説明

直動案内装置

【課題】ガイドレールを容易に固定部材により基台へ強固に固定可能であるとともに、スライダに対するケージのずれを確実に防止可能な直動案内装置を提供する。
【解決手段】ガイドレール2、スライダ4、複数の転動体6、ケージ8を備えた有限ストロークタイプの直動案内装置であって、ガイドレールには、基台に形成された固定穴と連通し、固定部材が挿通される取付孔2hが形成されているとともに、ガイドレールに沿って延出したラックギア2gがスライダとの対向部2aに設けられ、スライダには、その移動方向に沿って延出したラックギア4gがガイドレールとの対向部4aに、ガイドレール側ラックギアと互いの歯形部2j,4jを対向させて設けられているのに対し、ケージには、これらのラックギアの間に介在し、これらと相互に噛み合うピニオンギア8gが回転可能に取り付けられており、ガイドレール側のラックギアをガイドレールの取付孔を避けて位置付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、製造や検査などで各種の製品を移動させる直動案内装置に関し、特に転動体軌道(ストローク)が有限である直動案内装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、製造や検査などで各種の部品や製品を移動させる工作機械(テーブル装置など)が知られている。例えば、かかるテーブル装置は、基台と、当該基台に配設される直動案内装置と、当該直動案内装置に案内されて往復移動する移動テーブルと、当該移動テーブルを往復移動させるとともに、所定の位置で停止させるための位置決め機構などを備えて構成されている。
【0003】
この場合、直動案内装置には、所定方向(一例として、基台の長手方向)へ直線状に延出したガイドレールと、当該ガイドレールに沿って往復移動可能なスライダと、前記ガイドレールとスライダの間に介在し、当該ガイドレールに沿って転動する複数の転動体とが備えられている。そして、このように構成されたテーブル装置によれば、移動テーブルは、直動案内装置に案内されながら、位置決め機構(例えば、ボールねじ機構、ベルト機構及びリニアモータ機構など)によって往復移動可能となるとともに、所定の位置で停止可能となる。すなわち、かかるテーブル装置において、移動テーブルは、スライダを介してガイドレールに沿って往復移動可能となるとともに、所定の位置で停止可能となるように構成されている。
【0004】
また、このように転動体を使用した直動案内装置では、複数(一般的には、偶数)の転動体の列を線対称に配置することで、いろいろな方向からの荷重を受けられる構造としている。さらに、転動体に対して予圧を与えることで、ガタを無くすとともに、高い支持剛性を得ている。
【0005】
ところで、かかる直動案内装置は、いわゆる転動体軌道(ストローク)が無限となるタイプ(以下、無限ストロークタイプという)と、ストロークが有限となるタイプ(以下、有限ストロークタイプという)に大別することができる。なお、無限ストロークタイプの構成例は特許文献1に開示されており、有限ストロークタイプの構成例は特許文献2に開示されている。
【0006】
無限ストロークタイプにおいては、スライダをガイドレールに沿って移動させると、転動体が、スライダとガイドレールとの間に形成された転動路をガイドレールに対して所定速度(スライダとガイドレールの相対速度の約半分の速度)で、スライダの移動方向へ転動する。そのため、転動路を転動した各転動体は、やがて転動路の端から転出し、その後、エンドキャップの転換路を経由し、スライダをその移動方向へ貫通する転動体通路に転入される。そして、当該転動体通路をスライダの移動方向へ進んだ後、エンドキャップの転換路を経由して再び前記転動路に転出され、ここを転動する。なお、エンドキャップは、スライダの移動方向の両端にそれぞれ固定され、その内部に前記転動路と転動体通路とを相互に連通させる転換路が形成された部材のことを指す。
【0007】
このように無限ストロークタイプは、転動体が転換路及び転動体通路によって循環されるため、ガイドレールの延出長さと略同一距離だけスライダを往復移動させることができ、移動テーブルの移動距離を比較的長く設定することが可能であるという特長を有する。
【0008】
ところで、無限ストロークタイプは、転動体が移動しながら負荷圏(転動体が負荷を受けた状態となる、ガイドレールとスライダとの間に形成された転動路の部分)に出入りしている。そのため、転動体がスライダを押す力は転動体の移動とともに、その位置や大きさが変化している。複数ある転動体列の転動体同士が負荷圏と非負荷圏(転動体が負荷を受けることがない、転換路及び転動体通路の部分)との間を出入りするタイミングが合う場合には、この「転動体がスライダを押す力」は、転動体列同士で互いに打ち消し合う。
【0009】
しかしながら、無限ストロークタイプでは、各転動体列の転動体は、負荷圏と非負荷圏との間を出入りするタイミングが合うような拘束状態にはなく、各転動体列で転動体の位置はバラバラである。そのため、転動体列ごとの「転動体がスライダを押す力」が微妙に変化し、これらの力のバランスが微妙に崩れることとなり、結果として、スライダに微妙な運動精度誤差を生じさせる。この運動精度誤差は、「転動体通過振動」などと呼ばれている。
【0010】
このように転動体軌道の負荷圏(転動路)と非負荷圏(転換路)との間における各転動体列間での転動体の転入出タイミングのずれは、スライダの運動精度に影響を与える。例えば、スライダの運度精度の低下は、移動テーブルの位置決め精度や走り精度の低下を招く虞がある。
したがって、スライダを超高精度に移動させることが要求される工作機械(例えば、テーブル装置など)においては、その要求精度の程度によって、直動案内装置として無限ストロークタイプを採用できない場合がある。
【0011】
