説明

直線運動案内機構付アクチュエータ

【課題】中空のロータの振れ回りを低減できる直線運動案内機構付アクチュエータを提供する。
【解決手段】中空のロータ21は、スプラインナット22bを囲む筒状の周壁部20a及びこの周壁部20aの軸線方向の一端を塞ぐ底壁部20bを有する第一のキャップ20と、スプラインナット22bが収容された第一のキャップ20に嵌められる第二のキャップ19と、第一及び第二のキャップ20,19のいずれか一方に結合されるモータ15のロータ部18と、を備える。所定の嵌め合い長さL3を持って互いに嵌まり合う第一及び第二のキャップ20,19によって、スプラインナット22bが覆われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸を直線運動可能に案内すると共に、当該軸を軸線の回りに回転させる直線運動案内機構付アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装するチップマウンタのヘッド軸には、吸着パッドをZ軸方向に移動させ、かつ吸着パッドをZ軸の回りにθ方向に回転させる直線・回転複合アクチュエータ(言い換えればZ・θアクチュエータ)が組み込まれる。吸着パッドをZ軸方向へ移動させることによって、基板の表面に電子部品を載せることが可能になり、吸着パッドをθ方向へ回転させることによって、電子部品のθ方向の角度を位置決めすることが可能になる。この種の直線・回転複合アクチュエータは、チップマウンタだけでなく、移動体をZ軸方向へ移動させかつθ方向に回転させるロボットに広く利用されている。
【0003】
直線・回転複合アクチュエータは、リニアモータと回転モータとを組み合わせてなる。出願人は、リニアモータと回転モータとしての直線運動案内機構付アクチュエータを組み合わせた直線・回転複合アクチュエータを提案している(特許文献1参照)。直線運動案内機構付アクチュエータは、軸をスプラインナットで直線運動可能に支持すると共に、スプラインナットを回転させることによって当該軸を軸線の回りにθ方向に回転させる。直線運動可能な軸にはリニアモータが直列又は並列に連結される。リニアモータを作動させることによって、軸がZ軸方向に移動する。
【0004】
図5は、従来の直線運動案内機構付アクチュエータを示す。ハウジング1の長手方向の中央には、ロータ部2及びステータ部3を備える回転モータ4が設けられる。ハウジング1にはロータ部2に結合される中空のロータ5が設けられる。中空のロータ5は軸受6に回転可能に支持される。中空のロータ5はスプラインナット7と一体化している。スプラインナット7の内側にはスプライン軸8が嵌められる。スプラインナット7はスプライン軸8が直線運動するのを案内する。回転モータ4がロータ5を回転させると、ロータ5に一体化したスプラインナット7が回転し、スプラインナット7に回転不能に係合するスプライン軸8が回転する。
【0005】
従来の直線運動案内機構付アクチュエータにあっては、中空のロータ5をスプラインナット7と一体化させるにあたって、第一及び第二のキャップ5a,5bを用意し、スプラインナット7を両側から挟みこむ構造を採用していた。そして、第一及び第二のキャップ5a,5bでスプラインナット7を包んだ後、第一及び第二のキャップ5a,5bとスプラインナット7とを接着剤で結合していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/038750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スプライン軸8の動きを円滑にするために、スプライン軸8とスプラインナット7との間にはボール等の多数の転動体が介在される。そして、スプラインナット7にはボール等の多数の転動体が循環する循環経路が形成される。第一及び第二のキャップ5a,5bにスプラインナット7を圧入すると、スプラインナット7が変形し、多数の転動体が円滑に循環しにくくなるおそれがある。したがって、第一及び第二のキャップ5a,5bとスプラインナット7とをすきまがある状態で嵌め合わせた後、接着剤でこれらを一体化させる方法が採用されていた。
【0008】
しかし、第一及び第二のキャップ5a,5bとスプラインナット7との間にすきまがあると、第一のキャップ5aと第二のキャップ5bとで互いの中心線が僅かにずれたり、第一のキャップ5aの中心線と第二のキャップ5bの中心線とが折れた状態で結合されたりする。これが原因で回転する中空のロータ5の振れ回り(円周振れ)が大きくなったり、中空のロータ5の回転を案内する軸受6の摺動抵抗が大きくなったりするという課題がある。
