説明

真空断熱材、真空断熱材用芯材およびその製造方法

【課題】 断熱性能に優れた真空断熱材、真空断熱材用芯材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 外被材内に、無機繊維積層材料で構成されている芯材が減圧密封されてなる真空断熱材であって、該真空断熱材中の芯材の密度が、200〜270kg/m3であり、前記外被材を開包した後の芯材が、繊維長100μm以上の無機繊維を75%以上含有していることを特徴とする真空断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材、真空断熱材用芯材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機繊維からなる芯材を外被材内に減圧密封することによって得られる真空断熱材は、断熱性能が優れているため近年広く使用されている。通常、真空断熱材は、該真空断熱材中の減圧度を高くすればするほど、断熱性能がそれだけ高くなるものであるが、真空断熱材の芯材を構成している無機繊維の状態によってもその性能は大きく変ることが特許文献1によって知られている。特許文献1では、真空断熱材の芯材として無機繊維からなる芯材を用いた場合、上記芯材を構成している無機繊維の配向を、真空断熱材の伝熱方向に垂直な状態に保つだけでは、熱が無機繊維によって伝わるために、芯材の固体熱伝導率が大きくなってしまい、芯材の初期熱伝導率の低減ができないことから、芯材を構成している無機繊維の配向を、真空断熱材の伝熱方向に垂直な状態を保ちながらも、芯材を構成している無機繊維の繊維長を短く制御することにより、無機繊維による伝熱を抑制し、芯材の固体熱伝導率を低減することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−11756公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載された発明では、芯材を構成している無機繊維の繊維長を短く制御することにより、真空断熱材の断熱性能を向上させているものの、上記発明では、未だ充分な断熱性能を有する真空断熱材が得られていない。本発明者は、芯材を構成している無機繊維の繊維長などが真空断熱材の断熱性能に大きな影響を与えると考えて検討した。その結果、短い無機繊維を用いて真空断熱材の芯材を構成し、一定重量の芯材を用いて真空断熱材を得る場合、芯材の反発力が小さくなるため、真空断熱材が嵩高にならない。また、この場合には必然的に芯材の厚みが薄くなることに起因して真空断熱材の熱抵抗値が向上しない。一方、短い無機繊維を用いて一定の厚みの芯材を得ようとする場合には、長い無機繊維を用いた場合に比較してさらに多くの量の無機繊維が必要となる。その結果、得られた芯材は、短い無機繊維が多く含まれていることから高密度となって、芯材中での無機繊維間同士の接点が増え、そのため芯材の厚み方向に伝わる熱伝導率が増すことになる。このような点が、前記特許文献1に記載された発明では、充分な断熱性能を有する真空断熱材が得られない理由であると考えられる。
【0004】
本発明は、上記従来技術の真空断熱材の問題を解決するために為されたものであり、その目的は、断熱性能に優れた真空断熱材、真空断熱材用芯材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、外被材内に、無機繊維積層材料で構成されている芯材が減圧密封されてなる真空断熱材であって、該真空断熱材中の芯材の密度が、200〜270kg/m3であり、前記外被材を開包した後の芯材が、繊維長100μm以上の無機繊維を75%以上含有していることを特徴とする真空断熱材を提供する。
【0006】
