説明

直列多重電力変換装置

【課題】装置寸法の増大を抑制しつつ、単位電力変換器が故障しても運転を継続することが可能な直列多重電力変換装置を提供する。
【解決手段】直列多重電力変換装置10は、出力側をそれぞれ直列接続構成とした複数の単位電力変換器で構成し、一端を相出力として負荷に、他端を中性点にそれぞれ接続した複数の電力変換器直列接続体SU、SV、SW、一方の出力端を中性点に接続した単数の予備単位電力変換器SP、単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合に故障した単位電力変換器の出力をバイパスするように構成した第1の切替装置、及び単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合に故障した単位電力変換器の代わりに予備単位電力変換器を直列接続構成に接続するように構成した第2の切替装置を有した電力変換部20と、第1及び第2の切替装置にそれぞれ開閉信号を出力して切替える制御部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列多重電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、1つの単相インバータが故障した場合であっても規定の出力電圧で運転を継続することが可能な直列多重インバータがそれぞれ記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の直列多重インバータは、複数台の単相インバータの出力端をそれぞれ直列接続したU、V、W相構成により、三相高圧出力を得る直接高圧インバータ装置である。
この直接高圧インバータ装置は、U、V、W相の出力端に、それぞれ1台の予備単相インバータの出力端を直列接続し、U、V、W相を構成する各単相インバータの出力端及び予備単相インバータの出力端を個別に短絡できる開閉器を設けている。
通常運転時は、予備単相インバータの出力端を開閉器によって短絡状態にしてU、V、W相の各単相インバータを運転する。U、V、W相の少なくとも1つの相で1台の単相インバータが故障発生した時は、この故障発生した単相インバータの出力端を開閉器で短絡状態にし、故障発生した相と同一相の予備単相インバータの開閉器を開放及びその予備単相インバータの運転で装置運転を再開する。
【0004】
特許文献2に記載の直列多重インバータは、3相の多重インバータのセルインバータの交流入力側に入力変圧器の2次側電圧を出力し、3相の各相アームの出力を交流電動機に供給する高圧ダイレクトインバータ装置である。
この高圧ダイレクトインバータ装置は、3相の各相アームと交流電動機の端子間に第1のスイッチを接続すると共に、3相各相のセルインバータと同数のセルインバータを直列接続した事故時交代用の相アームを設け、この相アームの一端を3相アームの共通点に接続し、相アームの他端をそれぞれ第2のスイッチを介して交流電動機の各相端子に接続している。セルインバータのいずれか1台が故障した場合、故障したセルインバータが含まれる相アームに代わって事故時交代用の相アームを運転することで、装置運転を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−33943号公報
【特許文献2】特開2009−136098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の直列多重インバータは、各相につき、予備単相インバータ及びこの予備単相インバータ用の入力トランスの巻線を準備する必要があるので、装置寸法が増大する。
また、特許文献2に記載の直列多重インバータは、3相各相のセルインバータと同数のセルインバータを直列接続した事故時交代用の相アームを設けるので、直列多重インバータの出力定格電圧が大きくなり、セルインバータの個数が多くなると、事故時交代用の相アームを構成するセルインバータの個数及びこのセルインバータ用の入力トランスの巻線が多く必要となり、装置寸法が増大する。
【0007】
本発明は、本発明の構成を有しない場合よりも装置寸法の増大を抑制しつつ、単位電力変換器が故障しても運転を継続することが可能な直列多重電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る直列多重電力変換装置は、出力側をそれぞれ直列接続構成とした複数の単位電力変換器で構成すると共に、一端Aを相出力として負荷に、他端Bを中性点Nにそれぞれ接続した複数の電力変換器直列接続体と、一方の出力端T1を前記中性点Nに接続し、前記単位電力変換器の代替となる単数の予備単位電力変換器と、前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合に故障した単位電力変換器の出力をバイパスするように構成した第1の切替装置と、前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合に前記故障した単位電力変換器の代わりに前記予備単位電力変換器を前記直列接続構成に接続するように構成した第2の切替装置と、を有した電力変換部と、
