説明

省エネ型除湿および熱回収装置

【課題】膜を用いた除湿装置において、エネルギー効率が良く、特定径以上の粒子については閉鎖系で機能するようにする。

【解決手段】 多孔性で親水性の高い平膜と、平膜間に波板状の中芯を設置し、平膜と中芯とを一個の層とし、この層を、中芯の波形状の方向が交互に交差するように複数積層し、一次側流路が一本の経路となるように連結することで除湿器を構成する。また二次側流路を形成する中芯の厚さを大きくすることで、二次側における低湿空気の流速を速くする。除湿器を構成する平膜の平均孔径を15nm以上450nm以下に設計し、特定径以上の粒子については閉鎖系に機能するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、親水性の高い膜を介して、湿った空気から水蒸気を除くことによって乾燥空気を再利用する省エネ型除湿装置に関する。さらには、その除湿の際、水蒸気に含まれる蒸発潜熱を回収する、除湿および熱回収装置に関する。また本発明技術で得られる乾燥空気の再利用は、水あるいは分子状で空気中に分散している物質(炭酸ガス、酸素、窒素など)は出入り自由な開放系で、それら以外の特定径以上の粒子(アレルゲン、ウイルス、細菌、浮遊性微粒子など)については閉鎖系で機能する除湿および熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な除湿方法としては、吸着材や吸湿用の媒体を利用して行われているが、これらの方法は吸湿材が一定の水蒸気を吸着すると、その吸着性能は時間と共に低下していく。またその吸湿性能を回復するには熱処理などのエネルギーが必要である。しかもエネルギー源の温度は200℃以上の温度が必要で、80℃以下の低熱源は利用されていない。実際に、加熱ユニットを内蔵した除湿装置があるが、エネルギー消費が大である。
【0003】
これに対して高分子材料の分離膜を利用した方法があり、吸湿材を使用する方法に比べ連続運転が可能で、エネルギー的にも有利である。特公昭54−152679号公報では膜を使用して湿度の高い気体より水蒸気を分離除去する方法が示されている。しかしこの技術は水蒸気を膜濾過させる手法であり、一部の空気も水蒸気と共に通過し、全ての物質について開放系である。またろ過時に膜に対して圧力が生じ、膜の劣化や損傷の原因になる。
【0004】
特開昭47−19990号公報では障子紙などを熱交換媒体に利用して水蒸気の潜熱の一部が回収され同時に顕熱も熱交換により回収される。この方法は熱交換を目的とした換気方法であり、除湿性能は効率的でなく、しかも開放系の手法である。
【0005】
また多孔質膜内に吸湿性液体を保持させたセルロース製中空糸を用いた除湿方法も提案されているが(米国特許第4900448号)、この方法では除湿中に生じる圧力勾配への抵抗力が小さく、液が漏れたり、中空糸が破損する危険性があった。この手法に対し、中空糸の取り付け方法や、空気の流通方向を工夫した技術が提案されているが(特許第2846554号)、中空糸の破損を防ぐため、高湿空気と低湿空気を中空糸に対して平行に流すとしている。しかしこの方法だと、低湿空気は導入口から排出口に向かって湿度が上昇し、排出口に近づくほど除湿効果が低下する。
【0006】
また中空糸を束ねて使用する手法の場合、一本の中空糸が破損すると、装置全体の機能が失われる課題もある。
【0007】
一方、圧力に対する抵抗力の高い技術も提案されているが(特許第4022341号)、膜への機能性付与や、支持体の使用によって、一枚あたりの膜厚が大きくなり、積層しようとすると装置のサイズが大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】

【特許文献1】特公昭54−152679号公報
【特許文献2】特開昭47−19990号公報
【特許文献3】米国特許第4900448号
【特許文献4】特許第2846554号
【特許文献5】特許第4022341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
