目標追尾装置
【課題】多次元相関決定時の演算負荷の減少を実現しかつ許容可能な解を導出する目標追尾装置を得る。
【解決手段】センサ観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段110Aと、航跡分離状況判定手段130と、多次元相関決定手段120とを備えている。航跡候補コスト行列生成手段110Aは、航跡候補行列と、航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列とを生成する。航跡分離状況判定手段130は、航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対し、航跡候補行列と航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示する。多次元相関決定手段120は、航跡候補行列とコスト配列とからLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【解決手段】センサ観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段110Aと、航跡分離状況判定手段130と、多次元相関決定手段120とを備えている。航跡候補コスト行列生成手段110Aは、航跡候補行列と、航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列とを生成する。航跡分離状況判定手段130は、航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対し、航跡候補行列と航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示する。多次元相関決定手段120は、航跡候補行列とコスト配列とからLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダなどのセンサシステムにおいて、センサからの目標位置の観測値を用いて多目標の航跡を生成する際の相関を多次元的に解く技術に関し、特に演算時間を削減しながら許容可能な解を導出することのできる目標追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサからの観測値を用いて航跡を多次元的に解く技術は、種々提案されており、たとえば、複数サンプリング時刻にわたる観測値の相関をまとめて計算して航跡を生成するアルゴリズムとして、複数フレーム割当法が知られている(たとえば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
複数フレーム割当法においては、既存航跡とNサンプリング時刻にわたる観測値の相関決定を、N+1次元の割当問題に変換して解く。N+1次元の割当問題は、以下のように表される。
すなわち、以下の式(1)で表される目的関数を、最小とする2値(0か1)変数を決定する。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、2値変数は、以下のように表される。
【0006】
【数2】
【0007】
ただし、Cj2・・・CjN+1は、既存航跡および観測値i1・・・iN+1から航跡を生成するために要するコストであり、通常航跡尤度比の逆数の対数値を使用する。
上記変数Zj1・・・zjN+1は、以下の式(2)のように表される。
【0008】
【数3】
【0009】
また、上記(1)においては、以下の式(3)〜式(5)の制約条件がある。
すなわち、任意のi1について、以下の式(3)のとおりである。
【0010】
【数4】
【0011】
また、任意のik(1<k<N+1)については、以下の式(4)のとおりである。
【0012】
【数5】
【0013】
任意のiN+1については、以下の式(5)のとおりである。
【0014】
【数6】
【0015】
以下、この問題を高速に解く方法として、非特許文献2に記載された処理手順について説明する。
図11は非特許文献2に記載された従来の目標追尾装置の構成を示すブロック図であり、図12は図11の目標追尾装置による処理手順を示すフローチャートである。
【0016】
図11において、目標追尾装置100は、センサ200からの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段110と、多次元相関決定手段120とを備えている。
多次元相関決定手段120は、航跡候補コスト行列生成手段110からの航跡候補コスト行列を入力情報とする多次元割当問題初期値設定部121と、2次元割当解算出部122と、多次元割当解算出部123とを備えている。また、多次元割当解算出部123には、演算結果を表示する表示装置300が接続されている。
【0017】
図12において、目標追尾装置100は、まず、観測値入力処理(ステップST1)を行い、センサ200から得られた過去から最新までのNサンプリング時刻分の観測値を、航跡候補コスト行列生成手段110に取り込む。
【0018】
続いて、航跡候補コスト行列生成処理(ステップST2)を行い、既存航跡および各サンプリング時刻から1つずつの観測値を選択し、その観測値の組み合わせによって形成される航跡候補の尤度比を計算し、尤度比の逆数を用いてコストを計算して航跡候補コスト行列を生成する。
【0019】
次に、多次元相関決定手段120において、航跡候補を既存航跡番号と各観測フレームの観測番号のN+1次元の組み合わせと見なし、各航跡候補のコストを用いてN+1次元の割当問題を解く(ステップST8〜ST11)。
まず、多次元割当問題初期値設定処理(ステップST8)を行い、N+1次元の問題をK次元の割当問題とし、以下の式(6)により、2次元割当問題に緩和するための各航跡候補のコストの設定を行う。
【0020】
【数7】
【0021】
ただし、式(6)において、i1i2j3・・・jN+1は、i1i2から構成される航跡候補の中で最小コストを有する航跡候補を示す。また、観測値jrに対応するLagrange乗数はUjrであり、初期値はすべて「0」である。
【0022】
続いて、2次元割当解算出処理(ステップST9)を行い、2次元割当問題を解く。
2次元割当問題は、演算負荷も少なくかつ厳密解が求められる手法が多く提案されている(たとえば、Munkres法)。この解は、K次元割当問題を2次元に緩和した解であることから、K次元割当解の下解であることが一般的に知られている。
【0023】
次に、2次元割当許容解判定処理(ステップST10)を行い、得られた2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かを判定する。
ステップST10において、前回解が以下の式(7)を満たす場合には、許容解の一部であると判定する。
【0024】
【数8】
【0025】
ただし、式(7)において、lは、2次元割当問題の解の導出の際の繰り返し回数であり、φlは、2次元割当解における航跡候補のコストの総和であり、thresholdは、2次元割当解が十分大きい値であると判断するための収束判定閾値である。
【0026】
ステップST10において、前回解が以下の式(7)を満たし、許容解の一部であると判定された場合には、2次元割当解を1次元列に修正し、K次元割当問題をK−1次元割当問題に縮小して、多次元割当問題初期値設定処理(ステップST8)に戻る。
【0027】
一方、ステップST10において、前回解が式(7)を満たさない場合には、Lagrange乗数を修正して、当該Lagrange乗数に対応したコストを再計算し、多次元割当問題初期値設定処理(ステップST8)に戻る。
【0028】
以上の処理(ステップST8〜ST10)を繰り返し実行した後、多次元割当解出力処理(ステップST11)」を行い、縮小した次元を元のN+1次元に戻す。このとき、上記式(3)〜式(5)の制約条件を満たし、上記式(1)の許容解を構成する航跡候補組み合わせを導出する。
【0029】
【特許文献1】特開2007−212244号公報
【非特許文献1】A.B.Poore and A.J.RobertsonIII「A New Multi−dimensional Data Association Algorithm for Multisensor−Multitarget Tracking」 Proc. Of SPIE vol.2561,1995.
