説明

直流地絡電流検出装置

【課題】地絡電流の検出性能が高く、かつ簡易な構成を有する直流地絡電流検出装置を提供する。
【解決手段】直流地絡電流検出装置101は、零相変流器(ZCT)1と、励磁電源2と、検出回路3とを備える。ZCT1は、磁性材料からなるコア11と、コア11に巻回された巻線12とを有する。電源線6A,6Bがコア11の中空部分に通される。直流地絡電流検出装置101の最小検出電流は、予め定められる。その最小検出電流が直流電路に流れたときにZCT1のコア11が飽和するように励磁電圧が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流地絡電流検出装置に関し、特に、直流地絡電流の検出性能を高めるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の直流地絡電流検出装置は、たとえば特開2000−182503号公報(特許文献1)に開示されている。この直流地絡電流検出装置は、変流器と、継電器とを備える。変流器は帰還回路を備える。帰還回路は、検出された地絡電流と等しい逆方向の補正電流を、その補正電流と地絡電流との和が零となるまで流し続ける。変流器は、さらに、信号波形のピーク値を検出する波高値検出回路と、その波高値検出回路の前段に設けられて信号波形を増幅する増幅回路と、その増幅回路の増幅度を、波高値検出回路の出力に基づいて自動的に可変させる増幅度調整回路とを備える。
【0003】
上記の直流地絡電流検出装置をより詳細に説明すると、変流器は2つの鉄心を有する。これら2つの鉄心を励磁巻線によって飽和させて、各鉄心の飽和波形の差を生成する。それら飽和波形の差を増幅することによって、正側と負側とにピーク値を有するほぼ対称な針状波形が得られる。正側波高値検出回路および負側波高値検出回路により、この針状波形の正側および負側のピーク値が一定時間保持される。さらに、その正側波高値検出回路の出力と負側波高値検出回路の出力とが加算回路で加算される。地絡故障が発生した場合には、この加算回路の出力が零となるまで、帰還回路が補正電流を流し続ける。その補正電流が設定電流値を超えた場合に、地絡発生が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−182503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2000−182503号公報(特許文献1)に開示された直流地絡電流検出装置の構成によれば、針状波形の正側および負側のピーク値を一定時間保持した上で、正側および負側のピーク値の和が零となるまで、帰還回路が補正電流を流し続ける。このため、地絡の発生に起因して生じる、変流器内の微小な差電流を検出するのに時間を要する。
【0006】
さらに、変流器は2つの鉄心を有する。このために、直流地絡電流検出装置の構成が複雑となる。さらに、各鉄心の飽和波形の差が対称な波形となるためには、2つの鉄心の特性がほぼ同一であることが要求される。しかしながら同じ条件で製造されても鉄心の特性は異なりうる。そのため、上記の直流地絡電流検出装置を実現するためには、多くの鉄心の中から略同じ特性を有する2つの鉄心を選別しなければならない。装置の構成が複雑なだけでなく、2つの鉄心の選別も必要なことは、装置のコストが上昇する要因となる。
【0007】
本発明の目的は、地絡電流の検出性能が高く、かつ簡易な構成を有する直流地絡電流検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に係る直流地絡電流検出装置は、直流電路の地絡によって直流電路に流れる直流差電流を検出する直流地絡電流検出装置であって、磁性体からなる中空のコアおよびコアに巻回された巻線を有する零相変流器と、零相変流器の巻線に交流の励磁電圧を印加するための励磁電源と、零相変流器の巻線の電圧から、励磁電圧の偶数次の高調波成分を抽出して、偶数次の高調波成分に基づいて、コアを貫通する直流電路に流れる直流差電流を検出する検出回路とを備える。直流地絡電流検出装置の最小検出電流として予め定められた電流が直流電路に流れたときにコアが磁気飽和するように、励磁電圧が設定される。
【0009】