吸湿材を用いた除湿技術において、吸湿効果が低下した吸湿材の吸湿性能を再生する際には熱処理などのエネルギーが必要である。特に、工業用乾燥機などで発生する大量の高湿空気を除湿し、乾燥空気として再利用する場合には、大量のエネルギーが必要になり、吸湿材は不効率である。本来、エネルギー効率が重要視される工業的乾燥工程において、乾燥空気を循環利用する際には、消費エネルギーは極力抑制しなければならない。しかも吸湿材中の水分を脱水する際の熱源としては200℃以上の高温熱源を必要とする。
【0010】
分離膜を用いる場合は、膜の孔径設計が重要である。水蒸気と共に多くの空気も通過するような大きな孔径の膜の場合は、除湿効率および熱回収効率が低下してしまう課題があるし、アレルゲン等の特定径以上の粒子に対しても開放系となってしまう。また孔径が小さすぎる場合は、二次側での水蒸気の排出効率が低下する。水蒸気が二次側に効率よく排出され、かつ特定径以上の粒子(アレルゲン、ウイルス、細菌、浮遊性微粒子など)については閉鎖系で機能する除湿および熱回収装置を達成するには孔径の設計が重要である。膜中を水分子が通過する速度は平均孔径が特に重要である。一般的には平均孔径が大きい場合、気体は体積流れ(粘性流れ)で、平均孔径が小さいと溶解拡散流れが支配的となる。
【0011】
平膜を用いる場合、膜面積を大きくするためには、その平膜の積層方法が重要となる。特に一枚当たりの膜の膜厚が大きくなりすぎると、積層した際の全体の厚さが大きくなり、結果的に単位厚さあたりの膜面積が小さくなる。一枚当たりの膜厚を小さくし、かつ効率的に積層しなければならない。
【0012】
また、除湿効率を上げるためには、高湿空気と低湿空気の流通方法も課題である。特に流通速度と流通距離が、除湿性能に大きな影響を与える。低湿空気の流通速度が、高湿空気の流通速度よりも大きければ大きい程、除湿性能が大きくなる。また低湿空気の流通経路が長い場合、すなわち膜に接する経路が長い場合は、導入口から排出口に向かって低湿空気の湿度が上昇し、結果として除湿性能が低くなる。したがって、低湿空気の流通経路の長さは短くしなければならない。
【0013】
膜の破損などによって装置全体の機能が失われる問題も、装置の連続運転、あるいは長期間の持続的な利用の観点から重要な課題である。膜の破損の要因は、空気の流れから生じる圧力やせん断応力による物理的な損傷や、空気中のオイルミスト付着による除湿性能の低下などがある。特に親水性の高い膜を使用した場合、空気中のオイルミストが付着すると、表面の親水性が低下し、除湿性能が失われる。
【0014】
また乾燥機を稼働させている工場では、300℃以下の低温域排ガスを多くの場合大気中に放出している。この排ガスの大部分の成分は水蒸気であるが、目に見える排ガスであるがために、地域住民に対して無用の不安を与えているケースがある。排ガスの清浄化技術と同様に、水蒸気を除去し、白煙を出さないようにすることも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明で提案する解決手段は、親水性が高く、表裏面の孔径および表面粗さが異なる平膜で構成される除湿器、およびそれを用いた除湿装置であり、該除湿器は平膜を境に、高湿空気が流通する一次側と、低湿空気が流通する二次側とが交互に存在する積層構造体である。ここで積層構造体とは、平膜を境に二種の気体と接する膜を一要素とすると、この要素が3個以上積層した構造体を意味する。
【0016】
一次側を流れる高湿空気が含む水蒸気は、平膜に吸湿され、二次側へ排出される。結果として一次側を流通する高湿空気は除湿される。同時に高湿空気中の水蒸気が持つ蒸発潜熱の一部が、一次側空気へ回収される。積層構造体にすることにより、一定の体積内での平膜の総面積を大きくすることが可能となり、積層構造体から外気への放熱量が小さくなり、熱エネルギーの回収率が高まる。さらに膜の面積の割には小型の除湿器となり、既設の設備への適用が容易である。
【0017】