【非特許文献2】A.B.Poore and A.J.RobertsonIII「A New Lagrangian Relaxation Based Algorithm for a Class of Multidimensional Assignment Problems」 Computational Optimization and Applications, 8, 129−150, 1997.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従来の目標追尾装置では、非特許文献2に記載の複数フレーム割当法を用いた場合、多次元相関決定において許容可能な解を小さい演算負荷で導出しているものの、N次元の割当問題を2次元割当問題の繰り返しに変換し、2次元割当解の導出において解が収束するまで航跡候補の組み合わせの抽出処理が繰り返し行われるので、観測間隔が短いセンサや演算速度が遅いプラットホームで処理を行うためには、さらなる演算負荷の減少が必要になるという課題があった。
【0031】
また、特許文献1には、上記課題の解決策として、通常は2次元相関を行い、かつ一定フレーム間隔で複数フレーム割当法による相関を行い、演算時間増大フレームを制限することにより、演算負荷の減少を実現しているが、この場合、複数フレーム割当法を行うフレームにおける観測値と既存航跡との関係にかかわらず、観測フレーム数を減少させることから、導出解精度の悪化や、当該フレームでは演算時間が減少せずに、次のフレームの演算時間が消費されるという課題あった。
【0032】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、航跡候補の中から、航跡候補の航跡番号と構成される観測値と航跡候補のコストとの関係から抽出される航跡組み合わせを予想し、予想された関係から、抽出される航跡が分離しているか否かを判別し、その分離状況に応じて、多次元相関決定における初期解の設定または収束判定の緩和を行うことにより、多次元相関決定においてさらなる演算負荷の減少を実現するとともに、許容可能な解を導出することのできる目標追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この発明による目標追尾装置は、センサからの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段と、航跡分離状況判定手段と、多次元相関決定手段と、を備えた目標追尾装置であって、航跡候補コスト行列生成手段は、現在までの最新Nフレームの観測値の観測番号と現在からN+1フレーム前に生成された航跡の航跡番号との組み合わせを作成して、観測番号と航跡番号との複数の組み合わせの各々を航跡候補と見なす航跡候補行列と、航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列と、を生成し、航跡分離状況判定手段は、航跡候補の各々で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、を対比することにより航跡の分離状況を判定して、航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段に対し、最新M(≦N)フレームの観測値を用いて、航跡候補行列と航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示し、多次元相関決定手段は、航跡候補行列とコスト配列とからLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出するものである。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、多次元相関決定において演算負荷の減少を実現するとともに、許容可能な解を導出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る目標追尾装置100Aの構成を示すブロック図であり、前述(図11)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
図1において、目標追尾装置100Aは、航跡候補コスト行列生成手段110Aと、多次元相関決定手段120と、航跡分離状況判定手段130と、を備えている。
【0036】
航跡候補コスト行列生成手段110Aは、既存航跡とセンサ200からの観測値の航跡候補とを生成し、各航跡候補に対応するコストを算出する。
多次元相関決定手段120は、航跡候補コスト行列生成手段110Aにより生成された航跡候補と対応するコストとから、当該観測フレームにおける最適航跡候補群の抽出を、N+1次元割当問題として前述と同様の処理により解く。
【0037】
航跡分離状況判定手段130は、最小コスト航跡抽出部131と、最小コスト算出諸元設定部132と、航跡分離状況判定部133と、を備えている。
航跡分離状況判定手段130は、抽出される航跡が分離しているか否かを判定し、分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対して、最新N観測フレームの利用の元で、最新M観測フレームでの航跡候補の再生成およびコストの再算出を指示する。なお、「M(≦N)」の値は、「3(航跡が確立する最低観測フレーム数)」以上に設定される。
目標追尾装置100Aで確立した航跡は、表示装置300により表示される。
【0038】
次に、図2のフローチャートと図3および図4の説明図とを参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。ここでは、特に、航跡分離状況判定手段130を中心とした動作について説明する。
【0039】
図2において、前述(図12)と同様の処理(ステップST1、ST2、ST8〜ST11)については、前述と同一符号が付されている。
図3は、N=4、既存航跡数=2、各観測フレームでの観測値数=2〜3の場合の航跡候補の組み合わせ行列の例を示している。また、図4は、各最小コスト算出諸元設定値での抽出結果の例を示している。
【0040】
図2において、まず、航跡候補コスト行列生成手段110Aは、センサ200から得られた観測値を取り込むとともに(ステップST1)、多次元割当解算出部123から出力された既存航跡の組み合わせを作成して、たとえば図3のように、コスト(航跡候補コスト行列)を算出する(ステップST2)。
【0041】
図3においては、4フレーム分のスライディングウィンドウ(2点鎖線枠)内の各時刻t1〜t4で選択される、既存軌跡(1)(1点鎖線矢印)および既存軌跡(2)(実線矢印)の観測値a1、a2、a3(黒四角点)と、観測値の組み合わせ(点線枠)で示される各航跡候補およびコスト(尤度比の逆数)とが示されている。
【0042】
図3内の観測値aに付された数字「1」〜「3」は、観測番号を示している。
また、航跡候補(0)〜(2)において、航跡候補(0)は、既存航跡との相関が存在しないことを示し、「0」は、相関観測値が存在しないことを示している。
【0043】
次に、最小コスト航跡抽出部131は、生成された航跡組候補の組み合わせ行列から、最小コスト算出諸元設定部132での設定値判定処理(ステップST3)を行い、設定値が「0」の場合には、ステップST4に進み、設定値が「1」の場合には、ステップST5に進む。
【0044】
ステップST4(設定値=0)においては、各航跡番号の中で最小コストとなる航跡候補を選択し、さらに最新観測フレームの各観測番号において最小コストとなる航跡候補を選択し、選択された各航跡候補における航跡番号と観測番号との組み合わせを、たとえば図4の抽出結果のように生成して、次の判定処理(ステップST6)に進む。
【0045】
一方、ステップST5(設定値=1)においては、最新M+1観測フレームにおける観測番号において最小コストとなる航跡候補を選択し、さらに最新観測フレームの各観測番号において最小コストとなる航跡候補を選択し、選択された各航跡候補における航跡番号と観測番号との組み合わせを、たとえば図4の抽出結果のように生成して、次の判定処理(ステップST6)に進む。
【0046】
図4においては、過去4フレーム分の時刻t1〜t4での各航跡番号(0)〜(2)の航跡候補に基づく、各ステップST4、ST5による導出(抽出)結果が具体的に示されている。
ここでは、ステップST4による導出結果として、航跡番号(1)に関しては、観測番号「1」(観測値a1)の最小コスト「−2.4」が抽出され、航跡番号(2)に関しては、観測番号「3」(観測値a3)の最小コスト「−6.2」が抽出されている。
【0047】
同様に、ステップST5による導出(抽出)結果として、航跡番号(1)に関しては、観測番号「1」(観測値a1)の最小コスト「−2.4」が抽出され、航跡番号(2)に関しては、観測番号「3」(観測値a3)の最小コスト「−6.2」が抽出されている。
この結果、各航跡番号(1)、(0)、(2)での最小コスト航跡候補として、それぞれ、観測番号「1」の最小コスト「−2.4」、観測番号「2」の最小コスト「−0.5」、観測番号「3」の最小コスト「−6.2」が抽出される。
【0048】
次に、航跡分離状況判定部133は、上記の2つの観点から抽出した航跡番号と観測番号との組み合わせを比較し(ステップST6)、抽出した航跡候補組み合わせで同一航跡番号および同一観測点番号の抽出がなく、かつ、一定数以上の航跡番号と観測番号との組み合わせが一致した場合には、航跡は分離しているものと判定する。
【0049】
ステップST6による組み合わせの一致判定において、航跡番号数と観測番号数とが異なる場合には、少ない数の組み合わせでの判定を行う。
また、一定数の設定の例として、正解航跡を誤航跡と認識する確率(一般的に、「0.1」などの値)を「1」から減算した確率を設定する方法が挙げられる。
【0050】
ステップST6において航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定部133は、最小コスト算出諸元設定部132であらかじめ設定されている観測フレーム数Mを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力する。
一方、ステップST6において航跡が分離していないと判定された場合には、航跡分離状況判定部133は、観測フレーム数Nを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力する。
【0051】
航跡候補コスト行列生成手段110Aは、観測フレーム数=M(航跡が分離)を入力した場合には、指定観測フレーム数での航跡候補の組み合わせ行列を生成して、コスト(航跡候補コスト行列)を算出して出力する(ステップST7)。
一方、観測フレーム数=N(航跡の分離なし)を入力した場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aは、すでに生成した航跡候補の組み合わせ行列およびコストを出力する。
【0052】
以下、多次元相関決定手段120内の多次元割当問題初期値設定部121は、N(M)+1次元の航跡候補の組み合わせ行列およびコストを、K次元の多次元相関問題として、前述の式(6)のように、K次元の問題を2次元割当問題に緩和するための各航跡候補のコストの設定を行う(ステップST8)。
【0053】
続いて、2次元割当解算出部122は、前述と同様に2次元割当問題を解く(ステップST9)。
2次元割当問題は、演算負荷も少なくかつ厳密解が求められる手法が多く提案されている(たとえば、Munkres法)。この解は、K次元割当問題を緩和した解であることから、K次元割当解の下解であることが一般的に知られている。
【0054】
