説明

真空断熱材

【課題】長期にわたって優れた断熱性能を有する真空断熱材を提供する。
【解決手段】真空断熱材1は、熱溶着層7同士が対向する2枚の長方形の外被材4の間に芯材2と吸着剤3が減圧密封され芯材2を覆う2枚の外被材4の周縁近傍の3辺の外周部同士が熱溶着された真空断熱材1であり、外被材4の外周部同士が熱溶着された封止部8において、封止部8に位置する一方の外被材4表面が有する凹凸模様9は、凹部上の点を通る封止部8断面が凸部上をも通るように形成され、凹部に熱溶着層7の厚みが凹部の周辺部よりも薄くなっているので、外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量を抑制する薄肉部11でのクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶着層同士が対向する2枚の外被材の間に芯材が減圧密封された真空断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、深刻な環境問題である地球温暖化への対策として、家電製品や設備機器並びに住宅などの建物の省エネルギー化を推進する動きが活発となっており、優れた断熱効果を長期的に有する真空断熱材が、これまで以上に求められている。
【0003】
真空断熱材とは、グラスウールやシリカ粉末などの微細空隙を有する芯材を、ガスバリア性を有する外被材で覆い、外被材の内部を減圧密封したものである。真空断熱材は、その内空間を高真空に保ち、気相を伝わる熱量を出来る限り小さくすることにより、高い断熱効果の発現を可能としたものである。よって、その優れた断熱効果を長期にわたって発揮するためには、真空断熱材内部の高い真空度を維持する技術が極めて重要となる。
【0004】
真空断熱材内部の真空度を維持する方法として、気体吸着剤や水分吸着剤を芯材とともに真空断熱材内部に減圧密封する方法が、一般的に用いられている。これによって、真空包装後に芯材の微細空隙から真空断熱材中へ放出される残存水分や、外気から外被材を透過して経時的に真空断熱材内へ透過する水蒸気や酸素等の大気ガスを除去することが可能となる。
【0005】
しかし、現存の吸着剤の吸着能力を考慮すると、高い断熱効果を長期的に維持する真空断熱材を提供するには、吸着剤の使用だけでは不十分であるといえ、真空断熱材内部へ透過する大気ガス量自体を抑制する手段を講じる必要がある。
【0006】
ここで、外気から真空断熱材内部へ侵入するガス経路について述べる。
【0007】
真空断熱材は、通常、2枚の長方形の外被材を重ね合わせて外被材の3辺の周縁近傍の外周部同士を熱溶着して作製した3方シール袋内へ3方シール袋の開口部から芯材を挿入し、真空包装機を用いて外被材の袋内部を真空引きしながら、3方シール袋の開口部を熱溶着することによって製造される。
【0008】
外被材には、通常、最内層に低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる熱溶着層、中間層にアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムなどのバリア性を有する材料からなるガスバリア層、そして最外層にはナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムなどの表面保護の役割を果たす表面保護層を、接着剤を介して積層したラミネートフィルムを用いる。
【0009】
この場合、外気から真空断熱材内部へ透過する大気ガスは、外被材表面のアルミニウム箔のピンホールや蒸着層の隙間などを透過してくる成分と、外被材周縁の端面の熱溶着層が露出している部分から封止部を通って内部に透過してくる成分との2つに分類される。
【0010】
このうち、熱溶着層を構成している熱可塑性樹脂は、ガスバリア層と比べると気体透過度および透湿度が極めて高いことから、真空断熱材内部へ経時的に侵入する大気ガス量のうち、外被材周縁の端面の熱溶着層が露出している部分から封止部を通って内部に透過したものが大半を占める。
【0011】
よって、長期にわたって優れた断熱性能を有する真空断熱材の提供には、外被材周縁の端面の熱溶着層が露出している部分からの大気ガス浸透量抑制が不可欠であり、その効果的な手法が課題とされてきた。
【0012】
この課題に対して、封止部における熱溶着層の一部を薄肉にした薄肉部を設けた真空断熱材が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
図10は、特許文献1に開示された従来の真空断熱材の断面図であり、図11は、同特許文献1に開示された従来の真空断熱材の平面図である。
【0014】
図10に示すように、特許文献1に開示された従来の真空断熱材101は、ガスバリア層102と熱溶着層103とを有する外被材104の封止部105に位置する熱溶着層103の一部が薄肉になっている。この薄肉部106は、図11に示すように、外被材104の全周を取り巻くように形成されている。
【0015】
従来の真空断熱材101の構成は、外被材104周縁の端面から熱溶着層103を通って侵入するガスの透過抵抗が薄肉部106において増大し、内部へのガス侵入を抑制することで長期に渡って優れた断熱性能を発揮できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実開昭62−141190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来の真空断熱材101の構成では、平面からみた薄肉部106の形状について詳細には述べられていないものの、図11に示されるように、薄肉部106が真空断熱材101の端部に至るような略直線状に形成されている場合は、真空断熱材101取り扱い時に封止部105に略直線状の薄肉部106を含む平面に対して垂直な力が加わると、熱溶着層103が薄く強度が低い薄肉部106に沿って封止部105が屈曲しやすくなり、熱溶着層103より外層側に積層された層(通常はガスバリア層102)におけるクラックの発生や外被材104の破れが生じ易くなる。
【0018】
このように、封止部105の断面のにおいて、薄肉部106のみ含む断面が存在する場合は、その断面に対して垂直な方向の荷重が薄肉部106に集中し、薄肉部106において外被材104にクラック発生や破れが生じ易くなり、薄肉部106にて大気ガス成分の真空断熱材101内部への侵入が促進され、真空断熱材101の高い断熱性能が維持できない、という課題があった。
