説明

直動案内装置

【課題】スライダ本体に設ける上下2列の戻し通路間のエンドキャップ取付ねじ用のねじ孔を深く取ることができるとともに、スライダ本体の高さを小さく抑えることができる直動案内装置を提供する。
【解決手段】直動案内装置において、エンドキャップ4の各々をスライダ本体3に対して位置決めするための凹部35,35が、スライダ本体3の貫通孔33a,33bに隣接して、転動通路51a,51bの中心C1と貫通孔33a,33bの中心C2とを結ぶ延長線L上の貫通孔33a,33bの外側に設けられるとともに、凹部35,35の直径が貫通孔33a,33bの直径と略同等に設定されているかあるいは凹部35,35の最大幅が貫通孔33a,33bの直径と同等以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、直動案内装置は、軸方向に長く延びる案内レールと、案内レール上に移動可能に設けられたスライダとを備えている。案内レールの両外側面には軸方向に延びる転動体転動溝が形成され、スライダのスライダ本体にはその両袖部の内側面に前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝が形成されている。そして、これらの両転動体転動溝を向き合わせてなる転動通路には多数の転動体が転動自在に挿入され、その転動体の転動を介してスライダが案内レール上を軸方向に移動するようになっている。
このスライダの移動につれて、案内レールとスライダとの間に介在する転動体を連続的に循環させる必要がある。そこで、スライダのスライダ本体の両袖部には軸方向に貫通する転動体の戻し通路を形成するとともに、スライダ本体の軸方向両端部に一対のエンドキャップを取り付けて、各エンドキャップに戻し通路に連通する半円弧状の方向転換路を形成し、前記転動通路と、戻し通路と、方向転換路とで転動体の循環経路を構成している。
【0003】
ところで、スライダ本体とその軸方向両端部に取り付けられるエンドキャップに戻し通路や方向転換路を誤差なく形成することは極めて難しく、また、各エンドキャップについてはそれが金属や硬質合成樹脂により成形によって製造される場合が多く、かかる場合には熱収縮の問題が生じて厳密な精度で仕上げることがほとんど不可能である。このため、エンドキャップをスライダ本体に取り付けるに際し、スライダ本体側の戻し通路とエンドキャップ側の方向転換路との間を正確に位置合わせすることが難しく、これが原因で転動体の循環経路内を循環する転動体の転動に乱れが生じる場合があった。
【0004】
この問題を解決するものとして、従来、例えば、特許文献1に記載された直動摺動用ベアリングの技術、特許文献2に記載されたリニアガイド装置の技術、及び特許文献3に記載された四条列無限直動案内ユニットの技術が知られている。
特許文献1に記載された直動摺動用ベアリングでは、図6に示すように、スライダ本体101の戻し通路102の開口部縁に外方へ向けて拡開するテーパ面103を備えた嵌合部104を形成し、その一方、各エンドキャップ105の内面側にはスライダ本体101の戻し通路102に対応する方向転換路106の周縁に断面略楔形状の周縁突出部107を形成し、各周縁突出部107を各嵌合部104内に嵌合して各エンドキャップ105の位置合わせをするようにしている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたリニアガイド装置では、図7(A)に示すように、エンドキャップ201に取り付けられた中間板202に方向転換路203と同心に位置する受口204を設け、その一方、スライダ本体(図示せず)側には、貫通孔の端部に拡大部分を設け、受口204をその拡大部分に嵌合してエンドキャップの位置決めを行うようにしている。なお、特許文献2に記載されたリニアガイド装置においては、図7(B)に示すように、スライダ本体側の貫通孔に断面略三日月形状の戻り通路部材205を挿入し、貫通孔の一部とこの戻り通路部材205とで戻し通路を構成している。貫通孔に樹脂製の戻り通路部材205を挿入することによって戻し通路における転動体との摩擦を低減できる。
【0006】