これに対し、有限ストロークタイプにおいては、図3(a)〜(c)に示すように、転動体(円筒ころ)50を1つずつそのポケット48p内に回転自在に保持する保持器(ケージ)48をガイドレール40とスライダ42との間に介在させ、転動体50が保持器48に保持された状態でガイドレール40とスライダ42との間に形成された転動路を転動する。この場合、各転動体50は、上述した無限ストロークタイプのように循環されることなく、転動体50がガイドレール40とスライダ42との間で負荷を受けた状態となる負荷圏では、ガイドレール40から常に荷重を受けた状態でケージ48のポケット48p内で回転しながら転動路を移動し、ケージ48を介してスライダ42をガイドレール40に沿って移動させる。なお、ケージ48は、転動体50を回転自在に保持するためのポケット48pが長手方向に沿って等間隔で複数個並んで形成された構造を成し、スライダ42の移動方向と同一方向へ当該スライダ42とともに移動されるが、その際の移動距離はスライダ42の移動距離の略半分となる。
【0012】
このような有限ストロークタイプでは、ケージ48によって各列の転動体50の位置を常に揃えておくことができるので、転動体50が負荷圏に出入りするタイミングを各列で揃えることができる。そのため、各々の列で転動体50がスライダ42を押す力が変動したとしても、その変動のタイミングを揃えることができるので、当該力の変動を複数の列で互いに打ち消し合わせ、転動体通過振動を小さく抑えることが可能である。
また、各転動体50は、ケージ48のポケット48pに1つずつ回転自在に保持されているため、相互に接触することがなく、常に安定して転動路を転動することができる。
【0013】
したがって、有限ストロークタイプは、転動体通過振動を抑えてスライダ42の運動精度を高めることができ、ひいては、移動テーブル(図示しない)を高精度に位置決めすることができる。
【0014】
しかしながら、かかる有限ストロークタイプにおいては、スライダがガイドレールに沿って往復移動を繰り返した場合、その移動速度の変動時や移動方向の転換時などに転動体がガイドレールの転動路を転動する際、当該転動体とガイドレール及びスライダとの間に極僅かなすべりが生じてしまう場合がある。そして、スライダがさらに往復運動を繰り返すと、かかる微小なすべりが重畳されることでケージのガイドレール及びスライダに対する相対的な位置が、本来あるべき位置に対して少しずつずれてしまう場合がある。
【0015】
そこで、このような有限ストロークタイプにおけるケージのずれを防止すべく、従来から各種の方策が講じられている。
例えば、特許文献2には、対向配置された一対のラック部材(ラックギア)とこれらのラック部材と噛合可能なピニオンギアを設けた直動案内装置(有限ストロークタイプ)の構成が一例として開示されている。
【0016】
かかる直動案内装置には、図4(a)〜(c)に示すように、ベッド(上述したガイドレールに相当)60とテーブル(上述したスライダに相当)62が対向して配置されており、保持器(ケージ)68のポケット内に保持された転動体(玉)70が当該保持器68とともにベッド60とテーブル62の間に介在されている。なお、ベッド60、テーブル62及び保持器68は、その断面形状がいずれも略U字状を成しており、ベッド60を覆った状態となるように保持器68が当該ベッド60の上に位置付けられているとともに、保持器68を覆った状態となるようにテーブル62が当該保持器68の上に位置付けられている。また、ベッド60の外側面とテーブル62の内側面にはそれぞれ転動体(玉)70を転動させる軌道溝60a,62aが対向して形成されており、当該軌道溝60a,62a間を保持器68に保持された状態で転動体(玉)70が転動することで、テーブル62がベッド60に沿って移動される構造となっている。
【0017】
そして、ベッド60及びテーブル62には、相互の対向面にラック部材64a,64bが対向してそれぞれ1つずつ設けられているとともに、保持器68には、これらのラック部材64a,64bと噛合可能なピニオンギア66が回転自在に取り付けられている。この場合、ラック部材64a,64bは、ベッド60及びテーブル62の幅方向(図4(a)の左右方向)の略中間位置に固定されているのに対し、ピニオンギア66は、保持器68の幅方向(同図の同一方向)且つ長手方向(移動方向)の中央部を貫通して形成された長孔内に位置付けられている。
【0018】
これにより、テーブル62をベッド60に沿って移動させると、その直線運動は、転動体(玉)70を介して保持器68に伝達され、当該保持器68がベッド60に沿って同一方向へ移動される。その際、保持器68に取り付けられたピニオンギア66は、ラック部材64a,64bと噛み合った状態で当該保持器68とともにベッド60に沿って移動する。
したがって、テーブル62が往復運動を繰り返し、その移動速度の変動時や移動方向の転換時に転動体(玉)70とベッド60及びテーブル62との間で微少なすべりが生じた場合であっても、保持器68は、ピニオンギア66がラック部材64a,64bと噛み合って回転するため、ベッド60に沿って移動する。このため、保持器68を転動体(玉)70とともに常に移動させることができ、テーブル62に対する保持器68の相対的な位置にずれが生じることを防止することができる。
【特許文献1】特開2005−180656号公報
【特許文献2】特許第2667516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このような構造を成す直動案内装置は、ベッド60がボルトにより基台(図示しない)に対して締結固定されている。図4(b),(c)に示す構成において、ベッド60には、その幅方向(同図(b)の上下方向)の中間位置に、ボルトを挿通して図示しない基台の固定穴と締結させるための貫通孔(ベッド取付孔)60hが長手方向に沿って所定間隔で形成されているとともに、テーブル62にも、その幅方向(同図(c)の上下方向)の中間位置に、当該ベッド貫通孔60hと連通可能なボルト挿通用の貫通孔(テーブル貫通孔)62hが形成されている(一例として、移動方向の前後に1つずつ)。なお、上述した保持器68の長孔(図示しない)は、ベッド取付孔60h及びテーブル貫通孔62hのいずれとも連通可能となるように形成されている。