上記の真空断熱材においては、前記外被材を開包した後の芯材が、繊維長1.0mm以上の無機繊維を60%以上含有していること;前記芯材全体に、バインダーが実質的に均等に付着していること;前記バインダーの量が、前記バインダーを含む芯材の質量の0.5〜3.0質量%を占める量であること;前記芯材を、その厚み方向に対して直交する方向に略3等分して表面層と中間層と裏面層とに分けたときに、表面層または裏面層のバインダー付着量を100質量%としたとき、前記中間層のバインダーの付着量が、70〜130質量%であること;前記バインダーが、有機バインダーであること;および前記芯材を、その厚み方向に対して直交する方向に略3等分して表面層と中間層と裏面層とに分けたときに、3等分した全ての層におけるバインダーの付着量が、0.5〜3.5質量%であることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、外被材で減圧密封される前の無機繊維積層材料からなる真空断熱材用芯材であって、繊維長100μm以上の無機繊維を80%以上含有することを特徴とする真空断熱材用芯材を提供する。また、本発明は、無機原料を繊維化し、該繊維に未硬化熱硬化性樹脂バインダーを付着させて集綿し、該集綿させた繊維を圧縮密度100〜250kg/m3に押圧して加熱することを特徴とする真空断熱材用芯材の製造方法を提供する。
【0008】
上記本発明の製造方法においては、無機原料を繊維化し、該繊維に水を噴霧した後に、未硬化熱硬化性樹脂バインダーを付着させて集綿し、該集綿させた繊維を押圧して加熱すること;前記バインダーを、固形分濃度2〜10質量%の液状で無機繊維に付着させること;および前記バインダーを、バインダーとエアーとの二流体方式のスプレーを用いて無機繊維に付着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、断熱性能に優れた真空断熱材、真空断熱材用芯材およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の真空断熱材は、無機繊維積層材料から構成されている芯材と、該芯材を内包している外被材とからなる。上記無機繊維積層材料から構成される芯材とは、例えば、無機繊維積層材料が1枚の無機繊維マットからなる場合は、該1枚の無機繊維マットを芯材とし、無機繊維マットを複数枚を重ねてた場合は、それらの積層物を芯材という。本発明で使用する無機繊維は特に限定されない。例えば、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維など、特に限定されるものではない。このうち、断熱性能に優れ、比較的安価に得られる点からグラスウールを用いることが好ましい。これらとともに有機繊維を混ぜて使用することも可能である。
【0011】
前記無機繊維の平均径は1〜5μmであることが好ましい。前記値が1μm未満であると、無機繊維自体の製造が困難であり好ましくない。一方、前記値が5μmを超えると、最終的に得られる真空断熱材自体の熱性能が低下するため好ましくない。
【0012】
上記無機繊維積層材料は、前記無機繊維にバインダーを付着させることが、該積層材料を真空断熱材の外被である袋内に挿入する時のハンドリング性の点で好ましい。ここで使用するバインダーは特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性の有機バインダー、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂などの熱可塑性の有機バインダー、ホウ酸、酸化ホウ素、リン酸、コロイダルシリカ、水ガラス、アルミナゾル、セッコウ、ケイ酸ナトリウム、アルキルシリケートなどの無機バインダーなどが挙げられ、そのうち無機繊維にバインダーを均一に、しかも効率よく付着させる点、および無機繊維積層材料(=無機繊維マットの積層物、芯材)の密度を高くして、積層材料の断熱性能を低下させないためには、熱硬化性の有機バインダーが好ましい。
【0013】
上記バインダーの使用量は、該バインダーを含む無機繊維の質量を100質量部としたとき、バインダーが0.5〜3.0質量部を占める量が好ましく、0.5〜2.0質量部を占める量であることがさらに好ましい。また、上記バインダーがフェノール樹脂を主体としたものである場合、上記付着量は0.5〜1.5部を占める量であることがより好ましい。これらバインダーの付着量が0.5質量部未満であると、無機繊維積層材料を構成している無機繊維マットが嵩張り、かつ該マットが柔軟性を有するため、該マットからなる芯材を真空断熱材の外被材内に充填しにくく好ましくない。一方、上記付着量が3.0質量部を超えると、過剰のバインダーが無機繊維に付着することにより、該無機繊維からなる芯材から、真空断熱材中においてガス発生が生じ易くなり、結果として真空断熱材の断熱性能が劣ることになって好ましくない。