【0019】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、封止部に設けた熱溶着層の薄肉部において、クラック発生や外被材破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた断熱性能を維持する真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の真空断熱材は、熱溶着層同士が対向する2枚の外被材の間に芯材が減圧密封され前記芯材を覆う2枚の前記外被材の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された真空断熱材において、前記外被材の外周部同士が熱溶着された封止部に位置する一方の外被材表面が有する凹凸模様は、凹部上の点を通る前記封止部の断面であれば凸部上の点をも通るように形成され、前記凹部に前記熱溶着層の厚みが前記凹部の周辺部よりも薄い薄肉部が位置していることを特徴としている。
【0021】
上記構成において、まず、外被材の外周部同士が熱溶着された封止部において、外被材表面熱溶着層の厚みが局所的に薄い薄肉部を設けることにより、熱溶着層の薄肉部において、外被材周縁の端面から侵入する気体および水分の透過面積が縮小され、透過抵抗が増大することから、経時的に真空断熱材内部に透過する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた断熱性能を発揮できる。
【0022】
また、熱溶着層の薄肉化により、封止部の強度が薄肉部において局所的に低下するが、封止部に位置する一方の外被材表面に形成された凹凸模様は、凹部上の点を通る封止部の断面であれば凸部上をも通るように形成されていることから、薄肉部を含む平面で切断したどの封止部断面から見ても薄肉部は熱溶着層が厚く強度が高い封止部に隣接していることから、凹部に位置する薄肉部は近傍に位置する凸部に位置する封止部によって支持され取り扱い時に封止部に受けた外力が強度の弱い薄肉部へ集中しにくく、熱溶着層の薄肉部及びその近傍の外被材におけるクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0023】
以上により、封止部に設けた熱溶着層の薄肉部及びその近傍において、外被材のクラック発生や破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた断熱性能を維持する真空断熱材を提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、封止部の熱溶着層の厚みが局所的に薄い薄肉部を設けていることにより、外被材周縁の端面から侵入する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた断熱性能を発揮できる。また、封止部において封止部の強度が局所的に低下する薄肉部が外力の影響を受けにくく配置されていることから、熱溶着層の薄肉部に位置する外被材におけるクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0025】
以上により、封止部に設けた熱溶着層の薄肉部において、外被材のクラック発生や破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた断熱性能を維持する真空断熱材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図
【図2】同実施の形態の実施例1における真空断熱材の平面図
【図3】同実施の形態の実施例2における真空断熱材の平面図
【図4】同実施の形態における真空断熱材の他の例の平面図
【図5】同実施の形態における真空断熱材の別の例の平面図
【図6】同実施の形態における真空断熱材のさらに別の例の平面図
【図7】同実施の形態の実施例1および実施例2における真空断熱材の薄肉部を含む封止部の断面図
【図8】比較例2における真空断熱材の平面図
【図9】比較例3における真空断熱材の平面図
【図10】従来の真空断熱材の断面図
【図11】従来の真空断熱材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の真空断熱材の発明は、熱溶着層同士が対向する2枚の外被材の間に芯材が減圧密封され前記芯材を覆う2枚の前記外被材の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された真空断熱材において、前記外被材の外周部同士が熱溶着された封止部に位置する一方の外被材表面が有する凹凸模様が、凹部上の点を通る前記封止部の断面であれば凸部上の点をも通るように形成され、前記凹部に前記熱溶着層の厚みが前記凹部の周辺部よりも薄い薄肉部が位置していることを特徴としている。
【0028】
上記構成において、まず、外被材の外周部同士が熱溶着された封止部において、外被材表面熱溶着層の厚みが局所的に薄い薄肉部を設けることにより、熱溶着層の薄肉部において、外被材周縁の端面から侵入する気体および水分の透過面積が縮小され、透過抵抗が増大することから、経時的に真空断熱材内部に透過する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた断熱性能を発揮できる。
【0029】
また、熱溶着層の薄肉化により、封止部の強度が薄肉部において局所的に低下するが、封止部に位置する一方の外被材表面に形成された凹凸模様は、凹部上の点を通る封止部の断面であれば凸部上をも通るように形成されていることから、薄肉部を含む平面で切断したどの封止部断面から見ても薄肉部は熱溶着層が厚く強度が高い封止部に隣接していることから、凹部に位置する薄肉部は近傍に位置する凸部に位置する封止部によって支持され取り扱い時に封止部に受けた外力が強度の弱い薄肉部へ集中しにくく、熱溶着層の薄肉部及びその近傍の外被材におけるクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0030】
以上により、封止部に設けた熱溶着層の薄肉部において、クラック発生や破断が極めて起きにくい、長期に渡って優れた断熱性能を維持する真空断熱材を提供できる。
【0031】
次に真空断熱材の構成材料について説明する。
【0032】
外被材を構成する熱溶着層としては、特に指定されるものではないが、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の熱可塑性樹脂あるいはそれらの混合フィルム等が使用できる。
【0033】
