説明

省電力マルチCPUシステム、画像形成装置

【課題】誤って全てのCPUの内部クロックを停止させることなく、一部のCPUの内部クロックのみを停止させて、消費電力を適切に抑制することができる、堅牢性のある省電力マルチCPUシステム及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】クロック信号を受け付けて動作する複数のCPU10,11と、各CPUにより制御され、当該CPU以外の他のCPUに対するクロック信号の供給及び当該供給の遮断を行う信号供給制御部12〜15と、各CPUに対するクロック信号の供給を監視して、各CPUに対するクロック信号の供給の全てが遮断されているか否かを判断する監視部16と、監視部16により、各CPUに対するクロック信号の供給の全てが遮断されていると判断されたときには、信号供給制御部12〜15により、各CPUのうちいずれかのCPUに対するクロック信号の供給を再開する遮断解除制御部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力マルチCPUシステム及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、電子機器の高機能化に伴って、制御部の制御パフォーマンスを向上させることが望まれている。そのため、制御部には、複数のCPUコアが設けられることが多い。このように、複数のCPUコアが設けられることにより、制御部の制御パフォーマンスが向上する。
【0003】
一方で、近年、電子機器の消費電力を抑制することが望まれており、この種の複数のCPUコアが設けられた電子機器においても、省電力を図るための様々な技術が開発されている。
【0004】
特許文献1は、この種の複数のCPUコアが設けられた電子機器において、省電力を図ることができる省電力制御システムが記載されている。特許文献1に記載の省電力制御システムでは、2つのCPUコアの各々は通常動作モードと低消費電力動作モードとを実行可能とされている。
【0005】
この省電力制御システムは、省電力を図る際には、以下のように動作する。すなわち、一方のCPUコアが、通常動作モードよりも小さなクロック周波数で動作して、復帰イベントの有無を監視するとともに、他方のCPUコアが、内部クロックが殆ど停止する動作モードである低消費電力動作モードを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−47966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の省電力制御システムでは、低消費電力動作モードを実行して省電力を図ってはいるものの、他方のCPUコアの内部クロックは幾ばくか存在しており、内部クロックが完全に停止しているわけではない。そのため、更なる省電力のために、他方のCPUコアの内部クロックが完全に停止することが望まれる。
【0008】
ところで、全てのCPUコアの内部クロックが停止すると、いわゆるデッドロック状態となり、制御部は、後に続く処理を実行することができない。また、このようなデッドロック状態を解除するために、いずれか1つのCPUコアの内部クロックを復旧させることは、全てのCPUコアの内部クロックが停止しているため、困難である。
【0009】
したがって、誤って全てのCPUコアの内部クロックを停止させずに、一部のCPUコアの内部クロックのみを停止させることが望まれる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するために提案されるものであり、誤って全てのCPUの内部クロックを停止させることなく、一部のCPUの内部クロックのみを停止させて、消費電力を適切に抑制することができる、堅牢性のある省電力マルチCPUシステム及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面に係る省電力マルチCPUシステムは、クロック信号を受け付けて動作する複数のCPU(Central Processing Unit)と、前記各CPUにより制御され、当該CPU以外の他のCPUに対する前記クロック信号の供給及び当該供給の遮断を行う信号供給制御部と、前記各CPUに対する前記クロック信号の供給を監視して、前記各CPUに対する前記クロック信号の供給の全てが遮断されているか否かを判断する監視部と、前記監視部により、前記各CPUに対する前記クロック信号の供給の全てが遮断されていると判断されたときには、前記信号供給制御部により、前記各CPUのうちいずれかのCPUに対する前記クロック信号の供給を再開する遮断解除制御部と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
この構成によれば、各CPUが、信号供給制御部を制御して、当該CPU以外の他のCPUに対するクロック信号の供給及び当該供給の遮断を行う。
【0013】
これにより、各CPUが、信号供給制御部により、他のCPUに対するクロック信号の供給を遮断させることができる。
【0014】
また、各CPUが、信号供給制御部により、他のCPUに対するクロック信号の供給を遮断させた結果、全てのCPUに対するクロック信号の供給が遮断された状態となったときには、この状態が監視部により判断される。このとき、遮断解除制御部により、各CPUのうちいずれかのCPUに対するクロック信号の供給を再開する。
