説明

直線運動装置

【課題】円滑に昇降リンクを鉛直方向に移動させ、正確な直線運動を確保する。
【解決手段】支持基台に対して上部を水平移動可能に支持するスライドリンク20と、これに対して平行に配置し上部を固定するサポートリンク30と、スライドリンクの支持部に一端部を回動可能に支持する第1の揺動リンク40と、これに対して平行に配置し、スライドリンクの支持部に中間部を回動可能に支持する第2の揺動リンク50を備え、昇降リンク60に第1及び第2の揺動リンクの他端部を回動可能に支持すると共に、サポートリンクの支持部に対し第1の揺動リンクの中間部を上下及び水平方向に移動可能に支持する。而して、第2の揺動リンクの一端部51を上下方向に駆動すると、第1及び第2の揺動リンクが揺動し、これに連動して第1の揺動リンクがサポートリンクに対し上下及び水平方向に移動すると共にスライドリンクが水平移動しつつ、昇降リンクが上下に直線運動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基台に対し下方で昇降リンクを直線運動させる直線運動装置に関し、特に、レールに対して支持基台を水平方向に移動させると共に、昇降リンクを上下方向に直線運動させてワークを所望の位置に移動させるバランサに好適な直線運動装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークを吊り上げて移動させる際、手操作による小さな力で昇降させ得る装置として、バランサが知られており、ばね力を利用したスプリングバランサ、駆動源としてエアシリンダを用いたエアバランサ、電動モータを用いた電動バランサ等が存在している。これらのバランサにおける動力伝達装置として直線運動装置が用いられるが、一般的な構成によれば、支持基台に対し下方で昇降リンクを直線運動させてワークを所望の位置に移動させることとしている。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、平行リンク機構の各リンクにバランス用の重りが取り付けられたエアバランサが開示されている。この特許文献1では、「垂直多関節機構を用いたエアバランサーに於いて、完全なバランスを可能にし、重量物をわずかな操作力で高精度で移動させ且つ安定した位置保持を可能とする」ことを目的とし、「垂直多関節機構の回転する全てのリンクの重心の和を、荷重点、駆動点及び支点の三点だけに分割する」旨提案されている。尚、平行リンク機構はロボットのマニプレータ等に活用され、例えば、下記の特許文献2には、「可動部の慣性モーメントを小さくして、速応性を高めることができるように」することを目的としたリンク形ワーク搬送用ロボットが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−218599号公報
【特許文献2】特開2003−94359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のバランサに供された直線運動装置おいては、移動時に障害となるリンクの存在や、作動時の摩擦力の発生により円滑な直線運動を確保することが困難であった。例えば、前掲の特許文献1に記載のエアバランサにおいては、エアシリンダにリンク機構が吊下された構造であるので、対象とするワークに制限があり、リンク機構には摺動部が多いので摺動抵抗に対する対策が必要とされる。尚、特許文献2に記載の装置においては、二組の平行リンク機構を設ける等、複雑な機構となっており、バランサに好適な機構ではない。
【0006】
そこで、本発明は、支持基台に対し下方で昇降リンクを直線運動させる直線運動装置において、円滑に昇降リンクを鉛直方向に移動させ、正確な直線運動を確保し得る直線運動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、請求項1に記載のように、支持基台に対し下方で昇降リンクを直線運動させる直線運動装置において、前記支持基台の下方に延出する支持部を有し、上部を前記支持基台に対して水平移動可能に支持するスライドリンクと、該スライドリンクの支持部に対して平行に配置し前記支持基台の下方に延出する支持部を有し、上部を前記支持基台に固定するサポートリンクと、前記スライドリンクの支持部に一端部を回動可能に支持する第1の揺動リンクと、該第1の揺動リンクに対して平行に配置し、前記スライドリンクの支持部に中間部を回動可能に支持し、前記スライドリンクの支持部に対して一端部が延出する第2の揺動リンクとを備え、前記昇降リンクに前記第1の揺動リンクの他端部及び前記第2の揺動リンクの他端部を回動可能に支持すると共に、前記サポートリンクの支持部に対し前記第1の揺動リンクの中間部を上下及び水平方向に移動可能に支持して成り、前記第2の揺動リンクの一端部の駆動による前記第2の揺動リンクの前記スライドリンクに対する揺動に連動して前記第1の揺動リンクが前記スライドリンクに対し揺動し、前記第1の揺動リンクの揺動に連動して前記第1の揺動リンクが前記サポートリンクに対し上下及び水平方向に移動すると共に前記スライドリンクが前記支持基台に対し水平移動しつつ、前記昇降リンクが上下方向に直線運動するように構成したものである。
