説明

相互相関を用いた動揺雑音低減法及び交流信号抽出法

【課題】 動揺雑音を低減し、目的とする交流の磁気信号を精度良く測定し得る磁気測定方法を提供する。
【解決手段】 ある位置の磁界を測定するのに、その位置に2つの磁気センサを配し、一方のセンサの検出データD3−iを取り込み(ステップST2)、このデータD3−iにフィルタ処理を施し(ステップST3)、更に他方のセンサの検出データD4−iを取り込み(ステップST4)、このデータD4−iにフィルタ処理を施し(ステップST5)、一方のセンサのフィルタ処理後のデータD3−ifと、他方のセンサのフィルタ処理後のデータD4−ifにつき、両者の相互相関を求め、データDiを求める(ステップST6)。このデータDiを検出磁気データとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば水中等で被測定体から発する磁気あるいは水中電界を測定する磁気測定方法、水中電界測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、図8に示すように、船舶1の発生する磁界を測定するために、海底3に複数個の磁気センサ2-1、......、2-nを配置し、これら複数個の磁気センサ2-1、......、2-nで得られる磁気出力より、船舶1の発生磁界を測定している(例えば、特許文献1参照)。この種の磁気測定において、目的とする船舶1からの磁気の他に、磁気ノイズが混入して、各磁気センサ2-1、......、2-nの出力に現れる。
【0003】
このような場合、信号源としての交流信号源を抽出し、混入ノイズを除去するためには、センサ出力に対し、フィルタ(直流分、低周波分除去)処理と自己相関処理を組み合わせたノイズ除去方法を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−180700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船舶の磁界を測定する場合、上記したように磁気センサを海底に固定して測定する場合が多いが、磁気センサを船舶の横に配置する等、海面、もしくは海中に浮かせて測定することもある。この場合、磁気センサは、海面又は海中で揺動するため、検出出力に動揺雑音が混入する。この動揺雑音を除去するために、従来の雑音除去方法のように、自己相関を行うと、目的とする交流信号を抽出するばかりでなく、動揺雑音を強調してしまうことになるという問題がある。
【0006】
この発明は上記問題点に着目してなされたものであって、動揺雑音を低減し得る磁気測定方法、水中電界測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の磁気測定方法は、交流磁気信号を測定する磁気測定方法であって、互いに近傍に配置される少なくとも第1と第2の磁気センサとを備え、これら第1と第2の磁気センサの検出信号をそれぞれフィルタ処理し、得られた第1と第2の磁気センサの出力の相互相関を取り、動揺雑音を低減し、目的とする交流磁気信号を測定することを特徴とする。
【0008】
また、この発明の水中電界測定方法は、互いに近傍に配置される少なくとも第1と第2の水中電界センサとを備え、これら第1と第2の水中電界センサの検出信号をそれぞれフィルタ処理し、得られた第1と第2の電磁気センサの出力の相互相関を取り、動揺雑音を低減し、目的とする交流電界信号を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、第1と第2の磁気センサまたは水中電界センサの検出信号を、それぞれフィルタ処理し、得られた第1と第2の磁気センサまたは水中電界センサの出力の相互相関を取るので、目的とする交流信号は、第1と第2の両センサ位置では同周波数であり、相互相関により強調される。そのため、目的とする交流信号を抽出できる。また、第1と第2の両センサは位置は近傍であるが、動揺態様が同じでなく、相互相関により動揺成分は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態磁気測定方法を説明する図である。
【図2】同実施形態で使用される磁気測定システムの構成を示すブロック図である。
【図3】同磁気測定システムにおいて、測定データ取込み処理を説明するためのフロー図である。
【図4】同磁気測定システムに取込まれる一対のセンサの検出信号波形例を示す図である。
【図5】同一対のセンサの検出信号を相互相関処理して得られる信号波形例を示す図である。
【図6】同磁気測定システムに取込まれる一対のセンサの検出信号の周波数成分分布であるFFT結果の信号波形例を示す図である。
【図7】同一対のセンサのFFT結果の相互相関処理して得られる信号波形例を示す図である。
【図8】従来の船体磁気測定方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態により、この発明をさらに詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態を説明する図である。図1は、船舶1の左右にそれぞれ複数の磁気センサ3-1、......、3-mと、磁気センサ4-1、......、4-mを配置し、これら磁気センサ3-1、......、3-mと、磁気センサ4-1、......、4-mを用いて、船舶1の磁気を測定する。磁気センサ3-1、......、3-m、磁気センサ4-1、......、4-mはいずれもブイ等を用いて、海面(あるいは海中)に浮かせている。
【0012】
