説明

目標追尾装置

【課題】目標の統合航跡の誤差の早期収束と、目標の着地予測位置および着地予測範囲を算出する着地予測位置誤差共分散行列の早期収束とを実現した目標追尾装置を得る。
【解決手段】目標Tの2Dセンサ検出結果を出力する検知器10と、目標Tの3Dセンサ検出結果を出力する信号処理器50と、2Dセンサ検出結果から輝度ヒストリを解析する輝度ヒストリ解析処理20と、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30と、モデル信頼度制御処理40と、各運動モデルの混合処理、予測処理および平滑処理70〜93と、2Dおよび3Dセンサ検出結果と各運動モデルの予測処理結果とから事後信頼度を算出するモデル信頼度算出処理100と、各運動モデルの統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を算出する統合処理110と、目標Tの着地を予測する着地予測処理120とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標追尾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1台以上の3Dセンサ(たとえば、レーダのように、距離、仰角、方位角を検出結果として観測するセンサ)の検出結果に基づき、IMM(Interacting Multiple Models)フィルタのような多重運動モデルフィルタを用いて目標を追尾する技術は、よく知られている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
図9は一般的な目標Tの運動フェーズ(推力加速フェーズ、慣性フェーズ、空気抵抗フェーズ)を示す説明図である。
上記非特許文献1に記載の従来技術においては、図9に示した3つの運動フェーズを持つ目標(打上げロケットのような飛翔体)の追尾を行うために、上記3つの運動フェーズに基づく3つの運動モデル(以下、単に「運動モデル」という)ごとの信頼度を用いて、運動モデルごとの航跡を重み付けすることにより、統合航跡を生成する。
【0004】
ここで、推力加速フェーズにおいては、目標(飛翔体)の推進薬燃焼によって発生する推力と、空気抵抗力および重力とが働き、特に、推進力が支配的となることが知られている。また、慣性フェーズにおいては、飛翔体の推進薬を使い切るか、または推進薬を格納するブースタを切り離すことから、重力が支配的になることが知られている。
ここで、目標高度が高高度になるにつれて、空気密度が小さくなるので、空気抵抗力が働くものの小さくなるので、空気抵抗力は重力に比べて無視できることが知られている。
【0005】
また、空気抵抗フェーズにおいては、目標Tが地球の大気圏内に再突入するなど、目標Tが地面方向に飛翔してくることから、徐々に空気抵抗力が増大するので、上記高高度では重力が支配的になるものの、目標Tが低高度になるにつれて、空気抵抗力が重力よりも支配的になることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sviestins,E.,「Multi−Radar Tracking for Theater Missile Defense,」Signal and Data Processing of Small Targets,Proc.SPIE,Vol.2561,July 1995,pp.384−394.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、3Dセンサの検出結果のみを使用して算出される各運動モデルに基づく航跡および統合航跡が、飛翔体(目標)の実際の運動と多重運動モデル追尾処理で仮定している運動モデルとの差異に起因した誤差と、3Dセンサの観測誤差とによってばらつくので、モデル信頼度もばらつくという課題があった。
【0008】
一方、各運動モデルに基づく航跡および統合航跡のばらつきが小さくなれば、モデル信頼度も小さくなるものの、特に、実際の目標が推力加速フェーズから慣性フェーズに移行した直後の時間帯、または、慣性フェーズから推力加速フェーズに移行した直後の時間帯においては、モデル信頼度の算出結果がばらつくので、統合航跡を用いた目標の着地予測の結果もばらつく可能性があるという課題があった。
【0009】
つまり、実際の目標が推力加速フェーズから慣性フェーズに移行した直後は、実際の目標がすでに慣性フェーズに移行しているのにも関わらず、推力加速フェーズのモデル信頼度が慣性フェーズの信頼度よりも高いことから、統合航跡算出用のモデル信頼度による重みづけによって、推力加速モデルに基づく航跡の統合航跡に占める割合が高いので、統合航跡がばらつくことになる。
さらに、統合航跡のばらつき(つまり、航跡の誤差)は、時間経過につれて収束するものの、航跡の誤差の収束は遅いという課題があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、目標(飛翔体)の統合航跡の誤差の早期収束と、目標の着地予測位置および着地予測範囲を算出する着地予測位置誤差共分散行列の早期収束とを実現した目標追尾装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る目標追尾装置は、3つの運動フェーズとして、推力加速フェーズ、慣性フェーズおよび空気抵抗フェーズを持つ目標を追尾するために、3つの運動フェーズに対応した3つの運動モデルとして、推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデルを用いた目標追尾装置であって、
目標を観測する2Dセンサを有し、2Dセンサによる2Dセンサ観測値、2Dセンサ観測誤差共分散行列および輝度を含む2Dセンサ検出結果を出力する検知器と、
2Dセンサ検出結果から、時刻対輝度の輝度ヒストリを作成する輝度ヒストリ解析処理と、
輝度ヒストリが事前に決めた輝度しきい値との間で所定の関係を満たすか否かを判定し、輝度ヒストリに対応する仮推力加速判定フラグ、輝度ヒストリに対応する推力加速判定フラグ、ならびに、輝度ヒストリに対応する時刻および輝度ヒストリを出力する、輝度ヒストリによる推力加速判定処理と、
推力加速判定フラグが「0」の場合には、目標の推力加速が終了したものと判定して、推力加速モデルへの推移確率を「0」とし、推力加速判定フラグが「1」の場合には、目標が推力加速中と判定して、事前に設定した推移確率を使用するモデル信頼度制御処理と、
目標を観測する3Dセンサを有し、3Dセンサによる3Dセンサ観測値および3Dセンサ観測誤差共分散行列を含む3Dセンサ検出結果を出力する信号処理器と、
推力加速モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、推力加速モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、推力加速モデルから空気抵抗モデルまたは慣性モデルへの逆推移確率と、推力加速モデルの事前信頼度とを算出する、推力加速モデル混合処理と、
推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の推力加速モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、推力加速モデル予測処理と、
カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を算出する、推力加速モデル平滑処理と、
慣性モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、慣性モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、慣性モデルから空気抵抗モデルまたは推力加速モデルへの逆推移確率と、慣性モデルの事前信頼度とを算出する、慣性モデル混合処理と、
慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の慣性モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、慣性モデル予測処理と、
カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を算出する、慣性モデル平滑処理と、
空気抵抗モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、空気抵抗モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、空気抵抗モデルから推力加速モデルまたは慣性モデルへの逆推移確率と、空気抵抗モデルの事前信頼度とを算出する、空気抵抗モデル混合処理と、
空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の空気抵抗モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、空気抵抗モデル予測処理と、
カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を算出する、空気抵抗モデル平滑処理と、
3つの運動モデルごとの予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列、ならびに、2Dセンサ観測誤差共分散行列または3Dセンサ観測誤差共分散行列を用い、3つの運動モデルごとの尤度を算出するとともに、3つの運動モデルごとの尤度および事前信頼度を用いて、3つの運動モデルごとの事後信頼度を算出する、モデル信頼度算出処理と、
3つの運動モデルごとの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、3つの運動モデルごとの事後信頼度により重み付け統合して、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を算出する、統合処理と、
統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を、事前に決めた目標の飛翔モデルに合わせて、着地予測点の高度が0になるまで、事前に決めた所定の外挿間隔で外挿することにより、統合平滑ベクトルの位置から着地予測点までの、所定の外挿間隔ごとの統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列の各外挿結果を出力する、着地予測処理と、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、目標の統合航跡の誤差の早期収束と、目標の着地予測位置および着地予測範囲を算出する着地予測位置誤差共分散行列の早期収束とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1における輝度ヒストリの時間変化を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る検出データ数による推力加速判定処理の動作を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る検出データ数による推力加速判定処理の動作を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る検出データ数による推力加速判定処理の動作を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るモデル信頼度制御処理の動作を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態6に係る目標追尾装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】一般的な目標の運動フェーズを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の好適な実施の形態について説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る目標追尾装置の全体構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、目標追尾装置は、3つの運動フェーズ(推力加速フェーズ、慣性フェーズおよび空気抵抗フェーズ)を持つ目標Tを追尾するために、各運動フェーズに対応した運動モデル(推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデル)を用いた追尾フィルタとして、多重運動モデルフィルタ60を備えている。
【0016】
また、多重運動モデルフィルタ60と関連した構成として、検知器10と、輝度ヒストリ解析処理20と、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30と、モデル信頼度制御処理40と、信号処理器50と、着地予測処理120とを備えている。