芯材は、その種類について特に指定するものではないが、気層比率90%前後の多孔体であり、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォームなどの連続気泡体や、グラスウールやロックウール、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などの繊維体、パーライトや湿式シリカ、乾式シリカなどの粉体など、従来公知の芯材が利用できる。
【0034】
外被材に使用するラミネート接着剤については、特に指定するものではないが、2液硬化型ウレタン接着剤等の従来公知のラミネート用接着剤もしくはエポキシ系樹脂接着剤などのラミネート用接着剤が使用できる。
【0035】
なお、2枚の外被材とは、外被材同士が熱溶着された封止部において2枚の外被材が合わさって熱溶着されてなり、かつ、芯材の両面ともに外被材が位置していることを意味しており、外被材の袋形状を指定するものではない。
【0036】
ここで、外被材の袋形状は、特に指定するものではなく、四方シール袋、ガゼット袋、三方シール袋、ピロー袋など、従来公知の袋形状が使用できる。
【0037】
なお、2枚の外被材とは、外被材同士が熱溶着された封止部において2枚の外被材が合わさって熱溶着されてなり、かつ、芯材の両面ともに外被材が位置していることを意味しており、外被材の袋形状を指定するものではない。
【0038】
凹凸模様とは、封止部の少なくとも一部に熱溶着層の厚み差により形成された模様であり、封止部に位置する2面の外被材表面のうちの一方から見た時の模様を指す。
【0039】
ここで、凹凸模様は、凹凸模様が位置する封止部の2面の外被材表面のうち、両方から見て同じ模様である必要はなく、どちらか一方の外被材表面で凹凸模様が形成されていればよい。
【0040】
また、外被材表面とは、外被材最外層の表面部を指す。
【0041】
なお、凹部とは、外被材表面に形成された凹凸模様のうち、外被材表面が熱溶着層側に凹んでいる部分を指す。
また、凹凸模様が封止部の有する両面の外被材表面に形成されていた場合、薄肉部を有する凹部はどちらか一方の凹凸模様に有されているものであればよい。
【0042】
なお、凸部とは、外被材表面に形成された凹凸模様のうち、外被材表面が熱溶着層と反対側に凸となっている部分全体を指し、凹部に位置する薄肉部から熱溶着層の厚みが増していく厚み勾配のある部分を含む。
【0043】
また、凹凸模様が、凹部上の点を通る前記封止部の断面であれば凸部上をも通るように形成されているとは、凹凸模様を形成している外被材表面上にある点群のうち、凹部に含まれる点群を通る平面で切断された封止部の断面は、同一外被材表面上にある、凸部に含まれる点群のいずれかを通過するという意味であり、凹部に含まれる点群を通る平面で切断された封止部のあらゆる断面には、凹部と凸部との両方の断面が含まれていることを指す。
【0044】
第2の真空断熱材の発明は、第1の発明における前記凹凸模様が、前記凸部に取り囲まれた前記凹部を有することを特徴としている。
【0045】
上記構成において、凸部に取り囲まれた凹部に位置する薄肉部は、その周囲の凸部に位置する比較的厚みのある熱溶着層によって支持されており、あらゆる方向からの外力に対しても薄肉部に力が集中しにくくなり、熱溶着層の薄肉部における外被材のクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0046】
なお、凸部に取り囲まれた凹部とは、封止部に位置する外被材表面が有する凹凸模様において、凹部と凸部との外被材上に存在する境界線が閉じた線となる凹部を指し、凹部の周囲全体に凸部が存在している状態を意味する。
【0047】
第3の真空断熱材の発明は、第1または第2の発明において、前記凹部上の点を通る前記封止部の前記外被材周縁に垂直な断面において、前記封止部が前記薄肉部を少なくとも2個以上有しているものである。
【0048】
真空断熱材内部への大気ガスの侵入方向である外被材周縁に垂直な方向に薄肉部を複数有する場合は、薄肉部が1個のみの場合と比べて、各薄肉部における熱溶着層の厚みを厚くしても同一の効果が得られるため、熱溶着層の薄肉化による外被材強度やシール強度低下が緩和され、薄肉部におけるクラック発生や破断のリスクが低減される。
【0049】
さらに、薄肉部では封止部の他箇所に比べて熱溶着層の厚みが薄く、シール強度が低下することにより、例えば、製造工程において芯材物質であるガラス繊維やシリカ粉末等を挟み込んだ状態で外被材が熱溶着された場合、薄肉部において熱溶着不良が発生することが懸念される。
【0050】
熱溶着不良が発生した箇所ではガス透過を遮る樹脂が存在しないため、ガス侵入抑制効果が低下する。
【0051】
この対策として、真空断熱材内部への大気ガスの侵入方向に少なくとも2個以上の薄肉部を設けることにより、熱溶着不良に起因する真空断熱材内部への気体および水分侵入促進の影響が緩和される。
【0052】
第4の真空断熱材の発明は、第1から3のいずれかの発明における前記凹凸模様が、格子模様であることを特徴としている。
【0053】
凹凸模様が格子模様である場合、封止部において薄肉部と比較して熱溶着層の厚い凸部が凹凸模様を有する外被材表面から見て略直線状となり、かつ、格子状に交差し合っていることから、封止部の強度が高く保たれる。
【0054】
これにより、強度の弱い薄肉部も外力の影響を受けにくく、封止部における外被材のクラック発生や破れが極めて起こりにくい。
【0055】
また、凹部上の点を通る封止部の断面を見ると、周期的に薄肉部と薄肉部よりも熱溶着層の厚い封止部とが並んだ状態となっており、封止部断面に垂直な方向からの外力に対しての耐屈曲性がより高くなる。
【0056】
加えて、封止部の高い強度が維持できると、薄肉部の総面積を封止部全体の面積に対して大きくすることが可能となり、真空断熱材内部へのガス侵入抑制効果が高まる。
【0057】
なお、格子模様とは、凹凸模様を有する外被材表面から見て略直線状の凸部と周期的に並列された同一形状の凹部よりなる模様のことを指し、凸部の幅や面積および凹部の形状や面積については特に指定するものではない。
【0058】
第5の真空断熱材の発明は、第1から4のいずれかの発明において、前記凹凸模様が有する前記凹部が前記凸部に取り囲まれてなることを特徴としている。
【0059】
既に述べた通り、凸部に取り囲まれた凹部に位置する薄肉部は、あらゆる方向からの外力に対しても、外被材のクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0060】
凹凸模様が有する全ての凹部において、上記構成を有する場合は、より効果が高くなる。
【0061】