更に、特許文献3に記載された四条列無限直動案内ユニットでは、図8示すように、スライダ本体301の貫通孔302にスリーブ303を挿入し、そのスリーブ302の内部に転動体の戻し通路304を設けた構成となっている。スリーブ303は、軸方向の一端面から突出する突出部303aを有し、その突出部303aの先端面と図示しないエンドキャップが当接するスライダ本体301の当接面301aとが同一面となるように貫通孔302内に挿入される。この結果、貫通孔302とスライダ303の突出部303aとの間には、エンドキャップ位置決め用の凹部303bが形成される。一方、エンドキャップには、このエンドキャップ位置決め用の凹部303bに嵌合される凸部(図示せず)が形成されており、この凸部をエンドキャップ位置決め用の凹部303bに嵌合することにより、エンドキャップの位置決めがなされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭62−11215号公報
【特許文献2】特開2000−35040号公報
【特許文献3】特許第2865854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら従来の技術にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に記載された直動摺動用ベアリングの場合、スライダ本体101の端面に設けられた嵌合部104がスライダ本体101の戻し通路102の開口部縁に外方へ向けて拡開するテーパ面103を備えているので、エンドキャップを位置決めするための凹部の径がスライダ本体101に形成された戻し通路102の径よりも大きな径となる。
一方、案内レールの両外側面の各々に転動体転動溝を上下2列形成するとともに、スライダ本体の両袖部の内側面に前記転動体転動溝に対向する上下2列の転動体転動溝を形成し、合計4列の転動通路を設けた直動案内装置が開発されている。この直動案内装置においては、合計4列の転動通路に対応してスライダ本体の両袖部に各上下2列の戻し通路を形成するとともに、1対のエンドキャップのそれぞれに片側2列、合計4列の方向転換路を形成している。この直動案内装置においては、エンドキャップをスライダ本体に取り付けるためのねじ孔を、スライダ本体において上下2列の戻し通路間に設けるのが一般的である。その理由は、上側の戻し通路の上側あるいは下側の戻し通路の下側にかかるねじ孔を設けると、エンドキャップを取付けねじで取り付けた際に、エンドキャップに形成された方向転換路を片持ちの状態で押えることになり、耐久性が低下するだけでなく、転動体の循環に伴って、エンドキャップの浮き上がりが生じ、騒音が増大してしまうおそれがあるためである。
【0009】
従って、このような合計4列の転動通路を設けた直動案内装置に、上述した特許文献1の直動摺動用ベアリングの技術を適用すると、エンドキャップを位置決めするための凹部の径がスライダ本体101に形成された戻し通路102の径よりも大きな径となっていることから、上下2列の戻し通路間に設けられたねじ孔との間隔が狭くなり、特にねじ孔周りのエンドキャップの座面が小さくなってしまうという問題がある。このような座面の小さなエンドキャップを取付けねじで締め付けると、エンドキャップが変形し、転動体の円滑な循環を妨げる結果となる。このようなねじ孔周りのエンドキャップの座面が小さくなってしまう問題を回避するために、上下の戻し通路間のスペースを大きく取ると、スライダ本体に設けるねじ孔を浅くする、あるいはスライダ本体の高さを大きくすることが必要になってしまう問題がある。
【0010】
また、特許文献2に記載されたリニアガイド装置の場合は、エンドキャップ201に取り付けられた中間板202に方向転換路203と同心に位置する受口204を設け、その一方、スライダ本体側には、貫通孔の端部に拡大部分を設け、受口204をその拡大部分に嵌合してエンドキャップの位置決めを行うようにしている。このため、エンドキャップを位置決めするための凹部の径がスライダ本体に形成された貫通孔の径よりも大きな径となっているので、上下の貫通孔間にエンドキャップを取り付けるためのねじ孔を配置すれば、前記特許文献1に記載された直動摺動用ベアリングの場合と同様の問題が残る。
【0011】