図2は、この実施形態で使用される磁気測定システムの構成を示すブロック図である。この磁気測定システム10は、センサI/F14と、CPU15と、操作部16と、ROM17と、データメモリ18と、表示部19とを備えている。センサI/F14は、磁気センサ3-1、......、3-m(磁気センサ4-1、......、4-mも同様に)の信号を受け付け、CPU15に取り込む。ROM17は、磁気測定のための処理プログラムを記憶しており、CPU15はROM17に記憶されているプログラムにしたがい、磁気測定処理を実行する。操作部16は、システム10に種々の指示を入力するための操作手段を備える。データメモリ18は、磁気センサ3-1、......、3-m等から取り込んだデータにフィルタ処理したデータ、相互相関処理したデータ、その他の処理データを記憶する。表示部19は、処理のために必要なメッセージ、測定データ等を必要に応じて表示する。これらの各構成部自体は、磁気測定システムにとって、特に新しいものではない。
【0013】
次に、この実施形態磁気測定システムにおいて、各磁気センサの検出磁気の取込み処理を、図3に示すフロー図を参照して説明する。処理が開始されると、ステップST1において、変数iを1とする。この変数iは、=1〜mであり、磁気センサ3-1、......、3-m、4-1、......、4-mのセンサ番号を示す。次に、ステップST2へ移行する。
【0014】
ステップST2においては、磁気センサ3-1のデータD3−1を取込む。続いて、ステップST3へ移行する。そして、データD3−1のフィルタ処理を実行する。フィルタ処理後のデータD3−1fをデータメモリ18に記憶する。次に、ステップST4へ移行する。ステップST4においては、磁気センサ4-1のデータD4−1を取込む。続いて、ステップST5へ移行する。ステップST5において、データD4−1のフィルタ処理を実行する。フィルタ処理後のデータD4−1fを同じくデータメモリ18に記憶する。次に、ステップST6へ移行する。
【0015】
ステップST6においては、データメモリ18に記憶したデータD3−1fとデータD4−1fを読み出し、これらの相互相関データDiを得る。次に、ステップST7へ移行する。ステップST7においては、この相互相関データDiをデータメモリ18に記憶する。続いて、ステップST8へ移行する。
ステップST8においては、変数iが定数K(=m)以上となったか否か判定する。当初は、i=1なので、判定NOで、ステップST9へ移行する。ステップST9においては、変数iを1インクリメント(i=2)する。そして、ステップST2へ戻る。
【0016】
このステップST2においては、磁気センサ3-2のデータD3−2の取込みを行う。そして、次のステップST3において、データD3−2のフィルタ処理を行う。同様に、ステップST4、ST5において、他方の磁気センサ4-2のデータD4−2の取込み、及びフィルタ処理を実行する。続いて、ステップST6において、データD3−2とD4−2の相互相関データD2を得る。そして、ステップST7において、データD2をデータメモリ18に記憶する。
【0017】
以降、ステップST9において、変数iを1インクリメントしながら、ステップST2〜ST9の処理を繰り返し、各磁気センサの相互相関データD1 、......、Dm を得る。i=K(=m)となると、次にステップST10へ移行し、変数iを1とする。
この図3の一連の処理を一定時間毎に実行する。このようにして時系列的に得られた磁気センサ3-1の波形例を図4の(a)に、同じ磁気センサ4-1bの波形例を図4の(b)に例示する。この図4の(a)と(b)の波形信号に、相互相関処理を施したデータD1 の波形を図5に示す。
【0018】
また、磁気センサ3-1の検出結果に周波数成分分布を示すFFTを実施した一例を図6の(a)に例示し、同じく磁気センサ4-1の検出結果をFFTを実施した一例を、図6の(b)に例示する。ここでは、検出したい交流信号に動揺雑音が重畳している。図5に示す相互相関解析結果にFFTを実施したものは、図7に示すものとなり、動揺雑音が低減されていることがわかる。
【0019】
なお、上記実施形態において、磁気センサ3-1、3-2、......、3-mのそれぞれにおいて、3-1、4-1の組合せ、3-2、4-2の組み合わせ、・・・・・・、3-m、4-mの組合せ合せの検知出力同士の相互相関を取る例を説明したが、隣同士、例えば磁気センサ3-1と3-2の組合せ同士で相互相関を行っても良い。
【0020】
また、上記実施形態において、センサは磁気センサを例にとり説明したが、センサに水中電界センサを使用する場合も、本発明を同様に適用することができる。この場合、実施形態としては、図2に示す測定システムの磁気センサ3-1、......、3-m、4-1、......、4-mに代えて水中電界センサを使用し、図3に示すと同様の処理を実行する。
【符号の説明】
【0021】
1 船舶
3-1、......、3-m、4-1、......、4-m 磁気センサ
10 磁気測定システム
14 センサI/F
15 CPU
16 操作部
17 ROM
18 データメモリ
19 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流磁気信号を測定する磁気測定方法であって、互いに近傍に配置される少なくとも第1と第2の磁気センサとを備え、これら第1と第2の磁気センサの検出信号をそれぞれフィルタ処理し、得られた第1と第2の磁気センサの出力の相互相関を取り、動揺雑音を低減し、目的とする交流磁気信号を測定することを特徴とする磁気測定方法。
【請求項2】
水中で交流電界信号を測定する水中電界測定方法であって、互いに近傍に配置される少なくとも第1と第2の水中電界センサとを備え、これら第1と第2の水中電界センサの検出信号をそれぞれフィルタ処理し、得られた第1と第2の電磁気センサの出力の相互相関を取り、動揺雑音を低減し、目的とする交流電界信号を測定することを特徴とする水中電界測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−47909(P2011−47909A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199020(P2009−199020)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】