説明

直動装置

【課題】装置高さを可及的に低くすることができ、負荷路をできるだけ低い位置に設けて騒音を小さくできる極めて実用性に秀れた直動装置の提供。
【解決手段】断面略U字状のレール体1に対して直動体2が直動するように設けられ、このレール体1と前記直動体2との間には負荷路3が設けられ、この負荷路3はリターン路4を介して無負荷路5と連通せしめられ、これらで転動体無限循環路が左右一対形成された直動装置であって、前記直動体2に、左右一対の負荷路3と対応する無負荷路5が夫々設けられる左右一対の循環部構成材8を設け、この左右一対の循環部構成材8を所定間隔をおいて並設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コピー機、アミューズメント機器、各種カバー、ドア等のスライド部などに使用されるレール上を転動体を介してスライダ(直動体)が移動する構成の薄型の直動装置がある(特許文献1等参照)。
【0003】
この特許文献1に開示される薄型の直動装置のスライダは、レールとスライダとの間に設けられる左右一対の負荷路と、この負荷路に夫々対応した無負荷路(及びリターン路)とが設けられるサーキュレータ(循環部構成材)をケーシングで保持した構成である。
【0004】
ところで、従来の薄型の直動装置において左右一対の負荷路と対応する左右の無負荷路は、一つのサーキュレータに一体に設けられている(例えば特許文献1の図3参照)。
【0005】
そのため、レールを被取付部に取り付ける際に、レールの底部(幅方向略中央)の挿通孔を挿通しレール取付部材に螺着されたレール取付ねじの頭部が、サーキュレータに干渉しないように、レール底部からサーキュレータ(スライダ)を、螺着されたレール取付ねじの頭部の厚さ分だけ離間するように設計する必要がある(特に一般的な六角穴付きボルト等を用いる場合、離間距離が大きくなる。)。
【0006】
しかしながら、上記の用途に用いられるこの種の薄型の直動装置においては高さをできるだけコンパクトにすることが求められていることから、レール底部とスライダとの離間距離をできるだけ小さくしたい要望がある。
【0007】
また、レール底部とスライダとの離間距離が大きい場合、負荷路の位置がレール左右壁の上端寄りとなり、レールが薄板で剛性が低いことから、発生する騒音が大きくなってしまう問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4035370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、レール体の底部に存在するレール取付ねじの頭部がサーキュレータ(循環部構成材)に干渉せず、それだけレール体の底部とスライダ(直動体)との離間距離を小さくして装置高さを可及的に低くすることができ、負荷路をできるだけ低い位置に設けて騒音を小さくできる極めて実用性に秀れた直動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
断面略U字状のレール体1に対して直動体2が直動するように設けられ、このレール体1と前記直動体2との間には転動体11が移動する負荷路3が設けられ、この負荷路3はリターン路4を介して無負荷路5と連通せしめられ、この負荷路3とリターン路4と無負荷路5とで転動体無限循環路が左右一対形成された直動装置であって、前記負荷路3は、前記レール体1の左右の壁部内面に設けられた第一負荷溝6と、この第一負荷溝6と対向する前記直動体2に設けられた第二負荷溝7とで構成され、前記直動体2には、左右一対の前記負荷路3と対応する前記無負荷路5が夫々設けられる左右一対の循環部構成材8が設けられ、この左右一対の循環部構成材8は所定間隔をおいて並設されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の直動装置において、前記循環部構成材8同士の間隔は、前記レール体1の底部に設けられる挿通孔12を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじ13の頭部の幅以上の間隔に設定されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0013】
また、断面略U字状のレール体1に対して直動体2が直動するように設けられ、このレール体1と前記直動体2との間には転動体11が移動する負荷路3が設けられ、この負荷路3はリターン路4を介して無負荷路5と連通せしめられ、この負荷路3とリターン路4と無負荷路5とで転動体無限循環路が左右一対形成された直動装置であって、前記直動体2は、左右一対の前記負荷路3と対応する前記無負荷路5が夫々設けられる左右一対の循環部構成材8と、この循環部構成材8とリターン路4を形成するリターンキャップ9と、この循環部構成材8及び前記リターンキャップ9が保持されるケーシング10とで構成され、前記負荷路3は、前記レール体1の左右の壁部内面に設けられた第一負荷溝6と、この第一負荷溝6と対向する前記ケーシング10の側面に設けられた第二負荷溝7とで構成され、前記左右一対の循環部構成材8は所定間隔をおいて並設されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0014】
