説明

直接描画装置

【課題】 描画される画像の画素をより小さくすることができる直接描画装置を提供する。
【解決手段】 光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んで発光画素アレイが構成される。発光画素に対応して開口が形成され、発光画素から放射された光の一部が、対応する開口を通過し、かつ各開口内の全領域を、対応する発光画素から放射された光が通過するように配置され、開口以外の領域に入射する光を遮光する遮光マスクが配置されている。ステージが、表面に感光膜が形成された露光対象物を保持する。集光光学系が、発光画素から放射され、遮光マスクの対応する開口を通過した光を、ステージに保持された露光対象物上に集光させる。移動機構が、ステージに保持された露光対象物及び集光光学系の一方を他方に対して移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接描画装置に関し、特にプリント基板上に形成されたフォトレジスト膜に回路パターンを直接描画することができる直接描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板上のフォトレジスト膜に回路パターンを描画する方法として、回路パターンが形成されたフォトマスクを用いた密着露光、縮小投影露光、近接露光等が知られている。プリント基板の少量多品種化が進むと、プリント基板の種類ごとにフォトマスクを作製しなければならない。このため、フォトマスクを用いない直接描画法が注目されている。
【0003】
下記の特許文献1に開示されているフォトレジストパターン直接描画装置について説明する。アレイ状に配置された端面発光型エレクトロルミネッセンス(EL)素子を有する露光光源が、基板の上方に配置されている。制御回路により、各EL素子の発光をオンオフ制御する。各EL素子から放射された光が、集光光学系により基板上に照射される。
【0004】
露光光源及び基板の一方を、EL素子が配列した方向と直交する方向に移動させながら、各EL素子の発光をオンオフ制御することにより、所望のパターンを描画することができる。
【0005】
下記の特許文献2に、発光ダイオード(LED)アレイチップを用いた電子写真プリンタ用のプリントヘッドが開示されている。発光部が2列に、かつ千鳥状に配置されている。2列に、かつ千鳥状に配置することにより、印刷ドット密度を高くすることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平5−80524号公報
【特許文献2】特開2000−289250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LEDアレイを用いた電子写真装置においては、通常、セルフォックレンズアレイにより、露光対象物の表面に各LEDの発光部の正立等倍像を形成する。このため、画像を構成する画素の大きさは、LEDアレイの発光部の大きさに等しくなる。感光膜を感光させる場合には、感光膜の感度と、感光膜表面における正立等倍像の光強度分布に依存するが、一般的に、描画される画像の画素の大きさは、LEDの発光部の大きさと同程度の大きさと考えられる。
【0008】
また、LEDアレイの発光部は、その製造上のばらつきにより、設計上の位置からややずれた位置に形成されてしまう場合がある。発光部の位置がずれると、セルフォックレンズアレイで形成される成立等倍像の位置もずれてしまう。このずれは極わずかであるため、通常の電子写真装置においては問題にならない。ところが、プリント基板の回路パターンを形成するための直接描画装置においては、描画される画素の位置ずれが、配線の断線や短絡の原因になる。
【0009】
本発明の目的は、描画される画像の画素をより小さくすることができる直接描画装置を提供することである。本発明の他の目的は、描画される画像の画素の位置ずれを生じにくくした直接描画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んだ発光画素アレイと、前記発光画素に対応して開口が形成され、該発光画素から放射された光の一部が、対応する開口を通過し、かつ各開口内の全領域を、対応する発光画素から放射された光が通過するように配置され、開口以外の領域に入射する光を遮光する遮光マスクと、表面に感光膜が形成された露光対象物を保持するステージと、前記発光画素から放射され、前記遮光マスクの対応する開口を通過した光を、前記ステージに保持された露光対象物上に集光させる集光光学系と、前記ステージに保持された露光対象物及び前記集光光学系の一方を他方に対して移動させる移動機構とを有する直接描画装置が提供される。
【0011】