【0009】
そこで、本発明は中空のロータの振れ回りを低減できる直線運動案内機構付アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、軸線方向に伸びるスプライン溝を有する軸と、前記軸が軸線方向に直線運動するのを案内するスプラインナットと、モータのロータ部が設けられると共に、前記スプラインナットと一体化される中空のロータと、モータのステータ部が設けられると共に、前記ロータが軸線の回りを回転するのを案内する軸受が設けられるハウジングと、を備え、前記モータが前記ロータを軸線の回りに回転させることによって、前記軸が軸線の回りを回転する直線運動案内機構付アクチュエータにおいて、前記ロータは、前記スプラインナットを囲む筒状の周壁部及びこの周壁部の軸線方向の一端を塞ぐ底壁部を有する第一のキャップと、前記スプラインナットが収容された前記第一のキャップに嵌められる第二のキャップと、前記第一及び前記第二のキャップのいずれか一方に結合される前記モータの前記ロータ部と、を備え、所定の嵌め合い長さを持って互いに嵌まり合う前記第一及び前記第二のキャップによって、前記スプラインナットが覆われる直線運動案内機構付アクチュエータである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スプラインナットを介して第一及び第二のキャップを位置決めするのではなく、第一及び第二のキャップ同士の嵌め合いによって第一及び第二のキャップを互いに位置決めする。第一及び第二のキャップの中心線を一致させることができるので、ロータの振れ回りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の直線運動案内機構付アクチュエータの軸線に沿った断面図
【図2】直線運動案内機構付アクチュエータのロータの分解図
【図3】図1のIII部拡大図
【図4】スプインナットの斜視図(一部断面図を含む)
【図5】従来の直線運動案内機構付アクチュエータの軸線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面に基づいて本発明の一実施形態における直線運動案内機構付アクチュエータを詳細に説明する。図1は直線運動案内機構付アクチュエータの軸線に沿った断面図を示す。この直線運動案内機構付アクチュエータは、軸11を直線運動可能に案内すると共に、当該軸11を軸線の回りに回転させる。軸11の一端には、図示しないリニアモータ等が接続される。軸11の軸線方向への移動量は図示しないリニアモータ等によって制御される。
【0014】
直線運動案内機構付アクチュエータの全体の構成は以下のとおりである。ハウジング12の軸線方向の中央には、ステータ部13及びロータ部18を備える回転モータ15が配置される。ステータ部13はコイル29を備え、ハウジング12に結合される。ロータ部18はマグネット17を備え、中空のロータ21の一部を構成する。中空のロータ21は、ロータ部18から軸線方向の左右に延設される。ここでは、図1に示すように軸11を水平方向に配置したと仮定し、水平方向を左右方向とする。中空のロータ21の両端部には、左右一対のスプラインナット22a,22bが一体化される。スプラインナット22a,22bのそれぞれは、第一及び第二のキャップ20,19に包まれている。
【0015】
一対のスプラインナット22a,22b内には、軸11が軸線方向に直線運動可能に嵌められる。軸11の直線運動は一対のスプラインナット22a,22bによって案内される。一対のスプラインナットの左右方向の外側には、一対の軸受24a,24bが配置される。軸受24a,24bはスプラインナット22a,22bが軸線の回りを回転するのを案内する。軸受24a,24bはハウジング12に結合される。
【0016】
回転モータ15が中空のロータ21を回転させると、中空のロータ21と一体化されたスプラインナット22a,22bが軸線の回りを回転する。スプラインナット22a,22bの回転運動はスプラインナット22a,22bの外側に配置された軸受24a,24bによって案内される。スプラインナット22a,22bが回転すると、スプラインナット22a,22bに回転不能に係合する軸11が軸線の回りを回転する。スプラインナット22a,22bは軸11が軸線方向に直線運動するのを許容するので、軸11は直線運動可能な状態で軸線の回りを回転する。ハウジング12には、ロータ部18の多数のマグネット17の磁界の大きさ又は方向を検出するセンサ26が設けられる。軸11の回転角度はセンサ26によって検出される。センサ26からの位置情報に基づいて軸11の回転角度が指令値に一致するように図示しないドライバが回転モータ15を制御する。