また、凹凸模様に周囲を凸部に取り囲まれていない凹部が存在する場合、その凹部が封止部と非封止部との境目や外被材周縁に接している場合が考えられる。
【0062】
外被材の封止部と非封止部との境目において熱溶着層が薄くなっている場合は、その箇所における封止強度が低下し、製造時や取り扱い時に外被材の袋が破袋する恐れがある。
【0063】
上記構成では、薄肉部が位置する凹部が封止部と非封止部との境界に接して存在することがなく、封止強度の低下が起こらないことから、製造時や取り扱い時に破袋が起きにくい。
【0064】
さらに、薄肉部が外被材周縁上に存在しなければ、封止部の最も外被材周縁側に位置する薄肉部であっても真空断熱材端部への衝撃によるクラック発生や破れなどが極めて受けにくくなる。
【0065】
なお、外被材の非封止部とは、外被材がもう一方の外被材と熱溶着されていない箇所を指す。
【0066】
第6の真空断熱材の発明は、第1から5のいずれかの発明において、隣接する前記凹部と前記凸部との境界部に位置する前記熱溶着層の厚み変化が略円弧状であることを特徴としている。
【0067】
隣接する凹部と凸部との境界部に位置する前記熱溶着層の厚み変化が略円弧状であれば、外被材は、封止部の薄肉部の近傍において、熱溶着層の形状に沿って、円弧状に曲がり、角部を形成することなく、外被材へのクラックの発生が極めて起きにくくなる。
【0068】
ここで、当然ながら、熱溶着層の薄肉部及びその近傍に限らず、封止部全体において角部を形成していないことが望ましい。
【0069】
さらに、薄肉部においては、熱溶着層の厚みが周辺部よりも薄くなり、その厚み減少分だけ強度が低下するが、隣接する凹部と凸部との境界部にある薄肉部近傍の熱溶着層の厚みが円弧に沿って徐々に滑らかに増減することに伴い、封止部の強度も連続的に滑らかに増減することから、熱溶着層の薄肉部において局所的に外力が集中することが起きにくく、熱溶着層の薄肉部及びその近傍の外被材におけるクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0070】
なお、隣接する凹部と凸部との境界部とは、凹凸模様において隣接する凹部と凸部との境界線上およびその近傍に位置する封止部を指す。
【0071】
なお、角部とは、薄肉部の境界及びその近傍に生じる、熱溶着層の厚み変化に伴い形成される角形状となった部位(曲率が大きい部位)を指す。
【0072】
第7の真空断熱材の発明は、第1から6のいずれかの発明において、前記封止部の前記熱溶着層が両面に他の層との境界面を有し、前記凹凸模様が形成されている前記封止部の一方の前記境界面のうねりの波高が、他方の前記境界面のうねりの波高よりも大きいことを特徴とする。
【0073】
熱溶着層の厚み勾配が存在する凹凸模様形成部では、熱溶着層の形状に沿って歪曲による応力を受けて、熱溶着層よりも外層側にある外被材(通常、ガスバリア層)が劣化する場合が考えられる。
【0074】
ここで、凹凸模様が形成されている封止部に位置する境界面のうねりの波高を、他方の境界面のうねりの波高よりも大きくすることにより、相対的に波高の小さいうねりを有する境界面側の外被材の劣化は、もう一方の相対的に波高の大きいうねりを有する境界面側の外被材と比べて僅かとなり、封止部では、劣化が小さい外被材がもう一方の外被材を支持する形で剛性が保たれ、外力を受けた場合におけるクラックの発生および破断が極めて起きにくくなる。
【0075】
なお、境界面とは、封止部において、熱溶着層と、熱溶着層と隣接する他層との境界面を指す。
【0076】
なお、波高とは、同一境界面上の、凹部に位置する薄肉部における熱溶着層の最薄部を含む平面と、隣接する凸部に位置する熱溶着層の最厚部を通る、最薄部を含む平面と平行な面との距離を指す。
【0077】
第8の真空断熱材の発明は、第1から7のいずれかの発明において、連続する前記封止部に形成された隣り合う前記凹部間に形成された前記凸部に位置する一部の前記熱溶着層の厚みが、2枚以上の前記外被材の非封止部が有する前記熱溶着層の厚みの和よりも厚いものである。
【0078】
通常、薄肉部を設けない場合、封止部の厚みは、2枚の外被材の非封止部が各々有する前記熱溶着層の厚みの総和に略等しくなる。
【0079】
連続する封止部に複数個の薄肉部を形成する際、各薄肉部の位置にあった熱溶着層を構成していた樹脂は、薄肉部以外の封止部および封止部外へ移動する。
【0080】
連続する封止部に形成された凹凸模様において隣り合う凹部同士の間に位置する凸部における熱溶着層の厚みが、2枚の外被材の非封止部が有する熱溶着層の厚みの総和よりも薄いもしくは略等しい場合は、樹脂の移動箇所が設けられていないため、樹脂の流動による負荷により、薄肉部周辺に位置する外被材の熱溶着層に隣接する他層を破り、樹脂が外側へ流出するリスクが高くなる。
【0081】
連続する封止部に設けた凹凸模様において、凹部間に形成された凸部に位置する熱溶着層の少なくとも一部に、2枚の外被材の非封止部が有する熱溶着層の厚みの総和よりも厚くなるよう予め設定しておくことにより、樹脂の逃げ部が設けられているため、薄肉部同士の間に位置する封止部の外被材が受ける負荷が緩和され、外被材の破れを極めて起きにくくする。
【0082】
また、連続する封止部の凹凸模様の有する一方の外被材表面において、凹凸模様を有する箇所と凹凸模様を有さない箇所との境界部側に位置する凹部との間にも、2枚の外被材の非封止部が有する熱溶着層の厚みの総和よりも厚い封止部を設けておくことがより望ましい。
【0083】
以下、本発明の真空断熱材の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略するものとする。なお、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。
【0084】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図、図2〜図6は、同実施の形態の真空断熱材の平面図の各例を示す。
【0085】
図1において、真空断熱材1は、芯材2と芯材2内に配置された吸着剤3と、同一寸法に裁断された長方形の2枚の外被材4からなり、2枚の外被材4の間に芯材2と吸着剤3とが減圧密封され、芯材2を覆う2枚の外被材4の周縁近傍の外周部同士が熱溶着されている。
【0086】
2枚の外被材4は、外層側から、表面保護層5と、ガスバリア層6と、熱溶着層7とが積層されてなる。また、外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材の有する熱溶着層同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8には熱溶着層7の厚みの薄厚に差が設けられており、その厚みの差によって、封止部8に位置する一方の外被材表面に凹凸模様9が形成されている。