除湿器に使用する親水性平膜の表面は空孔率30%以上で、平均孔径15nm以上で構成されていることを特徴とする除湿装置である。平均孔径を15nm以上1μm以下にすると、膜表面に吸着した水の膜内部の孔表面拡散流れ(孔拡散流れの一種で、平均孔径が2nm以下の際に支配的となる溶解拡散流れとは異なる)の寄与が大きくなり、同時に湿潤状態での微生物の拡散による膜透過が防止できる。平均孔径は望ましくは450nm以下である。表面粗さが異なる平膜とは、平膜の裏面、すなわち二次側表面積が、平膜の表面、すなわち一次側表面積の10倍以上であることが望ましい。この表面積の比が必要な膜面積を決める重大な膜特性である。また平膜は、親水性の高さから再生セルロース製であることが望ましい。表面積比は電子顕微鏡で観察される平均孔径比として測定される。すなわち、(平均孔径比)=表面積比、である。
【0018】
以上のような平膜を積層する際に、平膜と平膜の間に、波板状のスペーサー(中芯)を挟む。中芯は、波板形状の方向が各層において互いに交差するように配置する。これによって波板状の中芯の谷の部分が流路となる。結果として、平膜と中芯に挟まれた流路、すなわち一次側流路と、二次側流路は各層において交互に交差することとなる。一次側流路を通過する高湿空気から、膜を介して水蒸気が除湿され、二次側の低湿空気へ輸送され、排出される。
【0019】
平膜と中芯の積層体で構成される積層構造体は、一定の積層数、一定の膜面積で一つの構成単位、すなわち除湿器となる。そして複数の除湿器を、一次側流通経路が一本の経路となってつながるように連結させ、空気の導入口と排出口を具備する容器にセットすると、除湿機能を発揮する除湿装置となる。
【0020】
除湿装置は、一次側流通経路が長く、二次側流通経路が短いため、二次側流通経路の空気抵抗は小さくなり、一次側を流れる空気の流速に比較して二次側流路の流れが速くなる。また二次側を流れる低湿空気の湿度は上昇しすぎることがなくなり、除湿性能の低下も抑制される。同時に一次側を流れる高湿空気からの除湿は確実に行われる。
【0021】
二次側の低湿空気の流速は、一次側の高湿空気の流速に比べて速ければ速い方がよく、望ましくは一次側の流速の3倍以上の流速が必要である。また、高湿空気と低湿空気の温度が低い程、除湿性能は高くなる。中芯の厚さは気体の流れ速度に応じて定められるが、流れ抵抗をできるだけ小さくする必要がある。しかし一定体積当たりの膜面積を大きくする必要もある。両条件から最適な厚さが実験を通して定められる。ただし、一次側の流速より二次側の流速を大きくするには、二次側流路の中芯の厚さは一次側のそれの1.5倍以上にすることにより容易に達成できる。
【0022】
一次側と二次側の流速の比を一定にした際に、高湿空気の相対温度が増加すると、除湿性能は増加するが、ある湿度で最大値をとり、その後低下する。この低下が起こった条件下で膜間差圧を従来技術で禁じられている値以上に加え、かつ二次側の流速を増加させると、除湿速度は再び増加する。
【0023】
複数の除湿器を連結する手法であれば、一部の膜が破損した際にも、その破損個所の除湿器を交換するだけで装置全体の機能は回復できる。結果として消耗した除湿器を交換、あるいは洗浄、あるいはメンテナンスするだけで、装置全体は持続的に使用することができる。
【0024】
膜の破損の原因の一つである空気中のオイルミストへの対策として、除湿装置における一次側流路に通じる高湿空気の導入口に、オイルミストの吸着器を設置する。その結果、装置に導入される空気からオイルミストが除去され、除湿性能の低下が抑制される。オイルミスト吸着器としては、ポリプロピレン製の不織布で作られたフィルタや充填物が適する。
【0025】
また除湿処理後の空気が排出される、一次側流通経路の排出口には、脱臭器や、除菌フィルター、ウイルスフィルターを連結することもできる。脱臭器には活性炭などの非極性の吸着材が適する。除菌フィルター、ウイルスフィルターには、除湿器に使用されている再生セルロース製平膜と同等品を設置する。
【0026】