【0017】
直線運動案内機構付アクチュエータの各部の構成は以下のとおりである。軸11は中空に形成される。軸11の外周面には軸線方向に伸びる複数本のスプライン溝11a(図4参照)が形成される。軸11のスプライン溝11aには、スプラインナット22a,22bに組み込まれる転動体としての多数のボールがスプライン溝11aに沿って転がり運動可能に嵌まる。軸11とスプラインナット22a,22bとは軸線の回りを回転不能に係合していて、スプラインナット22a,22bの回転に伴って軸11が軸線の回りを回転する。軸11の長手方向の両端部はハウジング12から突出する。軸11の一端部には吸着パッド、工具等の移動体が取り付けられ、軸11の他端部にはリニアモータ等が連結される。
【0018】
ハウジング12は細長い直方体形状に形成される。ハウジング12の内部には軸線方向に細長い空間が形成される。ハウジング12の空間の長さ方向の中央には、回転モータ15が収容される。回転モータ15は中空モータである。ハウジング12には回転モータ15のステータ部13が結合される。ステータ部13はロータ部18の多数のマグネットに磁気的なすきまを空けて対向するヨーク28を備える。図2に示すようにヨーク28は円筒形状に形成される。ヨーク28には半径方向の内側に突出する多数のコアが形成される。多数のコアには多数のコイル29(図1参照)が巻かれる。コイル29はU,V,W相からなる三相コイルから構成される。コイル29に三相交流電流を流すと、コイル29に発生する磁界とマグネット17に発生する磁界との相互作用によって、ロータ21が回転する。
【0019】
図1に示すように、ハウジング12の長さ方向の両端部には、中空のロータ21が回転するのを案内する一対の軸受24a,24bが設けられる。軸受24a,24bは、内輪、外輪、及び内輪と外輪との間に介在される多数の転動体としての多数のボールを備える。
【0020】
ロータ21は、多数のマグネットが設けられる中央の円筒状のロータ部18と、ロータ部18の左右の両端部に結合される一対の第二のキャップ19と、一対の第二のキャップ19の左右の外側に結合される一対の第一のキャップ20と、を備える。
【0021】
図2に示すように、ロータ21のロータ部18の外周面には周方向に交互にN極及びS極が形成されるように多数のマグネット17が貼り付けられる。マグネット17は軸線方向に細長い板状に形成され、半径方向に着磁、すなわち外周側がN極及びS極の一方に着磁され、内周側がN極及びS極の他方に着磁される。マグネット17は、ロータ21を回転させるためのトルクを発生させる駆動用のマグネットである。ロータ21の回転角度を測定するセンサ26は、マグネット17の磁界を検出する。ロータ部18に結合される第一のキャップ20及び第二のキャップ19はスプラインナット22a,22bを両側から包む。
【0022】
図3は、第一及び第二のキャップ20,19の拡大図(図1のIII部拡大図)を示す。第一のキャップ20は、スプラインナット22bを囲む筒状の周壁部20a、この周壁部20aの一端を塞ぐ底壁部20b、及び底壁部20bから周壁部20aとは反対側に突出し、周壁部20aよりも小径の筒状の突出部20cを有する。
【0023】
突出部20cは軸受24bに嵌められる。突出部20cと軸受24bとの嵌め合いは、突出部20cと軸受24bとの間に締めしろのあるしまりばめ、又は公差によってすきま若しくは締め代ができる中間ばめに設定される。第一のキャップ20と軸受24bとの同心度を高めるために、突出部20cと軸受24bとの嵌め合いをしまりばめに設定し、突出部20cを軸受24bに圧入するのが望ましい。軸受24bの転動体は外輪と内輪との間の負荷域のみを転がる。このため、突出部20cを軸受24bに圧入し、軸受24bの内輪が外側に変形しても、転動体の動きが悪くなることはない。
【0024】
突出部20cは軸受24bから外側に突出するガイド部20c−1を備える。ガイド部20c−1は突出部20cよりも外径が僅かに小さくなっている。ガイド部20c−1を設けることで、第一のキャップ20の突出部20cを軸受24bに圧入するとき、軸受24bが傾いたり、突出部20cにかじりついたりするのを防止することができる。