好ましくは、検出回路は、偶数次の高調波成分を励磁電圧から抽出するためのバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタの出力電圧を全波整流するための全波整流回路と、全波整流回路の出力電圧を平滑化するための平滑回路と、平滑回路の出力電圧と直流電路に流れる直流差電流との間の予め求められた相関関係に従って、平滑回路の出力電圧から直流差電流の大きさを検出するレベル検出回路とを含む。
【0010】
好ましくは、検出回路は、平滑回路の出力電圧を増幅する増幅回路と、増幅回路の出力電圧を、比較電圧と比較する比較回路と、比較電圧を発生させる比較電圧発生回路とをさらに含む。比較電圧は、直流電路に流れる直流差電流が、直流地絡電流検出装置によって地絡を報知すべき電流に等しいときの増幅回路の出力電圧である。
【0011】
好ましくは、検出回路は、励磁電圧の正側のピークを検出するための第1のピーク検出回路と、励磁電圧の負側のピークを検出するための第2のピーク検出回路と、第1のピーク検出回路により検出された正側のピークと、第2のピーク検出回路により検出された負側のピークとを比較して、直流電路に流れる直流差電流の極性を示す信号を出力する比較回路とをさらに含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地絡電流の検出性能が高く、かつ簡易な構成を有する直流地絡電流検出装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の概略構成図である。
【図2】図1に示したコア11の励磁を説明するためのコア11のヒステリシス曲線の模式図である。
【図3】ZCT1のコア11を貫通する直流差電流(貫通電流)を変化させたときの励磁電圧の波形の変化を示した図である。
【図4】貫通電流と、第2高調波成分の強度との間の関係を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の他の構成を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の概略構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の他の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の概略構成図である。図1を参照して、第1の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置101は、直流電源5に接続された回路の直流地絡を検出するために使用される。直流電源5の具体例としては太陽電池あるいは燃料電池が挙げられる。直流電源5に接続された回路の例としては、太陽電池あるいは燃料電池等からの直流電力を交流電力へと変換するパワーコンディショナ(図1には示さず)が挙げられる。ただし直流電源5および直流電源5に接続される回路は、これらの例に限定されるものではない。
【0016】
直流地絡電流検出装置101は、零相変流器(ZCT)1と、励磁電源2と、検出回路3とを備える。
【0017】
ZCT1は、磁性材料からなるコア11と、コア11に巻回された巻線12とを有する。コア11は中空に形成され、電源線6A,6Bがコア11の中空部分に通される。電源線6Aは、直流電源5の正極に接続され、電源線6Bは直流電源5の負極に接続される。電源線6A,6Bは直流電路を構成し、たとえば上記のパワーコンディショナに接続される。
【0018】
励磁電源2は、交流電源21と抵抗22とを備える。交流電源21は、ZCT1を励磁するために、周波数fの交流電圧(励磁電圧)をZCT1の巻線12に印加する。
【0019】
検出回路3は、バンドパスフィルタ31と、全波整流回路32と、平滑回路33と、レベル検出回路34とを備える。
【0020】
バンドパスフィルタ31は、ZCT1の巻線12に接続されて、周波数fの第2高調波成分(2f成分)を巻線12の電圧から抽出する。バンドパスフィルタ31には公知の様々な構成を適用することができるので、ここではバンドパスフィルタ31の構成について詳細な説明を繰り返さない。また、フィルタの周波数帯域の上限および下限は、当該2f成分を抽出できるように適切に定められる。
【0021】
全波整流回路32は、バンドパスフィルタ31によって抽出された第2高調波成分を全波整流する。平滑回路33は、全波整流回路32の出力電圧を平滑化する。レベル検出回路34は、平滑回路33の出力電圧に基づいて、コア11を貫通する直流差電流の大きさを検出する。なお、以後の説明において「貫通電流」とはコア11を貫通する直流差電流を意味する。