【0015】
以上により、誤って全てのCPUの内部クロックを停止させることなく、一部のCPUの内部クロックのみを停止させて、消費電力を適切に抑制することができる。
【0016】
上記構成において、前記遮断解除制御部は、前記信号供給制御部により、前記各CPUのうちいずれかのCPUの前記クロック信号の供給を再開したときには、当該いずれかのCPUに対して、予め設定された異常通知を行うことが好ましい(請求項2)。
【0017】
この構成によれば、遮断解除制御部は、各CPUのうちいずれかのCPUに対するクロック信号の供給を再開したときには、当該いずれかのCPUに対して、予め設定された異常通知を行う。
【0018】
これにより、当該いずれかのCPUは、クロック信号の供給を受け付けて動作状態となったときに、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことが判る。そのため、当該いずれかのCPUが、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことをログに記憶させ、その後、当該ログを基にしてエラー解析を行うなどの処理を行うことができる。
【0019】
上記構成において、前記各CPUにより制御され、当該CPUへ供給される前記クロック信号の周波数を変更する周波数変更部をさらに備えることが好ましい(請求項3)。
【0020】
この構成によれば、各CPUにより、当該CPUへ供給されるクロック信号の周波数を変更することができる。
【0021】
そのため、当該CPU以外の他のCPUに対するクロック信号の供給を遮断するとともに、当該CPU自身の内部クロックの周波数を小さくすることができる。これにより、更なる省電力を図ることができる。
【0022】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の省電力マルチCPUシステムと、原稿の画像を表す画像データを記録紙上に形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする(請求項4)。
【0023】
この構成によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の省電力マルチCPUシステムを備える画像形成装置を提供することができる。そのため、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の効果を奏する画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、誤って全てのCPUの内部クロックを停止させることなく、一部のCPUの内部クロックのみを停止させて、消費電力を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の概略構成の一例を示した機能ブロック図である。
【図3】制御部の概略構成の一例を示した機能ブロック図である。
【図4】動作状態のメインCPUが休止状態に遷移し、休止状態のサブCPUが動作状態に遷移する状態を示したフローチャートである。
【図5】動作状態のサブCPUが休止状態に遷移し、休止状態のメインCPUが動作状態に遷移する状態を示したフローチャートである。
【図6】監視部及び遮断解除制御部の基本動作の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る省電力マルチCPUシステム及び画像形成装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符合を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。図1に示されるように、画像形成装置Aは、画像読取部200と装置本体3とを備える。画像読取部200は、原稿給紙部210と、スキャナ部220と、CIS231と、ユーザインタフェース部Iと、後述する反転機構を備えてなる。
【0028】
原稿給紙部210は、ADF(Automatic Document Feeder)を備え、原稿トレイ211、ピックアップローラ212、プラテン213、排紙ローラ214及び排紙トレイ215を有する。原稿トレイ211には、読取対象とされる原稿が載置される。原稿トレイ211に載置された原稿は、1枚ずつピックアップローラ212によって取り込まれ、間隙を介して順次プラテン213へ搬送される。プラテン213を経由した原稿は、排紙ローラ214によって排紙トレイ215へ順次排出される。
【0029】
前記プラテン213の周面に対向する位置のうち、原稿の搬送方向において読取位置Pより手前の予め定められた位置には、用紙を検出する図略のタイミングセンサが設置されており、該タイミングセンサの出力要求に基づき、前記読取位置Pへの原稿の搬送タイミングが図られる。前記タイミングセンサは、例えばフォトインタラプタにより構成される。
【0030】
スキャナ部220は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成するものである。スキャナ部220は、ガラス221、光源222、第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227、結像レンズ228、CCD(Charged Coupled Device)229を備える。