除湿器を構成する中芯は、一次側と二次側で高さを変えることができる。一次側の中芯の高さよりも、二次側の中芯の高さの方を大きくすることによって、一次側と二次側の流速の差がさらに大きくなり、その結果、除湿性能が向上する。
【0027】
二次側における低湿空気の流通方向を重力に対して下から上へ流すことによっても、除湿器内の温度上昇に伴う対流を利用して二次側における流速が速くなり、その結果除湿性能が向上する。
【0028】
また、除湿器を回転させることによって二次側へ空気を導入させることもできる。その回転動力は電気力だけでなく、一次側に導入する空気の流れによって生じる力や、あるいは自然に発生する風力を利用することもできる。
【0029】
工場の乾燥機から排出される湿熱空気が原因の白煙への対策にも本発明技術は有効である。一次側から水蒸気を除湿する二次側低湿空気は、一次側に比べて三倍以上の流速で外気を導入・排出するため、結果として二次側から排出される排ガスは白煙を生じにくくなる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、省エネルギーで、かつ長期間持続的に除湿と熱回収が可能になる省エネ型除湿および熱回収装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
膜の表面の空孔率が30%以上で、平均孔径15nm以上1μm以下、望ましくは450nm以下の親水性平膜と、波板状のスペーサー(中芯)を交互に積層して、除湿用の積層構造体、すなわち除湿器を製作する。
【0032】
親水性の平膜は、紙、不織布、高分子フィルムなどいずれのものでもよいが、再生セルロース製であることが望ましい。特に感染性微粒子の拡散が問題となる場合には多孔性多層構造体を持つ再生セルロース膜が必須である。
【0033】
平膜の表面と裏面の孔径および表面粗さが異なる方が良く、表面粗さについては、平膜の二次側表面積が、一次側表面積の10倍以上であることが望ましい。
【0034】
平膜を積層する際に、平膜と平膜の間に、波板状のスペーサー(中芯)を挟む。中芯は、波板形状の方向が各層において互いに交差するように配置する。これによって波板状の中芯の谷の部分が流路となり、各層において一次側流路と二次側流路の方向が交差することとなる。一次側流路を通過する高湿空気から、膜を介して水蒸気が除湿され、二次側の低湿空気へ輸送され、排出される。同時に高湿空気中の水蒸気が持つ蒸発潜熱の一部が、一次側空気へ回収される。輸送機構は表面拡散流れであり、孔拡散の一部であり、この輸送での目詰まりはない。
【0035】
中芯の高さは同じでもよいが、望ましくは一次側の中芯の高さよりも、二次側の中芯の高さの方を大きくする。その結果、二次側を流れる低湿空気の流速が速くなり、除湿性能が向上する。具体的には、一次側流路に使用される中芯の高さを3mmとし、二次側流路に使用される中芯の高さをその1.5倍以上、すなわち4.5mm以上とすると、二次側の流路に外気を導入しやすくなり、一次側と二次側の流速の差がさらに大きくなり、除湿性能が向上する。
【0036】
平膜と中芯の積層体で構成される積層構造体は、一定の積層数、一定の膜面積で一つの構成単位、いわゆる除湿器となる。除湿器単体でも使用できるが、複数の除湿器を、一次側流通経路が一本の経路となってつながるように連結させて使用することもできる。該除湿器を空気の導入口と排出口を具備する容器にセットすると、除湿機能を発揮する除湿装置となる。
【0037】
除湿装置は、一次側流路ができるだけ長く、二次側流通経路をできるだけ短くする。具体的には40cm四方、厚さ100μmの平膜を、厚さ3mmの中芯と交互に100層積層し、40cm四方、厚さ31cmの除湿器を得る。この除湿器を、一次側流路が一本の通路になるように10個連結し、容器にセットすると除湿装置となる。一次側流路の長さは4mとなるが、二次側流路の長さは40cmのままであり二次側に生じる空気抵抗は小さい。二次側は流路の長さが短いため、二次側を流れる低湿空気の湿度は上昇しすぎることがなくなり、除湿性能の低下も抑制される。同時に一次側を流れる高湿空気は長い流路を流れるため、確実に除湿される。
