説明

直流給電システム

【課題】直流電源装置が接続される直流バスの電圧を安定にする直流給電システムを提供する。
【解決手段】分散電源装置と、前記分散電源装置を負荷に接続する直流バスと、複数の直流電源装置と、前記直流バスに複数の直流電源装置をそれぞれ接続するコンバータと、前記複数のコンバータを制御する制御器とを備える。前記制御器は、前記分散電源装置より直流バスに供給される電圧が所定電圧より低下するとき、少なくとも1つのコンバータによって1つの直流電源装置から直流バスへ電力供給し、他の少なくとも1つのコンバータによって、前記直流バスの電圧を所定値に保つように直流バスから他の直流電源装置へ電力を供給するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流給電システムに関し、特に、直流電源装置及び負荷が接続される直流バスの電圧を安定化する直流給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置、風力発電装置、燃料電池のような分散電源装置が普及し始め、分散電源装置より負荷へ直流給電する直流給電システムが検討されているが、分散電源装置は、出力電圧が不安定であるので、直流給電システムの出力安定化が要望されている。
電源装置の出力電圧の安定化技術として、無停電電源装置においては、商用交流電源から入力される交流を直流に変換するAC/DC変換器を、商用交流電源が停電した後の復旧時にソフトスタートすることが公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、複数の組電池を並列接続して、各組電池が出力する電力を各コンバータを介して負荷に供給する場合、各コンバータの出力電流を制御することにより、出力電圧を安定化する技術が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3497688号公報
【特許文献2】特開2007−329019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の出力電力安定化技術は、商用交流電源を使用する無停電電源装置を対象とするものや複数の組電池の出力電圧を制御するものである。
本発明は、上記出力電圧制御技術を応用して、分散電源装置及び直流電源装置が接続される直流バスの電圧を安定にする直流給電システムを提供するものである。特に、太陽光発電装置、風力発電装置、燃料電池のように自然再生エネルギーを利用した分散電源装置より直流電源を供給する直流給電システムに好適に利用されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の直流給電システムは、分散電源装置と、前記分散電源装置を負荷に接続する直流バスと、複数の直流電源装置と、前記直流バスに複数の直流電源装置をそれぞれ接続するコンバータと、前記複数のコンバータを制御する制御器とを備え、前記制御器は、前記分散電源装置より直流バスに供給される電圧が所定電圧より低下するとき、少なくとも1つのコンバータによって1つの直流電源装置から直流バスへ電力供給し、他の少なくとも1つのコンバータによって、前記直流バスの電圧を所定値に保つように直流バスから他の直流電源装置へ電力を供給するように制御することを特徴とする。
このようにコンバータを制御することにより、1つの直流電源装置から直流バスへ電力供給するとき、他の直流電源装置へ電力供給するように制御するので、直流バスの電圧の異常上昇を抑え、電圧を安定化させることができる。
【0006】
また、本発明の直流給電システムは、実施形態において、前記複数の直流電源装置は、それぞれ蓄電池であり、前記制御器は、少なくとも1つのコンバータが蓄電池から直流バスへ放電するとき、他の少なくとも1つのコンバータは直流バスから蓄電池を充電するように制御する。
このように、制御器は、少なくとも1つのコンバータが蓄電池から直流バスへ放電するとき、他の少なくとも1つのコンバータが直流バスから蓄電池を充電するように制御するので、直流バスの電圧の異常上昇を抑え、電圧を安定化させることができる。
【0007】
また、本発明の直流給電システムは、実施形態において、前記制御器は、蓄電量の多い蓄電池を放電し、蓄電量の少ない蓄電池を充電するよう制御する。
このように制御器が動作するので、蓄電池の充電量の平準化を測ることができ、その結果、各蓄電池の充電量を余力を残すことなく有効に活用することができる。
【0008】
また、本発明の直流給電システムは、実施形態において、前記直流バスに、更に、商用交流電源装置を接続したものである。