また、請求項3記載の直動装置において、前記循環部構成材8同士の間隔は、前記レール体1の底部に設けられる挿通孔12を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじ13の頭部の幅以上の間隔に設定されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0015】
また、請求項3,4いずれか1項に記載の直動装置において、前記循環部構成材8には、前記ケーシング10のかしめ連結用の孔14に挿通せしめられるかしめ連結用の突起15が一体に設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0016】
また、請求項3〜5いずれか1項に記載の直動装置において、前記ケーシング10の前後両端部には、前記リターンキャップ9に係止する係止爪16が設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0017】
また、請求項6記載の直動装置において、前記レール体1の前後両端部には前記ケーシング10の係止爪16と干渉するストッパ部材が設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0018】
また、請求項3〜7いずれか1項に記載の直動装置において、前記ケーシング10は金属製であり、前記循環部構成材8及び前記リターンキャップ9は合成樹脂製であることを特徴とする直動装置に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、レール体の底部に存在するレール取付ねじの頭部が循環部構成材に干渉せず、それだけレール体の底部と直動体との離間距離を小さくして装置高さを可及的に低くすることができ、負荷路をできるだけ低い位置に設けて騒音を小さくできる極めて実用性に秀れた直動装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例の構成概略説明斜視図である。
【図2】本実施例の要部の拡大概略説明断面図である。
【図3】本実施例の要部の一部を切り欠いた構成概略説明平面図である。
【図4】本実施例の直動体の分解説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0022】
所定間隔をおいて並設した左右一対の循環部構成材8の間に、例えばレール体1の底部の挿通孔12を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじ13の頭部を配することが可能な間隙を形成することが可能となり、よって、レール体1の底部と循環部構成材8(直動体2)との離間距離を広くとらずとも、循環部構成材8とレール取付ねじ13の頭部との干渉が生じない構成とすることができ、それだけレール体1の底部と直動体2との離間距離を小さくすることが可能となる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、断面略U字状のレール体1に対して直動体2が直動するように設けられ、このレール体1と前記直動体2との間には転動体11が移動する負荷路3が設けられ、この負荷路3はリターン路4を介して無負荷路5と連通せしめられ、この負荷路3とリターン路4と無負荷路5とで転動体無限循環路が左右一対形成された直動装置であって、前記直動体2は、左右一対の前記負荷路3と対応する前記無負荷路5が夫々設けられる左右一対の循環部構成材8と、この循環部構成材8とリターン路4を形成するリターンキャップ9と、この循環部構成材8及び前記リターンキャップ9が保持されるケーシング10とで構成され、前記負荷路3は、前記レール体1の左右の壁部内面に設けられた第一負荷溝6と、この第一負荷溝6と対向する前記ケーシング10の側面に設けられた第二負荷溝7とで構成され、前記左右一対の循環部構成材8は所定間隔をおいて並設されているものである。
【0025】
具体的には、コピー機、アミューズメント機器、各種カバー、ドア等のスライド部などに使用される図1に図示したような厚さ5〜10mm程度の薄型の直動装置(直動案内装置)であり、例えば、図2に図示したように、レール体1をレール体1の幅方向略中央のレール取付ねじ13により固定側部材26に固定し、直動体2(ケーシング10)に移動側部材27をボルト・ナット等の適宜な取付部材で取付けて使用するものである。図中、符号20はボルト等が挿通する挿通孔、21はボルトやナットを逃げる逃げ凹部である。
