直定規の直線度測定のための順次式マルチプローブ法
直定規の直線度の測定のためのシステム及び方法であって、測定システムは、案内面(G(x))に沿って移動するキャリッジ(4)を使用して、直定規(3)に沿って順次式に測定するための多プローブ(4a,4b,4c)装置(4)を含む。キャリッジ(4)は、測定値を取るために、直定規(3)の1つの表面(S(x))に沿って移動され、次に、直定規(3)の反対表面(S'(x))に移転され、測定値を取るために、直定規(3)の反対表面に沿って移動される。直定規の両面で取られる測定地点の加算及び減算によって、プローブに起因する組織的誤差を特定し得る。それによって、直定規の直線度の測定が改良される。それによって、製造並びに作業片及び他の部分の測定における誤差は減少される。方法及び装置を直線度のオンライン較正のためにも使用し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内面に沿って移動するキャリッジを使用した直定規に沿う順次式測定のためのマルチプローブ装置を使用して直定規の直線度を測定するための順次式マルチプローブ法に関する。
【0002】
本発明は、可動素子と、直定規と、直定規の直線度の測定用の測定システムとを有し、測定システムは、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して直定規に沿って順次式に測定するためのマルチプローブ装置を含む機械における位置誤差を測定するための機器にも関する。
【0003】
本発明は、直定規の直線度の測定するための測定システムであって、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して直定規に沿って順次式に測定するためのマルチプローブ装置を含む測定システムにも関する。
【背景技術】
【0004】
機械工具及び多軸機械類は、高精度工学の発達に沿った高い基準の精度を要求する。製造における高精度は、機械コンポーネントの誤差を正確に測定し且つ計算することが可能である場合にのみ達成され得る。
【0005】
機械部分のような作業片の一次元、二次元、又は、三次元検査のために、座標測定機が使用される。作業片は、典型的には、固定テーブルに固定され、一次元、二次元、又は、三次元で移動可能な測定プローブが使用される。作業片上の地点の位置を測定するために、プローブは地点と接触させられ、或いは、他の方法、例えば、容量的に測定が行われ、機械上のスケール又は他のセンサが読まれる。プローブは如何なる種類でもあり得るし、プローブは直定規と接触するプローブと接触し得るし、光学プローブであり得るし、或いは、渦電流又は静電容量に基づく無接触プローブであり得る。地点の位置は、典型的には、機械の作業容量内のX、Y、及び/又は、Z座標として表現される。2つの地点の間の距離を測定するために、地点は連続的に測定され、地点の座標が読まれ、距離が座標から計算される。最新の座標測定機械は、典型的に、高解像度測定システム、電気接触プローブ、モータ駆動、コンピュータ制御駆動、並びに、データのコンピュータ取得及び処理のような機能を有する。
【0006】
1つの種類の座標測定機は、移動ブリッジ機として既知である。ブリッジがテーブル上の案内面に沿ってY方向に移動する。キャリッジがブリッジ上の案内面に沿ってX方向に移動する。それぞれの可動素子と関連するスケールが、3つの軸方向における可動素子の位置を表示する。
【0007】
座標測定機の精度は、スケール又は他の測定装置の誤差によって、並びに、案内面或いは機械動作を定める他の素子によって制限される。精度を増大する1つのアプローチは、誤差が減少されるよう、単に構築技法を改良し、且つ、システムの許容差を減少することである。しかしながら、所要の精度が増大し、作業片のサイズが増大するにつれて、誤差の減少は漸進的により高価になる。直定規に沿う方向における直線性の較正手段として精密直定規が使用される。
【0008】
直線度較正に対する現在の解決策は、個々の機械の「個々の機械誤り」をレーザ測定工具で測定し、それを記憶することである。次に、「個々の機械誤り」が同一に留まるよう、条件を同一に維持するために、あらゆる種類の努力がなされる。これは、確証された「個々の機械誤り」の如何なる偏差をも可能な限り減少するために、温度及び湿度のような条件に対する極めて良好な制御、Zerodur及びインバーのようなしばしば(極めて)高価な材料の使用を要求する。その場合でさえ、構造に影響を及ぼし得る如何なるサービス活動の後にも、測定手続きは定期的に反復されなければならない。
【0009】
そのような誤差を測定し計算する様々な技法が既知である。そのような技法では、機械コンポーネント及び機械動作の誤差を測定するために、しばしば精密直定規がゲージとして使用される。測定が正確であるために、精密直定規の直線度それ自体が精密且つ正確に測定されなければならない、即ち、直定規表面誤差は正確に測定されなければならない。
【0010】
Li et alは、SPIE Vol.2101 Measurement technology and instruments(1993),483頁において、精密直定規の直線度の測定のための順次式3地点法を記載している。「マルチプローブ」測定は、本発明の概念内で、少なくとも3つのプローブが使用されることを意味する。そのような測定では、3つのプローブが設けられるキャリッジが、案内面に沿って移動され、順次式に、地点の組(少なくとの3つ)が直定規上で測定される。測定地点の組を使用することで、Li et alは、案内面における誤差及びキャリッジの偏揺れ誤差と無関係に、直定規の直線度を測定することが可能であると述べている。
【0011】
しかしながら、著者Li et alは直定規の直線度を測定することが可能であると主張するが、本発明者は組織的誤差が残存することが分かった。測定値内のこの組織的誤差は、直定規の長さが増大するに応じて蓄積する。この組織的誤差は、直定規の真偏差から識別され得ないか、或いは、少なくとも容易に識別されない。また、オンライン測定を提供することも困難である。
【0012】
実際には、座標測定機を較正するための全ての既知の従来技術のシステムは、比較的複雑且つ高価である。加えて、較正手続きは時間がかかり、複雑であり、高価であり、誤差の影響下にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