また、2次元割当解算出部122は、得られた2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かを判定する(ステップST10)。
すなわち、前回解が前述の式(7)を満たす場合には、許容解の一部であると判定し、前回解が式(7)を満たさない場合には、Lagrange乗数を修正して、当該Lagrange乗数に対応したコストを再計算し、多次元割当問題初期値設定部121に出力する。
【0055】
ステップST10において、許容解の一部であると判定された場合には、2次元割当解を1次元列に修正し、K次元割当問題をK−1次元割当問題に縮小して、多次元割当問題初期値設定部121に出力する。このとき、Lagrange乗数はすべて「0」に初期化する。
【0056】
以上の処理(ステップST8〜ST10)を繰り返し実行した後、縮小した次元を元のN(M)+1次元に戻し、航跡候補組み合わせを導出する(ステップST11)。
このように、抽出される航跡の分離状況を、航跡候補の航跡番号と観測番号とコストとの関係から予測し、航跡が分離していると推測される場合には、多次元相関決定手段120に入力する航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることにより、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
【0057】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1、図2)に係る目標追尾装置100Aは、センサ200からの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段110Aと、航跡分離状況判定手段130と、多次元相関決定手段120と、を備えており、航跡候補コスト行列生成手段110Aは、現在までの最新Nフレームの観測値の観測番号と現在からN+1フレーム前に生成された航跡の航跡番号との組み合わせを作成して、観測番号と航跡番号との複数の組み合わせの各々を航跡候補と見なす航跡候補行列と、航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列と、を生成する。
【0058】
航跡分離状況判定手段130は、航跡候補の各々で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、を対比することにより航跡の分離状況を判定して、航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対し、最新M(≦N)フレームの観測値を用いて、航跡候補行列と航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示する。
【0059】
また、航跡分離状況判定手段130は、利用する観測フレームを縮小したときに航跡候補行列に残らない最新の観測フレームにおける各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新の観測フレームにおける各観測番号との組み合わせと、を対比することにより各航跡の分離状況を判定する
【0060】
さらに、多次元相関決定手段120は、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
これにより、航跡が分離していると推測される場合には、多次元相関決定手段120に入力する航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることができ、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
【0061】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1、図2)では、航跡分離状況判定手段130において、最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームにおける観測番号との組み合わせから、航跡の分離状況を判定したが、このとき、コストの小さい航跡候補が航跡として抽出される可能性がある。
【0062】
したがって、図5のように、航跡分離状況判定手段130B内に航跡コスト分散算出部134を設けることにより、航跡候補のコストの分散から航跡のコストのばらつきを求め、コストの小さい航跡候補の集合における各航跡候補の航跡番号と観測番号との共有度から、航跡の分離状況を判定してもよい。
【0063】
図5はこの発明の実施の形態2に係る目標追尾装置100Bの構成を示すブロック図であり、前述(図1)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
図5において、目標追尾装置100B内の航跡分離状況判定手段130Bは、前述(図1)の最小コスト航跡算出部131に代えて、航跡コスト分散算出部134を備えている。他の構成は、図1に示したとおりである。
【0064】
航跡コスト分散算出部134は、航跡候補のコストの分散を算出し、平均値から標準偏差以下のコストを有する航跡候補を抽出する。
以下、航跡分離状況判定部133Bは、抽出された航跡候補での航跡番号の重複度が一定値以下であり、かつ、各航跡番号での同一観測フレームでの観測番号の重複度が一定値以下である場合に、航跡は分離しているものと判定する。
【0065】
航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定部133Bは、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対して、最新N観測フレームの利用の元で、最新M観測フレーム(N≧M、M=3(航跡が確立する最低観測フレーム数)以上)での航跡候補の再生成およびコストの再算出を指示する。
【0066】
次に、図6のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態2による航跡分離状況判定手段130Bの動作について説明する。ここでは、前述の実施の形態1(図2)との変更点を中心に説明する。
図6において、ステップST1、ST2、ST7〜ST11は、前述(図2)と同様の処理であり、ステップST51、ST61は、前述のステップST6に対応する。
【0067】
まず、観測値入力処理(ステップST1)および航跡候補コスト行列生成処理(ステップST2)に続いて、航跡コスト分散算出部134は、航跡候補のコストの平均値および分散を算出し(ステップST31)、分散の平方根である標準偏差を算出して、平均値−標準偏差×定数倍(たとえば、定数=1)の小コストを有する航跡候補を抽出する(ステップST41)。
【0068】
次に、航跡分離状況判定部133Bは、航跡コスト分散算出部134により抽出された航跡候補に対する航跡番号の重複度(重複割合)が一定値以下であるか否かを判定する(ステップST51)。もし、航跡番号の抽出航跡に対する重複度が一定値以下の場合には、続いて、各航跡の観測番号の重複度が一定値以下であるか否かを判定する(ステップST61)。
【0069】
このとき、ステップST51、ST61での重複度判定基準となる一定値は、平均値からの差分に合わせて設定され、今回の例では、標準偏差であることから、たとえば33%に設定される。
ステップST61において、観測番号の重複度が一定値(航跡番号の重複度判定の場合と同一値)以下と判定された場合には、航跡分離状況判定部133Bは、航跡が分離しているものと判定する。
【0070】
航跡分離状況判定部133Bは、航跡が分離していると判定された場合には、最小コスト算出諸元設定部132であらかじめ設定されている観測フレーム数Mを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力し、航跡が分離していないと判定された場合には、観測フレーム数Nを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力する。
上記以外の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0071】
以上のように、この発明の実施の形態2(図5、図6)によれば、航跡分離状況判定手段130Bは、航跡候補のコストの平均値からコストの標準偏差以下となるコストを有する航跡候補において、同一航跡番号および観測番号を有する航跡数から航跡の分離状況を判定する。
【0072】
すなわち、航跡候補のコストの分散から航跡のコストのばらつきを求め、コストの小さい航跡候補の集合における各航跡候補の航跡番号と観測番号との共有度から、航跡の分離状況を判定する。
【0073】
このように、航跡が分離していると推測される場合に、多次元相関決定手段に入力する航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることにより、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
すなわち、抽出される航跡の分離状況を判定する際に、コストの小さい航跡候補が航跡として抽出される可能性があるが、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えることができる。
【0074】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図5、図6)では、航跡分離状況判定手段130B内に航跡コスト分散算出部134を設け、航跡が分離していると判定された場合にのみ航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることにより、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減したが、図7、図6のように、多次元相関決定手段120C内に多次元割当問題初期値修正部124を設け、航跡が分離していると判定された場合に、航跡候補を構成する観測フレーム数はそのままに保持して、多次元相関決定の初期値を修正し、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を減少してもよい。
【0075】
図7はこの発明の実施の形態3に係る目標追尾装置100Cの構成を示すブロック図であり、前述(図1)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「C」を付して詳述を省略する。
【0076】
図7において、目標追尾装置100C内の多次元相関決定手段120Cは、前述(図1)の構成に加えて、多次元割当問題初期値修正部124を備えている。
多次元割当問題初期値修正部124からの修正情報は、多次元割当問題初期値設定部121Cに入力されている。他の構成は、図1に示したとおりである。
【0077】
航跡分離状況判定手段130C内の航跡分離状況判定部133Cは、航跡が分離していると判定された場合には、組み合わせ同一航跡候補を出力する。
多次元相関決定手段120C内の多次元割当問題初期値修正部124は、組み合わせ同一航跡候補に応答して、抽出された航跡候補のコスト修正量を「0」に設定し、それ以外の航跡候補のコスト修正量を「正の一定値」に設定する。
【0078】
なお、コスト修正量の「正の一定値」は、たとえば、抽出航跡を航跡表示装置300に表示させる判定閾値の絶対値に設定される。
多次元割当問題初期値設定部121Cにおいて、航跡候補のコストに当該コスト修正量を加え、多次元相関決定における各航跡候補の初期コストとする。
【0079】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態3による多次元相関決定手段120Cの動作について説明する。ここでは、前述の実施の形態1(図2)との変更点を中心に説明する。