【0026】
また、本実施例においては、薄板状のケーシング10は金属製(ステンレス鋼製)とし、循環部構成材8及びリターンキャップ9は合成樹脂製(射出成形品)としている。
【0027】
本実施例の直動体2は、図3,4に図示したように、前後方向(スライド移動方向)両端部に設けたリターンキャップ9の外面(に設けた凹部)に係止する係止爪16と、左右方向(幅方向)両端部に設けた第二負荷溝7が形成される側壁部28とで、左右一対の循環部構成材8と前後一対のリターンキャップ9とを押さえ込み状態で保持する構成である。
【0028】
また、可及的に薄くするため、負荷路3、リターン路4及び無負荷路5からなる転動体無限循環路は水平に設けている。尚、係止爪16は、前後両端部に2つずつ(2対)設けた構成としているが、1対でも3対以上設けてもよい。
【0029】
また、循環部構成材8及びリターンキャップ9は、リターンキャップ9の左右の第一リターン路形成溝が形成された凹溝24内に、循環部構成材8の前後両端部に設けた第二リターン路形成溝が形成された挿入部23を挿入した状態で、ケーシング10に保持される。この対向する第一リターン路形成溝と第二リターン路形成溝とでリターン路4が形成される。また、循環部構成材8の内側には、第二リターン路形成溝と連続して無負荷路5を形成する断面円形の直線孔が設けられている。図中、符号25は循環部構成材8の内方湾曲面と係止して循環部構成材8を位置決めする位置決め凸部である。
【0030】
また、係止爪16の前後方向寸法を、循環部構成材8とリターンキャップ9とを組み付けた前後方向寸法より僅かに小さく設定することで、この係止爪16の弾性変形を利用して良好に保持することが可能となる。
【0031】
また、循環部構成材8には、ケーシング10のかしめ連結用の孔14に挿通せしめられるかしめ連結用の突起15が一体に設けられており、孔14から突出部分を潰すことでかしめ連結される。
【0032】
従って、循環部構成材8及びリターンキャップ9は、水平方向に対しては位置決め凸部25とケーシング10の係止爪16及び側壁部28とで位置決め固定され、高さ方向に対しては上記かしめ連結により位置決め固定される。
【0033】
また、本実施例においては、左右一対の無限循環部を構成するための左右の循環部構成材8を上述したように別体構成とし、循環部構成材8同士の間隔が、レール体1の底部に設けられる挿通孔12を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじ13(頭部の厚さが2〜3mm程度の一般的な六角穴付きボルト等)の頭部の幅(径)以上の間隔となるように、ケーシング10等を設定構成している。また、この空間の高さはレール取付ねじ13の頭部の突出厚さより若干大きく設定する。従って、循環部構成材8同士の間にはレール取付ねじの頭部が相対通過可能な空間(ねじの頭部を収納できる空間)を形成できることになり、当該頭部との干渉を考慮することなく、循環部構成材8(直動体2)をレール体1の底部に可及的に近づけた設計が可能となる。また、頭部の厚さが薄い特殊品等を用いる必要もなくなる。
【0034】
また、循環部構成材8には、潤滑油を保持する超高分子量ポリエチレン製の潤滑油保持体22が設けられる収納溝29が形成されている。この収納溝29は外側に導入出用開口部を有し、内側に無負荷路5を転動する転動体11と近接若しくは接触して潤滑油を供給する供給用開口部を有している。収納溝29はケーシング10の側壁部28により隠蔽される。
【0035】
また、レール体1の前後両端部にはケーシング10の係止爪16と干渉するストッパ部材が設けられている。ストッパ部材は、レール体1にねじ19等で取り付けられる底板部と該底板部の端部に立設状態に設けられる底板部より幅広な立設部とから成る金属製の基体17と、前記立設部に被嵌される弾性体(ゴム18)とで構成されており、金属製の係止爪16は立設部に被嵌されたゴム18に接触するように構成されている。従って、直動体2の接触側は金属製のケーシング10の係止爪16となり十分な強度を確保しつつ、騒音等が生じにくい合理的なものとなる。
【0036】
また、本実施例においては、循環部構成材8を合成樹脂製の射出成形品としているが、例えば従来の鋼材プレス加工品とした場合には、上下一対の構成部品の対向する接触面が必須となりこの接触面を形成するために、幅方向に余分にスペースを取らざるを得ないが、循環部構成材8を合成樹脂製とし射出成形により成形することにより、安価に上下方向単一の部品とすることができ、プレス加工品のような接触面が不要となり幅方向に対してもよりコンパクトな構成となる。
【0037】
