説明

直動案内装置

【課題】簡易な構成で、案内レールとスライダとの間の粉塵を効率的に排出し、省エネルギー化及び省スペース化を実現する直動案内装置を提供する。
【解決手段】案内レール2と、スライダ3と、案内レール2及びスライダ3にそれぞれ形成された転動体転動溝2a,3a間に挿入された転動体6と、案内レール2とスライダ3との間の粉塵を吸引する吸引手段10とを有し、吸引手段10が、貫通した管形状の容量可変部11と、第1の逆止弁12及び第2の逆止弁13とを有して、第1の逆止弁12を介して容量可変部11に連結されたスライダ3が案内レール2に対して摺動することにより、容量可変部11の容積が変化することで負圧を発生させて、第2の逆止弁13側から案内レール2とスライダ3との間の粉塵を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム等の清浄な環境での使用に適した直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造工場のようなクリーン環境にて直動案内装置を使用する場合、直動案内装置の潤滑グリースが蒸発したり、転動体の転動により発生した磨耗粉が飛散したりすることにより、雰囲気を汚染するという問題が生じることがあった。
そこで、このような問題に対応した直動案内(リニアガイド)装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
図5は、特許文献1に記載されたリニアガイド装置の構成を示す図であり、(a)は一部を切断した状態の正面図、(b)は側面図である。
図5(a),(b)に示すように、特許文献1に記載されたリニアガイド装置100は、長尺のレール101と、スライダ110と、転動体150とを有してなる。レール101の軸方向には、転動溝102が形成されている。スライダ110には、転動溝102に対向する転動溝112が形成されている。転動体150は、転動溝102と転動溝112との間で転動可能に嵌合される。スライダ110は、転動体150を介してレール101の軸方向に摺動可能に設置される。
【0004】
また、スライダ110は、外面に開口する気体吸引手段接続口160を有している。スライダ110の側板120は、レール101に嵌りこみレール101と僅かな隙間を介して対向する内面部分にスリット状の気体吸入口170を有している。そして、気体吸引手段接続口160と気体吸入口170とは、スライダ110の内部にて連通されている。具体的には、スライダ110の内部に形成された貫通穴161,162、及び側板120に形成された貫通穴163によって気体吸引手段接続口160と気体吸入口170とが連通されている。
【0005】
このように構成されたリニアガイド装置100は、気体吸引手段接続口160に真空ポンプなどを接続することにより、気体吸入口170からその周辺雰囲気を吸引し、スライダ110の内部に発生した粉塵(グリースの蒸発したもの、磨耗粉等)を吸引し、スライダ110の外部へ排出することで、雰囲気の汚染を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平03−020575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のリニアガイド装置をはじめとする従来の直動案内装置においては、スライダ内部に発生した粉塵を排出するための吸引装置を追加設置する必要があった。従って、従来の直動案内装置においては、粉塵を吸引するためのポンプ等の動力を新たに追加する結果として、大型化によるコスト増大や、構成の複雑化によってもたらされる作業効率の悪化という問題を生じることがあった。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、案内レールとスライダとの間の粉塵を効率的に排出し、省エネルギー化及び省スペース化を実現する直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、両側部に軸方向に延びる転動体転動溝を有して軸方向に延長された案内レールと、該案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有し、これらの両転動体転動溝間に挿入された転動体の転動を介して軸方向に沿って相対移動可能に前記案内レールに跨架されたスライダと、前記案内レールと前記スライダとの間の粉塵を吸引する吸引手段とを有する直動案内装置であって、