【0031】
このスキャナ部220は、光源222として冷陰極蛍光管等の白色蛍光ランプが用いられ、前記第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227及び結像レンズ228により、原稿からの光をCCD229に導く。スキャナ部220は、光源222として冷陰極蛍光管等の白色蛍光ランプを用いて構成されていることから、光源として3色LED等が用いられる後述のCIS231よりも色再現性に優れる。
【0032】
ガラス221には、前記原稿給紙部210によらない原稿読取時に、ユーザの手動により原稿が載置される。光源222及び第1ミラー223は第1キャリッジ226によって支持され、第2ミラー224及び第3ミラー225は第2キャリッジ227によって支持されている。
【0033】
画像読取部200の原稿読取方式として、ガラス221上に載置された原稿をスキャナ部220が読み取るフラットベッド読取モードと、原稿を原稿給紙部210(ADF)によって取り込み、その搬送途中で原稿を読み取るADF読取モードがある。
【0034】
フラットベッド読取モードでは、光源222がガラス221上に載置された原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はCCD229の受光面で結像される。
【0035】
CCD229は一次元のイメージセンサであり、1ライン分の原稿の画像データを重複して処理する。第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227は、主走査方向と直交する方向(副走査方向、矢印Y方向)に移動可能に構成されており、1ライン分の読み取りが終了すると、副走査方向に第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が移動し、次のラインの読み取りが行われる。
【0036】
ADF読取モードでは、原稿給紙部210が原稿トレイ211に載置された原稿をピックアップローラ212によって1枚ずつ取り込む。このとき、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227は、読取窓230の下方に位置する予め定められた読取位置Pに配置される。
【0037】
原稿給紙部210による原稿搬送で、原稿がプラテン213から排紙トレイ215への搬送経路に設けられた読取窓230上を通過するとき、光源222が原稿を照射し、主走査1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はCCD229の受光面で結像される。続いて原稿は原稿給紙部210によって搬送され、次のラインが読み取られる。
【0038】
更に、原稿給紙部210は、切換ガイド216、反転ローラ217及び反転搬送路218を備えた原稿反転機構を有する。この原稿反転機構が、1回目のADF読み取りによって表面が読み取られた原稿を表裏反転させて読取窓230に再搬送することで、再度CCD229によって裏面の読み取りが行われる。
【0039】
この原稿反転機構は、両面読み取り時にのみ動作し、片面読み取り時は動作しない。片面読み取り時及び両面読み取り時において裏面の読み取り後、切換ガイド216は上側に切り替えられ、プラテン213を経た原稿は、排紙ローラ214によって排紙トレイ215に排紙される。
【0040】
両面読み取り時における表面読み取り後、切換ガイド216は下側に切り替えられ、プラテン213を経た原稿は反転ローラ217によって反転搬送路218へ搬送される。その後、切換ガイド216は上側へ切り替わり、反転ローラ217が逆回転して原稿をプラテン213へ再給紙する。以下、原稿反転機構を用いて原稿の両面を読み取らせるモードを両面反転読取モードと表記する。
【0041】
更に、本実施形態の画像読取部200は、ADF読取モード時において、前述したように原稿の搬送途中でCCD229(スキャナ部220)によって原稿の表面の読み取りを行わせると略重複して(略並行して)、CIS231によって原稿の裏面の読み取りを行わせることが可能である。この場合、原稿トレイ211から原稿給紙部210により搬送された原稿は、読取窓230上を通過するときにCCD229によって表面が読み取られ、更にCIS231の配置箇所を通過する際に裏面が読み取られる。なお、CIS231では、光源としてRGBの3色LED等が用いられる。
【0042】
このようにCCD229とCIS231を用いることで、原稿給紙部210による原稿トレイ211から排紙トレイ215までの一回の原稿搬送操作(ワンパス)によって原稿の表裏両面の読み取りが可能となる。以下、このようにCCD229とCIS231を用いて原稿の両面を読み取らせるモードを両面同時読取モードと表記する。
【0043】
この両面反転読取モード及び両面同時読取モードは、ADF読取モードを用いて原稿の両面読み取りを行う際の読取モードとして備えられている。両面反転読取モードは、両面の印刷画像の画質を揃えたい場合に利用される一方、両面同時読取モードは、両面の印刷画像の画質に差があっても、読取時間の短縮化を優先させたい場合に利用される。なお、本実施形態における画像形成装置Aは、両面同時読取モードに初期設定されており、前記読取モードのモード設定操作が何も行われないまま画像形成指示が入力された場合には、両面同時読取モードで原稿の画像読取動作が行われるようになっている。