更に、特許文献3に記載された四条列無限直動案内ユニットの場合は、スライダ本体301の貫通孔302にスリーブ303を挿入し、そのスリーブ302の内部に転動体の戻し通路304を設けた構成となっているので、戻し通路304に対してスリーブ302の肉厚分だけ径の大きな貫通孔302を設ける必要がある。このため、上下の貫通孔間にエンドキャップを取り付けるためのねじ孔を配置すれば、前記特許文献1に記載された直動摺動用ベアリングの場合と同様の問題が残る。
【0012】
従って、本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、スライダ本体に設ける上下2列の戻し通路間のエンドキャップ取付ねじ用のねじ孔を深く取ることができるとともに、スライダ本体の高さを小さく抑えることができる直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る直動案内装置は、軸方向に延びる案内レールと、該案内レール上を軸方向に移動可能に設けられたスライダと、複数個の転動体とを備え、前記案内レールが、両側面の各々に軸方向に延びる上下2列の転動体転動溝を形成し、前記スライダが、前記案内レール上に軸方向に移動可能に設けられるとともに、前記上下2列の転動体転動溝に対向する上下2列の転動体転動溝を両袖部の各々の内側面に有し、前記両袖部の各々の内部に上下2列の戻し通路を形成したスライダ本体と、該スライダ本体の軸方向両端部に取り付けられた一対のエンドキャップであって、各々が前記案内レールに形成された転動体転動溝と前記スライダ本体に形成された転動体転動溝とで構成される合計4列の転動通路と前記戻し通路とを連通させる方向転換路を有する一対のエンドキャップとを備え、前記スライダ本体の前記上下2列の戻し通路間に前記エンドキャップを前記スライダ本体に取り付けるためのエンドキャップ取付ねじ用のねじ孔を有し、前記複数個の転動体が、前記転動通路と、前記戻し通路と、前記方向転換路とで構成される循環経路を転動することにより、前記スライダが前記案内レール上を移動する直動案内装置において、前記戻し通路は、前記スライダ本体の両袖部の各々において軸方向に貫通する貫通孔の少なくとも一部を含んで構成され、前記エンドキャップの各々を前記スライダ本体に対して位置決めするための凹部が、前記スライダ本体の貫通孔に隣接して、前記転動通路の中心と前記貫通孔の中心とを結ぶ延長線上の前記貫通孔の外側に設けられるとともに、前記凹部の直径が前記貫通孔の直径と略同等に設定されているかあるいは前記凹部の最大幅が前記貫通孔の直径と同等以下に設定され、前記貫通孔には、断面略三日月状の転動体戻り通路部材が装嵌され、前記スライダ本体の軸方向両端部に前記一対のエンドキャップを取り付けた際に、前記エンドキャップの位置決め凸部が前記スライダ本体の位置決め凹部に嵌合し、前記エンドキャップの各々が前記スライダ本体に対して位置決めされて前記方向転換路の湾曲した中心軸が前記戻し通路の中心軸及び前記転動通路の中心軸と整合することを特徴としている。
【0014】
また、本発明のうち請求項2に係る発明は、請求項1記載の直動案内装置において、転動体投影範囲よりも突出する腕部を有するセパレータが前記循環経路内に組み込まれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のうち請求項1に係る直動案内装置によれば、エンドキャップの各々をスライダ本体に対して位置決めするための凹部が、スライダ本体の貫通孔に隣接して、前記転動通路の中心と前記貫通孔の中心とを結ぶ延長線上の前記貫通孔の外側に設けられるとともに、前記凹部の直径が前記貫通孔の直径と略同等に設定されているかあるいは前記凹部の最大幅が前記貫通孔の直径と同等以下に設定されているので、エンドキャップの各々を位置決めするための凹部が上下2列の戻し通路間に形成されることはなく、上下2列の戻し通路とその間に設けられたエンドキャップ取付ねじ用のねじ孔との間隔を狭めることなく、ねじ孔周りのエンドキャップの座面の大きさを確保でき、エンドキャップを取付けねじで締め付けた際に、エンドキャップの変形を防止することができる。このため、ねじ孔周りのエンドキャップの座面が小さくなってしまう問題を回避するために、上下の戻し通路間のスペースを大きく取る必要はないので、スライダ本体に設ける上下2列の戻し通路間のエンドキャップ取付ねじ用のねじ孔を深く取ることができるとともに、スライダ本体の高さを小さく抑えることができる。
【0016】