前記吸引手段は、貫通した容量可変部と、該容量可変部の一方の開口部近傍に設けられ、前記容量可変部の内部に外部から加圧されたときに開く第1の逆止弁と、前記容量可変部の他方の開口部近傍に設けられ、前記容量可変部の内部から外部に加圧されたときに開く第2の逆止弁とを有して、前記案内レールと前記スライダとの間の空間に貫通する貫通穴が前記スライダの移動方向の少なくとも一方の端部に形成され、該貫通穴が前記一方の開口部に連結された前記スライダが前記案内レールに対して摺動することにより、前記容量可変部の容積が変化することで負圧を発生させて、前記他方の開口部から前記案内レールと前記スライダとの間の粉塵を排出することを特徴としている。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、スライダの内部に発生した粉塵を排出するための動力として、スライダの往復に伴って負圧を発生させて、前記スライダの内部に発生した粉塵を排出する吸引手段を備えたので、大がかりな吸引装置を追加設置することなく、スライダ内部からの流体の吸引を行うことができるので、省エネルギー化及び省スペース化を実現する直動案内装置を提供することができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の直動案内装置において、前記スライダの貫通穴が前記スライダの移動方向に沿って前記スライダを貫通して形成され、2つの前記吸引手段のそれぞれの前記一方の開口部を前記貫通穴の両端に連結したことを特徴としている。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の直動案内装置において、前記スライダが前記案内レール上に複数配置され、前記スライダの貫通穴が前記スライダの移動方向に沿って前記スライダを貫通して形成され、該複数のスライダの外側に配置された2つのスライダの外側に位置するそれぞれの前記貫通穴に前記吸引手段の前記一方の開口部が連結され、前記複数のスライダの前記吸引手段と連結された前記貫通穴の端部以外の端部同士がチューブによって連結されたことを特徴としている。
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の直動案内装置において、前記容量可変部が、ジャバラ、ピストン及びシリンダー、並びにテレスコピックカバーのいずれかであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スライダの内部に発生した粉塵を排出するための動力として、スライダの往復に伴って負圧を発生させて、前記スライダの内部に発生した粉塵を排出する吸引手段を備えたので、大がかりな吸引装置を追加設置することなく、スライダ内部からの流体の吸引を行うことができるので、省エネルギー化及び省スペース化を実現する直動案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る直動案内装置の第1の実施形態における構成を示す図であり、(a)は一部を切断した状態の正面図、(b)は(a)の1b−1b線に沿う断面図、(c)は吸引手段が伸長したときの正面断面図、(d)は吸引手段が収縮したときの正面断面図である。
【図2】本発明に係る直動案内装置の第1の実施形態における吸引手段の構成の変形例を示す正面断面図であり、(a)は吸引手段が収縮したときの正面断面図、(b)は吸引手段が伸長したときの正面断面図である。
【図3】本発明に係る直動案内装置の第2の実施形態における構成を示す一部を切断した状態の正面図であり、(a)は一方の吸引手段が収縮し、他方の吸引手段が伸長したときの正面断面図、(b)は一方の吸引手段が伸長し、他方の吸引手段が収縮したときの正面断面図である。
【図4】本発明に係る直動案内装置の第3の実施形態における構成を示す一部を切断した状態の正面図である。
【図5】従来の直動案内装置の構成を示す一部を切断した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る直動案内装置の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る直動案内装置の第1の実施形態の構成を示す図であり、(a)は一部を切断した状態の正面図、(b)は(a)の1b−1b線に沿う断面図、(c)は吸引手段が伸長したときの正面断面図、(d)は吸引手段が収縮したときの正面断面図である。
【0015】
図1(a),(b)に示すように、直動案内装置1は、長尺の案内レール2と、スライダ3と、転動体4とを有してなる。案内レール2の両側部には、軸方向に延びる転動溝2aが形成されている。スライダ3は、スライダ本体3Aと、該スライダ本体3Aの軸方向の両端に設置されたエンドキャップ5,5とを有する。スライダ3には、転動溝2aに対向する転動溝3aが形成されている。
【0016】
両転動体転動溝2a,3aの間には多数の転動体4が転動自在に装填され、これらの転動体4の転動を介してスライダ3が案内レール2上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
案内レール2に対してスライダ3が摺動する動作につれて、案内レール2とスライダ3との間に介在する転動体4は転動してスライダ3の軸方向の端部に移動するが、スライダ3を軸方向に継続移動させていくためには、これらの転動体を無限に循環させる必要がある。
【0017】
このため、スライダ本体3Aの袖部3B内には、軸方向に貫通する孔6が形成され、該孔6に内部が転動体4の通路(転動体通路)7aとされた循環チューブ7が嵌め込まれる。そして、スライダ本体3Aの軸方向の両端には、それぞれ転動体循環部品としての一対のエンドキャップ5,5が、ねじ等を介して固定される。これらのエンドキャップ5、5には、両転動体転動溝2a,3a間と転動体通路7aとを連通する半円弧状に湾曲した方向転換路(図示せず)が形成される。これにより、転動体の無限循環軌道が形成される。