【0080】
図8において、ステップST1〜ST6、ST8〜ST11は、前述(図2)と同様の処理であり、ステップST71は、前述のステップST7に対応する。また、ステップST71とステップST8との間に、ステップST72が挿入されている。
【0081】
目標追尾装置100Cは、まず、前述と同様の処理(ステップST1〜ST6)を行い、航跡分離状況判定部133C(ステップST6)において、航跡が分離していると判定された場合には、組み合わせ同一航跡候補を抽出して出力する(ステップST71)。
【0082】
続いて、多次元割当問題初期値修正124は、抽出航跡候補のコスト修正量を「0」と設定し、抽出航跡候補以外の航跡候補のコスト修正量を「正の一定値」に設定する(ステップST72)。
【0083】
以下、多次元割当問題初期値設定部121Cは、航跡候補の組み合わせ行列およびコストを、K次元の多次元相関問題として、K次元の問題を2次元割当問題に緩和するための各航跡候補のコストの設定を、以下の式(8)のように、コスト修正量を加えて行う(ステップST8)。
【0084】
【数9】
【0085】
ここで、i1i2j3・・・jN+1からなる航跡候補が抽出されている場合には、以下の式(9)が成立する。
【0086】
【数10】
【0087】
また、i1i2j3・・・jN+1からなる航跡候補が抽出されていない場合には、以下の式(10)が成立する。
【0088】
【数11】
【0089】
ただし、式(10)において、Aは正数値(たとえば、航跡確立閾値の絶対値)である。
上記以外の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0090】
以上のように、この発明の実施の形態3(図7、図8)によれば、多次元相関決定手段120Cは、航跡分離状況判定部133Cにより航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補の観測フレーム数を縮小してコストを再計算することを禁止して、2次元割当問題の解の精度判定閾値を緩和し、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【0091】
また、多次元相関決定手段120Cは、航跡分離状況判定部133Cにより航跡が分離していると判定された場合には、2次元割当問題の解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【0092】
このように、航跡の分離状況を判定して、航跡が分離していると判定される場合には、航跡候補を構成する観測フレーム数はそのままに保持して、多次元相関決定の初期値を修正し、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の精度劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
【0093】
また、多次元割当問題初期値修正部124を用いた多次元相関決定手段の構成は、前述の実施の形態2(図5)の航跡分離状況判定手段130Bに対しても適用することができ、同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0094】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図7、図8)では、多次元割当問題初期値修正部124を設け、航跡が分離していると判定される場合には、航跡候補を構成する観測フレーム数はそのままに保持して、多次元相関決定の初期値を修正し、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を軽減したが、図9、図10のように、収束判定閾値修正部125を設け、航跡が分離していると判定される場合には、2次元割当解がK次元の許容解の一部であるか否かの判定における収束閾値を緩和して、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を軽減してもよい。
【0095】
図9はこの発明の実施の形態4に係る目標追尾装置100Dの構成を示すブロック図であり、前述(図1、図7)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「D」を付して詳述を省略する。
【0096】
図9において、目標追尾装置100D内の多次元相関決定手段120Dは、前述(図7)の多次元割当問題初期値修正部124に代えて、収束判定閾値修正部125を備えている。他の構成は、図7に示したとおりである。
【0097】
航跡分離状況判定手段130D内の航跡分離状況判定部133Dは、航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離情報を出力する。
【0098】
多次元相関決定手段120D内の収束判定閾値修正部125は、航跡分離情報に応答して、航跡が分離していると判定される場合には、2次元割当解算出部122Dで用いられる閾値の緩和値Bを設定する。
緩和値Bで緩和された後の閾値threshold’は、元の閾値thresholdを用いて、以下の式(11)で表される。
【0099】
【数12】
【0100】
ただし、式(11)において、緩和値Bは一定値(たとえば、「10」)である。
緩和後の閾値threshold’は、2次元割当解算出部122Dにおいて、2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かを判定する際に用いられる。
【0101】
次に、図10のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態4による多次元相関決定手段120Dの動作について説明する。ここでは、前述の実施の形態1、3(図2、図8)との変更点を中心に説明する。
図10において、ステップST1〜ST6、ST8〜ST11は、前述(図2、図8)と同様の処理であり、ステップST6とステップST9との間に、ステップST73が挿入されている。
【0102】
図10内のステップST6において、航跡分離状況判定手段130D内の航跡分離状況判定部133Dは、航跡が分離しているか否かの判定結果(分離の有無を示す)として航跡分離情報を出力する。
【0103】
収束判定閾値修正部125は、航跡分離情報が「航跡分離あり」を示す場合には、収束閾値(収束値)として、デフォルト設定閾値の定数(緩和値B)倍した修正値を設定する(ステップST73)。
以下、2次元割当解算出部122Dは、修正された収束閾値を用いて、2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定を行う(ステップST9)。
上記以外の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0104】
以上のように、この発明の実施の形態4(図9、図10)によれば、多次元相関決定手段120Dは、航跡分離状況判定手段130Dにより航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を「0」に設定し、航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに「正数値」を付加し、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【0105】
このように、2次元割当解がK次元の許容解の一部であるか否かの判定における収束閾値を緩和して、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を軽減することができる。
【0106】
なお、収束判定閾値修正部125を用いた多次元相関決定手段の構成は、前述の実施の形態2(図5)の航跡分離状況判定手段130Bに対しても適用することができ、同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1における航跡候補の組み合わせ行列の例を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1における各最小コスト算出諸元設定値での抽出結果の例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2による動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態3に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態4に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態4による動作を示すフローチャートである。
【図11】従来の目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来の目標追尾装置による動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
100A、100B、100C、100D 目標追尾装置、110A 航跡候補コスト行列生成手段、120、120C、120D 多次元相関決定手段、121、121C、121D 多次元割当問題初期値設定部、122、122D 2次元割当解算出部、123 多次元割当解算出部、124 多次元割当問題初期値修正部、125 収束判定閾値修正部、130、130B 航跡分離状況判定手段、131 最小コスト航跡抽出部、132 最小コスト算出諸元設定部、133、133C、133D 航跡分離状況判定部、134 航跡コスト分散算出部、200 センサ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダなどのセンサシステムにおいて、センサからの目標位置の観測値を用いて多目標の航跡を生成する際の相関を多次元的に解く技術に関し、特に演算時間を削減しながら許容可能な解を導出することのできる目標追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサからの観測値を用いて航跡を多次元的に解く技術は、種々提案されており、たとえば、複数サンプリング時刻にわたる観測値の相関をまとめて計算して航跡を生成するアルゴリズムとして、複数フレーム割当法が知られている(たとえば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
複数フレーム割当法においては、既存航跡とNサンプリング時刻にわたる観測値の相関決定を、N+1次元の割当問題に変換して解く。N+1次元の割当問題は、以下のように表される。
すなわち、以下の式(1)で表される目的関数を、最小とする2値(0か1)変数を決定する。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、2値変数は、以下のように表される。
【0006】
【数2】
【0007】
ただし、Cj2・・・CjN+1は、既存航跡および観測値i1・・・iN+1から航跡を生成するために要するコストであり、通常航跡尤度比の逆数の対数値を使用する。
上記変数Zj1・・・zjN+1は、以下の式(2)のように表される。
【0008】
【数3】
【0009】
また、上記(1)においては、以下の式(3)〜式(5)の制約条件がある。
すなわち、任意のi1について、以下の式(3)のとおりである。
【0010】
【数4】
【0011】
また、任意のik(1<k<N+1)については、以下の式(4)のとおりである。
【0012】
【数5】
【0013】
任意のiN+1については、以下の式(5)のとおりである。