【0022】
この実施の形態では、バンドパスフィルタ31によって抽出された第2高調波成分の平均値と、貫通電流の大きさとの間の相関関係を利用する。以下に説明する実施形態では、第2高調波成分の平均値と貫通電流の大きさとは比例関係にある。ただし、第2高調波成分の平均値と貫通電流の大きさとの間の相関関係を求めることができれば、その相関関係を利用して、第2高調波成分の平均値から貫通電流の大きさを求めることができる。したがって、この相関関係を比例関係に限定しなくてもよい。
【0023】
レベル検出回路34は、全波整流回路32によって全波整流され、平滑回路33によって平滑化された第2高調波成分により、第2高調波成分の強度を検出する。そして、レベル検出回路34は、上記の比例関係を利用して、その検出された第2高調波成分の強度から貫通電流の大きさを検出する。レベル検出回路34は、全波整流された第2高調波成分を増幅するためのアンプを含んでいてもよい。レベル検出回路34は、検出された貫通電流の大きさを示す信号を出力する。
【0024】
次に、直流地絡電流検出装置101の動作について、より詳しく説明する。直流地絡電流検出装置101の最小検出電流は予め定められている(たとえば10mA)。この実施の形態では、その最小検出電流が直流電路に流れたときにZCT1のコア11が飽和するように励磁電圧が設定される。
【0025】
地絡故障が生じていない場合、直流電源5から電源線6Aを通して流れる直流電流と電源線6Bから直流電源5に戻る直流電流との和は0である。この場合には、励磁電圧の波形は正負対称となる。しかしながら電源線6A,6Bからなる直流電路に地絡が生じた場合には、地絡故障点からグランドに地絡電流が流れる。このため、電源線6Aを通して流れる直流電流の大きさと電源線6Bを流れる直流電流の大きさとの間に差が生じる。この差に相当する電流(直流差電流)がコア11を貫通する。
【0026】
コア11を貫通する直流差電流、すなわち貫通電流により、励磁電圧の波形が非対称となる。たとえば、励磁電圧の正側のピークは、コア11の磁気飽和のために、あまり伸びない。しかし、その一方で、励磁電圧の負側のピークは、コア11がまだ磁気飽和していないために伸びやすくなる。
【0027】
このような励磁電圧の波形の歪みによって、周波数fの偶数倍の高調波成分が励磁電圧に重畳する。この実施の形態では、周波数fの偶数倍の高調波成分のうちの主な成分である第2高調波成分に着目する。この第2高調波成分がバンドパスフィルタ31によって励磁電圧から抽出される。レベル検出回路34は、全波整流回路32により全波整流され、平滑回路33によって平滑化された第2高調波成分により、第2高調波成分の強度(第2高調波成分の平均値)を検出する。そして、上記の比例関係を利用して、レベル検出回路34は、その検出された第2高調波成分の強度から貫通電流の大きさを検出する。貫通電流の流れる向きに依存して、バンドパスフィルタ31によって抽出された第2高調波成分は正の電圧あるいは負の電圧になる。しかし、第2高調波成分が正の電圧あるいは負の電圧のいずれであっても、全波整流回路32での全波整流によって、全波整流回路32からは正の電圧が出力される。したがって貫通電流の流れる方向が、図1中の破線の矢印に示した方向および、その逆方向のいずれであっても、レベル検出回路34は、平滑回路33の出力電圧から、貫通電流の大きさを検出できる。
【0028】
なお、この実施の形態では、バンドパスフィルタによって抽出される偶数次の高調波成分は第2高調波成分である。しかしながら、バンドパスフィルタにより抽出される偶数次の高調波成分は第2高調波成分であると限定しなくてもよい。第2高調波成分以外の偶数次の高調波成分をバンドパスフィルタによって抽出するようにバンドパスフィルタが構成されていてもよい。
【0029】
図2は、図1に示したコア11の励磁を説明するためのコア11のヒステリシス曲線の模式図である。図2を参照して、磁場を正方向および負方向に交互にコア11に印加したときの磁化曲線(ヒステリシス曲線)が模式的に示される。グラフの縦軸Bは磁束密度を表わし、横軸Hは磁場を表わす。
【0030】