本発明の他の観点によると、光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んだ発光画素アレイと、表面に感光膜が形成された露光対象物を保持するステージと、前記発光画素から放射された光が入射する位置に配置されたセルフォックレンズアレイと、前記セルフォックレンズアレイを透過した光が入射する位置に、前記発光画素に対応して配置されたマイクロレンズを含むマイクロレンズアレイであって、該マイクロレンズは、対応する発光画素から放射されて前記セルフォックレンズアレイを通過した光を、前記ステージに保持された露光対象物の表面に集光する前記マイクロレンズアレイと、前記ステージに保持された露光対象物及び前記発光画素アレイの一方を他方に対して移動させる移動機構とを有する直接描画装置が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の観点によると、光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んだ発光画素アレイと、表面に感光膜が形成された露光対象物を保持するステージと、前記発光画素の各々から放射された光を、前記ステージに保持された露光対象物上に集光させる集光光学系と、前記ステージに保持された露光対象物及び前記集光光学系の一方を他方に対して移動させる移動機構と、前記複数の発光画素から放射された光の複数の集光領域の相対位置を計測する集光位置検出手段とを有する直接描画装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
開口により、実効的な発光画素の大きさが制限され、描画される画像の画素を小さくすることができる。さらに、開口により、実効的な発光画素の位置が画定されるため、発光画素の位置のばらつきによる画像の乱れを防止することができる。マイクロレンズにより、露光対象物上に形成される集光領域を小さくすることができる。これにより、描画される画像の画素を小さくすることが可能になる。発光画素から放射された光の集光領域の相対位置を計測することにより、描画時に、発光のタイミングをずらすことによって、位置ずれを補償することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1A及び図1Bに、それぞれ第1の実施例による直接描画装置の正面図及び平面図を示す。基台1の上に、XYステージ2が取り付けられている。XYステージ2の上に、露光対象物であるプリント基板10が保持されている。プリント基板10の表面には、紫外光により感光するドライフィルムレジスト(DFレジスト)やソルダーレジストからなる感光膜が設けられている。XYステージ2に保持されたプリント基板10の表面に平行な面をXY面とするXYZ直交座標系を定義する。
【0015】
XYステージ2は、移動機構8によりX軸方向及びY軸方向に移動することができる。移動機構8は、制御装置4により制御される。XYステージ2に保持されたプリント基板10の上方に、露光光源3が配置されている。露光光源3は、Y軸に平行な方向に並んだ多数の発光ダイオード(LED)を含む。LEDの各々は、波長350nm〜410nmの範囲の紫外光を放射する。LEDの各々の発光部から放射された光が、XYステージ2に保持された露光対象物10の表面の所定の位置に入射する。光の入射する領域を「集光領域」と呼ぶこととする。集光領域は、露光対象物10の表面において、Y軸に平行な方向に配列する。露光光源3の詳細な構造については、後に図2A及び図2Bを参照して説明する。
【0016】
XYステージ2の上面に、2個の集光位置検出器6が固定されている。集光位置検出器6は、露光光源3のLEDから放射された光を受光することにより、実際に光が入射する位置を計測することができる。集光位置検出器6として、例えば4分割フォトディテクタを用いることができる。
【0017】
XYステージ2の上方に、2個のCCDカメラ7が配置されている。CCDカメラ7は、露光対象物10に形成されている位置合せ用のマークを観察することにより、露光対象物10の位置を検出する。さらに、集光位置検出器6をCCDカメラ7の視野内に配置することにより、集光位置検出器6の位置を計測することができる。
【0018】
集光位置検出器6及びCCDカメラ7による検出結果が、制御装置4に入力される。制御装置4は、集光位置検出器6及びCCDカメラ7から入力された検出結果、及び予め与えられている画像データに基づいて、移動機構8を制御するとともに、露光光源3を構成する複数のLEDの発光のタイミング制御を行う。
【0019】
冷却装置5が、露光光源3に熱的に結合しており、露光光源3を冷却する。冷却装置5内に冷媒の流路が形成されている。冷媒導入路5aから、冷却装置5内の流路に冷媒が導入され、流路を流れた冷媒が、冷媒排出路5bを通って排出される。