【0020】
これにより、テーブル62及び転動体(玉)70を保持した状態の保持器68が組み付けられ、これらと一体化されたベッド60(以下、当該ベッドをベッドアセンブリ60という)を、この状態で基台(図示しない)に対してボルトにより締結固定することができる。すなわち、テーブル62、転動体(玉)70及び保持器68とベッド60が一体化された状態であっても、ベッド取付孔60h、テーブル貫通孔62h及び保持器68の長孔(図示しない)を連通させ、当該連通させた孔からボルトを挿通して基台(図示しない)の固定穴と締結させることで、ベッドアセンブリ60を基台(図示しない)に対して締結固定することができる。
【0021】
しかしながら、図4(b),(c)に示すように、ベッド取付孔60h、テーブル貫通孔62h及び保持器68の長孔(図示しない)がそれぞれベッド60、テーブル62及び保持器68の幅方向の中間位置に形成されている場合、ラック部材64a,64bは、ベッド取付孔60h及びテーブル貫通孔62hを塞ぐ形で配設されることとなる。このため、ラック部材64a,64bは、ベッドアセンブリ60を基台(図示しない)に対して固定した後、当該固定後のベッドアセンブリ60に対して配設する必要がある。
【0022】
その際、小型軽量な直動案内装置であれば、かかるラック部材64a,64bの配設作業はそれほど手間がかかることはないが、直動案内装置がその案内距離の長い大型のものである場合、ベッドアセンブリ60の基台(図示しない)に対する固定後にラック部材64a,64bを配設する作業は非常に手間を要し、かかる直動案内装置の工作機械(テーブル装置など)への組み付けは容易ではない。また、直動案内装置の組み付け後、すなわちラック部材64a,64bの配設後においても、例えば、ベッド60に形成したベッド取付孔60hやそのザグリが大きい場合など、ラック部材64aの当該ベッド取付孔60hやザグリにかかる部分が撓んで変形し易くなってしまう虞もある。
【0023】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、案内距離が長く、装置自体が大型化した場合であっても、スライダ、転動体及びケージを取り外すことなく組み付けた状態のまま、ガイドレールを容易に固定部材により基台へ強固に固定することが可能であるとともに、スライダに対するケージのずれをギア構造体によって確実に防止することが可能な直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような目的を達成するために、本発明の直動案内装置は、所定方向に延出し、基台に固定されるガイドレールと、当該ガイドレールに跨設され、その延出方向に沿って往復移動するスライダと、前記ガイドレールとスライダとの間に組み込まれ、当該スライダの移動に伴って転動する複数の転動体と、前記転動体を1つずつ回転自在に保持し、当該転動体の転動に伴って前記ガイドレールに沿って往復移動するケージとを備えている。かかる直動案内装置において、ガイドレールには、当該ガイドレールを貫通して基台に形成された固定穴と連通し、固定部材が挿通される複数の取付孔が形成されているとともに、当該ガイドレールに沿って延出したラックギアが前記スライダとの対向部に設けられ、スライダには、当該スライダの移動方向に沿って延出したラックギアが前記ガイドレールとの対向部に、前記ガイドレール側ラックギアと互いの歯形部を対向させて設けられているのに対し、ケージには、前記ガイドレール側のラックギアと前記スライダ側のラックギアとの間に介在し、これらと相互に噛み合うピニオンギアが回転可能に取り付けられており、前記ガイドレール側のラックギアは、当該ガイドレールの取付孔を避けるように位置付けられている。
【0025】
この場合、前記ガイドレール側のラックギアは、一対を成して前記ガイドレールの取付孔の両側へ当該ガイドレールに沿って設ければよい。あるいは、前記ガイドレールの取付孔の両側へ当該ガイドレールに沿って設けるとともに、当該取付孔を避けて一体的に延在させてもよい。
【0026】
また、前記ガイドレール側のラックギア及び前記スライダ側のラックギアは、前記ガイドレール及び前記スライダとは別体構造を成し、当該ガイドレール及び当該スライダに取り付けられることでこれらと一体化すればよい。
【0027】
なお、前記ピニオンギアは、一対を成し、前記ガイドレールの取付孔の両側へ当該ガイドレールに沿って設けられたガイドレール側ラックギア及びスライダ側ラックギアと相互に噛合しており、当該一対のピニオンギアの各回転軸が同一軸線上に位置付けられるように、前記ガイドレール側ラックギア及びスライダ側ラックギアとの間にそれぞれ介在している。
その際、前記一対のピニオンギアは、一本のシャフトで連結し、当該シャフトを回転軸として回転させればよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の直動案内装置によれば、案内距離が長く、装置自体が大型化した場合であっても、スライダ、転動体及びケージを取り外すことなく組み付けた状態のまま、ガイドレールを容易に固定部材により基台へ強固に固定することができるとともに、スライダに対するケージのずれをギア構造体によって確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態に係る直動案内装置について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明の直動案内装置としては、転動体軌道(ストローク)が有限である有限ストロークタイプを想定している。