【0017】
検知器10は、目標Tを観測する2Dセンサ10aを有し、2Dセンサ10aによる2Dセンサ観測値、2Dセンサ観測誤差共分散行列および輝度を含む2Dセンサ検出結果を出力する。
信号処理器50は、目標Tを観測する3Dセンサ50aを有し、3Dセンサ50aによる3Dセンサ観測値および3Dセンサ観測誤差共分散行列を含む3Dセンサ検出結果を出力する。
【0018】
多重運動モデルフィルタ60は、入力スイッチ65と、遅延部70、80、90と、直列結合された推力加速モデル混合処理71、推力加速モデル予測処理72および推力加速モデル平滑処理73と、直列結合された慣性モデル混合処理81、慣性モデル予測処理82および慣性モデル平滑処理83と、直列結合された空気抵抗モデル混合処理91、空気抵抗モデル予測処理92および空気抵抗モデル平滑処理93と、モデル信頼度算出処理100と、統合処理110とを備えている。
【0019】
入力スイッチ65は、検知器10からの2Dセンサ検出結果、または信号処理器50からの3Dセンサ検出結果を取り込み、モデル信頼度算出処理100、推力加速モデル平滑処理73、慣性モデル平滑処理83および空気抵抗モデル平滑処理93に入力する。
遅延部70、80、90は、各運動モデルの平滑処理結果を遅延して各運動モデルの混合処理71、81および91に帰還入力する。
【0020】
統合処理110は、モデル信頼度算出処理100、推力加速モデル平滑処理73、慣性モデル平滑処理83および空気抵抗モデル平滑処理93の出力情報を統合して、統合結果を着地予測処理120に入力する。
【0021】
輝度ヒストリ解析処理20、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30、およびモデル信頼度制御処理40は、検知器10の出力側に直列結合されている。
モデル信頼度制御処理40の出力情報は、モデル信頼度算出処理100、推力加速モデル混合処理71、慣性モデル混合処理81および空気抵抗モデル混合処理91に入力される。
【0022】
次に、図2の説明図を参照しながら、図1に示したこの発明の実施の形態1による動作について説明する。
図2は輝度ヒストリ解析処理20の動作に関連しており、2Dセンサ検出結果に基づく輝度ヒストリの時間変化例を示している。
【0023】
図1において、検知器10は、レーダに設置されるか、またはIR(Infra Red)センサなどの2次元の角度情報が得られる2Dセンサ10aに設置されていることを想定する。なお、検知器10は、EW(Electric Warfare)などの1次元の角度情報が得られる1Dセンサに設置されていてもよい。
【0024】
以下では、IRセンサなどの2Dセンサ10aに絞って説明するが、1Dセンサを使用しても、同様に実現することができる。
2Dセンサ10aがレーダの場合には、パッシブに角度を観測するか、またはアクティブに距離および角度を観測するが、距離の検出精度が低くなる。
したがって、距離が有効な観測情報として使えずに角度のみを使用する場合や、距離が(妨害波により)有効な観測情報として使えずに角度のみを使用する場合が考えられる。
【0025】
まず、検知器10は、目標Tを2Dセンサ10aにより観測し、2Dセンサ10aから得られた2Dセンサ検出結果を出力する。
検知器10から出力された2Dセンサ検出結果は、直ちに、輝度ヒストリ20に入力されるとともに、入力スイッチ65を介して、多重運動モデルフィルタ60内のモデル信頼度算出処理100に入力される。
【0026】
なお、検知器10からの2Dセンサ検出結果は、2Dセンサ観測値と2Dセンサ観測誤差共分散行列、輝度などの情報を含む。
また、図1では、代表的に1台の検知器10のみを示しているが、複数台の検知器が設置されてもよい。
【0027】
続いて、輝度ヒストリ解析処理20は、検知器10の検出結果である2Dセンサ検出結果から、たとえば図2のように、時刻対輝度の輝度ヒストリを作成する。
図2において、輝度は、目標Tが燃焼して(ブースト中で)温度が高ければ大きくなり、燃焼(ブースト)が終了して温度が低ければ小さくなる。
なお、温度の高低のみではなく、目標Tの特徴を反映する指標(反射係数など)であれば、輝度情報に相当するものとして使用することができる。
【0028】
図2の輝度ヒストリは、時間経過とともに、目標Tが燃焼中の状態(輝度がある程度の大きさで一定で得られる)から、目標Tの温度が低くなっていく(輝度が小さくなっていく)状況を表している。
【0029】
なお、輝度ヒストリは、ばらつくことも考えられるので、時間対輝度をプロットした値を平滑化したものを、輝度ヒストリとして出力することも考えられる。
輝度ヒストリ解析処理20は、輝度ヒストリの解析結果を、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30に送信する。
【0030】
輝度ヒストリによる推力加速判定処理30は、輝度ヒストリ解析処理20から得られた輝度ヒストリが、事前に決めた下限輝度および上限輝度に対応した各輝度しきい値Bth1、Bth2(Bth2≧Bth1)に対して所定の関係を満たすか否かを判定する。
【0031】
すなわち、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30は、輝度ヒストリ(図2)における或る時刻の輝度Bと、各輝度しきい値Bth1、Bth2との間の以下の条件(1)〜(3)に応じて、仮推力加速判定フラグFpを「0」、「1」、「2」に設定する。
【0032】
(1)Bth1≦B(図2内のブースト終了)の場合には、目標Tの推力加速が終了したものと判定し、仮推力加速判定フラグFpを「0」に設定する。
(2)Bth2≧B(図2内のブースト中)の場合には、目標Tが推力加速中であると判定し、仮推力加速判定フラグFpを「1」に設定する。
(3)Bth2>B>Bth1(図2内のブースト判定保留)の場合には、推力加速判定を保留状態とし、仮推力加速判定フラグFpを「2」に設定する。
【0033】
なお、仮推力加速判定フラグFpの数字の定義としては、システムで共通な数字を使用すればよく、上記数字に限定されることはない。
【0034】
続いて、輝度ヒストリによる推力加速終了判定処理30は、過去から現在までの時間において、M1サンプリング中のN1サンプリング(M1≧N1)の仮推力加速判定フラグFpが「0」を示す場合(すなわち、推力加速の終了判定が、M1サンプリング中にN1サンプリングだけ存在する場合)には、目標Tの推力加速が終了したものと判定し、最終的な推力加速判定フラグ(ブースト判定フラグ)Frを「0」に設定する。
【0035】
同様に、輝度ヒストリによる推力加速終了判定処理30は、M1サンプリング中のN1サンプリングの仮推力加速判定フラグFpが「1」を示す場合には、目標Tが推力加速中であると判定し、推力加速判定フラグFrを「1」に設定する。
最後に、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30は、輝度ヒストリに対応する仮推力加速判定フラグFp、輝度ヒストリに対応する推力加速判定フラグFr、輝度ヒストリに対応する時刻および輝度ヒストリを、モデル信頼度制御処理40に入力する。
モデル信頼度制御処理40の詳細内容については、後述する。
【0036】
一方、信号処理器50は、目標Tを3Dセンサ50aにより観測し、3Dセンサ50aから得られた3Dセンサ検出結果を出力する。
信号処理器50から出力された3Dセンサ検出結果は、入力スイッチ65を介して多重運動モデルフィルタ60内のモデル信頼度算出処理100に入力される。
なお、3Dセンサ検出結果は、3Dセンサ観測値および3Dセンサ観測誤差共分散行列の情報を含む。
【0037】
多重運動モデルフィルタ60内において、遅延部70は、推力加速モデルに関連しており、推力加速モデル平滑処理73から出力される、推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を1サンプリング分だけ遅延させて、現時刻の推力加速に基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を出力する。
【0038】
同様に、遅延部80は、慣性モデルに関連しており、慣性モデル平滑処理83から出力される、慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を1サンプリング分だけ遅延させて、現時刻の慣性に基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を出力する。
【0039】
また、遅延部90は、空気抵抗モデルに関連しており、空気抵抗モデル平滑処理93から出力される、空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を1サンプリング分だけ遅延させて、現時刻の空気抵抗に基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を出力する。
【0040】
各遅延部70、80、90の出力情報が入力される推力加速モデル混合処理71、慣性モデル混合処理81および空気抵抗モデル混合処理91の詳細内容については後述する。
【0041】
推力加速モデル予測処理72は、カルマンフィルタの予測処理により、前時刻の推力加速モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列(または、前時刻の推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列)を用いて、現時刻の推力加速モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する。
【0042】
同様に、慣性モデル予測処理82は、カルマンフィルタの予測処理により、前時刻の慣性モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列(または、前時刻の慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列)を用いて、現時刻の慣性モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する。
【0043】
また、空気抵抗モデル予測処理92は、カルマンフィルタの予測処理により、前時刻の空気抵抗モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列(または、前時刻の空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列)を用いて、現時刻の空気抵抗モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する。
【0044】
推力加速モデル平滑処理73は、カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の推力加速モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列と、現時刻の3Dセンサ検出結果、または現時刻の2Dセンサ検出結果から、推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を求める。
【0045】
同様に、慣性モデル平滑処理83は、カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の慣性モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列と、現時刻の3Dセンサ検出結果、または現時刻の2Dセンサ検出結果から、慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を求める。
【0046】
また、空気抵抗モデル平滑処理93は、カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の空気抵抗モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列と、現時刻の3Dセンサ検出結果、または現時刻の2Dセンサ検出結果から、空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を求める。
【0047】
モデル信頼度算出処理100は、運動モデルごとの予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列と、2Dセンサ10aまたは3Dセンサ50aの観測誤差共分散行列とを用いて、運動モデルごとの尤度を算出する。
また、モデル信頼度算出処理100は、運動モデルごとの尤度および事前信頼度を用いて、運動モデルごとの事後信頼度を算出する。なお、「運動モデルごと」とは、推力モデル、慣性モデル、空気抵抗モデルごと、という意味である。
【0048】
ここで、時刻kの運動モデルnの事後信頼度を、
【数1】