【0014】
以上のように、前記芯材を構成している無機繊維にはバインダーが付着しているが、該バインダーは、芯材を構成している無機繊維全体に実質的に均等に付着していることが好ましく、このような無機繊維から芯材を形成したときにバインダーが芯材中に実質的に均一に分布することになるので好ましい。芯材中におけるバインダーの存在が実質的に均一でない場合、例えば、該芯材の表層にはバインダーが多く存在し、芯材の内層のバインダーが少ない量で存在する場合、内層では無機繊維同士の接点がバインダーによって固定されず、得られる芯材のハンドリング性の問題や、該芯材を高圧縮化した場合には、芯材中の無機繊維が容易に破壊され、その結果、該芯材を用いて真空断熱材にした時の該断熱材の厚みが不足し、芯材の密度が高くなり、真空断熱材の断熱性能が低下するため好ましくない。
【0015】
以上の観点から、本発明においては、芯材の厚み方向に対して直交する方向に略3等分して表面層と中間層と裏面層とにしたときに、3等分した全ての層におけるバインダーの無機繊維に対する付着量が、バインダーを含む無機繊維を100質量%としたときに、バインダーが0.5〜3.5質量%となる割合であることが好ましく、0.5〜2.0質量%となる割合であることがさらに好ましい。前記割合が0.5質量%未満であると前述の問題が生じ、一方、前記値が3.5質量%を超える割合であると、無機繊維に対するバインダーの付着量が過剰になり、このような過剰のバインダーを含む芯材は真空断熱材中においてガス発生が生じ易くなり、結果として真空断熱材の断熱性能が劣ることになるので好ましくない。
【0016】
また、前記略3等分して表面層と中間層と裏面層としたときに、表面層または裏面層の無機繊維に対するバインダー付着割合を100質量%としたとき、前記中間層の無機繊維に対するバインダーの付着量が、70〜130質量%に相当する割合であることが好ましい。前記割合が70質量%未満であると芯材のハンドリング性が劣り、また、前記割合が130質量%を超えると、無機繊維に対するバインダーの付着量が過剰であり、このような過剰のバインダーを含む芯材は、真空断熱材中においてガス発生が生じ易くなり、結果として真空断熱材の断熱性能が劣ることになるので好ましくない。
【0017】
前記芯材中の無機繊維に対するバインダーの付着量を均一にするためには、前記無機繊維に対するバインダーの付着量を均一にすることで達成できる。そのためには無機繊維マットの製造において、無機原料を繊維化した直後から集綿に至る段階でバインダーを無機繊維に付着させる方法や、一旦無機繊維を集綿させた後に、該集綿物をバインダー液に含浸させる方法が挙げられるが、無機原料を繊維化した直後から集綿に至る段階で無機繊維にバインダーを付着させる方法が無機繊維マットの作業性および生産性の点で好ましい。
【0018】
無機原料を繊維化した直後から集綿に至る段階で無機繊維にバインダーを付着させる方法としては、(1)無機原料を繊維化した後、無機繊維に水を噴霧し、次いで無機繊維に未硬化熱硬化性樹脂バインダー液を付着させる方法、(2)前記未硬化熱硬化性樹脂バインダー液の固形分濃度を2〜10質量%にして、該バインダー液を無機繊維に付着させる方法、(3)前記バインダー液をスプレーにより噴霧して無機繊維に付着させる方法、(4)前記スプレーをバインダー液とエアーとの二流体方式のスプレーを用いてバインダー液を無機繊維に噴霧する方法を単独または組み合わせて行なう方法が好ましく採用される。
【0019】