本発明の直流給電システムは、直流バスに商用交流電源装置を接続するので、商用交流電源装置から電力を購入(買電)することが可能であるとともに、本発明の直流給電システムより商用交流電源装置へ電力を販売(売電)することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散電源装置及び直流電源装置が接続される直流バスの電圧を安定に制御する直流給電システムが提供される。そのため、太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置、潮力発電装置または太陽熱発電装置のように自然再生エネルギーを利用した発電装置、または燃料電池またはエンジン式発電装置のような分散電源装置のように、出力電圧変動が大きくても、安定な出力電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の直流給電システムを表す実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の直流給電システムの制御特性と、本発明の直流給電システムのように制御しなかった場合の制御特性を比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の直流給電システムは、分散電源装置と、前記分散電源装置を負荷に接続する直流バスと、複数の直流電源装置と、前記直流バスに複数の直流電源装置をそれぞれ接続するコンバータと、前記複数のコンバータを制御する制御器とを備える。そして、前記制御器は、前記分散電源装置より直流バスに供給される電圧が所定電圧より低下するとき、少なくとも1つのコンバータによって1つの直流電源装置から直流バスへ電力供給し、他の少なくとも1つのコンバータによって、前記直流バスの電圧を所定値に保つように直流バスから他の直流電源装置へ電力を供給するように制御するものである。
【0012】
上記分散電源装置は、太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置、潮力発電装置または太陽熱発電装置のように自然再生エネルギーを利用した発電装置、または燃料電池、エンジン式発電装置を含む。
上記直流電源装置は、蓄電池を含み、充放電可能な電源装置である。この直流電源装置は複数備えられ、それぞれ直流バスに接続される。
また、上記直流バスは、複数の直流電源装置、負荷及び系統電力が接続され、負荷へ電力を供給するため、屋内に配線される電源供給線であり、例えば、家庭用の直流バスの場合、400V×5A程度の電流容量を有するのが好ましい。
また、上記コンバータは、直流電源装置の出力電圧が直流バスの電圧に一致するよう昇圧または降圧し、また直流バスの電圧を直流電源装置の電圧に一致するよう降圧または昇圧し、直流バスより蓄電池を充電し、または蓄電池より直流バスへ放電するコンバータである。従って、上記コンバータは、電圧変換と、充電制御及び放電制御機能を備える。
また、制御器は、複数のコンバータに対して共通の制御器が1つ備えられ、制御器は複数のコンバータを制御し、直流電源装置から直流バスへ電力供給するよう、または直流バスから直流電源装置へ電力を吸収するよう制御する。ここで、電力を吸収するとは、通常、蓄電池に充電することであり、本発明でもそのように使うが、負荷またはダミー負荷によって、電力を消費してもよい。
また、本発明は、実施形態において、直流バスに商用交流電源装置が接続されるが、商用交流電源装置は、電力会社から電力を購入することが可能な電源装置であり、本発明では商用交流電源装置から電力を購入(買電)することが可能であるとともに、本発明の直流給電システムより商用交流電源装置へ電力を販売(売電)することが可能である。
【0013】
以下には、本発明の直流給電システムを実施形態により説明する。
図1は、本発明の直流給電システムを表す実施形態のブロック図である。図1に示すように、本発明の直流給電システムは、直流バス1に、太陽光発電システム2と、少なくとも2系統の直流電源装置3と、系統電力システム4と、負荷5を接続して、構成される。このように、直流バス1に、太陽光発電システム2と、直流電源装置3と、系統電力システム4が接続され、太陽光発電システム2、直流電源装置3または系統電力システム4より、負荷5に電力を供給する。従って、直流バス1を屋内配線することにより、屋内に存在する電気機器に直流電力を供給することができる。図1は、直流バス1、太陽光発電システム2、系統電力システム4及び負荷5をそれぞれ1つ示すが、これらの個数は制限がなく、1つでも複数でもかまわない。
【0014】