前記第1の切替装置及び前記第2の切替装置にそれぞれ開閉信号を出力して切替える制御部と、を備える。
【0009】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記第1の切替装置は、前記単位電力変換器のそれぞれの出力を個別にバイパスするように配置した第1の開閉器群を有し、
前記第2の切替装置は、前記電力変換器直列接続体の他端Bと前記中性点Nとを接続するように配置した第2の開閉器群と、前記予備単位電力変換器の他方の出力端T2を前記電力変換器直列接続体の他端Bに接続するように配置した第3の開閉器群とを有することができる。
【0010】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記制御部が、前記単位電力変換器がいずれも故障していない場合、前記第1の開閉器群及び前記第3の開閉器群に対して開信号を、前記第2の開閉器群に対して閉信号を出力し、
前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合、前記第1の開閉器群を構成する開閉器のうち、故障した単位電力変換器の出力をバイパスする開閉器のみに対して閉信号を、前記第2の開閉器群を構成する開閉器のうち、前記故障した単位電力変換器が存在する前記電力変換器直列接続体の他端Bに接続された開閉器のみに対して開信号を、前記第3の開閉器群を構成する開閉器のうち、前記故障した単位電力変換器が存在する前記電力変換器直列接続体の他端Bに接続された開閉器のみに対して閉信号を出力することができる。
【0011】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記第1の切替装置は、前記各単位電力変換器の出力を前記相出力から切り離すことが可能な第4の開閉器群を更に備えることができる。
【0012】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記制御部が、前記単位電力変換器がいずれも故障していない場合、前記第4の開閉器群に対して閉信号を出力し、
前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合、前記第4の開閉器群を構成する開閉器のうち、前記故障した単位電力変換器の出力に接続された開閉器のみに対して開信号を出力することができる。
【0013】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記制御部は、前記予備単位電力変換器を運転する際、前記予備単位電力変換器に診断信号を送出し、前記予備単位電力変換器から内部状態信号を受信し、前記予備単位電力変換器が運転可能であることを確認してから、前記予備単位電力変換器を運転することができる。
【0014】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記単位電力変換器を、複数の片方向スイッチング素子を有した単位インバータとすることができる。
【0015】
本発明に係る直列多重電力変換装置において、前記単位電力変換器が、複数の双方向スイッチング素子を有した単位マトリクスコンバータとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る直列多重電力変換装置においては、予備の単位電力変換器を1台とすることにより、本発明の構成を有しない場合よりも装置寸法の増大を抑制しつつ、単位電力変換器が故障しても運転を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る直列多重電力変換装置の構成図である。
【図2】同直列多重電力変換装置が有する電力変換部の構成図である。
【図3】同直列多重電力変換装置が有する電力変換部に設けられた単位インバータの主回路の説明図である。
【図4A】同直列多重電力変換装置の電力変換部が故障した際の構成図である。
【図4B】同直列多重電力変換装置の電力変換部が故障した際の構成図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る直列多重電力変換装置が有する電力変換部の構成図である。
【図6】同直列多重電力変換装置が有する電力変換部に設けられた単位マトリクスコンバータの主回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0019】
図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る直列多重電力変換装置10は、例えば、直列多重インバータ装置であり、商用電源12から供給される電力を予め決められた周波数及び電圧の電力に変換することができる。
直列多重電力変換装置10は、入力トランス14、電力変換部20、及び制御部22を備えている。
入力トランス14には、1次側に1次巻線32が設けられている。1次巻線32には、商用電源(三相交流電源)12が接続される。入力トランス14の2次側には、1次巻線32とは絶縁された、例えば、第1〜第10の2次巻線34が設けられている。
【0020】
