説明

真空断熱材

【課題】紫外線による外被材の劣化を抑制可能な真空断熱材を提供する。
【解決手段】少なくとも芯材4と、芯材4を覆うガスバリア性の外被材5とから構成され、外被材5の内部を減圧してなる真空断熱材1において、外被材5の表面に紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層6を備えたことを特徴とするものである。紫外線が真空断熱材1へ照射されると、紫外線のエネルギーは、酸化物半導体の電子が価電子帯から伝導帯へ励起するエネルギーに変換されるという作用を有する。これにより、紫外線による真空断熱材1の劣化を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題である温暖化の対策として省エネルギーを推進する動きが活発となっており、真空断熱材のような優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
【0003】
この真空断熱材は、冷蔵庫や電気湯沸かし器等の民生機器に適用され、日本の省エネルギー化に貢献しているが、住宅分野や情報機器分野への更なる用途展開が望まれている。
【0004】
しかしながら、従来の真空断熱材は、住宅へ真空断熱材を適用する際、太陽光に含まれる紫外線によって外被材が劣化するという課題を有していた。
【0005】
この課題を解決するために、紫外線をカットするカット手段を備えた真空断熱材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図3は特許文献1に記載された従来の真空断熱材を示す断面図である。図3に示すように、真空断熱材1は、芯材4と芯材4を覆うガスバリア性のラミネートフィルム2とから構成され、ラミネートフィルム2の内部を減圧してなる真空断熱材1であって、ラミネートフィルム2の最外層に紫外線カット剤3を塗布したものである。
【特許文献1】特開2006−63662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成では、紫外線を遮蔽することは可能であるが、紫外線を遮蔽する具体的手段が不明確であった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、屋外においても優れた断熱効果を長期にわたって維持可能な真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の真空断熱材は、外被材の表面に紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
上記構成において、紫外線が真空断熱材へ照射されると、紫外線のエネルギーは酸化物半導体の電子が価電子帯から伝導帯へ励起するエネルギーに変換される。
【0011】
これにより、紫外線による真空断熱材の劣化を抑制することが可能となり、屋外においても優れた断熱効果を長期にわたって維持可能な真空断熱材を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空断熱材は、外被材の表面に紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層を備えたことにより、紫外線が真空断熱材へ照射されると、紫外線のエネルギーは酸化物半導体の電子が価電子帯から伝導帯へ励起するエネルギーに変換される。
【0013】
これにより、紫外線による真空断熱材の劣化を抑制することが可能となり、屋外においても優れた断熱効果を長期にわたって維持可能な真空断熱材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
請求項1に記載の発明は、少なくとも芯材と前記芯材を覆うガスバリア性の外被材とから構成され、前記外被材の内部を減圧してなる真空断熱材において、外被材の表面に紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成において、紫外線が真空断熱材へ照射されると、紫外線のエネルギーは酸化物半導体の電子が価電子帯から伝導帯へ励起するエネルギーに変換されるという作用を有する。
【0016】
これにより、紫外線による真空断熱材の劣化を抑制することが可能となり、屋外においても優れた断熱効果を長期にわたって維持可能な真空断熱材を提供することができる。
【0017】
本発明において芯材の種類について、特に指定するものではないが、気層比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものであり、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォームなどの連続気泡体や、グラスウールやロックウール、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維などの繊維体、パーライトや湿式シリカ、乾式シリカなどの粉体など、従来公知の芯材が利用できる。
【0018】
本発明において、外被材とは、最内層を熱溶着層とし、中間層にはガスバリア層として金属箔あるいは金属蒸着層を有し、最外層には表面保護層とをそれぞれラミネートしたものである。
【0019】
なお、熱溶着層としては特に指定するものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の熱可塑性樹脂或いはそれらの混合体が使用できる。
【0020】
また、ガスバリア層としては、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体へアルミニウムや銅等の金属原子を蒸着したフィルム等が使用できる。
【0021】
また、表面保護層としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等従来公知の材料が使用できる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明における紫外線吸収層が、外被材表面に印刷されたものであることを特徴とするものである。
【0023】
本発明では、紫外線吸収層を外被材表面に印刷することで、外被材の製造工程中に紫外線吸収層を簡便な方法で付与することができる。これにより、簡素な構成にて真空断熱材の劣化を抑制することが可能となる。
【0024】
なお、紫外線吸収層の印刷方法については特に指定するものではないが、グラビア印刷やオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の従来公知の印刷技術が利用できる。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明における紫外線吸収層が、外被材とラミネートされたものであることを特徴とするものである。
【0026】
本発明では、紫外線吸収層を外被材とラミネートすることにより、印刷技術に比べて紫外線吸収層を厚く形成することができるため、真空断熱材の劣化をより長期に抑制することが可能となる。
【0027】
なお、ラミネート方法に関しては特に指定するものではないが、ドライラミネーションやウェットラミネーションなど、従来公知のラミネート方法が利用できる。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明における酸化物半導体を、酸化亜鉛としたものである。