改良された精度を備え、比較的単純であり、且つ/或いは、オンライン測定により良好に適する「技術分野」段落に記載されたような方法、装置、及び、システムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、方法、装置、及び、システムは、キャリッジが、測定値を取るために、直定規の1つの表面に沿って移動され、引き続き、測定値を取るために、直定規の反対表面に沿って移動される。
【0015】
本発明は以下の着想に基づく。
【0016】
理想的には、順次式多プローブ測定は案内面又はキャリッジに組織的誤差があってはならないが、本発明者は組織的誤差が残存することに気付いた。
【0017】
直定規の反対表面に沿ってキャリッジを移動することによって、直定規の両側で、同一の組織的誤差が生成される。直定規の1つの表面で測定値を取ることは、直定規の真偏差と組織的誤差との間の区別を可能にしない。しかしながら、直定規の反対表面も測定されるとき、直定規自体の如何なる偏差も信号を変えるのに対し(凸状は凹状になり逆も同様である)、測定に起因する組織的誤差は信号を変えない。直定規の両面での測定地点の加算及び減算によって、組織的誤差及び完全な直線からの直定規の真偏差が確証され得る。本発明の概念内において、キャリッジは、3つ又はそれよりも多くのプローブが互いに対して位置付けられる如何なる手段又は装置であってもよく、それは単一個体である必要はなく、「案内面」は、キャリッジが直定規に沿って移動される如何なる手段又は装置であってもよく、「キャリッジを回転すること」は、3つ又はそれよりも多くのプローブが変更され、然る後、互いに対するプローブの位置が1つ又はそれよりも多くの軸に沿う回転に従って変更される如何なる方法をも含む。本発明に従った方法にとって、直定規の両側にある案内面が同一であることは、以下に説明されるように必要ではないが、製造のためには、それらは類似することが好ましい。
【0018】
直定規の反対表面で測定することによって、直定規の厚さにおける偏差の故に、追加的な誤差が導入される。しかしながら、直定規の厚さは、より良好に制御され得るし、直定規の直線度よりも条件に余り依存せず、誤差の減少の肯定的な効果(ポイント2)は、厚さの相違に起因する誤差の増分(ポイント3)に大幅に勝る。
【0019】
さらに、本発明に従った方法は、直定規の直線度の連続的な測定を可能にし、直定規の直線度の測定における条件の変化に起因して起こり得る如何なる誤差をも低減し、インライン測定を可能にする。
【0020】
本発明のこれらの並びにさらなる特徴は、添付の図面を参照して例証としてより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好適実施態様を示す添付の図面を参照して、今や本発明を以下により完全に記載する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態においても具現化され得るし、ここに示される実施態様に限定されるよう解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、この開示が網羅的であり且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するよう提供される。全体を通じて同等の番号は同等の素子を指している。
【0022】
図1は、x−y移動機械1の概略図である。機械は、部分AをテーブルBの上で2つの垂直方向x及びyに移動するための移動部2を有する。そのような機械は、如何なる種類の精密機械類でもあり得る。機械工具及び多軸機械類は、高精度工学の発達と一致する高い基準の精度を要求する。機械コンポーネントの誤差を正確に測定し且つ計算し得る場合に限って製造における高精度を達成し得る。
【0023】
直線度較正に対する現在の解決策は、(しばしば)レーザ測定工具を用いて、個々の機械の「個々の機械障害」を測定し、それを記憶することである。その場合には、「個々の機械障害」が同じに留まるよう、条件を同一に維持するために、あらゆる種類の努力が行われる。これは、温度及び湿度のような条件に対する極めて良好な制御、構築される「個々の機械障害」の如何なる偏差をも可能な限り低減するZerodur及びインバーのようなしばしば(極めて)高価な材料の使用を要求する。その場合でさえ、測定手続きは、規則的な間隔で、例えば、隔年で、並びに、構成に影響を及ぼし得る如何なる点検活動の後にも反復されなければならない。
【0024】
正確に測定し得るためには、ゲージが利用可能でなければならない。しかしながら、このゲージも測定されなければならない。従って、究極的には、ゲージの精度が製造の精度を決定する。
【0025】
しばしば直線度較正のために直定規が使用される。図2はそのような直定規3の位置を概略的に示している。
【0026】
直定規の直線度を測定するために、様々な方法が既知であり、それらの1つは、図3に例証されるような、所謂3プローブ法である。測定装置4が使用され、そこには、3つのプローブ4a,4b,4cが設けられている。測定装置は、案内面G(x)に沿って移動され、間隔を置いて、位置S(x)が順次式に測定される。よって、3つのプローブを使用して順次式に測定値が取られ、それがこの方法が順次式3プローブ法と呼ばれる理由である。比較的多数の未知のパラメータが役割を演じる。先ず第一に、測定されるべき表面S(x)がアプリオリに未知である。第二に、案内面G(x)が未知であり、第三に、装置4の偏揺れ角γが未知である。
【0027】
各地点n、n+1、n+2、n+m等で、プローブ4aは、位置nにある案内面G(x)と表面S(x)との間の距離a(n)を測定する。
a(n)=G(n)-S(n)
【0028】
同様に、プローブ4bは、位置nで、案内面と表面との間の距離b(n)を測定し、プローブ4cは、距離c(n)を測定する。
b(n)=G(n)-S(n+1)+Lγ(n)
ここで、γ(n)は、位置nにおける偏揺れ誤差である。
c(n)=G(n)-S(n+2)+2Lγ(n)
【0029】
加算及び減算は以下をもたらす。
a(n)-2b(n)+c(n)=-S(n)+2S(n+1)-S(n+2).
a(n+1)-2b(n+1)+c(n+1)=-S(n+1)+2S(n+2)-S(n+3).
a(n+2)-2b(n+2)+c(n+2)=-S(n+2)+2S(n+3)-S(n+4).