【0038】
除湿器を連結する場合、連結方向における最初部にオイルミスト吸着器を、また最後部には脱臭器あるいは除菌・ウイルスフィルターを取り付けることもできる。オイルミスト吸着器は、除湿器にオイルミストが付着することを防止し、脱臭器や除菌・ウイルスフィルターは処理対象の空気に含まれるにおい成分やアレルゲン、ウイルスなど有害粒子を除去し、清浄な空気を提供できるようにする。オイルミスト吸着器としては、ポリプロピレン製の不織布で作られたフィルタや充填物が適する。脱臭器には活性炭などの非極性の吸着材が適する。除菌フィルター、ウイルスフィルターには、除湿器に使用されている再生セルロース製平膜と同等品を設置する。
【0039】
以上のように構成された除湿装置の使用方法について説明する。除湿装置は、連結された除湿器と、空気の導入口および排出口を具備した容器からなる。除湿装置内の一次側流路に、たとえば乾燥機などを経た高湿空気を導入し、二次側流路には例えば外気などの低湿空気を導入する。その結果、高湿空気中の水蒸気が平膜表面に吸着され、平膜を介して反対側の低湿空気に排出されて、除湿される。
【0040】
二次側に外気を導入する際には、一次側に比べ三倍以上の流速になるように導入する。また二次側流路内の低湿空気の流れは、重力に対して下から上へ流すことにより、除湿器内の温度上昇に伴う対流を利用して二次側における流速が速くなり、その結果除湿性能が向上する。
【0041】
除湿器を回転させることによって二次側へ空気を導入させることもできる。その回転動力は電気力だけでなく、一次側に導入する空気の流れによって生じる力や、あるいは自然に発生する風力を利用することもできる。
【0042】
一部の膜が破損した際には、その破損個所の除湿器を新たな交換するだけで装置全体の機能は維持できる。結果として消耗した除湿器を交換、あるいは洗浄、あるいはメンテナンスするだけで、装置全体は持続的に使用できる。
【0043】
本発明技術においては、一次側における流速に比べて、二次側の流速を大きくすればするほど、除湿性能が大きくなる。そのため、大きな流量を持つ外気を活用できる電車や自家用車、航空機など高速で移動する空間への適用は、本発明技術の効果を最大限発揮できる手法である。すなわち、大きな流量を持つ外気を、除湿装置の二次側流路に導入することで、平膜を介した一次側高湿空気からの除湿を速い速度で行うことができる。
【0044】
また本発明技術は、工場排ガスの白煙対策にもなる。本発明技術による除湿装置の一次側に排ガスを導入し、除湿した後、大気へ放出する。その結果、排ガスは水蒸気を伴わず、白煙を生じない。その際、二次側は大気に開放し、例えば煙突の側面を二次側への大気導入口とすることで、上空の気流を利用することができる。
【実施例1】
【0045】
工業用乾燥機へ適用する例について説明する。膜の表面の空孔率が70%で、平均孔径35nmの親水性再生セルロース製平膜と、紙からなる波板状の中芯を交互に積層して、除湿器を製作する。平膜を積層する際に、平膜と平膜の間に、波板状のスペーサー(中芯)を挟む。中芯は、波板形状の方向が各層において互いに交差するように配置する。これによって波板状の中芯の谷の部分が流路となる。結果として、平膜と中芯に挟まれた流路は、各層において交差することとなり、一次側流路と、二次側流路の方向が交差する。一次側流路に使用される中芯の高さを3mmとし、二次側流路に使用される中芯の高さを5mmとする。40cm四方、厚さ100μmの平膜を、厚さ3〜5mmの中芯と交互に100層積層し、40cm四方、厚さ41cmの除湿器を作製する。
【0046】
この除湿器を、一次側流路が一本の通路になるように10個連結し、空気の導入口および排出口を具備した容器にセットして、除湿装置とする。連結された除湿器の最初部にはオイルミスト吸着器をセットする。
【0047】