【0014】
【数6】
【0015】
以下、この問題を高速に解く方法として、非特許文献2に記載された処理手順について説明する。
図11は非特許文献2に記載された従来の目標追尾装置の構成を示すブロック図であり、図12は図11の目標追尾装置による処理手順を示すフローチャートである。
【0016】
図11において、目標追尾装置100は、センサ200からの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段110と、多次元相関決定手段120とを備えている。
多次元相関決定手段120は、航跡候補コスト行列生成手段110からの航跡候補コスト行列を入力情報とする多次元割当問題初期値設定部121と、2次元割当解算出部122と、多次元割当解算出部123とを備えている。また、多次元割当解算出部123には、演算結果を表示する表示装置300が接続されている。
【0017】
図12において、目標追尾装置100は、まず、観測値入力処理(ステップST1)を行い、センサ200から得られた過去から最新までのNサンプリング時刻分の観測値を、航跡候補コスト行列生成手段110に取り込む。
【0018】
続いて、航跡候補コスト行列生成処理(ステップST2)を行い、既存航跡および各サンプリング時刻から1つずつの観測値を選択し、その観測値の組み合わせによって形成される航跡候補の尤度比を計算し、尤度比の逆数を用いてコストを計算して航跡候補コスト行列を生成する。
【0019】
次に、多次元相関決定手段120において、航跡候補を既存航跡番号と各観測フレームの観測番号のN+1次元の組み合わせと見なし、各航跡候補のコストを用いてN+1次元の割当問題を解く(ステップST8〜ST11)。
まず、多次元割当問題初期値設定処理(ステップST8)を行い、N+1次元の問題をK次元の割当問題とし、以下の式(6)により、2次元割当問題に緩和するための各航跡候補のコストの設定を行う。
【0020】
【数7】
【0021】
ただし、式(6)において、i1i2j3・・・jN+1は、i1i2から構成される航跡候補の中で最小コストを有する航跡候補を示す。また、観測値jrに対応するLagrange乗数はUjrであり、初期値はすべて「0」である。
【0022】
続いて、2次元割当解算出処理(ステップST9)を行い、2次元割当問題を解く。
2次元割当問題は、演算負荷も少なくかつ厳密解が求められる手法が多く提案されている(たとえば、Munkres法)。この解は、K次元割当問題を2次元に緩和した解であることから、K次元割当解の下解であることが一般的に知られている。
【0023】
次に、2次元割当許容解判定処理(ステップST10)を行い、得られた2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かを判定する。
ステップST10において、前回解が以下の式(7)を満たす場合には、許容解の一部であると判定する。
【0024】
【数8】
【0025】
ただし、式(7)において、lは、2次元割当問題の解の導出の際の繰り返し回数であり、φlは、2次元割当解における航跡候補のコストの総和であり、thresholdは、2次元割当解が十分大きい値であると判断するための収束判定閾値である。
【0026】
ステップST10において、前回解が以下の式(7)を満たし、許容解の一部であると判定された場合には、2次元割当解を1次元列に修正し、K次元割当問題をK−1次元割当問題に縮小して、多次元割当問題初期値設定処理(ステップST8)に戻る。
【0027】
一方、ステップST10において、前回解が式(7)を満たさない場合には、Lagrange乗数を修正して、当該Lagrange乗数に対応したコストを再計算し、多次元割当問題初期値設定処理(ステップST8)に戻る。
【0028】
以上の処理(ステップST8〜ST10)を繰り返し実行した後、多次元割当解出力処理(ステップST11)」を行い、縮小した次元を元のN+1次元に戻す。このとき、上記式(3)〜式(5)の制約条件を満たし、上記式(1)の許容解を構成する航跡候補組み合わせを導出する。
【0029】
【特許文献1】特開2007−212244号公報
【非特許文献1】A.B.Poore and A.J.RobertsonIII「A New Multi−dimensional Data Association Algorithm for Multisensor−Multitarget Tracking」 Proc. Of SPIE vol.2561,1995.
【非特許文献2】A.B.Poore and A.J.RobertsonIII「A New Lagrangian Relaxation Based Algorithm for a Class of Multidimensional Assignment Problems」 Computational Optimization and Applications, 8, 129−150, 1997.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従来の目標追尾装置では、非特許文献2に記載の複数フレーム割当法を用いた場合、多次元相関決定において許容可能な解を小さい演算負荷で導出しているものの、N次元の割当問題を2次元割当問題の繰り返しに変換し、2次元割当解の導出において解が収束するまで航跡候補の組み合わせの抽出処理が繰り返し行われるので、観測間隔が短いセンサや演算速度が遅いプラットホームで処理を行うためには、さらなる演算負荷の減少が必要になるという課題があった。
【0031】
また、特許文献1には、上記課題の解決策として、通常は2次元相関を行い、かつ一定フレーム間隔で複数フレーム割当法による相関を行い、演算時間増大フレームを制限することにより、演算負荷の減少を実現しているが、この場合、複数フレーム割当法を行うフレームにおける観測値と既存航跡との関係にかかわらず、観測フレーム数を減少させることから、導出解精度の悪化や、当該フレームでは演算時間が減少せずに、次のフレームの演算時間が消費されるという課題あった。
【0032】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、航跡候補の中から、航跡候補の航跡番号と構成される観測値と航跡候補のコストとの関係から抽出される航跡組み合わせを予想し、予想された関係から、抽出される航跡が分離しているか否かを判別し、その分離状況に応じて、多次元相関決定における初期解の設定または収束判定の緩和を行うことにより、多次元相関決定においてさらなる演算負荷の減少を実現するとともに、許容可能な解を導出することのできる目標追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この発明による目標追尾装置は、センサからの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段と、航跡分離状況判定手段と、多次元相関決定手段と、を備えた目標追尾装置であって、航跡候補コスト行列生成手段は、現在までの最新Nフレームの観測値の観測番号と現在からN+1フレーム前に生成された航跡の航跡番号との組み合わせを作成して、観測番号と航跡番号との複数の組み合わせの各々を航跡候補と見なす航跡候補行列と、航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列と、を生成し、航跡分離状況判定手段は、航跡候補の各々で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、を対比することにより航跡の分離状況を判定して、航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段に対し、最新M(≦N)フレームの観測値を用いて、航跡候補行列と航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示し、多次元相関決定手段は、航跡候補行列とコスト配列とからLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出するものである。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、多次元相関決定において演算負荷の減少を実現するとともに、許容可能な解を導出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る目標追尾装置100Aの構成を示すブロック図であり、前述(図11)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「A」を付して詳述を省略する。
図1において、目標追尾装置100Aは、航跡候補コスト行列生成手段110Aと、多次元相関決定手段120と、航跡分離状況判定手段130と、を備えている。
【0036】
航跡候補コスト行列生成手段110Aは、既存航跡とセンサ200からの観測値の航跡候補とを生成し、各航跡候補に対応するコストを算出する。
多次元相関決定手段120は、航跡候補コスト行列生成手段110Aにより生成された航跡候補と対応するコストとから、当該観測フレームにおける最適航跡候補群の抽出を、N+1次元割当問題として前述と同様の処理により解く。
【0037】
航跡分離状況判定手段130は、最小コスト航跡抽出部131と、最小コスト算出諸元設定部132と、航跡分離状況判定部133と、を備えている。
航跡分離状況判定手段130は、抽出される航跡が分離しているか否かを判定し、分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対して、最新N観測フレームの利用の元で、最新M観測フレームでの航跡候補の再生成およびコストの再算出を指示する。なお、「M(≦N)」の値は、「3(航跡が確立する最低観測フレーム数)」以上に設定される。
目標追尾装置100Aで確立した航跡は、表示装置300により表示される。
【0038】
次に、図2のフローチャートと図3および図4の説明図とを参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。ここでは、特に、航跡分離状況判定手段130を中心とした動作について説明する。
【0039】
図2において、前述(図12)と同様の処理(ステップST1、ST2、ST8〜ST11)については、前述と同一符号が付されている。
図3は、N=4、既存航跡数=2、各観測フレームでの観測値数=2〜3の場合の航跡候補の組み合わせ行列の例を示している。また、図4は、各最小コスト算出諸元設定値での抽出結果の例を示している。
【0040】
図2において、まず、航跡候補コスト行列生成手段110Aは、センサ200から得られた観測値を取り込むとともに(ステップST1)、多次元割当解算出部123から出力された既存航跡の組み合わせを作成して、たとえば図3のように、コスト(航跡候補コスト行列)を算出する(ステップST2)。
【0041】
図3においては、4フレーム分のスライディングウィンドウ(2点鎖線枠)内の各時刻t1〜t4で選択される、既存軌跡(1)(1点鎖線矢印)および既存軌跡(2)(実線矢印)の観測値a1、a2、a3(黒四角点)と、観測値の組み合わせ(点線枠)で示される各航跡候補およびコスト(尤度比の逆数)とが示されている。
【0042】
図3内の観測値aに付された数字「1」〜「3」は、観測番号を示している。
また、航跡候補(0)〜(2)において、航跡候補(0)は、既存航跡との相関が存在しないことを示し、「0」は、相関観測値が存在しないことを示している。
【0043】
次に、最小コスト航跡抽出部131は、生成された航跡組候補の組み合わせ行列から、最小コスト算出諸元設定部132での設定値判定処理(ステップST3)を行い、設定値が「0」の場合には、ステップST4に進み、設定値が「1」の場合には、ステップST5に進む。
