直接的なピコルナウイルス媒介腫瘍崩壊による対象における悪性腫瘍の治療方法
【課題】哺乳動物における異常細胞、特にガン細胞を治療するための方法、及び医薬組成物の提供。
【解決手段】α2β1を前記細胞への感染性のために認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスで哺乳動物における異常細胞を治療するための方法、及び医薬組成物。該ウイルスは、エコーウイルス血清型またはその改変された形態であることが好ましい。該改変されたエコーウイルスは、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態であることが好ましい。
【解決手段】α2β1を前記細胞への感染性のために認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスで哺乳動物における異常細胞を治療するための方法、及び医薬組成物。該ウイルスは、エコーウイルス血清型またはその改変された形態であることが好ましい。該改変されたエコーウイルスは、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスを利用して異常細胞を殺すことに関する。異常細胞が、ウイルスを用いた治療に対して感受性があるかどうかを確認するために異常細胞をスクリーニングする方法、並びに医薬組成物もまた記載される。本発明は、獣医学的使用、ならびにヒト医療分野において広範囲の適用が見出される。
【背景技術】
【0002】
卵巣ガンは、女性集団における病的状態の主要な原因である。いくつかの悪性腫瘍が卵巣から生じる。卵巣の上皮ガン腫は最も一般的な婦人科学的悪性腫瘍の1つであり、女性におけるガン死亡の5番目に多い原因であり、全症例の半数が65歳を越える女性において発生している。
【0003】
卵巣ガンの約5%〜10%が家族性であり、3つの異なる遺伝的パターンが同定されている:卵巣ガン単独、卵巣ガンおよび乳ガン、または、卵巣ガンおよび結腸ガンである。卵巣ガンについての最も重要な危険因子は、そのような疾患を有する第一度近親者(母親、娘または姉妹)の家族歴である。卵巣ガンを有する2人以上の第一度近親者を有する女性において、最も大きい危険性が高い。卵巣ガンを有する1人の第一度近親者および1人の第二度近親者を有する女性について、危険性は、若干少なくなる。乳卵巣ガン症候群または部位特異的な卵巣ガンに冒されたほとんどの家系では、遺伝的連鎖が染色体17q21におけるBRCA1遺伝子座に対して見出されている。BRCA2もまた、一部の遺伝性の卵巣ガンおよび乳ガンの原因であり、これは染色体13q12に対する遺伝的連鎖によってマッピングされている。
【0004】
BRCA1における生殖細胞系変異を有する患者において卵巣ガンを発症することについての生涯にわたる危険性は、一般集団については実質的に増大している。BRCA1における生殖細胞系変異を有する患者の2つの遡及的研究では、これらの女性は、BRCA1陰性の女性と比較した場合、生存期間が延びていることが示唆される。このデータを解釈するときには、BRCA1変異を有する女性の大部分は、おそらくは、卵巣ガンおよび/または乳ガンの病歴を有する家族メンバーを有することを考慮しなければならない。従って、これらの女性はより一層警戒しているかもしれず、また、より早期の検出をもたらし得るガンスクリーニングプログラムに参加を望んでいる可能性がある。危険性が増大した状態にある患者の場合、予防的な卵巣摘出が、出産が完了しているならば、35歳以降では検討されることがある。しかしながら、予防的卵巣摘出の利点は未だに確立されていない。少ない割合の女性が、予防的卵巣摘出の後、卵巣ガンと外観が類似する原発性腹膜ガン腫を発症することがある(Xiao、C.他、2001)。上皮ガン腫は最も一般的なタイプの卵巣ガンである。間質細胞腫瘍および生殖細胞腫瘍は比較的珍しく、症例の10%未満を構成する。
【0005】
卵巣ガンは、通常、腹膜腔内への局所的脱落、それに続く腹膜における着床によって、また、腸および膀胱への局所的な侵入によって拡大する。この腫瘍が非常に致死的であることは、この疾患の早期段階にある女性において症状がないためである。一次手術での陽性節の発生率は、第I期疾患の患者では24%、第II期疾患の患者では50%、第III期疾患の患者では74%、第IV期疾患の患者では73%もの高さであることが報告されている。腫瘍細胞はまた、横隔膜リンパ腺を遮断し得る。腹膜のリンパ排液の生じる障害は、卵巣ガンにおける腹水症の発生において役割を果たしていると考えられる。また、胸膜への経横隔膜拡大も一般的である。
【0006】
卵巣ガンにおける予後はいくつかの要因によって影響されるが、多変量解析により、最も重要な好都合な要因には、より若い年齢、良好な成績状態、ムチン性細胞および明細胞でない細胞タイプ、より低い段階、良好に分化した腫瘍、何らかの外科的切除の前でのより小さい疾患体積、腹水症の非存在、そして、一次細胞量削減手術の後でのより小さい残存腫瘍が含まれることが示唆される。第I期疾患の患者の場合、最も重要な予後因子は悪性度であり、次いで、密集した付着および大きな体積の腹水症である。第I期患者および第IIA期患者のDNAフローサイトメトリー分析では、危険性の高い患者群が同定され得る。明細胞の組織学を有する患者は、より悪い予後を有するようである。移行上皮細胞ガンの有意な成分を有する患者は、より良好な予後を有するようである。
【0007】
卵巣ガン関連抗原CA125は、診断時に測定されたときには予後の有意性を有していないが、第III期または第IV期の疾患を有する患者に対する化学療法の3回目のクールの後の1ヶ月目で測定されたときには生存との大きな相関を有している(Rossmann,M.G.他、2000)。CA125の上昇が化学療法によって正常化する患者については、1よりも大きいその後の上昇したCA125は活発な疾患を非常に予測する。しかし、このことは迅速な治療を命ずるものではない。
【0008】
卵巣ガンはその早期段階では無症状であることが多いので、ほとんどの患者は、診断時には疾患が広範囲に広がっている。部分的にはこの結果として、卵巣ガンにおける年間死亡率は発生率の約65%である。適切に切除されなかった第III期患者および第IV期患者の長期間の追跡調査により、白金に基づく混合治療を用いた場合でさえ、5年生存率が10%未満であることが明らかにされている。それにもかかわらず、この疾患の早期段階は、大きな割合の患者において治療可能である。
【0009】
現在、後期段階の卵巣ガンに対する治療は、腹式子宮全摘出、漿膜表面の慎重な検査、および、白金アナログを含む混合化学療法が通常的には続き、完全に疾患全体を切除する試みが伴う。その場合、生存率は6ヶ月〜40ヶ月の間であり、長期の生存は10パーセント未満である。
【0010】
良性および悪性の卵巣腫瘍において示差的に発現する分子を同定することを目的とした研究が進行中である。
【0011】
卵巣ガン腫は、インテグリンα2β1を発現することが見出されている(Moser,T.L.他、1996;Cannistra,S.A.他、1995;Bartolazzi,A.他、1993)。α2β1は、1型コラーゲンとの特異的な結合相互作用によってヒト卵巣上皮ガン腫の転移性散在を促進させる(Schiro、J.A.他、1991;Cardarelli,P.M.他、1992)。インテグリンα2β1のアップレギュレーションされた表面発現もまた、ヒト胃ガン腫について以前から観測されている。
【0012】
α2β1と1型コラーゲンとの相互作用は、腹膜播種において、そして同様に、転移において非常に重要な役割を果たしている可能性があり、また、α2β1の過剰発現は、非転移性細胞において転移的性質を誘導することが示されている(Chan,B.M.他、1991)。α2β1の阻止は、1型コラーゲンによる卵巣ガン腫の接着をほとんど阻害することが示されている。
【0013】
悪性細胞の溶解を、その複製プロセスを介して誘導することができるウイルスは、腫瘍崩壊性ウイルスとして知られている。ほとんどの腫瘍崩壊性ウイルスは、同じ種または細胞系譜における増殖を要求する。ウイルスによる細胞の感染には、ウイルスキャプシドの脱殻を生じさせるか、またはウイルスキャプシドの脱殻と同時である付着および細胞内への取り込み、そして、それに続く細胞内での複製が伴う。
【0014】
ガン細胞を殺す能力について評価された腫瘍崩壊性ウイルスには、HeLa子宮/子宮頸部ガン細胞株において腫瘍崩壊活性を示したアデノウイルスのエジプト101亜型ウイルス、胃ガン腫、子宮ガン腫および皮膚ガン腫の治療のためのムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、卵巣ガンを治療するためのインフルエンザウイルス、ならびに、子宮頸部ガン腫を治療するためのアデノウイルス(Nemunaitis J、1999)が含まれている。
【0015】
他の報告では、アデノウイルスおよび弱毒化ポリオウイルス組換え体が悪性神経膠腫細胞の治療において使用され得ることが示されており(例えば、Andreansky S.S.、1996)、また、レオウイルスは、Rasシグナル伝達経路が活性化されたヒトU87神経膠芽細胞腫細胞およびNIH−3T3細胞において溶解能力を示すことが示されている(例えば、Strong J.E.他、1998)。
【0016】
ワクシニアの腫瘍崩壊物はまた、黒色腫(第II期)患者を治療するために臨床試験で使用されている(Nemunaitis J.、1999)。神経毒性を有しない改変された単純ヘルペスウイルス(HSV)が、脳腫瘍(頭蓋内黒色腫を含む)および皮下ヒト黒色腫の治療に関して有望であるとして報告されており(Randazzo B.R.、1997)、その一方で、アデノウイルス感染は、植物の分裂毒素サポリンによって黒色腫細胞を殺すことを高めることが報告されている(Satyamoorthy K.、1997)。
【0017】
アデノウイルスによって認識される標的細胞における受容体はアデノウイルスのタイプ毎に異なる。すなわち、例えば、アデノウイルスのA、C、D、EおよびFの亜群はCAR受容体を認識し、その一方で、アデノウイルス5型(C亜群)、アデノウイルス2型(C亜群)およびアデノウイルス9型(D亜群)は、主要組織適合性クラスII分子、αmβ2インテグリンおよびαvインテグリンをそれぞれ認識する。CAR受容体は、黒色腫細胞株において発現することが知られている。
【0018】
ヘパラン硫酸は、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型およびヒトヘルペスウイルス7、アデノ関連ウイルス2型によって認識される。ヒトヘルペスウイルス7に対する受容体はCD4であり、一方、エプスタイン・バールウイルスは補体受容体Cr2(CD21)を認識する。ポリオウイルス1型およびポリオウイルス2型はポリオウイルス受容体(Pvr)を細胞接着のために認識し、一方、レオウイルスはシアル酸を認識する。A型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスはシアル酸N−アセチルノイラミン酸を細胞接着のために認識する。対照的に、C型インフルエンザウイルスはシアル酸9−O−アセチルノイラミン酸を認識する。ワクシニアウイルスは上皮増殖因子受容体およびヘパラン硫酸の両方を認識する。コクサッキーウイルスのA13、A15、A18およびA21はICAM−1および補体調節タンパク質DAF(CD55)を認識する(例えば、Shafren D.R.他(1997)を参照のこと)。国際特許出願番号PCT/AU00/01461には、ICAM−1を細胞感染性のために認識するコクサッキーウイルスを、ICAM−1を発現する黒色腫細胞を溶解するために対象に投与することが記載される。DAFはまた、エンテロウイルス70によって認識される(例えば、Flint SJ他(2000)、Principles of Virology:molecular biology,pathogenesis and control(ASM Press、Washington)を参照のこと)。
【0019】
継代培養に対する卵巣細胞の適合性、および、ウイルスを検出するためのその潜在的使用を評価する研究が報告されている(Harris,REおよびPindak,FF、1975)。その研究では、正常な卵巣細胞培養物が、ピコルナウイルス(例えば、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、エコーウイルスおよびカルジオウイルス、ならびにそれらの様々な血清型など);パラミクソウイルス(例えば、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、ジステンパーウイルスなど);アデノウイルスのヒト亜群の血清型3、4、7および21;単純ヘルペスウイルス1型;トガウイルス(例えば、シンドビスおよびマラロ(Mararo)など);レオウイルスの血清型1〜3;およびワクシニアウイルスを含む広範囲の様々なウイルスで攻撃された。研究では、ヒト卵巣由来の細胞を、長期間、細胞培養で成長させることができ、かつ、インビトロでの様々なウイルスの増殖のために、限定されない回数、継代培養することができることが明らかにされ、また、そのような培養物は、ウイルスの病理発生およびウイルス感染の病理学を研究する目的のために有用であり得ることが提案された。報告ではさらに、ポリオウイルスおよびワクシニアなどの一部のウイルスはヒトの胎盤を越え、胎児に感染することが示されているので、培養における正常な卵巣細胞とのウイルス相互作用の研究は催奇性研究を進める手段であり得ることが示唆された。
【0020】
転移による腫瘍拡大は、調節された組織分解と結合した一連の接着/脱着事象を伴う病理学的プロセスである。細胞外マトリックスへの付着および細胞外マトリックスを通過する遊走は、腫瘍が侵入するために不可欠である。進歩が悪性腫瘍の治療においてなされているにもかかわらず、卵巣悪性腫瘍を含むガンの治療は研究に対する大きな課題を提示しており、既存の治療法に代わる方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、異常細胞(例えば、インテグリンα2β1を発現するガン細胞など)の著しい殺傷が、α2β1を細胞感染性のために認識するエコーウイルスを利用して達成され得るという観測結果に関連する。
【0022】
従って、本発明の1つの態様において、哺乳動物において異常細胞を治療するための方法であって、α2β1を前記細胞への感染性のために認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスの効果的な量で哺乳動物を治療し、その結果、前記細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるようにすることを含む方法が提供される。
【0023】
α2β1を認識する単独ウイルス血清型を哺乳動物に投与することができ、または、α2β1を認識する複数の異なるエコーウイルスを投与することができる。
【0024】
用語「異常細胞」は、本発明の目的の場合、細胞がガン細胞であってもなくても、また、細胞が異常な速度で増殖してもしなくても、悪性の細胞、何らかの成長異常を有する細胞、および、その正常な表現型を発現する同じ細胞タイプの対応する正常な細胞と比較してインテグリンα2β1のアップレギュレーションされた異常発現を有する任意の細胞を含むように最も広い意味で理解しなければならない。従って、この用語は、前新生物性細胞および新生物細胞、ならびに、最終的にはガン細胞に発達し得る細胞、または最終的にはガン細胞に発達しなくてもよい細胞を包含する。成長異常は、例えば、良性または悪性の腫瘍であり得る。異常細胞は、通常、悪性の細胞である。一般に、異常細胞は、その異常細胞が見出される周囲の組織と比較した場合、α2β1の発現がアップレギュレーションされている。従って、ウイルスは、典型的には、そのような細胞におけるα2β1に接触する可能性がより大きいので、異常細胞に優先的に感染する。そのため、ウイルスを、異常細胞を効果的に標的化するために使用することができる。
【0025】
本発明の方法は、患者における卵巣ガン、または、原発性卵巣腫瘍から転移しているガンを治療するために特に好適である。しかしながら、本発明はそのようなガンの治療に限定されず、本明細書中に記載される方法は、黒色腫および前立腺腫瘍、ならびに、乳ガン、結腸ガン、結腸直腸ガン、および、体内の他の部位にそれらから広がっている二次的なガンを含む他のガンの治療における適用が見出される。例えば、ウイルスを哺乳動物の皮膚以外の身体領域における黒色腫ガン細胞に投与することができる。従って、本発明の方法は、エコーウイルスによる感染を通常の場合には伴わない哺乳動物の体内の部位または組織に悪性腫瘍が転移している悪性腫瘍の治療に拡張される。
【0026】
典型的には、ウイルスは、生きた完全なウイルスとして哺乳動物に投与される。あるいは、例えば、ウイルスゲノムをコードする核酸、またはウイルスの生成のために十分なその核酸を、細胞による取り込みおよび細胞内における生きた完全なウイルスの生成のために投与することができる。核酸は、単一のRNA分子もしくはDNA分子、またはウイルスタンパク質の異なる分子をそれぞれコードする複数のそのような分子を含むことができる。
【0027】
ウイルスはまた、異常細胞をスクリーニングして、例えば、ウイルスが、異常細胞が得られた哺乳動物を治療するために好適であり得るかどうかを確認するために、または、ウイルスを伴わない異なる治療プロトコルがより有益であり得るかどうかを確認するために使用することができる。逆に、異なるエコーウイルスおよび/またはその改変された形態もしくはそれらの組合せを、哺乳動物を治療するために最も適切なウイルスを選択するために、哺乳動物から採取された細胞のサンプルを使用してスクリーニングすることができる。
【0028】
従って、本発明の別の態様において、異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、ウイルス誘導の細胞死に対する感受性について哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをスクリーニングする方法が提供され、この場合、この方法は、
(a)哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルを提供する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするために十分な期間にわたって異常細胞をウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程
を含み、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態および組合せから選択される。
【0029】
ウイルスはまた、所与のウイルスがサンプルにおける異常細胞の少なくとも一部に感染し、これを殺すことができるかどうかを試験することによって、本発明の方法における使用のために選択することができる。特に、そのような試験では、それぞれのウイルスを異常細胞のサンプルとそれぞれインキュベーションすることによって多数の異なるウイルスをスクリーニングし、そして、異常細胞がウイルスによる感染の結果として殺されているかどうかを明らかにすることが伴い得る。
【0030】
従って、本発明のさらに別の態様において、異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、哺乳動物に由来する異常細胞に感染し、その死を生じさせる能力についてウイルスをスクリーニングする方法が提供され、この場合、この方法は、
(a)ウイルスを選択する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするために十分な期間にわたって哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程
を含み、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0031】
この方法はまた、異常細胞に感染し、その死を生じさせる選択されたウイルスの能力を、異常細胞の別のサンプルを利用して工程(b)および工程(c)に供された、α2β1を異常細胞感染性のために認識する他のエコーウイルスまたはその改変された形態の能力と比較する工程を含むことができる。
【0032】
細胞の死は、典型的には、ウイルスによる細胞への感染から生じ、ウイルスが細胞内で複製することによる細胞の溶解によるか、または、最も考えられるのは細胞カスパーゼの活性化の結果としての、感染が引き起こすアポトーシスによるかのいずれかによって引き起こされ得る。溶解されると、感染細胞の細胞質ゾルの内容物が、破裂した形質膜から流出し得るし、また、異常細胞に対する免疫応答を誘発することができる細胞表面抗原を含む様々な抗原が放出され得る。従って、本発明の方法に従った哺乳動物における異常細胞の治療は、異常細胞に対抗する哺乳動物の免疫性に対する追加抗原刺激を提供し得る。
【0033】
従って、本発明の別の態様において、α2β1を発現する異常細胞に対して哺乳動物における免疫応答を誘導する方法であって、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスを哺乳動物における異常細胞に感染させることを含み、少なくとも一部の異常細胞の溶解が引き起こされる方法が提供される。
【0034】
一般に、ウイルスは、本発明の方法において使用される医薬組成物の形態で提供される。そのため、なおさらなる態様において、哺乳動物における異常細胞を治療するための医薬組成物であって、異常細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるように異常細胞を治療するためにウイルスを生じさせるための接種物を医薬的に許容され得るキャリアと一緒に含む医薬組成物が提供され、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0035】
本発明の別の態様において、哺乳動物における異常細胞をウイルスで治療し、その結果、異常細胞の少なくとも一部が殺されるようにするための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用が提供され、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0036】
本発明のさらに別の態様において、哺乳動物における異常細胞に対する免疫応答を誘導するための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用が提供され、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識し、かつそのような細胞を殺すエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0037】
典型的には、本発明の方法に従って利用されるエコーウイルスは、エコーウイルスEV1、エコーウイルスEV8およびエコーウイルスEV22からなる群から選択されるエコーウイルスである。前記ウイルスは、通常、一般的な動物エコーウイルスであるが、本発明はそれらに限定されず、異常細胞に感染し、これを殺すことができように操作された組換えウイルス、または、例えば、それ以外にも、異常細胞に感染し、これを殺すその能力を高めるために改変されているウイルスを利用することができる。
【0038】
同じウイルスを異なる治療クール期間中に哺乳動物に投与することができる。しかしながら、好ましくは、異なるウイルスが、投与された以前のウイルスに対する何らかの免疫応答の潜在的な影響を回避または軽減するために異なる治療クールについては使用される。ウイルスは、例えば、哺乳動物に対して、局所的に、腫瘍内に、または全身的に投与することができる。
【0039】
本発明における哺乳動物は、本発明による治療を必要としている任意の哺乳動物であり得る。典型的には、哺乳動物はヒトである。
【0040】
本発明の方法は、異常細胞の別の治療(例えば、従来のガン治療など)の補助として使用することができ、または、他の治療的処置がない場合での治療として使用することができる。特に、本発明の方法は、従来の治療が好適もしくは実際的でない場合に、または、異常細胞の切除が、患者に受け入れがたい傷跡形成または外観の損傷を、特に患者の顔(例えば、患者の鼻または唇など)に残し得る場合に利用することができる。ウイルスは、異常細胞の切除の前および/または切除の後、患者に投与することができる。切除後の投与により、周囲の組織に残る残存する異常細胞を殺すことができる。
【0041】
従って、本発明の1つまたは複数の実施形態において、早期段階および後期段階の悪性腫瘍の診断の両方の後で使用することができる代替的な治療的処置が提供され、また、手術前に異常細胞を殺し、かつ手術後に残存する異常細胞を殺すことにおける適用がさらに見出される。本明細書中記載されるようなプロトコルを使用して、当業者は、本発明の方法における使用のための好適なウイルスを容易に選択することができ、かつ、どの異常細胞が、その細胞の死をもたらす感染に対して感受性があるかを明らかにすることができる。