【0025】
第一のキャップ20の周壁部20aの軸線方向の長さL1は、スプラインナット22bの軸線方向の長さL2(この実施形態ではシール31が組み込まれるのでスプラインナット22bとシール31を合算した長さ)よりも長く、スプラインナット22bの軸線方向の端面22b−1よりも第二のキャップ19に向かって突出している。樹脂製のシール31はスプラインナット22bの外側に配置され、スプラインナット22b内に異物が浸入するのを防止する。周壁部20aの内径はスプラインナット22bの外径よりも僅かに大きく、周壁部20aとスプラインナット22bとの間には僅かなすきまが空く。すきまを空けることによって、周壁部20aにスプラインナット22bを収納したとき、スプラインナット22bに力がかからないようになる。スプラインナット22bには無負荷域と負荷域とから構成される循環路が形成される。無負荷域が形成される点が軸受24bと相違する。軸受24bの場合、突出部20cを圧入しても軸受24bの転動体は円滑に循環できる。しかし、周壁部20aにスプラインナット22bを圧入するとスプラインナット22bの転動体が円滑に循環できなくなる。スプラインナット22bの循環路に無負荷域が存在することが原因だと推測される。なお、転動体の循環に影響が出ない範囲で、周壁部20aとスプラインナット22bとの間のすきまを無くしたり(すきまをゼロにする)、周壁部20aにスプラインナット22bを圧入してもよい。
【0026】
周壁部20aにスプラインナット22bを収納した後、スプラインナット22bは接着剤によって周壁部20aに固定される。周壁部20aには周方向に均等間隔を空けて複数の貫通孔32が半径方向に空けられる。周壁部20aの外側から貫通孔32を介して内側に接着剤が注入される。スプラインナット22bの外周面には周方向に伸びる溝33が形成される。この溝33は周壁部20aの貫通孔32に繋がっていて、接着剤がスプラインナット22bの周囲に行き渡るようになっている。
【0027】
周壁部20aと突出部20cを繋ぐ底壁部20bは円環状に形成される。底壁部20bの外周には軸受24bの内輪に突き当てられる肩部20b−1が形成される。底壁部20bの肩部20b−1を一対の軸受24a,24bの内輪に突き当てることによって、一対の軸受24a,24b間にロータ21が軸線方向に位置決めされる。
【0028】
第二のキャップ19は蓋のようにスプラインナット22bが収容された第一のキャップ20に嵌められる。第二のキャップ19は、第一のキャップ20の周壁部20aの内側に嵌まる嵌合凸部19aと、第一のキャップ20の周壁部20aの軸線方向の端面に突き当てられる突当て部19bと、ロータ部18が嵌められる嵌合凹部19cを備える。第二のキャップ19と第一のキャップ20の嵌め合い長さはL3に設定される。嵌め合い長さL3は、第二のキャップ19の外周面及び第一のキャップ20の内周面の互いに接触する部分の軸線方向の軸線方向の長さである。
【0029】
第一のキャップ20の周壁部20aはスプラインナット22bよりも第二のキャップ19に向かって突出していて、第二のキャップ19の嵌合凸部19aは第一のキャップ20の周壁部20aにスプラインナット22bから軸線方向にずれた位置で嵌まり合う。第二のキャップ19の嵌合凸部19aと第一のキャップ20の周壁部20aとの嵌め合いは、嵌合凸部19aと周壁部20aとの間に締めしろのあるしまりばめに設定される。嵌合凸部19aは、突当て部19bが周壁部20aの端面に突き当たるまで圧入される。なお、嵌合凸部19aを周壁部20aに圧入したとき、嵌合凸部19aとスプラインナット22bとの間には軸線方向の僅かなすきまδが空く。スプラインナット22b及びシールに外力を与えないようにするためである。
【0030】
第二のキャップ19の嵌合凹部19cには、ロータ部18が嵌められる。嵌合凹部19cとロータ部18との嵌め合いは、嵌合凹部19cとロータ部18との間に締めしろのあるしまりばめに設定される。ロータ部18は嵌合凹部19cに圧入される。
【0031】
なお、上記では右側のスプラインナット22b及び右側の第一及び第二のキャップ20,19についてのみ説明したが、左側のスプラインナット22a及び右側の第一及び第二のキャップ20,19はロータ部18を中心として左右対称に形成される。構造は同一であるので、図1に同一の符号を附してその説明を省略する。
