説明

目標検出システム

【課題】時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号のSN比を改善して目標検出性能を向上および小規模化が可能な目標検出システムを提供する。
【解決手段】目標検出装置19−1〜19−l、20−1〜20−mは、送信波の反射波を受信して得られた受信信号をデジタルビデオ信号に変換する受信機4と、受信機の出力信号から不要波成分を抑圧する不要波抑圧装置9と、不要波抑圧装置の出力信号に対し、検出対象とする目標からの受信信号のパルス毎の複素共役となり且つ積分利得を最大にできるパルス方向の長さを有する参照信号とを畳み込み演算する畳み込み演算装置10−1〜10−nと、畳み込み演算結果に基づき目標を検出する検出装置8−1〜8−nとを備え、参照信号制御情報発生装置18は、目標検出装置の畳み込み演算装置に対し畳み込み演算に使用する参照信号の種類を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヘリコプタのロータ・ブレードのように、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号が得られる目標を検出する目標検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目標検出システムの1つとして、目標に向けて電波を発射し、目標からの反射波を受信して信号処理を行うことにより目標を検出するレーダ装置が知られている。このような従来のレーダ装置を用いて、低高度でホバリングしているヘリコプタを検出する場合、ヘリコプタからの反射波には、クラッタと呼ばれる不要反射波が含まれる。
【0003】
移動している目標からの反射波の場合は、ドップラ効果を利用して、その目標からの反射波を抽出できる。しかしながら、目標が移動していない場合、例えばホバリング状態にあるヘリコプタの場合は、ドップラ効果を利用できないため、ヘリコプタの胴体からの反射波を抽出できない。
【0004】
このようなホバリング状態にあるヘリコプタを検出するために、ホバリング状態でも回転運動をしているロータ・ブレード等からの反射波を抽出して、目標を検出する方法が考えられている。
【0005】
例えば、受信信号を周波数分析した後の周波数方向積分前後のCFAR(Constant False Alarm Rate)によるヒットの有無およびCFARヒットのあった振幅の周波数方向積分前後の変化を抽出し、周波数方向積分効果の有無により、ヘリコプタの検出を判定するレーダ装置が知られている(特許文献1参照)。このレーダ装置は、送信機で発生した送信波をアンテナから放射し、受信信号を、サーキュレータを通して受信機へ送り、デジタルビデオ信号に変換する。受信信号をMTI(Moving Target Indicator)装置でクラッタ抑圧し、周波数分析装置でコヒーレント積分し、周波数方向積分装置で積分し、CFAR装置と最大振幅検出装置で周波数方向積分前後のCFARによるヒットの有無およびCFARヒットのあった振幅の周波数方向積分前後の変化を抽出し、検出判定装置で目標がヘリコプタか否かを判定する。
【0006】
また、強大な地面クラッタの影響を受けることなく、ホバリングヘリコプタを安定して探知するレーダ装置が知られている(特許文献2)。このレーダ装置は、受信機から出力されるデジタルビデオ信号からクラッタレベル算出するクラッタレベル算出装置と、算出されたクラッタレベルに基づいてホバリングヘリコプタを検出するためのドップラ周波数範囲を設定する周波数範囲設定回路とを備え、ホバリングヘリコプタ検出装置において、設定されたクラッタの大きさによって変化するドップラ周波数範囲と予め設定された検出スライサレベルおよびホバリングヘリコプタ判定基準値とに基づいてホバリングヘリコプタを検出する。
【0007】
しかしながら、ロータ・ブレードからの反射波は、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号である。このため、時間的に振幅がほぼ一定である定常信号に対して、積分手段として、よく使われるFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)では、大きな積分効果を期待できない。従って、積分効果によって、探知距離を延伸しているレーダ装置では、ロータ・ブレード等のように、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号が得られる目標に対しては、探知距離が短くなる場合がある。
【0008】
上述したような従来のレーダ装置による目標検出の動作を、図面を参照しながら説明する。図9は従来のレーダ装置の構成の一例を示すブロック図である。このレーダ装置は、アンテナ1、送信機2、サーキュレータ3、受信機4、MTI装置5、周波数分析装置6、CFAR装置7および検出装置8から構成されている。