【0042】
本発明のさらに別の態様において、哺乳動物における異常細胞を治療するためのウイルスを生じさせるために哺乳動物に接種物を適用するためのアプリケーターが提供され、この場合、アプリケーターは、接種物が哺乳動物と接触するように接種物を染み込ませた領域を含み、そして、ウイルスは、細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0043】
本明細書を通して、語句「含む(comprise)」または変化形(“comprises”または“comprising”など)は、言及された要素、完全体もしくは工程、または、要素、完全体もしくは工程の群を包含し、しかし、任意の他の要素、完全体もしくは工程、または、要素、完全体もしくは工程の群を除外しないことを意味することが理解される。
【0044】
本明細書において述べられる刊行物はすべて、参考として本明細書中に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置または物品などの議論は、単に、本発明のための背景を提供するという目的のためである。そのような議論は、本出願の各請求項の優先日よりも前にはどこかにでも存在していたので、これらの事項のいずれかまたはすべてが先行技術基盤の一部を形成しているか、または、本発明に関係する分野において共通する一般的な知識であったという承認として理解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の特徴および利点が本発明の好ましい実施形態の下記の記載からさらに明らかになる。
【図1】図1は、乳ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。乳ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図2】図2は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による乳ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図3】図3は、直腸結腸ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。直腸結腸ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図4】図4は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による直腸結腸ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図5】図5は、前立腺ガン細胞または膵臓ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。前立腺ガン細胞または膵臓ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図6】図6は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による前立腺ガン細胞および膵臓ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図7】図7は、卵巣ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。卵巣ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図8】図8は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による卵巣ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図9a】図9aは、EV1の10−1希釈物を72時間感染させた卵巣ガン細胞単層物の顕微鏡写真を示す。このウイルス投入多重度において、細胞株A2780を除いて、すべての細胞株がEV1による腫瘍崩壊の著しいレベルを示した(右側)。
【図9b】図9bは、EV1の10−1希釈物を72時間感染させた卵巣ガン細胞単層物の顕微鏡写真を示す。細胞株SKOV−3を除いて、すべての細胞株がEV1による腫瘍崩壊の著しいレベルを示した(右側)。
【図10】図10は、EV1を用いた卵巣ガン細胞への溶解感染を示す。10個の細胞株のうちの7個が、EV1による腫瘍崩壊を受けやすいと見なされる。腫瘍崩壊は、ウイルス力価(TCID50/ml)が104以上であると計算された場合に有意であると見なされた。
【図11】図11は、EV1結合が抗α2β1の存在下で阻害されることを示す。抗α2β1MAbまたは抗DAF MAbのいずれかの存在下および非存在下での卵巣ガン細胞株に対する[35S]−メチオニン標識EV1の結合。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルが、1450 Microbeta TRILUX(Wallac、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定された。
【図12】図12は、抗α2β1MAbの存在下または非存在下でのEV1による卵巣ガン細胞株のOWA−42およびIGROV−1への溶解感染を示す。感染後72時間、抗α2β1MAbとプレインキュベーションされた細胞は完全に保護されたままであった。細胞の生存が、クリスタルバイオレットのメタノール溶液を用いた染色によって明らかにされた。
【図13】図13は、抗α2β1MAbの存在下または非存在下でのEV1によるOWA−42卵巣ガン細胞単層物への溶解感染を示す。顕微鏡写真が、感染後の24時間、48時間および72時間において撮影され、これらは、α2β1受容体のモノクローナル抗体遮断によるEV1感染からの細胞の完全な保護を明らかにしている。
【図14】図14は、DOV13卵巣ガン細胞がリング状インサートの内側で培養され、HeLa細胞(ヒト繊維芽細胞)がリングの外側において培養されたことを示す。EV1による感染後、生存細胞がクリスタルバイオレットのメタノール溶液で染色された。EV1は卵巣ガン細胞に特異的に感染し、その一方で、HeLa細胞は健康なままであった。
【図15】図15は、黒色腫細胞株SkMel28における表面発現したα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。SkMel28細胞は抗α2β1の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がサンプルの幾何平均から引かれ、これにより、変化、従って、受容体の発現が明らかにされた。有意なα2β1発現が、幾何平均における変化により明らかにされる。
【図16】図16は、抗α2β1MAbまたは抗DAF MAbのいずれかの存在下および非存在下におけるSkMel28黒色腫細胞に対する[35S]−メチオニン標識EV1の結合を示す。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルが、1450 Microbeta TRILUX(Wallac、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定された。α2β1遮断はEV1結合の著しい阻害をもたらした。結果は三連サンプルの平均値±標準誤差として表される。
【図17】図17は、EV1を用いたSkMel28黒色腫細胞への溶解感染を示す。細胞の生存がクリスタルバイオレットのメタノール溶液によって明らかにされた。著しい溶解を認めることができる。
【図18】図18は、EV1を用いた卵巣ガン多細胞スフェロイドの治療を示す顕微鏡写真である。
【図19】図19Aは、1.0×106個のOVHS−1細胞が、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)、UV不活性化エコーウイルスEV1または感染性EV1(105TCID50)のいずれかでのi.p.経路による注射の3週間前に腹腔内(i.p)経路により投与されたSCIDマウスの体重変化を示すヒストグラムである。図19Bは、OVHS−1細胞が注射され、PBS、UV不活性化EV1またはEV1で治療されたマウスと比較される正常なコントロールSCIDマウスの注射後5週間目に撮影された写真を示す。PBSまたはUV不活性化EV1が投与された腫瘍保有マウスにおける腹膜腹水症の発症に留意すること。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ウイルスが腫瘍の細胞に感染し、その死を生じさせることができるかどうかを明らかにするために、生検試料を腫瘍から採取することができ、細胞の調製物を、従来の技術を使用して調製し、その後、(i)ウイルス受容体の細胞表面発現を確認することができ、また、(ii)ウイルスで細胞を攻撃し、所定のインキュベーション期間、典型的には約2日間(しかし、これは、使用されるウイルスに依存して変化し得る)、感染および細胞死について細胞をモニターすることができる。α2β1の発現はフローサイトメトリー分析によって容易に確認することができる。数多くのウイルスを、調製された悪性の細胞の種々のアリコートを使用して同時にこの方法でスクリーニングすることができ、そして、より大きな程度の感染性および細胞死を示すウイルスを、生検試料が採取された対象への投与のために選択することができる。同様に、異なる供給源から採取された生検試料に由来する種々の悪性の細胞の調製物を、特定のウイルスを使用するアッセイにおいて用いることができる。生検試料は、一人の個体の異なる部位から、または数多くの個体から採取することができる。
【0047】
本明細書中に記載されるような方法において使用されるウイルスは、望ましくは、受容者において臨床的症状をほとんど生じさせないか、または、ほんの軽微な臨床的症状を生じさせるだけである。そのようなウイルスは、当業者に広く知られている商業的供給源から容易に入手可能であり、上記の様式で本発明の方法におけるその有効性についてスクリーニングすることができる。望ましくは、ウイルスは、通常の場合、エコーウイルスEV1、エコーウイルスEV7、エコーウイルスEV8およびエコーウイルスEV22からなる群から選択されるエコーウイルスである。これらのウイルスはそれぞれが、細胞感染性のためにα2β1を認識する。例えば、EV1は、軽い上部気道疾患、そしてまた胸膜痛に関連している(Fields B.N.他、2000;McCracken A.W.他、1969)。
【0048】
α2β1の発現は、中皮において遭遇する優勢なI型コラーゲンマトリックスのために卵巣ガン腫ではアップレギュレーションされると考えられている。数多くの悪性黒色腫はまた、アップレギュレーションされたレベルのα2β1を発現することが示されている(Kramer R.H.およびMarks N、1989;Ramos D.M.他、1990)。EV1およびコラーゲンは、α2β1サブユニットのドメインIにおいて異なる残基を使用してα2β1に付着する(Bergelson J.H.、1993)。インテグリンα2β1はEV1およびコラーゲンを同時に受け入れることができない。しかしながら、ウイルスは、コラーゲンと比較した場合、親和性において10倍の増大でα2β1と結合する(Xing L、2002)。
【0049】
所与のウイルスをスクリーニングして、そのウイルスが、悪性の細胞に感染し、その死を生じさせることができるかどうかを確認する目的のために、生検試料から単離された原発性の悪性の細胞よりもむしろ悪性細胞株を使用することができる。
【0050】
選択されたウイルスは、好ましくは、ウイルスによる腫瘍の潜在的な感染のための領域を最大限にするために、悪性腫瘍上の多数の部位に対して直接的に注入される。完全なウイルスではなく、ウイルスを生じさせるための核酸を含むウイルスプラスミドまたは他のプラスミドまたは発現ベクターを、治療を達成するための腫瘍細胞による取り込みおよび細胞内における完全なウイルスの生成のために腫瘍内に注入することができる。好適な発現ベクターには、ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするDNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)インサートの発現が可能であるプラスミドが含まれる。発現ベクターは、典型的には、挿入された核酸が機能的に連結される転写調節制御配列を含む。「機能的に連結される」によって、核酸インサートが、インサートの読み枠の変化を伴うことなく、挿入された配列(1つまたは複数)の転写を可能にするための転写調節制御配列に連結されることが意味される。そのような転写調節制御配列には、転写を開始させるためにRNAポリメラーゼの結合を促進させるためのプロモーター、および、転写されたmRNAに対するリボソームの結合を可能にするための発現制御エレメントが含まれる。
【0051】
より詳細には、本明細書中で使用される用語「調節制御配列」は、所与のDNA配列の転写を行わせ、かつその転写レベルを制御(すなわち、調節)することに関与する任意のDNAを包含することが理解されなければならない。例えば、5’調節制御配列は、プロモーターおよび5’非翻訳リーダー配列を含み得る、コード配列の上流側に位置するDNA配列である。3’調節制御配列は、1つまたは複数のポリアデニル化シグナルを含む好適な転写終結(および/または)調節シグナルを含み得る、コード配列の下流側に位置するDNA配列である。本明細書中で使用される用語「プロモーター」は、転写の開始時にDNA依存性RNAポリメラーゼによって認識され、そのDNA依存性RNAポリメラーゼが(直接的または間接的に)結合する任意のDNA配列を包含する。プロモーターには、転写開始部位、ならびに、転写開始因子およびRNAポリメラーゼに対する結合部位が含まれ、また、プロモーターは、遺伝子発現調節タンパク質が結合し得る様々な他の部位または配列(例えば、エンハンサー)を含むことができる。
【0052】
哺乳動物細胞のトランスフェクションのために好適な数多くの発現ベクターがこの分野では知られている。哺乳動物細胞のトランスフェクションのために好適な発現ベクターには、pSV2neo、pEF−PGk.puro、pTk2、ならびに、ポリアデニル化部位および伸長因子1−xプロモーターを含む非複製性のアデノウイルスシャトルベクター、ならびに、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを最も好ましくは含むpAdEasy型発現ベクターが含まれる(例えば、He他(1998)を参照のこと)。ポリペプチド伸長因子−α2をプロモーターとして用いるプラスミドpEFBOSもまた利用することができる。
【0053】
ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするcDNAは、例えば、Sambrook他(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York)、およびAusubel他(1994)、Current Protocols in Molecular Biology(米国、第1巻および第2巻)に記載されるようなこの分野で広く知られている組換え技術を使用して、ウイルスRNAゲノムまたはそのフラグメントを逆転写することによって調製し、好適なベクターに組み込むことができる。
【0054】
細胞は、cDNAではなく、精製されたビリオンから抽出されたウイルスRNAでトランスフェクションすることができ、または、例えば、RNA転写物を、Ansardi,D.C.他(2001)に記載されるように、バクテリオファージT7のRNAポリメラーゼを利用してxDNAテンプレートからインビトロで作製することができる。同様に、単一のプラスミドまたはRNA分子を、ウイルスタンパク質を発現させ、ウイルスを生じさせるために投与することができ、あるいは、ウイルスタンパク質の異なる分子をコードする複数のプラスミドまたはRNA分子を、細胞をトランスフェクションし、ウイルスを生じさせるために投与することができる。
【0055】
プラスミドまたはRNAは、細胞のトランスフェクションを促進させるためのキャリアビヒクルの非存在下で、またはそのようなビヒクルとの組合せでの腫瘍細胞による取り込みのために、局所的によるか、または注入によるかのいずれかで腫瘍に対して直接、投与することができる。好適なキャリアビヒクルには、この分野では従来から知られている油中水型エマルションとして典型的には提供されるリポソームが含まれる。リポソームは、典型的には、脂質(特に、リン脂質、例えば、高い相転移温度のリン脂質など)と、通常の場合には、膜安定性をリポソームに提供するための1つまたは複数のステロイドまたはステロイド前駆体(例えば、コレステロールなど)との組合せを含む。リポソームを提供するために有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシドおよびガングリオシドなどが含まれる。ジアシルホスファチジルグリセロールは、脂質成分が14個〜18個の炭素原子(より好ましくは16個〜18個の炭素原子)を含有し、飽和している場合、特に好適である。
【0056】
リポソームと標的細胞との相互作用は受動的または能動的であり得る。能動的な標的化では、標的細胞により発現される対応するリガンドと結合するか、またはそうでない場合には相互作用する特異的なリガンドをリポソーム膜に取り込むことによるリポソームの改変が伴う。そのようなリガンドには、例えば、モノクローナル抗体またはその結合性フラグメント(例えば、FabフラグメントまたはF(ab’)2フラグメント)、糖成分または糖脂質成分、あるいはウイルスタンパク質が含まれ、α2β1に対して特異的なウイルスタンパク質またはモノクローナル抗体が特に好ましい。
【0057】
通常、腫瘍の周りの組織はまた、悪性の細胞がそのような組織に存在する可能性を考えると、ウイルスが注入されるか、または、そうでない場合にはウイルスで治療される。腫瘍が比較的進行するまで、腫瘍が検出されない場合、周りの組織には、腫瘍自体の外科的切除の後、ウイルスを注入することができる。
【0058】
悪性の腫瘍に対して直接的に注入するのではなく、接種物は、腫瘍への送達のために、腫瘍部位に隣接する位置における受容者の血流内への静脈内注射によって全身投与することができる。同様に、適当であると見なされるならば、接種物は、皮下に、腹腔内に、または、例えば、筋肉内に投与することができる。しかしながら、一般には、完全なウイルスが投与されるときには、ウイルスに対する特異的な抗体が存在する可能性、および、それにより、ウイルス送達の代わりの様式の潜在的な低下した効率を考えると、腫瘍内への直接的な注入が好まれる。
【0059】
接種物はまた、単独、または腫瘍内への接種物の直接的な注入との組合せのいずれかで局所的に適用することができる。腫瘍の局所的治療は、接種物と、悪性の細胞に感染させるために接種物の一体性を維持するための好適な医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物の滴下適用によって、またはそのような組成物を含浸させたアプリケーターで腫瘍をなでることによって達成することができる。アプリケーターは、組成物に浸された好適な材料の詰め物またはパッドを含むことができる。皮膚における黒色腫を治療する場合、接種物は、接種物が皮膚と接触するように治療される悪性部位に対して保持されるために適合化されている、接種物を含浸させたアプリケーターによって塗布することができる。この場合、アプリケーターには、黒色腫の周りの皮膚に接着するために、絆創膏の場合などの接着性表面がさらに提供される、接種物を含浸させたパッチまたは詰め物などを含むことができ、それにより接種物を黒色腫との接触状態に保つことができる。典型的には、完全なウイルスが、治療を達成するために哺乳動物に投与される。
【0060】
一般に、1つまたは複数の小さい切開部が悪性腫瘍および/または周りの組織に作製されて、それらへのウイルスのための進入部位が提供される。
【0061】
卵巣ガンまたは卵巣の近くにおけるガンの場合、エコーウイルスを、カテーテルまたは他の好適な適用器具を使用して、カテーテルまたは選択された器具を対応するファロピウス管に沿って挿入することによって、卵巣または罹患部位に対して直接的に送達することができる。
【0062】
ウイルスおよび/または核酸、または、標的細胞内においてウイルスを生じさせるためのウイルス核酸を含むプラスミドを受容者に接種するために使用される医薬的に許容され得るキャリアは、生理学的食塩水などの液体、または、適切であると見なされる任意の他の従来から知られている生理学的に許容され得る媒体、例えば、薬学的使用のために、また、接種物を治療部位に投与するために好適な市販のゲルなどであり得る。キャリアは、典型的には生理学的pHに緩衝化され、好適な保存剤および/または抗生物質を含有することができる。
【0063】
接種物は、一般に、1mlの接種物あたり約1×102プラーク形成ユニット〜約1×1010プラーク形成ユニットを含有する。好ましくは、接種物は1mlの接種物あたり約1×105プラーク形成ユニット以上を含有する。患者に投与される接種物の量は、患者の全体的な状態、悪性腫瘍の段階および存在位置を、ウイルスで治療される領域の全体的なサイズおよび分布と一緒に考慮に入れて、受け入れられている医療行為に従って主治医または外科医によって容易に決定することができる。典型的には、患者は、最初の用量のウイルスで治療され、続いて、ウイルスの最初の投与に対する患者の応答、ならびに、最初の治療から生じるウイルス感染および悪性細胞の死の程度などの要因が決定されるまで、好適な期間にわたってモニターされ、その後、さらなるウイルスを患者に投与するための決定がなされる。
【0064】
望ましくは、個体は、所定の間隔で一定の期間、ウイルスで治療される。間隔は、それぞれの状況において適切であると決定されるように、毎日であり得るか、あるいは24時間〜72時間以上までに及び得る。異なるウイルスを、以前に投与されたウイルスに対する何らかの免疫応答の影響を回避または最小限にするために毎回、投与することができ、そして、治療の経過期間は、主治医によって決定され得るように、1週間〜2週間以上に及び得る。最も好ましくは、哺乳動物が以前にさらされてないウイルス、または、哺乳動物が、標準的な技術によって決定され得るような比較的軽微な免疫応答を生じるウイルスが投与される。
【0065】
容易に入手可能な知られているエコーウイルスが本発明の方法において好適に用いられ得るが、従来の技術を使用して改変または操作されたウイルスもまた利用することができる。例えば、ウイルスは、さらなる細胞接着分子を細胞受容体として用いるために改変することができる。一例として、ウイルスは、ペプチドモチーフ「RGD」がウイルスのキャプシド表面に発現されるように部位特異的変異誘発を使用して改変することができる。RGDモチーフはαvインテグリンヘテロ二量体によって認識され、そして、このキャプシド改変は、例えば、ウイルスがインテグリンα2β1(α2β1を有するような黒色腫病巣においてアップレギュレーションされることが示されている細胞接着分子;Natalia P.G.、1997)と結合することを可能にすることができ、これは、潜在的には、標的細胞によるウイルスの高まった取り込みを生じさせる。
【0066】
本発明の本質がより明確に理解され得るために、次に、その好ましい形態が、下記の非限定的な実施例を参照して記載される。
【実施例】
【0067】
(実施例1:材料および方法)
1.1.細胞株
IGROV−1、A2780、DU145、PC3、AsPC−1、PANC−1、T47−D、MDA−MB361、MDA−MB453、MDA−MB231およびMCF−7のガン細胞株をGarvan Institute(Sydney、New South Wales、オーストラリア)から得た。BT−20、MDA−MB157、SK−BR−3、ZR−75−1、HCT116、LIM2537、SW480、SW620、2008、JAM、OVCA−429、OVCAR−3、OVHS−1、OWA−42、SKOV−3およびDOV13のガン細胞株をPeter MacCullum Cancer Institute(Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。SkMel28細胞をRalph博士(Department of Biochemistry and Molecular Biology、Monash University、Victoria、オーストラリア)から得た。HeLa細胞をMargery Kennett(Entero−respiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。α−MEM培地で培養されるBT−20細胞、ならびに、DMEM培地で培養されるSkMel28細胞およびHeLa細胞を除いて、すべての細胞が、2%〜5%のウシ胎児血清(FCS)および抗生物質を含有するRPMIにおいて標準的な条件(5%CO2雰囲気下で37℃)のもとで培養された。使用された細胞はすべてが、ELISA(Roche Molecular Systems、CA、米国)によってマイコプラズマの存在について定期的に検査された。