【0032】
図4はスプラインナット22a,22b及び軸11の斜視図(一部スプラインナット22a,22bの断面図)を示す。軸11の外周面には、長手方向に伸びるスプライン溝11aが形成される。スプラインナット22a,22bには、軸11のスプライン溝に対向する転動体転走溝34を含む循環路が形成される。
【0033】
スプラインナット22a,22bは、中央の円筒状のナット本体35と、ナット本体35の軸線方向の両端部に設けられる一対の蓋部材36を備える。ナット本体35には、上記転動体転走溝34及び上記転動体転走溝34と平行な無負荷戻し路37が形成される。蓋部材36には転動体転走溝34と無負荷戻し路37とを接続するU字状の方転換路が形成される。転動体転走溝34、無負荷戻し路37及び一対の方向転換路によってサーキット状の循環路が形成される。循環路には転動体として多数のボール38が配列される。スプラインナット22a,22bに対して軸11が軸線方向に直線運動すると、多数のボール38が軸11とスプラインナット22a,22bとの間を転がると共に、循環路を循環する。
【0034】
上記直線運動案内機構付アクチュエータの組み立て方法は下記のとおりである。まず図2に示すように、中空のロータ21のロータ部18の軸線方向の両端部に第二のキャップ19を圧入する。次に、第一のキャップ20にスプラインナット22a,22bを収容した状態で、第二のキャップ19の嵌合凸部19aに第一のキャップ20の周壁部20aを圧入する。ロータ21にスプラインナット22a,22bを一体化させた後、スプラインナット22a,22bに軸11を通す。
【0035】
次に、図1に示すように、ハウジング12に回転モータ15のステータ部13を結合する。ハウジング12の中空空間に組み立てたロータ21及び軸11を挿入し、ハウジング12の軸線方向の両端部に軸受24a,24bを嵌め込む。軸受24a,24bは第一のキャップ20の外側に嵌められる。最後に軸受24a,24bが脱落しないようにハウジング12の両端部に軸受24a,24bを押さえる蓋40a,40bを取り付ける。
【0036】
本実施形態によれば、ロータ21を構成するロータ部18、第二のキャップ19及び第一のキャップ20が互いに圧入されるので、これらの部品の同心度を高くする(これらの部品の中心線を一致させる)ことができる。したがって、回転するロータ21の振れ回りを低減することができる。
【0037】
ここで、第一のキャップ20と第二のキャップ19との嵌め合いがスプラインナット22a,22bの全長内でなされた場合、第一及び第二のキャップ20,19の外径が大きくなってしまう。また、第二のキャップ19が内側に変形し、スプラインナット22a,22bに力がかかるおそれもある。第一のキャップ20と第二のキャップ19とがスプラインナット22a,22bから軸線方向にずれた位置で嵌まり合うことで、これらの問題を解決できる。
【0038】
また、軸受24a,24b側に配置される第一のキャップ20を長くすることで、一対のスプラインナット22a,22b間のスパンを広げることができ、軸11の振れを抑えることができる。スプラインナット22a,22bと軸受24a,24bとの間の距離も小さくなるので、軸受24a,24bによってスプラインナット22a,22bの回転を安定して案内することができる。これに対して、第二のキャップ19を長くすると、第一のキャップ20と第二のキャップ19の嵌め合いの長さ分だけ、一対のスプラインナット22a,22b間の距離が短くなる。
【0039】
第二のキャップ19に第一のキャップ20の周壁部20aの軸線方向の端面に突き当てられる突当て部19bを設けることで、第一のキャップ20と第二にキャップ19とを軸線方向に位置決めできる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態の直線運動案内機構付アクチュエータはチップマウンタに限られることはなく、広くロボットの直線運動案内機構付アクチュエータとして用いることができる。
【0042】
上記実施形態の直線運動案内機構付アクチュエータは一軸のみで使用してもよいし、軸が平行になるように複数の直線運動案内機構付アクチュエータを組み合わせて多軸で使用してもよい。
【0043】
スプラインナット及び軸受の個数及びレイアウトは上記実施形態に限られることなく、スプラインナット及び軸受を一つずつ設けてもよい。
【0044】
