説明

直流モータ

【課題】ブラシホルダ部の構成を簡単にして、ブラシをブラシホルダ部に確実に保持することができるようにする。
【解決手段】一端が開口した筒状のモータハウジング2と、モータハウジング2の一端を閉塞するエンドキャップ3と、モータハウジング2内において回転軸4と共に一体に回転する整流子5の外周面に弾性的に接触するブラシ6と、ノイズを抑制するノイズ防止回路を実装したプリント基板7を備える。エンドキャップ3に、ブラシ6を摺動自在に保持するためのモータハウジングの内部を向く側が開口した溝状のブラシホルダ部9を設ける。プリント基板7を、その平面が回転軸4の軸線方向と直交し、かつその平面にブラシホルダ部9に摺動自在に保持されたブラシ6が摺接し得るように、モータハウジング2内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にノイズを抑制するノイズ防止回路を実装したプリント基板を備えた直流モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直流モータにおいては、モータハウジングの一端部に取り付けられるブラシホルダ部に、ブラシを摺動自在に遊嵌し、このブラシを、回転軸と一体に回転する整流子の外周面に、弾性的に押接するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、回転軸の回転中、ブラシと整流子との通電部分から発生するノイズが、他の回路へ悪影響を与えないように、ノイズ防止回路を実装したプリント基板を備えているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−201183号公報
【特許文献2】特開平7−135752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に記載された直流モータにおいては、回転軸の回転に伴って、ブラシと整流子との間の摺動抵抗や整流子の凹凸等の影響によって、ブラシがブラシホルダ部から脱落しないように、ブラシホルダ部を、放射方向へ貫通した長方形の筒形状としているため、ブラシのブラシホルダ部への組付けが面倒であるとともに、ブラシホルダ部の構造が複雑になる問題がある。
【0005】
特許文献2に記載された直流モータにおいては、ノイズ防止回路がプリント基板と共にモータハウジングの外側に装着されるため、モータ自体の外部寸法、特に回転軸の軸線方向の寸法が大きくなる問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような従来の課題に鑑み、ブラシホルダ部の構成を簡単にして、ブラシをブラシホルダ部に確実に保持することができるようにした直流モータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)一端が開口した筒状のモータハウジングと、前記モータハウジングの一端を閉塞するエンドキャップと、前記モータハウジング内において回転軸と共に一体に回転する整流子の外周面に弾性的に接触するブラシと、ノイズを抑制するノイズ防止回路を実装したプリント基板を備えた直流モータにおいて、前記エンドキャップに、前記ブラシを摺動自在に保持するための前記モータハウジングの内部を向く側が開口した溝状のブラシホルダ部を設けるとともに、前記プリント基板を、その平面が前記回転軸の軸線方向と直交し、かつその平面にブラシホルダ部に摺動自在に保持された前記ブラシが摺接し得るように、前記モータハウジング内に配置する。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記プリント基板に、前記整流子が前記回転軸と共に貫通する円形の開口部を設けるとともに、前記ノイズ防止回路を、前記整流子の周辺に配置する。
【0009】
(3)上記(1)または(2)項において、前記プリント基板の前記ブラシに対向する平面に、前記ノイズ防止回路及びプリント配線を一切設けない。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、前記プリント基板を、前記エンドキャップにおける前記モータハウジング内に対向する内側部に固定する。
【0011】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、前記プリント基板に、前記ブラシと前記プリント基板とを電気的に接続するための電線が挿通可能な開口部を設ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、ブラシホルダ部の構成を簡単にして、ブラシをブラシホルダ部に確実に保持することができるとともに、ノイズ防止回路を実装したプリント基板をモータハウジング内に設けたため、直流モータの小型化を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、プリント基板を分割することなく、モータハウジング内における整流子の周囲に配置することができるとともに、ノイズ防止回路を、整