【0008】
例えば、請求項2に記載のように、前記サポートリンクの支持部に形成され、上下方向に長軸を有する長穴と、該長穴に嵌合するように配置され前記第1の揺動リンクの中間部に支持されるピン部材を備えたものとし、前記第1の揺動リンクの前記スライドリンクに対する揺動に連動して前記ピン部材が前記長穴に沿って移動し、前記サポートリンクの支持部に対し前記第1の揺動リンクの中間部が上下及び水平方向に移動するように構成してもよい。
【0009】
また、請求項3に記載のように、前記支持基台に支持すると共に前記第2の揺動リンクの一端部に連結する駆動装置を備えたものとし、該駆動装置によって前記第2の揺動リンクの一端部を前記支持基台に対して近接又は離隔する方向に駆動するように構成するとよい。
【0010】
更に、請求項4に記載のように、前記支持基台を水平方向に移動可能に支持するレールを備えたものとし、該レールに対して前記昇降リンクが水平方向に移動すると共に鉛直方向に直線運動するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、請求項1に記載の直線運動装置においては、上記のように構成されており、第2の揺動リンクの一端部の駆動による第2の揺動リンクのスライドリンクに対する揺動に連動して第1の揺動リンクがスライドリンクに対し揺動し、第1の揺動リンクの揺動に連動して第1の揺動リンクがサポートリンクに対し上下及び水平方向に移動すると共にスライドリンクが支持基台に対し水平移動しつつ、昇降リンクが上下方向に直線運動することとなるので、円滑且つ正確な直線運動を確保することができる。
【0012】
特に、上記の直線運動装置において、請求項2に記載のように構成すれば、摺動抵抗を低減し円滑に昇降リンクを鉛直方向に移動させることができる。尚、長穴は例えば勾玉断面形状とし、これに嵌合するローラをピンに回転可能に支持してピン部材を構成することとしてもよい。あるいは、長穴及びピン部材に代えて、同形状のカム溝及びローラを用いることとしてもよい。また、請求項3に記載のように構成すれば、駆動装置によって、小さな操作力で円滑に昇降リンクを鉛直方向に移動させることができる。尚、駆動装置としては、エアシリンダや油圧シリンダのほか、電動モータ等のアクチュエータを用いることができる。
【0013】
更に、請求項4に記載のように構成すれば、レールに対して支持基台を水平方向に移動させると共に、昇降リンクを上下方向に直線運動させてワークを所望の位置に移動させることができるので、広範囲の用途に適用可能なバランサに好適である。例えば、駆動装置にエアシリンダを用いてエアバランサを構成すれば、小さな操作力で円滑に昇降リンクを鉛直方向に移動させ、正確な直線運動を確保し、ワークを確実に所望の位置に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態に係る直線運動装置を備えたバランサの一部を示すもので、支持基台10がレール11に対し水平方向に移動可能に支持されている。尚、レール11は、その下部で複数の支持台(図示せず)に固定されているが、上方から吊下するように支持してもよい。そして、支持基台10の下方に延出するようにスライドリンク20が支持されている。スライドリンク20は、その上部にスライダ部21が形成されており、支持基台10に固定されたリニアガイド12に対しスライダ部21が水平移動可能に支持されている。また、スライドリンク20の支持部22に対して平行にサポートリンク30が配置され、その上部31が支持基台10に固定され、その支持部32が支持基台10の下方に延出するように支持されている。
【0015】