【0029】
酸化亜鉛のように紫外線の波長を吸収する3.2eV付近のバンドギャップを有する酸化物半導体を使用することにより、紫外線を選択的に吸収することが可能となる。なお、酸化亜鉛の他にルチル型酸化チタン、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウムなどを用いても良い。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図である。図1に示すように、実施の形態1の真空断熱材1は、芯材4と芯材4を覆うガスバリア性の外被材5とから構成され、外被材5の内部を減圧してなる真空断熱材1であって、外被材5の表面に紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層6を印刷により設けたものである。
【0032】
以上のように構成された本実施の形態の真空断熱材1について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
まず、芯材4は、真空断熱材1の骨材として空間を形成する役割を果たし、真空排気後の真空断熱材1の断熱部を形成するものである。
【0034】
次に、外被材5は、最内層を熱溶着層とし、中間層にはガスバリア層として金属箔あるいは金属蒸着層を有し、最外層には表面保護層とをそれぞれラミネートしたものであり、芯材4を大気から隔絶する役割を果たし、真空断熱材1の真空度を低く保つものである。
【0035】
紫外線吸収層6は、真空断熱材1に照射された紫外線を吸収する役割を果たし、外被材5を保護する役割を果たすものである。
【0036】
紫外線が真空断熱材1へ照射されると、紫外線のエネルギーは紫外線吸収層6の酸化物半導体の電子が価電子帯から伝導帯へ励起するエネルギーに変換され、紫外線による真空断熱材1の劣化を抑制することが可能となる。
【0037】
以上のように、本実施の形態においては、真空断熱材1は、外被材5の表面に紫外線吸収層6を設けたことにより、真空断熱材1に照射された紫外線を、紫外線吸収層6にて吸収することが可能となるため、紫外線による真空断熱材1の劣化を抑制することが可能となり、屋外においても優れた断熱効果を長期にわたって維持可能な真空断熱材1を提供することができる。
【0038】
本実施の形態では、紫外線吸収層6を外被材5表面に印刷することで、外被材5の製造工程中に紫外線吸収層6を簡便な方法で付与することができる。これにより、簡素な構成にて真空断熱材1の劣化を抑制することが可能となる。
【0039】
なお、紫外線吸収層6の印刷方法については特に指定するものではないが、グラビア印刷やオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の従来公知の印刷技術が利用できる。
【0040】
紫外線吸収層6に分散する酸化物半導体は、例えば、酸化亜鉛である。酸化亜鉛のように紫外線の波長を吸収する3.2eV付近のバンドギャップを有する酸化物半導体を使用することにより、紫外線を選択的に吸収することが可能となる。なお、酸化亜鉛の他にルチル型酸化チタン、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウムなどを用いても良い。
【0041】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における真空断熱材の断面図である。図2に示すように、実施の形態2の真空断熱材1は、芯材4と芯材4を覆うガスバリア性の外被材5とから構成され、外被材5の内部を減圧してなる真空断熱材1であって、紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層6が、外被材5とラミネートされたもの(外被材5の一部に、紫外線吸収層6が設けられたもの)である。
【0042】
紫外線が真空断熱材1へ照射されると、紫外線のエネルギーは紫外線吸収層6の酸化物半導体の電子が価電子帯から伝導帯へ励起するエネルギーに変換され、紫外線による真空断熱材1の劣化を抑制することが可能となる。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、真空断熱材1は、外被材5の一部に紫外線吸収層6を設けたことにより、真空断熱材1に照射された紫外線を、紫外線吸収層6にて吸収することが可能となるため、紫外線による真空断熱材1の劣化を抑制することが可能となり、屋外においても優れた断熱効果を長期にわたって維持可能な真空断熱材1を提供することができる。
【0044】
本実施の形態では、紫外線吸収層6を外被材5とラミネートすることにより、印刷技術に比べて紫外線吸収層6を厚く形成することができるため、真空断熱材1の劣化をより長期に抑制することが可能となる。
【0045】
なお、ラミネート方法に関しては特に指定するものではないが、ドライラミネーションやウェットラミネーションなど、従来公知のラミネート方法が利用できる。
【0046】
紫外線吸収層6に分散する酸化物半導体は、例えば、酸化亜鉛である。酸化亜鉛のように紫外線の波長を吸収する3.2eV付近のバンドギャップを有する酸化物半導体を使用することにより、紫外線を選択的に吸収することが可能となる。なお、酸化亜鉛の他にルチル型酸化チタン、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウムなどを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明にかかる真空断熱材は、紫外線による真空断熱材の劣化を抑制することが可能であるので、屋外など真空断熱材に紫外線があたるような用途に適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図
【図2】本発明の実施の形態2における真空断熱材の断面図
【図3】従来の真空断熱材の断面図
【符号の説明】
【0049】
1 真空断熱材
4 芯材
5 外被材
6 紫外線吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも芯材と前記芯材を覆うガスバリア性の外被材とから構成され、前記外被材の内部を減圧してなる真空断熱材において、前記外被材の表面に紫外線を吸収する酸化物半導体を分散させた紫外線吸収層を備えたことを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
紫外線吸収層は、外被材表面に印刷された請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
紫外線吸収層は、外被材とラミネートされた請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項4】
酸化物半導体は、酸化亜鉛である請求項1から3のいずれか一項に記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−215491(P2008−215491A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53814(P2007−53814)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】