図1(a),(b)及び図2(a),(b)には、本実施形態に係る直動案内装置の構成が示されている。かかる直動案内装置には、所定方向に延出し、基台(図示しない)に固定されるガイドレール2と、当該ガイドレール2に跨設され、その延出方向に沿って往復移動するスライダ4と、ガイドレール2とスライダ4との間に組み込まれ、当該スライダ4の移動に伴って転動する複数の転動体6と、転動体6を1つずつ回転自在に保持し、当該転動体6の転動に伴ってガイドレール2に沿って往復移動するケージ8とが備えられている。
【0030】
なお、転動体6は、例えば、直動案内装置の使用目的や使用条件などに応じて玉やころ(円筒ころ、円錐ころ及び球面ころなど)を任意に選択して使用することができるが、ここでは、一例として円筒ころが使用されている場合を想定する。また、転動体6の大きさ(直径)、形状及び個数は、直動案内装置(ガイドレール2、スライダ4及びケージ8)の大きさや形状、あるいはその使用目的や使用条件などに応じて任意に設定すればよいため、ここでは特に限定しない。
【0031】
ガイドレール2には、その上部にスライダ4と対向する平坦状の上部ガイド面2aが形成されているとともに、当該上部ガイド面2aの両側には、先細り状を成して内向きに傾斜した内向きガイド面2bと、当該内向きガイド面2bとは反対に先太り状(裾広がり状)を成して外向きに傾斜した外向きガイド面2cとが形成されている。なお、内向きガイド面2bと外向きガイド面2cとの間には、上部ガイド面2aに対して略直交する方向に延在した移行面2dが双方のガイド面2b,2cに連続して形成されている。
【0032】
また、ガイドレール2には、当該ガイドレール2を垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)に貫通して図示しない基台に形成された固定穴と連通し、図示しない固定部材(一例として、ボルト)が挿通される複数の取付孔2hが形成されている。この場合、基台には、固定穴が当該基台の長手方向に沿った直線上に所定間隔(一例として、等間隔)で所定の個数だけ形成されており、これらの固定穴とそれぞれ連通するように、当該固定穴と同数の取付孔2hがガイドレール2に対して形成されている。なお、各固定穴の内周部には、ボルトの螺旋状溝(雄ねじ部)と螺合する螺旋状の溝(雌ねじ部)が切られている。
【0033】
図1(a),(b)及び図2(a),(b)に示す構成においては、一例として、取付孔2hがガイドレール2の延出方向(図2(b)の左右方向)に沿って所定間隔(一例として、等間隔)で配設されているとともに、当該ガイドレール2の幅方向(図1(a),(b)の左右方向)の中間位置に配設されている。なお、各取付孔2hには、図示しないボルトの頭部を埋没させるためのザグリ2iが設けられている。
そして、これらの取付孔2hを通してボルト(図示しない)を固定穴(図示しない)にそれぞれ挿入し、各ボルトの雄ねじ部を各固定穴の雌ねじ部とそれぞれ螺合させることによって、ガイドレール2が基台(図示しない)に締結固定されている。
【0034】
ここで、固定穴(図示しない)及び取付孔2hの大きさや形状は、例えば、固定部材(ボルト)の大きさや形状などに応じて任意に設定すればよいため、特に限定しない。また、固定穴及び取付孔2hの個数は、例えば、直動案内装置の大きさ(例えば、ガイドレール2の長さ、幅や高さ)などに応じて任意に設定すればよいため、ここでは特に限定しない。なお、固定穴と取付孔2hとが連通可能となるように形成されていれば、固定穴と取付孔2hは、同数でなくともよい。また、固定部材としては、ガイドレール2を基台(図示しない)に固定することが可能な部材であれば、ボルトの他、例えば、ビスやリベットなどを適用してもよい。
【0035】
また、ガイドレール2には、当該ガイドレール2に沿って延出したラックギア(以下、下側ラックギアという)2gが上部ガイド面2aに設けられており、当該下側ラックギア2gは、図示しない固定部材(一例として、ボルト)が挿通される取付孔2hを避けるように(取付孔2hにかかることがないように)位置付けられている。なお、その際、下側ラックギア2gは、その歯形部2jが上向きとなり、後述するスライダ4の下向きスライダ面4aに設けられたラックギア(上側ラックギア)4gの下向きの歯形部4jと対向する。
【0036】
一例として、図1(a),(b)には、下側ラックギア2gが一対を成しており、当該一対の下側ラックギア2gを取付孔2hの両側へガイドレール2の延出方向に沿ってそれぞれ1本ずつ設けた構成が示されている。すなわち、ガイドレール2は、幅方向(図1(a),(b)の左右方向)の両側から取付孔2hを挟んだ状態で、一対(2本)の下側ラックギア2gが上部ガイド面2aに配設された構造となる。
【0037】
このような構造によれば、ガイドレール2に設けられた下側ラックギア2gが取付孔2hを塞ぐことがなく、ガイドレールに対する下側ラックギア2gの配設後であっても、当該ガイドレール2の取付孔2hを通してボルト(図示しない)を固定穴(図示しない)にそれぞれ挿入することができ、ガイドレール2を基台(図示しない)に対して締結固定させることができる。
また、下側ラックギア2gは、取付孔2hを避けるように(取付孔2hにかかることがないように)位置付けられているため、ガイドレール2に対する配設後に下側ラックギア2gが撓んで変形してしまうことを回避することができる。
【0038】