スライドリンク20の支持部22には、第1の揺動リンク40の一端部が回転軸A1を中心に回動可能に支持され、この第1の揺動リンク40に対して平行に第2の揺動リンク50が配置されている。第2の揺動リンク50は、その中間部がスライドリンク20の支持部22に回転軸A2を中心に回動可能に支持され、その一端部51がスライドリンク20の支持部22に対して図1の右方に延出している。そして、第1の揺動リンク40の他端部及び第2の揺動リンク50の他端部が昇降リンク60に、夫々回転軸A3及びA4を中心に回動可能に支持されており、昇降リンク60は上下方向(鉛直方向)に配置されている。而して、昇降リンク60及びスライドリンク20と、第1の揺動リンク40及び第2の揺動リンク50によって平行リンク機構が構成されている。
【0016】
更に、本実施形態では、サポートリンク30の支持部32にサポートプレート33が固着され、このサポートプレート33に長穴34が形成されている。本実施形態の長穴34は、図1に示すように、上下対称の勾玉断面形状に形成され、その長軸が上下方向となるように形成されている。そして、第1の揺動リンク40の中間部にピン41が支持され、このピン41が長穴34に嵌合するように配置されている。尚、長穴34に嵌合し得るローラ(図示せず)をピン41に回転可能に支持し、これをピン部材としてもよい。あるいは、長穴34及びピン41に代えて、同形状のカム溝及びローラ(図示せず)を用いることとしてもよい。このように、第1の揺動リンク40のスライドリンク20に対する揺動に連動して、ピン41が長穴34に沿って移動し、これに応じて、サポートリンク30の支持部32に対し第1の揺動リンク40の中間部が上下及び水平方向に移動するように構成されている。而して、第2の揺動リンク50の一端部51の(上下方向の)駆動による第2の揺動リンク50の揺動に連動して第1の揺動リンク40が揺動し、第1の揺動リンク40のスライドリンク20に対する揺動に連動して、第1の揺動リンク40がサポートリンク30に対し上下及び水平方向に移動すると共にスライドリンク20がリニアガイド12に対し水平移動しつつ、昇降リンク60が上下方向(鉛直方向)に直線運動するように構成されている。
【0017】
本実施形態においては、駆動装置としてエアシリンダ70が装着されており、図1に示すように、支持基台10及び第2の揺動リンク50に対し、夫々回転軸B1及びB2を中心に揺動可能に支持されている。而して、このエアシリンダ70により、第2の揺動リンク50の一端部51を支持基台10に対して近接又は離隔する方向に駆動することができる。尚、駆動装置としては、エアシリンダ70に限らず、油圧シリンダあるいは電動モータ等を用いることとしてもよい。更に、昇降リンク60の吊下部61にはチャック機構等(図示せず)が固定されており、この搬送対象の物品(図示せず)を係止し得るように構成されているが、その構造は従前のバランサと同じであるので、説明は省略する。
【0018】
而して、上記の実施形態に係る直線運動装置によれば、図1に示す状態から、図3の上方に示すようにエアシリンダ70が駆動されてその出力軸が伸張すると、第2の揺動リンク50の一端部51が下方に駆動されて支持基台10から離隔し、第2の揺動リンク50が回転軸A2を中心に時計方向に揺動する。これに応じて、昇降リンク60を介して回動可能に連結された第1の揺動リンク40も、回転軸A1を中心に時計方向に揺動する。このとき、ピン41は長穴34に沿って移動し、第1の揺動リンク40が図3の上方及び左方に移動すると共に、スライドリンク20もリニアガイド12に沿って図3の左方に移動し、最終的に、第1の揺動リンク40及びスライドリンク20は水平方向(図3の左方)に所定距離s移動することとなる。この結果、昇降リンク60は、曲線軌跡を辿ることなく正確に鉛直方向(図3の上方)に直線運動することができ、従前のような大きな摺動摩擦抵抗を生ずることもない。
【0019】
そして、図1に示す状態から、図3の下方に示すようにエアシリンダ70の出力軸が収縮すると、第2の揺動リンク50の一端部51が上方に駆動されて支持基台10に近接し、第2の揺動リンク50が回転軸A2を中心に反時計方向に揺動すると共に、第1の揺動リンク40も、回転軸A1を中心に反時計方向に揺動する。このときも、ピン41は長穴34に沿って移動し、第1の揺動リンク40が図3の下方及び左方に移動すると共に、スライドリンク20もリニアガイド12に沿って図3の左方に移動し、最終的に、第1の揺動リンク40及びスライドリンク20は水平方向(図3の左方)に所定距離s移動することとなる。この結果、図3の上方の場合と同様、昇降リンク60は円滑且つ正確に鉛直方向(図3の下方)に直線運動することができる。
【0020】