除湿装置内の一次側流路に、工場における乾燥機、例えば食品乾燥機などを経た高湿空気を導入し、二次側流路には例えば外気などの低湿空気を導入する。二次側に外気を導入する際には、一次側に比べて三倍以上の流速で導入し、重力に対して下から上へ流す。その結果、高湿空気中の水蒸気が平膜表面に吸着され、平膜を介して反対側の低湿空気に排出されて、除湿される。
【0048】
高湿空気中の水蒸気は、高親水性のセルロース膜を通し、低湿空気側に排出されると同時に、水蒸気中に含まれる蒸発潜熱を吸着熱として回収して温度が上昇あるいは維持されつつ除湿装置一次側流路を通り抜け、再び乾燥機において再利用される。乾燥機には常に清浄な乾燥空気が循環する。
【0049】
また除湿装置の二次側流路から排出される排ガスは、一次側の三倍以上の流速で排出され、吸着熱で大気より温度が低下またはほぼ同一なため、結果として白煙を生じにくい。
【実施例2】
【0050】
電車や自家用車、航空機など高速で移動する空間への適用について説明する。膜の表面の空孔率が70%で、平均孔径35nmの親水性再生セルロース製平膜と、紙からなる波板状の中芯を交互に積層して、除湿器を製作する。平膜を積層する際に、平膜と平膜の間に、波板状のスペーサー(中芯)を挟む。中芯は、波板形状が各層において互いに交差するように配置する。これによって波板状の中芯の谷の部分が流路となる。結果として、平膜と中芯に挟まれた流路は、各層において交差することとなり、一次側流路と、二次側流路が交差する。40cm四方、厚さ100μmの平膜を、厚さ3mmの中芯と交互に50層積層し、40cm四方、厚さ15.5cmの除湿器を作製する。
【0051】
この除湿器を、一次側流路が一本の通路になるように5個連結し、空気の導入口および排出口を具備した容器にセットして、除湿装置とする。連結された除湿器の最初部にはオイルミスト吸着器を、また最後部には脱臭器および除菌・ウイルスフィルターをセットする。オイルミスト吸着器は、ポリプロピレン製の不織布で作られたフィルタを使用し、また脱臭器には活性炭の吸着材を充填したフィルタを使用する。除菌、あるいはウイルスフィルターには、除湿器に使用されている再生セルロース製平膜と同等品を設置する。
【0052】
除湿装置を、たとえば航空機の外側に貼り付けるように設置し、一次側流路には航空機室内で発生する高湿空気を導入し、二次側流路には流速の速い外気をそのまま導入する。除湿装置の外観は航空機に比較して極めて薄く、航空機の外観を損ねない。
【0053】
除湿装置内の一次側流路に、航空機室内で発生する高湿空気を導入し、二次側流路には大きな流速の外気などの低湿空気を導入する。高湿空気中の水蒸気は平膜表面に吸着され、平膜を介して反対側の大きな流速で流れる低湿空気に排出されて、除湿される。
【0054】
室内の空気は、一次側最後部に設置された除菌・ウイルスフィルターを通り、常に清浄な乾燥空気が循環する。車内や機内といった狭い空間ではウイルスの飛散が大きな問題であるが、例えば各客席そばに吸い込み口を設置することで、乗客近辺の空気は速やかに回収され、ウイルスの飛散が抑制される。
車内では常に清浄な乾燥空気が供給され、均一な雰囲気となるため、快適な温湿度を安定的に制御しやすくなる。
【実施例3】
【0055】
工場排ガスの白煙対策として適用する例について説明する。膜の表面の空孔率が70%で、平均孔径35nmの親水性再生セルロース製平膜と、紙からなる波板状の中芯を交互に積層して、除湿器を製作する。平膜を積層する際に、平膜と平膜の間に、波板状のスペーサー(中芯)を挟む。中芯は、波板形状の方向が各層において互いに交差するように配置する。これによって波板状の中芯の谷の部分が流路となる。結果として、平膜と中芯に挟まれた流路は、各層において交差することとなり、一次側流路と、二次側流路の方向が交差する。一次側流路に使用される中芯の高さを3mmとし、二次側流路に使用される中芯の高さを5mmとする。40cm四方、厚さ100μmの平膜を、厚さ3〜5mmの中芯と交互に100層積層し、40cm四方、厚さ41cmの除湿器を作製する。
【0056】