と定義すると、時刻kの運動モデルnの事後信頼度は、以下の式(1)のように算出される。
【数2】

ただし、式(1)において、
【数3】

は、時刻kの運動モデルnの尤度であり、
【数4】

は、時刻kの運動モデルnの事前信頼度である。
また、Nは、運動モデル数を表し、nは、推力加速モデル、慣性モデル、空気抵抗モデルのいずれかの運動モデルを表す。
【0049】
次に、運動モデルごとの推力加速モデル混合処理71、慣性モデル混合処理81、空気抵抗モデル混合処理91について、一般化して説明する。
まず、時刻kの運動モデルmの混合平滑ベクトルを、
【数5】

と定義すると、時刻kの運動モデルmの混合平滑ベクトルは、以下の式(2)のように算出される。
【0050】
【数6】

【0051】
ただし、式(2)において、
【数7】

は時刻kの運動モデルnの平滑ベクトルであり、
【数8】

は時刻kの運動モデルmから運動モデルnへの逆推移確率である。また、Nは運動モデル数を表す。
次に、時刻kの運動モデルmの混合平滑ベクトルを、
【数9】

と定義すると、時刻kの運動モデルmの混合平滑ベクトルは、以下の式(3)のように算出される。
【0052】
【数10】

ただし、式(3)において、
【数11】

は、時刻kの運動モデルnの平滑誤差共分散行列である。
また、Tは行列の転置を表し、Nは運動モデル数を表す。
ここで、運動モデルmから運動モデルnへの逆推移確率を、
【数12】