【0020】
図2Aに、露光光源3及び露光対象物10の部分断面図を示す。露光光源3は、発光画素アレイ30、遮光マスク32、及び集光光学系34を含んで構成される。発光画素アレイ30は、Y軸に平行な仮想直線に沿って配置された多数の発光画素31を含む。発光画素31の各々は、例えば、LEDで構成され、その発光波長は紫外域である。
【0021】
発光画素31から放射された光の経路上に、遮光マスク32が配置されている。遮光マスク32には、発光画素31に対応した開口33が形成されている。
【0022】
図2Bに、発光画素31と開口33との位置関係を示す。Z軸に平行な視線で見たとき、開口33は発光画素31よりも小さく、開口33の各々は、対応する発光画素31に内包される位置に配置されている。発光画素31から放射された光の一部が、その発光画素31に対応する開口33を通過し、残りの成分は、遮光マスク32により遮光される。また、開口33内の全領域を、対応する発光画素31から放射された光が通過する。
【0023】
図2Aに戻って説明を続ける。集光光学系34が、遮光マスク32と露光対象物10との間に配置されている。集光光学系34は、遮光マスク32に形成された開口33の正立等倍像を、露光対象物10の表面に形成する。開口33が正方形である場合、その大きさによっては、解像限界により頂点が丸みを帯び、円形に近い像が形成される場合がある。集光光学系34として、例えばZ軸に平行な中心軸を持つ多数のセルフォックレンズがXY面に平行な面に沿って2次元的に配置されたセルフォックレンズアレイを用いることができる。
【0024】
露光対象物10は、樹脂製のコア基板10A、銅箔10B、及び感光膜10Cがこの順番に積層された積層構造を有する。感光膜10Cは、例えばDFレジスト、ソルダーレジスト等で形成される。感光膜10Cのうち、開口33の等倍像が形成された領域が感光し、潜像が形成される。
【0025】
図1A及び図1Bに示したXYステージ2をX軸方向に移動させながら、描画すべき画像データに基づいて発光画素31を発光させることにより、感光膜10Cに、描画すべき画像の潜像を形成することができる。潜像が形成された感光膜10Cを現像することにより、感光膜10Cからなる画像(パターン)が形成される。
【0026】
開口33の等倍像は、Y軸方向に離散的に分布する。このため、X軸方向に1回移動させただけでは、Y軸方向に連続するパターンを描画することができない。露光対象物10をY軸方向に、開口33のY軸方向に関する寸法分だけ移動させ、その位置でX軸方向に移動させながら、2回目の描画を行う。Y軸方向への移動と、X軸方向へ移動させながらの描画とを繰り返すことにより、Y軸方向に連続したパターンを描画することができる。
【0027】
第1の実施例では、露光対象物10の表面における画素(ドット)の大きさは、遮光マスク32に形成されている開口33の大きさにより決定される。開口33が発光画素31よりも小さいため、遮光マスク32を配置しない場合に比べて、描画される画像の画素を小さくすることができる。これにより、画像のドット密度を高めることが可能になる。
【0028】
図3に、第2の実施例による直接描画装置の発光画素と遮光マスクとの位置関係を示す。第2の実施例では、4個の発光画素アレイ30a〜30dが配置されている。発光画素アレイ30a〜30dは、それぞれY軸方向にピッチPで配列した複数の発光画素31a〜31dを含む。発光画素アレイ30a〜30dは、X軸方向にこの順番に配置されている。
【0029】
2行目〜4行目の発光画素アレイ30b〜30dの発光画素31b〜31dは、それぞれ1行目の発光画素アレイ30aの発光画素31aを、Y軸方向にピッチPの1/4、2/4、及び3/4だけ変位させた位置に配置されている。
【0030】
第2の実施例では、図2Aに示した遮光マスク32に代えて、開口が2次元的に分布する大きな遮光マスク32aが配置されている。第2の実施例の遮光マスク32aには、1行目の発光画素31aに対応する位置に、開口33aが形成されている。2行目〜4行目の発光画素31b〜31dについても、同様に、開口33b〜33dが形成されている。Z軸に平行な視線で見たとき、開口33a〜33dの各々は、対応する発光画素31a〜31dに内包される。各行の発光画素に対応する開口33a〜33dは、Y軸方向にピッチPで配列している。
【0031】
2行目〜4行目の開口33b〜33dは、それぞれ1行目の開口33aを、Y軸方向にピッチPの1/4、2/4、及び3/4だけ変位させた位置に形成されている。開口33a〜33dの各々は、X軸方向及びY軸方向に平行な辺を持つ正方形であり、一辺の長さはピッチPの1/4である。開口30a〜30dは、全体としてY軸方向に隙間なく分布することになる。