また、前記貫通孔には、断面略三日月状の転動体戻り通路部材が装嵌されているので、転動体戻り通路部材として樹脂等の摩擦係数を小さいものを適用すれば、転動体を円滑に循環させることができる。
また、本発明のうち請求項2に係る発明によれば、請求項1記載の直動案内装置において、転動体投影範囲よりも突出する腕部を有するセパレータが前記循環経路内に組み込まれているので、隣接する転動体が干渉するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る直動案内装置の第1実施形態を示すもので、エンドキャップの半分を切除した直動案内装置の正面図である。
【図2】図1の直動案内装置に用いられるエンドキャップの一部分の裏面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う部分断面図である。
【図4】本発明に係る直動案内装置の第2実施形態を示すもので、エンドキャップの半分を切除した直動案内装置の正面図である。
【図5】図4の直動案内装置に用いられるエンドキャップの一部分の裏面図である。
【図6】従来例の直動摺動用ベアリングの主要部の断面図である。
【図7】従来例のリニアガイド装置を説明するための図である。
【図8】従来例の四条列無限直動案内ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る直動案内装置の第1実施形態を示すもので、エンドキャップの半分を切除した直動案内装置の正面図である。図2は、図1の直動案内装置に用いられるエンドキャップの一部分の裏面図である。図3は、図1の3−3線に沿う部分断面図である。
図1に示す直動案内装置は、軸方向(図1において紙面に対して直交する方向)に延びる案内レール1と、案内レール1上を軸方向に移動可能に設けられたスライダ2と、複数個の転動体5(図3参照)とを備えている。
【0019】
ここで、案内レール1は、略直方体状に形成され、両側面1a,1aの各々には、軸方向に延びる上下2列の転動体転動溝11a,11bが形成されている。従って、案内レール1の両側面1a,1aには、合計4列の転動体転動溝11a,11bが形成されている。また、案内レール1には、直動案内装置の使用にあたって案内レール1を図示しない基台等に取り付けるためのボルト挿通孔12が形成されている。
また、スライダ2は、案内レール1上に軸方向に移動可能に設けられたスライダ本体3と、スライダ本体3の軸方向両端部に取り付けられた一対のエンドキャップ4とを備えている。
【0020】
スライダ本体3は、図1に示すように、横断面がコ字状をなし、案内レール1上を横断するようにのびる胴部31と、胴部31の両端部に設けられた1対の袖部32,32とを備えている。両袖部32,32の各々の内側面には、案内レール1に設けられた上下2列の転動体転動溝11a,11bに対向する上下2列の転動体転動溝31a,31bが形成されている。従って、スライダ本体3の両袖部32,32には、合計4列の転動体転動溝31a,31bが形成されている。案内レール1に設けられた上列の転動体転動溝11aとスライダ本体3に設けられた上列の転動体転動溝31aとにより上列の転動通路51aを形成する。また、案内レール1に設けられた下列の転動体転動溝11bとスライダ本体3に設けられた下列の転動体転動溝31bとにより下列の転動通路51bを形成する。直動案内装置には、合計4列の転動通路51a,51bが形成される。
【0021】
また、スライダ本体3の両袖部32,32の各々の内部には、図1に示すように、上下2列の戻し通路用の貫通孔33a,33bが形成されている。これら上下2列の戻し通路用の貫通孔33a,33bは、上下2列の転動体転動溝31a,31bに対して軸方向に平行に延びるとともに、スライダ本体3の両袖部32,32の軸方向両端部を貫通するように形成されている。本実施形態において、転動体の戻し通路は、貫通孔33a,33bの全部で構成されている。
図1において、符号6はアンダーシール、7はサイドシール、9は給油ニップル取付穴、36はスライダ2にテーブル等の被駆動体を固定するボルト用ねじ孔である。
【0022】