破線の枠で示された範囲は、交流電源21からの励磁電圧をコア11に印加したときの磁場Hおよび磁束Bの変化の範囲を示す。この実施の形態では、地絡が発生していない場合には、コア11が磁気飽和する少し前の状態となるように励磁電圧を印加する。
【0031】
地絡発生により、コア11を貫通する直流差電流が発生する。すなわち貫通電流が発生する。最小検出電流以上の貫通電流が流れた場合、コア11が一方向(Hの正方向あるいは負方向)に磁気飽和を起こす。一方向の磁気飽和により、励磁電圧の波形が正負非対称となる。この励磁電圧の波形の非対称性によって、励磁電圧の第2高調波成分が発生する。なお、磁気飽和を起こす方向は、貫通電流の流れる向きに依存する。
【0032】
貫通電流が大きくなるほど、励磁電圧の波形の歪みが大きくなり、励磁電圧の波形の非対称性が強調される。したがって第2高調波成分が大きくなる。第2高調波成分のレベルと貫通電流の大きさとの間の相関関係は、たとえば実験により予め求められ、図1のレベル検出回路34は、その相関関係を保持する。第2高調波成分のレベルと貫通電流の大きさとが比例する場合、レベル検出回路34は、その比例関係の比例係数を保持する。レベル検出回路34は、第2高調波成分のレベルを検出し、第2高調波成分のレベルと、上記の比例係数とを利用して、貫通電流の大きさを検出する。
【0033】
図3は、ZCT1のコア11を貫通する直流差電流(貫通電流)を変化させたときの励磁電圧の波形の変化を示した図である。(A)は、貫通電流が0mAのときの励磁電圧の波形図である。(B)は、貫通電流が20mAのときの励磁電圧の波形図である。(C)は、貫通電流が50mAのときの励磁電圧の波形図である。(D)は、貫通電流が100mAのときの励磁電圧の波形図である。図3(A)〜(D)に示されるように、貫通電流が増加するほど励磁電圧の負側のピークが伸びる。このために励磁電圧の波形は正負非対称となる。
【0034】
図4は、貫通電流と、第2高調波成分の強度との間の関係を示した図である。図4を参照して、グラフの横軸は貫通電流を示し、グラフの縦軸はバンドパスフィルタ31の出力電圧を、全波整流回路32で全波整流し、平滑化回路33で平滑化し、さらに、アンプで増幅することにより得られた電圧を示す。図4に示されるように、10mA〜100mAの範囲内の貫通電流に対して、アンプの出力電圧はほぼ比例している。したがって上記のように、レベル検出回路34は、第2高調波成分のレベルと貫通電流の大きさとの間の比例係数と、第2高調波成分のレベルとから貫通電流の大きさを検出する。
【0035】
以上のように、この実施の形態によれば、直流地絡電流検出装置101の最小検出電流が直流電路(電源線6A,6B)に流れたときにZCT1のコア11が飽和するように励磁電圧が設定される。最小検出電流が直流電路を流れる(コア11を貫通する)ときに、バンドパスフィルタ31によって、励磁電圧の第2高調波成分を抽出することができる。この抽出された第2高調波成分の強度を検出することによって、地絡電流の大きさを検出することができる。
【0036】
この実施の形態によれば、特開2000−182503号公報(特許文献1)に記載された従来の方法のように、検出された地絡電流と等しい逆方向の補正電流を、その補正電流と地絡電流との和が零となるまで流し続けなくてもよい。したがって、従来の方法に比べて地絡電流の検出時間を早めることができる。たとえば、交流電圧の周波数を60Hzとすれば、理想的には交流電圧の1周期(=1/60秒)で地絡電流を検出可能である。
【0037】
さらに、この実施の形態によれば、最小検出電流が直流電路に流れることによってコア11が飽和するように励磁電圧が設定される。励磁電圧を変化させることにより最小検出電流も変化する。言い換えると、直流地絡電流検出装置101の感度を励磁電圧によって調整することができる。これにより、たとえば直流地絡電流検出装置101の感度を高くすることができるので、より微小な地絡電流を検出することができる。
【0038】
また、特開2000−182503号公報(特許文献1)に記載された構成によれば、特性のほぼ同じ2つのコアを必要とするために、装置の構成が複雑となり、したがってコストを低減することが難しい。一方、この実施の形態では磁性体のコアは1つで足りるので、直流地絡電流検出装置の構成を簡易にすることができる。さらに、装置のコストの低減を図ることができる。
【0039】