【0032】
このため、開口33a〜33dの像が、露光対象物10の表面上において、Y軸方向に関して隙間無く分布する。開口33a〜33dの像の外周の露光量が、図2Aに示した感光膜10Cが現像されるしきい値に等しい場合、すなわち、開口33a〜33dの像によって感光し、現像されるパターンの寸法が、開口33a〜33dの寸法とほぼ同一である場合は、露光対象物10をX軸方向に移動させながら、描画を行うことにより、Y軸方向に連続するパターンを形成することができる。
【0033】
開口33a〜33dの像の外周の露光量が、現像のしきい値よりも小さい場合には、現像されるパターンが開口33a〜33dよりも小さくなる。このような場合、開口33a〜33dが、全体として、Y軸方向に関してやや重りながら分布するように、開口33a〜33dをやや大きくすればよい。このように、開口33a〜33dを大きくすることにより、開口33a〜33dの各々によって形成されるパターンを、Y軸方向に隙間なく配置することができる。
【0034】
第2の実施例では、発光画素31a〜31d、及び開口33a〜33dが、4行に配置されている場合を示したが、2行、3行、または5行以上に配置してもよい。この場合も、開口によって感光膜10Cに形成されるパターンが、全体としてY軸方向に隙間なく分布するように、発光画素及び開口を配置すればよい。
【0035】
図4に、第3の実施例による露光光源3及び露光対象物10の断面図を示す。第3の実施例では、図2Aに示した第1の実施例の遮光マスク32が取り除かれ、その代わりに、集光光学系34と露光対象物10との間に、マイクロレンズアレイ40が配置されている。マイクロレンズアレイ40は、発光画素31に対応する位置に配置されたマイクロレンズ41を有する。
【0036】
発光画素31から放射された光は、集光光学系34で集光された後、さらに対応するマイクロレンズ41で集光される。これにより、露光対象物10の表面に、発光画素31よりも小さな像が形成される。このため、感光膜10Cに描画される画像を構成する画素(描画画像の画素)が、発光画素31よりも小さくなる。
【0037】
次に、描画方法について説明する。露光対象物10をX軸方向へ移動させながら描画を行った後、露光対象物10を、描画画像の画素のY軸方向に関する寸法分だけY軸方向に変位させる。この状態で、さらにX軸方向へ移動させながら描画を行う。このように、露光対象物をX軸方向へ移動させながら描画を行う工程と、Y軸方向への変位とを交互に繰り返すことにより、Y軸方向に連続するパターンを含む画像を形成することができる。
【0038】
露光対象物10の表面に、発光画素31の等倍像を形成する場合に比べて、よりドット密度の高い画像を形成することができる。
【0039】
図5に、第4の実施例による直接描画装置の発光画素と遮光マスクとの位置関係を示す。図2Bに示した第1の実施例では、発光画素31が、Y軸方向に等ピッチで1列に配列している場合を示した。ところが、製造工程におけるばらつきにより、発光画素31の位置にばらつきが生じる場合がある。図5に示した第4の実施例では、発光画素31が、設計上の位置からX軸方向及びY軸方向にずれた位置に配置されている。
【0040】
遮光マスク32の開口33の位置は、ほとんどばらつかない。発光画素31の位置が設計上の位置からずれたとしても、Z軸に平行な視線で見たとき、開口33が、対応する発光画素31に内包される。
【0041】
図2A及び図2Bを参照して説明したように、集光光学系34は、露光対象物10の表面に開口33の正立等倍像を形成する。このため、発光画素31の位置にばらつきがあったとしても、露光対象物10の表面における像の位置はばらつかない。このため、発光画素31の位置のばらつきに起因する画像の乱れを防止することができる。
【0042】
図6に、第5の実施例による直接描画装置の発光画素と遮光マスクとの位置関係を示す。第6の実施例では、複数の発光画素31jが、仮想直線45の両側に配置されている。第1の側の発光画素31jは、仮想直線45に平行な方向に配列し、反対の第2の側の発光画素31jは、仮想直線45に関して第1の側の発光画素31jの線対称の位置に配置されている。発光画素アレイ30jは、仮想直線45がY軸に対して斜めになるように配置されている。
【0043】
遮光マスク32jの開口33jが、発光画素33jに対応して形成されている。第1の側の相互に隣り合う第1の開口33j1と第2の開口33j2、及び第1の開口33j1の対称の位置に配置された第2の側の第3の開口33j3に着目する。第1の開口33j1と第3の開口33j3との、Y軸方向に関する中心間の距離Py1と、第3の開口33j3と第2の開口33j2との、Y軸方向の中心間の距離Py2とが等しくなるように、仮想直線45がY軸に対して傾いている。