【0044】
画像処理装置Aは、装置本体3と、装置本体3の左方に配設されたスタックトレイ6とを有している。装置本体3は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から記録紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた記録紙に画像を形成する画像形成部40とを備える。また、装置本体3は、給紙トレイ471と該給紙トレイ471に載置された原稿を1枚ずつ画像形成部40に向けて繰り出す繰り出しローラ472とを備える。
【0045】
画像形成部40は、感光体ドラム43の表面から残留電荷を除電する除電装置421と、除電後の感光体ドラム43の表面を帯電させる帯電装置422と、スキャナ部220で取得された画像データに基づいてレーザ光を出力して感光体ドラム43の表面を露光し、当該感光体ドラム43の表面に静電潜像を形成する露光装置423と、前記静電潜像に基づいて感光体ドラム43上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のトナー像を形成する現像装置44K,44Y,44M,44Cと、感光体ドラム43に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わせされる転写ドラム49と、転写ドラム49上のトナー像を用紙に転写させる転写装置41と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着装置45とを備えている。
【0046】
なお、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色に対するトナーの供給は、図略のトナーカートリッジから行われる。また、画像形成部40を通過した記録紙をスタックトレイ6又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等が設けられている。
【0047】
記録紙の両面に画像を形成する場合は、画像形成部40で記録紙の一方の面に画像を形成した後、この記録紙を排出トレイ48側の搬送ローラ463にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ463を反転させて記録紙をスイッチバックさせ、記録紙を用紙搬送路Lに送って画像形成部40の上流域に再度搬送し、画像形成部40により他方の面に画像を形成した後、記録紙をスタックトレイ6又は排出トレイ48に排出する。
【0048】
また、装置本体3の前方には、タッチパネルなどで構成された表示部106、及び、各種の操作ボタンを有する操作部105が組み込まれたユーザインタフェース部Iが、装置本体3の前方に露出するように設けられている。
【0049】
図2は、図1に示す画像形成装置の概略構成の一例を示した機能ブロック図である。図2に示すように、画像形成装置Aは、ユーザインタフェース部I、メインCPU10及びサブCPU11などを備えて構成されている制御部1、ROM(Read Only Memory)101、RAM(Ramdom Access Memory)102、画像読取部200、画像形成部40、画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部100、LANなどの通信ネットワークに接続するためのネットワークインタフェース103、及び、公衆回線を通じたファクシミリ通信を行うためのFAX通信部17を備える。
【0050】
この画像形成装置Aにおいて、ROM101及びRAM102には、この画像形成装置Aが動作するために必要な各種のプログラムなどが記憶されている。
【0051】
図3は、制御部1の概略構成の一例を示した機能ブロック図である。図3に示す制御部1では、第1バスB1と第2バスB2とがバスブリッジ25で接続されている。メインCPU10は第1バスB1上に配置されており、サブCPU11は第2バスB2上に配置されている。
【0052】
第1バスB1上には、メインCPU10の他に、第1レジスタ12、及びメッセージボックス18が配置されている。また、第2バスB2上には、サブCPU11の他に、第2レジスタ14、及びメッセージボックス18が配置されている。
【0053】
また、制御部1には、AND回路13、AND回路15、監視部16、及び、遮断解除制御部17が配置されている。尚、AND回路13、AND回路15、監視部16、及び、遮断解除制御部17は、第1バスB1及び第2バスB2のいずれかのバス上に配置されていてもよい。
【0054】
この制御部1において、第1レジスタ12及びAND回路15は、メインCPU10により制御され、サブCPU11に対するクロック信号の供給及び当該供給の遮断を行う第1の信号供給制御部を構成する。
【0055】
また、第2レジスタ14及びAND回路13は、サブCPU11により制御され、メインCPU10に対するクロック信号の供給及び当該供給の遮断を行う第2の信号供給制御部を構成する。
【0056】
さらに、第3レジスタ21は、クロック信号源23により生成されるクロック信号の周波数を変更するための第1の周波数変更部を構成する。更に、第4レジスタ22は、クロック信号源24により生成されるクロック信号の周波数を変更するための第2の周波数変更部を構成する。
【0057】