なお、この場合、図2(b)に示すように、下側ラックギア2gはガイドレール2の全長(延出長さ)に亘って設けられている。すなわち、下側ラックギア2gの全長(延出長さ)をガイドレール2の全長(延出長さ)と同一長に設定しているが、少なくともスライダ4の移動距離(ストローク)以上の長さであれば、その全長(延出長さ)は任意に設定することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、一例として、一対の下側ラックギア2gを取付孔2hの両側へそれぞれ1本ずつ設けた構成としているが、ガイドレール2の取付孔2hを避けるように(取付孔2hにかかることがないように)位置付けられている限り、下側ラックギア2gは、図1(a),(b)に示すような一対構成でなく、取付孔2hの両側へガイドレール2に沿って設けるとともに、当該取付孔2hを避けて一体的に延在させた(連続させた)構成としてもよい。
【0040】
例えば、ガイドレール2(上部ガイド面2a)の幅方向の両端に当該ガイドレール2へ沿ってそれぞれ延出させるとともに、隣り合う取付孔2hの間でこれらを接続させたはしご状を成すように下側ラックギアを構成してもよい。また、下側ラックギアを上部ガイド面2aの全面に亘る大きさとし、取付孔2hと同一の大きさ、形状、個数及び間隔で貫通孔を形成した孔あき状を成す構成としてもよい。なお、この際には、すべての取付孔2hをカバーする大きさの貫通孔を1つだけ形成してもよい。
【0041】
このような一体的に延在された構成とすることで、部品点数を削減することができ、直動案内装置の低コスト化を図ることができるだけでなく、ガイドレール2(上部ガイド面2a)の幅方向の両端で、下側ラックギアの歯形部にずれが生じることがなく、当該下側ラックギアを容易にガイドレール2(上部ガイド面2a)に対して配設することができる。
【0042】
なお、下側ラックギア2gは、ガイドレール2とは別体構造とし、下側ラックギア2gを単独の別部品として構成した後、ガイドレール2に取り付ける構造としてもよいし、成形後のガイドレール2に対して歯形部2jを形成するための加工(切削や研削など)を施すことで、ガイドレール2と一体化させた構造(一体構造)としてもよい。
【0043】
例えば、別体構造とした場合、下側ラックギア2gを各種の樹脂などで成形すれば、その製造コストを低減させることが可能となるとともに、その歯形部2jと後述するピニオンギア8gの歯形部8jとが噛み合う際に生じる噛合音を低減させることも可能となる。なお、この場合、下側ラックギア2gのガイドレール2に対する取り付けは、各種の締結部材(ボルトなど)による締結固定、接着や溶接等による接合固定など、任意の方法で行えばよい。
これに対し、一体構造とした場合、ガイドレール2に対して歯形部2jを形成するための加工(切削や研削など)を直接施すことができるため、当該ガイドレール2(下側ラックギア2g)の高さを抑制することができ、直動案内装置をコンパクト化することが可能となる。
【0044】
ケージ8は、その断面形状がガイドレール2の外郭形状に沿った形状を成し、当該ガイドレール2の延出方向に沿って延出されており、その両側に、ガイドレール2の内向きガイド面2bに沿って対向配置された内向き保持部8bと、外向きガイド面2cに沿って対向配置された外向き保持部8cとを備えている。なお、内向き保持部8bと外向き保持部8cとは、ガイドレール2の移行面2dに沿って対向配置された接続部8dを介して相互に一体的に接続されている。
【0045】
また、内向き保持部8b及び外向き保持部8cには、それぞれ複数の転動体(円筒ころ)6を1つずつ回転自在に保持する複数のポケット8pが一体的に形成されている。この場合、各ポケット8pは、ガイドレール2の延出方向に沿って(内向きガイド面2b及び外向きガイド面2cに沿って)互いに並列し、且つ等間隔で4列が互いに同位相となるように配置されている。さらに、双方の内向き保持部8bは、ガイドレール2の上部ガイド面2aに沿って位置付けられた連結部8aを介して相互に連結されている。かかる構成によれば、ケージ8は、複数のポケット8pが配置された領域全体に亘って、且つガイドレール2の延出方向に沿って一体的に連続した構造体となる。
【0046】
なお、本実施形態においては、図1(a),(b)に示すように、ケージ8に対して幅方向(同図の左右方向)の両側へ上下2列ずつ、合計4列(双方の内向き保持部8b及び外向き保持部8cにそれぞれ1列、合計4列)のポケット8pを形成しているが、ケージ8のポケット構成はこれに限定されない。例えば、ケージ8は、幅方向の両側へ1列ずつ、合計2列のポケット8pを形成した構成としてもよいし、両側へ3列以上ずつポケット8pを形成した構成としてもよい。その際、各ポケット8pは、ガイドレール2の延出方向に沿って互いに並列し、且つ等間隔で各列が互いに同位相となるように配置すればよい。また、各ポケット8pの大きさ及び形状は、転動体6の大きさ及び形状に応じて任意に設定すればよい。
【0047】
一方、スライダ4は、ケージ8に比べて短長にガイドレール2の延出方向に沿って延在しており、その内側は、ケージ8の外郭形状に沿った形状を成している。具体的には、スライダ4の内側には、ガイドレール2の上部ガイド面2aに沿って対向配置された下向きスライダ面4aと、ケージ8の内向き保持部8bに沿って対向配置された内向きスライダ面4bと、外向き保持部8cに沿って対向配置された外向きスライダ面4cとが形成されている。
【0048】
また、スライダ4には、当該スライダ4の移動方向に沿って延出したラックギア(以下、上側ラックギアという)4gが下向きスライダ面4aに設けられており、当該上側ラックギア4gは、その歯形部4jが下向きとなり、ガイドレール2に設けられた下側ラックギア2gの上向きの歯形部2jと対向するように位置付けられている。
【0049】
一例として、図1(a),(b)には、上側ラックギア4gが一対を成しており、当該一対の上側ラックギア4gをガイドレール2に設けられた一対の下側ラックギア2gと対向するようにそれぞれ1本ずつ設けた構成が示されている。これにより、それぞれ一対の下側ラックギア2gと上側ラックギア4gが互いの歯形部2j,4jをいずれも対向させて成るラックギア構造がガイドレール2の取付孔2hの両側へ当該ガイドレール2の延出方向に沿って一組ずつ、合計二組位置付けられた構成となる。