【0009】
アンテナ1は、送信機2からサーキュレータ3を経由して送られてくる送信信号を電波に変換し、送信波として指定方向の空間に送出するとともに、送信波が目標によって反射された反射波を受信し、受信信号としてサーキュレータ3を経由して受信機4に送る。
【0010】
受信機4は、アンテナ1からサーキュレータ3を経由して送られてくる受信信号をデジタルビデオ信号に変換する。この受信機4で受信信号を変換することにより得られたデジタルビデオ信号は、MTI装置5に送られる。
【0011】
MTI装置5は、受信機4から送られてくるデジタルビデオ信号に含まれるクラッタ成分を抑圧する。このMTI装置5によってクラッタ成分が抑圧されたデジタルビデオ信号は、周波数分析装置6に送られる。
【0012】
周波数分析装置6は、信号対雑音比(SN比)を改善する目的で、MTI装置5においてクラッタ成分が抑圧されたデジタルビデオ信号をコヒーレント積分する。なお、周波数分析装置6におけるコヒーレント積分には、FFTがよく使われる。
【0013】
時間的に振幅がほぼ一定である受信信号が得られる目標を検出する場合、積分手段として使われるFFTによって、積分パルス数分の積分効果が得られる。積分パルス数Nと積分利得G(単位:dB)の関係を以下の式(1)に示す。
【数1】

【0014】
時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号が得られる目標を検出する場合、積分手段として使われるFFTでは、大きな積分効果が期待できない。一例として、目標からの受信信号が、パルス数M以内において一定の振幅を有し、パルス数Mの外側では振幅がゼロとなる矩形波の場合、振幅がゼロ以外のパルス数Mと積分パルス数N、積分利得G'(単位:dB)の関係を以下に示す。
【数2】

【0015】
振幅がゼロ以外のパルス数Mが「10」の場合、積分利得Gと積分利得G'は、図10に示すようになる。このように、積分パルス数Nを大きくしても、振幅がゼロ以外のパルス数M以上では、積分効果が少なく、逆に積分利得G'が低下することになる。
【0016】
CFAR装置7は、周波数分析装置6から出力される振幅および位相を有する信号を検波(振幅情報のみの信号に変換)し、注目レンジビンの周辺の信号振幅からリファレンス振幅を算出し、リファレンス振幅に対する注目レンジビン振幅の比を表す信号として、振幅比信号を出力する。
【0017】
検出装置8は、CFAR装置7から出力される振幅比信号に対して、しきい値を設定し、しきい値を超える信号を目標として検出する。
【特許文献1】特許第3359586号
【特許文献2】特許第2991080号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記のように構成される従来のレーダ装置では、時間的に振幅がほぼ一定である受信信号が得られる目標に対しては、所定の積分効果が得られるが、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号が得られる目標に対しては、上述したように、積分パルス数を大きくしても所望の積分効果が得られず、逆に積分利得が低下してしまう。その結果、信号対雑音比(SN比)が低下し、目標検出性能が低下するという問題がある。
【0019】
一方、複数のレーダ装置をネットワークで接続し、各レーダ装置が協動して目標を検出するネットワーク・レーダ・システムが知られている。このネットワーク・レーダ・システムでは、ネットワークのノードとして使用されるレーダ装置は、地上に設置される他に移動体に搭載されて使用される。このような複数のレーダ装置のうち、特に移動体に搭載されるレーダ装置には、形状・寸法・質量の制約が多いので、小規模化が望まれている。
【0020】
本発明は、上述した問題を解消するとともに、上述した要請に応えるためになされたものであり、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号の信号対雑音比(SN比)を改善して目標検出性能を向上させることができる小規模化が可能な目標検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の発明に係る目標検出システムは、目標検出装置と参照信号制御情報発生装置とを備え、目標検出装置は、空間に送信した送信波の反射波を受信することにより得られた受信信号をデジタルビデオ信号に変換する受信機と、受信機から出力されるデジタルビデオ信号から不要波成分を抑圧する不要波抑圧装置と、不要波抑圧装置で不要波成分が抑圧された信号に対し、検出対象とする目標からの受信信号のパルス毎の複素共役となり且つ積分利得を最大にできるパルス方向の長さを有する参照信号との間で畳み込み演算を行う畳み込み演算装置と、畳み込み演算装置から出力される信号に基づき目標からの反射波の信号を検出する検出装置とを備え、参照信号制御情報発生装置は、目標検出装置の畳み込み演算装置に対し、畳み込み演算に使用する参照信号の種類を指示することを特徴とする。