【0068】
1.2.ウイルス
コクサッキーウイルスA21(CAV21)プロトタイプ株(Kuykendall)、コクサッキーウイルスB3(CVB3)プロトタイプ株(Nancy)、エコーウイルス(EV1)プロトタイプ株(Farouk)、エコーウイルス(EV7)プロトタイプ株(Wallace)、およびポリオウイルス1(PV1)プロトタイプ株(Mahoney)をMargery Kennett博士(Enterorespiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。すべてのウイルスはHeLa細胞において増殖させられ、力価測定された。
【0069】
1.3.モノクローナル抗体(MAb)
抗DAF MAbのVIIIA7(これはDAFの3番目のSCRを認識する)はT.Kinoshita博士(大阪大学、大阪、日本)から得られ、抗DAF mAbのIH4はBruce Loveland博士(Austin Research Institute、Heidelberg、Victoria、オーストラリア)からの譲渡物であった。抗CAR MAbのRmcBはJ.M.Bergelson博士(Dana Farber Cancer Institute、Boston、Massachusetts)から得られた。抗β2−ミクログロブリンMAb918はP.Minor博士(NIBSC、Hertfordshire、英国)から得られた。抗α2β1MAbのAK7(これはα2サブユニットを認識する)およびコントロール抗体の抗GPIV(血小板膜糖タンパク質)MAb PTA−1はGordon Burns教授(Department of Medical Biochemistry and Cancer Research、University of Newcastle、NSW、オーストラリア)から得られた。抗ICAM−1 MAbのIH4はAndrew Boyd博士(Queensland Institute for Medical Research、Queensland、オーストラリア)から得られた。
【0070】
1.4.フローサイトメトリー分析
ガン細胞におけるエンテロウイルス受容体の表面発現がフローサイトメトリーによって分析された。分散された細胞(1×106個)を、氷上で20分間、適切なMAb(PBSにおいて希釈された5μg/ml)と20分間インキュベーションした。細胞をPBSで洗浄し、遠心分離によってペレット化し、その後、ヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメント(Dako,A/S、デンマーク)の1:50希釈物の100μlに再懸濁した。細胞を再び氷上で20分間インキュベーションし、洗浄し、ペレット化して、PBSに再懸濁し、その後、フローサイトメトリー分析を行った。細胞表面での受容体の発現が、FACStar Analyser(Becton Dickenson、Sydney、オーストラリア)を使用して分析された。
【0071】
1.5.ウイルス感染性アッセイ
ガン細胞株のコンフルエントな単層物に、1%ウシ胎児血清(FCS)を含有するDMEMにおけるCAV21、CVB3、EV1、EV7またはPV1の10倍連続希釈物(100μl/ウエルを三連または四連で)を接種し、これらを5%のCO2環境において37℃で72時間インキュベーションした。細胞の生存を測定するために、プレートを100μl/ウエルのクリスタルバイオレットメタノール溶液(0.1%クリスタルバイオレット、20%メタノール、20%ホルムアルデヒド、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS))と24時間インキュベーションして、蒸留水において洗浄した。
【0072】
限界希釈アッセイの終点は、50%の試験ユニットに影響を及ぼすウイルスの希釈度である。統計学的手法が、ReedおよびMuenchの方法(参考文献)を使用して終点を計算するために用いられた。終点は50%組織培養感染用量/ミリリットル(TCID50/ml)として表された。
【0073】
抗受容体モノクローナル抗体で前処理された細胞単層物が要求される場合、細胞は100μlの抗α2β1AK7MAb(PBSにおいて希釈された20μg/ml)と37℃で1時間インキュベーションされた。その後、細胞単層物は適切なウイルス希釈物の二連のサンプルに接種され、5%のCO2環境において37℃で72時間インキュベーションされ、その後、上記のように染色された。
【0074】
顕微鏡写真が、倒立型顕微鏡を使用して100倍の倍率(Olympus IX−FLA)で、24時間、48時間または72時間において撮影された。
【0075】
1.6.ウイルス精製
DOV13細胞のコンフルエントな単層物を含有する6ウエル組織培養プレートに500μlのEV1(感染多重度[moi]=105TCID50/ml)を37℃で1時間にわたって接種した。非結合のウイルスを、メチオニン/システインを含まないDMEM(ICN Biomedical、Ohio、米国)で3回洗浄することによって除き、細胞単層物を1.3mlのこの培地において37℃でさらに2時間インキュベーションし、その後、300μCiの[35S]−メチオニントランスラベル(ICN Biomedical、Ohio、米国)を加えた。感染した単層物を5%のCO2環境において37℃で一晩インキュベーションした。3回の凍結/融解サイクルの後、ウイルス溶解物をBeckmanXL−90超遠心分離器(SW41tiローター)における36,000rpmでの95分間の速度遠心分離によって5%〜30%スクロースグラジェントで精製した。分画物を各チューブの底から集め、液体シンチレーション計数(Wallac 1450 Mirobeta TRILUX、フィンランド)によってモニターして、ウイルス結合アッセイにおいて使用される160Sウイルス最大画分を捜し出した。
【0076】
放射能標識されていないEV1ビリオンを、プールされ、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に対して透析された最大感染画分を用いた並行するグラジェントで精製した。紫外(UV)光で不活性化されたEV1を、6ウエルプレートにおいて、PBSにおける精製EV1の1.0ml/ウエル(5×105TCID50)を15ワットのUV光に30秒間さらすことによって作製した。ウイルスの不活性化はマイクロタイタープレートでの溶解感染性の細胞アッセイによって評価された。
【0077】
1.7.放射能標識されたウイルスの結合アッセイ
1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する800μlのRPMIに再懸濁された約1×106個の細胞を、20μg/mlのMAb(PBSにおいて希釈された抗α2β1または抗DAF)の存在下、4℃で1時間インキュベーションし、その後、300μl(1×106個)の[35S]−メチオニン標識された160S EV1を加えた。4℃で2時間インキュベーションした後、細胞を血清非含有培地で4回洗浄し、細胞ペレットを200μlの0.2M NaOH−1%SDSに溶解し、その後、結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを三連サンプルからの液体シンチレーション計数によって測定した(Wallac 1450 Mirobeta TRILUX、フィンランド)。結果が平均値±SEとして表された。
【0078】
1.10.ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)
[35S]−メチオニン標識されたウイルス画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分析し、オートラジオグラフィーによって可視化した。[35S]−メチオニン標識された160S EV1画分をサンプル還元緩衝液(250mM TRIS、0.2g(w/v)SDS、20%(v/v)グリセロール、10%(v/v)2−メルカプトエタノール、および0.01%(w/v)ブロモフェノールブルー、pH6.8)と95℃で10分間インキュベーションし、ビリオンを変性させた。変性処理された160Sウイルス最大画分を、その後、180Vで45分間、Benchmark染色済み中範囲タンパク質ラダー(GIBCO、米国)と一緒に15%Tris−HClプレキャストゲル(BIORAD Ready−Gel、CA、米国)において分離した。主な構造タンパク質の可視化およびウイルス純度の分析が、96時間の感光を行った後のHyperfilm MP(Amersham International、英国)におけるオートラジオグラフィーによって行われた。
【0079】
1.11.細胞の細胞傷害性アッセイ
ヒト末梢血リンパ球(OVHS−1細胞およびDOV−13細胞)の細胞懸濁物をEV1で攻撃し(moi=1.0TCID50/細胞)、37℃で24時間インキュベーションした。細胞の細胞溶解のレベルを、製造者の説明書に従ってCyto−Tox96キット(Promega Corp.、Maddison、WI、米国)を使用することによって評価されるLDH(細胞溶解時に放出される安定な細胞質ゾル酵素)の放出の関数として計算した。
【0080】
1.12.スフェロイドの培養およびスフェロイド感染性アッセイ
DOV−13細胞を、24ウエルプレートにおいて、5%FCSを含有する1mlのRPMI1640においてウエルあたり500個または5000個の細胞で半固体の0.5%寒天層に接種した。細胞は、スフェロイドを形成させるために5%のCO2環境において37℃で48時間インキュベーションされ、その後、EV1が添加された(105TCID50)。
【0081】
1.13.SCIDマウスにおける腹腔内腫瘍異種移植片モデル
6週齢〜8週齢のオスBALB/cSCIDマウスを、ニューカッスル大学動物管理倫理委員会によって承認されたプロトコルに従って病原体非含有条件で飼育した。OVHS−1細胞を、0.05%トリプシンを用いて集め、10%FCSを含有するRPMIに再懸濁し、遠心分離によってペレット化した。細胞を洗浄し、PBSに再懸濁し、その後、マウスに1×106個の細胞を200μlにおいて腹腔内(i.p.)注射した。14日後、マウスを3つの群(n=5)に分け、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)で、またはUV不活性化EV1もしくは感染性EV1のいずれかの105TCID50でi.p.治療した。動物は、毎週、体重測定され、腫瘍がその体重の20%を越えた時に屠殺された。治療されたマウスの体重が、腫瘍を有さない健康なBALB/cSCIDマウスと比較された。
【0082】
1.14.リアルタイムPCRによるウイルス血症の決定
感染マウスから得られた血清を、リアルタイム定量的RT−PCRを使用してウイルス血症について分析した。簡単に記載すると、ウイルスRNAを、製造者の説明書に従って、QIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen、Clifton Hill、Victoria、オーストラリア)を使用して10μlの血清から抽出し、40μlの最終体積で溶出した。EV1のウイルスRNAレベルを測定するためのプライマーおよびプローブは、Primer ExpressTM1.5ソフトウエア(Applied Biosystems、Foster City、CA、米国)を使用して設計され、以前に発表されたEV1配列(Genbankアクセション番号AF029859)に基づいていた:フォワードプライマー(5’−CAAGACAGGGACCAAAGAGGAT−3’)、リバースプライマー(5’−CCACTCGCCTGGTTGTAATCA−3’)および6−FAM標識のMGBプローブ(5’−CCAATAGCTTCAACAATT−3’)。ワンステップRT−PCRが、ABI7000配列検出装置においてPlatinum(登録商標)Quantitative RT−PCR ThermoScriptTM One−Step Systemを使用して行われた。標準曲線を作製するために、EV1ウイルスのストック物(1×106TCID50/ml)の10倍希釈物が、最適化された濃度のプライマーおよびプローブを用いて増幅された。25μlの体積において、反応混合物は、1×ThermoScriptTM反応混合物、500nMのフォワードプライマー、900nMのリバースプライマー、250nMのプローブ、500nMのROX、0.5μlのThermoScriptTMPlus/Platinum Taq Mix、および5μlの抽出されたRNAを含んだ。熱サイクル条件は、60℃で30分、その後、95℃で5分、次いで、95℃で15秒および60℃で1分の40サイクルに供された。
【0083】
(実施例2:ガン細胞のウイルス媒介による腫瘍崩壊)
2.1.乳ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
エンテロウイルスによって使用される選択されたエンテロウイルス細胞表面受容体の相対的な発現レベルを明らかにするために、フローサイトメトリー分析が行われた。選択された受容体群は、CAV21によって用いられるICAM−1;EV7、CAV21、CVB3によって用いられるDAF;CVB3によって使用されるCAR;および、EV1によって使用されるインテグリンα2β1からなった。PVR受容体に対するMabを得ることができなかったため、PVRの発現レベルは測定されなかった。
【0084】
9個の乳ガン細胞株が分析され、これらには、BT−29、MCF−7、MDA−MB157、MDA−MB231、MDA−MB361、MDA−MB453、SK−BR−3、T47−DおよびZR−75−1が含まれる。これらの細胞株は、抗ICAM−1(IH4)、抗CAR(RmcB)、抗DAF(VIIIA7)または抗α2β1(AK7)のいずれかとインキュベーションされた。
【0085】
ICAM−1の発現は9個の系統のうちの6個において顕著であり、一方、DAFは、これらすべての細胞株において相対的に低いレベルで発現しているようであった。中程度のレベルのCAR発現が9個の系統のうちの7個において明らかであり、一方、非常に小さいレベルのα2β1発現がこれらの乳ガン細胞株のうちの8個の表面に存在した(図1)。
【0086】
2.2.選択されたエンテロウイルスによる乳ガン細胞の腫瘍崩壊
溶解感染性アッセイが、選択されたエンテロウイルス群(CAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1)に対するそれらの感受性を明らかにするために、9個すべての乳ガン細胞株に対して行われた(図2)。細胞株は、1ミリリットルあたり50パーセント終点での組織培養感染用量(TCID50/ml)が104以上であると計算された場合、腫瘍崩壊を非常に受けやすいと見なされた。CAV21およびCVB3は9個の乳ガン細胞株のうちの6個において著しい溶解を誘導した。一般に、乳ガン細胞は、EV1に対する相当の感受性を明らかにした1つの細胞株T47−Dを除いて、エコーウイルス(EV1およびEV7)による溶解感染に対する感受性がなかった。PV1は9個の乳ガン細胞株のうちの8個において実質的な腫瘍崩壊を引き起こした(図2)。
【0087】
2.3.結腸直腸ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
4つの結腸直腸ガン細胞株(HCT116、LIM2537、SW480およびSW620)が、フローサイトメトリーによって、ICAM−1、CAR、α2β1およびDAFの発現について分析された。著しいレベルのICAM−1発現およびDAF発現がこれらの細胞株のうちの2つにおいて観測された。中程度のレベルのCARが4つすべての系統において発現しているようであり、一方、著しいレベルのα2β1発現は観測されなかった(図3)。
【0088】
2.4.選択されたエンテロウイルスによる結腸直腸ガン細胞の腫瘍崩壊
CAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1が、4つすべての結腸直腸ガン細胞株において力価測定された。CVB3およびPV1による著しいレベルの腫瘍崩壊がこれらの細胞株のすべてにおいて観測された(図4)。しかしながら、CAV21により誘導される著しい細胞溶解が4つの細胞株のうちの1つ(LIM2573)のみにおいて生じた。この細胞株は最大レベルのICAM−1発現を示した。α2β1の非常に低い発現レベルにもかかわらず、EV1はこれらの細胞株のうちの3つに溶解感染し、一方、すべての細胞がEV7感染に対して治療抵抗性があった。
【0089】
2.5.前立腺ガン細胞および膵臓ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
DU145およびPC3を含む前立腺ガン細胞株、ならびに、AsPC−1およびPANC−1を含む膵臓ガン細胞株が、ICAM−1、DAF、CARおよびα2β1の発現について分析された。著しいレベルのICAM−1が両方の前立腺ガン細胞株および一方の膵臓ガン細胞株において発現していた。中程度のCAR発現およびDAF発現がこれらの細胞株の4つすべてにおいて見出され、一方、α2β1発現は非常に小さいようであった(図5)。
【0090】
2.6.前立腺ガン細胞および膵臓ガン細胞の腫瘍崩壊
エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1に対する2つの前立腺ガン細胞株および2つの膵臓ガン細胞株の感受性が、マイクロタイタープレートでの溶解感染において調べられた。前立腺ガン細胞株は、DU145の場合、EV7を除くすべてのウイルスに対して感受性があった。PANC−1はCAV21およびPV1によって感染しただけであった。これに対して、もう一方の膵臓ガン細胞株AsPC−1は、EV7を除くすべてのウイルスによる腫瘍崩壊を示した(図6)。
【0091】
2.7.卵巣ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
卵巣ガン細胞株が、エンテロウイルス受容体のICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1の発現について調べられた。9個の細胞株がこの研究では含まれた:A2780、DOV13、IGROV−1、JAM、OVCA−429、OVHS−1、OWA−42、SKOV−3および2008。著しいレベルのICAM−1が9個の細胞株のうちの2個において発現し、一方、中程度のレベルのCAR発現が9個のうちの6個に存在した。DAFは、1個の卵巣ガン細胞株を除くすべてにおいて高レベル〜中程度のレベルで発現していた。9個の卵巣ガン細胞株のうちの8個がα2β1の中程度のレベル〜高レベルの発現を示し(図7)、さらなる卵巣ガン細胞株(OVCAR−3)は著しいレベルのα2β1を発現していた(データは示されず)。
【0092】
2.8.卵巣ガン細胞株の腫瘍崩壊
CAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1の腫瘍崩壊能力が9個の卵巣ガン細胞株のそれぞれにおいて評価された(図8)。CAV21の感受性が9個の細胞株のうちの2個において認められ、一方、CVB3は9個の細胞株のうちの7個において著しい溶解を生じさせた。卵巣ガンは、感染したとき、エコーウイルスに対して特に感受性があるようであり、EV7は9個のガン細胞株のうちの4個において死を生じさせ、EV1は10個の細胞株のうちの7個を著しく溶解させた(図9a、図9bおよび図10)。PV1に対する攻撃されやすさが9個すべての卵巣ガン細胞株にわたって明らかにされた。顕微鏡写真が、EV1に感染した10個すべての系統について撮影され(図9aおよび図9b)、そして、EV1を用いた10個の卵巣ガン細胞株のマイクロタイタープレートでの溶解感染もまた観測された(図10)。
【0093】
2.9.卵巣ガン細胞株に対するEV1の結合
卵巣ガン細胞株はEV1による腫瘍崩壊を非常に受けやすかったので、EV1の細胞付着の性質を評価するためのさらなる研究が始められた。細胞を抗α2β1(AK7)モノクローナル抗体または抗DAF(VIIIA7)モノクローナル抗体のいずれかとプレインキュベーションし、その後、放射能標識されたEV1を加えて、EV1の宿主細胞結合におけるこれらの受容体の関与を明らかにした。EV1の結合は、試験された10個すべての細胞株において明らかであった。α2β1インテグリンを抗受容体抗体で阻止することによって、EV1の細胞付着が著しく阻害された。モノクローナル抗体VIIIA7を用いた細胞表面受容体DAFの阻止はEV1結合の著しい阻害を生じさせなかった(図11)。
【0094】
2.10.α2β1インテグリンの抗体阻止は卵巣ガン細胞株のEV1感染を阻害する
EV1感染におけるα2β1の機能を評価するために、細胞単層物が抗α2β1(AK7)モノクローナル抗体とプレインキュベーションされた溶解アッセイが行われた。OWA−42およびIGROV−1の卵巣ガン細胞株が分析された。ウイルス感染後の72時間後、細胞単層物は、MAbによる阻止が存在しない場合、EV1の溶解感染に対して非常に感受性があった。α2β1インテグリンのMAb阻止の後では、細胞株における腫瘍崩壊は、EV1の最も低い希釈度においてさえ全く示されなかった(図12)。顕微鏡写真が、OWA−42細胞株の感染後の24時間、48時間および72時間において撮影された(図13)。
【0095】
2.11.非ガン性ヒト細胞はEV1感染に対する感受性がない
実験が、ヒト繊維芽細胞にEV1を感染させることによって明らかにされる、EV1が非ガン性ヒト細胞に対して有する効果を調べるために行われた。簡単に記載すると、6ウエル組織培養プレートが組織培養環状インサートとともに準備され、DOV13細胞がリングの内側に置かれ、ヒト繊維芽細胞のHeLa細胞(CSL(オーストラリア)から得られる)がリングの外側に入れられ、これらは、コンフルエントな単層物が形成されるまで37℃でインキュベーションされた。リングが除かれ、細胞に、37℃で一晩、EV1を感染させた。生存細胞がクリスタルバイオレットのメタノール溶液で染色された。EV1が感染したとき、DOV13卵巣ガン細胞は溶解され、これに対して、HeLa細胞は健全なままであった(図14)。このことは、EV1に対する卵巣ガン細胞の特異的な感受性を明らかにしている。
【0096】
2.12.黒色腫細胞株SkMel28におけるα2β1の発現
黒色腫(皮膚のガン)は、α2β1の発現をアップレギュレーションすることが知られている。黒色腫細胞株SkMel28が、フローサイトメトリーを使用して発現について調べられた。高レベルのα2β1発現が観測された。しかしながら、低いバックグラウンドレベルの結合がコントロールMAbによって示された(図15)。
【0097】
2.13.SkMel28に対するEV1の結合
SkMel28細胞における表面発現のα2β1に対するEV1付着の性質をさらに調べるために、放射能標識されたウイルスの結合アッセイが行われた。放射能標識されたEV1はこの悪性黒色腫細胞株に著しく結合し、α2β1のMAb阻止は、結合したEV1の量を大幅に激減させた(図16)。
【0098】
2.14.EV1を用いたSkMel28の感染性アッセイ
溶解感染性アッセイが、EV1感染に対するSkMel28の感受性を明らかにするために行われた。この悪性黒色腫細胞株は、EV1が感染したとき、中程度の腫瘍崩壊を示した。クリスタルバイオレット色素は、溶解感染を受けていない細胞によって吸収され、これに対して、染色されないウエルは細胞単層物の完全な溶解を表している(図17)。
【0099】
2.15.考察
卵巣ガン細胞株は、EV1による溶解感染に対して非常に感受性があることが見出され、試験された10個の細胞株のうちの7個が著しい腫瘍崩壊を示した。卵巣ガン細胞株に対するEV1の結合についてのさらなる研究では、α2β1が、EV1によって使用される一次受容体であることが確認された。放射能標識された結合研究では、α2β1がウイルス結合のために要求されたことがさらに示され、MAb阻止アッセイでは、感受性の卵巣ガン細胞をα2β1モノクローナル抗体(Mab)と前処理することによって、EV1感染が完全に阻害されたことが明らかにされた。DAF MAbのVIIIA7もまた、DAFが、エンテロウイルスのCAV21およびCVB3に関して果たすようにEV1結合において役割を果しているかどうかを明らかにするために、陰性コントロール治療として結合アッセイにおいて使用された。EV1結合の著しい阻止は、抗DAF MAbの前処理によって生じなかった。