【0044】
ステップST4(設定値=0)においては、各航跡番号の中で最小コストとなる航跡候補を選択し、さらに最新観測フレームの各観測番号において最小コストとなる航跡候補を選択し、選択された各航跡候補における航跡番号と観測番号との組み合わせを、たとえば図4の抽出結果のように生成して、次の判定処理(ステップST6)に進む。
【0045】
一方、ステップST5(設定値=1)においては、最新M+1観測フレームにおける観測番号において最小コストとなる航跡候補を選択し、さらに最新観測フレームの各観測番号において最小コストとなる航跡候補を選択し、選択された各航跡候補における航跡番号と観測番号との組み合わせを、たとえば図4の抽出結果のように生成して、次の判定処理(ステップST6)に進む。
【0046】
図4においては、過去4フレーム分の時刻t1〜t4での各航跡番号(0)〜(2)の航跡候補に基づく、各ステップST4、ST5による導出(抽出)結果が具体的に示されている。
ここでは、ステップST4による導出結果として、航跡番号(1)に関しては、観測番号「1」(観測値a1)の最小コスト「−2.4」が抽出され、航跡番号(2)に関しては、観測番号「3」(観測値a3)の最小コスト「−6.2」が抽出されている。
【0047】
同様に、ステップST5による導出(抽出)結果として、航跡番号(1)に関しては、観測番号「1」(観測値a1)の最小コスト「−2.4」が抽出され、航跡番号(2)に関しては、観測番号「3」(観測値a3)の最小コスト「−6.2」が抽出されている。
この結果、各航跡番号(1)、(0)、(2)での最小コスト航跡候補として、それぞれ、観測番号「1」の最小コスト「−2.4」、観測番号「2」の最小コスト「−0.5」、観測番号「3」の最小コスト「−6.2」が抽出される。
【0048】
次に、航跡分離状況判定部133は、上記の2つの観点から抽出した航跡番号と観測番号との組み合わせを比較し(ステップST6)、抽出した航跡候補組み合わせで同一航跡番号および同一観測点番号の抽出がなく、かつ、一定数以上の航跡番号と観測番号との組み合わせが一致した場合には、航跡は分離しているものと判定する。
【0049】
ステップST6による組み合わせの一致判定において、航跡番号数と観測番号数とが異なる場合には、少ない数の組み合わせでの判定を行う。
また、一定数の設定の例として、正解航跡を誤航跡と認識する確率(一般的に、「0.1」などの値)を「1」から減算した確率を設定する方法が挙げられる。
【0050】
ステップST6において航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定部133は、最小コスト算出諸元設定部132であらかじめ設定されている観測フレーム数Mを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力する。
一方、ステップST6において航跡が分離していないと判定された場合には、航跡分離状況判定部133は、観測フレーム数Nを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力する。
【0051】
航跡候補コスト行列生成手段110Aは、観測フレーム数=M(航跡が分離)を入力した場合には、指定観測フレーム数での航跡候補の組み合わせ行列を生成して、コスト(航跡候補コスト行列)を算出して出力する(ステップST7)。
一方、観測フレーム数=N(航跡の分離なし)を入力した場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aは、すでに生成した航跡候補の組み合わせ行列およびコストを出力する。
【0052】
以下、多次元相関決定手段120内の多次元割当問題初期値設定部121は、N(M)+1次元の航跡候補の組み合わせ行列およびコストを、K次元の多次元相関問題として、前述の式(6)のように、K次元の問題を2次元割当問題に緩和するための各航跡候補のコストの設定を行う(ステップST8)。
【0053】
続いて、2次元割当解算出部122は、前述と同様に2次元割当問題を解く(ステップST9)。
2次元割当問題は、演算負荷も少なくかつ厳密解が求められる手法が多く提案されている(たとえば、Munkres法)。この解は、K次元割当問題を緩和した解であることから、K次元割当解の下解であることが一般的に知られている。
【0054】
また、2次元割当解算出部122は、得られた2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かを判定する(ステップST10)。
すなわち、前回解が前述の式(7)を満たす場合には、許容解の一部であると判定し、前回解が式(7)を満たさない場合には、Lagrange乗数を修正して、当該Lagrange乗数に対応したコストを再計算し、多次元割当問題初期値設定部121に出力する。
【0055】
ステップST10において、許容解の一部であると判定された場合には、2次元割当解を1次元列に修正し、K次元割当問題をK−1次元割当問題に縮小して、多次元割当問題初期値設定部121に出力する。このとき、Lagrange乗数はすべて「0」に初期化する。
【0056】
以上の処理(ステップST8〜ST10)を繰り返し実行した後、縮小した次元を元のN(M)+1次元に戻し、航跡候補組み合わせを導出する(ステップST11)。
このように、抽出される航跡の分離状況を、航跡候補の航跡番号と観測番号とコストとの関係から予測し、航跡が分離していると推測される場合には、多次元相関決定手段120に入力する航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることにより、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
【0057】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1、図2)に係る目標追尾装置100Aは、センサ200からの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段110Aと、航跡分離状況判定手段130と、多次元相関決定手段120と、を備えており、航跡候補コスト行列生成手段110Aは、現在までの最新Nフレームの観測値の観測番号と現在からN+1フレーム前に生成された航跡の航跡番号との組み合わせを作成して、観測番号と航跡番号との複数の組み合わせの各々を航跡候補と見なす航跡候補行列と、航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列と、を生成する。
【0058】
航跡分離状況判定手段130は、航跡候補の各々で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、を対比することにより航跡の分離状況を判定して、航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対し、最新M(≦N)フレームの観測値を用いて、航跡候補行列と航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示する。
【0059】
また、航跡分離状況判定手段130は、利用する観測フレームを縮小したときに航跡候補行列に残らない最新の観測フレームにおける各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新の観測フレームにおける各観測番号との組み合わせと、を対比することにより各航跡の分離状況を判定する
【0060】
さらに、多次元相関決定手段120は、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
これにより、航跡が分離していると推測される場合には、多次元相関決定手段120に入力する航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることができ、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
【0061】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1、図2)では、航跡分離状況判定手段130において、最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームにおける観測番号との組み合わせから、航跡の分離状況を判定したが、このとき、コストの小さい航跡候補が航跡として抽出される可能性がある。
【0062】
したがって、図5のように、航跡分離状況判定手段130B内に航跡コスト分散算出部134を設けることにより、航跡候補のコストの分散から航跡のコストのばらつきを求め、コストの小さい航跡候補の集合における各航跡候補の航跡番号と観測番号との共有度から、航跡の分離状況を判定してもよい。
【0063】
図5はこの発明の実施の形態2に係る目標追尾装置100Bの構成を示すブロック図であり、前述(図1)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「B」を付して詳述を省略する。
図5において、目標追尾装置100B内の航跡分離状況判定手段130Bは、前述(図1)の最小コスト航跡算出部131に代えて、航跡コスト分散算出部134を備えている。他の構成は、図1に示したとおりである。
【0064】
航跡コスト分散算出部134は、航跡候補のコストの分散を算出し、平均値から標準偏差以下のコストを有する航跡候補を抽出する。
以下、航跡分離状況判定部133Bは、抽出された航跡候補での航跡番号の重複度が一定値以下であり、かつ、各航跡番号での同一観測フレームでの観測番号の重複度が一定値以下である場合に、航跡は分離しているものと判定する。
【0065】
航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定部133Bは、航跡候補コスト行列生成手段110Aに対して、最新N観測フレームの利用の元で、最新M観測フレーム(N≧M、M=3(航跡が確立する最低観測フレーム数)以上)での航跡候補の再生成およびコストの再算出を指示する。
【0066】
次に、図6のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態2による航跡分離状況判定手段130Bの動作について説明する。ここでは、前述の実施の形態1(図2)との変更点を中心に説明する。
図6において、ステップST1、ST2、ST7〜ST11は、前述(図2)と同様の処理であり、ステップST51、ST61は、前述のステップST6に対応する。
【0067】
まず、観測値入力処理(ステップST1)および航跡候補コスト行列生成処理(ステップST2)に続いて、航跡コスト分散算出部134は、航跡候補のコストの平均値および分散を算出し(ステップST31)、分散の平方根である標準偏差を算出して、平均値−標準偏差×定数倍(たとえば、定数=1)の小コストを有する航跡候補を抽出する(ステップST41)。
【0068】
次に、航跡分離状況判定部133Bは、航跡コスト分散算出部134により抽出された航跡候補に対する航跡番号の重複度(重複割合)が一定値以下であるか否かを判定する(ステップST51)。もし、航跡番号の抽出航跡に対する重複度が一定値以下の場合には、続いて、各航跡の観測番号の重複度が一定値以下であるか否かを判定する(ステップST61)。
【0069】
このとき、ステップST51、ST61での重複度判定基準となる一定値は、平均値からの差分に合わせて設定され、今回の例では、標準偏差であることから、たとえば33%に設定される。