【0018】
また、スライダ3には、スライダ本体3Aの下面と、スライダ本体3Aのエンドキャップ5側の面とを連通する貫通穴3Cが形成されている。さらに、エンドキャップ5には、スライダ3の外側と、エンドキャップ5のスライダ本体3A側の面とを貫通する貫通穴5aが形成されている。
また、図1(c),(d)に示すように、吸引手段10は、周面がジャバラをなして両開口方向に収縮可能な管形状の容量可変部11と、該容量可変部11の内部に設けられる第1の逆止弁12及び第2の逆止弁13とを有する。容量可変部11の一方の開口部11aは、貫通穴5aに連結される。また、容量可変部11の他方の開口部11bは、図示しない外部装置(例えば、粉塵貯留タンク)に連結される。なお、本実施形態では、一方の開口部11a及び他方の開口部11bのそれぞれの内径は、容量可変部11の内径とほぼ同じく設定される。
【0019】
ここで、容量可変部11は、ジャバラに限られず、ピストン及びシリンダーによるユニット、並びにテレスコピックカバーのいずれかであってもよい。また、容量可変部11の形状は管形状に限られず、四角形状等でも良く特に限定されない。
第1の逆止弁12は、一方の開口部11aの内径とほぼ同じ外径をなす本体部12aと、一方の開口部11aを塞いだ状態から本体部12aを容量可変部11の内部側に回動させるために一方の開口部11a近傍に設けられたヒンジ12bと、本体部12aを一方の開口部11aを塞いだ状態に維持するストッパー12cとを有する。すなわち、第1の逆止弁12は、容量可変部11の外部から内部に加圧されたときに内部に向かって開き、通常は、一方の開口部11aを塞ぐように容量可変部11に設置されている。
【0020】
第2の逆止弁13は、他方の開口部11bの内径とほぼ同じ外径をなす本体部13aと、他方の開口部11bを塞いだ状態から本体部13aを容量可変部11の外部側に回動させるために他方の開口部11b近傍に設けられたヒンジ13bと、本体部13aを他方の開口部11bを塞いだ状態に維持するストッパー13cとを有する。すなわち、第2の逆止弁13は、容量可変部11の内部から外部に加圧されたときに開き、通常は、他方の開口部11bを塞ぐように容量可変部11に設置されている。
【0021】
このように構成された吸引手段10は、一方の開口部11aに連結されたスライダ3が案内レール2に対して摺動して容量可変部11を、その長さ方向(両開口部11a,11bを結ぶ方向)に変位させることにより、容量可変部10の容積を変化させ、容量可変部11内に負圧を発生させて、他方の開口部11bから案内レール2とスライダ3との間の粉塵を排出する。
【0022】
具体的には、図1(c),(d)に示すように、下記(1)及び(2)を繰り返すことで案内レール2とスライダ3との間の粉塵を外部に排出する。
(1)案内レール2に対してスライダ3が、吸引手段10と反対側に移動することによって、スライダ3が吸引手段10を引っ張り、容量可変部11が伸長したとき、第2の逆止弁13は第2の開口部11bを塞いだままで、第1の逆止弁12が開いて、スライダ3内(案内レール2とスライダ3との間)の空気が第1の開口部11aを通って容量可変部11内に流入してくる。
(2)案内レール2に対してスライダ3が、吸引手段10側に移動することによって、スライダ3が吸引手段10を押圧し、容量可変部11が縮むとき、第1の逆止弁12は第1の開口部11aを塞いだままで、第2の逆止弁13が開いて、容量可変部11内の空気は第2の開口部11bを通って図示しない外部装置に排出される。
従って、上記(1)の動作によって容量可変部11内に流入してきた案内レール2とスライダ3との間の粉塵は、上記(2)の動作によって図示しない外部装置に排出される。
【0023】
図2は、本実施形態における吸引手段の構成の変形例を示す正面断面図であり、(a)は吸引手段が収縮したときの正面断面図、(b)は吸引手段が伸長したときの正面断面図である。本実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、逆止弁の構造が相違するだけであるので、上述した第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0024】
図2(a),(b)に示すように、本実施形態では、容量可変部11の両開口部11a,11bを閉塞可能に設置される第1の逆止弁12及び第2の逆止弁13の構成が前述の第1の実施形態と異なる。
第1の逆止弁12は、本体部12aと、保持手段12eと、付勢手段12fとを有する。なお、本実施形態の変形例では、一方の開口部11a及び他方の開口部11bのそれぞれの内径が、容量可変部11の内径よりも小さく設定される。
【0025】