等。
【0030】
2つの地点(例えば、開始地点(S(1)及びS(2))を通じて線を引き得るし、よって、これらの地点S(1)及びS(2)をゼロに設定し得る。これは上記等式を使用して全ての地点S(n)を構築することを可能にする。上記等式は案内面G(x)及び偏揺れ誤差γ(x)と無関係であることが留意されよう。
【0031】
よって、3プローブ測定法を用いてn地点で測定することによって、案内面G(x)及び偏揺れ誤差γ(x)と無関係にS(x)の値を決定することが可能である。
【0032】
順次式3プローブ測定法は、そのような計算に基づく。
【0033】
もしG(x)及びγ(x)が唯一の未知の量であるならば、順次式3(或いは3よりも多くの)プローブ法は、S(x)を確証するために、未知の量G(x)及びγを除去し、それによって、直定規の直線度を測定することを正に可能にし、それを他の、例えば、作業片の直線度測定のための較正として用い得る。
【0034】
しかしながら、本発明者は、図5に例証される、小さな組織的誤差が生じることに気付いた。
【0035】
中央プローブ4bは、他のプローブ4a及び4cを通じる直線に対して量δだけオフセットされ得る。このオフセットは、値nと無関係な固定オフセットである。上述の等式は今や以下と通りになる。
a(n)=G(n)-S(n)
b(n)=G(n)-S(n+1)-δ+Lγ(n)
c(n)=G(n)-S(n+2)+2Lγ(n)
【0036】
加算及び減算は以下をもたらす。
a(n)-2b(n)+c(n)=-S(n)+2S(n+1)+δ-S(n+2)
a(n+1)-2b(n+1)+c(n+1)=-S(n+1)+2S(n+2)+γ-S(n+3)
a(n+2)-2b(n+2)+c(n+2)=-S(n+2)+2S(n+3)+γ-S(n+4)
等。
【0037】
未知のパラメータδは等式の結果に影響を及ぼす。実際には、測定における累積的な誤差が生じる、即ち、第一地点では、誤差は小さい(δ)であるのに対し、第n番目の地点では、誤差はほぼn(n−1)δである。組織的誤差δが小さくあり得るとしても、累積的な影響の故に、測定における誤差は大きくあり得る。装置のサイズは増大する傾向にあり、測定地点の数も同様であるので、この組織的誤差は相当なものとなる。
【0038】
図6は、本発明に従った方法及び装置を例証している。プローブ4a,4b,4cを備える装置4は、直定規3の1つの表面S(x)に沿って移動され、測定値が取られる。次に、装置は、直定規3の反対表面S'(x)を測定するために、直定規3の反対表面に持ち込まれる。
【0039】
図7及び8は、2つの異なる構造を例証している。装置4は、直定規の両面で、プローブ4aがプローブ4aに面し或いはプローブ4cに面するよう、即ち、同一のプローブが面し合うよう向けられ得る。図7では、同一プローブが面し合い、図8では、異なるプローブが面し合う、即ち、プローブの順序が逆転される。「面し合う」は、中央プローブが直定規に沿って同一の座標に位置付けられるとき、4aプローブの座標が実質的に同一(図7)であるか、或いは、4a及び4cプローブの座標が実質的に同一であることを意味する。
【0040】
図9は、任意ユニット(a.u)における測定値(Δ+S(x))を、一般的な順次式3プローブ法によって決定されるような任意ユニット(a.u)内のxの関数として例証している。大きな三角形によって例証される測定値(Δ+S(x))は、実際には、2つのコンポーネント、即ち、小さな正方形によって例証されるS(x)のための真正値、即ち、直線と思われる直定規3における屈曲、及び、小さなダイヤモンドによって例証される組織的誤差Δを含み、組織的誤差Δは、測定地点nの関数として、多かれ少なかれ二次形式で成長する。組織的誤差が、測定地点nの数の関数として、よって、直定規に沿って進行される距離xとして特定の方法で成長することを知ることで、この組織的誤差Δを隔離し得ることを推測し得る。しかしながら、直定規3における屈曲は、普通、多かれ少なかれ二次曲線を辿るので、2つの寄与Δ(組織的誤差)及びS(x)(直線の真偏差)は、少なくとも容易には分離され得ない。
【0041】
図10は、同一の測定値を例証しているが、直定規3の反対表面で取られている。測定値(Δ+S'(x))は、実際には、2つのコンポーネント、即ち、S'(x)のための真正値、即ち、両面での屈曲、及び、組織的誤差Δを含む。組織的誤差は、変更されなかった誤差δに起因する。S'(x)のための値は、S(x)の値のために、反対信号である。何故ならば、直定規の1つの表面で凸状であったものは凹状であり、直定規の他の側では逆であるからである。再び、これらの測定値のみを使用するならば、2つの寄与は分離され得ない。しかしながら、双方の測定値を用いるならば、図11及び12に例証されるように、測定値に対する2つの寄与、即ち、組織的誤差と直定規の曲率を分離することが可能である。測定値の加算及び減算は、一方では、組織的誤差Δのための値をもたらし、他方では、曲率S(x)のための値をもたらす。直定規の厚さth(図7及び8)が直定規の曲率(屈曲)よりも良好に制御され得ることを条件として、このスキームは機能する。しかしながら、後者は、殆ど常に当て嵌まる。直定規の厚さは極めて高精度まで制御され得るし、直定規の直線度に相当な影響を有し得る温度及び湿度のような他のパラメータにも殆ど依存しない。スキームは2つの案内面(G(x))及び偏揺れ誤差(γ(x))が直定規の両面のために同一である場合に限り機能し得ることが留意されるべきである。これは、もし正しければ、方法に重大な制限を与える。何故ならば、これが当て嵌まることは殆どあり得ないからである。しかしながら、これは当て嵌まらず、G(x)及びγ(x)は、直定規3の両側で、互いに無関係に、等式から外れる。しかしながら、同一のプローブが直定規の両面で使用されることは本質的であり、互いに対するプローブの位置は同一に留まるので、誤差δは同一に留まる。2つの異なるプローブを両面で同時に使用することは本発明の範囲内に入らないし、同一のプローブを2つ同一面で異なる向きに使用することも入らない。
【0042】
手短に言えば、本発明は以下のように記載され得る。
【0043】
可動素子(2)と直定規(3)とを有する機械における位置誤差を測定するための装置、並びに、直定規の直線度の測定のためのシステムにおいて、測定システムは、案内面(G(x))に沿って移動するキャリッジ(4)を使用して、直定規(3)に沿って順次式に測定するための多プローブ(4a,4b,4c)装置(4)を含む。キャリッジ(4)は、測定値を取るために、直定規(3)の1つの表面(S(x))に沿って移動され、次に、直定規(3)の反対表面(S'(x))に移転され、測定値を取るために、直定規(3)の反対表面に沿って移動される。直定規の両面で取られる測定地点の加算及び減算によって、プローブに起因する組織的誤差は特定され得る。それによって、直定規の直線度の測定が改良される。製造並びに作業片及び他の部分の測定における誤差は低減される。方法及び装置は、直線度のオンライン較正にも使用され得る。
