かで0、1に置き換える作業である。図4の変化領域が2値化されると、図5の様なシルエット画像となる。このシルエットが、求める「人物が存在すると想定される領域(略:人物領域)」である。図5は、図4の変化領域内の各輝度値を2値化し抽出した領域(シルエット)を示す概念図である。黒い領域は1の部分で、それ以外の領域は0の部分となっている。変化領域抽出手段6やマスク領域設定手段7では、ある程度の誤差が出るため、シルエットは完全に人物領域を示していない場合が多い。図5と図4とを比較すると、人物の影の部分、人物の「腕」に該当する部分の一部は閾値以下と判定されその輝度値は0に置き換えられており(黒以外の領域となっている)、誤差の中で消失している。したがって、人物の「影」に該当する部分のような誤差の影響を低減するため、シルエットそのものではなく、シルエットを含むより大きい範囲を人物領域とするのが妥当である。そこで、シルエットの外接矩形を人物領域と定義する。図6は人物領域を示す概念図である。シルエットに外接するよう設けられた矩形領域が人物領域である。
【0019】
第1のマスク画像作成手段8は、マスク領域設定手段7で設定されたマスク領域内を覆う第1のマスク画像データを作成する。図7は第1のマスク画像の一例を示す図である。この例では人物領域内の全てをマスク領域としており、マスク領域内を黒色に塗りつぶした第1のマスク画像を示している。
【0020】
重ね合わせ手段9は、現画像記憶手段3に記憶される現画像と第1のマスク画像記憶手段8に記憶される第1のマスク画像とを重ね合わせて重ね合わせ画像を作成する。図8は、図2の現画像に図7の第1のマスク画像が重ね合わせられた重ね合わせ画像を示す図である。マスク領域内が黒色に塗りつぶされることによって、人物がマスク画像で見えなくなっている。
【0021】
D/A変換手段10は、重ね合わせ手段9から重ね合わせ画像データを受け取り、ビデオ信号に変換する。
【0022】
ビデオ出力手段11は、D/A変換手段10で変換されたビデオ信号を、外部の装置に出力する。
【0023】
比較用画像記憶手段4、比較用画像更新手段5の機能についての詳細を説明する。ここでは比較用画像データの更新ルールについて、過去5フレームの画像データから比較用画像データを作成、更新する平均法について説明する。
【0024】
まず、A/D変換手段2から1フレーム目の現画像データが比較用画像記憶手段4に入力されると、比較用画像記憶手段4は1フレーム目の現画像データが入力されたことを比較用画像更新手段5に通知する。通知を受け取った比較用画像更新手段5は、比較用画像記憶手段4にその現画像データを記憶するよう指示する。比較用画像記憶手段4からの指示を受けた比較用画像記憶手段4は、1フレーム目の現画像データを記憶する。
【0025】
その後2フレーム目以降の現画像データも同様に比較用画像記憶手段4に記憶されていく。5フレーム目の現画像データが比較用画像記憶手段4に入力されると、比較用画像記憶手段4からの通知を受けた比較用画像更新手段5は、比較用画像記憶手段4に1〜5枚目のフレームから比較用画像データを作成するよう指示する。指示を受けた比較用画像記憶手段4は、これまで記憶していた1フレーム目から5フレーム目までの現画像データを平均した比較用画像データを作成する。平均とはすなわち、5フレームの現画像データを画素単位で加算し、その和をフレーム数5で割ることにより平均値を求めることである。このように作成された比較用画像データは、6〜10フレーム目までの現画像データとの比較に用いられる。
【0026】
1〜5フレーム目までの各現画像データについては、例えば、平均された比較用画像データが作成されるまでは現画像記憶手段3に記憶しておき、平均された比較用画像データが作成されると各現画像フレームと比較することとしてよい。すなわち、1〜5フレーム目までの各現画像データについても、1フレーム目から5フレーム目までの現画像データを平均した比較用画像データと比較されることとなる。
【0027】
次に6フレーム目の現画像データが入力されてくると、比較用画像更新手段5は比較用画像記憶手段4に再び記憶指示を行い、10フレーム目までの現画像データが入力された時点で6〜10フレーム目の現画像データを平均した比較用画像データが新たに作成され比較用画像の更新が行われる。以降も同様である。なお、上記説明では5フレームごとに平均の比較用画像データを更新するものとしたが、このフレーム数は5に限定されないことは言うまでもない。
【0028】
次に、実施の形態1の動作について説明する。図9は、実施の形態1の動作を説明するフローチャートを示す図である。
【0029】
カメラ等の外部装置からビデオ信号がビデオ入力手段1に入力されると、処理が開始され、A/D変換手段2でデジタル変換された現画像データが得られる(ステップS1)。