本体部12aは、一方の開口部11aの内側に配置され、一方の開口部11aの内径より大きい外径をなして、容量可変部11の内部側に突出するガイド部12dを備える。保持手段12eは、本体部12aが容量可変部11の長さ方向に摺動可能とされるようにガイド部12dを保持する部材である。付勢手段12fは、保持手段12e及び本体部12aの内側の面(保持手段12eに対向する側の面)に挟まれて設置され、一方の開口部11aを塞いだ状態から容量可変部11の内部側に加圧移動する本体部12aに対して付勢する部材である。付勢手段12fは、例えばコイルスプリング等の弾性体である。すなわち、第1の逆止弁12は、容量可変部11の外部から内部に加圧されたときに本体部12aが付勢手段12fに抗って開き、通常は、付勢手段12fの付勢力により一方の開口部11aを塞ぐように容量可変部11に設置されている。
【0026】
第2の逆止弁13は、本体部13aと、保持手段13eと、付勢手段13fとを有する。本体部13aは、他方の開口部11bの外側(図示しない外部装置側)に配置され、他方の開口部11bの内径より大きい外径をなして、図示しない外部装置側に突出するガイド部13dを備える。保持手段13eは、本体部13aが容量可変部11の長さ方向に摺動可能とされるようにガイド部13dを保持する部材である。付勢手段13fは、保持手段13e及び本体部13aの外側の面(保持手段13eに対向する側の面)に挟まれて設置され、他方の開口部11bを塞いだ状態から容量可変部11の外部側に加圧移動する本体部13aに対して付勢する部材である。付勢手段13fは、例えば弾性体である。すなわち、第2の逆止弁13は、容量可変部11の内部から外部に加圧されたときに本体部13aが付勢手段13fに抗って開き、通常は、付勢手段13fの付勢力により他方の開口部11bを塞ぐように容量可変部11に設置されている。
このように構成された吸引手段10では、第1の逆止弁12及び第2の逆止弁13がそれぞれ、ガイド部12d,13d及び付勢手段12f,13fによってスムーズに摺動可能な構成とされているので、案内レール2とスライダ3との間の粉塵を排出する効率が向上する。
【0027】
(第2の実施形態)
図3は本発明に係る直動案内装置の第2の実施形態における構成を示す一部を切断した状態の正面図であり、(a)は一方の吸引手段が収縮し、他方の吸引手段が伸長したときの正面断面図、(b)は一方の吸引手段が伸長し、他方の吸引手段が収縮したときの正面断面図である。本実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、吸引手段の構成が相違するだけであるので、上述した第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0028】
図3(a),(b)に示すように、本実施形態の直動案内装置1は、吸引手段10a,10bがスライダ3の前後端部にそれぞれ取付けられている。具体的には、両端のエンドキャップ5,5には、スライダ3の外側と、エンドキャップ5,5のスライダ本体3A側の面とを貫通する貫通穴5a,5bがそれぞれ形成されている。また、スライダ3には、スライダ本体3Aの下面と、スライダ本体3Aのエンドキャップ5,5側の面とを連通する貫通穴3Cが形成されている。すなわち、貫通穴3Cは、貫通穴5a,5bを介して吸引手段10a,10bに連通している。
【0029】
前述の第1の実施形態のように、スライダ3の片側のみに吸引手段10を取り付けた場合、スライダ3が1往復することでスライダ3からの空気の吸引と外部への粉塵の排出とが行われる。しかし、スライダ3の両端に吸引手段10a,10bをそれぞれ取り付けることで、一方の吸引手段10aがスライダ3の内部から当該吸引手段10a内へ空気を吸引し、他方の吸引手段10bから外部への粉塵の排出と、スライダ3が移動している間中、常にスライダ3内から空気の吸引を行うことができ、また、吸引の量も増加させることができる。
【0030】
また、スライダ3の一方に吸引手段10aを取り付け、他方に圧送装置を取付けることで、スライダ3内への吸引と圧送を同時に行うことができる。吸引と圧送を同時に行うことで、スライダ3の内部で発生した粉塵をスライダ3の内部の空気と共に吸引するとともに、スライダ3の外部から粉塵のない洗浄された空気をスライダ3の内部へ供給できるようになる。
【0031】
(第3の実施形態)
図4は本発明に係る直動案内装置の第3の実施形態における構成を示す一部を切断した状態の正面図である。本実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、スライダの構成が相違するだけであるので、上述した第1の実施形態と同様の構成については説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0032】
図4に示すように、本実施形態の直動案内装置1は、スライダ3及び吸引手段10からなるユニットが2つ設けられ、一のユニットのスライダ3’と、他のユニットのスライダ3’’とがチューブ20で連結されている。具体的には、チューブ20は、一のユニットのスライダ3’内の貫通穴5cと、他のユニットのスライダ3’’の貫通穴5dとを連通させる可撓性の管である。貫通穴5c,5dは、エンドキャップ5’,5’’には、スライダ3’,3’’の外側と、エンドキャップ5’,5’’のスライダ本体3A’,3A’’側の面とを貫通する貫通穴である。また、スライダ3’,3’’には、それぞれ、スライダ本体3A’,3A''の下面と、スライダ本体3A’,3A''のエンドキャップ5’,5’’側の面とを連通する貫通穴3C’,3C''が形成されている。すなわち、貫通穴3C',3C''は、貫通穴5c,5dを介してチューブ20で連通している。