【0100】
卵巣ガン細胞をヒト繊維芽細胞と同時培養し、その後、EV1を感染させた場合、ヒト繊維芽細胞は、ウイルスが卵巣ガン細胞を特異的に溶解した環境においてさえ、EV1感染に対して感受性がないことが明らかにされた。
【0101】
黒色腫細胞株に対するEV1媒介による腫瘍崩壊の効果もまた調べられた。データからは、α2β1がSkMel28黒色腫細胞株の表面でアップレギュレーションされたこと、および、この細胞はEV1の溶解感染に対して感受性があったことが明らかにされた。卵巣ガン細胞に対するEV1の結合は、放射能標識された結合アッセイによって示されるように、α2β1相互作用を介してであることが示された。EV1感染について許容性があった残りのガン細胞株は結腸ガン細胞株であり、4つの細胞株のうちの3つが、2つの前立腺ガン細胞株と同様に、非常に感受性があった。これらのガンタイプはともに、卵巣ガン細胞と同じ細胞外マトリックスに遭遇することがあり、従って、腹膜表面に見出されるI型コラーゲンが多い細胞外マトリックスを通過する転移のとき、それらのα2β1発現をアップレギュレーションし得る。
【0102】
数多くの変化および/または改変が、広く記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態において示されるような発明に対してなされ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明の実施形態は、すべての点で、限定的ではなく、例示であると見なされるべきである。
【0103】
(実施例3:エコーウイルス(EV2)溶解感染の特異性)
3.1.EV1の相対的病原性
新生物細胞に対して比較される非悪性卵巣細胞のインビトロ培養物に対するEV1の相対的な病原性が調べられた。ヒト乳頭腫ウイルス16E6−E7のオープンリーディングフレームを使用して不死化された正常なヒト卵巣表面上皮(HOSE)細胞(Tsao,S.W.他、1995)が、明細胞卵巣ガン腫株(OVHS−1)および未分化卵巣ガン腫細胞(DOV13)と一緒に、moi5.0〜0.05TCID50/細胞まで及ぶ投入多重度のEV1で攻撃された。感染後48時間において、顕微鏡検査により、両方の卵巣ガン腫株の単層物における全体的な細胞破壊および細胞溶解が、細胞あたり0.05TCID50のEV1もの低いウイルス攻撃においてさえ、明らかにされた。対照的に、HOSE細胞の細胞形態学における検出可能な変化は、最も大きいウイルス攻撃用量においてさえ、観測されなかった。
【0104】
EV1感染の特異性を明らかにするさらなる努力において、正常な末梢血リンパ球(PBL)ならびにOVHS−1細胞およびDOV13細胞がEV1で攻撃された(moi=1.0)。フローサイトメトリー分析により、PBL細胞調製物は表面α2β1をほとんど発現しておらず、一方、両方の卵巣ガン腫細胞株は高レベルのα2β1を発現していることが明らかにされた。PBLおよび卵巣ガン細胞の懸濁物のEV1媒介による細胞溶解が、LDHの放出を測定する細胞の標準的な細胞傷害性アッセイを使用することによって評価された。EV1攻撃は、EV1感染による卵巣培養物の細胞のほとんど完全な細胞溶解をもたらし、一方、バックグラウンドレベルの細胞溶解のみが、同じ負荷用量のEV1にさらされた後のPBLにおいて観測されただけであった。
【0105】
EV1が、検出可能な細胞溶解の非存在下でPBLにおいて増殖感染を開始させたかどうかを明らかにするために、また、バックグラウンドレベルの細胞溶解が非特異的であり、EV1感染により媒介されなかったことを確認するために、PBLおよび2つの卵巣ガン腫株の懸濁物は、EV1が接種され(moi=1.0)、子孫ウイルスの産生についてモニターされた。2つの卵巣ガン細胞株(OVHS−1およびDOV−13)において、EV1力価が最初の細胞結合接種物よりも約104倍増大した。対照的に、子孫ウイルスは48時間のインキュベーションにわたってPBLによって産生されず、観測された感染性は、非特異的に結合した残存する投入接種物と一致した。
【0106】
(実施例4:卵巣ガン細胞のエコーウイルス(EV1)溶解)
4.1.インビトロ培養された卵巣ガン細胞スフェロイドのEV1溶解
卵巣ガン細胞の多くのインビトロ培養物は多次元的スフェロイドとして増殖することができる(Casey,R.C.他、2001)。多細胞スフェロイドは、進行した段階の卵巣ガン腫を有する患者の腹水に一般的に見出される多細胞の凝集物を刺激する。卵巣細胞の単層培養物はEV1による溶解感染を非常に受けやすいことが明らかにされているので、多卵巣ガン細胞スフェロイドをEV1で攻撃した。フローサイトメトリー分析により、OVHS−1細胞が単層形成またはスフェロイド形成のいずれかで成長したとしても、EV1細胞受容体α2β1の表面発現レベルが比較可能であったことが明らかにされた。EV1(105TCID50)が、スフェロイドを取り囲む半固体アガロース培地に投与され、スフェロイド形態学の顕微鏡写真画像がウイルス攻撃後の様々な間隔で得られた。図18は、コントロールの非感染スフェロイドが活発に増殖中であり、9日間のインキュベーション期間を通して体積の着実な増大をもたらしていることを示している。対照的に、EV1感染スフェロイドは、接種後の最初の7日の期間中、体積のわずかな減少を示し、著しい構造的解離および細胞破壊がその後の48時間にわたって生じた。データは、EV1が、最初の接種前スフェロイド体積(すなわち、5×102細胞または5×103細胞)にもかかわらず、スフェロイドの成長を遅らせることにおいて効果的であるガン性スフェロイド内の細胞溶解感染に対して増殖性細胞を開始させることを示している。
【0107】
4.2.ヒト卵巣ガンの腹水モデルに対するエコーウイルス1の効果
転移性卵巣ガンの後期段階において、腫瘍細胞は腹膜腔の至るところに遊走し、かつ/または組織部位から離れてコロニーを形成する。EV1媒介の腫瘍崩壊が、腹膜卵巣ガンの進行した段階に対する効果的な治療であるかどうかを明らかにするために、ヒト卵巣ガン腫の異種移植片を有するSCIDマウス腹水症モデルが用いられた。SCIDマウスには、腹腔内経路によって、2×106個のOVHS−1細胞が、生EV1の投与の14日前に投与された。実験治療様式は、腹腔内経路により注入されたPBS、UV不活性化EV1または生EV1(105TCID50)のいずれかの1回の投薬からなった。卵巣ガン異種移植片を有さないマウスの体重変化に対する、様々な治療を受けているマウスの体重変化が、腹水症負荷の発症のマーカーとして使用された。
【0108】
治療後3週間目において、PBSまたはUV不活性化EV1が投与されたマウスは体重の著しい増大を示し、しかし、正常なマウスとEV1治療マウスとの間には差が観測されなかった。PBS群またはUV不活性化EV1群の体重は増大し続け、PI4週間目において、腹水の蓄積による実質的な腹部膨満がすべてのマウスにおいて明らかであったが、残りの治療群では明らかではなかった(図19A)。PI5週間目において、PBSおよびUV不活性化EV1に由来するすべてのマウスが過度の腹膜腹水症のために屠殺され、その一方で、検出可能な体重増大または腹水形成が、EV1治療マウスと、卵巣ガン異種移植片を有さない動物との間には観測されなかった(図19B)。この研究の経過期間中を通して、劇的な疾患発症の徴候は、ウイルス接種物の用量よりも10倍〜100倍多い血清ウイルス負荷量が存在する場合でさえ、生EV1が注入されたマウスでは観測されなかった(PI7日目〜14日目において;データは示されず)。
【0109】
4.3.考察
複製可能なウイルスを使用するウイルス腫瘍崩壊法を成功するための主要な必要条件の1つは、新生物細胞に対する大きな好みのほかに、宿主に対する低いウイルス病原性である。
【0110】
本研究では、ヒト卵巣ガン細胞のインビトロ細胞培養物の溶解感染を誘導する代表的なヒトエコーウイルスの能力が評価された。黒色腫細胞について非常に腫瘍崩壊性があるにもかかわらず、CVA21、およびEV7のプロトタイプ株は、多数のヒト卵巣ガン細胞単層物において増殖性の溶解感染を誘導することにおいてEV1ほど強力ではなかった。モノクローナル抗体阻止研究により、卵巣ガン細胞のEV1媒介による溶解感染が、細胞表面に発現したインテグリンα2β1との特異的なウイルスキャプシド結合によって開始されたことが確認された。インテグリンα2β1はEV1およびコラーゲンの両方と同時に結合することができないので、卵巣ガン細胞のEV1溶解感染は迅速な細胞腫瘍崩壊を媒介するだけでなく、1型コラーゲンとインテグリンα2β1との間での相互作用を妨害することができ、それにより、腹膜表面の全域におけるガン細胞の散在を潜在的に低下させることができる。
【0111】
EV1攻撃による多細胞の三次元スフェロイドの破壊は、充実性卵巣腫瘍負荷のインビボ低下におけるEV1媒介による腫瘍崩壊の有用性を反映している。卵巣スフェロイドにおける個々の細胞は、単層形成における細胞よりも強固であるようであり、そのため、放射線および化学物質により誘導されるアポトーシスに対する高まった抵抗性を有するということ(Frankel,A.他、1997)を考えると、EV1による卵巣スフェロイドのこの効率的な溶解は見事である。
【0112】
治療的な腫瘍崩壊性ウイルスは、悪性の細胞を標的化するための識別機構を有さなければならない。選択的なEV1媒介感染が、EV1は正常な上皮卵巣細胞株および末梢血リンパ球(PBL)の劇的な細胞溶解を誘導することができないことによって強調された。高力価の子孫ウイルスが、PBLの懸濁物からではなく、卵巣ガン細胞から産生することは、非新生物細胞に対するEV1感染の特異性および低い病原性の性質を補強している。
【0113】
卵巣ガン腫に加えて、悪性の黒色腫細胞もまた、アップレギュレーションされたレベルの表面インテグリンα2β1を発現し、それにより、悪性の黒色腫細胞をEV1攻撃に対して感受性にしている。ちょっとした逆説において、卵巣ガン細胞のEV1感染は、黒色腫細胞におけるCVA21に対する細胞標的化受容体であるICAM−1の増大した表面発現を誘導する(Pietiainen,V.他、2000)。従って、生EV1および生CVA21の両方を含有する治療用調製物による卵巣ガンおよび/または黒色腫の悪性腫瘍の攻撃は、より強力な腫瘍崩壊感染をもたらし得る。
【0114】
EV1の腹腔内投与は、SCIDマウスの腹膜腔における卵巣腫瘍異種移植片の発達を抑制することにおいて非常に効果的であった。生EV1が注入されたマウスはすべてが、(卵巣ガン異種移植片が注入されていないマウスと比較して)増大した体重増加を示さず、また、検出可能な腹膜腹水の発達を示さなかった。新生物性卵巣細胞のインビボ溶解感染によって生じた子孫EV1が、PI7日目にマウスの血液において検出された(データは示されず)。ウイルス血症EV1は、散らばった疾患を抑えるための魅力的なリザーバーと見なすことができ、そして、有意なレベル(約106TCID50)でのその検出はまた、105TCID50のウイルス投入用量が、腫瘍崩壊能を維持しながら著しく減少させられ得ることを示している。卵巣ガン異種移植片を有さないマウスにおいてウイルス血症EV1をPI7日目に検出できないこと(データは示されず)は、感受性の新生物細胞が存在しない場合、EV1は全身循環から迅速かつ効果的に排除されつつあることを示唆している。
【0115】
全体として、これらの結果は、EV1による腫瘍崩壊治療が、腹膜卵巣ガンを抑えるためにインビトロおよびインビボにおいて非常に効果的であることを強調している。比較的非浸襲性のEV1治療の使用は、混合化学療法が後に続く外科的減量化を伴う現行の治療様式に対する魅力的な代替法として見なすことができる。EV1治療はまた、手術手技の間に放出された新生物細胞の標的化および破壊に集中する腫瘍減量化手術後の補助治療として用いることができる。EV1腫瘍崩壊治療はまた、高レベルのインテグリンα2β1を発現する他のヒト悪性腫瘍の治療における新規な治療法として使用することができる。その上、EV1およびEV8はインテグリンα2β1上の同じ結合エピトープについて競合するので、EV8は、卵巣ガン腫細胞の迅速な溶解感染を誘導するためのEV1に対する代わりの選択となり得る。2つの別個のウイルス血清型が利用できることにより、最初のウイルス投与の結果として生じた保護免疫応答とは無関係に、インテグリンα2β1の標的化による卵巣ガン腫の逐次攻撃が可能になる。EV1に対する強力な抗エンテロウイルス薬(プレコナリル)が利用できること(Pevear,D.C.他、1999)は、非特異的なウイルス複製および散らばったウイルス子孫の直接的な抑制をもたらすので、この治療の魅力をさらに高める。プレコナリルとEV1との間での潜在的な相乗作用はまた、非常に大きいウイルス投入多重度の全身注入、それに続く、ウイルスが悪性の細胞を標的化し、その溶解感染を開始した直後における(遊離ウイルスを不活性化するための)プレコナリルの投与を可能にし得る。
【0116】
数多くの変化および/または改変が、広く記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態において示されるような発明に対してなされ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明の実施形態は、すべての点で、限定的ではなく、例示であると見なされるべきである。
【0117】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスを利用して異常細胞を殺すことに関する。異常細胞が、ウイルスを用いた治療に対して感受性があるかどうかを確認するために異常細胞をスクリーニングする方法、並びに医薬組成物もまた記載される。本発明は、獣医学的使用、ならびにヒト医療分野において広範囲の適用が見出される。
【背景技術】
【0002】
卵巣ガンは、女性集団における病的状態の主要な原因である。いくつかの悪性腫瘍が卵巣から生じる。卵巣の上皮ガン腫は最も一般的な婦人科学的悪性腫瘍の1つであり、女性におけるガン死亡の5番目に多い原因であり、全症例の半数が65歳を越える女性において発生している。
【0003】
卵巣ガンの約5%〜10%が家族性であり、3つの異なる遺伝的パターンが同定されている:卵巣ガン単独、卵巣ガンおよび乳ガン、または、卵巣ガンおよび結腸ガンである。卵巣ガンについての最も重要な危険因子は、そのような疾患を有する第一度近親者(母親、娘または姉妹)の家族歴である。卵巣ガンを有する2人以上の第一度近親者を有する女性において、最も大きい危険性が高い。卵巣ガンを有する1人の第一度近親者および1人の第二度近親者を有する女性について、危険性は、若干少なくなる。乳卵巣ガン症候群または部位特異的な卵巣ガンに冒されたほとんどの家系では、遺伝的連鎖が染色体17q21におけるBRCA1遺伝子座に対して見出されている。BRCA2もまた、一部の遺伝性の卵巣ガンおよび乳ガンの原因であり、これは染色体13q12に対する遺伝的連鎖によってマッピングされている。
【0004】
BRCA1における生殖細胞系変異を有する患者において卵巣ガンを発症することについての生涯にわたる危険性は、一般集団については実質的に増大している。BRCA1における生殖細胞系変異を有する患者の2つの遡及的研究では、これらの女性は、BRCA1陰性の女性と比較した場合、生存期間が延びていることが示唆される。このデータを解釈するときには、BRCA1変異を有する女性の大部分は、おそらくは、卵巣ガンおよび/または乳ガンの病歴を有する家族メンバーを有することを考慮しなければならない。従って、これらの女性はより一層警戒しているかもしれず、また、より早期の検出をもたらし得るガンスクリーニングプログラムに参加を望んでいる可能性がある。危険性が増大した状態にある患者の場合、予防的な卵巣摘出が、出産が完了しているならば、35歳以降では検討されることがある。しかしながら、予防的卵巣摘出の利点は未だに確立されていない。少ない割合の女性が、予防的卵巣摘出の後、卵巣ガンと外観が類似する原発性腹膜ガン腫を発症することがある(Xiao、C.他、2001)。上皮ガン腫は最も一般的なタイプの卵巣ガンである。間質細胞腫瘍および生殖細胞腫瘍は比較的珍しく、症例の10%未満を構成する。
【0005】
卵巣ガンは、通常、腹膜腔内への局所的脱落、それに続く腹膜における着床によって、また、腸および膀胱への局所的な侵入によって拡大する。この腫瘍が非常に致死的であることは、この疾患の早期段階にある女性において症状がないためである。一次手術での陽性節の発生率は、第I期疾患の患者では24%、第II期疾患の患者では50%、第III期疾患の患者では74%、第IV期疾患の患者では73%もの高さであることが報告されている。腫瘍細胞はまた、横隔膜リンパ腺を遮断し得る。腹膜のリンパ排液の生じる障害は、卵巣ガンにおける腹水症の発生において役割を果たしていると考えられる。また、胸膜への経横隔膜拡大も一般的である。
【0006】
卵巣ガンにおける予後はいくつかの要因によって影響されるが、多変量解析により、最も重要な好都合な要因には、より若い年齢、良好な成績状態、ムチン性細胞および明細胞でない細胞タイプ、より低い段階、良好に分化した腫瘍、何らかの外科的切除の前でのより小さい疾患体積、腹水症の非存在、そして、一次細胞量削減手術の後でのより小さい残存腫瘍が含まれることが示唆される。第I期疾患の患者の場合、最も重要な予後因子は悪性度であり、次いで、密集した付着および大きな体積の腹水症である。第I期患者および第IIA期患者のDNAフローサイトメトリー分析では、危険性の高い患者群が同定され得る。明細胞の組織学を有する患者は、より悪い予後を有するようである。移行上皮細胞ガンの有意な成分を有する患者は、より良好な予後を有するようである。
【0007】
卵巣ガン関連抗原CA125は、診断時に測定されたときには予後の有意性を有していないが、第III期または第IV期の疾患を有する患者に対する化学療法の3回目のクールの後の1ヶ月目で測定されたときには生存との大きな相関を有している(Rossmann,M.G.他、2000)。CA125の上昇が化学療法によって正常化する患者については、1よりも大きいその後の上昇したCA125は活発な疾患を非常に予測する。しかし、このことは迅速な治療を命ずるものではない。
【0008】
卵巣ガンはその早期段階では無症状であることが多いので、ほとんどの患者は、診断時には疾患が広範囲に広がっている。部分的にはこの結果として、卵巣ガンにおける年間死亡率は発生率の約65%である。適切に切除されなかった第III期患者および第IV期患者の長期間の追跡調査により、白金に基づく混合治療を用いた場合でさえ、5年生存率が10%未満であることが明らかにされている。それにもかかわらず、この疾患の早期段階は、大きな割合の患者において治療可能である。
【0009】
現在、後期段階の卵巣ガンに対する治療は、腹式子宮全摘出、漿膜表面の慎重な検査、および、白金アナログを含む混合化学療法が通常的には続き、完全に疾患全体を切除する試みが伴う。その場合、生存率は6ヶ月〜40ヶ月の間であり、長期の生存は10パーセント未満である。
【0010】
良性および悪性の卵巣腫瘍において示差的に発現する分子を同定することを目的とした研究が進行中である。
【0011】
卵巣ガン腫は、インテグリンα2β1を発現することが見出されている(Moser,T.L.他、1996;Cannistra,S.A.他、1995;Bartolazzi,A.他、1993)。α2β1は、1型コラーゲンとの特異的な結合相互作用によってヒト卵巣上皮ガン腫の転移性散在を促進させる(Schiro、J.A.他、1991;Cardarelli,P.M.他、1992)。インテグリンα2β1のアップレギュレーションされた表面発現もまた、ヒト胃ガン腫について以前から観測されている。
【0012】
α2β1と1型コラーゲンとの相互作用は、腹膜播種において、そして同様に、転移において非常に重要な役割を果たしている可能性があり、また、α2β1の過剰発現は、非転移性細胞において転移的性質を誘導することが示されている(Chan,B.M.他、1991)。α2β1の阻止は、1型コラーゲンによる卵巣ガン腫の接着をほとんど阻害することが示されている。
【0013】
悪性細胞の溶解を、その複製プロセスを介して誘導することができるウイルスは、腫瘍崩壊性ウイルスとして知られている。ほとんどの腫瘍崩壊性ウイルスは、同じ種または細胞系譜における増殖を要求する。ウイルスによる細胞の感染には、ウイルスキャプシドの脱殻を生じさせるか、またはウイルスキャプシドの脱殻と同時である付着および細胞内への取り込み、そして、それに続く細胞内での複製が伴う。
【0014】
ガン細胞を殺す能力について評価された腫瘍崩壊性ウイルスには、HeLa子宮/子宮頸部ガン細胞株において腫瘍崩壊活性を示したアデノウイルスのエジプト101亜型ウイルス、胃ガン腫、子宮ガン腫および皮膚ガン腫の治療のためのムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、卵巣ガンを治療するためのインフルエンザウイルス、ならびに、子宮頸部ガン腫を治療するためのアデノウイルス(Nemunaitis J、1999)が含まれている。
【0015】
他の報告では、アデノウイルスおよび弱毒化ポリオウイルス組換え体が悪性神経膠腫細胞の治療において使用され得ることが示されており(例えば、Andreansky S.S.、1996)、また、レオウイルスは、Rasシグナル伝達経路が活性化されたヒトU87神経膠芽細胞腫細胞およびNIH−3T3細胞において溶解能力を示すことが示されている(例えば、Strong J.E.他、1998)。
【0016】
ワクシニアの腫瘍崩壊物はまた、黒色腫(第II期)患者を治療するために臨床試験で使用されている(Nemunaitis J.、1999)。神経毒性を有しない改変された単純ヘルペスウイルス(HSV)が、脳腫瘍(頭蓋内黒色腫を含む)および皮下ヒト黒色腫の治療に関して有望であるとして報告されており(Randazzo B.R.、1997)、その一方で、アデノウイルス感染は、植物の分裂毒素サポリンによって黒色腫細胞を殺すことを高めることが報告されている(Satyamoorthy K.、1997)。
【0017】
アデノウイルスによって認識される標的細胞における受容体はアデノウイルスのタイプ毎に異なる。すなわち、例えば、アデノウイルスのA、C、D、EおよびFの亜群はCAR受容体を認識し、その一方で、アデノウイルス5型(C亜群)、アデノウイルス2型(C亜群)およびアデノウイルス9型(D亜群)は、主要組織適合性クラスII分子、αmβ2インテグリンおよびαvインテグリンをそれぞれ認識する。CAR受容体は、黒色腫細胞株において発現することが知られている。
【0018】
ヘパラン硫酸は、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型およびヒトヘルペスウイルス7、アデノ関連ウイルス2型によって認識される。ヒトヘルペスウイルス7に対する受容体はCD4であり、一方、エプスタイン・バールウイルスは補体受容体Cr2(CD21)を認識する。ポリオウイルス1型およびポリオウイルス2型はポリオウイルス受容体(Pvr)を細胞接着のために認識し、一方、レオウイルスはシアル酸を認識する。A型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスはシアル酸N−アセチルノイラミン酸を細胞接着のために認識する。対照的に、C型インフルエンザウイルスはシアル酸9−O−アセチルノイラミン酸を認識する。ワクシニアウイルスは上皮増殖因子受容体およびヘパラン硫酸の両方を認識する。コクサッキーウイルスのA13、A15、A18およびA21はICAM−1および補体調節タンパク質DAF(CD55)を認識する(例えば、Shafren D.R.他(1997)を参照のこと)。国際特許出願番号PCT/AU00/01461には、ICAM−1を細胞感染性のために認識するコクサッキーウイルスを、ICAM−1を発現する黒色腫細胞を溶解するために対象に投与することが記載される。DAFはまた、エンテロウイルス70によって認識される(例えば、Flint SJ他(2000)、Principles of Virology:molecular biology,pathogenesis and control(ASM Press、Washington)を参照のこと)。
【0019】
継代培養に対する卵巣細胞の適合性、および、ウイルスを検出するためのその潜在的使用を評価する研究が報告されている(Harris,REおよびPindak,FF、1975)。その研究では、正常な卵巣細胞培養物が、ピコルナウイルス(例えば、A型コクサッキーウイルス、B型コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、エコーウイルスおよびカルジオウイルス、ならびにそれらの様々な血清型など);パラミクソウイルス(例えば、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、ジステンパーウイルスなど);アデノウイルスのヒト亜群の血清型3、4、7および21;単純ヘルペスウイルス1型;トガウイルス(例えば、シンドビスおよびマラロ(Mararo)など);レオウイルスの血清型1〜3;およびワクシニアウイルスを含む広範囲の様々なウイルスで攻撃された。研究では、ヒト卵巣由来の細胞を、長期間、細胞培養で成長させることができ、かつ、インビトロでの様々なウイルスの増殖のために、限定されない回数、継代培養することができることが明らかにされ、また、そのような培養物は、ウイルスの病理発生およびウイルス感染の病理学を研究する目的のために有用であり得ることが提案された。報告ではさらに、ポリオウイルスおよびワクシニアなどの一部のウイルスはヒトの胎盤を越え、胎児に感染することが示されているので、培養における正常な卵巣細胞とのウイルス相互作用の研究は催奇性研究を進める手段であり得ることが示唆された。