【0087】
凹凸模様9が有する凹部10に位置する熱溶着層7の厚みは、凹部10の周辺部の熱溶着層7よりも薄くなる薄肉部11を形成している。
【0088】
ここで、封止部8にある凹凸模様9の形状について説明する。
【0089】
外被材4の表面から見て、凹部10上の点を通る封止部8の断面は凸部12上も通るように構成されている。
【0090】
また、隣接する凹部10と凸部12との境界部に位置する熱溶着層7の厚み変化が略円弧状である。
【0091】
また、封止部8の熱溶着層7は両面に隣接する他の層(ガスバリア層6)との境界面を有し、凹凸模様が形成されている封止部8の一方の境界面のうねりの波高が、他方の境界面のうねりの波高よりも大きくなるよう設定されている。
【0092】
以上のように構成された真空断熱材1について、以下その動作、作用を説明する。
【0093】
まず、芯材2は、真空断熱材1の骨材として微細空間を形成する役割を果たし、真空排気後の真空断熱材1の断熱部を形成するものである。
【0094】
吸着剤3は、真空包装後に芯材2の微細空隙から真空断熱材1中へ放出された残留ガス成分や、真空断熱材1内へ侵入する水分や気体を吸着除去する役割を果たすものである。
【0095】
外被材4は、熱可塑性樹脂およびガスバリア性を有する金属箔や樹脂フィルム等をラミネート加工したものであり、外部から真空断熱材1内部への大気ガス侵入を抑制する役割を果たすものである。
【0096】
表面保護層5は、外被材が有する層のうち、ガスバリア層6よりも外層側に位置する、外力から外被材4、特にガスバリア層6の傷つきや破れを防ぐ役割を果たすものである。
【0097】
表面保護層5としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等従来公知の材料が使用でき、1種類でも2種類以上重ねて使用してもよい。
【0098】
ガスバリア層6は、高いバリア性を有する1種類もしくは2種以上のフィルムから構成される層であり、外被材4に優れたガスバリア性を付与するものである。
【0099】
ガスバリア層6としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムへアルミニウムや銅等の金属原子もしくはアルミナやシリカ等の金属酸化物を蒸着したフィルムや、金属原子や金属酸化物を蒸着した面にコーティング処理を施したフィルム等が使用できる。
【0100】
熱溶着層7は、外被材4同士を溶着し、真空断熱材1内部の真空を保持する役割に加えて、芯材2や吸着剤3による真空断熱材1内部からの突刺し等からガスバリア層6を保護する役割を果たすものである。
【0101】
封止部8は、外被材4の熱溶着層7同士を溶着することにより構成され、真空断熱材1内部と外部とを遮断する役割を果たしている。
【0102】
凹部10は、凹凸模様9において、外被材4表面が熱溶着層7側に凹んでいる部分であり、封止部8の熱溶着層7の厚みを薄くして薄肉部11を形成する役割を果たすものである。
【0103】
薄肉部11は、外被材4周縁の端面から封止部8を通って真空断熱材1内部へ侵入する大気ガスの透過速度を抑制し、真空断熱材1の真空度を維持する役割を果たしている。
【0104】
凸部12は、凹凸模様9において、外被材4が真空断熱材1内部と反対側に凸となっている部分のことであり、薄肉部11が位置する凹部9を外力から保護し、かつ、薄肉部11から移動してきた熱溶着層7を構成する樹脂の逃げ部となる役割を果たしている。
【0105】
以上のように、本実施の形態においては、封止部8における一方の外被材4表面に形成された凹凸模様9のうちの凹部10位置に薄肉部11が設けられており、薄肉部11において外被材4周縁の端面から侵入する気体および水分の透過面積が縮小され、透過抵抗が増大することから、経時的に真空断熱材1内部に透過する気体および水分量が抑制され、長期にわたって優れた断熱性能を発揮できる。
【0106】
また、本実施の形態の真空断熱材1は、封止部8に位置する一方の外被材4表面に形成された凹凸模様9が、凹部10に含まれる外被材4表面上の点を通る封止部8断面は凸部11上の点も通るように構成されており、薄肉部11を通る平面で切断したどの封止部8断面を見ても薄肉部11は、熱溶着層7の厚みが薄肉部11に比べて厚い部分と隣接していることから、薄肉部11は厚肉の熱溶着層7によって支持されることで薄肉部11における封止部8の局所的な強度低下を補うことができ、封止部8の外被材におけるクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0107】
また、本実施の形態の真空断熱材1は、隣接する凹部9と凸部12と境界部に位置する熱溶着層7の厚み変化が略円弧状となっており、外被材は、薄肉部11の近傍の熱溶着層7の厚み勾配が生じる箇所において、熱溶着層7の形状に沿って、円弧状に曲がり、角部を形成することなく、外被材4の角部における集中的な劣化が防止され、外被材へのクラック発生が極めて起きにくくなる。
【0108】
さらに、薄肉部11においては、熱溶着層7の厚みが周辺部よりも薄くがなり、その厚み減少分だけ封止部8の強度が低下するが、隣接する凹部10と凸部12との境界部にある薄肉部11近傍の熱溶着層7の厚みが円弧に沿って徐々に滑らかに増減することに伴い、封止部8の強度も連続的に滑らかに増減することから、境界部において局所的に封止部8の強度低下が起こらず、境界部に外力が集中しにくいため、薄肉部11およびその近傍の外被材のクラック発生や破断が極めて起きにくくなる。
【0109】
また、本実施の形態の真空断熱材1は、封止部8の熱溶着層7は両面に他の層(ガスバリア層6)との境界面を有し、凹凸模様9が形成されている封止部8の一方の前記境界面のうねりの波高が、凹凸模様9の他方の境界面のうねりの波高よりも大きい。
【0110】
熱溶着層7の厚み勾配が存在する箇所では、熱溶着層7よりも外層側にある外被材(ガスバリア層6および表面保護層5)が、熱溶着層7の形状に沿って歪曲による応力を受け、劣化が引き起こされる。
【0111】
よって、凹凸模様9が形成されている封止部8に位置する境界面(図1では上側)のうねりの波高を、他方(図1では下側)の境界面のうねりの波高よりも大きくすることにより、相対的に波高の小さいうねりを有する境界面側(図1では下側)の外被材4の劣化は、もう一方の相対的に波高の大きいうねりを有する境界面側(図1では上側)の外被材4と比べて僅かとなり、外被材4の封止部8では、劣化が小さい(図1では下側)の外被材4がもう一方の(図1では上側)外被材4を支持する形で剛性が保たれ、外力を受けた場合におけるクラックの発生および破断が極めて起きにくくなる。