直流バス1の規定値電圧(所定電圧)V1は、直流電源装置3の出力設定電圧と等しく設定され、また太陽光発電システムの出力設定電圧V2は、直流バス1の規定値上限電圧V4以下とし、系統電力システム4の出力電圧V3は、直流バス1の規定値下限電圧V5以上になるよう設定される。直流バス1の規定値電圧V1は、例えば、380Vのように固定された電圧であることが理想であるが、この発明では350〜400Vの間の電圧であるとする。350〜400Vは、一例であり、これより狭い電圧範囲、またはこれより広い電圧範囲に設定してもかまわない。
また、規定値上限電圧V4は、直流バス1の規定値電圧V1の10%〜20%増である。規定値下限電圧V5は、直流バス1の規定値電圧V1の10%〜20%減である。
上記規定値上限電圧V4は、直流バス1の規定値電圧V1の10%〜20%増及び規定値下限電圧V5は、直流バス1の規定値電圧V1の10%〜20%減としたが、この設定は厳密ではなく、本発明の直流給電システムに接続される負荷の正常動作電圧範囲によって設定するとよい。即ち、電圧変動があっても正常に動作する負荷が接続される場合は、負荷が正常動作する電圧範囲に設定すればよく、また、電圧変動があった場合に正常動作しない負荷の場合は、その負荷が正常動作する電圧範囲になるように設定する。また、規定値上限電圧V4と規定値下限電圧V5の絶対値は、異なっていてもよい。
【0015】
また、太陽光発電システム2の出力設定電圧V2は、直流バス1の規定値上限電圧V4以下であり、かつ直流バス1の規定値電圧V1以上であれば、太陽光発電システム2の出力電力を、直流電源装置3及び系統電力システム4の出力よりも優先的に使用することができ、自然再生エネルギーまたは分散電源装置より供給される電力を有効に利用することができる。また、系統電力システム4の出力設定電圧V3は、直流バス1の規定値下限電圧V5以上であり、かつ直流バス1の規定値電圧V1以下であれば、直流電源装置3の出力電力を系統電力システム4の電力よりも優先的に使用することができ、直流電源装置3に蓄電された電力を有効に利用することができる。
【0016】
太陽光発電システム2は、太陽電池パネル21と、DC/DC変換器22とで構成される。この実施形態は、太陽光発電システムを分散電源装置の代表として説明するが、分散電源装置としては、風力発電装置、水力発電装置、潮力発電装置または太陽熱発電装置のように自然再生エネルギーを利用した発電装置、または燃料電池またはエンジン式発電装置であってもかまわない。
太陽電池パネル21は、結晶型太陽電池、多結晶型太陽電池または薄膜型太陽電池よりなり、ここでは、例えば、発電出力が1900W、出力電圧が280Vの多結晶太陽電池が使用される。
DC/DC変換器22は、太陽電池パネル21によって発電された直流出力電圧を、直流バス1の規定値電圧(例えば、380V、または350から400Vの間)に変換するものであり、直流バス1の電圧と電流の両方を検出して、直流バス1の規定値電圧V1(例えば、380V)以下においては、太陽電池パネル21を最大電力点追従(MPPT)制御する。しかし、直流バス1の規定値電圧V1に達した場合は、直流バス1の規定値電圧V1を維持する制御に切り替える。
【0017】
直流電源装置3は、蓄電池31と双方向DC/DCコンバータ32を備え、少なくとも2つの系統により構成される。図1において、2つの系統を区別するため、一方に符号aを付け、他方に符号bを付ける。直流電源装置3は、2つ以上の系統であれば、いくつでもよい。
蓄電池31は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、定格電圧48V(例えば、10直列、1並列)で構成される。ここでは、リチウムイオン二次電池を代表的に示したが、鉛電池またはニッケル電池などその他の電池でも使用可能である。
【0018】
上記双方向DC/DCコンバータ32は、蓄電池31の出力電圧を直流バス1の規定値電圧V1に一致するよう昇圧し、また直流バス1の規定値電圧V1を蓄電池32の電圧に一致するよう降圧する双方向DC/DCコンバータである。双方向DC/DCコンバータ32は、直流バス1から蓄電池31の方向に電流を制御するとき(矢印E)、充電動作であり、蓄電池31から直流バス1の方向に電流を制御するとき(矢印F)、放電動作である。双方向DC/DCコンバータ32は、リアクトル、コンデンサ及び4つの半導体スイッチを用い、放電及び充電の選択、並びに出力電圧値、電流値の調整を4つの半導体スイッチの開閉により行うものであり、このような双方向コンバータは、例えば、特開2006-87197号公報、特開2007-274778号公報により公知である。双方向コンバータ32は、放電制御部と充電制御部のように分けて構成することが可能である。