【0050】
なお、この場合、上側ラックギア4gはスライダ4の全長(延出長さ)に亘って設ければよい。すなわち、上側ラックギア4gの全長(延出長さ)をスライダ4の全長(延出長さ)と同一長に設定すればよい。
また、スライダ4の全長(延出長さ)とケージ8の全長(延出長さ)との割合は、ガイドレール2に沿ってスライダ4を移動させる距離(スライダストローク)に応じて設定すればよいため、ここでは特に限定しない。ただし、ケージ8の移動距離はスライダ4の移動距離(スライダストローク)の半分となるため、当該スライダ4の全長(延出長さ)にスライダストロークの半分以上の距離を加えた長さを、ケージ8に対して設定する必要がある。
【0051】
さらに、本実施形態においては、一例として、一対の上側ラックギア4gをガイドレール2に設けられた一対の下側ラックギア2gとそれぞれ対向するように設けた構成(二組のラックギア構造)としているが、その歯形部4jを下側ラックギア2gの歯形部2jと対向させるように位置付けられている限り、上側ラックギア4gは、図1(a),(b)に示すような一対構成でなくともよい。
【0052】
例えば、上側ラックギアをスライダ4の下向きスライダ面4aの全体に亘る大きさで1つだけ、スライダ4(下向きスライダ面4a)に対して配設した構成としてもよい。この際、かかる上側ラックギアに対し、取付孔2hと同一の大きさ、形状、個数及び間隔で貫通孔を形成してもよいし、すべての取付孔2hをカバーする大きさの貫通孔を1つだけ形成してもよい。
【0053】
このような一体的に延在された構成とすることで、部品点数を削減することができ、直動案内装置の低コスト化を図ることができるだけでなく、スライダ4(下向きスライダ面4a)の幅方向の両端で、上側ラックギアの歯形部にずれが生じることがなく、当該上側ラックギアを容易にスライダ4(下向きスライダ面4a)に対して配設することができる。
【0054】
なお、上側ラックギア4gは、スライダ4とは別体構造とし、上側ラックギア4gを単独の別部品として構成した後、スライダ4に取り付ける構造としてもよいし、成形後のスライダ4に対して歯形部4jを形成するための加工(切削や研削など)を施すことで、スライダ4と一体化させた構造(一体構造)としてもよい。
【0055】
例えば、別体構造とした場合、上側ラックギア4gを各種の樹脂などで成形すれば、その製造コストを低減させることが可能となるとともに、その歯形部4jと後述するピニオンギア8gの歯形部8jとが噛み合う際に生じる噛合音を低減させることも可能となる。なお、この場合、上側ラックギア4gのスライダ4に対する取り付けは、各種の締結部材(ボルトなど)による締結固定、接着や溶接等による接合固定など、任意の方法で行えばよい。
これに対し、一体構造とした場合、スライダ4に対して歯形部4jを形成するための加工(切削や研削など)を直接施すことができるため、当該スライダ4(上側ラックギア4g)の高さを抑制することができ、直動案内装置をコンパクト化することが可能となる。
【0056】
また、ケージ8には、ガイドレール2に設けられた下側ラックギア2gとスライダ4に設けられた上側ラックギア4gとの間に介在し、これらと相互に噛み合うピニオンギア8gが回転可能に取り付けられている。
【0057】
一例として、図1(a),(b)及び図2(a),(b)には、ピニオンギア8gが一対を成しており、当該一対のピニオンギア8gがいずれも一対の下側ラックギア2gと上側ラックギア4g(二組のラックギア構造)の間にそれぞれ1つずつ、各ピニオンギア8gの回転軸が同一軸線上に位置付けられるように介在され、当該各ピニオンギア8gの歯形部8jを下側ラックギア2gの歯形部2j及び上側ラックギア4gの歯形部4jとそれぞれ相互に噛み合わせたギアの構成(ラックアンドピニオンギア構成)が示されている。
これにより、ピニオンギア8gは、歯形部8jが下側ラックギア2g及び上側ラックギア4gの歯形部2j,4jとそれぞれ相互に噛み合った状態で、双方のラックギア2g,4gに沿って、すなわちガイドレール2に沿って回転しながら移動する構造を成す。
【0058】
この場合、一対のピニオンギア8gは、ケージ8の連結部8aに回転自在に支持された一本のシャフト8sで連結されており、当該シャフト8sを回転軸として回転している。これにより、2つのピニオンギア8gがシャフト8sでつながれた連結体となるため、ピニオンギア8gをケージ8の連結部8aに取り付ける際の取り回しが容易となる。なお、シャフト8sは、例えば、連結部8aを幅方向(図1(a),(b)の左右方向)に貫通する支持孔を形成し、当該支持孔にシャフト8sを挿通することで回転自在に支持してもよいし、連結部8aに設けた軸受によって回転自在に支持してもよい。
【0059】
また、シャフト8sを連結部8aに固定するとともに、2つのピニオンギア8gをいずれもシャフト8sに対して回転自在に支持するようにして、それぞれ単独で回転させる構成としてもよいし、前記のようにシャフト8を回転自在とし、2つのピニオンギア8gをシャフト8sに対して固定することにより、同時に回転させる構成としてもよい。
【0060】
また、一対のピニオンギア8gの間には円筒状のスペーサ8tが介在され、これらのピニオンギア8gが所定間隔を常に維持した状態で回転可能な構成となっている。その際、スペーサ8tは、その幅(図1(a)の左右方向の距離)が下側ラックギア2gと上側ラックギア4gとの間隔と略同一に設定されるとともに、その内径がシャフト8sの径寸法よりも僅かに大きくなるように設定され、当該シャフト8sに挿入されている。
【0061】
なお、一対のピニオンギア8gをそれぞれ単独で回転させる構成とした場合、例えば、直動案内装置の稼動中に、瞬間的にケージ8が歪んでシャフト8sが傾いたとしても、ピニオンギア8gは、一対の下側ラックギア2g及び上側ラックギア4g(二組のラックギア構造)と独立して噛み合うため、噛み合い不良による摺動抵抗の増加を有効に防止することができる。