【0020】
転移による腫瘍拡大は、調節された組織分解と結合した一連の接着/脱着事象を伴う病理学的プロセスである。細胞外マトリックスへの付着および細胞外マトリックスを通過する遊走は、腫瘍が侵入するために不可欠である。進歩が悪性腫瘍の治療においてなされているにもかかわらず、卵巣悪性腫瘍を含むガンの治療は研究に対する大きな課題を提示しており、既存の治療法に代わる方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、異常細胞(例えば、インテグリンα2β1を発現するガン細胞など)の著しい殺傷が、α2β1を細胞感染性のために認識するエコーウイルスを利用して達成され得るという観測結果に関連する。
【0022】
従って、本発明の1つの態様において、哺乳動物において異常細胞を治療するための方法であって、α2β1を前記細胞への感染性のために認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスの効果的な量で哺乳動物を治療し、その結果、前記細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるようにすることを含む方法が提供される。
【0023】
α2β1を認識する単独ウイルス血清型を哺乳動物に投与することができ、または、α2β1を認識する複数の異なるエコーウイルスを投与することができる。
【0024】
用語「異常細胞」は、本発明の目的の場合、細胞がガン細胞であってもなくても、また、細胞が異常な速度で増殖してもしなくても、悪性の細胞、何らかの成長異常を有する細胞、および、その正常な表現型を発現する同じ細胞タイプの対応する正常な細胞と比較してインテグリンα2β1のアップレギュレーションされた異常発現を有する任意の細胞を含むように最も広い意味で理解しなければならない。従って、この用語は、前新生物性細胞および新生物細胞、ならびに、最終的にはガン細胞に発達し得る細胞、または最終的にはガン細胞に発達しなくてもよい細胞を包含する。成長異常は、例えば、良性または悪性の腫瘍であり得る。異常細胞は、通常、悪性の細胞である。一般に、異常細胞は、その異常細胞が見出される周囲の組織と比較した場合、α2β1の発現がアップレギュレーションされている。従って、ウイルスは、典型的には、そのような細胞におけるα2β1に接触する可能性がより大きいので、異常細胞に優先的に感染する。そのため、ウイルスを、異常細胞を効果的に標的化するために使用することができる。
【0025】
本発明の方法は、患者における卵巣ガン、または、原発性卵巣腫瘍から転移しているガンを治療するために特に好適である。しかしながら、本発明はそのようなガンの治療に限定されず、本明細書中に記載される方法は、黒色腫および前立腺腫瘍、ならびに、乳ガン、結腸ガン、結腸直腸ガン、および、体内の他の部位にそれらから広がっている二次的なガンを含む他のガンの治療における適用が見出される。例えば、ウイルスを哺乳動物の皮膚以外の身体領域における黒色腫ガン細胞に投与することができる。従って、本発明の方法は、エコーウイルスによる感染を通常の場合には伴わない哺乳動物の体内の部位または組織に悪性腫瘍が転移している悪性腫瘍の治療に拡張される。
【0026】
典型的には、ウイルスは、生きた完全なウイルスとして哺乳動物に投与される。あるいは、例えば、ウイルスゲノムをコードする核酸、またはウイルスの生成のために十分なその核酸を、細胞による取り込みおよび細胞内における生きた完全なウイルスの生成のために投与することができる。核酸は、単一のRNA分子もしくはDNA分子、またはウイルスタンパク質の異なる分子をそれぞれコードする複数のそのような分子を含むことができる。
【0027】
ウイルスはまた、異常細胞をスクリーニングして、例えば、ウイルスが、異常細胞が得られた哺乳動物を治療するために好適であり得るかどうかを確認するために、または、ウイルスを伴わない異なる治療プロトコルがより有益であり得るかどうかを確認するために使用することができる。逆に、異なるエコーウイルスおよび/またはその改変された形態もしくはそれらの組合せを、哺乳動物を治療するために最も適切なウイルスを選択するために、哺乳動物から採取された細胞のサンプルを使用してスクリーニングすることができる。
【0028】
従って、本発明の別の態様において、異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、ウイルス誘導の細胞死に対する感受性について哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをスクリーニングする方法が提供され、この場合、この方法は、
(a)哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルを提供する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするために十分な期間にわたって異常細胞をウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程
を含み、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態および組合せから選択される。
【0029】
ウイルスはまた、所与のウイルスがサンプルにおける異常細胞の少なくとも一部に感染し、これを殺すことができるかどうかを試験することによって、本発明の方法における使用のために選択することができる。特に、そのような試験では、それぞれのウイルスを異常細胞のサンプルとそれぞれインキュベーションすることによって多数の異なるウイルスをスクリーニングし、そして、異常細胞がウイルスによる感染の結果として殺されているかどうかを明らかにすることが伴い得る。
【0030】
従って、本発明のさらに別の態様において、異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、哺乳動物に由来する異常細胞に感染し、その死を生じさせる能力についてウイルスをスクリーニングする方法が提供され、この場合、この方法は、
(a)ウイルスを選択する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするために十分な期間にわたって哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程
を含み、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0031】
この方法はまた、異常細胞に感染し、その死を生じさせる選択されたウイルスの能力を、異常細胞の別のサンプルを利用して工程(b)および工程(c)に供された、α2β1を異常細胞感染性のために認識する他のエコーウイルスまたはその改変された形態の能力と比較する工程を含むことができる。
【0032】
細胞の死は、典型的には、ウイルスによる細胞への感染から生じ、ウイルスが細胞内で複製することによる細胞の溶解によるか、または、最も考えられるのは細胞カスパーゼの活性化の結果としての、感染が引き起こすアポトーシスによるかのいずれかによって引き起こされ得る。溶解されると、感染細胞の細胞質ゾルの内容物が、破裂した形質膜から流出し得るし、また、異常細胞に対する免疫応答を誘発することができる細胞表面抗原を含む様々な抗原が放出され得る。従って、本発明の方法に従った哺乳動物における異常細胞の治療は、異常細胞に対抗する哺乳動物の免疫性に対する追加抗原刺激を提供し得る。
【0033】
従って、本発明の別の態様において、α2β1を発現する異常細胞に対して哺乳動物における免疫応答を誘導する方法であって、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスを哺乳動物における異常細胞に感染させることを含み、少なくとも一部の異常細胞の溶解が引き起こされる方法が提供される。
【0034】
一般に、ウイルスは、本発明の方法において使用される医薬組成物の形態で提供される。そのため、なおさらなる態様において、哺乳動物における異常細胞を治療するための医薬組成物であって、異常細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるように異常細胞を治療するためにウイルスを生じさせるための接種物を医薬的に許容され得るキャリアと一緒に含む医薬組成物が提供され、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0035】
本発明の別の態様において、哺乳動物における異常細胞をウイルスで治療し、その結果、異常細胞の少なくとも一部が殺されるようにするための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用が提供され、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0036】
本発明のさらに別の態様において、哺乳動物における異常細胞に対する免疫応答を誘導するための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用が提供され、この場合、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識し、かつそのような細胞を殺すエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0037】
典型的には、本発明の方法に従って利用されるエコーウイルスは、エコーウイルスEV1、エコーウイルスEV8およびエコーウイルスEV22からなる群から選択されるエコーウイルスである。前記ウイルスは、通常、一般的な動物エコーウイルスであるが、本発明はそれらに限定されず、異常細胞に感染し、これを殺すことができように操作された組換えウイルス、または、例えば、それ以外にも、異常細胞に感染し、これを殺すその能力を高めるために改変されているウイルスを利用することができる。
【0038】
同じウイルスを異なる治療クール期間中に哺乳動物に投与することができる。しかしながら、好ましくは、異なるウイルスが、投与された以前のウイルスに対する何らかの免疫応答の潜在的な影響を回避または軽減するために異なる治療クールについては使用される。ウイルスは、例えば、哺乳動物に対して、局所的に、腫瘍内に、または全身的に投与することができる。
【0039】
本発明における哺乳動物は、本発明による治療を必要としている任意の哺乳動物であり得る。典型的には、哺乳動物はヒトである。
【0040】
本発明の方法は、異常細胞の別の治療(例えば、従来のガン治療など)の補助として使用することができ、または、他の治療的処置がない場合での治療として使用することができる。特に、本発明の方法は、従来の治療が好適もしくは実際的でない場合に、または、異常細胞の切除が、患者に受け入れがたい傷跡形成または外観の損傷を、特に患者の顔(例えば、患者の鼻または唇など)に残し得る場合に利用することができる。ウイルスは、異常細胞の切除の前および/または切除の後、患者に投与することができる。切除後の投与により、周囲の組織に残る残存する異常細胞を殺すことができる。
【0041】
従って、本発明の1つまたは複数の実施形態において、早期段階および後期段階の悪性腫瘍の診断の両方の後で使用することができる代替的な治療的処置が提供され、また、手術前に異常細胞を殺し、かつ手術後に残存する異常細胞を殺すことにおける適用がさらに見出される。本明細書中記載されるようなプロトコルを使用して、当業者は、本発明の方法における使用のための好適なウイルスを容易に選択することができ、かつ、どの異常細胞が、その細胞の死をもたらす感染に対して感受性があるかを明らかにすることができる。
【0042】
本発明のさらに別の態様において、哺乳動物における異常細胞を治療するためのウイルスを生じさせるために哺乳動物に接種物を適用するためのアプリケーターが提供され、この場合、アプリケーターは、接種物が哺乳動物と接触するように接種物を染み込ませた領域を含み、そして、ウイルスは、細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される。
【0043】
本明細書を通して、語句「含む(comprise)」または変化形(“comprises”または“comprising”など)は、言及された要素、完全体もしくは工程、または、要素、完全体もしくは工程の群を包含し、しかし、任意の他の要素、完全体もしくは工程、または、要素、完全体もしくは工程の群を除外しないことを意味することが理解される。
【0044】
本明細書において述べられる刊行物はすべて、参考として本明細書中に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置または物品などの議論は、単に、本発明のための背景を提供するという目的のためである。そのような議論は、本出願の各請求項の優先日よりも前にはどこかにでも存在していたので、これらの事項のいずれかまたはすべてが先行技術基盤の一部を形成しているか、または、本発明に関係する分野において共通する一般的な知識であったという承認として理解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の特徴および利点が本発明の好ましい実施形態の下記の記載からさらに明らかになる。
【図1】図1は、乳ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。乳ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図2】図2は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による乳ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図3】図3は、直腸結腸ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。直腸結腸ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図4】図4は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による直腸結腸ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図5】図5は、前立腺ガン細胞または膵臓ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。前立腺ガン細胞または膵臓ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図6】図6は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による前立腺ガン細胞および膵臓ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図7】図7は、卵巣ガン細胞の表面における表面発現したICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。卵巣ガン細胞は、これらの受容体について特異的な対応するモノクローナル抗体の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がエンテロウイルス受容体サンプルの幾何平均から引かれ、これにより、受容体の相対的な発現レベルが明らかにされた。
【図8】図8は、エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1による卵巣ガン細胞の溶解感染を示す。50パーセント終点力価が計算され、腫瘍崩壊は、TCID50/ml終点が104以上であった場合に有意であると見なされた。
【図9a】図9aは、EV1の10−1希釈物を72時間感染させた卵巣ガン細胞単層物の顕微鏡写真を示す。このウイルス投入多重度において、細胞株A2780を除いて、すべての細胞株がEV1による腫瘍崩壊の著しいレベルを示した(右側)。
【図9b】図9bは、EV1の10−1希釈物を72時間感染させた卵巣ガン細胞単層物の顕微鏡写真を示す。細胞株SKOV−3を除いて、すべての細胞株がEV1による腫瘍崩壊の著しいレベルを示した(右側)。
【図10】図10は、EV1を用いた卵巣ガン細胞への溶解感染を示す。10個の細胞株のうちの7個が、EV1による腫瘍崩壊を受けやすいと見なされる。腫瘍崩壊は、ウイルス力価(TCID50/ml)が104以上であると計算された場合に有意であると見なされた。
【図11】図11は、EV1結合が抗α2β1の存在下で阻害されることを示す。抗α2β1MAbまたは抗DAF MAbのいずれかの存在下および非存在下での卵巣ガン細胞株に対する[35S]−メチオニン標識EV1の結合。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルが、1450 Microbeta TRILUX(Wallac、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定された。
【図12】図12は、抗α2β1MAbの存在下または非存在下でのEV1による卵巣ガン細胞株のOWA−42およびIGROV−1への溶解感染を示す。感染後72時間、抗α2β1MAbとプレインキュベーションされた細胞は完全に保護されたままであった。細胞の生存が、クリスタルバイオレットのメタノール溶液を用いた染色によって明らかにされた。
【図13】図13は、抗α2β1MAbの存在下または非存在下でのEV1によるOWA−42卵巣ガン細胞単層物への溶解感染を示す。顕微鏡写真が、感染後の24時間、48時間および72時間において撮影され、これらは、α2β1受容体のモノクローナル抗体遮断によるEV1感染からの細胞の完全な保護を明らかにしている。
【図14】図14は、DOV13卵巣ガン細胞がリング状インサートの内側で培養され、HeLa細胞(ヒト繊維芽細胞)がリングの外側において培養されたことを示す。EV1による感染後、生存細胞がクリスタルバイオレットのメタノール溶液で染色された。EV1は卵巣ガン細胞に特異的に感染し、その一方で、HeLa細胞は健康なままであった。
【図15】図15は、黒色腫細胞株SkMel28における表面発現したα2β1のレベルのフローサイトメトリー分析を示す。SkMel28細胞は抗α2β1の存在下または非存在下でヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメントとインキュベーションされた。コンジュゲートサンプルの幾何平均がサンプルの幾何平均から引かれ、これにより、変化、従って、受容体の発現が明らかにされた。有意なα2β1発現が、幾何平均における変化により明らかにされる。
【図16】図16は、抗α2β1MAbまたは抗DAF MAbのいずれかの存在下および非存在下におけるSkMel28黒色腫細胞に対する[35S]−メチオニン標識EV1の結合を示す。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルが、1450 Microbeta TRILUX(Wallac、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定された。α2β1遮断はEV1結合の著しい阻害をもたらした。結果は三連サンプルの平均値±標準誤差として表される。
【図17】図17は、EV1を用いたSkMel28黒色腫細胞への溶解感染を示す。細胞の生存がクリスタルバイオレットのメタノール溶液によって明らかにされた。著しい溶解を認めることができる。
【図18】図18は、EV1を用いた卵巣ガン多細胞スフェロイドの治療を示す顕微鏡写真である。
【図19】図19Aは、1.0×106個のOVHS−1細胞が、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)、UV不活性化エコーウイルスEV1または感染性EV1(105TCID50)のいずれかでのi.p.経路による注射の3週間前に腹腔内(i.p)経路により投与されたSCIDマウスの体重変化を示すヒストグラムである。図19Bは、OVHS−1細胞が注射され、PBS、UV不活性化EV1またはEV1で治療されたマウスと比較される正常なコントロールSCIDマウスの注射後5週間目に撮影された写真を示す。PBSまたはUV不活性化EV1が投与された腫瘍保有マウスにおける腹膜腹水症の発症に留意すること。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ウイルスが腫瘍の細胞に感染し、その死を生じさせることができるかどうかを明らかにするために、生検試料を腫瘍から採取することができ、細胞の調製物を、従来の技術を使用して調製し、その後、(i)ウイルス受容体の細胞表面発現を確認することができ、また、(ii)ウイルスで細胞を攻撃し、所定のインキュベーション期間、典型的には約2日間(しかし、これは、使用されるウイルスに依存して変化し得る)、感染および細胞死について細胞をモニターすることができる。α2β1の発現はフローサイトメトリー分析によって容易に確認することができる。数多くのウイルスを、調製された悪性の細胞の種々のアリコートを使用して同時にこの方法でスクリーニングすることができ、そして、より大きな程度の感染性および細胞死を示すウイルスを、生検試料が採取された対象への投与のために選択することができる。同様に、異なる供給源から採取された生検試料に由来する種々の悪性の細胞の調製物を、特定のウイルスを使用するアッセイにおいて用いることができる。生検試料は、一人の個体の異なる部位から、または数多くの個体から採取することができる。
【0047】
本明細書中に記載されるような方法において使用されるウイルスは、望ましくは、受容者において臨床的症状をほとんど生じさせないか、または、ほんの軽微な臨床的症状を生じさせるだけである。そのようなウイルスは、当業者に広く知られている商業的供給源から容易に入手可能であり、上記の様式で本発明の方法におけるその有効性についてスクリーニングすることができる。望ましくは、ウイルスは、通常の場合、エコーウイルスEV1、エコーウイルスEV7、エコーウイルスEV8およびエコーウイルスEV22からなる群から選択されるエコーウイルスである。これらのウイルスはそれぞれが、細胞感染性のためにα2β1を認識する。例えば、EV1は、軽い上部気道疾患、そしてまた胸膜痛に関連している(Fields B.N.他、2000;McCracken A.W.他、1969)。
【0048】
α2β1の発現は、中皮において遭遇する優勢なI型コラーゲンマトリックスのために卵巣ガン腫ではアップレギュレーションされると考えられている。数多くの悪性黒色腫はまた、アップレギュレーションされたレベルのα2β1を発現することが示されている(Kramer R.H.およびMarks N、1989;Ramos D.M.他、1990)。EV1およびコラーゲンは、α2β1サブユニットのドメインIにおいて異なる残基を使用してα2β1に付着する(Bergelson J.H.、1993)。インテグリンα2β1はEV1およびコラーゲンを同時に受け入れることができない。しかしながら、ウイルスは、コラーゲンと比較した場合、親和性において10倍の増大でα2β1と結合する(Xing L、2002)。
【0049】
所与のウイルスをスクリーニングして、そのウイルスが、悪性の細胞に感染し、その死を生じさせることができるかどうかを確認する目的のために、生検試料から単離された原発性の悪性の細胞よりもむしろ悪性細胞株を使用することができる。
【0050】