電力変換部20は、例えば、線間電圧が3.3kVや6.6kVの3相高圧電源を、誘導電動機等の交流負荷36に供給することができる。電力変換部20は、図2に示すように、第1〜第3の単位インバータ直列接続体(電力変換器直列接続体の一例)SU、SV、SWをそれぞれ構成する複数の単位インバータ(単位電力変換器の一例)U1〜U3、V1〜V3、W1〜W3、電磁接触器(開閉器の一例)CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3、電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3、電磁接触器CUN、CVN、CWN、及び電磁接触器CUS、CVS、CWSを有している。電力変換部20については、後に詳述する。
【0021】
各単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3は、図3に示すように、入力トランス14の2次巻線34から入力端R、S、Tに供給された3相交流電力をダイオード整流回路40及び直流平滑コンデンサ42によって、一旦直流電力に変換し、この直流電力を単相インバータ回路44によって予め決められた周波数及び電圧の単相交流電力に変換して出力端T1、T2に出力することができる。なお、この単相インバータ回路44は各々4つの片方向スイッチング素子46をブリッジ接続して構成される。
第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWは、それぞれ、出力側がそれぞれ直列に接続された(直列接続構成とした)単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3によって構成されている。
【0022】
予備単位インバータSPは、図3に示した単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3と同様の構成となっており、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3に代替することができる。予備単位インバータSPは、例えば入力トランス14の第10の2次巻線34から得られた3相交流電力を単相交流電力に変換することができる。図2に示すように、予備単位インバータSPの出力端T1は、相出力の中性点Nに接続される。
【0023】
制御部22は、通信手段により電力変換部20と接続されている。この通信手段は、制御部22と電力変換部20との間で信号の絶縁ができるものであれば良く、例えば光通信を適用することができる。光通信は、図1に示す構成例においては、例えば入力トランス14の2次巻線の34と等しい数の第1〜第10の光通信線37を介して行われている。
【0024】
具体的には、第1の光通信線37を介して、単位インバータU1、電磁接触器CUB1、CUC1と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。第2の光通信線37を介して、単位インバータU2、電磁接触器CUB2、CUC2と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。第3の光通信線37を介して、単位インバータU3、電磁接触器CUB3、CUC3と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。
【0025】
また、第4の光通信線37を介して、単位インバータV1、電磁接触器CVB1、CVC1と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。第5の光通信線37を介して、単位インバータV2、電磁接触器CVB2、CVC2と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。第6の光通信線37を介して、単位インバータV3、電磁接触器CVB3、CVC3と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。
【0026】
また、第7の光通信線37を介して、単位インバータW1、電磁接触器CWB1、CWC1と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。第8の光通信線37を介して、単位インバータW2、電磁接触器CWB2、CWC2と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。第9の光通信線37を介して、単位インバータW3、電磁接触器CWB3、CWC3と、制御部20との間の信号がそれぞれ授受される。
【0027】
また、第10の光通信線37を介して、予備単位インバータSP、電磁接触器CUN、CVN、CWN、CUS、CVS、CWSと、制御部20との間の信号が授受される。
【0028】
光通信線37による電力変換部20と制御部22との間の接続形態は、前述の接続形態に限定されるものではない。例えば、電力変換部20と制御部22との間を1本の光通信線で接続するように構成してもよい。また、単位インバータや電磁接触器毎に1本ずつ光通信線が接続されても良い。
【0029】