このように、隣り合うスライダ3’,3’’同士をチューブ20で繋ぐことにより、1つのスライダに取付けられた吸引手段10より複数のスライダ3’、3’’内部の空気を吸引することができる。
【0033】
以上説明したように、本願発明に係る直動案内装置によれば、吸引手段10が取付けられたスライダ3が案内レール2に対してストロークすることで容量可変部11が伸縮し、該容量可変部11の内部の容積が増加し、容量可変部11の内部に負圧が発生する。その圧力により、スライダ3の内部から空気を吸引することができるので、案内レール2とスライダ3との間の粉塵を排出することができる。
このように、本願発明に係る直動案内装置によれば、容量可変部11の伸縮はスライダ3が前後へストロークさせるための動力によってもたらされるため、別途動力を準備する必要がない。
【0034】
また、吸引ポンプ等を別途に用意する必要がなく、その分、余計に装置が大きくなることがない。従って、省エネルギー化・省スペース化の効果を発揮する直動案内装置を提供することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。例えば、吸引手段の内部に設けられる逆止弁は、「一方の開口部に連結されたスライダが案内レールに対して摺動することにより、容量可変部の容積が変化することで負圧を発生させて、他方の開口部から案内レールとスライダとの間の粉塵を排出する」という機能を備えれば、吸引手段の両開口部の近傍に設けられなくてもよく、吸引手段の内部、特に、中間部に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 直動案内装置
2 案内レール
2a 転動体転動溝(案内レール側)
3 スライダ
3A スライダ本体
3a 転動体転動溝(スライダ側)
4 転動体
5 エンドキャップ
10 吸引手段
11 容量可変部
12 第1の逆止弁
13 第2の逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側部に軸方向に延びる転動体転動溝を有して軸方向に延長された案内レールと、該案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有し、これらの両転動体転動溝間に挿入された転動体の転動を介して軸方向に沿って相対移動可能に前記案内レールに跨架されたスライダと、前記案内レールと前記スライダとの間の粉塵を吸引する吸引手段とを有する直動案内装置であって、
前記吸引手段は、貫通した容量可変部と、該容量可変部の一方の開口部近傍に設けられ、前記容量可変部の内部に外部から加圧されたときに開く第1の逆止弁と、前記容量可変部の他方の開口部近傍に設けられ、前記容量可変部の内部から外部に加圧されたときに開く第2の逆止弁とを有して、前記案内レールと前記スライダとの間の空間に貫通する貫通穴が前記スライダの移動方向の少なくとも一方の端部に形成され、該貫通穴が前記一方の開口部に連結された前記スライダが前記案内レールに対して摺動することにより、前記容量可変部の容積が変化することで負圧を発生させて、前記他方の開口部から前記案内レールと前記スライダとの間の粉塵を排出することを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記スライダの貫通穴が前記スライダの移動方向に沿って前記スライダを貫通して形成され、2つの前記吸引手段のそれぞれの前記一方の開口部を前記貫通穴の両端に連結したことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記スライダが前記案内レール上に複数配置され、前記スライダの貫通穴が前記スライダの移動方向に沿って前記スライダを貫通して形成され、該複数のスライダの外側に配置された2つのスライダの外側に位置するそれぞれの前記貫通穴に前記吸引手段の前記一方の開口部が連結され、前記複数のスライダの前記吸引手段と連結された前記貫通穴の端部以外の端部同士がチューブによって連結されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記容量可変部が、ジャバラ、ピストン及びシリンダー、並びにテレスコピックカバーのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174533(P2011−174533A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38835(P2010−38835)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】