なお、この実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の構成は図1に示すように限定されるものではない。
【0040】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の他の構成を示した図である。図5を参照して、検出回路3は、図1に示した構成要素に加えて、アンプ35と、比較電圧発生回路36と、比較回路37とをさらに備える。
【0041】
アンプ35は、平滑回路33の出力電圧を増幅する。比較回路37は、アンプ35から出力された電圧を、比較電圧と比較する。比較電圧発生回路36は、アンプ35の出力電圧と比較される比較電圧を発生させる。
【0042】
直流地絡電流検出装置101は、さらに報知回路4を備える。報知回路4は、比較回路37の出力信号に基づいて、直流地絡の発生を報知する。報知の実現手段は特に限定されず、たとえばブザーによって音を発生させてもよく、LEDなどの発光装置によって光を発生させてもよい。比較回路37は、アンプ35の出力電圧が比較電圧より高いか否かを示す信号を出力する。第2高調波成分のレベルが比較電圧より高いことを比較回路37の出力信号が示す場合に、報知回路4が、たとえば光あるいは音等により報知を行なう。
【0043】
たとえば比較電圧は、貫通電流が、直流地絡電流検出装置10によって地絡を報知すべき電流に等しいときのアンプ35の出力電圧となるように設定される。これにより、報知回路4で地絡の発生を報知することができる。
【0044】
なお、図5に示した構成からレベル検出回路34を省略することもできる。この場合には、地絡電流の大きさは検出できないものの、地絡電流が発生したことを比較回路37によって検出することができる。
【0045】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る直流地絡電流検出装置は、貫通電流の流れる方向を判別することができる。図6は、本発明の第2の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の概略構成図である。図1および図6を参照して、実施の形態2に係る直流地絡電流検出装置102は、検出回路3に代えて検出回路3Aを備える。検出回路3Aは、正側ピーク検出回路41と、負側ピーク検出回路42と、比較回路43とを備える点において、図1に示した検出回路3の構成と異なる。
【0046】
正側ピーク検出回路41は、励磁電圧の正側のピークを検出して、正側ピークの大きさを示す信号を出力する。負側ピーク検出回路42は、励磁電圧の負側のピークを検出して、負側ピークの大きさを示す信号を出力する。正側ピーク検出回路41および負側ピーク検出回路42には、たとえばピークホールド回路など公知の回路を用いることができる。
【0047】
比較回路43は、正側ピーク検出回路41および負側ピーク検出回路42の出力信号を受けて、正側ピークおよび負側ピークのいずれが大きいかを示す信号を出力する。たとえば図6中の破線の矢印で示した向きに貫通電流が流れる場合に、励磁電圧の負側のピークが励磁電圧の正側のピークよりも大きくなるとする。この場合には、破線の矢印と逆向きに貫通電流が流れることで、励磁電圧の正側のピークが励磁電圧の負側のピークよりも大きくなる。貫通電流の流れる向きと、励磁電圧の正側ピークおよび負側のピークの大小との関係は、上記の関係と逆でもよく、いずれの場合にも、比較回路43の出力信号から励磁電圧の正側のピークと励磁電圧の負側のピークとのどちらが大きいかを判別することができる。したがって、比較回路43の出力信号から、貫通電流の流れる方向を判別することができる。
【0048】
上記以外の直流地絡電流検出装置102の構成は、直流地絡電流検出装置101の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。実施の形態2によれば、実施の形態1による効果に加えて、貫通電流の流れる方向を判別することができる。
【0049】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る直流地絡電流検出装置の他の構成を示した図である。図7を参照して、検出回路3Aは、図6に示した構成要素に加えて、アンプ35と、比較電圧発生回路36と、比較回路37とをさらに備える。さらに、直流地絡電流検出装置102は、報知回路4を備える。すなわち、図7に示された検出回路3Aの構成は、図5に示された検出回路3の構成に、正側ピーク検出回路41と、負側ピーク検出回路42と、比較回路43とを追加したものである。