選択されたウイルスは、好ましくは、ウイルスによる腫瘍の潜在的な感染のための領域を最大限にするために、悪性腫瘍上の多数の部位に対して直接的に注入される。完全なウイルスではなく、ウイルスを生じさせるための核酸を含むウイルスプラスミドまたは他のプラスミドまたは発現ベクターを、治療を達成するための腫瘍細胞による取り込みおよび細胞内における完全なウイルスの生成のために腫瘍内に注入することができる。好適な発現ベクターには、ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするDNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)インサートの発現が可能であるプラスミドが含まれる。発現ベクターは、典型的には、挿入された核酸が機能的に連結される転写調節制御配列を含む。「機能的に連結される」によって、核酸インサートが、インサートの読み枠の変化を伴うことなく、挿入された配列(1つまたは複数)の転写を可能にするための転写調節制御配列に連結されることが意味される。そのような転写調節制御配列には、転写を開始させるためにRNAポリメラーゼの結合を促進させるためのプロモーター、および、転写されたmRNAに対するリボソームの結合を可能にするための発現制御エレメントが含まれる。
【0051】
より詳細には、本明細書中で使用される用語「調節制御配列」は、所与のDNA配列の転写を行わせ、かつその転写レベルを制御(すなわち、調節)することに関与する任意のDNAを包含することが理解されなければならない。例えば、5’調節制御配列は、プロモーターおよび5’非翻訳リーダー配列を含み得る、コード配列の上流側に位置するDNA配列である。3’調節制御配列は、1つまたは複数のポリアデニル化シグナルを含む好適な転写終結(および/または)調節シグナルを含み得る、コード配列の下流側に位置するDNA配列である。本明細書中で使用される用語「プロモーター」は、転写の開始時にDNA依存性RNAポリメラーゼによって認識され、そのDNA依存性RNAポリメラーゼが(直接的または間接的に)結合する任意のDNA配列を包含する。プロモーターには、転写開始部位、ならびに、転写開始因子およびRNAポリメラーゼに対する結合部位が含まれ、また、プロモーターは、遺伝子発現調節タンパク質が結合し得る様々な他の部位または配列(例えば、エンハンサー)を含むことができる。
【0052】
哺乳動物細胞のトランスフェクションのために好適な数多くの発現ベクターがこの分野では知られている。哺乳動物細胞のトランスフェクションのために好適な発現ベクターには、pSV2neo、pEF−PGk.puro、pTk2、ならびに、ポリアデニル化部位および伸長因子1−xプロモーターを含む非複製性のアデノウイルスシャトルベクター、ならびに、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを最も好ましくは含むpAdEasy型発現ベクターが含まれる(例えば、He他(1998)を参照のこと)。ポリペプチド伸長因子−α2をプロモーターとして用いるプラスミドpEFBOSもまた利用することができる。
【0053】
ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするcDNAは、例えば、Sambrook他(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York)、およびAusubel他(1994)、Current Protocols in Molecular Biology(米国、第1巻および第2巻)に記載されるようなこの分野で広く知られている組換え技術を使用して、ウイルスRNAゲノムまたはそのフラグメントを逆転写することによって調製し、好適なベクターに組み込むことができる。
【0054】
細胞は、cDNAではなく、精製されたビリオンから抽出されたウイルスRNAでトランスフェクションすることができ、または、例えば、RNA転写物を、Ansardi,D.C.他(2001)に記載されるように、バクテリオファージT7のRNAポリメラーゼを利用してxDNAテンプレートからインビトロで作製することができる。同様に、単一のプラスミドまたはRNA分子を、ウイルスタンパク質を発現させ、ウイルスを生じさせるために投与することができ、あるいは、ウイルスタンパク質の異なる分子をコードする複数のプラスミドまたはRNA分子を、細胞をトランスフェクションし、ウイルスを生じさせるために投与することができる。
【0055】
プラスミドまたはRNAは、細胞のトランスフェクションを促進させるためのキャリアビヒクルの非存在下で、またはそのようなビヒクルとの組合せでの腫瘍細胞による取り込みのために、局所的によるか、または注入によるかのいずれかで腫瘍に対して直接、投与することができる。好適なキャリアビヒクルには、この分野では従来から知られている油中水型エマルションとして典型的には提供されるリポソームが含まれる。リポソームは、典型的には、脂質(特に、リン脂質、例えば、高い相転移温度のリン脂質など)と、通常の場合には、膜安定性をリポソームに提供するための1つまたは複数のステロイドまたはステロイド前駆体(例えば、コレステロールなど)との組合せを含む。リポソームを提供するために有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシドおよびガングリオシドなどが含まれる。ジアシルホスファチジルグリセロールは、脂質成分が14個〜18個の炭素原子(より好ましくは16個〜18個の炭素原子)を含有し、飽和している場合、特に好適である。
【0056】
リポソームと標的細胞との相互作用は受動的または能動的であり得る。能動的な標的化では、標的細胞により発現される対応するリガンドと結合するか、またはそうでない場合には相互作用する特異的なリガンドをリポソーム膜に取り込むことによるリポソームの改変が伴う。そのようなリガンドには、例えば、モノクローナル抗体またはその結合性フラグメント(例えば、FabフラグメントまたはF(ab’)2フラグメント)、糖成分または糖脂質成分、あるいはウイルスタンパク質が含まれ、α2β1に対して特異的なウイルスタンパク質またはモノクローナル抗体が特に好ましい。
【0057】
通常、腫瘍の周りの組織はまた、悪性の細胞がそのような組織に存在する可能性を考えると、ウイルスが注入されるか、または、そうでない場合にはウイルスで治療される。腫瘍が比較的進行するまで、腫瘍が検出されない場合、周りの組織には、腫瘍自体の外科的切除の後、ウイルスを注入することができる。
【0058】
悪性の腫瘍に対して直接的に注入するのではなく、接種物は、腫瘍への送達のために、腫瘍部位に隣接する位置における受容者の血流内への静脈内注射によって全身投与することができる。同様に、適当であると見なされるならば、接種物は、皮下に、腹腔内に、または、例えば、筋肉内に投与することができる。しかしながら、一般には、完全なウイルスが投与されるときには、ウイルスに対する特異的な抗体が存在する可能性、および、それにより、ウイルス送達の代わりの様式の潜在的な低下した効率を考えると、腫瘍内への直接的な注入が好まれる。
【0059】
接種物はまた、単独、または腫瘍内への接種物の直接的な注入との組合せのいずれかで局所的に適用することができる。腫瘍の局所的治療は、接種物と、悪性の細胞に感染させるために接種物の一体性を維持するための好適な医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物の滴下適用によって、またはそのような組成物を含浸させたアプリケーターで腫瘍をなでることによって達成することができる。アプリケーターは、組成物に浸された好適な材料の詰め物またはパッドを含むことができる。皮膚における黒色腫を治療する場合、接種物は、接種物が皮膚と接触するように治療される悪性部位に対して保持されるために適合化されている、接種物を含浸させたアプリケーターによって塗布することができる。この場合、アプリケーターには、黒色腫の周りの皮膚に接着するために、絆創膏の場合などの接着性表面がさらに提供される、接種物を含浸させたパッチまたは詰め物などを含むことができ、それにより接種物を黒色腫との接触状態に保つことができる。典型的には、完全なウイルスが、治療を達成するために哺乳動物に投与される。
【0060】
一般に、1つまたは複数の小さい切開部が悪性腫瘍および/または周りの組織に作製されて、それらへのウイルスのための進入部位が提供される。
【0061】
卵巣ガンまたは卵巣の近くにおけるガンの場合、エコーウイルスを、カテーテルまたは他の好適な適用器具を使用して、カテーテルまたは選択された器具を対応するファロピウス管に沿って挿入することによって、卵巣または罹患部位に対して直接的に送達することができる。
【0062】
ウイルスおよび/または核酸、または、標的細胞内においてウイルスを生じさせるためのウイルス核酸を含むプラスミドを受容者に接種するために使用される医薬的に許容され得るキャリアは、生理学的食塩水などの液体、または、適切であると見なされる任意の他の従来から知られている生理学的に許容され得る媒体、例えば、薬学的使用のために、また、接種物を治療部位に投与するために好適な市販のゲルなどであり得る。キャリアは、典型的には生理学的pHに緩衝化され、好適な保存剤および/または抗生物質を含有することができる。
【0063】
接種物は、一般に、1mlの接種物あたり約1×102プラーク形成ユニット〜約1×1010プラーク形成ユニットを含有する。好ましくは、接種物は1mlの接種物あたり約1×105プラーク形成ユニット以上を含有する。患者に投与される接種物の量は、患者の全体的な状態、悪性腫瘍の段階および存在位置を、ウイルスで治療される領域の全体的なサイズおよび分布と一緒に考慮に入れて、受け入れられている医療行為に従って主治医または外科医によって容易に決定することができる。典型的には、患者は、最初の用量のウイルスで治療され、続いて、ウイルスの最初の投与に対する患者の応答、ならびに、最初の治療から生じるウイルス感染および悪性細胞の死の程度などの要因が決定されるまで、好適な期間にわたってモニターされ、その後、さらなるウイルスを患者に投与するための決定がなされる。
【0064】
望ましくは、個体は、所定の間隔で一定の期間、ウイルスで治療される。間隔は、それぞれの状況において適切であると決定されるように、毎日であり得るか、あるいは24時間〜72時間以上までに及び得る。異なるウイルスを、以前に投与されたウイルスに対する何らかの免疫応答の影響を回避または最小限にするために毎回、投与することができ、そして、治療の経過期間は、主治医によって決定され得るように、1週間〜2週間以上に及び得る。最も好ましくは、哺乳動物が以前にさらされてないウイルス、または、哺乳動物が、標準的な技術によって決定され得るような比較的軽微な免疫応答を生じるウイルスが投与される。
【0065】
容易に入手可能な知られているエコーウイルスが本発明の方法において好適に用いられ得るが、従来の技術を使用して改変または操作されたウイルスもまた利用することができる。例えば、ウイルスは、さらなる細胞接着分子を細胞受容体として用いるために改変することができる。一例として、ウイルスは、ペプチドモチーフ「RGD」がウイルスのキャプシド表面に発現されるように部位特異的変異誘発を使用して改変することができる。RGDモチーフはαvインテグリンヘテロ二量体によって認識され、そして、このキャプシド改変は、例えば、ウイルスがインテグリンα2β1(α2β1を有するような黒色腫病巣においてアップレギュレーションされることが示されている細胞接着分子;Natalia P.G.、1997)と結合することを可能にすることができ、これは、潜在的には、標的細胞によるウイルスの高まった取り込みを生じさせる。
【0066】
本発明の本質がより明確に理解され得るために、次に、その好ましい形態が、下記の非限定的な実施例を参照して記載される。
【実施例】
【0067】
(実施例1:材料および方法)
1.1.細胞株
IGROV−1、A2780、DU145、PC3、AsPC−1、PANC−1、T47−D、MDA−MB361、MDA−MB453、MDA−MB231およびMCF−7のガン細胞株をGarvan Institute(Sydney、New South Wales、オーストラリア)から得た。BT−20、MDA−MB157、SK−BR−3、ZR−75−1、HCT116、LIM2537、SW480、SW620、2008、JAM、OVCA−429、OVCAR−3、OVHS−1、OWA−42、SKOV−3およびDOV13のガン細胞株をPeter MacCullum Cancer Institute(Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。SkMel28細胞をRalph博士(Department of Biochemistry and Molecular Biology、Monash University、Victoria、オーストラリア)から得た。HeLa細胞をMargery Kennett(Entero−respiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。α−MEM培地で培養されるBT−20細胞、ならびに、DMEM培地で培養されるSkMel28細胞およびHeLa細胞を除いて、すべての細胞が、2%〜5%のウシ胎児血清(FCS)および抗生物質を含有するRPMIにおいて標準的な条件(5%CO2雰囲気下で37℃)のもとで培養された。使用された細胞はすべてが、ELISA(Roche Molecular Systems、CA、米国)によってマイコプラズマの存在について定期的に検査された。
【0068】
1.2.ウイルス
コクサッキーウイルスA21(CAV21)プロトタイプ株(Kuykendall)、コクサッキーウイルスB3(CVB3)プロトタイプ株(Nancy)、エコーウイルス(EV1)プロトタイプ株(Farouk)、エコーウイルス(EV7)プロトタイプ株(Wallace)、およびポリオウイルス1(PV1)プロトタイプ株(Mahoney)をMargery Kennett博士(Enterorespiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。すべてのウイルスはHeLa細胞において増殖させられ、力価測定された。
【0069】
1.3.モノクローナル抗体(MAb)
抗DAF MAbのVIIIA7(これはDAFの3番目のSCRを認識する)はT.Kinoshita博士(大阪大学、大阪、日本)から得られ、抗DAF mAbのIH4はBruce Loveland博士(Austin Research Institute、Heidelberg、Victoria、オーストラリア)からの譲渡物であった。抗CAR MAbのRmcBはJ.M.Bergelson博士(Dana Farber Cancer Institute、Boston、Massachusetts)から得られた。抗β2−ミクログロブリンMAb918はP.Minor博士(NIBSC、Hertfordshire、英国)から得られた。抗α2β1MAbのAK7(これはα2サブユニットを認識する)およびコントロール抗体の抗GPIV(血小板膜糖タンパク質)MAb PTA−1はGordon Burns教授(Department of Medical Biochemistry and Cancer Research、University of Newcastle、NSW、オーストラリア)から得られた。抗ICAM−1 MAbのIH4はAndrew Boyd博士(Queensland Institute for Medical Research、Queensland、オーストラリア)から得られた。
【0070】
1.4.フローサイトメトリー分析
ガン細胞におけるエンテロウイルス受容体の表面発現がフローサイトメトリーによって分析された。分散された細胞(1×106個)を、氷上で20分間、適切なMAb(PBSにおいて希釈された5μg/ml)と20分間インキュベーションした。細胞をPBSで洗浄し、遠心分離によってペレット化し、その後、ヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)2フラグメント(Dako,A/S、デンマーク)の1:50希釈物の100μlに再懸濁した。細胞を再び氷上で20分間インキュベーションし、洗浄し、ペレット化して、PBSに再懸濁し、その後、フローサイトメトリー分析を行った。細胞表面での受容体の発現が、FACStar Analyser(Becton Dickenson、Sydney、オーストラリア)を使用して分析された。
【0071】
1.5.ウイルス感染性アッセイ
ガン細胞株のコンフルエントな単層物に、1%ウシ胎児血清(FCS)を含有するDMEMにおけるCAV21、CVB3、EV1、EV7またはPV1の10倍連続希釈物(100μl/ウエルを三連または四連で)を接種し、これらを5%のCO2環境において37℃で72時間インキュベーションした。細胞の生存を測定するために、プレートを100μl/ウエルのクリスタルバイオレットメタノール溶液(0.1%クリスタルバイオレット、20%メタノール、20%ホルムアルデヒド、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS))と24時間インキュベーションして、蒸留水において洗浄した。
【0072】
限界希釈アッセイの終点は、50%の試験ユニットに影響を及ぼすウイルスの希釈度である。統計学的手法が、ReedおよびMuenchの方法(参考文献)を使用して終点を計算するために用いられた。終点は50%組織培養感染用量/ミリリットル(TCID50/ml)として表された。
【0073】
抗受容体モノクローナル抗体で前処理された細胞単層物が要求される場合、細胞は100μlの抗α2β1AK7MAb(PBSにおいて希釈された20μg/ml)と37℃で1時間インキュベーションされた。その後、細胞単層物は適切なウイルス希釈物の二連のサンプルに接種され、5%のCO2環境において37℃で72時間インキュベーションされ、その後、上記のように染色された。
【0074】
顕微鏡写真が、倒立型顕微鏡を使用して100倍の倍率(Olympus IX−FLA)で、24時間、48時間または72時間において撮影された。
【0075】
1.6.ウイルス精製
DOV13細胞のコンフルエントな単層物を含有する6ウエル組織培養プレートに500μlのEV1(感染多重度[moi]=105TCID50/ml)を37℃で1時間にわたって接種した。非結合のウイルスを、メチオニン/システインを含まないDMEM(ICN Biomedical、Ohio、米国)で3回洗浄することによって除き、細胞単層物を1.3mlのこの培地において37℃でさらに2時間インキュベーションし、その後、300μCiの[35S]−メチオニントランスラベル(ICN Biomedical、Ohio、米国)を加えた。感染した単層物を5%のCO2環境において37℃で一晩インキュベーションした。3回の凍結/融解サイクルの後、ウイルス溶解物をBeckmanXL−90超遠心分離器(SW41tiローター)における36,000rpmでの95分間の速度遠心分離によって5%〜30%スクロースグラジェントで精製した。分画物を各チューブの底から集め、液体シンチレーション計数(Wallac 1450 Mirobeta TRILUX、フィンランド)によってモニターして、ウイルス結合アッセイにおいて使用される160Sウイルス最大画分を捜し出した。
【0076】
放射能標識されていないEV1ビリオンを、プールされ、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に対して透析された最大感染画分を用いた並行するグラジェントで精製した。紫外(UV)光で不活性化されたEV1を、6ウエルプレートにおいて、PBSにおける精製EV1の1.0ml/ウエル(5×105TCID50)を15ワットのUV光に30秒間さらすことによって作製した。ウイルスの不活性化はマイクロタイタープレートでの溶解感染性の細胞アッセイによって評価された。
【0077】
1.7.放射能標識されたウイルスの結合アッセイ
1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する800μlのRPMIに再懸濁された約1×106個の細胞を、20μg/mlのMAb(PBSにおいて希釈された抗α2β1または抗DAF)の存在下、4℃で1時間インキュベーションし、その後、300μl(1×106個)の[35S]−メチオニン標識された160S EV1を加えた。4℃で2時間インキュベーションした後、細胞を血清非含有培地で4回洗浄し、細胞ペレットを200μlの0.2M NaOH−1%SDSに溶解し、その後、結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを三連サンプルからの液体シンチレーション計数によって測定した(Wallac 1450 Mirobeta TRILUX、フィンランド)。結果が平均値±SEとして表された。
【0078】
1.10.ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)
[35S]−メチオニン標識されたウイルス画分をポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分析し、オートラジオグラフィーによって可視化した。[35S]−メチオニン標識された160S EV1画分をサンプル還元緩衝液(250mM TRIS、0.2g(w/v)SDS、20%(v/v)グリセロール、10%(v/v)2−メルカプトエタノール、および0.01%(w/v)ブロモフェノールブルー、pH6.8)と95℃で10分間インキュベーションし、ビリオンを変性させた。変性処理された160Sウイルス最大画分を、その後、180Vで45分間、Benchmark染色済み中範囲タンパク質ラダー(GIBCO、米国)と一緒に15%Tris−HClプレキャストゲル(BIORAD Ready−Gel、CA、米国)において分離した。主な構造タンパク質の可視化およびウイルス純度の分析が、96時間の感光を行った後のHyperfilm MP(Amersham International、英国)におけるオートラジオグラフィーによって行われた。
【0079】
1.11.細胞の細胞傷害性アッセイ
ヒト末梢血リンパ球(OVHS−1細胞およびDOV−13細胞)の細胞懸濁物をEV1で攻撃し(moi=1.0TCID50/細胞)、37℃で24時間インキュベーションした。細胞の細胞溶解のレベルを、製造者の説明書に従ってCyto−Tox96キット(Promega Corp.、Maddison、WI、米国)を使用することによって評価されるLDH(細胞溶解時に放出される安定な細胞質ゾル酵素)の放出の関数として計算した。
【0080】
1.12.スフェロイドの培養およびスフェロイド感染性アッセイ
DOV−13細胞を、24ウエルプレートにおいて、5%FCSを含有する1mlのRPMI1640においてウエルあたり500個または5000個の細胞で半固体の0.5%寒天層に接種した。細胞は、スフェロイドを形成させるために5%のCO2環境において37℃で48時間インキュベーションされ、その後、EV1が添加された(105TCID50)。
【0081】
1.13.SCIDマウスにおける腹腔内腫瘍異種移植片モデル
6週齢〜8週齢のオスBALB/cSCIDマウスを、ニューカッスル大学動物管理倫理委員会によって承認されたプロトコルに従って病原体非含有条件で飼育した。OVHS−1細胞を、0.05%トリプシンを用いて集め、10%FCSを含有するRPMIに再懸濁し、遠心分離によってペレット化した。細胞を洗浄し、PBSに再懸濁し、その後、マウスに1×106個の細胞を200μlにおいて腹腔内(i.p.)注射した。14日後、マウスを3つの群(n=5)に分け、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)で、またはUV不活性化EV1もしくは感染性EV1のいずれかの105TCID50でi.p.治療した。動物は、毎週、体重測定され、腫瘍がその体重の20%を越えた時に屠殺された。治療されたマウスの体重が、腫瘍を有さない健康なBALB/cSCIDマウスと比較された。
【0082】
1.14.リアルタイムPCRによるウイルス血症の決定
感染マウスから得られた血清を、リアルタイム定量的RT−PCRを使用してウイルス血症について分析した。簡単に記載すると、ウイルスRNAを、製造者の説明書に従って、QIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen、Clifton Hill、Victoria、オーストラリア)を使用して10μlの血清から抽出し、40μlの最終体積で溶出した。EV1のウイルスRNAレベルを測定するためのプライマーおよびプローブは、Primer ExpressTM1.5ソフトウエア(Applied Biosystems、Foster City、CA、米国)を使用して設計され、以前に発表されたEV1配列(Genbankアクセション番号AF029859)に基づいていた:フォワードプライマー(5’−CAAGACAGGGACCAAAGAGGAT−3’)、リバースプライマー(5’−CCACTCGCCTGGTTGTAATCA−3’)および6−FAM標識のMGBプローブ(5’−CCAATAGCTTCAACAATT−3’)。ワンステップRT−PCRが、ABI7000配列検出装置においてPlatinum(登録商標)Quantitative RT−PCR ThermoScriptTM One−Step Systemを使用して行われた。標準曲線を作製するために、EV1ウイルスのストック物(1×106TCID50/ml)の10倍希釈物が、最適化された濃度のプライマーおよびプローブを用いて増幅された。25μlの体積において、反応混合物は、1×ThermoScriptTM反応混合物、500nMのフォワードプライマー、900nMのリバースプライマー、250nMのプローブ、500nMのROX、0.5μlのThermoScriptTMPlus/Platinum Taq Mix、および5μlの抽出されたRNAを含んだ。熱サイクル条件は、60℃で30分、その後、95℃で5分、次いで、95℃で15秒および60℃で1分の40サイクルに供された。