【0022】
また、第2の発明に係る目標検出システムは、目標検出装置と参照信号制御情報発生装置とを備えた目標検出システムであって、目標検出装置は、空間に送信した送信波の反射波を受信することにより得られた受信信号をデジタルビデオ信号に変換する受信機と、受信機から出力されるデジタルビデオ信号から不要波成分を抑圧する不要波抑圧装置と、不要波抑圧装置で不要波成分が抑圧された信号をフーリエ変換した信号と、検出対象とする目標からの受信信号のパルス毎の複素共役となり且つ積分利得を最大にできるパルス方向の長さを有する信号をフーリエ変換して得られた参照信号とを乗算した後、逆フーリエ変換を行うフーリエ変換装置と、フーリエ変換装置から出力される信号に基づき目標からの反射波の信号を検出する検出装置とを備え、参照信号制御情報発生装置は、目標検出装置のフーリエ変換装置に対し、乗算に使用する参照信号の種類を指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明に係る目標検出システムによれば、目標検出装置は、時間的に振幅が大きく変化し、受信信号と積分利得を最大にできるような長さの参照信号との畳み込み演算によって得られた大きい信号に基づいて目標の有無を検出するようにしたので、振幅の大きな期間が短い受信信号の信号対雑音比(SN比)を改善することができる。また、参照信号制御情報発生装置は、目標検出装置の畳み込み演算装置に対し、畳み込み演算に使用する参照信号の種類を指示するように構成したので、参照信号の種類に対応した多数の畳み込み演算装置を備えている必要がない。その結果、目標検出装置の構造が簡単になり小型化が可能になるので、目標検出システムの全体として小規模化が可能になる。
【0024】
また、第2の発明に係る目標検出システムによれば、目標検出装置は、受信信号をフーリエ変換した信号と積分利得を最大にできるような長さのフーリエ変換された参照信号とを乗算した後に逆フーリエ変換して得られた大きい信号に基づいて目標の有無を検出するようにしたので、畳み込み演算よりも少ない計算量であるにも拘わらず、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号の信号対雑音比(SN比)を改善することができる。また、参照信号制御情報発生装置は、目標検出装置のフーリエ変換装置に対し、乗算に使用する参照信号の種類を指示するように構成したので、参照信号の種類に対応した多数のフーリエ変換装置を備えている必要がない。その結果、目標検出装置の構造が簡単になり小型化が可能になるので、目標検出システムの全体として小規模化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下においては、従来の技術の欄で説明したレーダ装置の構成部分に相当する部分には、従来の技術の欄で使用した符号と同じ符号を用いて説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1に係る目標検出システムは、受信信号と参照信号との畳み込み演算を用いて受信信号のSN比を改善するようにしたものである。
【0027】
図1は本発明の実施例1に係る目標検出システムの構成を示すブロック図である。目標検出システムは、参照信号制御情報発生装置18、l個(lは正の整数)の第1目標検出装置19−1〜19−lおよびm個(mは正の整数)の第2目標検出装置20−1〜20−mから構成されている。第1目標検出装置19−1〜19−lおよび第2目標検出装置20−1〜20−mは、例えばレーダ装置から構成されている。
【0028】
参照信号制御情報発生装置18は、参照信号制御情報を発生し、第1目標検出装置19−1〜19−lおよび第2目標検出装置20−1〜20−mに送る。参照信号制御情報は、第1目標検出装置19−1〜19−lおよび第2目標検出装置20−1〜20−mが使用すべき参照信号(詳細は後述する)の種類を指示するための情報である。
【0029】
第1目標検出装置19−1〜19−lは、参照信号制御情報発生装置18からの参照信号制御情報に応じて、複数種類の参照信号に対して畳み込み演算(詳細は後述する)をそれぞれ実行し、その結果に基づいて目標を検出するとともに、最大のSN比が得られた参照信号の種別を参照信号制御情報発生装置18に送る。参照信号制御情報発生装置18は、第1目標検出装置19−1〜19−lから送られてくる最大のSN比が得られた参照信号の種別を表す参照信号制御情報を生成し、第2目標検出装置20−1〜20−mに送る。
【0030】
第2目標検出装置20−1〜20−mは、参照信号制御情報発生装置18からの参照信号制御情報に応じて、最大のSN比が得られる参照信号に対して畳み込み演算を実行し、その結果に基づいて目標を検出する。