と定義すると、運動モデルmから運動モデルnへの逆推移確率は、以下の式(4)のように算出される。
【0053】
【数13】

【0054】
ただし、式(4)において、
【数14】

は運動モデルmから運動モデルnへの推移確率である。
ここで、時刻k+1の運動モデルnの事前信頼度を、
【数15】

と定義すると、時刻k+1の運動モデルnの事前信頼度は、以下の式(5)のように算出される。
【0055】
【数16】

【0056】
推力加速モデル混合処理71は、式(2)〜式(5)から、推力加速モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列と、推力加速モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列とを用いて、推力加速モデルから空気抵抗モデルまたは慣性モデルへの逆推移確率と、推力加速モデルの事前信頼度とを算出する。
【0057】
同様に、慣性モデル混合処理81は、式(2)〜式(5)から、慣性モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列と、慣性モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列とを用いて、慣性モデルから空気抵抗モデルまたは推力加速モデルへの逆推移確率と、慣性モデルの事前信頼度とを算出する。
【0058】
また、空気抵抗モデル混合処理91は、式(2)〜式(5)から、空気抵抗モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列と、空気抵抗モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列とを用いて、空気抵抗モデルから推力加速モデルまたは慣性モデルへの逆推移確率と、空気抵抗モデルの事前信頼度とを算出する。
【0059】
統合処理110は、運動モデルごとの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、運動モデルごとの事後信頼度により重み付け統合して、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を算出する。
【0060】
着地予測処理120は、統合処理110で算出された統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を、事前に決めた目標Tの飛翔モデルに合わせ、着地予測点の高度が「0」になるまで、事前に決めた所定の外挿間隔で外挿し、統合平滑ベクトルの位置から着地予測点までの、外挿間隔ごとの統合平滑ベクトルの外挿結果と、統合平滑誤差共分散行列の外挿結果と、を出力する。
【0061】
次に、モデル信頼度制御処理40について説明する。
モデル信頼度制御処理40は、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30から入力された推力加速判定フラグFrが「0」の場合には、目標Tの推力加速が終了したものと見なして、推力加速モデルへの推移する推移確率を「0」に設定し、推力加速モデルの識別子を「1」、慣性モデルの識別子を「2」、空気抵抗モデルの識別子を「3」とした場合の推移確率の組合せを行列形式で表し、
【数17】

のように定義する。
このとき、推移確率の組合せは、以下の式(6)で表される。
【0062】
【数18】

【0063】
ただし、式(6)において、各行の要素の総和を「1」とするように、推移確率
【数19】

が設定される。ここで、n、mは、それぞれ「1」以上かつ「3」以下の値である。
たとえば、推力加速中と判定されて、推力加速判定フラグFrが「1」の場合には、
【数20】

のすべての行が、事前に決めた所定の確率で埋まる。
また、目標Tの推力加速が終了したと判定されて、推力加速判定フラグFrが「0」の場合には、以下の式(7)のように、推力加速モデルに関わる成分を「0」とする。
【0064】
【数21】

【0065】
ただし、式(7)において、
【数22】

の各行の要素の総和を「1」とするように、推移確率
【数23】

を設定する。
このように推移確率を設定することにより、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度の各重み付けを高く設定することができる。
【0066】
また、式(7)の
【数24】

は、慣性モデルおよび空気抵抗モデルが残るという推移確率の組合せであるが、目標Tの推力加速が終了したと判定されて、推力加速判定フラグFrが「0」の場合には、以下の式(8)のように、慣性モデルのみ残すように設定してもよい。
【0067】
【数25】