以上のように、本発明の直線運動装置は、レール11に対して支持基台10を水平方向に移動させると共に、昇降リンク60を上下方向に直線運動させてワーク(図示せず)を所望の位置に移動させるバランサに適用することができ、小さな操作力で円滑に昇降リンク60を鉛直方向に移動させ、ワークを確実に所望の位置に移動させることができる。尚、上記の実施形態においては、バランサに関するその他の構造は従来装置と同様であるので省略したが、上記の直線運動装置はバランサに限ることなく、ロボットのマニプレータ等、正確な鉛直方向の直線運動が要求される種々の装置に適用することができる。また、本願においてはリンクという用語を用いているが、狭義のリンクに限るものではなく、アーム、レバー、フレーム等と称呼される種々の部材を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る直線運動装置を備えたバランサの一部を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるバランサの一部を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る直線運動装置において駆動時の昇降リンクの鉛直方向の移動状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 支持基台
11 レール
12 リニアガイド
20 スライドリンク
30 サポートリンク
34 長穴
40 第1の揺動リンク
41 ピン
50 第2の揺動リンク
60 昇降リンク
70 エアシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基台に対し下方で昇降リンクを直線運動させる直線運動装置において、前記支持基台の下方に延出する支持部を有し、上部を前記支持基台に対して水平移動可能に支持するスライドリンクと、該スライドリンクの支持部に対して平行に配置し前記支持基台の下方に延出する支持部を有し、上部を前記支持基台に固定するサポートリンクと、前記スライドリンクの支持部に一端部を回動可能に支持する第1の揺動リンクと、該第1の揺動リンクに対して平行に配置し、前記スライドリンクの支持部に中間部を回動可能に支持し、前記スライドリンクの支持部に対して一端部が延出する第2の揺動リンクとを備え、前記昇降リンクに前記第1の揺動リンクの他端部及び前記第2の揺動リンクの他端部を回動可能に支持すると共に、前記サポートリンクの支持部に対し前記第1の揺動リンクの中間部を上下及び水平方向に移動可能に支持して成り、前記第2の揺動リンクの一端部の駆動による前記第2の揺動リンクの前記スライドリンクに対する揺動に連動して前記第1の揺動リンクが前記スライドリンクに対し揺動し、前記第1の揺動リンクの揺動に連動して前記第1の揺動リンクが前記サポートリンクに対し上下及び水平方向に移動すると共に前記スライドリンクが前記支持基台に対し水平移動しつつ、前記昇降リンクが上下方向に直線運動することを特徴とする直線運動装置。
【請求項2】
前記サポートリンクの支持部に形成され、上下方向に長軸を有する長穴と、該長穴に嵌合するように配置され前記第1の揺動リンクの中間部に支持されるピン部材を備え、前記第1の揺動リンクの前記スライドリンクに対する揺動に連動して前記ピン部材が前記長穴に沿って移動し、前記サポートリンクの支持部に対し前記第1の揺動リンクの中間部が上下及び水平方向に移動することを特徴とする請求項1記載の直線運動装置。
【請求項3】
前記支持基台に支持すると共に前記第2の揺動リンクの一端部に連結する駆動装置を備え、該駆動装置によって前記第2の揺動リンクの一端部を前記支持基台に対して近接又は離隔する方向に駆動することを特徴とする請求項1又は2記載の直線運動装置。
【請求項4】
前記支持基台を水平方向に移動可能に支持するレールを備え、該レールに対して前記昇降リンクが水平方向に移動すると共に鉛直方向に直線運動することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の直線運動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−68662(P2009−68662A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240334(P2007−240334)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(590004305)株式会社 オチアイネクサス (3)
【Fターム(参考)】