第1レジスタ12には、サブCPU11を休止状態にするための数値「1」、或いは、サブCPU11を動作状態にするための数値「0」が格納される。第1レジスタ12に格納された数値「1」はNOT回路20により数値「0」とされてAND回路15に向けて出力される。一方、第1レジスタ12に格納された数値「0」はNOT回路20により数値「1」とされてAND回路15に向けて出力される。
【0058】
第2レジスタ14には、メインCPU10を休止状態とするための数値「1」、或いは、メインCPU10を動作状態とするための数値「0」が格納される。第2レジスタ14に格納された数値「1」はNOT回路19により数値「0」とされてAND回路13に向けて出力される。一方、第2レジスタ14に格納された数値「0」はNOT回路19により数値「1」とされてAND回路13に向けて出力される。
【0059】
メッセージボックス18は、メインCPU10が動作状態から休止状態へ遷移するため、メインCPU10に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータが書き込まれる。
【0060】
また、メッセージボックス18は、サブCPU11が動作状態から休止状態へ遷移するため、サブCPU11に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータが書き込まれる。
【0061】
第3レジスタ21には、クロック信号源23から出力されるクロック信号の周波数を設定するための数値が格納される。第3レジスタ21へのこのような数値の書き込みは、メインCPU10の制御により行われる。
【0062】
第3レジスタ21に格納された数値はクロック信号源23へ出力され、クロック信号源23は、第3レジスタ21から出力された数値に基づく周波数のクロック信号を生成する。クロック信号源23により生成されたクロック信号は、AND回路13に向けて出力される。
【0063】
第4レジスタ22には、クロック信号源24から出力されるクロック信号の周波数を設定するための数値が格納される。第4レジスタ22へのこのような数値の書き込みは、サブCPU11の制御により行われる。
【0064】
第4レジスタ22に格納される数値はクロック信号源24へ出力され、クロック信号源24は、第4レジスタ22から出力された数値に基づく周波数のクロック信号を生成する。クロック信号源24により生成されたクロック信号は、AND回路15に向けて出力される。
【0065】
AND回路15には、クロック信号源24から出力されるクロック信号が入力されるとともに、第1レジスタ12に格納された数値がNOT回路20により反転して入力される。
【0066】
AND回路15は、NOT回路20より数値「1」が入力されているときには、入力されたクロック信号をそのまま出力信号として出力する。一方、AND回路15は、NOT回路20より数値「0」が入力されているときには、電圧レベルが一定でありパルスを含まない信号を出力する。
【0067】
これにより、第1レジスタ12に数値「0」が格納されているときには、サブCPU11にはクロック信号が供給されるが、第1レジスタ12に数値「1」が格納されているときには、サブCPU11にはクロック信号が供給されない。
【0068】
AND回路13には、クロック信号源23から出力されるクロック信号が入力されるとともに、第2レジスタ14に格納された数値がNOT回路19により反転して入力される。
【0069】
AND回路13は、NOT回路19より数値「1」が入力されているときには、入力されたクロック信号をそのまま出力信号として出力する。一方、AND回路13は、NOT回路19より数値「0」が入力されているときには、電圧レベルが一定でありパルスを含まない信号を出力する。
【0070】
これにより、第2レジスタ14に数値「0」が格納されているときには、メインCPU10にはクロック信号が供給されるが、第2レジスタ14に数値「1」が格納されているときには、メインCPU10にはクロック信号が供給されない。
【0071】
監視部16は、第1レジスタ12に格納されている数値と、第2レジスタ14に格納されている数値とを監視する。監視部16は、第1レジスタ12と第2レジスタ14とに、ともに数値「1」が格納されているときに、メインCPU10とサブCPU11との双方にクロック信号が供給されていないと判断して、遮断解除制御部17に通知する。
【0072】
遮断解除制御部17は、監視部16からの通知を受け付けたときには、第1レジスタ12及び第2レジスタ14に格納されている数値「1」を数値「0」に更新するとともに、メインCPU10及びサブCPU11に対して、異常を表すデータを出力して異常通知を行う。これにより、メインCPU10及びサブCPU11は、クロック信号の供給を受け付けて動作状態に遷移して、異常通知を受け付ける。
【0073】
この構成の制御部1は、通常動作モードと省電力モードとを実行する。通常動作モードでは、メインCPU10が動作状態とされておりサブCPU11が休止状態とされている。
【0074】
ところが、画像形成装置Aにおいて、ユーザインタフェース部Iにおいて何ら操作がされなかったり、FAX通信部104が公衆回線を通じた呼び出しを受けなかったり、ネットワークインタフェース103に何ら信号が入力されなかったりする状態が一定時間継続すると、制御部1は、省電力モードを実行する。
【0075】