【0068】
式(8)のように推移確率を設定することにより、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度の各重み付けをさらに高く設定することができる。
【0069】
目標Tの推力加速が終了したと判定されて、推力加速判定フラグFrが「0」の場合に、式(7)のように設定するか、または、式(8)のように設定とするかは、事前にユーザが決めておくことが可能である。
【0070】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1)に係る目標追尾装置は、3つの運動フェーズ(推力加速フェーズ、慣性フェーズおよび空気抵抗フェーズ)を持つ目標Tを追尾するために、各運動フェーズに対応した3つの運動モデル(推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデル)を用いた目標追尾装置であって、検知器10と、輝度ヒストリ解析処理20と、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30と、モデル信頼度制御処理40と、信号処理器50と、遅延部70、80、90と、推力加速モデル混合処理71と、推力加速モデル予測処理72と、推力加速モデル平滑処理73と、慣性モデル混合処理81と、慣性モデル予測処理82と、慣性モデル平滑処理83と、空気抵抗モデル混合処理91と、空気抵抗モデル予測処理92と、空気抵抗モデル平滑処理93と、モデル信頼度算出処理100と、統合処理110と、着地予測処理120と、を備えている。
【0071】
検知器10は、目標Tを観測する2Dセンサ10aを有し、2Dセンサ10aによる2Dセンサ観測値、2Dセンサ観測誤差共分散行列および輝度を含む2Dセンサ検出結果を出力する。
信号処理器50は、目標Tを観測する3Dセンサ50aを有し、3Dセンサ50aによる3Dセンサ観測値および3Dセンサ観測誤差共分散行列を含む3Dセンサ検出結果を出力する。
【0072】
輝度ヒストリ解析処理20は、2Dセンサ検出結果から、時刻対輝度の輝度ヒストリを作成し、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30は、輝度ヒストリが事前に決めた輝度しきい値Bth1、Bth2との間で所定の関係を満たすか否かを判定し、輝度ヒストリに対応する仮推力加速判定フラグFp、輝度ヒストリに対応する推力加速判定フラグFr、ならびに、輝度ヒストリに対応する時刻および輝度ヒストリを出力する。
【0073】
モデル信頼度制御処理40は、推力加速判定フラグFrが「0」の場合には、目標Tの推力加速が終了したものと判定して、推力加速モデルへの推移確率を「0」とし、推力加速判定フラグFrが「1」の場合には、目標Tが推力加速中と判定して、事前に設定した推移確率を使用する。
【0074】
推力加速モデル混合処理71は、推力加速モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、推力加速モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、推力加速モデルから空気抵抗モデルまたは慣性モデルへの逆推移確率と、推力加速モデルの事前信頼度とを算出する。
【0075】
遅延部70は、推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる。
また、遅延部80は、慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させ、遅延部90は、空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる。
【0076】
推力加速モデル予測処理72は、カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の推力加速モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する。
推力加速モデル平滑処理73は、カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、推力加速モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を算出する。
【0077】
慣性モデル混合処理81は、慣性モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、慣性モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、慣性モデルから空気抵抗モデルまたは推力加速モデルへの逆推移確率と、慣性モデルの事前信頼度とを算出する。
【0078】
慣性モデル予測処理82は、カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の慣性モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出し、慣性モデル平滑処理83は、カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、慣性モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を算出する。
【0079】
空気抵抗モデル混合処理91は、空気抵抗モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、空気抵抗モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、空気抵抗モデルから推力加速モデルまたは慣性モデルへの逆推移確率と、空気抵抗モデルの事前信頼度とを算出する。
【0080】
空気抵抗モデル予測処理92は、カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の空気抵抗モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出し、空気抵抗モデル平滑処理93は、カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、空気抵抗モデルに基づく平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を算出する。
【0081】
モデル信頼度算出処理100は、運動モデルごとの予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列、ならびに、2Dセンサ観測誤差共分散行列または3Dセンサ観測誤差共分散行列を用い、3つの運動モデルごとの尤度を算出するとともに、3つの運動モデルごとの尤度および事前信頼度を用いて、3つの運動モデルごとの事後信頼度を算出する。
【0082】
統合処理110は、運動モデルごとの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、運動モデルごとの事後信頼度により重み付け統合して、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を算出する。
【0083】
着地予測処理120は、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を、事前に決めた目標Tの飛翔モデルに合わせて、着地予測点の高度が0になるまで、事前に決めた所定の外挿間隔で外挿することにより、統合平滑ベクトルの位置から着地予測点までの、所定の外挿間隔ごとの統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列の各外挿結果を出力する。
【0084】
これにより、この発明の実施の形態1によれば、2Dセンサの輝度ヒストリによる推力加速判定を行い、目標Tの推力加速が終了した場合には、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなるように推移確率を設定することにより、統合航跡のばらつきを回避して、統合航跡の判定精度を向上させることができる。
すなわち、目標Tの統合航跡の誤差の早期収束と、目標Tの着地予測位置および着地予測範囲を算出する着地予測位置誤差共分散行列の早期収束とを実現することができる。
【0085】
また、従来構成と比べて、3Dセンサ50aのみでなく、一般的にレーダよりも高角度分解能であるIRセンサを2Dセンサ10aとして適用した場合に、統合航跡の判定精度を向上させるという効果がある。
さらに、上記のように、輝度ヒストリによる推力加速判定による効果の相乗効果により、統合航跡の判定精度をさらに向上させることができる。この結果、着地予測処理120の測定精度を向上させることができる。
【0086】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、輝度ヒストリ解析処理20および輝度ヒストリによる推力加速判定処理30を用いて、輝度ヒストリに基づく判定処理を実行したが、図3のように、検出データ数による推力加速判定処理130を用いて、検出データ数に基づく判定処理を実行してもよい。
【0087】
図3はこの発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の全体構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
図3においては、図1内の輝度ヒストリ解析処理20および輝度ヒストリによる推力加速判定処理30に代えて、検出データ数による推力加速判定処理130を設けた点のみが前述と異なる。
【0088】
検出データ数による推力加速判定処理130は、検知器10からの2Dセンサ検出結果に含まれる検出データ数が、事前に決めた検出しきい値Dth1、Dth2(Dth2≧Dth1)との間で所定の関係を満たすか否かにより、推力加速状態を判定する。
【0089】
すなわち、検出データ数による推力加速判定処理130は、検出データ数における或る時刻のデータ数Dと、各検出しきい値Dth1、Dth2との間の以下の条件(A)〜(C)に応じて、仮推力加速判定フラグFpを「0」、「1」、「2」に設定する。
【0090】
(A)Dth1≦Dの場合には、目標Tの推力加速が終了したものと判定して、仮推力加速判定フラグFpを「0」に設定する。