これに対し、同時に回転させる構成とした場合、一対のピニオンギア8gを、二組のラックギア構造に対して同時に噛合可能な幅に設定した1つの構成(1つのピニオンギアにまとめた構成)とすることが可能となる。この結果、部品点数を削減することができ、直動案内装置の低コスト化を図ることができる。
【0062】
いずれの場合も、一対のピニオンギア8gをケージ8本体より剛性の高い1本のシャフト8sに組み合わせる(例えば、ケージ8本体を成形性に優れ、比較的剛性の高い合成樹脂製とし、シャフト8sをさらに剛性の高い鋼などの金属製とする)ようにすれば、ピニオンギア8g同士の傾きを抑制することができる。
【0063】
また、上述した構成においては、図1(a)に示すようにスペーサ8tを独立部品として一対のピニオンギア8gの間に介在させているが、スペーサ8tはシャフト8sやピニオンギア8gと一体化させた構造としてもよい。例えば、シャフト8sの中間位置をスペーサ8tの大きさ(外径及び幅)で拡径させた構成とすればよい。
【0064】
さらに、本実施形態においては、一例として、一対のピニオンギア8gを一対の下側ラックギア2g及び上側ラックギア4gの間(二組のラックギア構造)にそれぞれ1つずつ介在させた構成としているが、各ピニオンギア8gの歯形部8jが双方のラック2g,4gの歯形部2j,4jと相互に噛合可能である限り、介在させるピニオンギア8gは1つずつでなくともよい。
例えば、各ラックギア構造にそれぞれ2つずつ、あるいはそれ以上ずつ介在させてもよい。また、幅方向の一端側に位置付けられたラックギア構造(ラックギア2g,4g間)に介在するピニオンギア8gの数と、他端側に位置付けられたラックギア構造(ラックギア2g,4g間)に介在するピニオンギア8gの数が異なっていてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、一例として、ピニオンギア8gをケージ8の延出方向の略中間位置に取り付けているが、その取り付け位置は必ずしも当該中間位置でなくともよく、延出方向のいずれか一方寄りにピニオンギア8gを取り付けてもよい。あるいは、一対等のピニオンギア8g、シャフト8s及びスペーサ8tから成るユニット体を、ケージ8の延出方向へ離間して2箇所以上に設けるようにしてもよい。なお、各ラックギア構造(各ラックギア2g,4g間)に複数のピニオンギア8gを介在させる場合、これらのピニオンギア8gは所定間隔(例えば、等間隔)でケージ8に対して取り付ければよい。
【0066】
なお、ピニオンギア8gの材質は特に限定されず、相互に噛み合う下側ラックギア2g及び上側ラックギア4gの材質などに応じて、例えば、ピニオンギア8gは、各種の樹脂製(プラスチック製等)や金属製(真鍮などのいわゆる引き抜き材等)などとすればよい。
【0067】
ここで、上述したような下側ラックギア2g及び上側ラックギア4g、並びにこれらと相互に噛み合うピニオンギア8gで構成されるラックアンドピニオンギア構造体(以下、ギア構造体という)の大きさ及び形状は、下側ラックギア2gがガイドレール2の取付孔2hにかかることがないように位置付けられている限り、直動案内装置の大きさなどに応じて、各ラックギア2g,4gとピニオンギア8gとが相互に噛合可能となるように、相対的に設定すればよい。その際、各ラックギア2g,4gの歯形部2j,4j及びピニオンギア8gの歯形部8jをそれぞれ構成する山の形状や高さ、谷の形状や深さ、及び山と谷の数やピッチなども、これらが相互に噛合可能となるように相対的に設定すればよい。
【0068】
また、かかるギア構造体の数は、図1(a),(b)に示すような幅方向(同図の左右方向)の両端にそれぞれ1つずつ配設した一対構成でなくともよく、例えば、幅方向のいずれか一端側にのみ、当該ギア構造体を配設した構成としてもよい。
【0069】
以上、説明したような構成によれば、ガイドレール2とスライダ4との間にケージ8(各ポケット8p)に保持された複数の転動体(円筒ころ)6を組み込んだ状態において、各転動体(円筒ころ)6は、その転動面が内向きガイド面2bと内向きスライダ面4bとの間、及び外向きガイド面2cと外向きスライダ面4cとの間を回転しながら移動する。この場合、スライダ4をガイドレール2に沿って移動させると、その直線運動は、各転動体(円筒ころ)6を介してケージ8に伝達され、当該ケージ8をガイドレール2に沿って同一方向へ移動させる。これにより、スライダ4を所定方向(ガイドレール2の延出方向)に案内して所定距離だけ移動させることができる。なお、その際のスライダ4の移動距離は、ケージ8の移動距離の2倍となる。
【0070】
一方、ケージ8がガイドレール2に沿って移動すると、当該ケージ8の連結部8aに取り付けられたピニオンギア8gは下側ラックギア2g及び上側ラックギア4gと相互に噛み合った状態、具体的には、歯形部8jを歯形部2j,4jと相互に噛み合わせた状態で、ケージ8とともに移動する。
【0071】
したがって、スライダ4が往復運動を繰り返し、その移動速度の変動時や移動方向の転換時に転動体(円筒ころ)6とガイドレール2及びスライダ4との間で微小なすべりが生じた場合であっても、ケージ8は、ピニオンギア8gがラックギア2g,4gと噛み合って回転するため、ガイドレール2に沿って移動する。このため、ケージ8を転動体(円筒ころ)6とともに常に移動させることができ、ガイドレール2及びスライダ4に対するケージ8の相対的な位置にずれが生じることを防止することができる。すなわち、ケージ8をガイドレール2及びスライダ4に対して本来あるべき位置に維持した状態のまま、これらとともに常に移動させることができる。
【0072】
加えて、本実施形態によれば、ガイドレール2に対する下側ラックギア2gの配設後であっても、ガイドレール2に設けられた下側ラックギア2gが取付孔2hを塞いでしまうことがない。