制御部22は、前述の光通信を介して、予め決められた周期で、図3に示す片方向スイッチング素子46をオンオフする信号を各単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3に送ることにより、電力変換部20に電力変換動作を行なわせることができる。
【0030】
制御部22は、光通信を介して、予め決められた周期で、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の故障を検出するのに必要な、各単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3に関する複数の情報(例えば、各単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の内部の予め決められた箇所の電圧、電流、及び温度)を監視することができる。以下、これら情報を「監視情報」という。
【0031】
更に制御部22は、光通信を介して電磁接触器を開閉する信号を出力し、電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3、電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3、電磁接触器CUN、CVN、CWN、及び電磁接触器CUS、CVS、CWSを開閉する。
【0032】
次に、電力変換部20について詳細に説明する。
図2に示す電力変換部20は、前述のように、第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SW、予備単位インバータ(予備単位電力変換器の一例)SP、並びに電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3、電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3、電磁接触器CUN、CVN、CWN、及び電磁接触器CUS、CVS、CWSを有している。予備単位インバータSPは、1台のみ設けられている。なお、図2においては、電力変換部20と入力トランス14との接続は省略して描かれている。また、同図においては、電力変換部20と制御部22との接続は省略して描かれている。
【0033】
第1の単位インバータ直列接続体SUは、それぞれ入力トランス14の第1〜第3の2次巻線34から得られた3相交流電力を単相交流電力に変換する単位インバータU1〜U3の出力端が、それぞれ電磁接触器CUC1〜CUC3を介して、直列に3段接続されて少なくとも構成されている。
【0034】
第2の単位インバータ直列接続体SVは、それぞれ入力トランス14の第4〜第6の2次巻線34から得られた3相交流電力を単相交流電力に変換する単位インバータV1〜V3の出力端が、それぞれ電磁接触器CVC1〜CVC3を介して、直列に3段接続されて少なくとも構成されている。
【0035】
第3の単位インバータ直列接続体SWは、それぞれ入力トランス14の第7〜第9の2次巻線34から得られた3相交流電力を単相交流電力に変換する単位インバータW1〜W3の出力端が、それぞれ電磁接触器CWC1〜CWC3を介して、直列に3段接続されて少なくとも構成されている。
【0036】
第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWの一端Aは、それぞれU、V、W相出力として交流負荷36(図1参照)に接続される。
【0037】
各電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3は、一方の端子TC1が電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3の端子TC2に接続され、他方の端子TC2が単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の出力端T2に接続される。各電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3は、制御部22が光通信を介して出力する開閉信号によって開閉され、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の出力をパイパスすることができる。
【0038】
なお、電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3は、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の出力をバイパスするように配置された第1の開閉器群の一例である。この第1の開閉器群は、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3のいずれか1つが故障した場合に故障した単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の出力をバイパスする第1の切替装置を少なくとも構成する。
【0039】