(B)Dth2≧Dの場合には、目標Tが推力加速中であると判定して、仮推力加速判定フラグFpを「1」に設定する。
(C)Dth2>D>Dth1の場合には、推力加速判定を保留状態として、仮推力加速判定フラグFpを「2」に設定する。
【0091】
続いて、検出データ数による推力加速判定処理130は、過去から現在までの時間において、M1サンプリング中のN1サンプリング(M1≧N1)の仮推力加速判定フラグFpが「0」を示す場合(すなわち、推力加速の終了判定が、M1サンプリング中にN1サンプリングだけ存在する場合)には、目標Tの推力加速が終了したものと判定して、最終的な推力加速判定フラグFrを「0」に設定する。
【0092】
同様に、M1サンプリング中のN1サンプリングの仮推力加速判定フラグFpが「1」を示す場合には、目標Tが推力加速中であると判定して、推力加速判定フラグFrを「1」に設定する。
最後に、検出データ数による推力加速判定処理130は、検出データ数Dに対応する仮推力加速判定フラグFpおよび推力加速判定フラグFrと、検出データ数Dに対応する時刻とを、モデル信頼度制御処理40に入力する。
【0093】
以上のように、この発明の実施の形態2(図3)に係る目標追尾装置は、3つの運動フェーズ(推力加速フェーズ、慣性フェーズおよび空気抵抗フェーズ)を持つ目標Tを追尾するために、各運動フェーズに対応した3つの運動モデル(推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデル)を用いた目標追尾装置であって、検知器10と、検出データ数による推力加速判定処理130と、モデル信頼度制御処理40と、信号処理器50と、遅延部70、80、90と、推力加速モデル混合処理71と、推力加速モデル予測処理72と、推力加速モデル平滑処理73と、慣性モデル混合処理81と、慣性モデル予測処理82と、慣性モデル平滑処理83と、空気抵抗モデル混合処理91と、空気抵抗モデル予測処理92と、空気抵抗モデル平滑処理93と、モデル信頼度算出処理100と、統合処理110と、着地予測処理120と、を備えている。
【0094】
検出データ数による推力加速判定処理130は、2Dセンサ検出結果に含まれる2Dセンサ10aの検出データ数Dを用いて、2Dセンサ検出結果に含まれる検出データ数Dが、事前に決めた検出しきい値Dth1、Dth2との間で所定の関係を満たすか否かにより目標Tの推力加速を判定し、推力加速が終了したと判定された場合に、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなるように推移確率を設定するとともに、検出データ数Dに対応する仮推力加速判定フラグFp、推力加速判定フラグFrおよび時刻を出力する。
【0095】
モデル信頼度制御処理40は、推力加速判定フラグFrが「0」の場合には、目標Tの推力加速が終了したものと判定して、推力加速モデルへの推移確率を「0」とし、推力加速判定フラグFrが「1」の場合には、目標Tが推力加速中であると判定して、事前に設定した推移確率を使用する。
【0096】
このように、2Dセンサ10aの検出データ数Dによる推力加速判定を行い、目標Tの推力加速が終了した場合には、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなるように推移確率を設定することにより、統合航跡の判定精度を向上させることができる。
【0097】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2では、検知器10におけるS/N環境の違いについて考慮しなかったが、図4〜図6のように、検知器10におけるS/N環境の違いに応じて、検出データ数による推力加速判定処理130の適用状況を変更してもよい。
【0098】
以下、図4〜図6を参照しながら、この発明の実施の形態3に係る検出データ数による推力加速判定処理130について説明する。なお、この発明の実施の形態3の全体構成は、図3に示した通りである。
図4〜図6は異なるS/N環境下での目標信号および不要信号と輝度しきい値Bthとの関係を示す説明図であり、S/N環境の違いに応じて可変設定される検知器10の輝度しきい値Bthにより、目標信号または不要信号が検出されるか否かを示している。
【0099】
図4〜図6において、検出データの輝度レベルが輝度しきい値Bthよりも上ならば、信号が検出されるものとする。
図4〜図6のS/N環境の違いは、この発明の実施の形態3に係る検出データ数による推力加速判定処理130の適用状況と関連する。
【0100】
図4は、高S/N環境(高輝度環境)での検出データと輝度しきい値Bthとの関係を示し、目標信号が高S/N(高輝度)で検出される状態を示している。
図5および図6は、低S/N環境(低輝度環境)での検出データと低減された輝度しきい値Bthとの関係を示しており、目標信号が低S/N(低輝度)で検出される。
ここでは、図4→図5→図6の順で、目標信号のS/Nが小さくなっており、図6では、図5よりも輝度しきい値Bthがさらに低減されている。
【0101】
まず、図4(高S/N環境)において、目標信号は、不要信号と比べて高S/Nで得られるので、検知器10の輝度しきい値Bthが高い値に設定されていて問題ない。
ただし、推力加速が終了直後の時間帯においては、目標の輝度低下により、目標信号のS/Nが徐々に低くなるので、不要信号のS/Nと同じ程度(または、それ以下)に低下することが想定される。
【0102】
したがって、検知器10は、たとえば図5のような低S/Nの目標信号を検出するために、図4内の輝度しきい値Bthから図5内の輝度しきい値Bthに低下させて、目標信号を検出しようとする。
【0103】
このとき、輝度しきい値Bthを低下させたことから、不要信号が輝度しきい値Bth以上になって検出される可能性があるが、この場合には、検知器10側で追尾を行い、低S/Nの目標信号を加算して、目標信号をフレーム間の加算処理により、目標信号を検出しようとする。
【0104】
しかし、輝度しきい値Bthを下げて、検知器10側で追尾を続行したとしても、たとえば、図6のように、低S/Nの目標信号が加算されない状況においては、不要信号が多く発生する場合が考えられる。
この場合は、推力加速が終了して、目標Tが低S/Nになったと判定できる。
【0105】
したがって、検出データ数による推力加速判定処理130は、検知器10において、輝度しきい値Bthを低S/N向けに下げた場合に、不要信号および目標信号が含まれると想定される検出信号がL個以上検出される状況(たとえば、図6の状況)が、Mフレーム中のうちのNフレーム(M≧N)ある場合に、ブースト終了と判定する。
【0106】
すなわち、検出データ数による推力加速判定処理130は、まず、検知器10から検出信号数および輝度しきい値Bthを取得して、事前に設定した輝度しきい値Bthに対する検出信号数がL個以上ある場合には、目標Tの推力加速が終了したものと見なして、仮推力加速判定フラグFpを「0」に設定する。
【0107】
そして、検出信号がL個以上検出される状況が、Mフレーム中にNフレームだけ存在する場合(つまり、仮推力加速判定フラグFpが、Mフレーム中Nフレームある場合)には、目標Tの推力加速が終了したと判定し、最終的な推力加速判定フラグFrを「0」に設定する。
【0108】
以下、検出データ数による推力加速判定処理130は、検出データ数Dに対応する仮推力加速判定フラグFpおよび推力加速判定フラグFrと、検出データ数Dに対応する時刻とを、モデル信頼度制御処理40に入力する。
【0109】
以上のように、この実施の形態3に係る検出データ数による推力加速判定処理130は、検知器10から得られる検出信号が低S/Nであって、検知器10の輝度しきい値Bthを下げなければ目標信号が検出されない状態においては、検出信号がL個以上の状況が、Mフレーム中にN(≦M)フレームある場合に、目標Tの推力加速が終了したものと判定するとともに、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなるように、推移確率を設定する。
【0110】
このように、検出データ数による推力加速判定処理130は、検知器10の輝度しきい値Bthを下げなければ目標信号が検出されないような、目標信号が低S/Nで得られる場合でも、検出信号がL個以上の状況が、Mフレーム中Nフレームある場合に、推力加速が終了したと判定することができ、慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなる推移確率の設定をすることにより、統合航跡の判定精度を向上させることができる。
【0111】
実施の形態4.
なお、前述の実施の形態1(図1)では特に言及しなかったが、モデル信頼度制御処理40は、目標Tの推力加速が終了したと判定された場合には、図7に示すように、推力加速モデルから3つの運動モデルのいずれかへの推移確率を、時間経過ごとに単調減少させるように設定してもよい。
【0112】
図7はこの発明の実施の形態4に係るモデル信頼度制御処理40による推移確率の設定動作を示す説明図である。なお、この発明の実施の形態4の全体構成は、図1に示した通りである。
【0113】
図7において、モデル信頼度制御処理40は、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30から、推力加速判定フラグFrが「0」、つまり、目標Tの推力加速が終了したことの判定結果が得られた場合には、推力加速モデルから推力加速モデルを含む他のモデルへの推移確率を、時間経過ごとに単調減少させていくように設定する。
なお、図7の単調減少させていく推力加速モデルに関わる推移確率のモデルは、事前に決めておく。
【0114】
ここで、推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデルの3つの運動モデルを使用する場合には、各運動モデルに関わる各推移確率の和が「1」となるように設定する。
これにより、推力加速モデルに関わる推移確率が小さくなるにつれて、慣性モデルおよび空気抵抗モデルに関わる推移確率が大きくなる。
【0115】
同様に、推力加速および慣性モデルの2つの運動モデルを使用する場合には、推力加速モデルおよび慣性モデルの推移確率の和が「1」となるように設定する。
これにより、推力加速モデルに関わる推移確率が小さくなるにつれて、慣性モデルに関わる推移確率が大きくなる。
【0116】