【0112】
また、本実施の形態の真空断熱材1は、封止部8が凹部10を少なくとも2個以上有していることが好ましい。
【0113】
薄肉部11においては、封止部8の他箇所に比べて熱溶着層7の厚みが薄く、シール強度が低下することにより、例えば、製造工程において芯材2物質であるガラス繊維やシリカ粉末等を挟み込んだ状態で外被材4が熱溶着された場合、薄肉部11において熱溶着不良が発生することが懸念される。
【0114】
熱溶着不良が発生した箇所では樹脂が存在しないため、ガス侵入抑制効果が低下する。
【0115】
この対策として、少なくとも2個以上の薄肉部11を設けることにより、熱溶着不良に起因する真空断熱材1内部への気体および水分侵入促進の影響が緩和される。
【0116】
特に、芯材2としてガラス繊維を用いた場合は、挟雑物として熱溶着の際に挟み込まれた芯材2物質が加熱変形し、薄肉部11にスルーホールを形成することが多々あることから、本発明の(本実施の形態の)効果がより顕著となる。
【0117】
また、薄肉部11を複数個有する場合は、薄肉部11が1個のみの場合と比べて、薄肉部11における熱溶着層7の厚みを増加させても同一の効果が得られるため、薄肉部11における外被材4強度やシール強度低下が緩和され、薄肉部11におけるクラック発生や封止部8の破断のリスクが低減される。
【0118】
なお、本実施の形態において、凹凸模様9が封止部8に位置する2面の外被材表面のうち一方に封止部8全体に渡って形成されていてもよいが、封止部8の一部分であってもよい。
【0119】
なお、封止部8が有する各薄肉部9における熱溶着層7の厚みは、同一でなくても良い。
【0120】
なお、凹凸模様9において隣接する凹部10と凸部12との境界部に位置する熱溶着層の厚み変化に伴い形成された、熱溶着層7と他層との境界面の円弧の曲率半径は同一である必要はなく、ガスバリア層6として使用している金属箔やフィルムが、劣化しない程度の曲率半径を有しておればよい。
【0121】
なお、凹凸模様9の構成、すなわち凹部10および凸部12の面積や形状は特に指定するものではなく、凹部の面積や形状は全て等しくある必要はない。
【0122】
以下、本発明における凹凸模様9の詳細形状とその効果について、実施例を用いて説明する。
【0123】
(実施例1)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材1を作製した。
【0124】
外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材4の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8に位置する溶融された2面の外被材表面のうちの一方(図7では上側)に、凹凸模様9が形成されている。
【0125】
凹凸模様9は、凹凸模様9位置にある熱溶着層7の厚み差によって形成されており、凹部10に位置する熱溶着層7の厚みはその周囲に位置する熱溶着層7よりも薄肉となっている。
【0126】
真空断熱材1の封止部8の幅を20mmとし、凹凸模様9は封止部8の外周側および内周側から1mmずつ内側の部分全体に渡って形成されているとする。
【0127】
また、凹凸模様9は図2に示すような格子模様であり、凹部10は全て凸部12に取り囲まれるよう形成されている。
【0128】
さらに、外被材4表面における凹部10の形状は各対角線が6mmの正方形の全体およびその一部であり、凸部の幅は1.5mmであるとする。
【0129】
(図7では上側のガスバリア層6と熱溶着層7との)境界面が形成する凹部10と凸部12との境界部に位置する円弧の曲率半径は1.5mmであり、(図7では上側のガスバリア層6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.2mmであった。また、もう一方の(図7では下側のガスバリア層6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図7参照)。
【0130】
この際、薄肉部11の厚みを15μmとしたとき、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、3.4×10-15mol/m2/s/Paであった。
【0131】
また、封止部8において、アルミニウム箔にクラックの発生は確認されなかった。
【0132】
実施例1では、芯材2がガラス繊維からなる。
【0133】
芯材2がガラス繊維である場合、ガラス繊維による真空断熱材1内部から外被材4への貫通ピンホールが発生しやすい。
【0134】
通常、このピンホール発生を防止策として、真空断熱材1内部に面する外被材4の最内層にある熱溶着層7の厚みを厚くすることが有効とされているが、熱溶着層7の厚みを厚くすることにより、外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入するガス侵入経路の通路断面積が拡大するという懸念があった。
【0135】
実施の形態1(の実施例1)の真空断熱材1においては、薄肉部9においてガス侵入量を制御できるために、熱溶着層7の厚みを厚くしても、外被材4周縁の端面から封止部8を通って内部に侵入する気体および水分侵入量の増加が抑制される。
【0136】
また、実施例1では、外被材4にガスバリア性を付与するためのガスバリア層として、アルミニウム箔(金属箔)を採用したが、金属箔は、樹脂フィルムに金属原子や金属酸化物分子を蒸着したガスバリアフィルムと比べてガスバリア性は優れるものの伸縮性や追従性に劣るため、クラックやピンホールが発生しやすくなり、本発明(の実施の形態1)による効果がより顕著に現れる。
【0137】
(実施例2)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材1を作製した。
【0138】
外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材4の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8に位置する溶融された2面の外被材表面のうちの一方(図7では上側)に、凹凸模様9が形成されている。
【0139】
凹凸模様9は、凹凸模様9位置にある熱溶着層7の厚み差によって形成されており、凹部10に位置する熱溶着層7の厚みはその周囲に位置する熱溶着層7よりも薄肉となっている。