各電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3は、一方の端子TC1が単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の出力端T1に接続される。各電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3は、制御部22が光通信を介して出力する開閉信号によって開閉され、故障が発生した単位インバータの出力端T1を出力相から切り離すことができる。
【0040】
なお、電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3は、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の出力を相出力から切り離すことが可能な第4の開閉器群の一例であり、第1の開閉器群と共に、前述の第1の切替装置を構成する。
【0041】
各電磁接触器CUN、CVN、CWNは、一方の端子TC1が中性点Nに接続され、他方の端子TC2が電磁接触器CUC1、CVC1、CWC1の他方の端子TC2(電磁接触器CUB1、CVB1、CWB1の端子TC1)に接続される。即ち、各電磁接触器CUN、CVN、CWNは、制御部22が光通信を介して出力する開閉信号によって開閉され、第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWの他端Bをそれぞれ中性点Nに接続したり、中性点Nから切り離したりすることができる。
なお、電磁接触器CUN、CVN、CWNは、第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWの他端Bと中性点Nとを接続するように配置された第2の開閉器群の一例である。
【0042】
各電磁接触器CUS、CVS、CWSは、一方の端子TC1が予備単位インバータSPの出力端T2に接続され、他方の端子TC2が電磁接触器CUC1、CVC1、CWC1の他方の端子TC2(電磁接触器CUB1、CVB1、CWB1の端子TC1)に接続される。即ち、各電磁接触器CUS、CVS、CWSは、制御部22が光通信を介して出力する開閉信号によって開閉され、第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWの他端Bをそれぞれ予備単位インバータSPの出力端T2に接続したり、予備単位インバータSPの出力端T2から切り離したりすることができる。
【0043】
なお、電磁接触器CUS、CVS、CWSは、予備単位インバータSPの出力端T2を第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWの他端Bに接続するように配置された第3の開閉器群の一例である。
また、前述の第2の開閉器群及び第3の開閉器群は、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3のいずれか1つが故障した場合に、故障した単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の代わりに予備単位インバータSPを直列接続構成された単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3に接続する第2の切替装置を少なくとも構成する。
【0044】
次に、直列多重電力変換装置10の動作について説明する。
いずれの単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3にも故障が発生していない場合、制御部22は、図2に示すように、光通信を介して開信号を出力し、電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3をそれぞれ開く。また、制御部22は、光通信を介して閉信号を出力し、電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3をそれぞれ閉じる。
更に、制御部22は、光通信を介して閉信号を出力し、電磁接触器CUN、CVN、CWNをそれぞれ閉じる。また、制御部22は、光通信を介して開信号を出力し、電磁接触器CUS、CVS、CWSをそれぞれ開く。
従って、第1〜第3の単位インバータ直列接続体SU、SV、SWの他端Bは、それぞれ中性点Nに接続され、予備単位インバータSPの出力端T2から切り離されている。
【0045】
ここで、第1の例として単位インバータU2に故障が発生した場合には、制御部22は、単位インバータU2に故障が発生したことを検出する。故障の検出は、例えば光通信を介して受信された前述の監視情報に対して閾値を設けることにより行われる。具体的には、故障の検出は、各監視情報が示す値がとりうる範囲に応じて、その監視情報が示す値が閾値以上、閾値以下、又は上限と下限とをそれぞれ規定する2つの閾値の範囲外であるか否かを判定することにより行なわれる。
【0046】
単位インバータU2の故障を検出すると、制御部22は、図4Aに示すように、光通信を介して閉信号を出力し、電磁接触器CUB2を閉じ、単位インバータU2の出力をバイパスする。また、制御部22は、光通信を介して開信号を出力し、電磁接触器CUC2を開いて故障した単位インバータU2をU相出力から切り離す。単位インバータU2を切り離すことにより、単位インバータU2内部での故障拡大を防止し、更に単位インバータU2の故障が他の部分に与える影響が抑制される。