【0030】
得られた現画像データは現画像記憶手段3に記憶される(ステップS2)。また、現画像データは比較用画像記憶手段4にも出力され、比較用画像データ作成用の記憶領域に記憶される。
【0031】
次に、現画像データと比較用画像データとを比較し変化領域を抽出する(ステップS3〜S6)。比較用画像データが更新されない場合(ステップS3−No)、現画像データと更新される前の比較用画像データ(すなわち比較用画像記憶手段4に既に記憶されている比較用画像データ)とから差分を計算し、変化領域が抽出される(ステップS4)。
【0032】
比較用画像データが更新される場合(ステップS3−Yes)、比較用画像データの更新処理がなされ(ステップS5)、新たに作成された比較用画像データが比較用画像記憶手段4に記憶される。それまで記憶されていた更新前の比較用画像データについては廃棄してもよい。そして、現画像データと更新後の比較用画像データとから差分を計算し、変化領域が抽出される(ステップS6)。
【0033】
変化領域抽出手段6において変化領域が抽出されると、マスク領域設定手段7は、変化領域内の各輝度値を2値化して求めたシルエットの外接矩形領域を人物領域と判定し、人物領域の一部もしくは全部をマスク領域として設定する(ステップS7)。
【0034】
次に、第1のマスク画像作成手段8はマスク領域内を覆う第1のマスク画像を作成する(ステップS8)。
【0035】
そして、重ね合わせ手段9において現画像と第1のマスク画像作成手段8が作成した第1のマスク画像とが重ね合わせられ、現画像中のマスク領域を覆った重ね合わせ画像が作成される(ステップS9)。そして、D/A変換手段10でビデオ信号に変換され、出力される(ステップS10)。
【0036】
図10は、1〜4フレーム分の現画像について作成された、マスクを重ね合わせた画像を示す。各フレームの現画像についてマスク領域に第1のマスク画像が重ね合わせられており、移動する人物に追従してマスキング処理が行われている。
【0037】
以上のように実施の形態1によれば、各フレーム毎に現画像と比較用画像(背景画像)とを比較して変化領域を抽出し、その変化領域から人物が存在する人物領域を求め人物領域の一部もしくは全部に設定されたマスク領域に第1のマスク画像を重ね合わせるので、画像中の人物の移動に追従した動的なマスキング処理をすることができ、撮影される人物のプライバシー保護を十分に図ることができる。
【0038】
また、マスク領域設定手段7はシルエットの範囲そのものを人物領域として判定せず、シルエットの外接矩形を人物領域と判定することにより、2値化誤差による影響を補償することができる。つまり、閾値によっては、シルエットにおける人物の顔の部分が消えたりする場合がある。そのような場合にシルエット範囲をそのまま全て人物領域としてしまうと、人物の顔がある領域に第1のマスク画像を合成できなくなりプライバシー保護が十分に図れないようになってしまう。そういったことから、シルエットの外接矩形領域を人物領域と判定することにより、プライバシーを保護したい人物を的確に第1のマスク画像で隠すことができるとともに、人物以外の範囲は十分に視認することが可能となる。
【0039】
上記説明においてはシルエットの外接矩形を人物領域と判定することとしたが、これに限定されるものではない。
【0040】
第1のマスク画像作成手段8で作成される第1のマスク画像の一例として、図6に示す人物領域内全てをマスク領域とした第1のマスク画像について説明したが、これに限定されるものではない。例えば図11に示すように、人物領域内の上方2分の1をマスク領域と設定した第1のマスク画像としてもよい。図11の黒色で囲まれた領域がマスク領域で、破線で囲まれた領域が人物領域である。図12は、図11の第1のマスク画像と図10の1〜4フレームの現画像との重ね合わせ画像を示す。このように、人物領域の上方2分の1をマスク領域にとった第1のマスク画像を現画像と重ね合わせることによって人物領域の下半分がマスク画像で覆われなくなるので、監視映像を見る管理者は、人物が通過していることを明確に把握でき、その移動方向についても確認することができる。人物領域の上方2分の1をマスク領域とした場合、「画面中の歩行者を、個人が分からないように目隠しする」という条件1、「個人を特定できなくても、歩行者が通過したことは認識出来る様にしたい」という条件2、「マスク画像は画面全景の2割程度とし、8割程度は常時撮影したい」という条件3を充足し、個人情報の尊重と効率的な監視の要請を両立させることができる。マスク領域は人物領域の上方2分の1ではなく、4分の1、8分の1等にしてもよい。
【0041】
実施の形態2.