2つの系統の蓄電池システム3は、同じ蓄電池31及び同じ双方向DC/DCコンバータを使用し、同じ蓄電池容量及び同じ電流容量を有することが望ましいが、本発明の直流給電システムが有効に動作するためには、蓄電池容量及び同じ電流容量の差は、2倍〜1/2倍程度であるとよい。これ以上の差があると、制御を有効にすることができなくなり、本発明の効果が得られなくなる可能性がある。
【0019】
2つの系統の蓄電池システム3は、それぞれDC/DCコンバータ32a、32bを備え、DC/DCコンバータ32a、32bは、1つの制御器33によって制御される。制御器33は、直流バス1の電圧が低下して、DC/DCコンバータ32a、またはDC/DCコンバータ32bがスイッチング動作を開始するとき、一方のDC/DCコンバータを放電方向に制御し、他方のDC/DCコンバータを充電方向に制御する。ここで、直流バス1の電圧が低下するときは、例えば、太陽光発電システム2の出力電圧が直流バス1の規定値電圧V1以下に低下したとき、または直流バス1に負荷5が接続されたときであり、DC/DCコンバータの半導体スイッチをスイッチング休止状態からスイッチング動作開始状態へ変化する。
また、このように2つの双方向コンバータ32a、32bを備えるので、低消費電力負荷が接続されるときは、1つの双方向コンバータだけを動作させると、高効率動作させることができる。
【0020】
系統電力システム4は、商用交流電源を供給する系統電力41と双方向インバータ42よりなり、双方向インバータ42は、直流バス1の直流を系統電力41の交流に変換し、または系統電力41の交流を直流給電部1の直流に変換する。双方向インバータ42は、DC/ACインバータと、DC/ACインバータに分けてもよいが、ここでは双方向インバータとして説明する。直流バス1の直流電力を系統電力41に出力する場合は、売電であり、系統電力41から直流バス1に出力する場合は買電である。
【0021】
負荷5は、家庭で使用されるようなエアコン、テレビまたは冷蔵庫であるが、洗濯機、電気調理器、ドライヤー、照明装置またはパソコンのような電気機器であってもよい。また本発明の直流給電システムがオフィスで使用される場合は、コンピュータ、複写機またはファクシミリのような電気機器であってもよい。また店舗で使用されるショーケースまたは照明装置であってもよい。この実施形態では、DC駆動エアコン51、DC駆動TV52及びDC駆動冷蔵庫53を示す。
【0022】
本発明の直流給電システムは、以上のように構成され、次のように動作する。
図2は、本発明の直流給電システムの制御特性と、本発明の直流給電システムのように制御しなかった場合の制御特性を比較して示し、制御器33が、双方向DC/DCコンバータ32を制御したときの直流バス1の電圧変化及び電流変化を示す。図2の上側に電圧変化、下側に電流変化を示す。図2の横軸は任意時間、縦軸は電圧を示す。縦軸のV1は、直流バス1の規定値電圧(所定電圧)を示す。規定値電圧は380Vのように固定電圧が望ましいが、350V〜400Vの範囲にあるとする。V4は、直流バス1の規定値上限電圧を示し、規定値電圧V0の10%〜20%増である。V5は、直流バス1の規定値下限電圧を示し、規定値電圧V0の10%〜20%減である。
【0023】
図2において、最初(T0)、太陽光発電システム2が発電動作して、DC/DCコンバータ22は、直流バス1の規定値電圧V1より高く、規定値上限電圧V4以下の電圧を供給している。従って、太陽光発電システム2より直流バス1に供給される電圧は、直流バスの規定値電圧V1と、規定値上限電圧V4の間にある。このように太陽光発電システム2より十分な直流電力が供給されているので、蓄電池システム2の双方向DC/DCコンバータ32及び系統電力システム4の双方向インバータ42は、動作休止している。即ち、双方向DC/DCコンバータ32及び双方向インバータ42の半導体スイッチング素子は動作していない状態であり、従って、直流電源装置3及び系統電力システム4から直流バス1に電力が供給されていない状態であり、太陽光発電システム2より負荷5に電力が供給されている。もし、負荷5で消費されなかった電力がある場合は、双方向コンバータ32を充電方向に制御して、蓄電池31を充電するか、または系統電力システム4により、系統電力に売電される。
【0024】
その後、太陽光発電システム2は、太陽光の照射が弱くなり、または夕方になり発電出力が低下した。そのため、直流バス1への供給電圧は、図2の右下がりの線で示すように低下した。または、直流バス1に負荷が接続され、直流バス1の電圧が低下した。右下がりの線は、電圧が低下することを表すものであり、直線的に電圧が低下することを表すものではない。