【0083】
(実施例2:ガン細胞のウイルス媒介による腫瘍崩壊)
2.1.乳ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
エンテロウイルスによって使用される選択されたエンテロウイルス細胞表面受容体の相対的な発現レベルを明らかにするために、フローサイトメトリー分析が行われた。選択された受容体群は、CAV21によって用いられるICAM−1;EV7、CAV21、CVB3によって用いられるDAF;CVB3によって使用されるCAR;および、EV1によって使用されるインテグリンα2β1からなった。PVR受容体に対するMabを得ることができなかったため、PVRの発現レベルは測定されなかった。
【0084】
9個の乳ガン細胞株が分析され、これらには、BT−29、MCF−7、MDA−MB157、MDA−MB231、MDA−MB361、MDA−MB453、SK−BR−3、T47−DおよびZR−75−1が含まれる。これらの細胞株は、抗ICAM−1(IH4)、抗CAR(RmcB)、抗DAF(VIIIA7)または抗α2β1(AK7)のいずれかとインキュベーションされた。
【0085】
ICAM−1の発現は9個の系統のうちの6個において顕著であり、一方、DAFは、これらすべての細胞株において相対的に低いレベルで発現しているようであった。中程度のレベルのCAR発現が9個の系統のうちの7個において明らかであり、一方、非常に小さいレベルのα2β1発現がこれらの乳ガン細胞株のうちの8個の表面に存在した(図1)。
【0086】
2.2.選択されたエンテロウイルスによる乳ガン細胞の腫瘍崩壊
溶解感染性アッセイが、選択されたエンテロウイルス群(CAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1)に対するそれらの感受性を明らかにするために、9個すべての乳ガン細胞株に対して行われた(図2)。細胞株は、1ミリリットルあたり50パーセント終点での組織培養感染用量(TCID50/ml)が104以上であると計算された場合、腫瘍崩壊を非常に受けやすいと見なされた。CAV21およびCVB3は9個の乳ガン細胞株のうちの6個において著しい溶解を誘導した。一般に、乳ガン細胞は、EV1に対する相当の感受性を明らかにした1つの細胞株T47−Dを除いて、エコーウイルス(EV1およびEV7)による溶解感染に対する感受性がなかった。PV1は9個の乳ガン細胞株のうちの8個において実質的な腫瘍崩壊を引き起こした(図2)。
【0087】
2.3.結腸直腸ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
4つの結腸直腸ガン細胞株(HCT116、LIM2537、SW480およびSW620)が、フローサイトメトリーによって、ICAM−1、CAR、α2β1およびDAFの発現について分析された。著しいレベルのICAM−1発現およびDAF発現がこれらの細胞株のうちの2つにおいて観測された。中程度のレベルのCARが4つすべての系統において発現しているようであり、一方、著しいレベルのα2β1発現は観測されなかった(図3)。
【0088】
2.4.選択されたエンテロウイルスによる結腸直腸ガン細胞の腫瘍崩壊
CAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1が、4つすべての結腸直腸ガン細胞株において力価測定された。CVB3およびPV1による著しいレベルの腫瘍崩壊がこれらの細胞株のすべてにおいて観測された(図4)。しかしながら、CAV21により誘導される著しい細胞溶解が4つの細胞株のうちの1つ(LIM2573)のみにおいて生じた。この細胞株は最大レベルのICAM−1発現を示した。α2β1の非常に低い発現レベルにもかかわらず、EV1はこれらの細胞株のうちの3つに溶解感染し、一方、すべての細胞がEV7感染に対して治療抵抗性があった。
【0089】
2.5.前立腺ガン細胞および膵臓ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
DU145およびPC3を含む前立腺ガン細胞株、ならびに、AsPC−1およびPANC−1を含む膵臓ガン細胞株が、ICAM−1、DAF、CARおよびα2β1の発現について分析された。著しいレベルのICAM−1が両方の前立腺ガン細胞株および一方の膵臓ガン細胞株において発現していた。中程度のCAR発現およびDAF発現がこれらの細胞株の4つすべてにおいて見出され、一方、α2β1発現は非常に小さいようであった(図5)。
【0090】
2.6.前立腺ガン細胞および膵臓ガン細胞の腫瘍崩壊
エンテロウイルスのCAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1に対する2つの前立腺ガン細胞株および2つの膵臓ガン細胞株の感受性が、マイクロタイタープレートでの溶解感染において調べられた。前立腺ガン細胞株は、DU145の場合、EV7を除くすべてのウイルスに対して感受性があった。PANC−1はCAV21およびPV1によって感染しただけであった。これに対して、もう一方の膵臓ガン細胞株AsPC−1は、EV7を除くすべてのウイルスによる腫瘍崩壊を示した(図6)。
【0091】
2.7.卵巣ガン細胞の表面におけるエンテロウイルス受容体の発現
卵巣ガン細胞株が、エンテロウイルス受容体のICAM−1、CAR、DAFおよびα2β1の発現について調べられた。9個の細胞株がこの研究では含まれた:A2780、DOV13、IGROV−1、JAM、OVCA−429、OVHS−1、OWA−42、SKOV−3および2008。著しいレベルのICAM−1が9個の細胞株のうちの2個において発現し、一方、中程度のレベルのCAR発現が9個のうちの6個に存在した。DAFは、1個の卵巣ガン細胞株を除くすべてにおいて高レベル〜中程度のレベルで発現していた。9個の卵巣ガン細胞株のうちの8個がα2β1の中程度のレベル〜高レベルの発現を示し(図7)、さらなる卵巣ガン細胞株(OVCAR−3)は著しいレベルのα2β1を発現していた(データは示されず)。
【0092】
2.8.卵巣ガン細胞株の腫瘍崩壊
CAV21、CVB3、EV1、EV7およびPV1の腫瘍崩壊能力が9個の卵巣ガン細胞株のそれぞれにおいて評価された(図8)。CAV21の感受性が9個の細胞株のうちの2個において認められ、一方、CVB3は9個の細胞株のうちの7個において著しい溶解を生じさせた。卵巣ガンは、感染したとき、エコーウイルスに対して特に感受性があるようであり、EV7は9個のガン細胞株のうちの4個において死を生じさせ、EV1は10個の細胞株のうちの7個を著しく溶解させた(図9a、図9bおよび図10)。PV1に対する攻撃されやすさが9個すべての卵巣ガン細胞株にわたって明らかにされた。顕微鏡写真が、EV1に感染した10個すべての系統について撮影され(図9aおよび図9b)、そして、EV1を用いた10個の卵巣ガン細胞株のマイクロタイタープレートでの溶解感染もまた観測された(図10)。
【0093】
2.9.卵巣ガン細胞株に対するEV1の結合
卵巣ガン細胞株はEV1による腫瘍崩壊を非常に受けやすかったので、EV1の細胞付着の性質を評価するためのさらなる研究が始められた。細胞を抗α2β1(AK7)モノクローナル抗体または抗DAF(VIIIA7)モノクローナル抗体のいずれかとプレインキュベーションし、その後、放射能標識されたEV1を加えて、EV1の宿主細胞結合におけるこれらの受容体の関与を明らかにした。EV1の結合は、試験された10個すべての細胞株において明らかであった。α2β1インテグリンを抗受容体抗体で阻止することによって、EV1の細胞付着が著しく阻害された。モノクローナル抗体VIIIA7を用いた細胞表面受容体DAFの阻止はEV1結合の著しい阻害を生じさせなかった(図11)。
【0094】
2.10.α2β1インテグリンの抗体阻止は卵巣ガン細胞株のEV1感染を阻害する
EV1感染におけるα2β1の機能を評価するために、細胞単層物が抗α2β1(AK7)モノクローナル抗体とプレインキュベーションされた溶解アッセイが行われた。OWA−42およびIGROV−1の卵巣ガン細胞株が分析された。ウイルス感染後の72時間後、細胞単層物は、MAbによる阻止が存在しない場合、EV1の溶解感染に対して非常に感受性があった。α2β1インテグリンのMAb阻止の後では、細胞株における腫瘍崩壊は、EV1の最も低い希釈度においてさえ全く示されなかった(図12)。顕微鏡写真が、OWA−42細胞株の感染後の24時間、48時間および72時間において撮影された(図13)。
【0095】
2.11.非ガン性ヒト細胞はEV1感染に対する感受性がない
実験が、ヒト繊維芽細胞にEV1を感染させることによって明らかにされる、EV1が非ガン性ヒト細胞に対して有する効果を調べるために行われた。簡単に記載すると、6ウエル組織培養プレートが組織培養環状インサートとともに準備され、DOV13細胞がリングの内側に置かれ、ヒト繊維芽細胞のHeLa細胞(CSL(オーストラリア)から得られる)がリングの外側に入れられ、これらは、コンフルエントな単層物が形成されるまで37℃でインキュベーションされた。リングが除かれ、細胞に、37℃で一晩、EV1を感染させた。生存細胞がクリスタルバイオレットのメタノール溶液で染色された。EV1が感染したとき、DOV13卵巣ガン細胞は溶解され、これに対して、HeLa細胞は健全なままであった(図14)。このことは、EV1に対する卵巣ガン細胞の特異的な感受性を明らかにしている。
【0096】
2.12.黒色腫細胞株SkMel28におけるα2β1の発現
黒色腫(皮膚のガン)は、α2β1の発現をアップレギュレーションすることが知られている。黒色腫細胞株SkMel28が、フローサイトメトリーを使用して発現について調べられた。高レベルのα2β1発現が観測された。しかしながら、低いバックグラウンドレベルの結合がコントロールMAbによって示された(図15)。
【0097】
2.13.SkMel28に対するEV1の結合
SkMel28細胞における表面発現のα2β1に対するEV1付着の性質をさらに調べるために、放射能標識されたウイルスの結合アッセイが行われた。放射能標識されたEV1はこの悪性黒色腫細胞株に著しく結合し、α2β1のMAb阻止は、結合したEV1の量を大幅に激減させた(図16)。
【0098】
2.14.EV1を用いたSkMel28の感染性アッセイ
溶解感染性アッセイが、EV1感染に対するSkMel28の感受性を明らかにするために行われた。この悪性黒色腫細胞株は、EV1が感染したとき、中程度の腫瘍崩壊を示した。クリスタルバイオレット色素は、溶解感染を受けていない細胞によって吸収され、これに対して、染色されないウエルは細胞単層物の完全な溶解を表している(図17)。
【0099】
2.15.考察
卵巣ガン細胞株は、EV1による溶解感染に対して非常に感受性があることが見出され、試験された10個の細胞株のうちの7個が著しい腫瘍崩壊を示した。卵巣ガン細胞株に対するEV1の結合についてのさらなる研究では、α2β1が、EV1によって使用される一次受容体であることが確認された。放射能標識された結合研究では、α2β1がウイルス結合のために要求されたことがさらに示され、MAb阻止アッセイでは、感受性の卵巣ガン細胞をα2β1モノクローナル抗体(Mab)と前処理することによって、EV1感染が完全に阻害されたことが明らかにされた。DAF MAbのVIIIA7もまた、DAFが、エンテロウイルスのCAV21およびCVB3に関して果たすようにEV1結合において役割を果しているかどうかを明らかにするために、陰性コントロール治療として結合アッセイにおいて使用された。EV1結合の著しい阻止は、抗DAF MAbの前処理によって生じなかった。
【0100】
卵巣ガン細胞をヒト繊維芽細胞と同時培養し、その後、EV1を感染させた場合、ヒト繊維芽細胞は、ウイルスが卵巣ガン細胞を特異的に溶解した環境においてさえ、EV1感染に対して感受性がないことが明らかにされた。
【0101】
黒色腫細胞株に対するEV1媒介による腫瘍崩壊の効果もまた調べられた。データからは、α2β1がSkMel28黒色腫細胞株の表面でアップレギュレーションされたこと、および、この細胞はEV1の溶解感染に対して感受性があったことが明らかにされた。卵巣ガン細胞に対するEV1の結合は、放射能標識された結合アッセイによって示されるように、α2β1相互作用を介してであることが示された。EV1感染について許容性があった残りのガン細胞株は結腸ガン細胞株であり、4つの細胞株のうちの3つが、2つの前立腺ガン細胞株と同様に、非常に感受性があった。これらのガンタイプはともに、卵巣ガン細胞と同じ細胞外マトリックスに遭遇することがあり、従って、腹膜表面に見出されるI型コラーゲンが多い細胞外マトリックスを通過する転移のとき、それらのα2β1発現をアップレギュレーションし得る。
【0102】
数多くの変化および/または改変が、広く記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態において示されるような発明に対してなされ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明の実施形態は、すべての点で、限定的ではなく、例示であると見なされるべきである。
【0103】
(実施例3:エコーウイルス(EV2)溶解感染の特異性)
3.1.EV1の相対的病原性
新生物細胞に対して比較される非悪性卵巣細胞のインビトロ培養物に対するEV1の相対的な病原性が調べられた。ヒト乳頭腫ウイルス16E6−E7のオープンリーディングフレームを使用して不死化された正常なヒト卵巣表面上皮(HOSE)細胞(Tsao,S.W.他、1995)が、明細胞卵巣ガン腫株(OVHS−1)および未分化卵巣ガン腫細胞(DOV13)と一緒に、moi5.0〜0.05TCID50/細胞まで及ぶ投入多重度のEV1で攻撃された。感染後48時間において、顕微鏡検査により、両方の卵巣ガン腫株の単層物における全体的な細胞破壊および細胞溶解が、細胞あたり0.05TCID50のEV1もの低いウイルス攻撃においてさえ、明らかにされた。対照的に、HOSE細胞の細胞形態学における検出可能な変化は、最も大きいウイルス攻撃用量においてさえ、観測されなかった。
【0104】
EV1感染の特異性を明らかにするさらなる努力において、正常な末梢血リンパ球(PBL)ならびにOVHS−1細胞およびDOV13細胞がEV1で攻撃された(moi=1.0)。フローサイトメトリー分析により、PBL細胞調製物は表面α2β1をほとんど発現しておらず、一方、両方の卵巣ガン腫細胞株は高レベルのα2β1を発現していることが明らかにされた。PBLおよび卵巣ガン細胞の懸濁物のEV1媒介による細胞溶解が、LDHの放出を測定する細胞の標準的な細胞傷害性アッセイを使用することによって評価された。EV1攻撃は、EV1感染による卵巣培養物の細胞のほとんど完全な細胞溶解をもたらし、一方、バックグラウンドレベルの細胞溶解のみが、同じ負荷用量のEV1にさらされた後のPBLにおいて観測されただけであった。
【0105】
EV1が、検出可能な細胞溶解の非存在下でPBLにおいて増殖感染を開始させたかどうかを明らかにするために、また、バックグラウンドレベルの細胞溶解が非特異的であり、EV1感染により媒介されなかったことを確認するために、PBLおよび2つの卵巣ガン腫株の懸濁物は、EV1が接種され(moi=1.0)、子孫ウイルスの産生についてモニターされた。2つの卵巣ガン細胞株(OVHS−1およびDOV−13)において、EV1力価が最初の細胞結合接種物よりも約104倍増大した。対照的に、子孫ウイルスは48時間のインキュベーションにわたってPBLによって産生されず、観測された感染性は、非特異的に結合した残存する投入接種物と一致した。
【0106】
(実施例4:卵巣ガン細胞のエコーウイルス(EV1)溶解)
4.1.インビトロ培養された卵巣ガン細胞スフェロイドのEV1溶解
卵巣ガン細胞の多くのインビトロ培養物は多次元的スフェロイドとして増殖することができる(Casey,R.C.他、2001)。多細胞スフェロイドは、進行した段階の卵巣ガン腫を有する患者の腹水に一般的に見出される多細胞の凝集物を刺激する。卵巣細胞の単層培養物はEV1による溶解感染を非常に受けやすいことが明らかにされているので、多卵巣ガン細胞スフェロイドをEV1で攻撃した。フローサイトメトリー分析により、OVHS−1細胞が単層形成またはスフェロイド形成のいずれかで成長したとしても、EV1細胞受容体α2β1の表面発現レベルが比較可能であったことが明らかにされた。EV1(105TCID50)が、スフェロイドを取り囲む半固体アガロース培地に投与され、スフェロイド形態学の顕微鏡写真画像がウイルス攻撃後の様々な間隔で得られた。図18は、コントロールの非感染スフェロイドが活発に増殖中であり、9日間のインキュベーション期間を通して体積の着実な増大をもたらしていることを示している。対照的に、EV1感染スフェロイドは、接種後の最初の7日の期間中、体積のわずかな減少を示し、著しい構造的解離および細胞破壊がその後の48時間にわたって生じた。データは、EV1が、最初の接種前スフェロイド体積(すなわち、5×102細胞または5×103細胞)にもかかわらず、スフェロイドの成長を遅らせることにおいて効果的であるガン性スフェロイド内の細胞溶解感染に対して増殖性細胞を開始させることを示している。
【0107】
4.2.ヒト卵巣ガンの腹水モデルに対するエコーウイルス1の効果
転移性卵巣ガンの後期段階において、腫瘍細胞は腹膜腔の至るところに遊走し、かつ/または組織部位から離れてコロニーを形成する。EV1媒介の腫瘍崩壊が、腹膜卵巣ガンの進行した段階に対する効果的な治療であるかどうかを明らかにするために、ヒト卵巣ガン腫の異種移植片を有するSCIDマウス腹水症モデルが用いられた。SCIDマウスには、腹腔内経路によって、2×106個のOVHS−1細胞が、生EV1の投与の14日前に投与された。実験治療様式は、腹腔内経路により注入されたPBS、UV不活性化EV1または生EV1(105TCID50)のいずれかの1回の投薬からなった。卵巣ガン異種移植片を有さないマウスの体重変化に対する、様々な治療を受けているマウスの体重変化が、腹水症負荷の発症のマーカーとして使用された。
【0108】
治療後3週間目において、PBSまたはUV不活性化EV1が投与されたマウスは体重の著しい増大を示し、しかし、正常なマウスとEV1治療マウスとの間には差が観測されなかった。PBS群またはUV不活性化EV1群の体重は増大し続け、PI4週間目において、腹水の蓄積による実質的な腹部膨満がすべてのマウスにおいて明らかであったが、残りの治療群では明らかではなかった(図19A)。PI5週間目において、PBSおよびUV不活性化EV1に由来するすべてのマウスが過度の腹膜腹水症のために屠殺され、その一方で、検出可能な体重増大または腹水形成が、EV1治療マウスと、卵巣ガン異種移植片を有さない動物との間には観測されなかった(図19B)。この研究の経過期間中を通して、劇的な疾患発症の徴候は、ウイルス接種物の用量よりも10倍〜100倍多い血清ウイルス負荷量が存在する場合でさえ、生EV1が注入されたマウスでは観測されなかった(PI7日目〜14日目において;データは示されず)。
【0109】
4.3.考察
複製可能なウイルスを使用するウイルス腫瘍崩壊法を成功するための主要な必要条件の1つは、新生物細胞に対する大きな好みのほかに、宿主に対する低いウイルス病原性である。
【0110】
本研究では、ヒト卵巣ガン細胞のインビトロ細胞培養物の溶解感染を誘導する代表的なヒトエコーウイルスの能力が評価された。黒色腫細胞について非常に腫瘍崩壊性があるにもかかわらず、CVA21、およびEV7のプロトタイプ株は、多数のヒト卵巣ガン細胞単層物において増殖性の溶解感染を誘導することにおいてEV1ほど強力ではなかった。モノクローナル抗体阻止研究により、卵巣ガン細胞のEV1媒介による溶解感染が、細胞表面に発現したインテグリンα2β1との特異的なウイルスキャプシド結合によって開始されたことが確認された。インテグリンα2β1はEV1およびコラーゲンの両方と同時に結合することができないので、卵巣ガン細胞のEV1溶解感染は迅速な細胞腫瘍崩壊を媒介するだけでなく、1型コラーゲンとインテグリンα2β1との間での相互作用を妨害することができ、それにより、腹膜表面の全域におけるガン細胞の散在を潜在的に低下させることができる。
【0111】
EV1攻撃による多細胞の三次元スフェロイドの破壊は、充実性卵巣腫瘍負荷のインビボ低下におけるEV1媒介による腫瘍崩壊の有用性を反映している。卵巣スフェロイドにおける個々の細胞は、単層形成における細胞よりも強固であるようであり、そのため、放射線および化学物質により誘導されるアポトーシスに対する高まった抵抗性を有するということ(Frankel,A.他、1997)を考えると、EV1による卵巣スフェロイドのこの効率的な溶解は見事である。
【0112】
治療的な腫瘍崩壊性ウイルスは、悪性の細胞を標的化するための識別機構を有さなければならない。選択的なEV1媒介感染が、EV1は正常な上皮卵巣細胞株および末梢血リンパ球(PBL)の劇的な細胞溶解を誘導することができないことによって強調された。高力価の子孫ウイルスが、PBLの懸濁物からではなく、卵巣ガン細胞から産生することは、非新生物細胞に対するEV1感染の特異性および低い病原性の性質を補強している。
【0113】
卵巣ガン腫に加えて、悪性の黒色腫細胞もまた、アップレギュレーションされたレベルの表面インテグリンα2β1を発現し、それにより、悪性の黒色腫細胞をEV1攻撃に対して感受性にしている。ちょっとした逆説において、卵巣ガン細胞のEV1感染は、黒色腫細胞におけるCVA21に対する細胞標的化受容体であるICAM−1の増大した表面発現を誘導する(Pietiainen,V.他、2000)。従って、生EV1および生CVA21の両方を含有する治療用調製物による卵巣ガンおよび/または黒色腫の悪性腫瘍の攻撃は、より強力な腫瘍崩壊感染をもたらし得る。
【0114】
EV1の腹腔内投与は、SCIDマウスの腹膜腔における卵巣腫瘍異種移植片の発達を抑制することにおいて非常に効果的であった。生EV1が注入されたマウスはすべてが、(卵巣ガン異種移植片が注入されていないマウスと比較して)増大した体重増加を示さず、また、検出可能な腹膜腹水の発達を示さなかった。新生物性卵巣細胞のインビボ溶解感染によって生じた子孫EV1が、PI7日目にマウスの血液において検出された(データは示されず)。ウイルス血症EV1は、散らばった疾患を抑えるための魅力的なリザーバーと見なすことができ、そして、有意なレベル(約106TCID50)でのその検出はまた、105TCID50のウイルス投入用量が、腫瘍崩壊能を維持しながら著しく減少させられ得ることを示している。卵巣ガン異種移植片を有さないマウスにおいてウイルス血症EV1をPI7日目に検出できないこと(データは示されず)は、感受性の新生物細胞が存在しない場合、EV1は全身循環から迅速かつ効果的に排除されつつあることを示唆している。
【0115】
全体として、これらの結果は、EV1による腫瘍崩壊治療が、腹膜卵巣ガンを抑えるためにインビトロおよびインビボにおいて非常に効果的であることを強調している。比較的非浸襲性のEV1治療の使用は、混合化学療法が後に続く外科的減量化を伴う現行の治療様式に対する魅力的な代替法として見なすことができる。EV1治療はまた、手術手技の間に放出された新生物細胞の標的化および破壊に集中する腫瘍減量化手術後の補助治療として用いることができる。EV1腫瘍崩壊治療はまた、高レベルのインテグリンα2β1を発現する他のヒト悪性腫瘍の治療における新規な治療法として使用することができる。その上、EV1およびEV8はインテグリンα2β1上の同じ結合エピトープについて競合するので、EV8は、卵巣ガン腫細胞の迅速な溶解感染を誘導するためのEV1に対する代わりの選択となり得る。2つの別個のウイルス血清型が利用できることにより、最初のウイルス投与の結果として生じた保護免疫応答とは無関係に、インテグリンα2β1の標的化による卵巣ガン腫の逐次攻撃が可能になる。EV1に対する強力な抗エンテロウイルス薬(プレコナリル)が利用できること(Pevear,D.C.他、1999)は、非特異的なウイルス複製および散らばったウイルス子孫の直接的な抑制をもたらすので、この治療の魅力をさらに高める。プレコナリルとEV1との間での潜在的な相乗作用はまた、非常に大きいウイルス投入多重度の全身注入、それに続く、ウイルスが悪性の細胞を標的化し、その溶解感染を開始した直後における(遊離ウイルスを不活性化するための)プレコナリルの投与を可能にし得る。