図13〜図17を用いて実施の形態2を説明する。実施の形態1では現画像のマスク領域にマスク画像を重ね合わせることによりマスキング処理を行っていたが、実施の形態2ではマスク領域にモザイク処理した第2のマスク画像を重ね合わせることによりマスキング処理を行う。
【0042】
図15は実施の形態2の監視用画像処理装置を示す構成図である。実施の形態1に相当する部分には図1と同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態2の監視用画像処理装置は、実施の形態1の構成に加え第2のマスク画像作成手段12を新たに備える。
【0043】
第2のマスク画像作成手段12は、第1のマスク画像作成手段8から出力された第1のマスク画像データから、モザイク処理した第2のマスク画像を作成する。図13は、第2のマスク画像の例である。
【0044】
重ね合わせ手段9は、現画像記憶手段3に記憶される現画像と、第2のマスク画像作成手段12で記憶される第2のマスク画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する。図14は一例として図2の現画像と図13の第2のマスク画像との重ね合わせ画像を示す。図13のマスク部分(黒色部分)にはマスク画像(例:グレー等の輝度値色差値固定の画像)が入力され、非マスク部分(白色部分)には現画像データが入力されたままとなる。
【0045】
そのため図14の重ね合わせ画像において、歩行者の行動がある程度把握出来る様になる。例えば、不審物を置いて立ち去ったとか、器物を破損させて立ち去った等の、おおよその行動の把握が可能となってくる。この部分は、上部を完全にマスクした「実施例1」では、対応出来ない部分である。
【0046】
次に、実施の形態2の動作について説明する。図17は、実施の形態2の動作を説明するフローチャートを示す図である。ステップS01からステップS08までは実施の形態1におけるステップS1からステップS8の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
第1のマスク画像作成手段8において第1のマスク画像が作成されると、第2のマスク画像作成手段12はモザイク処理されたマスク画像データを作成し、記憶する(ステップS09)。
【0048】
次に、重ね合わせ手段9は現画像と第2のマスク画像とを重ね合わせて重ね合わせ画像を作成する(ステップS010)。D/A変換手段10でビデオ信号に変換し、ビデオ出力手段11から出力する(ステップS011)。
【0049】
以上のように実施の形態2によれば、モザイク処理されたマスク画像を現画像に重ね合わせるので、画像中の人物の移動に追従した動的なマスキング処理をすることができ、実施の形態1と同様、撮影される人物のプライバシーの保護を十分に図ることができる。
【0050】
また実施の形態2において、人物のプライバシーを保護しつつ管理者はある程度その人物の行動を把握することができ、さらに、実施の形態1と比較して人物以外の箇所(比較用)についての視認性を向上させることができる。
【0051】
つまり、画面中の歩行者を、個人が分からないように目隠しする」という条件1、「個人を特定できなくても、歩行者が通過したことは認識出来る様にしたい」という条件2、「マスク画像は画面全景の2割程度とし、8割程度は常時撮影したい」という条件3を充足し、個人情報の尊重と効率的な監視の要請を両立させることができる。更なる効果として、歩行者の行動がある程度把握出来る様になる。例えば、不審物を置いて立ち去ったとか、器物を破損させて立ち去った等の、おおよその行動の把握は、上記説明の実施の形態1のように、上部を完全にマスクした場合、対応出来ないが、上記説明の実施の形態2では可能である。さらに、マスク画像は歩行者に付いて追跡して行くため、歩行者以外の視界を遮ることはないので、常に最適の視界を確保しており、効率的な監視がさらに保障される。以上の通り、条件1〜3を満足したうえ歩行者の行動がある程度把握出来る、効率と視認性のよいマスク処理を実施しうる。
【0052】
実施の形態3.