【0044】
本発明のフレームワーク内で多くの変更が可能であることは明らかであろう。本発明は上に具体的に示され且つ記載されたものによって制限されないことが当業者によって理解されよう。本発明はありとあらゆる新規な機能並びに特徴的機能のありとあらゆる組み合わせに存する。請求項内の参照番号は、保護範囲を制限しない。動詞「含む」及びその活用形の使用は、請求項内に記載されるもの以外の素子の存在を排除しない。素子に先行する不定冠詞の使用は、複数のそのような素子の存在を排除しない。
【0045】
例えば、好適実施態様において、3プローブ法が使用されているが、3よりも多くのプローブを使用し得る。一方では、追加的な誤差が導入されるが、しかしながら、追加的情報が利用可能である。好適実施態様では、3プローブ法が使用される。
【0046】
1つの方向に、或いは、2つ以上の方向に直定規を設け得る。
【0047】
厚さの偏差が直線の偏差よりも良好に制御可能であるので、本発明の方法は機能する。直定規の寸法は、例えば、5ミリメートル(厚さ)×2〜3メートル(長さ)である。直定規の厚さは、製造中、マイクロメートル内に制御され得る。
【0048】
1つの種類の組織的誤差は、その長さに掻直定規の厚さの組織的な変化である。直定規の長さに沿う厚さのそのような組織的な既知の変化は、それを装置内に入れる前に、或いは装置内にある間に直定規に沿う直定規の厚さの変化を正確に測定し、且つ、直定規の両面で測定値を比較するときにそのような偏差を計上することによって、測定値内に計上され得る。直定規に沿う位置の関数としてのそのような組織的偏差を含む簡単なルックアップ表で十分である。
【0049】
温度偏差のような直定規の直線度に対する一時的な影響に起因する偏差は計上されないが、そのような誤差は直線度の偏差よりも少ない大きさのオーダである。
【0050】
直定規は、ラス又は板の形態或いは如何なる適切な形状又はフォームをも有し得る。
【0051】
プローブは直定規の1つの側に全てある必要はない。
【0052】
例えば、数n(n≧1)のプローブが直定規の第一表面を探り得るのと同時に、m(m≧1)プローブが直定規の反対表面を探る。ここで、n+3≧3である。この場合には、方法は、1つの方向に沿って測定値を取り、然る後、mプローブが第一表面を探り且つnプローブが反対表面を探るよう、キャリッジが回転され、測定が反復される。
【0053】
原則的に、本発明の最も広い概念において、キャリッジは直定規の反対側に移転され、直線縁部を適所に残し得るし、或いは、キャリッジは適所に残され、直線縁部は反対表面がキャリッジに面するよう回転される。
【0054】
直線縁部は以下の故に凸状又は凹状(即ち、真直線縁部から逸脱する形態を有する)。
− 直線縁部における固有の曲率
− 直定規の取付け(例えば、クランピング又はネジ付け)に起因する直定規における曲率。
【0055】
直線縁部を回転することは、直定規の固有の曲率を変更しない(よって、キャリッジに対して凸状であったものは凹状になり逆も同様である)。しかしながら、直線縁部の取付けは、直定規の回転に起因して変更され得る。それは曲率に変化を導入し得るし、そのような変化は誤差を招き得る。よって、直定規が変更されないままにされ、キャリッジが直定規の反対表面に移転されるのが好ましい。
【0056】
本発明の方法、装置、及び、システムは、オンライン測定に適している。記載されたような装置は、直定規に沿って規則的に進行し、そのような往復進行の間、キャリッジは、最終位置に達すると、プローブがそのような変更前には1つの表面を探り、然る後、反対表面を探るよう、位置が変更される。直定規に沿うそのような往復移動の間、温度及び湿度のような一時的な影響は余り変わらず、本方法は直線度のオンライン精密較正を可能にする。プローブの位置の変化、即ち、直定規の1つの表面から反対への変化は、そのような正確なオンライン測定を行うことを可能にすることが強調される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】x−y移動機械を示す概略図である。
【図2】図1に示されるような装置上の精密測定直定規の一例を示す概略図である。
【図3】3プローブ順次法を示す概略図である。
【図4】3プローブ順次法を示す概略図である。
【図5】組織的誤差を示す概略図である。
【図6】直定規の両面で探るプローブを示す概略図である。
【図7】直定規の両面で探るプローブを示す概略図である。
【図8】測定値を示すグラフである。
【図9】測定値を示すグラフである。
【図10】測定値を示すグラフである。
【図11】測定値を示すグラフである。
【図12】測定値を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内面に沿って移動するキャリッジを使用した直定規に沿う順次式測定のためのマルチプローブ装置を使用して直定規の直線度を測定するための順次式マルチプローブ法に関する。
【0002】
本発明は、可動素子と、直定規と、直定規の直線度の測定用の測定システムとを有し、測定システムは、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して直定規に沿って順次式に測定するためのマルチプローブ装置を含む機械における位置誤差を測定するための機器にも関する。
【0003】
本発明は、直定規の直線度の測定するための測定システムであって、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して直定規に沿って順次式に測定するためのマルチプローブ装置を含む測定システムにも関する。
【背景技術】
【0004】
機械工具及び多軸機械類は、高精度工学の発達に沿った高い基準の精度を要求する。製造における高精度は、機械コンポーネントの誤差を正確に測定し且つ計算することが可能である場合にのみ達成され得る。
【0005】
機械部分のような作業片の一次元、二次元、又は、三次元検査のために、座標測定機が使用される。作業片は、典型的には、固定テーブルに固定され、一次元、二次元、又は、三次元で移動可能な測定プローブが使用される。作業片上の地点の位置を測定するために、プローブは地点と接触させられ、或いは、他の方法、例えば、容量的に測定が行われ、機械上のスケール又は他のセンサが読まれる。プローブは如何なる種類でもあり得るし、プローブは直定規と接触するプローブと接触し得るし、光学プローブであり得るし、或いは、渦電流又は静電容量に基づく無接触プローブであり得る。地点の位置は、典型的には、機械の作業容量内のX、Y、及び/又は、Z座標として表現される。2つの地点の間の距離を測定するために、地点は連続的に測定され、地点の座標が読まれ、距離が座標から計算される。最新の座標測定機械は、典型的に、高解像度測定システム、電気接触プローブ、モータ駆動、コンピュータ制御駆動、並びに、データのコンピュータ取得及び処理のような機能を有する。