第一及び第二のキャップの形状は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更できる。例えば、ロータ部側に第一のキャップを配置し、軸受側に第二のキャップを配置してもよい。また、第一及び第二のキャップの外径が大きくなることが許容できるならば、第一のキャップと第二のキャップとの嵌め合いをスプラインナットの軸線方向の途中で行ってもよい。さらに、第一及び第二のキャップを複数に分割することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
11…軸,12…ハウジング,13…ステータ部,15…回転モータ(モータ),18…ロータ部,19…第二のキャップ,19a…嵌合凸部,19b…突当て部,19c…嵌合凹部,20…第一のキャップ,20a…周壁部,20b…底壁部,20c…突出部,21…ロータ,22a,22b…スプラインナット,24a,24b…軸受,32…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に伸びるスプライン溝を有する軸と、
前記軸が軸線方向に直線運動するのを案内するスプラインナットと、
モータのロータ部が設けられると共に、前記スプラインナットと一体化される中空のロータと、
モータのステータ部が設けられると共に、前記ロータが軸線の回りを回転するのを案内する軸受が設けられるハウジングと、を備え、
前記モータが前記ロータを軸線の回りに回転させることによって、前記軸が軸線の回りを回転する直線運動案内機構付アクチュエータにおいて、
前記ロータは、
前記スプラインナットを囲む筒状の周壁部及びこの周壁部の軸線方向の一端を塞ぐ底壁部を有する第一のキャップと、
前記スプラインナットが収容された前記第一のキャップに嵌められる第二のキャップと、
前記第一及び前記第二のキャップのいずれか一方に結合される前記モータの前記ロータ部と、を備え、
所定の嵌め合い長さを持って互いに嵌まり合う前記第一及び前記第二のキャップによって、前記スプラインナットが覆われる直線運動案内機構付アクチュエータ。
【請求項2】
前記第一のキャップの前記周壁部の軸線方向の長さが前記スプラインナットの軸線方向の長さよりも長く、
前記第一のキャップの前記周壁部と前記第二のキャップとが、前記スプラインナットから軸線方向にずれた位置で互いに嵌まり合うことを特徴とする請求項1に記載の直線運動案内機構付アクチュエータ。
【請求項3】
前記モータの前記ロータ部の両側には、一対のスプラインナットが配置され、
前記モータの前記ロータ部の両側であってかつ前記一対のスプラインナットの外側には、一対の軸受が配置され、
前記第一のキャップは、前記底壁部から前記周壁部とは反対側に突出すると共に、前記周壁部よりも小径の筒状の突出部を有し、
前記第一のキャップの前記突出部が前記軸受に回転可能に支持され、
前記第二のキャップが前記ロータ部に結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の直線運動案内機構付アクチュエータ。
【請求項4】
前記第一のキャップの前記周壁部には、前記スプラインナットを前記第一のキャップに接着する接着剤を注入するための貫通穴が設けられることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の直線運動案内機構付アクチュエータ。
【請求項5】
前記第一のキャップには、前記スプラインナットに異物が浸入するのを防止するシールが前記スプラインナットに積層して収容されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の直線運動案内機構付アクチュエータ。
【請求項6】
前記第二のキャップは、前記第一のキャップの前記周壁部の内側に嵌まる嵌合凸部と、前記第一のキャップの前記周壁部の軸線方向の端面に突き当てられる突当て部と、を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の直線運動案内機構付アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83329(P2013−83329A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224755(P2011−224755)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】