省電力モードでは、メインCPU10が休止状態であり、サブCPU11が動作状態にある。尚、省電力モードでは、動作状態にあるサブCPU11に対するクロック信号の周波数を小さくしてもよい。こうすれば、更なる省電力を図ることができる。
【0076】
ここにおいて、省電力モードが実行されているときには、サブCPU11は、ユーザインタフェース部Iにおける操作など、省電力モードを終了させるべきイベントを監視する。
【0077】
以上の制御部1の基本動作について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、動作状態のメインCPU10が休止状態に遷移し、休止状態のサブCPU11が動作状態に遷移する状態を示したフローチャートである。
【0078】
図4に示すように、メインCPU10が動作状態(ステップS10)から休止状態へ遷移する際には、第1レジスタ12に数値「0」を格納させる(ステップS11)。これにより、サブCPU11へのクロック信号の供給が再開され、サブCPU11が動作状態に遷移する。
【0079】
また、メインCPU10は、メッセージボックス18に、メインCPU10に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータを書き込む(ステップS12)。これにより、メインCPU10に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータは、動作状態に遷移したサブCPU11により受け付けられる。
【0080】
そして、メインCPU10は、第2レジスタ14に格納されている数値が、サブCPU11により「1」に遷移するまでの間は(ステップS13のNO)、動作状態を維持する。一方、メインCPU10は、第2レジスタ14に格納されている数値が、サブCPU11により「1」に遷移したときには(ステップS13のYES)、クロック信号の供給が停止されるため、休止状態へ遷移する(ステップS14)。
【0081】
一方、サブCPU11は、メインCPU10により第1レジスタの数値が「0」に書き換えられたときに、動作状態へ遷移する(ステップS20〜S22)。
【0082】
そして、サブCPU11は、メッセージボックス18に、メインCPU10により、メインCPU10に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータが書き込まれているときには(ステップS23のYES)、第2レジスタ14に数値「1」を格納させる(ステップS24)。これにより、メインCPU10に対するクロック信号の供給が遮断されて、メインCPU10が休止状態に遷移する。
【0083】
以上の処理により、動作状態のメインCPU10に対するクロック信号の供給が停止されて休止状態に遷移する一方で、休止状態のサブCPU11に対するクロック信号の供給が再開されて動作状態に遷移する。
【0084】
尚、サブCPU11に対するクロック信号の供給が再開された後、サブCPU11が、クロック信号の周波数を表す数値として第4レジスタ22に格納されている数値を書き換えて、クロック信号の周波数を小さくしてもよい。こうすれば、更なる省電力効果を奏することが可能である。
【0085】
図5は、動作状態のサブCPU11が休止状態に遷移し、休止状態のメインCPU10が動作状態に遷移する状態を示したフローチャートである。
【0086】
図5に示すように、動作状態のサブCPU11は、省電力モードを終了するためのイベントを監視し、イベントが発生したときには(ステップS30及びS31のYES)、第2レジスタ14に数値「0」を格納させる(ステップS32)。これにより、メインCPU10へのクロック信号の供給が再開され、メインCPU10が動作状態に遷移する。
【0087】
また、サブCPU11は、メッセージボックス18に、サブCPU11に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータを書き込む(ステップS33)。これにより、サブCPU11に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータは、動作状態に遷移したメインCPU10により受け付けられる。
【0088】
そして、サブCPU11は、第1レジスタ12に格納されている数値が、メインCPU10により「1」に遷移するまでの間は(ステップS34のNO)、動作状態を維持する。一方、サブCPU11は、第1レジスタ12に格納されている数値が、メインCPU10により「1」に遷移したときには(ステップS34のYES)、クロック信号の供給が停止されるため、休止状態へ遷移する(ステップS35)。
【0089】
一方、メインCPU10は、サブCPU11により第2レジスタ14の数値が「0」に書き換えられたときに、動作状態へ遷移する(ステップS40〜S42)。
【0090】
そして、メインCPU10は、メッセージボックス18に、サブCPU11により、サブCPU11に対するクロック信号の供給の遮断を要求するためのデータが書き込まれているときには(ステップS43のYES)、第1レジスタ12に数値「1」を格納させる(ステップS44)。これにより、サブCPU11に対するクロック信号の供給が遮断されて、サブCPU11が休止状態に遷移する。
【0091】