【0006】
1つの種類の座標測定機は、移動ブリッジ機として既知である。ブリッジがテーブル上の案内面に沿ってY方向に移動する。キャリッジがブリッジ上の案内面に沿ってX方向に移動する。それぞれの可動素子と関連するスケールが、3つの軸方向における可動素子の位置を表示する。
【0007】
座標測定機の精度は、スケール又は他の測定装置の誤差によって、並びに、案内面或いは機械動作を定める他の素子によって制限される。精度を増大する1つのアプローチは、誤差が減少されるよう、単に構築技法を改良し、且つ、システムの許容差を減少することである。しかしながら、所要の精度が増大し、作業片のサイズが増大するにつれて、誤差の減少は漸進的により高価になる。直定規に沿う方向における直線性の較正手段として精密直定規が使用される。
【0008】
直線度較正に対する現在の解決策は、個々の機械の「個々の機械誤り」をレーザ測定工具で測定し、それを記憶することである。次に、「個々の機械誤り」が同一に留まるよう、条件を同一に維持するために、あらゆる種類の努力がなされる。これは、確証された「個々の機械誤り」の如何なる偏差をも可能な限り減少するために、温度及び湿度のような条件に対する極めて良好な制御、Zerodur及びインバーのようなしばしば(極めて)高価な材料の使用を要求する。その場合でさえ、構造に影響を及ぼし得る如何なるサービス活動の後にも、測定手続きは定期的に反復されなければならない。
【0009】
そのような誤差を測定し計算する様々な技法が既知である。そのような技法では、機械コンポーネント及び機械動作の誤差を測定するために、しばしば精密直定規がゲージとして使用される。測定が正確であるために、精密直定規の直線度それ自体が精密且つ正確に測定されなければならない、即ち、直定規表面誤差は正確に測定されなければならない。
【0010】
Li et alは、SPIE Vol.2101 Measurement technology and instruments(1993),483頁において、精密直定規の直線度の測定のための順次式3地点法を記載している。「マルチプローブ」測定は、本発明の概念内で、少なくとも3つのプローブが使用されることを意味する。そのような測定では、3つのプローブが設けられるキャリッジが、案内面に沿って移動され、順次式に、地点の組(少なくとの3つ)が直定規上で測定される。測定地点の組を使用することで、Li et alは、案内面における誤差及びキャリッジの偏揺れ誤差と無関係に、直定規の直線度を測定することが可能であると述べている。
【0011】
しかしながら、著者Li et alは直定規の直線度を測定することが可能であると主張するが、本発明者は組織的誤差が残存することが分かった。測定値内のこの組織的誤差は、直定規の長さが増大するに応じて蓄積する。この組織的誤差は、直定規の真偏差から識別され得ないか、或いは、少なくとも容易に識別されない。また、オンライン測定を提供することも困難である。
【0012】
実際には、座標測定機を較正するための全ての既知の従来技術のシステムは、比較的複雑且つ高価である。加えて、較正手続きは時間がかかり、複雑であり、高価であり、誤差の影響下にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
改良された精度を備え、比較的単純であり、且つ/或いは、オンライン測定により良好に適する「技術分野」段落に記載されたような方法、装置、及び、システムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、方法、装置、及び、システムは、キャリッジが、測定値を取るために、直定規の1つの表面に沿って移動され、引き続き、測定値を取るために、直定規の反対表面に沿って移動される。
【0015】
本発明は以下の着想に基づく。
【0016】
理想的には、順次式多プローブ測定は案内面又はキャリッジに組織的誤差があってはならないが、本発明者は組織的誤差が残存することに気付いた。
【0017】
直定規の反対表面に沿ってキャリッジを移動することによって、直定規の両側で、同一の組織的誤差が生成される。直定規の1つの表面で測定値を取ることは、直定規の真偏差と組織的誤差との間の区別を可能にしない。しかしながら、直定規の反対表面も測定されるとき、直定規自体の如何なる偏差も信号を変えるのに対し(凸状は凹状になり逆も同様である)、測定に起因する組織的誤差は信号を変えない。直定規の両面での測定地点の加算及び減算によって、組織的誤差及び完全な直線からの直定規の真偏差が確証され得る。本発明の概念内において、キャリッジは、3つ又はそれよりも多くのプローブが互いに対して位置付けられる如何なる手段又は装置であってもよく、それは単一個体である必要はなく、「案内面」は、キャリッジが直定規に沿って移動される如何なる手段又は装置であってもよく、「キャリッジを回転すること」は、3つ又はそれよりも多くのプローブが変更され、然る後、互いに対するプローブの位置が1つ又はそれよりも多くの軸に沿う回転に従って変更される如何なる方法をも含む。本発明に従った方法にとって、直定規の両側にある案内面が同一であることは、以下に説明されるように必要ではないが、製造のためには、それらは類似することが好ましい。
【0018】
直定規の反対表面で測定することによって、直定規の厚さにおける偏差の故に、追加的な誤差が導入される。しかしながら、直定規の厚さは、より良好に制御され得るし、直定規の直線度よりも条件に余り依存せず、誤差の減少の肯定的な効果(ポイント2)は、厚さの相違に起因する誤差の増分(ポイント3)に大幅に勝る。
【0019】
さらに、本発明に従った方法は、直定規の直線度の連続的な測定を可能にし、直定規の直線度の測定における条件の変化に起因して起こり得る如何なる誤差をも低減し、インライン測定を可能にする。
【0020】
本発明のこれらの並びにさらなる特徴は、添付の図面を参照して例証としてより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好適実施態様を示す添付の図面を参照して、今や本発明を以下により完全に記載する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態においても具現化され得るし、ここに示される実施態様に限定されるよう解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、この開示が網羅的であり且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するよう提供される。全体を通じて同等の番号は同等の素子を指している。
【0022】