したがって、スライダ4及び転動体(円筒ころ)6を保持した状態のケージ8が組み付けられるとともに、一対の下側ラックギア2g及び上側ラックギア4gの間(二組のラックギア構造)にピニオンギア8gをそれぞれ介在させて歯形部2j,4j,8jを相互に噛み合わせ、これらと一体化されたガイドレール2(以下、当該ガイドレール2をレールアセンブリという)を、この状態で基台(図示しない)に対してボルトにより締結固定することができる。
【0073】
すなわち、かかるレールアセンブリにおいては、スライダ4及びケージ8を適宜ガイドレール2に沿って移動させて取付孔2hを露出させ、当該取付孔2hからボルトを図示しない基台の固定穴に挿入して締結させることができる。そして、当該締結作業をすべての固定穴に対して行うことで、レールアセンブリ、すなわち直動案内装置をボルトによって基台(図示しない)に対して強固に固定することができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る直動案内装置によれば、案内距離が長く、装置自体が大型化した場合であっても、スライダ4、転動体6及びケージ8を取り外すことなく組み付けた状態のまま、ガイドレール2を容易にボルトにより基台(図示しない)へ強固に固定することができるとともに、スライダ4に対するケージ8のずれをギア構造体によって確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る直動案内装置の構成を示す図であって、(a)は、ピニオンギアの取付位置における断面図(図2(b)に示すX−X線に沿った断面図)、(b)は、ピニオンギアの取付位置以外における断面図(同図に示すY−Y線に沿った断面図)。
【図2】本発明の一実施形態に係る直動案内装置の構成を示す図であって、(a)は、ラックギアとピニオンギアとが噛合した状態を示す断面図、(b)は、直動案内装置の全体構成を示す部分断面機構図。
【図3】従来の直動案内装置の構成例を示す図であって、(a)は、上面図、(b)は、平面図、(c)は、側面図。
【図4】従来の直動案内装置の構成例を示す図であって、(a)は、ピニオンギアの取付位置における半断面図、(b)は、装置全体の下面図、(c)は、装置全体の上面図。
【符号の説明】
【0076】
2 ガイドレール
2a 上部ガイド面
2g 下側ラックギア
2h 取付孔
2j 下側ラックギア歯形部
4 スライダ
4a 下向きスライダ面
4g 上側ラックギア
4j 上側ラックギア歯形部
8 ケージ
8g ピニオンギア
8j ピニオンギア歯形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延出し、基台に固定されるガイドレールと、当該ガイドレールに跨設され、その延出方向に沿って往復移動するスライダと、前記ガイドレールとスライダとの間に組み込まれ、当該スライダの移動に伴って転動する複数の転動体と、前記転動体を1つずつ回転自在に保持し、当該転動体の転動に伴って前記ガイドレールに沿って往復移動するケージとを備えた直動案内装置であって、
ガイドレールには、当該ガイドレールを貫通して基台に形成された固定穴と連通し、固定部材が挿通される複数の取付孔が形成されているとともに、当該ガイドレールに沿って延出したラックギアが前記スライダとの対向部に設けられ、スライダには、当該スライダの移動方向に沿って延出したラックギアが前記ガイドレールとの対向部に、前記ガイドレール側ラックギアと互いの歯形部を対向させて設けられているのに対し、ケージには、前記ガイドレール側のラックギアと前記スライダ側のラックギアとの間に介在し、これらと相互に噛み合うピニオンギアが回転可能に取り付けられており、前記ガイドレール側のラックギアは、当該ガイドレールの取付孔を避けるように位置付けられていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記ガイドレール側のラックギアは、一対を成して前記ガイドレールの取付孔の両側へ当該ガイドレールに沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記ガイドレール側のラックギアは、前記ガイドレールの取付孔の両側へ当該ガイドレールに沿って設けられているとともに、当該取付孔を避けて一体的に延在されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記ガイドレール側のラックギア及び前記スライダ側のラックギアは、前記ガイドレール及び前記スライダとは別体構造を成し、当該ガイドレール及び当該スライダに取り付けられることでこれらと一体化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記ピニオンギアは、一対を成し、前記ガイドレールの取付孔の両側へ当該ガイドレールに沿って設けられたガイドレール側ラックギア及びスライダ側ラックギアと相互に噛合しており、当該一対のピニオンギアの各回転軸が同一軸線上に位置付けられるように、前記ガイドレール側ラックギア及びスライダ側ラックギアとの間にそれぞれ介在していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の直動案内装置。
【請求項6】
前記一対のピニオンギアは、一本のシャフトで連結され、当該シャフトを回転軸として回転していることを特徴とする請求項5に記載の直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−286321(P2008−286321A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132585(P2007−132585)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】