【0047】
更に、制御部22は、光通信を介して開信号を出力し、電磁接触器CUNを開き、光通信を介して閉信号を出力し、電磁接触器CUSを閉じる。第1の単位インバータ直列接続体SUの他端Bは、中性点Nから切り離され、予備単位インバータSPの出力端T2に接続される。
従って、電力変換部20には、予備単位インバータSPを1段目、単位インバータU1を2段目、単位インバータU3を3段目とする新たな単位インバータ直列接続体(単位インバータ直列接続体SUに代わる単位インバータ直列接続体)が形成される。
【0048】
また、第2の例として単位インバータW3に故障が発生した場合には、制御部22は、光通信を介して、前述の第1の例と同様の方法で単位インバータW3に故障が発生したことを検出する。制御部22は、図4Bに示すように、光通信を介して閉信号を出力し、電磁接触器CWB3を閉じ、単位インバータW3の出力をバイパスする。また、制御部22は、光通信を介して開信号を出力し、電磁接触器CWC3を開いて故障した単位インバータW3をW相出力から切り離す。単位インバータW3を切り離すことにより、単位インバータW3内部での故障拡大を防止し、更に単位インバータW3の故障が他の部分に影響を与えることを抑制することができる。
【0049】
更に、制御部22は、光通信を介して開信号を出力し、電磁接触器CWNを開き、光通信を介して閉信号を出力し、電磁接触器CWSを閉じる。第3の単位インバータ直列接続体SWの他端Bは、中性点Nから切り離され、予備単位インバータSPの出力端T2に接続される。
従って、電力変換部20には、予備単位インバータSPを1段目、単位インバータW1を2段目、単位インバータW2を3段目とする新たな単位インバータ直列接続体(単位インバータ直列接続体SWに代わる単位インバータ直列接続体)が形成される。
【0050】
このように、制御部22は、故障した単位インバータの出力をバイパスするように各電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3を開閉する。また、制御部22は、故障した単位インバータを含む単位インバータ直列接続体の他端Bを、予備単位インバータSPの出力端T2に接続するように各電磁接触器CUN、CVN、CWN及び各電磁接触器CUS、CVS、CWSを開閉する。
【0051】
以上により、故障した単位インバータを含む単位インバータ直列接続体に代わり、予備単位インバータSPを含む新たな単位インバータ直列接続体が形成されるので、直列多重電力変換装置10を、故障した単位インバータの復旧を待たずに運転することが可能となる。
【0052】
その際、制御部22は、予備単位インバータSPが運転可能か否かの確認(診断動作)をしてから、電力変換部20の運転(電力変換動作)を開始する。運転可能か否かの確認のため、制御部22は、図3に示す単位インバータのスイッチング素子46の一つに、光通信を介してそのスイッチング素子46をオフする信号を送信し、続いてオンする信号を送信する。
ここで、予備単位インバータSPは、各スイッチング素子46の診断回路(不図示)を備えている。この診断回路は、各々のスイッチング素子46両端の電圧を、例えば抵抗により分圧し、降圧した電圧をフォトカプラに入力し、そのフォトカプラの出力をDC5V等の電圧でプルアップすることにより、そのスイッチング素子46がオンの場合にLOW、オフの場合にHIGHとなるスイッチング状態信号を作り出すことができる。
【0053】
制御部22は、オフする信号とオンする信号を送った一つのスイッチング素子46の診断回路からスイッチング状態信号を光通信を介して受け取り、(i)制御部22がスイッチング素子をオフする信号を送信した場合に、スイッチング状態信号がHighであること、(ii)制御部22がスイッチング素子をオンする信号を送信した場合に、スイッチング状態信号がLowであること、の2つの条件が成り立つかを確認する。制御部22は、この2つの条件がともに成り立つ場合に、そのスイッチング素子46は正常であると判定する。
【0054】
更に、制御部22は、予備単位インバータSPの残りの3つのスイッチング素子46に対しても、同じ方法で正常かどうかを一つずつ判定する。4つのスイッチング素子46がすべて正常であると判定された場合、制御部22は、予備単位インバータSPは運転可能であると判定する。予備単位インバータSPにより、直列多重電力変換装置の運転を継続しようとする場合、制御部22は、予備単位インバータSPが運転可能であるときにのみ運転を継続する。
【0055】
制御部22は、単位インバータに故障が発生した後、予備単位インバータSPを含む新たな単位インバータ直列接続体を形成して電力変換部20の電力変換を開始する前に前述の診断動作を実行することができる。ただし、制御部22は、単位インバータに故障が発生した後、予備単位インバータSPを含む新たな単位インバータ直列接続体を形成する前に診断動作を実行することが好ましい。
なお、運転可能かどうかの確認のため、制御部22が光通信を介して送信する1つのスイッチング素子46をオンまたはオフする信号は、診断信号の一例である。また、スイッチング状態信号は、内部状態信号の一例である。