【0140】
真空断熱材1の封止部8の幅を20mmとし、凹凸模様9は封止部8の外周側および内周側から1mmずつ内側の部分全体に渡って形成されているとする。
【0141】
また、凹凸模様9は図2に示すような格子模様であり、凹部10は全て凸部12に取り囲まれるよう形成されている。
【0142】
さらに、外被材4表面における凹部10の形状は各対角線が6mmの正方形の全体およびその一部であり、凸部の幅は1.5mmであるとする。
【0143】
(図7では上側のガスバリア層6と熱溶着層7との)境界面が形成する凹部10と凸部12との境界部に位置する円弧の曲率半径は1.1mmであり、(図7では上側のガスバリア層6と熱溶着層7との)境界面のうねりの各波高は0.18mmであった。また、もう一方の(図7では下側のガスバリア層6と熱溶着層7との)境界面が有する凹部の最大波高は0.05mmであった(図7参照)。
【0144】
この際、薄肉部11の厚みを30μmとしたとき、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、4.9×10-15mol/m2/s/Paであった。
【0145】
また、封止部8において、アルミニウム箔にクラックの発生は確認されなかった。
【0146】
(実施例3)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材1を作製した。
【0147】
外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材4の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8に位置する溶融された2面の外被材表面のうちの一方に、凹凸模様9が形成されている。
【0148】
凹凸模様9は、凹凸模様9が位置している熱溶着層7の厚み差によって形成されており、凹部10に位置する熱溶着層7の厚みはその周囲に位置する熱溶着層7よりも薄肉となっている。
【0149】
真空断熱材1の封止部8の幅を20mmとし、凹凸模様9は封止部8の外周側および内周側から1mmずつ内側の部分全体に渡って形成されているとする。
【0150】
また、凹凸模様9は図3に示すような模様であり、凹部10は全て凸部12に取り囲まれるよう形成されている。
【0151】
さらに、外被材4表面における凹部10の形状は全て一辺6.75mmの直角二等辺三角形よりなり、凸部12の幅は1.5mmであるとする。
【0152】
熱溶着層7とガスバリア層6との境界面のうち、うねりの波高が大きい境界面が形成する凹部10と凸部12との境界部に位置する円弧の曲率半径は1.5mmであり、この境界面のうねりの各波高は0.2mmであった。また、もう一方の境界面が有する最大波高は0.05mmであった。
【0153】
この際、薄肉部11の厚みを15μmとしたとき、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、2.3×10-15mol/m2/s/Paであった。
【0154】
また、封止部8において、アルミニウム箔にクラックの発生は確認されなかった。
【0155】
(実施例4)
実施の形態1において、熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材1を作製した。
【0156】
外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材4の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8に位置する溶融された2面の外被材表面のうちの一方に、凹凸模様9が形成されている。
【0157】
凹凸模様9は、凹凸模様9が位置している熱溶着層7の厚み差によって形成されており、凹部10に位置する熱溶着層7の厚みはその周囲に位置する熱溶着層7よりも薄肉となっている。
【0158】
真空断熱材1の封止部8の幅を20mmとし、凹凸模様9は封止部8の外周側および内周側から1mmずつ内側の部分全体に渡って形成されているとする。
【0159】
また、凹凸模様9は図3に示すような模様であり、凹部10は全て凸部12に取り囲まれるよう形成されている。
【0160】
さらに、外被材4表面における凹部10の形状は全て一辺6.75mmの直角二等辺三角形よりなり、凸部12の幅は1.5mmであるとする。
【0161】
熱溶着層7とガスバリア層6との境界面のうち、うねりの波高が大きい境界面が形成する凹部10と凸部12との境界部に位置する円弧の曲率半径は1.1mmであり、この境界面のうねりの各波高は0.18mmであった。また、もう一方の境界面が有する最大波高は0.05mmであった。
【0162】
この際、薄肉部11の厚みを15μmとしたとき、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、3.6×10-15mol/m2/s/Paであった。
【0163】
また、封止部8において、アルミニウム箔にクラックの発生は確認されなかった。
【0164】
(比較例1)
熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材を作製した。
【0165】
封止部8における熱溶着層7の厚みが略均一の100μmの場合、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量は、2.0×10-14mol/m2/s/Paであった。
【0166】
また、封止部8において、アルミニウム箔にクラックの発生は確認されなかった。
【0167】
(比較例2)
熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材1を作製した。
【0168】
外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材4の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8に位置する溶融された2面の外被材表面のうちの一方に、凹凸模様9が形成されている。
【0169】
凹凸模様9は、凹凸模様9が位置している熱溶着層7の厚み差によって形成されており、凹部10に位置する熱溶着層7の厚みはその周囲に位置する熱溶着層7よりも薄肉となっている。
【0170】
凹部10は、図8に示すように4辺の外被材4周縁に平行な溝状に真空断熱材1の端部に至るように形成されており、凹部10の幅は8.0mm、凸部の幅は各1.5mmである。