本発明の真空断熱材用芯材(外被材で被覆して真空断熱材とする前の芯材)は、無機原料を繊維化し、該無機繊維に未硬化熱硬化性樹脂バインダー液を付着させて集綿した後、該集綿物(バインダーが硬化されていない無機繊維マット)の1枚または積層物を圧縮密度(加圧圧縮時の密度であって、加圧圧縮から解放された積層物の密度ではない)100〜250kg/m3で押圧して加熱することによって得られる。このようにして得られる芯材は、繊維長100μm以上の無機繊維を80質量%以上含有する芯材である。前記値が100kg/m3未満で押圧加熱した場合の芯材では、該芯材を用いて真空断熱材とした時の真空断熱材の表面平滑性が劣り、一方、250kg/m3を超えて押圧加熱した場合の芯材では、繊維長が100μm以上の無機繊維を80%以上含有する芯材とすることができず、その結果、このような芯材を用いた真空断熱材が高密度となり、真空断熱材の厚さが薄くなることにより真空断熱材の熱抵抗値が低下するために好ましくない。
【0020】
上記本発明の真空断熱材用芯材を用いて真空断熱材とする場合は、例えば、上記本発明の芯材をガスバリア性外被材で被覆し、該外被材内を脱気することによって得られる。ガスバリア性外被材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂フィルム、クラフト紙と上記フィルムをラミネートしたもの、上記フィルムにアルミニウム箔をラミネートしたもの、上記フィルムにアルミニウムを蒸着したものなどが好ましく用いられる。
【0021】
また、真空断熱材の製造方法自体は公知の方法でよい。1例を示すと、上型と下型とからなり、何れか一方に真空ポンプによって排気される排気口を有する型を用意し、該型の上型および下型で形成されるキャビティ内面に、一方が排気および封止用チューブを有すガスバリア性外被材、例えば、アルミニウム蒸着高密度ポリエチレンフィルムを配置し、その間に本発明の真空断熱材用芯材を配置した後、型を閉じて上下2枚の外被材の周辺部を融着させ、上記チューブを介して脱気して、ガスバリア性外被材の内圧を10.0Pa以下にしつつ、その後上記チューブを封止し、脱型することにより、真空断熱材が得られる。得られる真空断熱材のサイズや厚みなどは用途によって任意に変化させることができる。
【0022】
上記真空断熱材中の芯材は、密度が200〜270kg/m3であり、該真空断熱材を開包した後の芯材(大気圧下における芯材)は、繊維長100μm以上の無機繊維を75%以上含有する。前記密度が200kg/m3未満の芯材を使用した真空断熱材は、その表面平滑性が劣り好ましくなく、一方、前記値が270kg/m3を超える芯材は高密度となり、該芯材を用いた真空断熱材の厚さが薄くなることにより、真空断熱材の熱抵抗値が低下して好ましくない。また、芯材中の繊維長100μm以上の無機繊維が75%未満であると、芯材の密度が大きくなり、単位質量当たりの真空断熱材の厚さが薄くなることにより、真空断熱材の熱抵抗値が低下するために好ましくなくい。尚、この場合の繊維長100μm以上の無機繊維の測定方法は、実施例の「A:真空断熱材とする前の芯材中の繊維長100μm以上の無機繊維の含有量(%))の測定方法」に記載の通りである。
【0023】
さらに、本発明の真空断熱材においては、該真空断熱材を開包した後の芯材(大気圧下における芯材)は、繊維長1.0mm以上の無機繊維を60%以上含有することがより好ましい。前記繊維長1.0mm以上の無機繊維の含有量が60%未満であると、芯材中の短い無機繊維が多くなり過ぎて芯材の密度が大になり、単位質量当たりの真空断熱材の厚さが薄くなることにより、真空断熱材の熱抵抗値が低下するために好ましくなくい。尚、この場合の繊維長1.0mm以上の無機繊維の測定方法は、実施例の「C:真空断熱材を開包後の芯材の繊維長1.0mm以上の無機繊維の含有量(%)の測定方法」に記載の通りである。
【実施例】
【0024】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1
平均繊維径4μmのガラス繊維に、固形分4質量%のフェノール樹脂バインダー水溶液をイグロスが、1質量%となるようにエアーとの二流体方式で噴霧し、厚み方向に均一にバインダーが付着した状態で積層されたガラス繊維マット(厚さ約300mm、密度約5kg/m3)を、熱風通過式オーブンにて上下のコンベアーで挟み込みながら260℃、オーブン滞留時間約90秒、加圧時密度150kg/m3の条件で加熱加圧した。これにより、厚さ約18mm、密度約80kg/m3のバインダー処理した本発明の芯材を得た。