【0056】
本実施の形態によれば、直列多重電力変換装置10は、1つの単位インバータが故障しても運転を継続することが可能である。また、予備単位インバータSPの数は1台のみであるので、装置寸法の増大は抑えられる。
【0057】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る直列多重電力変換装置について説明する。第1の実施の形態に係る直列多重電力変換装置10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施の形態に係る直列多重電力変換装置は、直列多重マトリクスコンバータ装置であり、第1の実施の形態に係る直列多重インバータ装置とは、主として電力変換部が相違する。
【0058】
具体的には、図5に示すように、電力変換部50に設けられた電力変換器直列接続体が、図6に示す単位マトリクスコンバータ(単位電力変換装置の一例)U1a〜U3a、V1a〜V3a、W1a〜W3aにより少なくとも構成された単位マトリクスコンバータ直列接続体SUa、SVa、SWaとなっている。また予備単位電力変換器が、単位マトリクスコンバータU1a〜U3a、V1a〜V3a、W1a〜W3aと同様の構成の予備単位マトリクスコンバータSPaとなっている。
【0059】
ここで、単位マトリクスコンバータU1a〜U3a、V1a〜V3a、W1a〜W3a及び予備単位マトリクスコンバータSPaは、図6に示す双方向スイッチング素子52を制御することにより、入力トランス14の2次巻線34から入力端R、S、Tに供給された3相交流電力を直接、予め決められた周波数及び電圧の単相交流電力に変換して出力端T1、T2に出力することができる。
【0060】
電力変換部50における単位マトリクスコンバータU1a〜U3a、V1a〜V3a、W1a〜W3a、予備単位マトリクスコンバータSPa、並びに電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3、電磁接触器CUC1〜CUC3、CVC1〜CVC3、CWC1〜CWC3、電磁接触器CUN、CVN、CWN、及び電磁接触器CUS、CVS、CWSの接続関係は、第1の実施の形態に係る直列多重電力変換装置10が有する電力変換部20における接続関係と同様であるので、その説明は省略する。
【0061】
制御部(不図示)は、故障した単位マトリクスコンバータの出力をバイパスするように電磁接触器CUB1〜CUB3、CVB1〜CVB3、CWB1〜CWB3を開閉する。また、制御部は、故障した単位マトリクスコンバータを含む単位マトリクスコンバータ直列接続体の他端Bを、予備単位マトリクスコンバータSPaの出力端T2に接続するように各電磁接触器CUN、CVN、CWN及び各電磁接触器CUS、CVS、CWSを開閉する。
【0062】
ここで、本実施の形態に係る直列多重電力変換装置についても、前述の第1の実施の形態に係る直列多重電力変換装置10同様、制御部は、予備単位マトリクスコンバータSPaが運転可能か否かを確認してから、電力変換部50の運転(電力変換動作)を開始することができる。
【0063】
本実施の形態によれば、故障した単位マトリクスコンバータ直列接続体に代わる新たな単位マトリクスコンバータ直列接続体が形成されるので、直列多重電力変換装置は、1つの単位マトリクスコンバータが故障しても運転を継続することが可能である。また、予備単位マトリクスコンバータSPaの数は1台のみであるので、装置寸法の増大は抑えられる。
【0064】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
開閉器は、電磁接触器のような開閉器に限定されない。開閉器の他の一例として、半導体スイッチが挙げられる。
【0066】
第2の切替装置の他の例として、電力変換器直列接続体の他端を、それぞれ中性点N又は予備単位電力変換器の出力端の他端のいずれか一方に接続する切替スイッチとすることができる。
【0067】
予備単位インバータSPは、単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3に代替することができればよく、予備単位インバータSPの構造は単位インバータU1〜U3、V1〜V3、W1〜W3の構成と完全同一でなくてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10:直列多重電力変換装置、12:商用電源、14:入力トランス、20:電力変換部、22:制御部、32:1次巻線、34:2次巻線、36:交流負荷、37:光通信線、40:ダイオード整流回路、42:直流平滑コンデンサ、44:単相インバータ回路、46:片方向スイッチング素子、50:電力変換部、52:双方向スイッチング素子、SP:予備単位インバータ、SU、SV、SW:単位インバータ直列接続体、U1、U2、U3:単位インバータ、V1、V2、V3:単位インバータ、W1、W2、W3:単位インバータ、CUB1、CUB2、CUB3:電磁接触器、CVB1、CVB2、CVB3:電磁接触器、CWB1、CWB2、CWB3:電磁接触器、CUC1、CUC2、CUC