【0171】
熱溶着層7とガスバリア層6との境界面のうち、うねりの波高が大きい境界面が形成する凹部10と凸部12との境界部に位置する円弧の曲率半径は1.5mmであり、この境界面のうねりの各波高は0.2mmであった。また、もう一方の境界面が有する最大波高は0.05mmであった。
【0172】
真空断熱材1の封止部8の幅を20mm、薄肉部11の厚みを15μmとすると、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量を試算すると、6.9×10-15mol/m2/s/Paであった。
【0173】
ただし、凹部10位置においてアルミニウム箔にクラックの発生が確認された。
【0174】
(比較例3)
熱溶着層7として厚み50μmの直鎖低密度ポリエチレンフィルムを、ガスバリア層6として厚み6μmのアルミニウム箔を、また表面保護層5として、厚み15μmと25μmのナイロンフィルム2層を積層してなる外被材4と、ガラス繊維からなる芯材2と、酸化カルシウムを通気包材に封入してなる吸着剤3から構成された真空断熱材1を作製した。
【0175】
外被材4の周囲辺(外周部)には、外被材4の有する熱溶着層7同士を溶融し貼り合わせた封止部8があり、封止部8に位置する溶融された2面の外被材表面のうちの一方に、凹凸模様9が形成されている。
【0176】
凹凸模様9は、凹凸模様9が位置している熱溶着層7の厚み差によって形成されており、凹部10に位置する熱溶着層7の厚みはその周囲に位置する熱溶着層7よりも薄肉となっている。
【0177】
凹部10は、図9に示すように、4辺の外被材4周縁に垂直な方向に2つ並んでおり、かつ、外被材4周縁と平行な溝状に真空断熱材1の端部に至るように形成されており、凹部10の幅は各3.0mm、凸部の幅は各1.5mmである。
封止部8の4辺のうちの3辺に周縁に垂直な方向に4つ並んだ周縁に平行な溝状の薄肉部9が形成されており、
熱溶着層7とガスバリア層6との境界面のうち、うねりの波高が大きい境界面が形成する凹部10と凸部12との境界部に位置する円弧の曲率半径は1.5mmであり、この境界面のうねりの各波高は0.2mmであった。また、もう一方の境界面が有する最大波高は0.05mmであった。
【0178】
真空断熱材1の封止部8の幅を20mm、薄肉部11の厚みを30μmとすると、真空断熱材1の外被材4周縁の端面から封止部8を通って侵入する大気ガス量を試算すると、3.6×10-15mol/m2/s/Paであった。
【0179】
ただし、凹部10位置においてアルミニウム箔にクラックの発生が確認された。
【0180】
以上、本発明における実施例および比較例を(表1)に示す。
【0181】
【表1】

ただし、(表1)における外被材4の劣化に関しては、下記の基準で判定した。
【0182】
○:劣化なし(10個の真空断熱材サンプルに対して所定の取り扱い作業を実施後において、凹部に位置するアルミニウム箔にピンホール増加が確認されず)。
【0183】
×:劣化あり(10個の真空断熱材サンプルに対して所定の取り扱い作業を実施後に、凹部に位置するアルミニウム箔にピンホール増加が確認された)。
【0184】
(表1)の結果より、実施の形態1に示す真空断熱材1は、凹凸模様9の構成や薄肉部11の厚みにより効果差は見られたものの、薄肉部11を設けない真空断熱材1よりも常にガス侵入量に有意差が見られた。また、外被材4に劣化が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明にかかる真空断熱材は、長期にわたる使用にも耐えうる断熱性能を有しているものであり、冷蔵庫用断熱材や自動販売機、建造物用断熱材、自動車用断熱材、保冷ボックスなどにも適用できる。
【符号の説明】
【0186】
1 真空断熱材
2 芯材
4 外被材
6 ガスバリア層
7 熱溶着層
8 封止部
9 凹凸模様
10 凹部
11 薄肉部
12 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶着層同士が対向する2枚の外被材の間に芯材が減圧密封され前記芯材を覆う2枚の前記外被材の周縁近傍の外周部同士が熱溶着された真空断熱材において、前記外被材の外周部同士が熱溶着された封止部に位置する一方の外被材表面が有する凹凸模様は、凹部上の点を通る前記封止部の断面であれば凸部上の点をも通るように形成され、前記凹部に前記熱溶着層の厚みが前記凹部の周辺部よりも薄い薄肉部が位置していることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記凹凸模様が、前記凸部に取り囲まれた前記凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記凹部上の点を通る前記封止部の前記外被材周縁に垂直な断面において、前記封止部が前記薄肉部を少なくとも2個以上有している請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記凹凸模様が格子模様であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記凹凸模様が有する前記凹部が前記凸部に取り囲まれてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の真空断熱材。
【請求項6】
隣接する前記凹部と前記凸部との境界部に位置する前記熱溶着層の厚み変化が略円弧状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記封止部の前記熱溶着層は両面に他の層との境界面を有し、前記凹凸模様が形成されている前記封止部の一方の前記境界面のうねりの波高が、他方の前記境界面のうねりの波高よりも大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の真空断熱材。
【請求項8】
連続する前記封止部に形成された隣り合う前記凹部間に形成された前記凸部に位置する一部の前記熱溶着層の厚みが、2枚以上の前記外被材の非封止部が有する前記熱溶着層の厚みの和よりも厚くなっている請求項1から7のいずれか一項に記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−255805(P2010−255805A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109208(P2009−109208)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】