【0031】
図2は第1目標検出装置19−1〜19−lの構成を示すブロック図である。第1目標検出装置19−1〜19−lの各々は、アンテナ1、送信機2、サーキュレータ3、受信機4、不要波抑圧装置9、畳み込み演算装置10−1〜10−n、CFAR装置7−1〜7−nおよび検出装置8−1〜8−nから構成されている。
【0032】
アンテナ1は、送信機2からサーキュレータ3を経由して送られてくる送信信号を電波に変換し、送信波として指定方向の空間に送出するとともに、送信波が目標によって反射された反射波を受信し、受信信号としてサーキュレータ3を経由して受信機4に送る。
【0033】
受信機4は、アンテナ1からサーキュレータ3を経由して送られてくる受信信号をデジタルビデオ信号に変換する。この受信機4で受信信号を変換することにより得られたデジタルビデオ信号は、不要波抑圧装置9に送られる。
【0034】
不要波抑圧装置9は、受信機4から送られてくるデジタルビデオ信号に含まれる不要波成分を抑圧する。不要波成分には、クラッタおよびヘリコプタの胴体からの反射波の成分が含まれる。クラッタからの反射波を抑圧する場合、従来の技術の欄で説明したMTI装置5がよく使われる。不要波抑圧装置9はMTI装置5を用いても良いが、ロータ・ブレードからの受信信号を含まない不要波信号の周波数を抑圧する帯域阻止フィルタを用いることによりより高い効果が得られる。この不要波抑圧装置9によって不要波成分が抑圧されたデジタルビデオ信号は、畳み込み演算装置10−1〜10−nに送られる。
【0035】
図3は畳み込み演算装置10−1〜10−nの各々の詳細な構成を示すブロック図である。なお、畳み込み演算装置10−2〜10−nの構成は畳み込み演算装置10−1の構成と同じであるので、以下では、畳み込み演算装置10−1についてのみ説明する。畳み込み演算装置10−1は、畳み込み演算部12と参照信号発生部13とから構成されている。
【0036】
参照信号発生部13は、参照信号制御情報発生装置18からの参照信号制御情報に従って、検出対象とする目標からの受信信号の振幅および位相を模擬した参照信号を発生する。ここで、参照信号をh(0)〜h(P−1)で表し、目標からの受信信号をs(n)とすると、参照信号h(0)〜h(P−1)は、信号s(−n)に対して複素共役な信号h(n)の中から、積分利得を最大にできるパルス方向の長さPの部分を選択して生成される。例えば、矩形波の例で言えば、式(3)における積分利得G’は、M=Nの時に最大となるので、参照信号の長さPがMとなるように選択される。M=10の場合の例を図10に示している。この参照信号発生部13で発生された参照信号h(0)〜h(P−1)は、畳み込み演算部12に送られる。
【0037】
畳み込み演算部12では、不要波抑圧装置9から送られてくる信号と参照信号発生部13で発生された参照信号とを畳み込み演算し、演算結果を外部に出力する。上記のように構成される畳み込み演算装置10−1〜10−nから出力される演算結果は、CFAR装置7−1〜7−nにそれぞれ送られる。
【0038】
CFAR装置7−1〜7−nの各々は、畳み込み演算部12から出力される振幅および位相を有する信号を検波(振幅情報のみの信号に変換)し、注目レンジビンの周辺のパルスの信号振幅からリファレンス振幅を算出し、リファレンス振幅に対する注目レンジビン振幅の比を表す信号として、振幅比信号を出力する。CFAR装置7−1〜7−nで生成された振幅比信号は、検出装置8−1〜8−nにそれぞれ送られる。
【0039】
検出装置8−1〜8−nは、CFAR装置7−1〜7−nからの振幅比信号のうち、しきい値を超える信号を目標としてそれぞれ検出する。ここで、目標のヘリコプタが種別j(1≦j≦n)の場合、畳み込み演算装置10−jからの出力信号のSN比が最大となる。
【0040】
次に、上記のように構成される第1目標検出装置19−1〜19−lの動作を説明する。なお、第1目標検出装置19−2〜19−lの動作は第1目標検出装置19−1の動作と同じであるので、以下では、第1目標検出装置19−1の動作についてのみ説明する。
【0041】
まず、アンテナ1で受信された反射波は、受信信号として、サーキュレータ3を経由して受信機4に送られる。受信機4は、サーキュレータ3からの受信信号に基づいてデジタルビデオ信号を生成し、不要波抑圧装置9に送る。不要波抑圧装置9は、受信機4からのデジタルビデオ信号に含まれる不要波成分を抑圧して畳み込み演算装置10−1に送る。
【0042】
畳み込み演算装置10−1は、不要波抑圧装置9から送られてくる不要波成分が抑圧された信号と参照信号発生部13で発生された参照信号を畳み込み演算する。今、畳み込み演算装置10−1の入力信号をx(n)、参照信号をh(0)〜h(P−1)、畳み込み演算装置10−1の出力信号をy(n)とすると、畳み込み演算装置10−1の出力信号y(n)は、以下の式(4)により求められる。