【0044】
中心間の距離Py1とPy2とが等しいため、露光対象物10をX軸方向に移動させながら描画することにより、画像を構成する画素をY軸方向に均等に分布させることができる。発光画素及び開口が1列に配列している場合に比べて、Y軸方向に関する画素密度を高めることができる。
【0045】
第1の開口33j1によって感光膜10Cに形成されたパターンと、第3の開口33j3によって感光膜10Cに形成されるパターンとが、Y軸方向に関して重なるか、または接するようにこれらの開口を配置すると、図3に示した第2の実施例の場合のように、X軸方向に移動させながら1回の描画を行うことにより、Y軸方向に連続するパターンを含む画像を形成することができる。
【0046】
次に、図7及び図8を参照して、第6の実施例による直接描画装置について説明する。なお、必要に応じて図1A、図1B、及び図4を参照する。第6の実施例では、図4に示した第3の実施例による露光光源3と同一の構造の光源が用いられる。
【0047】
図7に、4分割フォトディテクタで構成された集光位置検出器6の概略平面図を示す。集光位置検出器6の上面に、UV直交座標系を定義する。UV直交座標系の第1〜第4象限に、それぞれ第1〜第4の受光領域50a〜50dが配置されている。第1〜第4の受光領域50a〜50dの各々は、例えば正方形である。第1〜第4の受光領域50a〜50dは、U軸及びV軸に関して線対象であり、かつ原点52に関して4回回転対称性を持つ。U軸またはV軸を挟んで相互に隣り合う受光領域の間隔をWとする。第1〜第4の受光領域50a〜50dは、独立に受光量を計測することができる。集光位置検出器6は、その上面が、露光対象物10の表面と同じ高さになり、かつU軸がX軸に平行になり、V軸がY軸に平行になるように、XYステージ2に固定されている。
【0048】
集光位置検出器6を、図4に示した1つの発光画素31の直下に配置すると、集光位置検出器6の上面の一部に、発光画素31から放射された光が入射し、ほぼ円形の集光領域51が形成される。集光領域51の中心が、UV座標の原点52に一致するとき、第1〜第4の受光領域50a〜50dで計測される光量はすべて等しくなる。集光領域51の中心が原点52からずれると、第1〜第4の受光領域50a〜50dで計測される光量にばらつきが生ずる。第1〜第4の受光領域50a〜50dのうち少なくとも3個の受光領域で光量が計測された場合、計測された光量に基づいて、集光領域51のずれの大きさとずれの方向とを求めることができる。
【0049】
集光領域51のずれを検出するために、集光位置検出器6として、間隔Wが少なくとも集光領域51の直径よりも狭いものを用いる必要がある。また、ずれの検出精度を高めるために、間隔Wが、集光領域51の直径の50%以下のものを使用することが好ましい。
【0050】
図1Aに示した制御装置4の機能について説明する。制御装置4には、描画すべき画像データが記憶されている。XYステージ2を制御して、集光位置検出器6を1つの発光画素31の直下に配置させる。その発光画素31を発光させ、集光位置検出器6による受光量の計測結果を受信する。この計測結果から、当該発光画素31から放射された光の集光領域の中心位置を計測することができる。
【0051】
図8に、複数の発光画素31から放射された光の集光領域51の相対位置の一例を示す。複数の発光画素31のうち1つの発光画素を基準発光画素とする。この基準発光画素から放射された光の集光領域51(0)の中心のX軸方向に関する位置55を、X方向基準位置と呼ぶこととする。
【0052】
基準発光画素以外の発光画素31から放射された光の集光領域51(1)、51(2)、・・・の中心の、X方向基準位置55からのずれ量D1、D2、・・・を求め、記憶する。XYステージ2をX軸方向に移動させながら、発光画素31を発光させて描画を行う際に、描画すべき画像データに基づいて、かつ、ずれ量D1、D2、・・・を補償するように発光画素31の発光タイミングを制御する。
【0053】
集光領域51の、X軸方向へのずれ量D1、D2、・・・を補償し、X軸方向に関して歪のない画像を形成することができる。例えば、Y軸に平行な直線パターンが曲線になってしまうことを防止できる。
【0054】
第6の実施例では、発光画素31の集光領域51が、設計上の位置からY軸方向にずれている場合には、そのずれを補正することができない。ただし、X軸方向に平行な直線パターンは、同一の発光画素31を発光させることにより形成されるため、描画されたパターンが曲線になってしまうことが防止される。
【0055】
上記実施例では、露光対象物10を露光光源3に対して移動させたが、露光光源3を露光対象物10に対して移動させてもよい。