ステップST61において、観測番号の重複度が一定値(航跡番号の重複度判定の場合と同一値)以下と判定された場合には、航跡分離状況判定部133Bは、航跡が分離しているものと判定する。
【0070】
航跡分離状況判定部133Bは、航跡が分離していると判定された場合には、最小コスト算出諸元設定部132であらかじめ設定されている観測フレーム数Mを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力し、航跡が分離していないと判定された場合には、観測フレーム数Nを航跡候補コスト行列生成手段110Aに入力する。
上記以外の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0071】
以上のように、この発明の実施の形態2(図5、図6)によれば、航跡分離状況判定手段130Bは、航跡候補のコストの平均値からコストの標準偏差以下となるコストを有する航跡候補において、同一航跡番号および観測番号を有する航跡数から航跡の分離状況を判定する。
【0072】
すなわち、航跡候補のコストの分散から航跡のコストのばらつきを求め、コストの小さい航跡候補の集合における各航跡候補の航跡番号と観測番号との共有度から、航跡の分離状況を判定する。
【0073】
このように、航跡が分離していると推測される場合に、多次元相関決定手段に入力する航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることにより、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
すなわち、抽出される航跡の分離状況を判定する際に、コストの小さい航跡候補が航跡として抽出される可能性があるが、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えることができる。
【0074】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図5、図6)では、航跡分離状況判定手段130B内に航跡コスト分散算出部134を設け、航跡が分離していると判定された場合にのみ航跡候補を構成する観測フレーム数を減少させることにより、多次元相関決定の解の精度の劣化を抑えつつ演算負荷を軽減したが、図7、図6のように、多次元相関決定手段120C内に多次元割当問題初期値修正部124を設け、航跡が分離していると判定された場合に、航跡候補を構成する観測フレーム数はそのままに保持して、多次元相関決定の初期値を修正し、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を減少してもよい。
【0075】
図7はこの発明の実施の形態3に係る目標追尾装置100Cの構成を示すブロック図であり、前述(図1)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「C」を付して詳述を省略する。
【0076】
図7において、目標追尾装置100C内の多次元相関決定手段120Cは、前述(図1)の構成に加えて、多次元割当問題初期値修正部124を備えている。
多次元割当問題初期値修正部124からの修正情報は、多次元割当問題初期値設定部121Cに入力されている。他の構成は、図1に示したとおりである。
【0077】
航跡分離状況判定手段130C内の航跡分離状況判定部133Cは、航跡が分離していると判定された場合には、組み合わせ同一航跡候補を出力する。
多次元相関決定手段120C内の多次元割当問題初期値修正部124は、組み合わせ同一航跡候補に応答して、抽出された航跡候補のコスト修正量を「0」に設定し、それ以外の航跡候補のコスト修正量を「正の一定値」に設定する。
【0078】
なお、コスト修正量の「正の一定値」は、たとえば、抽出航跡を航跡表示装置300に表示させる判定閾値の絶対値に設定される。
多次元割当問題初期値設定部121Cにおいて、航跡候補のコストに当該コスト修正量を加え、多次元相関決定における各航跡候補の初期コストとする。
【0079】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態3による多次元相関決定手段120Cの動作について説明する。ここでは、前述の実施の形態1(図2)との変更点を中心に説明する。
【0080】
図8において、ステップST1〜ST6、ST8〜ST11は、前述(図2)と同様の処理であり、ステップST71は、前述のステップST7に対応する。また、ステップST71とステップST8との間に、ステップST72が挿入されている。
【0081】
目標追尾装置100Cは、まず、前述と同様の処理(ステップST1〜ST6)を行い、航跡分離状況判定部133C(ステップST6)において、航跡が分離していると判定された場合には、組み合わせ同一航跡候補を抽出して出力する(ステップST71)。
【0082】
続いて、多次元割当問題初期値修正124は、抽出航跡候補のコスト修正量を「0」と設定し、抽出航跡候補以外の航跡候補のコスト修正量を「正の一定値」に設定する(ステップST72)。
【0083】
以下、多次元割当問題初期値設定部121Cは、航跡候補の組み合わせ行列およびコストを、K次元の多次元相関問題として、K次元の問題を2次元割当問題に緩和するための各航跡候補のコストの設定を、以下の式(8)のように、コスト修正量を加えて行う(ステップST8)。
【0084】
【数9】
【0085】
ここで、i1i2j3・・・jN+1からなる航跡候補が抽出されている場合には、以下の式(9)が成立する。
【0086】
【数10】
【0087】
また、i1i2j3・・・jN+1からなる航跡候補が抽出されていない場合には、以下の式(10)が成立する。
【0088】
【数11】
【0089】
ただし、式(10)において、Aは正数値(たとえば、航跡確立閾値の絶対値)である。
上記以外の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0090】
以上のように、この発明の実施の形態3(図7、図8)によれば、多次元相関決定手段120Cは、航跡分離状況判定部133Cにより航跡が分離していると判定された場合には、航跡候補の観測フレーム数を縮小してコストを再計算することを禁止して、2次元割当問題の解の精度判定閾値を緩和し、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【0091】
また、多次元相関決定手段120Cは、航跡分離状況判定部133Cにより航跡が分離していると判定された場合には、2次元割当問題の解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【0092】
このように、航跡の分離状況を判定して、航跡が分離していると判定される場合には、航跡候補を構成する観測フレーム数はそのままに保持して、多次元相関決定の初期値を修正し、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の精度劣化を抑えつつ演算負荷を軽減することができる。
【0093】
また、多次元割当問題初期値修正部124を用いた多次元相関決定手段の構成は、前述の実施の形態2(図5)の航跡分離状況判定手段130Bに対しても適用することができ、同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0094】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図7、図8)では、多次元割当問題初期値修正部124を設け、航跡が分離していると判定される場合には、航跡候補を構成する観測フレーム数はそのままに保持して、多次元相関決定の初期値を修正し、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を軽減したが、図9、図10のように、収束判定閾値修正部125を設け、航跡が分離していると判定される場合には、2次元割当解がK次元の許容解の一部であるか否かの判定における収束閾値を緩和して、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を軽減してもよい。
【0095】
図9はこの発明の実施の形態4に係る目標追尾装置100Dの構成を示すブロック図であり、前述(図1、図7)と同様のものについては、前述と同一符号を付して、または符号の後に「D」を付して詳述を省略する。
【0096】
図9において、目標追尾装置100D内の多次元相関決定手段120Dは、前述(図7)の多次元割当問題初期値修正部124に代えて、収束判定閾値修正部125を備えている。他の構成は、図7に示したとおりである。
【0097】
航跡分離状況判定手段130D内の航跡分離状況判定部133Dは、航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離情報を出力する。
【0098】
多次元相関決定手段120D内の収束判定閾値修正部125は、航跡分離情報に応答して、航跡が分離していると判定される場合には、2次元割当解算出部122Dで用いられる閾値の緩和値Bを設定する。
緩和値Bで緩和された後の閾値threshold’は、元の閾値thresholdを用いて、以下の式(11)で表される。
【0099】
【数12】
【0100】
ただし、式(11)において、緩和値Bは一定値(たとえば、「10」)である。
緩和後の閾値threshold’は、2次元割当解算出部122Dにおいて、2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かを判定する際に用いられる。
【0101】
次に、図10のフローチャートを参照しながら、この発明の実施の形態4による多次元相関決定手段120Dの動作について説明する。ここでは、前述の実施の形態1、3(図2、図8)との変更点を中心に説明する。
図10において、ステップST1〜ST6、ST8〜ST11は、前述(図2、図8)と同様の処理であり、ステップST6とステップST9との間に、ステップST73が挿入されている。
【0102】
図10内のステップST6において、航跡分離状況判定手段130D内の航跡分離状況判定部133Dは、航跡が分離しているか否かの判定結果(分離の有無を示す)として航跡分離情報を出力する。
【0103】
収束判定閾値修正部125は、航跡分離情報が「航跡分離あり」を示す場合には、収束閾値(収束値)として、デフォルト設定閾値の定数(緩和値B)倍した修正値を設定する(ステップST73)。
以下、2次元割当解算出部122Dは、修正された収束閾値を用いて、2次元割当解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定を行う(ステップST9)。
上記以外の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0104】
以上のように、この発明の実施の形態4(図9、図10)によれば、多次元相関決定手段120Dは、航跡分離状況判定手段130Dにより航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を「0」に設定し、航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに「正数値」を付加し、航跡候補行列およびコスト配列からLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出する。
【0105】
このように、2次元割当解がK次元の許容解の一部であるか否かの判定における収束閾値を緩和して、多次元相関決定の2次元割当解の収束回数を少なくすることにより、多次元相関決定の2次元割当解の演算負荷を軽減することができる。