更に、スライダ本体3の、エンドキャップ4が当接する当接面3aには、上下2列の戻し通路用の貫通孔33a,33b間及び上列の転動体転動溝31aの上方部に、エンドキャップ4をスライダ本体3に取り付けるためのエンドキャップ取付ねじ8用のねじ孔34が設けられている。エンドキャップ4をスライダ本体3に取り付けるに際し、4列の転動通路51a,51bを持つ直動案内装置でも上下2列の戻し通路用の貫通孔33a,33b間にねじ孔34を設けずに上列の貫通孔33aよりも上方部にのみねじ孔34を設置しているものもある。しかし、この場合は、エンドキャップ4の後述する方向転換路44a,44bを片持ちの状態で押えることになるので、耐久性が低下するだけでなく、転動体5の循環に伴って、エンドキャップ4の浮き上がりが生じ、騒音が増大するという問題が生じる。このため、スペースが許容される限り、上下2列の戻し通路用の貫通孔33a,33b間にもエンドキャップ取付ねじ8用のねじ孔34を設ける方がよい。この観点から本実施形態にあっては、上下2列の戻し通路用の貫通孔33a,33b間にもねじ孔34を設けている。
【0023】
また、スライダ本体3の当接面3aには、図1に示すように、エンドキャップ4の各々をスライダ本体3に対して位置決めするための2つの位置決め凹部35,35が設けられている。これら位置決め凹部35,35は、スライダ本3体の貫通孔33a,33bのそれぞれに隣接して、転動通路51a,51bの中心C1と貫通孔33a,33bの中心C2とを結ぶ延長線L上の貫通孔33a,33bの外側に設けられている。各位置決め凹部35は、その直径が貫通孔33a,33bの直径と略同等に設定された正面から見て三日月形状になっている。そして、各位置決め凹部35の最大幅Wは、前記延長線L上に沿って形成されており、貫通孔33a,33bの直径と同等以下に設定されている。本実施形態にあっては、各位置決め凹部35は、その直径が貫通孔33a,33bの直径と略同等に設定された正面から見て三日月形状になっているが、本発明はこれに限定されずに、正面から見ていかなる形状でもよく、ただ単に各位置決め凹部35の最大幅Wが貫通孔33a,33bの直径と同等以下に設定されているものであってもよい。
【0024】
また、各位置決め凹部35の深さd(図3参照)は、特に定められていないが、エンドキャップ4をスライダ本体3に取り付けた際に、後述するエンドキャップ4の位置決め凸部45が各位置決め凹部35適切に嵌合されてエンドキャップ4のスライダ本体3に対する適切な位置決めがなされる深さであればよい。
【0025】
このように、エンドキャップ4の各々をスライダ本体3に対して位置決めするための位置決め凹部35,35が、スライダ本体3の貫通孔33a,33bのそれぞれに隣接して、転動通路51a,51bの中心C1と貫通孔33a,33bの中心C2とを結ぶ延長線L上の貫通孔33a,33bの外側に設けられるとともに、凹部35,35の直径が貫通孔33a,33bの直径と略同等に設定されているかあるいは凹部35,35の最大幅が貫通孔33a,33bの直径よりも小さく設定されているので、エンドキャップ4の各々を位置決めするための位置決め凹部35,35が上下2列の戻し通路(貫通孔)33a,33b間に形成されることはない。このため、上下2列の戻し通路(貫通孔)33a,33bとその間に設けられたエンドキャップ取付ねじ8用のねじ孔34との間隔を狭めることなく、ねじ孔34周りのエンドキャップ4の座面の大きさを確保でき、エンドキャップ4をエンドキャップ取付ねじ8で締め付けた際に、エンドキャップ4の変形を防止することができる。これにより、エンドキャップ取付ねじ8用のねじ孔34周りのエンドキャップ4の座面が小さくなってしまう問題を回避するために、上下の戻し通路(貫通孔)33a,33b間のスペースを大きく取る必要はないので、スライダ本体3に設ける上下2列の戻し通路(貫通孔)33a,33b間のエンドキャップ取付ねじ8用のねじ孔34を深く取ることができるとともに、スライダ本体3の高さを小さく抑えることができる。
【0026】