この除湿器を、一次側流路が一本の通路になるように10個連結し、空気の導入口および排出口を具備した容器にセットして、除湿装置とする。連結された除湿器の最初部にはオイルミスト吸着器をセットする。除湿器は例えば排ガスが流通している煙突内に設置し、一次側排出口を上に向けてセットする。二次側導入口は煙突側面から大気に開放するように設置する。
【0057】
除湿装置内の一次側流路に、工場における高湿排ガスを導入する。二次側流路は煙突側面から気流が導入できるようにする。あるいは上空の気流を利用して風車などを回転させることによって、効率的に二次側導入口へ導入する。その結果、高湿排ガス中の水蒸気が平膜表面に吸着され、平膜を介して反対側の低湿空気に排出されて、除湿される。その結果排ガスは白煙とならないまま、大気中へ排出される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本技術は省エネ型の除湿および熱回収を行うもので、かつアレルゲンやウイルスなどに対して閉鎖空間を作ることができ、工業用の乾燥工程用、室内空間用、および実験施設向けなどに利用可能である。工業用途としては、特に省エネルギーであるため、除湿・熱回収工程における低コスト化に利用できる。たとえば食品乾燥機、木材乾燥施設などである。室内空間用としては、浴室、実験施設などの除湿・除菌・ウイルス除去用として利用できる。また、本技術の二次側における流速が速いほど除湿性能が大きくなる性質を生かし、電車、バス、航空機など移動空間用の除湿・除菌・ウイルス除去用としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】

【図1】除湿器除湿装置に内蔵される、平膜と中芯を交互に積層させた除湿用積層構造体。
【図2】除湿装置と、適用図空気の導入口ならびに排出口を具備する容器に、連結した除湿器をセットした除湿装置と、その装置を乾燥機に適用させたイメージ図
【符号の説明】
【0060】

1,除湿器
2,平膜
3,中芯
4,一次側流路
5,一次側流れ
6,二次側流路
7,二次側流れ
8,高湿空気(一次側)流れ
9,低湿空気(二次側)流れ
10,除湿装置
11,ロータリードライヤー
12,ヒーター
13,白煙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性が高く、表裏面の孔径および表面粗さが異なる平膜で構成される除湿装置において、平膜を境に、高湿空気が流通する一次側と、低湿空気が流通する二次側とが交互に存在する要素が複数個存在し、一次側を流れる高湿空気が含む水蒸気が平膜に吸湿され、二次側へ排出されると共に、水蒸気の持つ蒸発潜熱の一部を回収することを特徴とする省エネ型除湿および熱回収装置。

【請求項2】
請求項1の除湿および熱回収装置に内蔵される、平膜と波板状の中芯が積層された除湿器において、一次側流路と二次側流路の方向が交差するように積層され、該除湿器が一次側流路が一本の経路となるように連結されることを特徴とする省エネ型除湿および熱回収装置。

【請求項3】
請求項2の除湿および熱回収装置に内蔵される除湿器において、二次側流路に設置される中芯の厚さが、一次側流路に設置される中芯の厚さに比べ1.5倍以上とすることを特徴とする省エネ型除湿および熱回収装置。

【請求項4】
請求項1の除湿および熱回収装置において、使用する多孔性、親水性平膜が、空孔率30%以上で、平均孔径15nm以上450nm以下であり、かつ、二次側を向く裏面の表面積が、一次側を向く表面の表面積の10倍以上であることを特徴とする省エネ型除湿および熱回収装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−76066(P2012−76066A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226635(P2010−226635)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(307002932)株式会社セパシグマ (23)
【Fターム(参考)】