【0050】
上記の通り、たとえば比較電圧は、貫通電流が、直流地絡電流検出装置10によって地絡を報知すべき電流に等しいときのアンプ35の出力電圧となるように設定される。これにより、報知回路4Aで地絡の発生を報知することができる。
【0051】
さらに、図7に示した構成からレベル検出回路34を省略することも可能である。この場合にも、地絡電流の大きさは検出できないものの、比較回路37によって地絡電流が発生したことを検出することができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 零相変流器(ZCT)、2 励磁電源、3,3A 検出回路、4 報知回路、5 直流電源、6A,6B 電源線、11 コア、12 巻線、21 交流電源、22 抵抗、31 バンドパスフィルタ、32 全波整流回路、33 平滑回路、34 レベル検出回路、35 アンプ、36 比較電圧発生回路、37,43 比較回路、41 正側ピーク検出回路、42 負側ピーク検出回路、101,102 直流地絡電流検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電路の地絡によって前記直流電路に流れる直流差電流を検出する直流地絡電流検出装置であって、
磁性体からなる中空のコアおよび前記コアに巻回された巻線を有する零相変流器と、
前記零相変流器の前記巻線に交流の励磁電圧を印加するための励磁電源と、
前記零相変流器の前記巻線の電圧から、前記励磁電圧の偶数次の高調波成分を抽出して、前記偶数次の高調波成分に基づいて、前記コアを貫通する前記直流電路に流れる前記直流差電流を検出する検出回路とを備え、
前記直流地絡電流検出装置の最小検出電流として予め定められた電流が前記直流電路に流れたときに前記コアが磁気飽和するように、前記励磁電圧が設定される、直流地絡電流検出装置。
【請求項2】
前記検出回路は、
前記偶数次の高調波成分を前記励磁電圧から抽出するためのバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタの出力電圧を全波整流するための全波整流回路と、
前記全波整流回路の出力電圧を平滑化するための平滑回路と、
前記平滑回路の出力電圧と前記直流電路に流れる前記直流差電流との間の予め求められた相関関係に従って、前記平滑回路の出力電圧から前記直流差電流の大きさを検出するレベル検出回路とを含む、請求項1に記載の直流地絡電流検出装置。
【請求項3】
前記検出回路は、
前記平滑回路の出力電圧を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力電圧を、比較電圧と比較する比較回路と、
前記比較電圧を発生させる比較電圧発生回路とをさらに含み、
前記比較電圧は、前記直流電路に流れる直流差電流が、前記直流地絡電流検出装置によって地絡を報知すべき電流に等しいときの前記増幅回路の出力電圧である、請求項2に記載の直流地絡電流検出装置。
【請求項4】
前記検出回路は、
前記励磁電圧の正側のピークを検出するための第1のピーク検出回路と、
前記励磁電圧の負側のピークを検出するための第2のピーク検出回路と、
前記第1のピーク検出回路により検出された前記正側のピークと、前記第2のピーク検出回路により検出された前記負側のピークとを比較して、前記直流電路に流れる前記直流差電流の極性を示す信号を出力する比較回路とをさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の直流地絡電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110925(P2013−110925A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256136(P2011−256136)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000214560)長谷川電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】