【数3】

【0043】
このため、畳み込みの期間において、畳み込み演算装置10−1の入力信号x(n)〜x(n−P+1)と参照信号h(0)〜h(P−1)の関係が、複素共役の場合(振幅は、相対的な関係が一致すればよい)、畳み込み演算装置10−1からの出力y(n)が大きくなる。その結果、入力信号のSN比を改善することができる。
【0044】
この畳み込み演算部12における演算結果は、CFAR装置7−1に送られる。CFAR装置7−1は、上述した振幅比信号を生成して検出装置8−1に送る。検出装置8−1は、CFAR装置7−1からの振幅比信号のうち、しきい値を超える信号を目標として検出する。
【0045】
以上のように構成される第1目標検出装置19−1〜19−lの各々は、不要波抑圧装置9の出力信号に対し複数の参照信号との間で畳み込み演算を実施する複数の畳み込み演算装置10−1〜10−nを備えることにより、複数の種別のヘリコプタから得られる受信信号のSN比が最大になるような参照信号を得ることが可能である。但し、第1目標検出装置19−1〜19−lは、複数の畳み込み演算装置10−1〜10nを備えているので規模が大きくなる。従って、ネットワーク・レーダ・システムの地上に設置するレーダ装置に好適である。
【0046】
図4は第2目標検出装置20−1〜20−mの構成を示すブロック図である。第2目標検出装置20−1〜20−mの各々は、アンテナ1、送信機2、サーキュレータ3、受信機4、不要波抑圧装置9、畳み込み演算装置10、CFAR装置7および検出装置8から構成されている。
【0047】
第2目標検出装置20−1〜20−mは、第1目標検出装置19−1〜19−lの各々におけるn個の畳み込み演算装置10−1〜10−nが1個の畳み込み演算装置10に置き換えられ、n個のCFAR装置7−1〜7−nが1個のCFAR装置7に置き換えられ、n個の検出装置8−1〜8−nが1個の検出装置8に置き換えられて構成されている。畳み込み演算装置10の構成および動作は、n個の畳み込み演算装置10−1〜10−nの各々の構成および動作と同じである。CFAR装置7の構成および動作は、n個のCFAR装置7−1〜7−nの各々の構成および動作と同じである。検出装置8の構成および動作は、n個の検出装置8−1〜8−nが1個の各々の構成および動作と同じである。
【0048】
上記のように構成される第2目標検出装置20−1〜20−mには、最大のSN比が得られる参照信号の種別を指示する参照信号制御情報が参照信号制御情報発生装置18から送られてくるので、第2目標検出装置20−1〜20−mは、この参照信号制御情報に基づいて目標を検出する。
【0049】
この構成によれば、第2目標検出装置20−1〜20−mは、1個の畳み込み演算装置10しか備えていないので、第1目標検出装置19−1〜19−lに比べて規模を小さくすることができる。従って、ネットワーク・レーダ・システムの移動体に搭載されるレーダ装置に好適である。
【0050】
以上のように構成される目標検出システムにおいて、1台の第2目標検出装置で運用する場合、第2目標検出装置は複数の畳み込み演算装置を備えていないので、積分効果を最大にできない場合がある。しかし、第1目標検出装置19−1〜19−lは、複数の種別のヘリコプタからの受信信号に対して複数種類の参照信号を用いて畳み込み演算を実施し、受信信号のSN比を最大にできる参照信号の種別を参照信号制御情報発生装置18に送る。参照信号制御情報発生装置18は、第2目標検出装置に対して、第1目標検出装置19で最大のSN比が得られる参照信号を発生するように指示する。
【0051】
第2目標検出装置20は、参照信号制御情報発生装置18から送られてくる参照信号制御情報に基づいて参照信号を発生し、畳み込み演算を実施する。この結果、第2目標検出装置は、複数の畳み込み演算装置10を備えていないにも拘わらず、最大のSN比を有する受信信号を得ることができる。
【0052】
例えばミサイル・システムにおいては、数量が少なく、形状・寸法・質量の制約が比較的少ないレーダ装置に第1目標検出装置19を採用し、数量が多く、形状・寸法・質量の制約が多い電波シーカを搭載したミサイル(誘導弾)に第2目標検出装置20を採用することにより、目標検出システムの全体で信号対雑音比(SN比)を効率的に改善することができる。
【0053】
以上説明したように、実施例1に係る目標検出システムによれば、受信信号と積分利得を最大にできるような長さの参照信号との畳み込み演算によって得られる大きい信号に基づいて目標の有無を検出するようにしたので、時間的に振幅が大きく変化し、振幅の大きな期間が短い受信信号の信号対雑音比(SN比)を改善できる。また、参照信号制御情報発生装置18は、第2目標検出装置20−1〜20−mの畳み込み演算装置10に対し、畳み込み演算に使用する参照信号の種類を指示するように構成したので、参照信号の種類に対応した多数の畳み込み演算装置を備えている必要がない。その結果、第2目標検出装置20−1〜20−mの構造が簡単になり小型化が可能になるので、目標検出システムの全体として小規模化が可能になる。
