説明

目標追跡装置及び目標追跡方法

【課題】目標に対して精度よく光波を照射し得る。
【解決手段】実施形態によれば、照射部にて移動目標に対し光波を照射し、光波の反射光を撮像部にて受光して撮像視野内の移動目標に関する画像情報を得て、この画像情報に基づいて駆動部にて光波の照射方向と移動目標からの光波の反射方向とを一致させるべく照射部及び撮像部を駆動して移動目標を追跡する目標追跡装置において、照射部から光波の照射方向に対応する照射部の姿勢情報を取得する取得手段と、この取得手段で得られた姿勢情報と、撮像部で得られる画像情報とに基づいて光波の照射方向と撮像部の指向方向との間の偏向角誤差を算出する演算手段と、この演算手段で求められた偏向角誤差に基づいて、光波の照射方向と撮像部の指向方向との間の偏向角を補正すべく駆動部を制御する制御手段とを備えた目標追跡装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像装置を用いて移動目標を撮影し、その撮像情報から移動目標を追跡する目標追跡装置及び目標追跡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、目標追跡装置にあっては、撮像器を搭載して、その撮像画像を解析することで移動目標の検出・追跡を行うものがある。この場合、光波照射器から目標物に照射した光波の反射光の方向(反射光目標位置)に基づいて目標物を追跡するので、撮像器で見る目標物からの反射光の方向と送信器から目標物への照射方向とは、一致していることが望まれる。
【0003】
目標物からの反射光の方向と送信器から目標物への照射方向との間には、撮像器及び光波照射器の取付け精度による固定的な偏向角や、追跡駆動装置の動作軸の偏心等による追跡方向に依存する偏向角等が生じる。
【0004】
従来は、上記の固定的及び追跡方向に依存する偏向角については、事前に計測したデータをもとに、固定的は偏向角については一定値を、追跡方向に依存する偏向角については、追跡駆動装置の追跡方向に対応する角度に応じた可変の値を補正角度として光波照射器駆動信号における光波照射方向の指令値に加算していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−201517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光波照射方向の指令値への補正の誤差や、外乱等の影響によって生じる偏向角誤差については修正できない。
【0007】
本発明の目的は、目標に対して精度よく光波を照射し得る目標追跡装置及び目標追跡方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、照射部にて移動目標に対し光波を照射し、光波の反射光を撮像部にて受光して撮像視野内の移動目標に関する画像情報を得て、この画像情報に基づいて駆動部にて光波の照射方向と移動目標からの光波の反射方向とを一致させるべく照射部及び撮像部を駆動して移動目標を追跡する目標追跡装置において、照射部から光波の照射方向に対応する照射部の姿勢情報を取得する取得手段と、この取得手段で得られた姿勢情報と、撮像部で得られる画像情報とに基づいて光波の照射方向と撮像部の指向方向との間の偏向角誤差を算出する演算手段と、この演算手段で求められた偏向角誤差に基づいて、光波の照射方向と撮像部の指向方向との間の偏向角を補正すべく駆動部を制御する制御手段とを備えた目標追跡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の目標追跡装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態において、目標物からの放射光を基に目標物を追跡中に、反射光による目標が出現した場合の撮像器画像を模式的に示した図。
【図3】従来の方法によって追跡動作を継続した場合の撮像器画像を模式的に示した図。
【図4】同実施形態の方法によって追跡動作を継続した場合の撮像器画像を模式的に示した図。
【図5】同実施形態における駆動制御装置の制御処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、符号11は光学装置で、追跡駆動装置12によって例えば高低方向及び方位方向に回動自在に支持され、内部に光波照射器111及び撮像器112を備える。
【0013】