実施の形態3を説明する。
実施の形態2では現画像のマスク領域にモザイク状のマスク画像を重ね合わせることによりマスキング処理を行っていたが、実施の形態3ではマスク領域に比較用画像を重ね合わせることによりマスキング処理を行う。
【0053】
実施の形態3の監視用画像処理装置は、図15における実施の形態2と構成は同じで、第2のマスク画像作成手段12の動作が異なる。
【0054】
第2のマスク画像作成手段12は、第1のマスク画像作成手段8から出力されたモザイク処理されたマスク画像データのマスク部分に、比較用画像記憶手段4から入力された比較用画像データを埋め込む。
第2のマスク画像は、マスク領域(黒色部分)に比較用画像データの対応画素が入力された画像である。
【0055】
重ね合わせ手段9は、現画像記憶手段3に記憶される現画像と、第2のマスク画像作成手段12で記憶される第2のマスク画像とを重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する。図16は一例として図2の現画像とマスク領域(黒色部分)に比較用画像データの対応画素が入力された第2のマスク画像との重ね合わせ画像を示す。図13のマスク部分(黒色部分)には比較用画像データ画像が入力され、非マスク部分(白色部分)には現画像データが入力された画像となる。
【0056】
そのため図16の重ね合わせ画像において、第2のマスク箇所については比較用画像となり、あたかも人間が半透明化されたような透かし効果が得られる。
【0057】
人物領域のうち人物が存在しない箇所については何の処理もされていないような完全透明化効果が得られる。実際には人物が存在しない箇所についても現画像データと比較用画像データの画像がモザイク状に配置されているのだが、そこでは2つの画像の差異が殆どないため、何も処理されていないように見える。
【0058】
次に、実施の形態3の動作について説明する。図18は、実施の形態3の動作を説明するフローチャートを示す図である。ステップS01からステップS08までは実施の形態2におけるステップS01からステップS08の動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
第1のマスク画像作成手段8において第1のマスク画像が作成されると、第2のマスク画像作成手段12はモザイク処理されたマスク画像データのマスク箇所に比較用画像データを埋め込んだ第2のマスク画像データを作成し、記憶する(ステップS09)。
【0060】
次に、重ね合わせ手段9は現画像と第2のマスク画像とを重ね合わせて重ね合わせ画像を作成する(ステップS010)。現画像と第2のマスク画像とが重ね合わせられた重ね合わせ画像が作成される。D/A変換手段10でビデオ信号に変換し、ビデオ出力手段11から出力する(ステップS011)。
【0061】
以上のように実施の形態3によれば、モザイク状に比較用画像データと現画像交互に配置されているので、撮影された人物を半透明化することができるとともに、撮影された人物以外の箇所については何の処理も行われていないように見せることができる。すなわち、実質上撮影された画像中の人物のみにマスキング処理(半透明化処理)を行うことができる。そうすることにより、人物のプライバシーを保護しつつ管理者はある程度その人物の行動を把握することができ、さらに、実施の形態2と比較して人物以外の箇所(比較用)についての視認性を向上させることができる。
【0062】
つまり、画面中の歩行者を、個人が分からないように目隠しする」という条件1、「個人を特定できなくても、歩行者が通過したことは認識出来る様にしたい」という条件2、「マスク画像は画面全景の2割程度とし、8割程度は常時撮影したい」という条件3を充足し、個人情報の尊重と効率的な監視の要請を両立させることができる。更なる効果として、歩行者の行動がある程度把握出来る様になる。例えば、不審物を置いて立ち去ったとか、器物を破損させて立ち去った等の、おおよその行動の把握は、上記説明の実施の形態1のように、上部を完全にマスクした場合、対応出来ないが、上記説明の実施の形態3では可能である。さらに、マスク画像は歩行者に付いて追跡して行くため、歩行者以外の視界を遮ることはないので、常に最適の視界を確保しており、効率的な監視がさらに保障される。以上の通り、条件1〜3を満足したうえ歩行者の行動がある程度把握出来る、効率と視認性のよいマスク処理を実施しうる。
【0063】
実施の形態4.