以上のように、この実施の形態4によるモデル信頼度制御処理40は、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30からの推力加速判定フラグFrが「0」であって、目標Tの推力加速が終了したことを示す判定結果が得られた場合には、推力加速モデルから3つの運動モデルのいずれかへの推移確率を、時間経過ごとに単調減少させるように設定する。
【0117】
すなわち、推力加速が終了したことを判定した後に、仮に推力加速モデルの推移確率を急に「0」に低減させると、追尾フィルタの過渡応答が発生して、統合航跡の判定精度が劣化する可能性があるので、推力加速モデルの推移確率を、時間経過ごとに単調減少させる。
【0118】
このように、推力加速モデルの推移確率を徐々に小さい値に設定して、推力加速モデルの影響を少なくし、一方で、空気抵抗モデルの影響や、特に慣性モデルの推移確率の影響を徐々に大きくすることにより、統合航跡の判定精度を向上させることができる。
【0119】
実施の形態5.
なお、上記実施の形態4(図7)では、モデル信頼度制御処理40は、目標Tの推力加速が終了したと判定された場合に、推力加速モデルから3つの運動モデルのいずれかへの推移確率を、時間経過ごとに単調減少させたが、推力加速モデルの事後信頼度を小さい値に設定してもよい。
なお、この発明の実施の形態5の全体構成は、図1に示した通りである。
【0120】
この発明の実施の形態5において、モデル信頼度制御処理40は、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30から得られた、輝度ヒストリに対応する推力加速判定フラグFrが「0」であって、目標Tの推力加速が終了したと判定された場合には、推力加速モデルの事後信頼度を小さい値に設定する。
【0121】
このように、2Dセンサ10aの輝度ヒストリから推力加速を判定して、推力加速が終了した場合に、推力加速モデルの事後信頼度を直接小さくすることにより、実際の目標Tの運動が推力加速モデルから慣性モデルに移行した直後の時間帯において、推力加速モデルの事後信頼度の影響を小さくすることができ、統合航跡の判定精度を向上させることができる。
【0122】
実施の形態6.
なお、上記実施の形態1(図1)では特に言及しなかったが、図8に示すように、モデル信頼度制御処理40に関連した第2のモデル信頼度制御処理140を設けてもよい。
図8はこの発明の実施の形態6に係る目標追尾装置の全体構成を示すブロック図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0123】
図8において、図1との相違点は、第2のモデル信頼度制御処理140および遅延部150が追加されたことのみである。
第2のモデル信頼度制御処理140の出力情報は、モデル信頼度制御処理40およびモデル信頼度算出処理100に入力されている。
【0124】
また、多重運動モデルフィルタ60内の遅延部150は、統合処理110の出力側に接続されており、遅延部150の出力情報は、第2のモデル信頼度制御処理140に入力されている。
遅延部150は、統合処理110から得られた、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させて第2のモデル信頼度制御処理140に入力する。
【0125】
第2のモデル信頼度制御処理140は、まず、1サンプリング分だけ遅延させた統合平滑ベクトルから高度平滑位置を算出する。
続いて、第2のモデル信頼度制御処理140は、算出された高度平滑位置と事前に決めた高度しきい値とを比較し、高度平滑位置が高度しきい値よりも小さい状態が、現在を含む過去のM2フレーム中にN2フレーム(M2≧N2)だけ存在するか否かを判定する。
【0126】
もし、高度平滑位置が高度しきい値よりも小さい状態が、M2フレーム中にN2フレームだけ存在すると判定された場合には、第2のモデル信頼度制御処理140は、空気抵抗モデルの影響が大きくなるものと見なし、事前に決めた高度しきい値対推移確率パラメータファイルを用いて、空気抵抗モデルの推移確率を大きい値に設定し、設定された空気抵抗モデルの推移確率をモデル信頼度制御処理40に入力する。
【0127】
以下、モデル信頼度制御処理40は、第2のモデル信頼度制御処理140から入力された空気抵抗モデルの推移確率と、輝度ヒストリによる推力加速判定処理30から得られる推力加速判定フラグFr(ブースト判定フラグ)とを用いて、推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデルに関わる各推移確率を設定する。
【0128】
なお、各運動モデルに関わる推移確率を設定する際には、空気抵抗モデルの推移確率を優先して設定する。
また、第2のモデル信頼度制御処理140において、現在を含む過去M2フレーム中のN2フレームにおいて、高度平滑位置が事前に決めた高度しきい値以上である場合には、空気抵抗モデルの影響が小さくなるものと判定し、事前に決めた高度しきい値対推移確率パラメータファイルを用いて、空気抵抗モデルの推移確率を小さい値に設定する。
【0129】
以上のように、この実施の形態6(図8)に係る目標追尾装置は、統合平滑ベクトルから算出した高度平滑位置に応じて、空気抵抗モデルの推移確率を変更する第2のモデル信頼度制御処理140を備えている。
また、モデル信頼度制御処理40は、第2のモデル信頼度制御処理140で可変設定された空気抵抗モデルの推移確率と、輝度ヒストリによる推力加速判定処理から得られた推力加速判定フラグFr(ブースト判定フラグ)とを用いて、3つの運動モデルに関わる各推移確率を設定する。
【0130】
このように、第2のモデル信頼度制御処理140において、1サンプリング前の統合平滑ベクトルから算出した高度平滑位置に基づいて、空気抵抗モデルの影響が大きくなると判定された場合には、空気抵抗モデルの推移確率を小さい値に設定し、逆に、空気抵抗モデルの影響が小さくなると判定された場合には、空気抵抗モデルの推移確率を小さい値に設定することにより、空気抵抗モデルの影響が事後信頼度および事前信頼度へと、反映され易くなるので、統合航跡の判定精度の早期向上を実現することができる。
【符号の説明】
【0131】
T 目標、10 検知器、10a 2Dセンサ、20 輝度ヒストリ解析処理、30 輝度ヒストリによる推力加速判定処理、40 モデル信頼度制御処理、50 信号処理器、50a 3Dセンサ、60 多重運動モデルフィルタ、70、80、90、150 遅延部、71 推力加速モデル混合処理、72 推力加速モデル予測処理、73 推力加速モデル平滑処理、81 慣性モデル混合処理、82 慣性モデル予測処理、83 慣性モデル平滑処理、91 空気抵抗モデル混合処理、92 空気抵抗モデル予測処理、93 空気抵抗モデル平滑処理、100 モデル信頼度算出処理、110 統合処理、120 着地予測処理、130 検出データ数による推力加速判定処理、140 第2のモデル信頼度制御処理。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの運動フェーズとして、推力加速フェーズ、慣性フェーズおよび空気抵抗フェーズを持つ目標を追尾するために、前記3つの運動フェーズに対応した3つの運動モデルとして、推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデルを用いた目標追尾装置であって、
前記目標を観測する2Dセンサを有し、前記2Dセンサによる2Dセンサ観測値、2Dセンサ観測誤差共分散行列および輝度を含む2Dセンサ検出結果を出力する検知器と、
前記2Dセンサ検出結果から、時刻対輝度の輝度ヒストリを作成する輝度ヒストリ解析処理と、
前記輝度ヒストリが事前に決めた輝度しきい値との間で所定の関係を満たすか否かを判定し、前記輝度ヒストリに対応する仮推力加速判定フラグ、前記輝度ヒストリに対応する推力加速判定フラグ、ならびに、前記輝度ヒストリに対応する時刻および輝度ヒストリを出力する、輝度ヒストリによる推力加速判定処理と、
前記推力加速判定フラグが「0」の場合には、前記目標の推力加速が終了したものと判定して、前記推力加速モデルへの推移確率を「0」とし、前記推力加速判定フラグが「1」の場合には、前記目標が推力加速中と判定して、事前に設定した推移確率を使用するモデル信頼度制御処理と、
前記目標を観測する3Dセンサを有し、前記3Dセンサによる3Dセンサ観測値および3Dセンサ観測誤差共分散行列を含む3Dセンサ検出結果を出力する信号処理器と、
前記推力加速モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、前記推力加速モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、前記推力加速モデルから前記空気抵抗モデルまたは前記慣性モデルへの逆推移確率と、前記推力加速モデルの事前信頼度とを算出する、推力加速モデル混合処理と、
前記推力加速モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の推力加速モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、推力加速モデル予測処理と、
前記カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、前記推力加速モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を算出する、推力加速モデル平滑処理と、
前記慣性モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、前記慣性モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、前記慣性モデルから前記空気抵抗モデルまたは前記推力加速モデルへの逆推移確率と、前記慣性モデルの事前信頼度とを算出する、慣性モデル混合処理と、
前記慣性モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
前記カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の慣性モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、慣性モデル予測処理と、
前記カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、前記慣性モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を算出する、慣性モデル平滑処理と、