光波照射器111において、光源111aから発生する光はレンズ111cで集光され、例えばミラー111bを介して所定方向に向けて照射される。この光波の反射光と目標物Tからの放射光は撮像器112に入射される。撮像器112において、光波の反射光及び目標物Tからの放射光は、画像データとして画像処理装置13に送られる。
【0014】
画像処理装置13は、撮像器112から送られた画像データに基づいて、目標方向情報(放射光による目標座標)と反射光方向情報(反射光目標座標)とを算出し、これら目標方向情報及び反射光方向情報を駆動制御装置14に出力する。
【0015】
駆動制御装置14は、目標方向情報及び反射光方向情報に基づいて追跡駆動信号を生成する。この追跡駆動信号は、追跡駆動装置12に供給され、光波照射器111の光波照射方向及び撮像器112の撮像視野を目標中心に位置させる制御に供される。
【0016】
ところで、本実施形態では、駆動制御装置14に、取得部141と、演算部142と、光波照射器制御部143とを備えている。取得部141は、光波照射器111から光波の照射方向に対応した光波照射器111の例えばミラー111bの角度等の情報、つまり光波照射方向情報を取得する。
【0017】
演算部142は、取得部141により得られた光波照射方向情報を撮像器画像の座標系に換算して目標物Tへの光波照射方向座標を算出し、この光波照射方向座標と画像処理装置13で得られる反射光目標座標との差から光波照射器111の偏向角誤差を算出する。光波照射器制御部143は、目標物Tの追跡のための反射光方向情報に基づく光波照射方向の指令値から、光波照射器111の偏向角誤差を減算したものを光波照射方向の指令値として光波照射器111内のミラー111bを駆動することによって、光波の照射方向と撮像器112の指向方向との間の偏向角を校正(補正)する。
【0018】
上記構成において、以下にその動作を説明する。
図2は、目標物Tからの放射光を基に目標物Tを追跡中に、反射光による目標が出現した場合の撮像器画像を模式的に示したものである。
【0019】
追跡駆動装置12は、撮像器112の指向方向を目標物Tからの放射光が来る方向に一致させるべく、追跡動作を行う。しかし、光波照射器111から目標物Tへの照射光は拡がり角をもつため、目標物Tから反射光が返っているときにおいても、補正角度の誤差や外乱等の影響によって、撮像器112から見た目標物Tの方向と光波照射方向との間には微小な角度の差異(以下、光波照射器111の偏向角誤差と称する)が存在する場合がありうる。
【0020】
図3は、図2の状態から、従来の方法によって追跡動作を継続した場合の撮像器画像を模式的に示したものである。
【0021】
撮像器画像において、反射光による像が目標方向として検出されると、追跡駆動装置12は、撮像器112の指向方向を目標方向、すなわち反射光が来る方向に一致させるべく追跡動作を行うが、光波の照射方向と撮像器112の指向方向との間には、光波照射器111の偏向角誤差がそのまま残っている。
【0022】
そこで、本実施形態では、上記偏向角誤差を求めてこの偏向角誤差分で光波照射器111の光波照射方向を補正するようにした。図4は、図2の状態から、本実施形態の方法によって追跡動作を継続した場合の撮像器画像を模式的に示したものである。
【0023】
撮像器画像において反射光による像とは別に目標からの放射光による像も捕らえられ、画像処理装置13によって反射光による像からは反射光目標座標(反射光方向情報)が、放射光による像からは放射光による目標座標(目標方向情報)が算出される。これら算出結果は、駆動制御装置14に供給される。
【0024】
すると、駆動制御装置14は、図5に示す制御処理手順を実行する。まず、駆動制御装置14は、画像処理装置13からの反射光方向情報の到来を監視しており(ステップST5a)、反射光方向情報が到来すると(Yes)、光波照射器111のセンサ等から光波の照射方向に対応した角度等の情報(光波照射方向情報)を取得し(ステップST5b)、光波照射方向情報を撮像器画像の座標系に換算して目標物への光波照射方向座標を算出し、次式によって光波照射器111の偏向角誤差を算出する(ステップST5c)。
【0025】
光波照射器の偏向角誤差=
撮像器画像の座標系に換算した目標物への光波照射方向座標−反射光目標座標
そして、駆動制御装置14は、光波照射器111への光波照射器駆動信号について、元々の目標物Tの追跡のための反射光方向情報に基づく光波照射方向の指令値から、光波照射器111の偏向角誤差を減算することによって、光波の照射方向と撮像器112の指向方向との間の偏向角を校正(補正)する(ステップST5d)。