図19を用いて実施の形態4を説明する。実施の形態4は、実施の形態3のマスク画像を全画面に拡張したマスキング処理を行う。すなわち、本実施の形態は、実施の形態1、2、3と比較して、そのマスク領域を現画像の全領域(全画面)としている点で異なる。実施の形態1、2、3のように現画像と比較用画像との比較から変化領域の抽出を行い人物領域を判定してからマスク領域を設定するという作業は行わない。
【0064】
図19は実施の形態4の監視用画像処理装置を示す構成図である。実施の形態3に相当する部分には図15と同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態4の監視用画像処理装置は第3のマスク画像作成手段13を備え、実施の形態3における変化領域抽出手段6、マスク領域設定手段7、第1のマスク画像作成手段8を備えていない構成となる。
【0065】
第3のマスク画像作成手段13は、全画面についてモザイク処理を行い、そのモザイク部分に比較用画像データを埋め込んだ第3のマスク画像を作成し記憶する。
【0066】
重ね合わせ手段9は、現画像記憶手段3に記憶される現画像と、マスク画像処理手段12で記憶された第3のマスク画像とを重ね合わせて重ね合わせ画像を作成する。このように作成された重ね合わせ画像は、図16の重ね合わせ画像と同様に、人物は半透明化されるとともに人物以外の箇所については何の処理も行われていないように見える。このように現画像に第3のマスク画像を重ね合わせた重ね合わせ画像についても(すなわちマスク領域を全画面に拡大しても)、人物以外の領域については現画像と比較用画像とでほとんど差異がないため(画像がつながっているため)同様の結果が得られる。
【0067】
以上のように実施の形態3によれば、実施の形態3と同様の効果を有することに加え、現画像と比較用画像とから差分を計算して変化領域抽出処理、マスク領域設定処理を行うことが不要となるので、実施の形態3よりも安価でかつ小規模な監視用画像処理装置で実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ビデオ入力手段
2 A/D変換手段
3 現画像記憶手段
4 比較用画像記憶手段
5 比較用画像更新手段
6 変化領域抽出手段
7 マスク領域設定手段
8 第1のマスク画像作成手段
9 重ね合わせ手段
10 D/A変換手段
11 ビデオ出力手段
12 第2のマスク画像作成手段
13 第3のマスク画像作成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象エリアの現在の画像である現画像を記憶する現画像記憶手段と、
前記現画像と比較するための比較用画像を記憶する比較用画像記憶手段と、
前記現画像と前記比較用画像とを比較し変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、
前記変化領域内の各輝度値を所定の閾値で2値化し、該2値化後の結果に基づいて前記現画像内のマスキングする領域を設定するマスク領域設定手段と、
前記マスク領域内を覆う第1のマスク画像を作成する第1のマスク画像作成手段と、
前記現画像の前記マスク領域に前記第1のマスク画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する重ね合わせ手段とを有することを特徴とする監視用画像処理装置。
【請求項2】
前記マスク領域設定手段は、前記2値化により抽出した領域の外接矩形を人物領域として判定し、該人物領域の一部または全部を前記マスク領域として設定することを特徴とする請求項1に記載の監視用画像処理装置。
【請求項3】
前記比較用画像を所定のルールに基づいて更新する比較用画像更新手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の監視用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1のマスク画像をモザイク処理した第2のマスク画像を作成する第2のマスク画像作成手段を有し、
前記重ね合わせ手段は前記現画像の前記マスク領域に前記第2のマスク画像を重ね合わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の監視用画像処理装置。
【請求項5】
前記第2のマスク画像の一部には前記比較用画像の画素が入力されていることを特徴とする請求項4に記載の監視用画像処理装置。
【請求項6】
監視対象エリアの現在の画像である現画像を記憶する現画像記憶手段と、
前記現画像と比較するための比較用画像を記憶する比較用画像記憶手段と、
前記現画像の全画面を覆うとともに、モザイク処理され一部に前記比較用画像の画素が入力される第3のマスク画像を作成する第3のマスク画像作成手段と、
前記現画像に前記第3のマスク画像を重ねあわせた重ね合わせ画像を作成する重ね合わせ手段とを有することを特徴とする監視用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−174186(P2012−174186A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38361(P2011−38361)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】