流子の周辺、すなわち整流子とブラシとの通電部分の近傍に配置することができ、ノイズを効果的に除去することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によると、ブラシがノイズ防止回路やプリント配線に干渉することがないため、ブラシの摺動を円滑にし、かつノイズ防止回路やプリント配線の破損を防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によると、プリント基板をモータハウジング内に確実に保持することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によると、ブラシとプリント基板を、電線を介して簡単に電気的に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、直流モータ1の要部の縦断面図、図2は、図1におけるII−II線縦断面図である。なお、図1における左右を「左右」とし、図2における左右を「前後」とする。
【0018】
直流モータ1は、前端側が閉じられ、後端側が開口している筒状をした鉄等の金属製で形成されたモータハウジング2と、モータハウジング2の後端側を閉塞する合成樹脂製のエンドキャップ3と、モータハウジング2内に枢支された回転軸4と共に一体に回転する整流子5と、整流子5の外周面に弾性的に押圧される2個のブラシ6と、ブラシ6と整流子5との通電部分から発生するノイズを抑制するノイズ防止回路を構成する後述の電気部品を実装したプリント基板7等を備えて構成されている。
【0019】
モータハウジング2の内周面には、永久磁石(図示略)が取り付けられて、モータハウジング2と永久磁石とでステータを構成している。
【0020】
回転軸4の前端部は、モータハウジング2の前端側に軸受(図示略)を介して回転可能に枢支され、また同じく後端部は、エンドキャップ3の中央部に設けられたボス部31に軸受8を介して枢支されている。
【0021】
回転軸4には、鉄心に巻線を施した電機子(図示略)が取り付けられ、電機子の巻き線を整流子5に電気的に接続することにより、整流子5、回転軸4及び電機子は、モータハウジング2内に収容されるロータを構成する。
【0022】
エンドキャップ3は、合成樹脂材により一体成型されるとともに、その前面、すなわちモータハウジング2の内部を向く内側面には、ブラシ6を摺動自在に保持するためのブラシホルダ部9、9が一体的に形成されている。さらにエンドキャップ3の内側面には、ブラシ6、6と、ブラシ6、6を整流子5の外周面へ向けて付勢するスプリング10、10と、ノイズ防止回路を実装したプリント基板7が組み付けられている。エンドキャップ3の外側上部には、電源に電気的に接続される端子33が設けられたコネクタ部32が設けられ、電源は、端子33、プリント基板7に実装された電気部品を介して、ブラシ6に供給される。
【0023】
ブラシ6、6、スプリング10、10及びプリント基板7は、エンドキャップ3をモータハウジング2に取り付ける前、予めエンドキャップ3に組み付けられる。
【0024】
なお、下方、右方のブラシ6、ブラシホルダ部9及びその近傍は、同一形状であるので、以下、下方におけるもののみについて説明する。
【0025】
ブラシホルダ部9は、放射方向へ延出し、かつ前方を向く摺動面91の左右両側に、前方へ突出する左右1対の側壁92、92を設けてなる、モータハウジング2の内部を向く側が開口した横断面形状ほぼコ字状の溝状をなしている。これにより、ブラシホルダ部9を溝状の簡単な構成にして、ブラシ6をエンドキャップ3の前側からブラシホルダ部9に簡単に組み付けることができる。
【0026】
ブラシ6は、先端部が整流子5の外周面に摺接し得るように、ブラシホルダ部9の両側壁92、92間に摺動自在に遊嵌されるとともに、その後面が摺動面91に摺動自在に接触し、かつ前面が後述のようにエンドキャップ3に固定されるプリント基板7の後側の平面に摺接可能に抑えられる。
【0027】
上述のように、ブラシ6を、プリント基板7とブラシホルダ部9との間に摺動自在に挟持することにより、回転軸4の回転に伴って、ブラシ6と整流子5との摺動抵抗や整流子5の凹凸の影響等によって、ブラシ6に対してブラシホルダ部9から脱落する方向(前方)の振動や衝撃が加わっても、その方向のブラシ6の動きは、プリント基板7に抑えられるため、ブラシ6をブラシホルダ部9に確実に保持することができる。
【0028】
ブラシ6の頭部寄りの前面には、プリント基板7に電気的に接続され、ブラシ6へ電流を供給する柔軟性の電線から構成されるピグテール11が植設されている。
【0029】
プリント基板7は、その平面が回転軸4の軸線方向(前後方向)と直交し、かつブラシ6の前面がその後側の平面に摺接し得るように、モータハウジング2内におけるエンドキャップ3の前面に固定される。具体的には、エンドキャップ3の前面に設けた前方へ突出する突部34、34を、プリント基板7に設けた取付孔73、73に嵌合して、その前端部をかしめることによって、プリント基板7はエンドキャップ3に固定される。