3:電磁接触器、CVC1、CVC2、CVC3:電磁接触器、CWC1、CWC2、CWC3:電磁接触器、CUN、CVN、CWN:電磁接触器、CUS、CVS、CWS:電磁接触器、U1a、U2a、U3a:単位マトリクスコンバータ、V1a、V2a、V3a:単位マトリクスコンバータ、W1a、W2a、W3a:単位マトリクスコンバータ、SPa:予備単位マトリクスコンバータ、SUa、SVa、SWa:単位マトリクスコンバータ直列接続体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力側をそれぞれ直列接続構成とした複数の単位電力変換器で構成すると共に、一端Aを相出力として負荷に、他端Bを中性点Nにそれぞれ接続した複数の電力変換器直列接続体と、一方の出力端T1を前記中性点Nに接続し、前記単位電力変換器の代替となる単数の予備単位電力変換器と、前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合に故障した単位電力変換器の出力をバイパスするように構成した第1の切替装置と、前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合に前記故障した単位電力変換器の代わりに前記予備単位電力変換器を前記直列接続構成に接続するように構成した第2の切替装置と、を有した電力変換部と、
前記第1の切替装置及び前記第2の切替装置にそれぞれ開閉信号を出力して切替える制御部と、を備えたことを特徴とする直列多重電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の切替装置は、前記単位電力変換器のそれぞれの出力を個別にバイパスするように配置した第1の開閉器群を有し、
前記第2の切替装置は、前記電力変換器直列接続体の他端Bと前記中性点Nとを接続するように配置した第2の開閉器群と、前記予備単位電力変換器の他方の出力端T2を前記電力変換器直列接続体の他端Bに接続するように配置した第3の開閉器群とを有することを特徴とする請求項1に記載の直列多重電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記単位電力変換器がいずれも故障していない場合、前記第1の開閉器群及び前記第3の開閉器群に対して開信号を、前記第2の開閉器群に対して閉信号を出力し、
前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合、前記第1の開閉器群を構成する開閉器のうち、故障した単位電力変換器の出力をバイパスする開閉器のみに対して閉信号を、前記第2の開閉器群を構成する開閉器のうち、前記故障した単位電力変換器が存在する前記電力変換器直列接続体の他端Bに接続された開閉器のみに対して開信号を、前記第3の開閉器群を構成する開閉器のうち、前記故障した単位電力変換器が存在する前記電力変換器直列接続体の他端Bに接続された開閉器のみに対して閉信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の直列多重電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の切替装置は、前記各単位電力変換器の出力を前記相出力から切り離すことが可能な第4の開閉器群を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の直列多重電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記単位電力変換器がいずれも故障していない場合、前記第4の開閉器群に対して閉信号を出力し、
前記単位電力変換器のいずれか1つが故障した場合、前記第4の開閉器群を構成する開閉器のうち、前記故障した単位電力変換器の出力に接続された開閉器のみに対して開信号を出力することを特徴とする請求項4に記載の直列多重電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記予備単位電力変換器を運転する際、前記予備単位電力変換器に診断信号を送出し、前記予備単位電力変換器から内部状態信号を受信し、前記予備単位電力変換器が運転可能であることを確認してから、前記予備単位電力変換器を運転することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の直列多重電力変換装置。
【請求項7】
前記単位電力変換器が、複数の片方向スイッチング素子を有した単位インバータであることを特徴とする請求項1に記載の直列多重電力変換装置。
【請求項8】
前記単位電力変換器が、複数の双方向スイッチング素子を有した単位マトリクスコンバータであることを特徴とする請求項1に記載の直列多重電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147613(P2012−147613A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5464(P2011−5464)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】