【0116】
数多くの変化および/または改変が、広く記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態において示されるような発明に対してなされ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明の実施形態は、すべての点で、限定的ではなく、例示であると見なされるべきである。
【0117】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における異常細胞を治療するための方法であって、α2β1を異常細胞への感染性のために認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスの効果的な量で哺乳動物を治療し、その結果、異常細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるようにすることを含む方法。
【請求項2】
ウイルスを用いた多数の治療に哺乳動物を供することを含み、各治療におけるウイルスが同一または異なる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスが異常細胞に感染するさらなるウイルスとの組合せで哺乳動物に投与される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
異常細胞がICAM−1を発現し、さらなるウイルスが異常細胞への感染性のためにICAM−1を認識する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらなるウイルスがコクサッキーウイルスまたはその改変された形態である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コクサッキーウイルスが、A13,A15,A18およびA21からなる群から選択されるコクサッキーウイルス血清型である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
異常細胞がガン細胞である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項12に記載の方法。
【請求項14】
異常細胞が、α2β1のアップレギュレーションされた発現を有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ウイルスが、哺乳動物に対して局所的に、全身的に、または腫瘍内に投与される請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、ウイルスによって誘導される細胞死に対する感受性について哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをスクリーニングする方法であって:
(a)異常細胞のサンプルを提供する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするのに十分な期間にわたって異常細胞をウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程;
を含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される方法。
【請求項17】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項19に記載の方法。
【請求項21】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
異常細胞に感染し、その死を生じさせるウイルスの能力を、異常細胞の別のサンプルを利用して、工程(b)および工程(c)に供された、α2β1を異常細胞への感染性のために認識する異なるウイルスと比較する工程をさらに含む請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
異なるウイルスが異なるエコーウイルスまたはその改変された形態である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
異常細胞がガン細胞である請求項16〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項24に記載の方法。
【請求項26】
異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、哺乳動物に由来する異常細胞に感染し、その死を生じさせる能力についてウイルスをスクリーニングする方法であって:
(a)ウイルスを選択する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするのに十分な期間にわたって哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程;
を含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスおよびその改変された形態から選択される方法。
【請求項27】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項29】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項29に記載の方法。
【請求項31】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
異常細胞に感染し、その死を生じさせるウイルスの能力を、異常細胞の別のサンプルを利用して、工程(b)および工程(c)に供された、α2β1を異常細胞への感染性のために認識する異なるウイルスと比較する工程をさらに含む請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
異なるウイルスが異なるエコーウイルスまたはその改変された形態である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
異常細胞がガン細胞である請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項34に記載の方法。
【請求項36】
α2β1を発現する異常細胞に対して哺乳動物における免疫応答を誘導する方法であって、エコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスを哺乳動物における異常細胞に感染させることを含み、それにより少なくとも一部の異常細胞の溶解が引き起こされる方法。
【請求項37】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項39に記載の方法。
【請求項41】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
異常細胞が、α2β1のアップレギュレーションされた発現を有する請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ウイルスが異常細胞に感染するさらなるウイルスとの組合せで哺乳動物に投与される請求項36〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
異常細胞がICAM−1を発現し、さらなるウイルスが異常細胞への感染性のためにICAM−1を認識する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
さらなるウイルスがコクサッキーウイルスまたはその改変された形態である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
コクサッキーウイルスが、A13,A15,A18およびA21からなる群から選択されるコクサッキーウイルス血清型である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
異常細胞がガン細胞である請求項36〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ウイルスが、哺乳動物に対して局所的に、全身的に、または腫瘍内に投与される請求項36〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
哺乳動物における異常細胞を治療するための医薬組成物であって、異常細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるように異常細胞を治療するためにウイルスを生じさせるための接種物を医薬的に許容され得るキャリアと一緒に含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される医薬組成物。
【請求項51】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項54】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項55】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項53または54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
異常細胞がガン細胞である請求項50〜55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
医薬組成物が局所投与または注入のためのものである請求項50〜56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
哺乳動物における異常細胞を治療するためのウイルスを生じさせるために哺乳動物に接種物を適用するためのアプリケーターであって、アプリケーターは、接種物が哺乳動物と接触するように接種物を染み込ませた領域を含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるアプリケーター。
【請求項59】
ウイルスを染み込ませた領域が、哺乳動物と接触した状態で保持されるための詰め物またはパッドを含む請求項58に記載のアプリケーター。
【請求項60】
異常細胞が異常皮膚細胞であり、アプリケーターが哺乳動物の皮膚に接着するための一つまたはそれ以上の接着性表面をさらに含む請求項58または59に記載のアプリケーター。
【請求項61】
パッチまたは絆創膏の形態である請求項58〜60のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項62】
哺乳動物における異常細胞に対する免疫応答を誘導するための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用であって、ウイルスが、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される使用。
【請求項63】
哺乳動物における異常細胞に対する免疫応答を誘導するための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用であって、ウイルスが、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識し、かつ細胞を殺すエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される使用。
【請求項1】
哺乳動物における異常細胞を治療するための方法であって、α2β1を異常細胞への感染性のために認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスの効果的な量で哺乳動物を治療し、その結果、異常細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるようにすることを含む方法。
【請求項2】
ウイルスを用いた多数の治療に哺乳動物を供することを含み、各治療におけるウイルスが同一または異なる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスが異常細胞に感染するさらなるウイルスとの組合せで哺乳動物に投与される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
異常細胞がICAM−1を発現し、さらなるウイルスが異常細胞への感染性のためにICAM−1を認識する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらなるウイルスがコクサッキーウイルスまたはその改変された形態である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コクサッキーウイルスが、A13,A15,A18およびA21からなる群から選択されるコクサッキーウイルス血清型である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
異常細胞がガン細胞である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項12に記載の方法。
【請求項14】
異常細胞が、α2β1のアップレギュレーションされた発現を有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ウイルスが、哺乳動物に対して局所的に、全身的に、または腫瘍内に投与される請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、ウイルスによって誘導される細胞死に対する感受性について哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをスクリーニングする方法であって:
(a)異常細胞のサンプルを提供する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするのに十分な期間にわたって異常細胞をウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程;
を含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される方法。
【請求項17】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項19に記載の方法。
【請求項21】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
異常細胞に感染し、その死を生じさせるウイルスの能力を、異常細胞の別のサンプルを利用して、工程(b)および工程(c)に供された、α2β1を異常細胞への感染性のために認識する異なるウイルスと比較する工程をさらに含む請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
異なるウイルスが異なるエコーウイルスまたはその改変された形態である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
異常細胞がガン細胞である請求項16〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項24に記載の方法。
【請求項26】
異常細胞の治療のために哺乳動物にウイルスを投与することを評価するために、哺乳動物に由来する異常細胞に感染し、その死を生じさせる能力についてウイルスをスクリーニングする方法であって:
(a)ウイルスを選択する工程;
(b)ウイルスによる異常細胞への感染を可能にするのに十分な期間にわたって哺乳動物に由来する異常細胞のサンプルをウイルスで治療する工程;および
(c)ウイルスが異常細胞の少なくとも一部に感染し、その死を生じさせたかどうかを明らかにする工程;
を含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスおよびその改変された形態から選択される方法。
【請求項27】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項29】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項29に記載の方法。
【請求項31】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
異常細胞に感染し、その死を生じさせるウイルスの能力を、異常細胞の別のサンプルを利用して、工程(b)および工程(c)に供された、α2β1を異常細胞への感染性のために認識する異なるウイルスと比較する工程をさらに含む請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
異なるウイルスが異なるエコーウイルスまたはその改変された形態である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
異常細胞がガン細胞である請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項34に記載の方法。
【請求項36】
α2β1を発現する異常細胞に対して哺乳動物における免疫応答を誘導する方法であって、エコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるウイルスを哺乳動物における異常細胞に感染させることを含み、それにより少なくとも一部の異常細胞の溶解が引き起こされる方法。
【請求項37】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項39に記載の方法。
【請求項41】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
異常細胞が、α2β1のアップレギュレーションされた発現を有する請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ウイルスが異常細胞に感染するさらなるウイルスとの組合せで哺乳動物に投与される請求項36〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
異常細胞がICAM−1を発現し、さらなるウイルスが異常細胞への感染性のためにICAM−1を認識する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
さらなるウイルスがコクサッキーウイルスまたはその改変された形態である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
コクサッキーウイルスが、A13,A15,A18およびA21からなる群から選択されるコクサッキーウイルス血清型である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
異常細胞がガン細胞である請求項36〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
ガン細胞が、卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、および結腸直腸ガンからなる群から選択されるガンの細胞であるか、または卵巣ガン、黒色腫、前立腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン、または結腸直腸ガンから広がっている請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ウイルスが、哺乳動物に対して局所的に、全身的に、または腫瘍内に投与される請求項36〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
哺乳動物における異常細胞を治療するための医薬組成物であって、異常細胞の少なくとも一部がウイルスによって殺されるように異常細胞を治療するためにウイルスを生じさせるための接種物を医薬的に許容され得るキャリアと一緒に含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される医薬組成物。
【請求項51】
ウイルスがエコーウイルス血清型またはその改変された形態を含む請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
ウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
ウイルスが改変されたエコーウイルスである請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項54】
ウイルスが、異常細胞に感染するウイルスの能力を増大させるように改変されている請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項55】
改変されたエコーウイルスが、EV1,EV7,EV8およびEV22からなる群から選択される改変された形態のエコーウイルスである請求項53または54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
異常細胞がガン細胞である請求項50〜55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
医薬組成物が局所投与または注入のためのものである請求項50〜56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
哺乳動物における異常細胞を治療するためのウイルスを生じさせるために哺乳動物に接種物を適用するためのアプリケーターであって、アプリケーターは、接種物が哺乳動物と接触するように接種物を染み込ませた領域を含み、ウイルスは、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択されるアプリケーター。
【請求項59】
ウイルスを染み込ませた領域が、哺乳動物と接触した状態で保持されるための詰め物またはパッドを含む請求項58に記載のアプリケーター。
【請求項60】
異常細胞が異常皮膚細胞であり、アプリケーターが哺乳動物の皮膚に接着するための一つまたはそれ以上の接着性表面をさらに含む請求項58または59に記載のアプリケーター。
【請求項61】
パッチまたは絆創膏の形態である請求項58〜60のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項62】
哺乳動物における異常細胞に対する免疫応答を誘導するための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用であって、ウイルスが、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識するエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される使用。
【請求項63】
哺乳動物における異常細胞に対する免疫応答を誘導するための医薬品を製造する際にウイルスを生じさせるための接種物の使用であって、ウイルスが、異常細胞への感染性のためにα2β1を認識し、かつ細胞を殺すエコーウイルスならびにその改変された形態およびそれらの組合せから選択される使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−46489(P2012−46489A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151340(P2011−151340)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2004−559490(P2004−559490)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(507348702)ヴィラリティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【分割の表示】特願2004−559490(P2004−559490)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(507348702)ヴィラリティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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