【0054】
なお、上述した実施例1に係る目標検出システムにおける第2目標検出装置20−1〜20−mは、1個の畳み込み演算装置10を備えるように構成したが、複数個の畳み込み演算装置を備えるように構成することもできる。この場合、第2目標検出装置20−1〜20−mの畳み込み演算装置の数を、第1目標検出装置19−1〜19−lの畳み込み演算装置の数より少なくすれば、上述した効果が得られる。
【実施例2】
【0055】
本発明の実施例2に係る目標検出システムは、受信信号をフーリエ変換した信号とフーリエ変換された参照信号とを乗算後、逆フーリエ変換して得られた信号に基づき目標を検出するようにしたものである。
【0056】
図5は本発明の実施例2に係る目標検出システムの構成を示すブロック図である。目標検出システムは、参照信号制御情報発生装置18、l個(lは正の整数)の第3目標検出装置21−1〜21−lおよびm個(mは正の整数)の第4目標検出装置22−1〜22−mから構成されている。第3目標検出装置21−1〜21−lおよび第4目標検出装置22−1〜22−mは、例えばレーダ装置から構成されている。
【0057】
参照信号制御情報発生装置18は、参照信号制御情報を発生し、第3目標検出装置21−1〜21−lおよび第4目標検出装置22−1〜22−mに送る。参照信号制御情報は、第3目標検出装置21−1〜21−lおよび第4目標検出装置22−1〜22−mが使用すべき参照信号の種類を指示するための情報である。
【0058】
第3目標検出装置21−1〜21−lは、参照信号制御情報発生装置18からの参照信号制御情報に応じて、複数種類の参照信号に対してフーリエ変換(詳細は後述する)をそれぞれ実行し、その結果に基づいて目標を検出するとともに、最大のSN比が得られた参照信号の種別を参照信号制御情報発生装置18に送る。参照信号制御情報発生装置18は、第3目標検出装置21−1〜21−lから送られてくる最大のSN比が得られた参照信号の種別を表す参照信号制御情報を生成し、第4目標検出装置22−1〜22−mに送る。
【0059】
第4目標検出装置22−1〜22−mは、参照信号制御情報発生装置18からの参照信号制御情報に応じて、最大のSN比が得られる参照信号に対してフーリエ変換を実行し、その結果に基づいて目標を検出する。
【0060】
図6は第3目標検出装置21−1〜21−lの構成を示すブロック図である。以下では、実施例1に係る目標検出システムの第1目標検出装置19−1〜19−lの構成部分に相当する部分には、該第1目標検出装置19−1〜19−lで使用した符号と同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
第3目標検出装置21−1〜21−lの各々は、アンテナ1、送信機2、サーキュレータ3、受信機4、不要波抑圧装置9、フーリエ変換装置11−1〜11−n、CFAR装置7−1〜7−nおよび検出装置8−1〜8−nから構成されている。
【0062】
図7はフーリエ変換装置11−1〜11−nの各々の詳細な構成を示すブロック図である。なお、フーリエ変換装置11−2〜11−nの構成はフーリエ変換装置11−1の構成と同じであるので、以下では、フーリエ変換装置11−1についてのみ説明する。フーリエ変換装置11−1は、フーリエ変換部14、フーリエ変換参照信号発生部15、乗算部16および逆フーリエ変換部17から構成されている。
【0063】
フーリエ変換部14は、不要波抑圧装置9から送られてくる信号を、FFTによりフーリエ変換する。このフーリエ変換部14の出力は、乗算部16に送られる。
【0064】
フーリエ変換参照信号発生部15は、参照信号制御情報発生装置18からの参照信号制御情報に従って、検出対象とする目標からの受信信号の振幅および位相を模擬した参照信号をフーリエ変換した信号を発生する。このフーリエ変換参照信号発生部15で発生されたフーリエ変換された参照信号は乗算部16に送られる。
【0065】
乗算部16は、フーリエ変換部14から送られてくるフーリエ変換された信号と、フーリエ変換参照信号発生部15から送られてくるフーリエ変換された参照信号とを乗算する。この乗算部16における乗算結果は、逆フーリエ変換部17に送られる。
【0066】
逆フーリエ変換部17は、乗算部16から送られてくる信号を、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:高速逆フーリエ変換)により逆フーリエ変換する。この逆フーリエ変換部17における逆フーリエ変換の結果は、外部に出力される。
【0067】