このように、直流バス1の電圧が規定値電圧V1以下に低下したとき(T1)、その電圧低下を検出し、直流電源装置3の双方向DC/DCコンバータ32が動作するよう制御部33が制御する。つまり、制御部33は、直流バス1の電圧検出部より、規定値電圧V1以下の電圧低下信号を受け、DC/DCコンバータ32の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を開始させる。このように、直流電源装置3aまたは3bが放電動作を開始すると、直流電源装置3aまたは3bより電流曲線(b)に示すように電流が供給されるため、その電圧は、直流バス1の規定値上限電圧V4より高くなる。例えば、直流バス1の電圧は、図2の立上り線(a1)及び変化曲線(a2)のように上昇し、規定値上限電圧V4を超えることがある。ここで、立上り線(a1)と、変化曲線(a2)は、分けて説明したが、この2つの線は1つの連続した動作曲線である。このように、規定値上限電圧V4を超えるか、または規定値上限電圧V4を超えないとしても太陽光発電システム2の出力設定電圧V2より大きくなることがある。このように、直流バス1の電圧が上昇すると、負荷5の正常動作電圧範囲を超えるので、負荷は異常動作をするようになる。
【0025】
本発明の直流給電システムは、図2の変化曲線(a2)に示すような上昇を抑えるものである。そのため、2つ以上の直流電源装置を備え、一方の直流電源装置に備えられた双方向DC/DCコンバータを放電に制御し、他方を充電に制御する。
即ち、図2の上昇曲線(c)は直流電源装置3aのDC/DCコンバータ32aが放電動作するときの放電電流の変化を示し、図2の下降曲線(d)は直流電源装置3bのDC/DCコンバータ32bが充電動作するときの充電電流の変化を示す。このように、直流電源装置3aのDC/DCコンバータ32aは、図2の上昇曲線(c)のように放電方向に制御するので、直流バス1の電圧を上昇させる。しかし、DC/DCコンバータ32bは、図2の下向き曲線(d)のように充電方向に制御し、直流バス1の電圧を下降させる。このとき、DC/DCコンバータ32bの充電量は、直流バス1の電圧が所定値、例えば、規定値電圧V1になるように、DC/DCコンバータ32aの放電量に対応するように制御する。このように、DC/DCコンバータ32aは、放電方向に制御し、DC/DCコンバータ32bは、充電方向に制御するので、直流電源装置3aのDC/DCコンバータ32aと、直流電源装置3bのDC/DCコンバータ32bの電流変化を合わせた電流変化は、曲線(t)のように変化の少ない曲線になる。その結果、直流バス1の電圧は、立上り線(s1)と、変化曲線(s2)に示すように電圧変動が少なくなる。ここでも、立上り線(s1)と、変化曲線(s2)は1つの連続した動作曲線である。そのため、直流バス1の電圧変動は、太陽光発電システム2の出力設定電圧V2と、商用電源システム4の出力設定電圧V3の範囲内に抑えることができる。
【0026】
上記上昇曲線(c)と電流曲線(b)が異なるのは、本発明の直流給電システムでは、DC/DCコンバータ32aを放電方向に制御し、DC/DCコンバータ32bを充電方向に制御することにより、直流バス1の電圧変動が少なくなったため、上昇曲線(c)の変動が少なくなるためである。一方、本発明の直流給電システムのように、DC/DCコンバータ32aを放電方向に制御し、DC/DCコンバータ32bを充電方向に制御しない場合、つまりDC/DCコンバータ32a及びDC/DCコンバータ32bを放電方向に制御する場合、DCバス電圧が(変化曲線a2)に示すように増加し、変化曲線(b)に示すように電流が増加する。このように、直流バス1が高電圧になると、負荷は電圧×電流、即ち電力が一定になるように作用するため、負荷に供給される電流が減少し、そのため電流曲線(b)は、上昇曲線(c)の変化より変化が大きくなる。
【0027】
電流変化を曲線(t)に示すように、変化を少なくし、直流バス1の電圧を、太陽光発電システム2の出力設定電圧V2と、商用電源システム4の出力設定電圧V3の範囲内に抑えるために、2つの蓄電池システム3は、同じ蓄電池容量及び同じ電流容量を有する蓄電池31及び双方向DC/DCコンバータ32を使用することが望ましい。しかし、2つの蓄電池の蓄電池容量及び双方向DC/DCコンバータの電流容量の差は2倍〜1/2倍程度であれば、本発明の直流給電システムを有効に動作することができる。そして、制御部33は、DC/DCコンバータ32aの充電電流と、DC/DCコンバータ32bの放電電流を、正負逆であるが同様の変化率で、同様の変化幅で同時に変化するよう制御する。
そして、直流バス1の電圧が規定値電圧に達したとき(T2)、制御部33は、その放電電流と充電電流のままにDC/DCコンバータ32aの充電動作と、DC/DCコンバータ32bの放電動作を継続させる。