図1は、x−y移動機械1の概略図である。機械は、部分AをテーブルBの上で2つの垂直方向x及びyに移動するための移動部2を有する。そのような機械は、如何なる種類の精密機械類でもあり得る。機械工具及び多軸機械類は、高精度工学の発達と一致する高い基準の精度を要求する。機械コンポーネントの誤差を正確に測定し且つ計算し得る場合に限って製造における高精度を達成し得る。
【0023】
直線度較正に対する現在の解決策は、(しばしば)レーザ測定工具を用いて、個々の機械の「個々の機械障害」を測定し、それを記憶することである。その場合には、「個々の機械障害」が同じに留まるよう、条件を同一に維持するために、あらゆる種類の努力が行われる。これは、温度及び湿度のような条件に対する極めて良好な制御、構築される「個々の機械障害」の如何なる偏差をも可能な限り低減するZerodur及びインバーのようなしばしば(極めて)高価な材料の使用を要求する。その場合でさえ、測定手続きは、規則的な間隔で、例えば、隔年で、並びに、構成に影響を及ぼし得る如何なる点検活動の後にも反復されなければならない。
【0024】
正確に測定し得るためには、ゲージが利用可能でなければならない。しかしながら、このゲージも測定されなければならない。従って、究極的には、ゲージの精度が製造の精度を決定する。
【0025】
しばしば直線度較正のために直定規が使用される。図2はそのような直定規3の位置を概略的に示している。
【0026】
直定規の直線度を測定するために、様々な方法が既知であり、それらの1つは、図3に例証されるような、所謂3プローブ法である。測定装置4が使用され、そこには、3つのプローブ4a,4b,4cが設けられている。測定装置は、案内面G(x)に沿って移動され、間隔を置いて、位置S(x)が順次式に測定される。よって、3つのプローブを使用して順次式に測定値が取られ、それがこの方法が順次式3プローブ法と呼ばれる理由である。比較的多数の未知のパラメータが役割を演じる。先ず第一に、測定されるべき表面S(x)がアプリオリに未知である。第二に、案内面G(x)が未知であり、第三に、装置4の偏揺れ角γが未知である。
【0027】
各地点n、n+1、n+2、n+m等で、プローブ4aは、位置nにある案内面G(x)と表面S(x)との間の距離a(n)を測定する。
a(n)=G(n)-S(n)
【0028】
同様に、プローブ4bは、位置nで、案内面と表面との間の距離b(n)を測定し、プローブ4cは、距離c(n)を測定する。
b(n)=G(n)-S(n+1)+Lγ(n)
ここで、γ(n)は、位置nにおける偏揺れ誤差である。
c(n)=G(n)-S(n+2)+2Lγ(n)
【0029】
加算及び減算は以下をもたらす。
a(n)-2b(n)+c(n)=-S(n)+2S(n+1)-S(n+2).
a(n+1)-2b(n+1)+c(n+1)=-S(n+1)+2S(n+2)-S(n+3).
a(n+2)-2b(n+2)+c(n+2)=-S(n+2)+2S(n+3)-S(n+4).
等。
【0030】
2つの地点(例えば、開始地点(S(1)及びS(2))を通じて線を引き得るし、よって、これらの地点S(1)及びS(2)をゼロに設定し得る。これは上記等式を使用して全ての地点S(n)を構築することを可能にする。上記等式は案内面G(x)及び偏揺れ誤差γ(x)と無関係であることが留意されよう。
【0031】
よって、3プローブ測定法を用いてn地点で測定することによって、案内面G(x)及び偏揺れ誤差γ(x)と無関係にS(x)の値を決定することが可能である。
【0032】
順次式3プローブ測定法は、そのような計算に基づく。
【0033】
もしG(x)及びγ(x)が唯一の未知の量であるならば、順次式3(或いは3よりも多くの)プローブ法は、S(x)を確証するために、未知の量G(x)及びγを除去し、それによって、直定規の直線度を測定することを正に可能にし、それを他の、例えば、作業片の直線度測定のための較正として用い得る。
【0034】
しかしながら、本発明者は、図5に例証される、小さな組織的誤差が生じることに気付いた。
【0035】
中央プローブ4bは、他のプローブ4a及び4cを通じる直線に対して量δだけオフセットされ得る。このオフセットは、値nと無関係な固定オフセットである。上述の等式は今や以下と通りになる。
a(n)=G(n)-S(n)
b(n)=G(n)-S(n+1)-δ+Lγ(n)
c(n)=G(n)-S(n+2)+2Lγ(n)
【0036】
加算及び減算は以下をもたらす。
a(n)-2b(n)+c(n)=-S(n)+2S(n+1)+δ-S(n+2)
a(n+1)-2b(n+1)+c(n+1)=-S(n+1)+2S(n+2)+γ-S(n+3)
a(n+2)-2b(n+2)+c(n+2)=-S(n+2)+2S(n+3)+γ-S(n+4)
等。
【0037】
未知のパラメータδは等式の結果に影響を及ぼす。実際には、測定における累積的な誤差が生じる、即ち、第一地点では、誤差は小さい(δ)であるのに対し、第n番目の地点では、誤差はほぼn(n−1)δである。組織的誤差δが小さくあり得るとしても、累積的な影響の故に、測定における誤差は大きくあり得る。装置のサイズは増大する傾向にあり、測定地点の数も同様であるので、この組織的誤差は相当なものとなる。
【0038】
図6は、本発明に従った方法及び装置を例証している。プローブ4a,4b,4cを備える装置4は、直定規3の1つの表面S(x)に沿って移動され、測定値が取られる。次に、装置は、直定規3の反対表面S'(x)を測定するために、直定規3の反対表面に持ち込まれる。
【0039】
図7及び8は、2つの異なる構造を例証している。装置4は、直定規の両面で、プローブ4aがプローブ4aに面し或いはプローブ4cに面するよう、即ち、同一のプローブが面し合うよう向けられ得る。図7では、同一プローブが面し合い、図8では、異なるプローブが面し合う、即ち、プローブの順序が逆転される。「面し合う」は、中央プローブが直定規に沿って同一の座標に位置付けられるとき、4aプローブの座標が実質的に同一(図7)であるか、或いは、4a及び4cプローブの座標が実質的に同一であることを意味する。
【0040】
図9は、任意ユニット(a.u)における測定値(Δ+S(x))を、一般的な順次式3プローブ法によって決定されるような任意ユニット(a.u)内のxの関数として例証している。大きな三角形によって例証される測定値(Δ+S(x))は、実際には、2つのコンポーネント、即ち、小さな正方形によって例証されるS(x)のための真正値、即ち、直線と思われる直定規3における屈曲、及び、小さなダイヤモンドによって例証される組織的誤差Δを含み、組織的誤差Δは、測定地点nの関数として、多かれ少なかれ二次形式で成長する。組織的誤差が、測定地点nの数の関数として、よって、直定規に沿って進行される距離xとして特定の方法で成長することを知ることで、この組織的誤差Δを隔離し得ることを推測し得る。しかしながら、直定規3における屈曲は、普通、多かれ少なかれ二次曲線を辿るので、2つの寄与Δ(組織的誤差)及びS(x)(直線の真偏差)は、少なくとも容易には分離され得ない。