【0030】
プリント基板7には、コンデンサ12、ダイオード13、抵抗器14、2個のチョークコイル15等を含むノイズ防止回路、過電流を制限する過電流制限素子16、及び回転軸4の回転数を検出するホール素子17等の電気部品が実装される。なお、ノイズ防止回路を含む全ての電気部品及びプリント配線は、整流子5の周辺に位置し、かつブラシ6、6の前面に対向する領域外に設けられる。すなわち、プリント基板7のブラシ6、6に対向する平面には、ノイズ防止回路を含む全ての電気部品及びプリント配線を一切設けないようにしている。なお、ノイズ防止回路は、本実施形態に特定されるものでなく、周知の技術に基づいて種々変更可能である。
【0031】
プリント基板7の中央には、整流子5が回転軸4と共に貫通する円形の開口71が設けられている。これにより、プリント基板7を、分割することなくモータハウジング2内における整流子7の周囲に配置して、ノイズ防止回路を整流子7の周辺近傍に設けることができる。また、プリント基板7におけるブラシ6の前面に対向する領域の一部には、ピグテール11が挿通可能な開口部72が設けられている。これにより、ピグテール71を開口部72に通して、ブラシ6とプリント基板7を簡単に電気的に接続することができる。
【0032】
上述のように、ノイズ防止回路をプリント基板7と共に、モータハウジング内2内に設けたことにより、モータ1の小型化、特に、軸線方向の長さを短縮することができる。また、ノイズ防止回路を整流子5の周辺、すなわち整流子5とブラシ6との通電部分の近傍に配置したことにより、ブラシ6と整流子5の通電部分から発生するノイズを効果的に除去することができる。さらには、電気部品及びプリント配線を、プリント基板7のブラシ6、6の前面に対向する領域外に設けたことにより、ブラシ6がノイズ防止回路やプリント配線に干渉することがないため、ブラシ6の摺動を円滑にし、かつノイズ防止回路やプリント配線の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を適用したモータの縦断面図である。
【図2】図1におけるII−II線縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 直流モータ
2 モータハウジング
3 エンドキャップ
4 回転軸
5 整流子
6 ブラシ
7 プリント基板
8 軸受
9 ブラシホルダ部
10 スプリング
11 ピグテール(電線)
12 コンデンサ(ノイズ防止回路)
13 ダイオード(ノイズ防止回路)
14 抵抗器(ノイズ防止回路)
15 チョークコイル(ノイズ防止回路)
16 過電流制限素子
17 ホール素子
31 ボス部
32 コネクタ部
33 端子
34 突部
71 開口部
72 開口部
73 取付孔
91 摺動面
92 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した筒状のモータハウジングと、前記モータハウジングの一端を閉塞するエンドキャップと、前記モータハウジング内において回転軸と共に一体に回転する整流子の外周面に弾性的に接触するブラシと、ノイズを抑制するノイズ防止回路を実装したプリント基板を備えた直流モータにおいて、
前記エンドキャップに、前記ブラシを摺動自在に保持するための前記モータハウジングの内部を向く側が開口した溝状のブラシホルダ部を設けるとともに、前記プリント基板を、その平面が前記回転軸の軸線方向と直交し、かつその平面にブラシホルダ部に摺動自在に保持された前記ブラシが摺接し得るように、前記モータハウジング内に配置したことを特徴とする直流モータ。
【請求項2】
前記プリント基板に、前記整流子が前記回転軸と共に貫通する円形の開口部を設けるとともに、前記ノイズ防止回路を、前記整流子の周辺に配置したことを特徴とする請求項1記載の直流モータ。
【請求項3】
前記プリント基板の前記ブラシに対向する平面に、前記ノイズ防止回路及びプリント配線を一切設けないことを特徴とする請求項1または2記載の直流モータ。
【請求項4】
前記プリント基板を、前記エンドキャップにおける前記モータハウジング内に対向する内側部に固定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直流モータ。
【請求項5】
前記プリント基板に、前記ブラシと前記プリント基板とを電気的に接続するための電線が挿通可能な開口部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の直流モータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−178249(P2008−178249A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10332(P2007−10332)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(591013997)株式会社 五十嵐電機製作所 (15)
【Fターム(参考)】