説明

直動装置および電子部品実装装置

【課題】潤滑油の補給性に優れた直動装置を提供する。
【解決手段】一方向に延伸されたボール転動面11aを有するリニアレール11と、ボール転動面11aと対向するボール転動面12aとの間で転動する複数のボール13を循環させる循環路を有し、対向するボール転動面11a、12aの間に介在されたボール13の転動により一方向において移動自在なリニアガイド12と、を備え、循環路にボールの循環方向に延伸された溝12cが形成され、リニアガイド12に、潤滑用樹脂を循環路の一端側から供給する給脂孔と、潤滑用樹脂を循環路の他端側から排出する排脂孔とを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動装置および電子部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直動装置は、一方向に延伸されたレールに沿って移動体を移動自在に装着して構成されている。レールと移動体には、それぞれ一方向に延伸するボールの転動面が対向する位置に形成されており、両転動面の間でボールを転動させることで移動体の円滑な移動を実現している。両転動面およびボールの接触箇所は潤滑された状態に維持する必要があるため、従来、移動体の移動に伴い、レールの転動面に自動的に潤滑油を供給する装置が提案されている(特許文献1参照)。この潤滑油供給装置は、潤滑油を含浸させたフェルトをケーシングに収納した状態で移動体に装着し、移動体がレールに沿って移動する際にレールに当接したフェルト部分から潤滑油が塗布される構成となっている。
【特許文献1】特開平10−184683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
直動装置における潤滑材には、上述した潤滑油の他にグリス等の潤滑用樹脂が使用される。グリスは潤滑油に比べて定着性が高く漏れが少ないため、少量で長期間潤滑性能を維持できるといった利点があり、シール構造を簡素化することができるとともに保守管理が容易である。しかしながら、異物が付着するなど経時的に劣化して潤滑性能が低下するため、潤滑油のように補給するのではなく、定期的に新たなものと交換する必要がある。この場合、直動装置を一時停止させた状態で交換作業が行われるため、古いグリスを除去し、新たなグリスを供給する一連の交換作業を短時間で完了させ、直動装置を速やかに再稼働させることが重要となってくる。
【0004】
そこで本発明は、潤滑用樹脂の交換性に優れた直動装置および電子部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の直動装置は、一方向に延伸された転動面を有するレールと、前記転動面と対向する転動面を一部に有し、対向する両転動面の間で転動する複数の転動体を循環させる循環路が設けられ、対向する両転動面の間に介在された前記転動体の転動によって前記一方向において移動自在な移動体とを備え、前記循環路に前記転動体の循環方向に延伸された溝が形成され、前記移動体に、潤滑用樹脂を前記循環路の一端側から供給する給脂孔と、潤滑用樹脂を前記循環路の他端側から排出する排脂孔とが形成された。
【0006】
本発明の電子部品実装装置は、作業面と、請求項1に記載の直動装置とを備え、前記作業面と平行に移動自在な前記移動体に装着された実装ヘッドにより前記作業面において基板に電子部品の実装を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、短時間で潤滑用樹脂の交換作業を完了することが可能になるので、保守管理の際に直動装置を一時停止させる時間が大幅に短縮され、実装効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本実施の形態の電子部品
実装装置の斜視図、図2、図3は本実施の形態の直動装置の斜視図、図4は本実施の形態の直動装置の断面図、図5は本実施の形態の直動装置の側面図である。
【0009】
図1において、電子部品実装装置1は、基台2に基板搬送装置3、電子部品供給装置4、直交ロボット5、実装ヘッド6を配設して構成されている。基台2の上面は水平面をなす作業面2aとなっており、この作業面2aで電子部品の実装作業が行われる。基板搬送装置3は、基板7をX方向に搬送する機能を有するとともに作業面2aの所定の位置に保持する機能を有し、実装前の基板7を電子部品実装装置1に搬入し、実装中は所定の位置で保持した状態を維持し、実装後は基板7の保持を解除して電子部品実装装置1から搬出する。なお、以下の説明においては、基板7の搬送方向をX方向とし、これに水平面内で直交する方向をY方向としている。電子部品供給装置4は、基板搬送装置3の両側方に複数個ずつ配置され、内部に収納した電子部品を外部に供給する機能を備えている。直交ロボット5は、実装ヘッド6をX方向およびY方向に水平移動させ、作業面2aの上方の任意の位置に位置決めする機能を備えている。実装ヘッド6は、電子部品供給装置4と基板7の間を移動し、ノズル8に吸着した電子部品を基板7に実装する。
【0010】
直交ロボット5には、実装ヘッド6をX方向およびY方向に移動させるためのリニアガイド10が作業面2aと平行に設けられている。図2において、リニアガイド10は、リニアレール11と、リニアレール11に沿って摺動可能なリニアブロック12とで構成された直動装置である。リニアブロック12には、複数のボール13およびボールリテーナ14からなる4組のボール列が内蔵されている。リニアレール11の両側部には、リニアブロック12に内蔵された4組のボール列に対応し、それぞれ2条ずつ計4条のボール転動面11aが一方向に延伸して形成されている。
【0011】
リニアブロック12には、移動対象物を装着するための装着面12dが形成されている。図3において、一対のリニアレール11が平行に配置され、それぞれのリニアレール11に2つずつ設けられた計4つのリニアブロック12の装着面12dに移動対象物Oの四隅が装着されている。移動対象物Oは、一対のリニアレール11に沿って摺動する4つのリニアブロック12の移動に伴って直線移動する。図1に示す直交ロボット5では、Xロボット5xに設けられたリニアガイド10の4つのリニアブロック(図示せず)に実装ヘッド6が装着され、Yロボット5yに設けられたリニアガイド10の4つのリニアブロック(図示せず)にXロボット5xの一端が装着されている。従って、それぞれのリニアレール11に沿って摺動する4つのリニアブロック12の移動に伴い、実装ヘッド6が作業面2aに平行に水平移動可能になっている。