そして、スライダ本体3の軸方向両端部に取り付けられる各エンドキャップ4は、合成樹脂製の射出成形品であって、図2に示すように、スライダ本体3と横断面がほぼ同様のコ字状をなし、水平部41と、その両端に設けられた一対の袖部42とを備えている。そして、各袖部42には、スライダ本体3に当接する当接面4a側に上下2段の半円柱状凹部43a,43bが形成されるとともに、両円柱状凹部43a,43bを横断する凹溝48が形成されている。そして、凹溝48の上部に半円柱形のリターンガイド47aが嵌合されるとともに、凹溝48の下部に半円筒形のリターンガイド47bが嵌合されている。前述した上段の半円柱状凹部43aとリターンガイド47aとにより半ドーナツ状の上列の方向転換路44aが形成されるとともに、下段の半円柱状凹部43bとリターンガイド47bとにより半ドーナツ状の上列の方向転換路44bが形成される。そして、上下2列の方向転換路44a,44bは、それぞれ、エンドキャップ4をスライダ本体3に取り付けた際に、転動通路51a,51bと戻し通路(貫通孔)33a,33bとを連通させる。
【0027】
また、エンドキャップ4の各袖部42の上下2段の半円柱状凹部43a,43b間には、エンドキャップ取付ねじ8用の挿通孔46が形成されている。また、エンドキャップ4の各袖部42の当接面4aには、図2に示すように、スライダ本体3に設けられた位置決め凹部35,35に嵌合する位置決め凸部45,45が設けられている。従って、各エンドキャップ4には4つの位置決め凸部45が設けられている。これら位置決め凸部45,45は、上下2段の半円柱状凹部43a,43bのそれぞれに隣接して、半円柱状凹部43a,43bの外側に設けられている。各位置決め凸部45は、位置決め凹部35に嵌合するよう位置決め凹部35と相補的な形状をなして、図3に示すように、当接面4aから突出している。
【0028】
スライダ本体3の軸方向両端部に一対のエンドキャップ4,4を取り付けると、転動通路51a,51bと、戻し通路(貫通孔)33a,33bと、方向転換路44a,44bとにより転動体の循環経路が形成される。この際に、図3に示すように、各エンドキャップ4の4つの位置決め凸部45がスライダ本体3の位置決め凹部35に嵌合し、各エンドキャップ4がスライダ本体3に対して位置決めされて方向転換路44a,44bの湾曲した中心軸が戻し通路(貫通孔)33a,33bの中心軸及び転動通路51a,51bの中心軸と整合することになる。従って、エンドキャップ4をスライダ本体3に取り付けるに際し、スライダ本体3側の戻し通路(貫通孔)33a,33bとエンドキャップ4側の方向転換路44a,44bとの間を正確に位置合わせできる。
【0029】
そして、転動通路51a,51bと、戻し通路(貫通孔)33a,33bと、方向転換路44a,44bとにより形成された循環経路に、複数個の転動体5が装填されて、これによりスライダ2が案内レール1上を移動可能となる。この移動の際に、方向転換路44a,44bの湾曲した中心軸が戻し通路(貫通孔)33a,33bの中心軸及び転動通路51a,51bの中心軸と整合し、位置決めされているから、循環経路内を循環する転動体の転動に乱れが生じることはない。
【0030】
次に、本発明に係る直動案内装置の第2実施形態を図4及び図5を参照して説明する。図4は、本発明に係る直動案内装置の第2実施形態を示すもので、エンドキャップの半分を切除した直動案内装置の正面図である。図5は、図4の直動案内装置に用いられるエンドキャップの一部分の裏面図である。
図4に示す直動案内装置は、図1に示す直動案内装置と基本構成は同様であり、転動体の戻し通路の構成が異なっている。図4及び図5において、図1及び図2に示す直動案内装置と同一又は相当部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0031】
図4に示す直動案内装置においては、スライダ本体3に設けられた戻し通路用の貫通孔33a,33b内に断面略三日月形状の転動体戻り通路部材61,61を嵌装し、転動体5の戻し通路を貫通孔33a,33bの一部分とこの転動体戻り通路部材61,61で構成してある。この構成では、転動体戻り通路部材61,61に樹脂等の摩擦係数の小さいものを適用することにより、転動体5を円滑に循環させることができる。また、断面略三日月形状の転動体戻り通路部材61,61を用いることにより、下記に述べるセパレータ62を組み込むことができるとともに、図8に示すようなスリーブ303を貫通孔302に挿入する場合よりも貫通孔33a,33bの直径を小さく抑えることができる。
【0032】