【0028】
以上には、T1のとき、直流電源装置3aまたは3bが動作すると、直流バス1の電圧が異常上昇する場合を説明したが、T0からT1の間で、電気調理器、ドライヤー、冷蔵庫、テレビあるいはエアコンのように消費電力の大きい電気機器が直流バス1に接続されたとき、または太陽光発電装置2の出力低下量が更に大きいとき、直流バス1は、更に電圧低下し、規定値下限電圧V5に限りなく近づくことがある。そのような場合、制御部33がDC/DCコンバータ32aを充電動作、DC/DCコンバータ32bを放電動作に制御すると、直流バス1は規定値電圧に達しないか、時間遅れが生じする。そのため、直流バス1の電圧が規定値下限電圧V5に近づくように低下したことを検出したときは、DC/DCコンバータ32a及びDC/DCコンバータ32bの両方を放電動作するよう制御して、直流バス1を規定値電圧V1になるよう制御する。
【0029】
また、図2に示したT0からT1の変化と逆に、太陽光発電装置のような分散電源装置の出力が大きく増加したとき、または電気調理器、ドライヤーあるいはエアコンのように消費電力の大きい電気機器が切り離されたとき、直流バス1の電圧は上昇する方向に変化する。このような場合にも、DC/DCコンバータ32aまたはDC/DCコンバータ32bだけを充電動作するよう制御すると、直流バス1は規定値上限電圧V4を超えることがある。あるいは、規定値上限電圧V4をこえないとしても太陽光発電システムの出力設定電圧V1以上になることがある。
このような場合に、本発明の直流給電システムは、制御部33によって直流電源装置3bのDC/DCコンバータ32bは充電動作し、直流電源装置3aのDC/DCコンバータ32aは放電動作するように制御する。このように制御することにより、直流電源装置3aのDC/DCコンバータ32aと、直流電源装置3bのDC/DCコンバータ32bの電流変化を合わせた電流変化は、変化の少ない曲線になる。その結果、直流バス1は、電圧変動が少なくなる。そのため、直流バス1の電圧変動は、太陽光発電システム2の出力設定電圧V2と、商用電源システム4の出力設定電圧V3の範囲内に抑えることができる。
【0030】
また、上記実施形態は、直流電源装置として、蓄電池を備えた直流電源装置を説明したが、系統電力システム4は、直流バス1へ電力供給し、または直流バス1より電力吸収が可能であるので、直流バス1に電力供給または電力吸収するようにインバータを制御することにより、上記実施形態と同様の動作、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 直流バス
2 太陽光発電システム
3 直流電源装置
4 系統電力システム
5 負荷
21 太陽電池パネル
22 DC/DCコンバータ
31 蓄電池
32 双方向DC/DCコンバータ
33 制御部
41 系統電力
42 双方向インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散電源装置と、
前記分散電源装置を負荷に接続する直流バスと、
複数の直流電源装置と、
前記直流バスに複数の直流電源装置をそれぞれ接続するコンバータと、
前記複数のコンバータを制御する制御器と
を備え、
前記制御器は、前記分散電源装置より直流バスに供給される電圧が所定電圧より低下するとき、少なくとも1つのコンバータによって1つの直流電源装置から直流バスへ電力供給し、他の少なくとも1つのコンバータによって、前記直流バスの電圧を所定値に保つように直流バスから他の直流電源装置へ電力を供給するように制御することを特徴とする直流給電システム。
【請求項2】
前記複数の直流電源装置は、それぞれ蓄電池であり、前記制御器は、少なくとも1つのコンバータが蓄電池から直流バスへ放電するとき、少なくとも他の1つのコンバータが直流バスから蓄電池を充電するように制御する請求項1に記載の直流給電システム。
【請求項3】
前記制御器は、蓄電量の多い蓄電池を放電し、蓄電量の少ない蓄電池を充電するよう制御する請求項1または2に記載の直流給電システム。
【請求項4】
前記直流バスに商用交流電源装置を接続した請求項1から3までのいずれか1項に記載の直流給電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−95418(P2012−95418A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239718(P2010−239718)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】