【0106】
なお、収束判定閾値修正部125を用いた多次元相関決定手段の構成は、前述の実施の形態2(図5)の航跡分離状況判定手段130Bに対しても適用することができ、同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1における航跡候補の組み合わせ行列の例を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1における各最小コスト算出諸元設定値での抽出結果の例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2による動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態3に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による動作を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態4に係る目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態4による動作を示すフローチャートである。
【図11】従来の目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来の目標追尾装置による動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
100A、100B、100C、100D 目標追尾装置、110A 航跡候補コスト行列生成手段、120、120C、120D 多次元相関決定手段、121、121C、121D 多次元割当問題初期値設定部、122、122D 2次元割当解算出部、123 多次元割当解算出部、124 多次元割当問題初期値修正部、125 収束判定閾値修正部、130、130B 航跡分離状況判定手段、131 最小コスト航跡抽出部、132 最小コスト算出諸元設定部、133、133C、133D 航跡分離状況判定部、134 航跡コスト分散算出部、200 センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサからの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段と、
航跡分離状況判定手段と、
多次元相関決定手段と、
を備えた目標追尾装置であって、
前記航跡候補コスト行列生成手段は、
現在までの最新Nフレームの観測値の観測番号と現在からN+1フレーム前に生成された航跡の航跡番号との組み合わせを作成して、前記観測番号と前記航跡番号との複数の組み合わせの各々を航跡候補と見なす航跡候補行列と、前記航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列と、を生成し、
前記航跡分離状況判定手段は、
前記航跡候補の各々で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、前記最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と前記最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、を対比することにより航跡の分離状況を判定して、前記航跡が分離していると判定された場合には、前記航跡候補コスト行列生成手段に対し、最新M(≦N)フレームの観測値を用いて、前記航跡候補行列と前記航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示し、
前記多次元相関決定手段は、
前記航跡候補行列と前記コスト配列とからLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
前記航跡分離状況判定手段は、利用する観測フレームを縮小したときに前記航跡候補行列に残らない最新の観測フレームにおける各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と前記最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、前記最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新の観測フレームにおける各観測番号との組み合わせと、を対比することにより各航跡の分離状況を判定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項3】
前記航跡分離状況判定手段は、前記航跡候補のコストの平均値からコストの標準偏差以下となるコストを有する航跡候補において、同一航跡番号および観測番号を有する航跡数から航跡の分離状況を判定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、前記航跡候補の観測フレーム数を縮小してコストを再計算することを禁止して、K次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、前記2次元割当問題の解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、前記2次元割当問題の解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出する多次元相関決定手段を、備えたことを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を0に設定し、前記航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに正数値を付加し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項8】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を0に設定し、前記航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに正数値を付加し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項9】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を0に設定し、前記航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに正数値を付加し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【請求項1】
センサからの観測値を入力情報とする航跡候補コスト行列生成手段と、
航跡分離状況判定手段と、
多次元相関決定手段と、
を備えた目標追尾装置であって、
前記航跡候補コスト行列生成手段は、
現在までの最新Nフレームの観測値の観測番号と現在からN+1フレーム前に生成された航跡の航跡番号との組み合わせを作成して、前記観測番号と前記航跡番号との複数の組み合わせの各々を航跡候補と見なす航跡候補行列と、前記航跡候補の各々に対応するコストからなるコスト配列と、を生成し、
前記航跡分離状況判定手段は、
前記航跡候補の各々で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、前記最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と前記最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、を対比することにより航跡の分離状況を判定して、前記航跡が分離していると判定された場合には、前記航跡候補コスト行列生成手段に対し、最新M(≦N)フレームの観測値を用いて、前記航跡候補行列と前記航跡候補の各々とに対応するコストからなるコスト配列を再生成するように指示し、
前記多次元相関決定手段は、
前記航跡候補行列と前記コスト配列とからLagrange緩和法を用いて、N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
前記航跡分離状況判定手段は、利用する観測フレームを縮小したときに前記航跡候補行列に残らない最新の観測フレームにおける各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と前記最新観測フレームの観測番号との組み合わせと、前記最新観測フレームの各観測番号で最小コストを有する航跡候補の航跡番号と最新の観測フレームにおける各観測番号との組み合わせと、を対比することにより各航跡の分離状況を判定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項3】
前記航跡分離状況判定手段は、前記航跡候補のコストの平均値からコストの標準偏差以下となるコストを有する航跡候補において、同一航跡番号および観測番号を有する航跡数から航跡の分離状況を判定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、前記航跡候補の観測フレーム数を縮小してコストを再計算することを禁止して、K次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、前記2次元割当問題の解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、前記2次元割当問題の解がK次元割当問題の許容解の一部であるか否かの判定閾値を緩和し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出する多次元相関決定手段を、備えたことを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を0に設定し、前記航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに正数値を付加し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項8】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を0に設定し、前記航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに正数値を付加し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項9】
前記多次元相関決定手段は、前記航跡分離状況判定手段により前記航跡が分離していると判定された場合には、航跡分離状況判定で抽出された航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値を0に設定し、前記航跡分離状況判定で抽出されなかった航跡候補の2次元割当問題導出時コストの初期値として航跡候補コストに正数値を付加し、前記航跡候補行列および前記コスト配列から前記Lagrange緩和法を用いて、前記N+1次元割当問題を2次元割当問題の繰り返しとして解くことにより、前記最適航跡組み合わせを抽出することを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−151637(P2010−151637A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330432(P2008−330432)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]