本実施例は上述のように構成したから、所定間隔をおいて並設した左右一対の循環部構成材8の間に、レール体1の底部の挿通孔12を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじ13の頭部を配することが可能な間隙を形成することが可能となり、よって、レール体1の底部と循環部構成材8(直動体2)との離間距離を広くとらずとも、循環部構成材8とレール取付ねじ13の頭部との干渉が生じない構成とすることができ、それだけレール体1の底部と直動体2との離間距離を小さくすることが可能となる。
【0038】
よって、本実施例は、レール体の底部に存在するレール取付ねじの頭部が循環部構成材に干渉せず、それだけレール体の底部と直動体との離間距離を小さくして装置高さを可及的に低くすることができ、負荷路をできるだけ低い位置に設けて騒音を小さくできる極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0039】
1 レール体
2 直動体
3 負荷路
4 リターン路
5 無負荷路
6 第一負荷溝
7 第二負荷溝
8 循環部構成材
9 リターンキャップ
10 ケーシング
11 転動体
12 挿通孔
13 レール取付ねじ
14 孔
15 突起
16 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略U字状のレール体に対して直動体が直動するように設けられ、このレール体と前記直動体との間には転動体が移動する負荷路が設けられ、この負荷路はリターン路を介して無負荷路と連通せしめられ、この負荷路とリターン路と無負荷路とで転動体無限循環路が左右一対形成された直動装置であって、前記負荷路は、前記レール体の左右の壁部内面に設けられた第一負荷溝と、この第一負荷溝と対向する前記直動体に設けられた第二負荷溝とで構成され、前記直動体には、左右一対の前記負荷路と対応する前記無負荷路が夫々設けられる左右一対の循環部構成材が設けられ、この左右一対の循環部構成材は所定間隔をおいて並設されていることを特徴とする直動装置。
【請求項2】
請求項1記載の直動装置において、前記循環部構成材同士の間隔は、前記レール体の底部に設けられる挿通孔を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじの頭部の幅以上の間隔に設定されていることを特徴とする直動装置。
【請求項3】
断面略U字状のレール体に対して直動体が直動するように設けられ、このレール体と前記直動体との間には転動体が移動する負荷路が設けられ、この負荷路はリターン路を介して無負荷路と連通せしめられ、この負荷路とリターン路と無負荷路とで転動体無限循環路が左右一対形成された直動装置であって、前記直動体は、左右一対の前記負荷路と対応する前記無負荷路が夫々設けられる左右一対の循環部構成材と、この循環部構成材とリターン路を形成するリターンキャップと、この循環部構成材及び前記リターンキャップが保持されるケーシングとで構成され、前記負荷路は、前記レール体の左右の壁部内面に設けられた第一負荷溝と、この第一負荷溝と対向する前記ケーシングの側面に設けられた第二負荷溝とで構成され、前記左右一対の循環部構成材は所定間隔をおいて並設されていることを特徴とする直動装置。
【請求項4】
請求項3記載の直動装置において、前記循環部構成材同士の間隔は、前記レール体の底部に設けられる挿通孔を挿通しレール取付部材に螺着されるレール取付ねじの頭部の幅以上の間隔に設定されていることを特徴とする直動装置。
【請求項5】
請求項3,4いずれか1項に記載の直動装置において、前記循環部構成材には、前記ケーシングのかしめ連結用の孔に挿通せしめられるかしめ連結用の突起が一体に設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項6】
請求項3〜5いずれか1項に記載の直動装置において、前記ケーシングの前後両端部には、前記リターンキャップに係止する係止爪が設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項7】
請求項6記載の直動装置において、前記レール体の前後両端部には前記ケーシングの係止爪と干渉するストッパ部材が設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項8】
請求項3〜7いずれか1項に記載の直動装置において、前記ケーシングは金属製であり、前記循環部構成材及び前記リターンキャップは合成樹脂製であることを特徴とする直動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79673(P2013−79673A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219799(P2011−219799)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(591077818)日本ベアリング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】