【0025】
上記芯材中の繊維長100μm以上のガラス繊維の含有割合、該芯材を厚み方向に対して直交する方向に3等分した場合の表面層、中間層、および裏面層におけるバインダーの付着量(「バインダーの質量]/[バインダーの質量とガラス繊維の質量の合計]×100)、および該芯材のハンドリング性を調べ、結果を後記表1に示した。以下の実施例および比較例においても同様である。
【0026】
上記の芯材を2プライに積層し、真空断熱材用のガスバリアー性の高い袋状外被材内に挿入し、真空シール装置にて袋内の圧力が1.0Paとなるようにガスを吸引した後に、袋の開口部を加熱圧着し、厚さ12mm、密度240kg/m3の本発明の真空断熱材を得た。この真空断熱材の熱伝導率、熱抵抗値、該真空断熱材を開包して取り出した芯材中の繊維長100μm以上のガラス繊維の含有量、および繊維長1.0mm以上のガラス繊維の含有量を調べた。その結果を後記表1に記載した。以下の実施例および比較例においても同様である。
【0027】
実施例2
平均繊維径4μmのガラス繊維に、固形分4質量%のフェノール樹脂バインダー水溶液をイグロスが2質量%となるようにエアーとの二流体方式で噴霧し、厚み方向に均一にバインダーが付着した状態で積層されたガラス繊維マットを、バインダーがキュアーしない状態でロール状に巻き取った(厚さ約40mm、密度約35kg/m3)。このガラス繊維マットを2プライに積層し、平板プレス機で温度220℃、圧縮時厚さ12mm、加圧時密度約240kg/m3、加圧時間5分の条件で加熱圧縮した。これによりガラス繊維マット中のバインダーがキュアーされ、厚さ約16mm、密度約180kg/m3の本発明の芯材を得た。この芯材を、真空断熱材用のガスバリアー性の高い袋状外被内に挿入し、真空シール装置にて袋内の圧力が1.0Paとなるようにガスを吸引した後に、袋の開口部を加熱圧着し、厚さ11mm、密度260kg/m3の本発明の真空断熱材を得た。
【0028】
比較例1
平均繊維径4μmのガラス繊維からなるガラス繊維マット(厚さ約40mm、密度約35kg/m3)に、固形分4質量%のフェノール樹脂バインダー水溶液をイグロスが4質量%となるように噴霧して上記ガラス繊維マットに付着させた。該バインダーを付着させたガラス繊維マットをロール状に巻き取り、2プライに積層し、平板プレス機で温度220℃、圧縮時厚さ9mm、加圧時密度約320kg/m3、加圧時間5分の条件で加熱圧縮した。これによりガラス繊維マット中のバインダーがキュアーされ、厚さ約10mm、密度約290kg/m3の比較例の芯材を得た。この芯材を、真空断熱材用のガスバリアー性の高い袋状外被内に挿入し、真空シール装置にて袋内の圧力が1.0Paとなるようにガスを吸引した後に、袋の開口部を加熱圧着し、厚さ7mm、密度410kg/m3の比較例の真空断熱材を得た。
【0029】
比較例2
平均繊維径4μmのガラス繊維をロール状に巻き取り、ホワイト(バインダーなし)ガラス繊維マットを製造した(厚さ約40mm、密度約35kg/m3)。このホワイトガラス繊維マットを2プライに積層し、その表面にフェノール樹脂バインダー水溶液をイグロスが2質量%となるように噴霧した後、平板プレス機で温度220℃、圧縮時厚さ9mm、加圧時密度約320kg/m3、加圧時間5分の条件で加熱圧縮した。これによりガラス繊維マット中のバインダーがキュアーされ、厚さ約12mm、密度約240kg/m3の比較例の芯材を得た。この芯材を真空断熱材用のガスバリアー性の高い袋状外被材内に挿入し、真空シール装置にて袋内の圧力が1.0Paとなるようにガスを吸引した後に、袋の開口部を加熱圧着し、厚さ9mm、密度320kg/m3の比較例の真空断熱材を得た。
【0030】
比較例3