【0041】
図10は、同一の測定値を例証しているが、直定規3の反対表面で取られている。測定値(Δ+S'(x))は、実際には、2つのコンポーネント、即ち、S'(x)のための真正値、即ち、両面での屈曲、及び、組織的誤差Δを含む。組織的誤差は、変更されなかった誤差δに起因する。S'(x)のための値は、S(x)の値のために、反対信号である。何故ならば、直定規の1つの表面で凸状であったものは凹状であり、直定規の他の側では逆であるからである。再び、これらの測定値のみを使用するならば、2つの寄与は分離され得ない。しかしながら、双方の測定値を用いるならば、図11及び12に例証されるように、測定値に対する2つの寄与、即ち、組織的誤差と直定規の曲率を分離することが可能である。測定値の加算及び減算は、一方では、組織的誤差Δのための値をもたらし、他方では、曲率S(x)のための値をもたらす。直定規の厚さth(図7及び8)が直定規の曲率(屈曲)よりも良好に制御され得ることを条件として、このスキームは機能する。しかしながら、後者は、殆ど常に当て嵌まる。直定規の厚さは極めて高精度まで制御され得るし、直定規の直線度に相当な影響を有し得る温度及び湿度のような他のパラメータにも殆ど依存しない。スキームは2つの案内面(G(x))及び偏揺れ誤差(γ(x))が直定規の両面のために同一である場合に限り機能し得ることが留意されるべきである。これは、もし正しければ、方法に重大な制限を与える。何故ならば、これが当て嵌まることは殆どあり得ないからである。しかしながら、これは当て嵌まらず、G(x)及びγ(x)は、直定規3の両側で、互いに無関係に、等式から外れる。しかしながら、同一のプローブが直定規の両面で使用されることは本質的であり、互いに対するプローブの位置は同一に留まるので、誤差δは同一に留まる。2つの異なるプローブを両面で同時に使用することは本発明の範囲内に入らないし、同一のプローブを2つ同一面で異なる向きに使用することも入らない。
【0042】
手短に言えば、本発明は以下のように記載され得る。
【0043】
可動素子(2)と直定規(3)とを有する機械における位置誤差を測定するための装置、並びに、直定規の直線度の測定のためのシステムにおいて、測定システムは、案内面(G(x))に沿って移動するキャリッジ(4)を使用して、直定規(3)に沿って順次式に測定するための多プローブ(4a,4b,4c)装置(4)を含む。キャリッジ(4)は、測定値を取るために、直定規(3)の1つの表面(S(x))に沿って移動され、次に、直定規(3)の反対表面(S'(x))に移転され、測定値を取るために、直定規(3)の反対表面に沿って移動される。直定規の両面で取られる測定地点の加算及び減算によって、プローブに起因する組織的誤差は特定され得る。それによって、直定規の直線度の測定が改良される。製造並びに作業片及び他の部分の測定における誤差は低減される。方法及び装置は、直線度のオンライン較正にも使用され得る。
【0044】
本発明のフレームワーク内で多くの変更が可能であることは明らかであろう。本発明は上に具体的に示され且つ記載されたものによって制限されないことが当業者によって理解されよう。本発明はありとあらゆる新規な機能並びに特徴的機能のありとあらゆる組み合わせに存する。請求項内の参照番号は、保護範囲を制限しない。動詞「含む」及びその活用形の使用は、請求項内に記載されるもの以外の素子の存在を排除しない。素子に先行する不定冠詞の使用は、複数のそのような素子の存在を排除しない。
【0045】
例えば、好適実施態様において、3プローブ法が使用されているが、3よりも多くのプローブを使用し得る。一方では、追加的な誤差が導入されるが、しかしながら、追加的情報が利用可能である。好適実施態様では、3プローブ法が使用される。
【0046】
1つの方向に、或いは、2つ以上の方向に直定規を設け得る。
【0047】
厚さの偏差が直線の偏差よりも良好に制御可能であるので、本発明の方法は機能する。直定規の寸法は、例えば、5ミリメートル(厚さ)×2〜3メートル(長さ)である。直定規の厚さは、製造中、マイクロメートル内に制御され得る。
【0048】
1つの種類の組織的誤差は、その長さに掻直定規の厚さの組織的な変化である。直定規の長さに沿う厚さのそのような組織的な既知の変化は、それを装置内に入れる前に、或いは装置内にある間に直定規に沿う直定規の厚さの変化を正確に測定し、且つ、直定規の両面で測定値を比較するときにそのような偏差を計上することによって、測定値内に計上され得る。直定規に沿う位置の関数としてのそのような組織的偏差を含む簡単なルックアップ表で十分である。
【0049】
温度偏差のような直定規の直線度に対する一時的な影響に起因する偏差は計上されないが、そのような誤差は直線度の偏差よりも少ない大きさのオーダである。
【0050】
直定規は、ラス又は板の形態或いは如何なる適切な形状又はフォームをも有し得る。
【0051】
プローブは直定規の1つの側に全てある必要はない。
【0052】
例えば、数n(n≧1)のプローブが直定規の第一表面を探り得るのと同時に、m(m≧1)プローブが直定規の反対表面を探る。ここで、n+3≧3である。この場合には、方法は、1つの方向に沿って測定値を取り、然る後、mプローブが第一表面を探り且つnプローブが反対表面を探るよう、キャリッジが回転され、測定が反復される。
【0053】
原則的に、本発明の最も広い概念において、キャリッジは直定規の反対側に移転され、直線縁部を適所に残し得るし、或いは、キャリッジは適所に残され、直線縁部は反対表面がキャリッジに面するよう回転される。
【0054】
直線縁部は以下の故に凸状又は凹状(即ち、真直線縁部から逸脱する形態を有する)。
− 直線縁部における固有の曲率
− 直定規の取付け(例えば、クランピング又はネジ付け)に起因する直定規における曲率。
【0055】
直線縁部を回転することは、直定規の固有の曲率を変更しない(よって、キャリッジに対して凸状であったものは凹状になり逆も同様である)。しかしながら、直線縁部の取付けは、直定規の回転に起因して変更され得る。それは曲率に変化を導入し得るし、そのような変化は誤差を招き得る。よって、直定規が変更されないままにされ、キャリッジが直定規の反対表面に移転されるのが好ましい。
【0056】
本発明の方法、装置、及び、システムは、オンライン測定に適している。記載されたような装置は、直定規に沿って規則的に進行し、そのような往復進行の間、キャリッジは、最終位置に達すると、プローブがそのような変更前には1つの表面を探り、然る後、反対表面を探るよう、位置が変更される。直定規に沿うそのような往復移動の間、温度及び湿度のような一時的な影響は余り変わらず、本方法は直線度のオンライン精密較正を可能にする。プローブの位置の変化、即ち、直定規の1つの表面から反対への変化は、そのような正確なオンライン測定を行うことを可能にすることが強調される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】x−y移動機械を示す概略図である。