以上の処理により、動作状態のサブCPU11に対するクロック信号の供給が停止されて休止状態に遷移する一方で、休止状態のメインCPU10に対するクロック信号の供給が再開されて動作状態に遷移する。
【0092】
図6は、監視部16及び遮断解除制御部17の基本動作の一例を示したフローチャートである。
【0093】
監視部16は、第1レジスタ12及び第2レジスタ14に格納されている数値を常時監視しており、第1レジスタ12及び第2レジスタ14ともに、数値「1」を格納している場合には(ステップS50のYES、及び、ステップS51のYES)、その旨を遮断解除制御部17に通知する。
【0094】
すると、遮断解除制御部17は、第1レジスタ12及び第2レジスタ14に格納されている数値を「0」に書き換える(ステップS52)。さらに、遮断解除制御部17は、メインCPU10及びサブCPU11に、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことを通知するため、異常通知を行う(ステップS53)。
【0095】
これにより、メインCPU10及びサブCPU11に対するクロック信号の供給が再開されるため、メインCPU10及びサブCPU11は休止状態から動作状態に遷移する。
【0096】
また、メインCPU10及びサブCPU11に対する異常通知が行われるため、メインCPU10及びサブCPU11は、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことが判る。そのため、メインCPU10及びサブCPU11は、メインCPU10及びサブCPU11、つまり、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことをログに記憶させ、その後、当該ログを基にしてエラー解析を行うなどの処理を行うことができる。
【0097】
尚、遮断解除制御部17は、第1レジスタ12及び第2レジスタ14のいずれか一方においてのみ、数値「0」を格納させてもよい。例えば、遮断解除制御部17は、第2レジスタ14に格納されている数値を「0」に書き換える一方で、第1レジスタ12に格納されている数値を「1」のままとする。このとき、遮断解除制御部17は、メインCPU10にのみ異常通知を行う。
【0098】
その結果、メインCPU10に対するクロック信号の供給が再開されて、メインCPU10が休止状態から動作状態に遷移する。このとき、メインCPU10に対して異常通知が行われているため、メインCPU10は、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことが判る。
【0099】
これにより、メインCPU10は、全てのCPUへのクロック信号の供給が遮断される異常な状態が生じたことをログに記憶させ、その後、当該ログを基にしてエラー解析を行うなどの処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0100】
A 画像形成装置
10 メインCPU
11 サブCPU
12 第1レジスタ
13、15 AND回路
14 第2レジスタ
16 監視部
17 遮断解除制御部
18 メッセージボックス
19,20 NOT回路
21 第3レジスタ
22 第4レジスタ
23,24 クロック信号源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を受け付けて動作する複数のCPU(Central Processing Unit)と、
前記各CPUにより制御され、当該CPU以外の他のCPUに対する前記クロック信号の供給及び当該供給の遮断を行う信号供給制御部と、
前記各CPUに対する前記クロック信号の供給を監視して、前記各CPUに対する前記クロック信号の供給の全てが遮断されているか否かを判断する監視部と、
前記監視部により、前記各CPUに対する前記クロック信号の供給の全てが遮断されていると判断されたときには、前記信号供給制御部により、前記各CPUのうちいずれかのCPUに対する前記クロック信号の供給を再開する遮断解除制御部と、
を備えることを特徴とする省電力マルチCPUシステム。
【請求項2】
前記遮断解除制御部は、
前記信号供給制御部により、前記各CPUのうちいずれかのCPUに対する前記クロック信号の供給を再開したときには、当該いずれかのCPUに対して、予め設定された異常通知を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の省電力マルチCPUシステム。
【請求項3】
前記各CPUにより制御され、当該CPUへ供給される前記クロック信号の周波数を変更する周波数変更部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の省電力マルチCPUシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の省電力マルチCPUシステムと、
原稿の画像を表す画像データを記録紙上に形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204191(P2011−204191A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73471(P2010−73471)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】