【0056】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1Aは、第1の実施例による直接描画装置の正面図であり、図1Bは、その平面図である。
【図2】図2Aは、第1の実施例による直接描画装置の露光光源及び露光対象物の断面図であり、図2Bは、発光画素と開口との位置関係を示す図である。
【図3】第2の実施例による直接描画装置の発光画素と開口との位置関係を示す図である。
【図4】第3の実施例による直接描画装置の露光光源及び露光対象物の断面図である。
【図5】第4の実施例による直接描画装置の発光画素と開口との位置関係を示す図である。
【図6】第5の実施例による直接描画装置の発光画素と開口との位置関係を示す図である。
【図7】第6の実施例による直接描画装置の集光位置検出器の平面図である。
【図8】第6の実施例による直接描画装置の集光領域の配置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 基台
2 XYステージ
3 露光光源
4 制御装置
5 冷却装置
6 集光位置検出器
7 CCDカメラ
8 移動機構
10 露光対象物
30 発光画素アレイ
31 発光画素
32 遮光マスク
33 開口
34 集光光学系
40 マイクロレンズアレイ
41 マイクロレンズ
45 仮想直線
50a〜50d 受光領域
51 集光領域
52 原点
55 X方向基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んだ発光画素アレイと、
前記発光画素に対応して開口が形成され、該発光画素から放射された光の一部が、対応する開口を通過し、かつ各開口内の全領域を、対応する発光画素から放射された光が通過するように配置され、開口以外の領域に入射する光を遮光する遮光マスクと、
表面に感光膜が形成された露光対象物を保持するステージと、
前記発光画素から放射され、前記遮光マスクの対応する開口を通過した光を、前記ステージに保持された露光対象物上に集光させる集光光学系と、
前記ステージに保持された露光対象物及び前記集光光学系の一方を他方に対して移動させる移動機構と
を有する直接描画装置。
【請求項2】
前記集光光学系がセルフォックレンズアレイを含み、前記遮光マスクの開口の正立等倍像を、前記ステージに保持された露光対象物の表面に形成する請求項1に記載の直接描画装置。
【請求項3】
前記発光画素が、紫外光を放射する発光ダイオードの発光部により構成されている請求項1または2に記載の直接描画装置。
【請求項4】
光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んだ発光画素アレイと、
表面に感光膜が形成された露光対象物を保持するステージと、
前記発光画素から放射された光が入射する位置に配置されたセルフォックレンズアレイと、
前記セルフォックレンズアレイを透過した光が入射する位置に、前記発光画素に対応して配置されたマイクロレンズを含むマイクロレンズアレイであって、該マイクロレンズは、対応する発光画素から放射されて前記セルフォックレンズアレイを通過した光を、前記ステージに保持された露光対象物の表面に集光する前記マイクロレンズアレイと、
前記ステージに保持された露光対象物及び前記発光画素アレイの一方を他方に対して移動させる移動機構と
を有する直接描画装置。
【請求項5】
光を放射する複数の発光画素が少なくとも1列に並んだ発光画素アレイと、
表面に感光膜が形成された露光対象物を保持するステージと、
前記発光画素の各々から放射された光を、前記ステージに保持された露光対象物上に集光させる集光光学系と、
前記ステージに保持された露光対象物及び前記集光光学系の一方を他方に対して移動させる移動機構と、
前記複数の発光画素から放射された光の複数の集光領域の相対位置を計測する集光位置検出手段と
を有する直接描画装置。
【請求項6】
さらに、前記ステージに保持された露光対象物及び前記集光光学系の一方を他方に対して第1の方向に移動させながら、前記集光位置検出手段により検出された複数の集光領域の該第1の方向に関する相対的なずれ量、及び描画すべき画像データに基づいて、前記発光画素の発光タイミングを制御する制御装置を有する請求項5に記載の直接描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−79219(P2007−79219A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268247(P2005−268247)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】