また、この直動案内装置においては、図4及び図5に示すように、転動体5の投影範囲よりも突出する腕部62aを有するセパレータ62が循環経路内に組み込まれている。これにより、隣接する転動体5が干渉するのを防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、図4に示す転動体戻り通路部材61,61や図4及び図5に示すセパレータ62は必ずしも用いなくてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 案内レール
2 スライダ
3 スライダ本体
3a 当接面
4 エンドキャップ
4a 当接面
5 転動体
6 アンダーシール
7 サイドシール
8 エンドキャップ取付ねじ
9 給油ニップル
11a,11b 転動体転動溝
12 ボルト挿通孔
31 胴部
31a,31b 転動体転動溝
32 袖部
33a,33b 戻し通路用の貫通孔
34 エンドキャップ取付ねじ用のねじ孔
35 位置決め凹部
36 ボルト用ねじ孔
41 水平部
42 袖部
43a,43b 半円柱状凹部
44a,44b 方向転換路
45 位置決め凸部
46 エンドキャップ取付ねじ用の挿通孔
47a,47b リターンガイド
48 凹溝
51a,51b 転動通路
61 転動体戻り通路部材
62 セパレータ
62a 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる案内レールと、該案内レール上を軸方向に移動可能に設けられたスライダと、複数個の転動体とを備え、
前記案内レールが、両側面の各々に軸方向に延びる上下2列の転動体転動溝を形成し、
前記スライダが、前記案内レール上に軸方向に移動可能に設けられるとともに、前記上下2列の転動体転動溝に対向する上下2列の転動体転動溝を両袖部の各々の内側面に有し、前記両袖部の各々の内部に上下2列の戻し通路を形成したスライダ本体と、該スライダ本体の軸方向両端部に取り付けられた一対のエンドキャップであって、各々が前記案内レールに形成された転動体転動溝と前記スライダ本体に形成された転動体転動溝とで構成される合計4列の転動通路と前記戻し通路とを連通させる方向転換路を有する一対のエンドキャップとを備え、
前記スライダ本体の前記上下2列の戻し通路間に前記エンドキャップを前記スライダ本体に取り付けるためのエンドキャップ取付ねじ用のねじ孔を有し、
前記複数個の転動体が、前記転動通路と、前記戻し通路と、前記方向転換路とで構成される循環経路を転動することにより、前記スライダが前記案内レール上を移動する直動案内装置において、
前記戻し通路は、前記スライダ本体の両袖部の各々において軸方向に貫通する貫通孔の少なくとも一部を含んで構成され、
前記エンドキャップの各々を前記スライダ本体に対して位置決めするための凹部が、前記スライダ本体の貫通孔に隣接して、前記転動通路の中心と前記貫通孔の中心とを結ぶ延長線上の前記貫通孔の外側に設けられるとともに、前記凹部の直径が前記貫通孔の直径と略同等に設定されているかあるいは前記凹部の最大幅が前記貫通孔の直径と同等以下に設定され、
前記貫通孔には、断面略三日月状の転動体戻り通路部材が装嵌され、
前記スライダ本体の軸方向両端部に前記一対のエンドキャップを取り付けた際に、前記エンドキャップの位置決め凸部が前記スライダ本体の位置決め凹部に嵌合し、前記エンドキャップの各々が前記スライダ本体に対して位置決めされて前記方向転換路の湾曲した中心軸が前記戻し通路の中心軸及び前記転動通路の中心軸と整合することを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
転動体投影範囲よりも突出する腕部を有するセパレータが前記循環経路内に組み込まれていることを特徴とする請求項1記載の直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61079(P2013−61079A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−288214(P2012−288214)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2009−32391(P2009−32391)の分割
【原出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】