前記空気抵抗モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、前記空気抵抗モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、前記空気抵抗モデルから前記推力加速モデルまたは前記慣性モデルへの逆推移確率と、前記空気抵抗モデルの事前信頼度とを算出する、空気抵抗モデル混合処理と、
前記空気抵抗モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
前記カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の空気抵抗モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、空気抵抗モデル予測処理と、
前記カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、前記空気抵抗モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を算出する、空気抵抗モデル平滑処理と、
前記3つの運動モデルごとの予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列、ならびに、前記2Dセンサ観測誤差共分散行列または前記3Dセンサ観測誤差共分散行列を用い、前記3つの運動モデルごとの尤度を算出するとともに、前記3つの運動モデルごとの尤度および事前信頼度を用いて、前記3つの運動モデルごとの事後信頼度を算出する、モデル信頼度算出処理と、
前記3つの運動モデルごとの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、前記3つの運動モデルごとの事後信頼度により重み付け統合して、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を算出する、統合処理と、
前記統合平滑ベクトルおよび前記統合平滑誤差共分散行列を、事前に決めた目標の飛翔モデルに合わせて、着地予測点の高度が0になるまで、事前に決めた所定の外挿間隔で外挿することにより、前記統合平滑ベクトルの位置から前記着地予測点までの、前記所定の外挿間隔ごとの前記統合平滑ベクトルおよび前記統合平滑誤差共分散行列の各外挿結果を出力する、着地予測処理と、
を備えたことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
3つの運動フェーズとして、推力加速フェーズ、慣性フェーズおよび空気抵抗フェーズを持つ目標を追尾するために、前記3つの運動フェーズに対応した3つの運動モデルとして、推力加速モデル、慣性モデルおよび空気抵抗モデルを用いた目標追尾装置であって、
前記目標を観測する2Dセンサを有し、前記2Dセンサによる2Dセンサ観測値、2Dセンサ観測誤差共分散行列および輝度を含む2Dセンサ検出結果を出力する検知器と、
前記2Dセンサ検出結果に含まれる前記2Dセンサの検出データ数を用いて、前記2Dセンサ検出結果に含まれる検出データ数が、事前に決めた検出しきい値との間で所定の関係を満たすか否かにより前記目標の推力加速を判定し、前記推力加速が終了したと判定された場合に、前記慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなるように推移確率を設定するとともに、前記検出データ数に対応する仮推力加速判定フラグ、推力加速判定フラグおよび時刻を出力する、検出データ数による推力加速判定処理と、
前記推力加速判定フラグが「0」の場合には、前記目標の推力加速が終了したものと判定して、前記推力加速モデルへの推移確率を「0」とし、前記推力加速判定フラグが「1」の場合には、前記目標が推力加速中と判定して、事前に設定した推移確率を使用するモデル信頼度制御処理と、
前記目標を観測する3Dセンサを有し、前記3Dセンサによる3Dセンサ観測値および3Dセンサ観測誤差共分散行列を含む3Dセンサ検出結果を出力する信号処理器と、
前記推力加速モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、前記推力加速モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、前記推力加速モデルから前記空気抵抗モデルまたは前記慣性モデルへの逆推移確率と、前記推力加速モデルの事前信頼度とを算出する、推力加速モデル混合処理と、
前記推力加速モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の推力加速モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、推力加速モデル予測処理と、
前記カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、前記推力加速モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を算出する、推力加速モデル平滑処理と、
前記慣性モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、前記慣性モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、前記慣性モデルから前記空気抵抗モデルまたは前記推力加速モデルへの逆推移確率と、前記慣性モデルの事前信頼度とを算出する、慣性モデル混合処理と、
前記慣性モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
前記カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の慣性モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、慣性モデル予測処理と、
前記カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、前記慣性モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を算出する、慣性モデル平滑処理と、
前記空気抵抗モデルに基づく混合平滑ベクトルおよび混合平滑誤差共分散行列、ならびに、前記空気抵抗モデルの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を用いて、前記空気抵抗モデルから前記推力加速モデルまたは前記慣性モデルへの逆推移確率と、前記空気抵抗モデルの事前信頼度とを算出する、空気抵抗モデル混合処理と、
前記空気抵抗モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を、1サンプリング分だけ遅延させる遅延部と、
前記カルマンフィルタの予測処理により、現時刻の空気抵抗モデルに基づく予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列を算出する、空気抵抗モデル予測処理と、
前記カルマンフィルタの平滑処理により、現時刻の3Dセンサ検出結果または2Dセンサ検出結果を用いて、前記空気抵抗モデルに基づく前記平滑ベクトルおよび前記平滑誤差共分散行列を算出する、空気抵抗モデル平滑処理と、
前記3つの運動モデルごとの予測ベクトルおよび予測誤差共分散行列、ならびに、前記2Dセンサ観測誤差共分散行列または前記3Dセンサ観測誤差共分散行列を用いて、前記3つの運動モデルごとの尤度を算出するとともに、前記3つの運動モデルごとの尤度および事前信頼度を用いて、前記3つの運動モデルごとの事後信頼度を算出する、モデル信頼度算出処理と、
前記3つの運動モデルごとの平滑ベクトルおよび平滑誤差共分散行列を、前記3つの運動モデルごとの事後信頼度により重み付け統合して、統合平滑ベクトルおよび統合平滑誤差共分散行列を算出する、統合処理と、
前記統合平滑ベクトルおよび前記統合平滑誤差共分散行列を、事前に決めた目標の飛翔モデルに合わせて、着地予測点の高度が0になるまで、事前に決めた所定の外挿間隔で外挿することにより、前記統合平滑ベクトルの位置から前記着地予測点までの、前記所定の外挿間隔ごとの前記統合平滑ベクトルおよび前記統合平滑誤差共分散行列の各外挿結果を出力する、着地予測処理と、
を備えたことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項3】
前記検出データ数による推力加速判定処理は、
前記検知器から得られる検出信号が低S/Nであって、前記検知器の輝度しきい値を下げなければ目標信号が検出されない状態においては、前記検出信号がL個以上の状況が、Mフレーム中にN(≦M)フレームある場合に、前記目標の推力加速が終了したものと判定するとともに、前記慣性モデルの事前信頼度および事後信頼度が高くなるように、前記推移確率を設定することを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記モデル信頼度制御処理は、
前記輝度ヒストリによる推力加速判定処理からの前記推力加速判定フラグが「0」であって、前記目標の推力加速が終了したことを示す判定結果が得られた場合には、前記推力加速モデルから前記3つの運動モデルのいずれかへの推移確率を、時間経過ごとに単調減少させるように設定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記モデル信頼度制御処理は、
前記輝度ヒストリによる推力加速判定処理から得られた、前記輝度ヒストリに対応する推力加速判定フラグが「0」であって、前記目標の推力加速が終了したと判定された場合には、前記推力加速モデルの事後信頼度を小さい値に設定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記統合平滑ベクトルから算出した高度平滑位置に応じて、前記空気抵抗モデルの推移確率を変更する第2のモデル信頼度制御処理を備え、
前記モデル信頼度制御処理は、前記空気抵抗モデルの推移確率と、前記輝度ヒストリによる推力加速判定処理から得られた前記ブースト判定フラグとを用いて、前記3つの運動モデルに関わる各推移確率を設定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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