【0026】
上記校正(補正)処理は、この次に校正(補正)されるときまで、継続させる。
これによって、目標物Tに対して精度よく光波を照射させることができる。
【0027】
以上のように上記実施形態によれば、駆動制御装置14において、光波照射器111から得られるミラー111bの角度等の情報と、撮像器112の画像情報から得られる反射光方向情報との差異分を光波照射器111への指令値から減算することによって、光波の照射方向と撮像器112の指向方向との間の偏向角を補正することができる。これにより、目標物Tに対して精度よく光波を照射させることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、光波照射器111内のミラー111bを駆動させる例について説明したが、ミラー111b以外の駆動機構を制御するものであってもよい。その他、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
11…光学装置、12…追跡駆動装置、13…画像処理装置、14…駆動制御装置、111…光波照射器、112…撮像器、111a…光源、111b…ミラー、111c…レンズ、141…取得部、142…演算部、143…光波照射器制御部、T…目標物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射部にて移動目標に対し光波を照射し、前記光波の反射光を撮像部にて受光して撮像視野内の前記移動目標に関する画像情報を得て、この画像情報に基づいて駆動部にて前記光波の照射方向と前記移動目標からの光波の反射方向とを一致させるべく前記照射部及び前記撮像部を駆動して前記移動目標を追跡する目標追跡装置において、
前記照射部から前記光波の照射方向に対応する前記照射部の姿勢情報を取得する取得手段と、
この取得手段で得られた姿勢情報と、前記撮像部で得られる前記画像情報とに基づいて前記光波の照射方向と前記撮像部の指向方向との間の偏向角誤差を算出する演算手段と、
この演算手段で求められた偏向角誤差に基づいて、前記光波の照射方向と前記撮像部の指向方向との間の偏向角を補正すべく前記駆動部を制御する制御手段とを具備することを特徴とする目標追跡装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記取得手段で得られた姿勢情報を前記撮像部の出力画像の座標系に換算した前記移動目標への光波照射方向座標を求め、この光波照射方向座標から前記撮像部の出力画像中の反射光目標座標を減算することで前記偏向角誤差を算出し、
前記制御手段は、前記駆動部から発生され前記照射部を駆動するための指令値から前記偏向角誤差を減算した指令値を算出して、この算出した指令値に基づいて前記照射部を駆動させることを特徴とする請求項1記載の目標追跡装置。
【請求項3】
前記照射部は、ミラーを用いて光波を照射し、
前記取得手段は、前記照射部からミラー角度情報を取得し、
前記制御手段は、前記照射部を駆動するための指令値から前記偏向角誤差を減算した指令値を算出して、この算出した指令値に基づいて前記照射部のミラーを駆動させることを特徴とする請求項1記載の目標追跡装置。
【請求項4】
照射部にて移動目標に対し光波を照射し、前記光波の反射光を撮像部にて受光して撮像視野内の前記移動目標に関する画像情報を得て、この画像情報に基づいて駆動部にて前記光波の照射方向と前記移動目標からの光波の反射方向とを一致させるべく前記照射部及び前記撮像部を駆動して前記移動目標を追跡する目標追跡方法において、
前記照射部から前記光波の照射方向に対応する前記照射部の姿勢情報を取得し、
この姿勢情報と、前記撮像部で得られる前記画像情報とに基づいて前記光波の照射方向と前記撮像部の指向方向との間の偏向角誤差を算出し、
この偏向角誤差に基づいて、前記光波の照射方向と前記撮像部の指向方向との間の偏向角を補正すべく前記駆動部を制御することを特徴とする目標追跡方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−58158(P2012−58158A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203602(P2010−203602)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】