【0012】
図4において、リニアブロック12には、リニアレール11に形成された各ボール転動面11aと対向するボール転動面12aが形成されており、リニアブロック12は、これらの対向するボール転動面11a、12aの間に介在された複数のボール13の転動によりリニアレール11に沿って直線移動する。リニアブロック12の内部には、各ボール転動面12aと連通するボール通路12bがそれぞれ形成されている。ボール通路12bは、ボール転動面12aをその一部として、対向するボール転動面11a、12aの間で転動する複数のボール13を循環させる循環路を形成している。なお、図2において、リニアブロック12の一方向における両端にはエンドプレート15が設けられ、ボール転動面12aとボール通路12bを連通させる循環路の一部を形成している(図5参照)。リニアブロック12とその両端に設けられたエンドプレート15は、リニアレール11に形成された各ボール転動面11aの延伸方向に移動自在である移動体を構成する。
【0013】
ボール転動面12aとボール通路12bには、ボール13の循環方向に延伸された溝12cが形成されている。溝12cは、リニアガイド10の各摺動部、特にリニアレール11に形成された4条のボール転動面11aに供給するグリス等の潤滑用樹脂の通路となる
ボール転動面12aやボール通路12bの断面積を増大させるためのものであり、グリスの通路における管路抵抗を減少させる効果を生じる。なお、溝12cは、その大きさや数、配置等は特に限定されることはないが、ボール13と頻繁に接触することがないような配置、大きさであることが望ましい。例えば、溝12cを水平方向に形成すると、循環移動するボール13と溝12cがあまり接触することがないので、ボール13の円滑な循環移動が阻害されず、また、溝12cと接触したボール13に傷や変形が生じるといった不具合を未然に防止することができる。
【0014】
図5において、リニアブロック12の両端に設けられたエンドプレート15には、それぞれ給脂孔16と排脂孔17が設けられ、リニアブロック12と両エンドプレート15の内部に形成された4本の循環路18の両端部に連通している。給脂孔16に新しいグリスを供給すると、各循環路18に元から存在していた古いグリスが一端側から他端側に向けて移動し、新たに供給されたグリスの量に相当する量の古いグリスが排脂孔17から外部に排出される。循環路18での滞留期間が長い古くなったグリスは、異物が付着するなど経時的に劣化して潤滑性能が低下するので、定期的に新たなグリスを供給し、古いグリスが長期間滞留することがないように保守管理することで、リニアガイド10の各摺動部、特にリニアレール11に形成された4条のボール転動面11aにおける良好な潤滑状態を維持する。また、新たに供給されたグリスが排脂孔17から外部に排出されるまで給脂することにより、古いグリスを確実に排出することが可能である。
【0015】
上述したように、グリスの通路となる循環路には循環方向に延伸して溝12cが形成されており、溝12cがない場合と比較して循環路を移動するグリスに作用する管路抵抗が低減しているため、古くなったグリスを除去して新たなグリスを供給する一連の交換作業を短時間で完了させることが可能になっている。グリスの交換作業は直動装置を一時停止させた状態で行われため、短時間で完了することで直動装置を速やかに再稼働させることが可能になり、実装作業を再開することができる。
【0016】
このように本実施の形態の直動装置、および電子部品実装装置1によれば、潤滑用樹脂の交換性に優れ、短時間で交換作業を完了することが可能となるので、保守管理の際に直動装置を一時停止させる時間を大幅に短縮することができ、実装効率の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、短時間で潤滑用樹脂の交換作業を完了することが可能になるので、保守管理の際に直動装置を一時停止させる時間が大幅に短縮され、実装効率の向上を図ることができるという利点を有し、電子部品の実装分野において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態の電子部品実装装置の斜視図
【図2】本実施の形態の直動装置の斜視図
【図3】本実施の形態の直動装置の斜視図
【図4】本実施の形態の直動装置の断面図
【図5】本実施の形態の直動装置の側面図
【符号の説明】
【0019】
1 電子部品実装装置
2a 作業面
6 実装ヘッド
8 基板
10 リニアガイド
11 リニアレール
11a ボール転動面
12 リニアブロック
12a ボール転動面
12c 溝
13 ボール
16 給脂孔
17 排脂孔
18 循環路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延伸された転動面を有するレールと、前記転動面と対向する転動面を一部に有し、対向する両転動面の間で転動する複数の転動体を循環させる循環路が設けられ、対向する両転動面の間に介在された前記転動体の転動によって前記一方向において移動自在な移動体とを備え、
前記循環路に前記転動体の循環方向に延伸された溝が形成され、前記移動体に、潤滑用樹脂を前記循環路の一端側から供給する給脂孔と、潤滑用樹脂を前記循環路の他端側から排出する排脂孔とが形成された直動装置。
【請求項2】
作業面と、請求項1に記載の直動装置とを備え、前記作業面と平行に移動自在な前記移動体に装着された実装ヘッドにより前記作業面において基板に電子部品の実装を行う電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−147272(P2008−147272A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330208(P2006−330208)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】