平均繊維径4μmのガラス繊維からなるガラス繊維マット(厚さ約450mm、密度約5kg/m3)に、固形分4質量%のフェノール樹脂バインダー水溶液をイグロスが1質量%となるようにエアーとの二流体方式で噴霧して上記ガラス繊維マットに付着させた。該バインダーを付着させたガラス繊維マットを熱風通過式オーブンにて、上下のコンベアーで挟み込みながら260℃、オーブン滞留時間約90秒、加圧時密度400kg/m3の条件で加熱加圧した。これにより、厚さ約9mm、密度約250kg/m3のバインダー処理した比較例の芯材を得た。この芯材を2プライに積層し、真空断熱材用のガスバリアー性の高い袋状外被内に挿入し、真空シール装置にて袋内の圧力が1.0Paとなるようにガスを吸引した後に、袋の開口部を加熱圧着し、厚さ12mm、密度375kg/m3の比較例の真空断熱材を得た。
【0031】

【0032】
A:真空断熱材とする前の芯材中の繊維長100μm以上の無機繊維の含有量(%)
測定方法:図1に示すように、芯材を厚み方向に対して直交する方向に、表面層、中間層および裏面層に3等分に切断し、これらの表面層、裏面層および中間層の各層の面の4隅付近と略中心部の5点から任意に10mm角のサンプルを合計で15個切り出し、光学顕微鏡にてこれらのサンプルの中心を倍率200倍の光学顕微鏡にて400×400μmの面積で写し出し(図2参照)、繊維の総本数(X)と繊維長100μm以上の繊維の本数(Y)を数え、その百分率([Y/X]×100)を求め、15個のサンプルの平均を繊維長100μm以上の繊維の割合(%)とした。
【0033】
B:真空断熱材の密度(kg/m3
測定方法:真空断熱材の幅、長さおよび厚みを測定して体積を求め、その真空断熱材の重量(kg)と体積(m3)から密度を求めた。
C:真空断熱材を開包後の芯材の繊維長100μm以上の無機繊維の含有量(%)
測定方法:開包後の芯材について前記Aの方法と同様にして求めた。
D:真空断熱材を開包後の芯材の繊維長1.0mm以上の無機繊維の含有量(%)
測定方法:開包後の芯材について前記Aの倍率200倍を倍率20倍にした以外は前記Aの方法と同様にして求めた。
【0034】
E:芯材を厚み方向に対して直交する方向に3等分した場合の表面層におけるバインダー付着量(%)
測定方法:図1に示すように、芯材を厚み方向に対して直交する方向に3等に切断し、その表面層のイグロス(強熱減量)を求めた。イグロスは乾燥した試料を約530℃に加熱して質量減少百分率を求めた。
F:芯材を厚み方向に対して直交する方向に3等分した場合の中間層におけるバインダー付着量(%)
測定方法:上記Eの方法と同じ方法で中間層のイグロスを求めた。イグロスは乾燥した試料を約530℃に加熱して質量減少百分率を求めた。
G:芯材を厚み方向に対して直交する方向に3等分した場合の裏面層におけるバインダー付着量(%)
測定方法:前記Eの方法と同じ方法で裏面層のイグロスを求めた。イグロスは乾燥した試料を約530℃に加熱して質量減少百分率を求めた。
H:芯材を厚み方向に対して直交する方向に3等分した場合の表面層または裏面層におけるバインダー付着量に対する中間層のバインダー付着量の割合(%)
測定方法:[F/EまたはG]×100(%)
【0035】
I:芯材のハンドリング性
良好:外被材への充填時間を測定し、3分以内のものを「良好」とした。
不良:外被材への充填時間を測定し、3分を超えるものを「不良」とした。
J:真空断熱材厚み(mm)
測定方法:実測(ノギスにより測定)
K:熱伝導率(mW/m・K)
測定方法:英弘精機社製熱伝導率系(HC−074−300)にて測定した。
L:熱抵抗値(m2・K/W)
測定方法:L=J/K
【0036】
表1から明らかなように、芯材における繊維長100μm以上の繊維の割合が多くかつ特定密度の芯材を用いた真空断熱材(実施例1、2)は、熱性能(熱伝導率および熱抵抗)に優れる真空断熱材であった。特に繊維長100μm以上の繊維を多く含有する芯材を用いた真空断熱材(実施例1)では、熱性能が良好であった。
【0037】