【図2】図1に示されるような装置上の精密測定直定規の一例を示す概略図である。
【図3】3プローブ順次法を示す概略図である。
【図4】3プローブ順次法を示す概略図である。
【図5】組織的誤差を示す概略図である。
【図6】直定規の両面で探るプローブを示す概略図である。
【図7】直定規の両面で探るプローブを示す概略図である。
【図8】測定値を示すグラフである。
【図9】測定値を示すグラフである。
【図10】測定値を示すグラフである。
【図11】測定値を示すグラフである。
【図12】測定値を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内面に沿って移動するキャリッジを使用して直定規に沿う順次式測定のための多プローブ装置を使用する前記直定規の直線度の測定のための順次式多プローブ方法であって、前記キャリッジは、測定値を取るために、前記直定規の1つの表面に沿って移動され、測定値を取るために、前記直定規の反対表面に沿って順次式に移動される、順次式多プローブ方法。
【請求項2】
前記直定規の両面で、前記キャリッジは、同一のプローブが互いに面し合うよう方向付けられる、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項3】
前記直定規の両面で、前記キャリッジは、プローブの順序が逆転されるよう方向付けられる、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項4】
3プローブが使用される、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項5】
前記直定規の前記直線度の測定値をもたらすために、前記直定規の両面のために取られる前記測定値は比較される、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項6】
前記比較において、前記直定規の厚さにおける組織的誤差が考慮される、請求項5に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項7】
可動素子と直定規とを有する機械における位置誤差を測定するための装置、並びに、前記直定規の直線度の測定のためのシステムであって、当該測定システムは、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して前記直定規に沿って順次式に測定するための多プローブ装置を含み、当該装置は、測定値を取るために、前記直定規の1つの表面に沿って前記キャリッジを移動し、前記直定規の反対表面に前記キャリッジを移転し、且つ、測定値を取るために、前記直定規の前記反対表面に沿って前記キャリッジを移動するための手段を含む、測定システム。
【請求項8】
直定規の直線度の測定のための測定システムであって、当該測定システムは、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して前記直定規に沿って順次式に測定するための多プローブ装置を含み、当該測定システムは、測定値を取るために、前記直定規の1つの表面に沿って前記キャリッジを移動し、前記キャリッジを前記直定規の反対表面に移転し、測定値を取るために、前記直定規の前記反対表面に沿って前記キャリッジを移動するための手段を含む、測定システム。
【請求項1】
案内面に沿って移動するキャリッジを使用して直定規に沿う順次式測定のための多プローブ装置を使用する前記直定規の直線度の測定のための順次式多プローブ方法であって、前記キャリッジは、測定値を取るために、前記直定規の1つの表面に沿って移動され、測定値を取るために、前記直定規の反対表面に沿って順次式に移動される、順次式多プローブ方法。
【請求項2】
前記直定規の両面で、前記キャリッジは、同一のプローブが互いに面し合うよう方向付けられる、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項3】
前記直定規の両面で、前記キャリッジは、プローブの順序が逆転されるよう方向付けられる、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項4】
3プローブが使用される、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項5】
前記直定規の前記直線度の測定値をもたらすために、前記直定規の両面のために取られる前記測定値は比較される、請求項1に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項6】
前記比較において、前記直定規の厚さにおける組織的誤差が考慮される、請求項5に記載の順次式多プローブ方法。
【請求項7】
可動素子と直定規とを有する機械における位置誤差を測定するための装置、並びに、前記直定規の直線度の測定のためのシステムであって、当該測定システムは、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して前記直定規に沿って順次式に測定するための多プローブ装置を含み、当該装置は、測定値を取るために、前記直定規の1つの表面に沿って前記キャリッジを移動し、前記直定規の反対表面に前記キャリッジを移転し、且つ、測定値を取るために、前記直定規の前記反対表面に沿って前記キャリッジを移動するための手段を含む、測定システム。
【請求項8】
直定規の直線度の測定のための測定システムであって、当該測定システムは、案内面に沿って移動するキャリッジを使用して前記直定規に沿って順次式に測定するための多プローブ装置を含み、当該測定システムは、測定値を取るために、前記直定規の1つの表面に沿って前記キャリッジを移動し、前記キャリッジを前記直定規の反対表面に移転し、測定値を取るために、前記直定規の前記反対表面に沿って前記キャリッジを移動するための手段を含む、測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−524576(P2008−524576A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546258(P2007−546258)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054175
【国際公開番号】WO2006/064445
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054175
【国際公開番号】WO2006/064445
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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