この実施例2に係る目標検出システムの第3目標検出装置21−1〜21−lの動作は、畳み込み演算の代わりにフーリエ変換が行われることを除けば、実施例1に係る目標検出システムの第1目標検出装置19−1〜19−lの動作と同じである。即ち、フーリエ変換装置11−1〜11−nは、n種類のヘリコプタに対応する参照信号をフーリエ変換した信号をそれぞれ発生し、不要波抑圧装置9の出力信号をフーリエ変換した信号と乗算した後、逆フーリエ変換を実施する。フーリエ変換装置11−1〜11−nの出力は、CFAR装置7−1〜7−nにそれぞれ送られる。
【0068】
以上のように構成される第3目標検出装置21−1〜21−lの各々は、不要波抑圧装置9の出力信号に対しフーリエ変換を実施する複数のフーリエ変換装置11−1〜11−nを備えることにより、複数の種別のヘリコプタから得られる受信信号のSN比が最大になるような参照信号を得ることが可能である。但し、第3目標検出装置21−1〜21−lは、複数のフーリエ変換装置11−1〜11nを備えているので規模が大きくなる。従って、ネットワーク・レーダ・システムの地上に設置するレーダ装置に好適である。
【0069】
図8は第4目標検出装置22−1〜22−mの構成を示すブロック図である。この第4目標検出装置22−1〜22−mの各々は、アンテナ1、送信機2、サーキュレータ3、受信機4、不要波抑圧装置9、フーリエ変換装置11、CFAR装置7および検出装置8から構成されている。
【0070】
第4目標検出装置22−1〜22−mは、第3目標検出装置21−1〜21−lにおけるn個のフーリエ変換装置11−1〜11−nが1個のフーリエ変換装置11に置き換えられ、n個のCFAR装置7−1〜7−nが1個のCFAR装置7に置き換えられ、n個の検出装置8−1〜8−nが1個の検出装置8に置き換えられて構成されている。フーリエ変換装置11の構成および動作は、n個のフーリエ変換装置11−1〜11−nの各々の構成および動作と同じである。CFAR装置7の構成および動作は、n個のCFAR装置7−1〜7−nの各々の構成および動作と同じである。検出装置8の構成および動作は、n個の検出装置8−1〜8−nが1個の各々の構成および動作と同じである。
【0071】
上記のように構成される第4目標検出装置22−1〜22−mには、最大のSN比が得られる参照信号の種別を指示する参照信号制御情報が参照信号制御情報発生装置18から送られてくるので、第4目標検出装置22−1〜22−mは、この参照信号制御情報に基づいて目標を検出する。
【0072】
この構成によれば、第4目標検出装置22−1〜22−mは、1個のフーリエ変換装置11しか備えていないので、第3目標検出装置21−1〜21−lに比べて規模を小さくすることができる。従って、ネットワーク・レーダ・システムの移動体に搭載されるレーダ装置に好適である。
【0073】
以上説明したように、実施例2に係る目標検出システムによれば、第3目標検出装置21−1〜21−lおよび第4目標検出装置22−1〜22−mは、受信信号をフーリエ変換した信号と積分利得を最大にできるような長さのフーリエ変換された参照信号とを乗算した後に逆フーリエ変換して得られた大きい信号に基づいて目標の有無を検出するようにしたので、FFTおよびIFFTを用いることにより畳み込み演算と等価の処理が行われるが、参照信号のデータ長が長い場合、畳み込み演算よりも計算量を削減することができる。また、参照信号制御情報発生装置18は、第4目標検出装置22−1〜22−mのフーリエ変換装置11−1〜11−nに対し、乗算に使用する参照信号の種類を指示するように構成したので、参照信号の種類に対応した多数のフーリエ変換装置を備えている必要がない。その結果、第4目標検出装置22−1〜22−mの構造が簡単になり小型化が可能になるので、目標検出システムの全体として小規模化が可能になる。
【0074】
なお、上述した実施例2に係る目標検出システムでは、フーリエ変換装置11−1〜11−nの各々において、不要波抑圧装置9の出力信号をフーリエ変換するように構成したが、フーリエ変換装置11−1〜11−nの何れかで、不要波抑圧装置の出力信号をフーリエ変換し、他のフーリエ変換装置は、その出力信号を入力するように構成できる。この構成によれば、フーリエ変換の計算負荷を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、レーダ装置と電波シーカを備えるミサイル・システムや複数のレーダ装置を備えるネットワーク・レーダ・システムなどに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係る目標検出システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る目標検出システムで使用される第1目標検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る目標検出システムで使用される畳み込み演算装