これに対して比較例1〜3の真空断熱材は、熱性能が劣るものであり、特に繊維長100μm以上の繊維の割合が低く、さらに密度が高く充分な厚みが得られない比較例1の真空断熱材では、熱抵抗が劣り、比較例2では、繊維長100μm以上の繊維の割合が低く、密度が高いうえに、イグロスのばらつきが大きいため、熱抵抗が劣るとともに、ハンドリング性にも劣るものであった。また、比較例3では、繊維長100μm以上の繊維の割合が極めて低く、厚みを持たせるために目付量を増やしたため、芯材は重くなり、また、熱伝導率が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、断熱性能に優れた真空断熱材、真空断熱材用芯材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】真空断熱材とする前の芯材中の繊維長100μm以上の無機繊維の含有量の測定方法を説明する図。
【図2】測定サンプルの光学顕微鏡写真の模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被材内に、無機繊維積層材料で構成されている芯材が減圧密封されてなる真空断熱材であって、該真空断熱材中の芯材の密度が、200〜270kg/m3であり、前記外被材を開包した後の芯材が、繊維長100μm以上の無機繊維を75%以上含有していることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記外被材を開包した後の芯材が、繊維長1.0mm以上の無機繊維を60%以上含有している請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記芯材全体に、バインダーが実質的に均等に付着している請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記バインダーの量が、前記バインダーを含む芯材の質量の0.5〜3.0質量%を占める量である請求項3に記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記芯材を、その厚み方向に対して直交する方向に略3等分して表面層と中間層と裏面層とに分けたときに、表面層または裏面層のバインダー付着量を100質量%としたとき、前記中間層のバインダーの付着量が、70〜130質量%である請求項3または4に記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記バインダーが、有機バインダーである請求項3〜5のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記芯材を、その厚み方向に対して直交する方向に略3等分して表面層と中間層と裏面層とに分けたときに、3等分した全ての層におけるバインダーの付着量が、0.5〜3.5質量%である請求項3〜6のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【請求項8】
外被材で減圧密封される前の無機繊維積層材料からなる真空断熱材用芯材であって、繊維長100μm以上の無機繊維を80%以上含有することを特徴とする真空断熱材用芯材。
【請求項9】
無機原料を繊維化し、該繊維に未硬化熱硬化性樹脂バインダーを付着させて集綿し、該集綿させた繊維を圧縮密度100〜250kg/m3に押圧して加熱することを特徴とする真空断熱材用芯材の製造方法。
【請求項10】
無機原料を繊維化し、該繊維に水を噴霧した後に、未硬化熱硬化性樹脂バインダーを付着させて集綿し、該集綿させた繊維を押圧して加熱する請求項9に記載の真空断熱材用芯材の製造方法。
【請求項11】
前記バインダーを、固形分濃度2〜10質量%の液状で無機繊維に付着させる請求項9または10に記載の真空断熱材用芯材の製造方法。
【請求項12】
前記バインダーを、バインダーとエアーとの二流体方式のスプレーを用いて無機繊維に付着させる請求項10または11に記載の真空断熱材用芯材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−17169(P2006−17169A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193543(P2004−193543)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000116792)旭ファイバーグラス株式会社 (101)
【Fターム(参考)】