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1に係る目標検出システムで使用される第2目標検出装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例2に係る目標検出システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2に係る目標検出システムで使用される畳み込み演算装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係る目標検出システムで使用されるフーリエ変換装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例2に係る目標検出システムで使用される第2目標検出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】従来の目標検出システムの構成を示すブロック図である。
【図10】積分利得Gと積分利得G'の計算例を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 アンテナ
2 送信機
3 サーキュレータ
4 受信機
5 MTI装置
6 周波数分析装置
7、7−1〜7−n CFAR装置
8、8−1〜8−n 検出装置
9 不要波抑圧装置
10、10−1〜10−n 畳み込み演算装置
11、11−1〜11−n フーリエ変換装置
12 畳み込み演算部
13 参照信号発生部
14 フーリエ変換部
15 フーリエ変換された参照信号発生部
16 乗算部
17 逆フーリエ変換部
18 参照信号制御情報発生装置
19−1〜19−l 第1目標検出装置
20−1〜20−m 第2目標検出装置
21−1〜21−l 第3目標検出装置
22−1〜22−m 第4目標検出装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標検出装置と参照信号制御情報発生装置とを備えた目標検出システムであって、
前記目標検出装置は、
空間に送信した送信波の反射波を受信することにより得られた受信信号をデジタルビデオ信号に変換する受信機と、
前記受信機から出力されるデジタルビデオ信号から不要波成分を抑圧する不要波抑圧装置と、
前記不要波抑圧装置で不要波成分が抑圧された信号に対し、検出対象とする目標からの受信信号のパルス毎の複素共役となり且つ積分利得を最大にできるパルス方向の長さを有する参照信号との間で畳み込み演算を行う畳み込み演算装置と、
前記畳み込み演算装置から出力される信号に基づき目標からの反射波の信号を検出する検出装置とを備え、
前記参照信号制御情報発生装置は、前記目標検出装置の畳み込み演算装置に対し、畳み込み演算に使用する参照信号の種類を指示することを特徴とする目標検出システム。
【請求項2】
前記目標検出装置の畳み込み演算装置は、
前記不要波抑圧装置で不要波成分が抑圧された信号に対し、複数種類の参照信号との間で畳み込み演算を行うことを特徴とする請求項1記載の目標検出システム。
【請求項3】
目標検出装置と参照信号制御情報発生装置とを備えた目標検出システムであって、
前記目標検出装置は、
空間に送信した送信波の反射波を受信することにより得られた受信信号をデジタルビデオ信号に変換する受信機と、
前記受信機から出力されるデジタルビデオ信号から不要波成分を抑圧する不要波抑圧装置と、
前記不要波抑圧装置で不要波成分が抑圧された信号をフーリエ変換した信号と、検出対象とする目標からの受信信号のパルス毎の複素共役となり且つ積分利得を最大にできるパルス方向の長さを有する信号をフーリエ変換して得られた参照信号とを乗算した後、逆フーリエ変換を行うフーリエ変換装置と、
前記フーリエ変換装置から出力される信号に基づき目標からの反射波の信号を検出する検出装置とを備え、
前記参照信号制御情報発生装置は、前記目標検出装置のフーリエ変換装置に対し、乗算に使用する参照信号の種類を指示することを特徴とする目標検出システム。
【請求項4】
前記目標検出装置のフーリエ変換装置は、
前記不要波抑圧装置で不要波成分が抑圧された信号をフーリエ変換した信号と、検出対象とする目標からの受信信号のパルス毎の複素共役となり且つ積分利得を最大にできるパルス方向の長さを有する信号をフーリエ変換して得られた複数種類の参照信号とをそれぞれ乗算した後、逆フーリエ変換をそれぞれ実施することを特徴とする請求項3記載の目標検出システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−17545(P2006−17545A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194459(P2004−194459)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】