説明

真空蒸発式蒸留装置

【課題】装置内の不凝縮性ガスの排出に真空ポンプを用いることなく、安価で信頼性の高い不凝縮性ガス排出手段を具備する真空蒸発式蒸留装置を提供すること。
【解決手段】熱源から直接又は間接に供給される熱で、減圧下で原水を加熱し、水蒸気を発生させ該水蒸気を凝縮して淡水を製造する蒸発蒸留器10を備え、製造された淡水を排出する淡水排液ポンプ30を備えた真空蒸発式蒸留装置において、装置内の不凝縮性ガスを収集する抽気手段(抽気管17、エゼクタ23等)と、抽気手段で収集された不凝縮性ガスを大気圧以下で貯留する抽気タンク16を設けると共に、淡水排液ポンプ30を用いて該抽気タンク16を大気圧以上若しくは大気圧程度まで加圧できるようにし、抽気タンク16内の不凝縮性ガスを排出する場合、淡水排液ポンプ30で抽気タンク内16を加圧して、該不凝縮性ガスを装置外へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧下で原水(海水、化石水、天然水、水道水等)を加熱し発生した水蒸気を凝縮させて蒸留水を製造する真空蒸発蒸留装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空蒸発式蒸留装置、特に太陽熱や廃熱などを利用して各種原水から蒸留水を得る真空蒸発式蒸留装置では、これまで装置内を真空にし、また、原水に含まれる不凝縮性ガスや、装置内に漏れ込む空気等の不凝縮性ガスを排出(抽気)する手段として、通常真空ポンプが用いられている。しかしながら、不凝縮性ガスの排出に真空ポンプを用いる方法は下記のような問題点があった。
【0003】
(1)真空蒸発式蒸留装置の装置内は、比較的水蒸気分圧、即ち水蒸気の比率が高く、通常の真空ポンプでは使用不能或いは負担が大きい。また、真空ポンプ内に水が溜まり易く、水抜き等の作業を頻繁に行う必要がある。
【0004】
(2)真空ポンプを駆動するための動力には、通常電力が必要であり、熱を蒸留水化の直接の駆動力としている蒸発式の蒸留装置においては、補機類の中でも真空ポンプの負荷が大きい。
【0005】
(3)また、真空ポンプは、分解清掃や油の交換など、定期的な保守点検や交換を必要とする。
【0006】
上記(1)〜(3)の問題は、特に蒸留水化装置を無人で長時間運転しようとすると深刻な問題となる。また、太陽熱などを駆動力とする蒸留水化装置では、太陽電池などで発電した電力で装置が必要とする電力を賄うため、装置が消費する電力の削減は大きな課題となる。
【0007】
真空ポンプを用いずに抽気を行う方法としては、エゼクタ装置による排出が考えられる。しかし、真空蒸発式蒸留装置の装置内の圧力は大気圧の1/10ほどであり、この装置内圧力から大気圧にまでエゼクタ装置で不凝縮性ガスを排出しようとすると、下記のような問題がある。
【0008】
(1)液エゼクタであれば、流体を駆動するための電力、駆動するための流体の流量等が大きくなる。
【0009】
(2)蒸気エゼクタは、高圧蒸気を必要とし、排出ガスの取扱や給水が問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので,装置内の不凝縮性ガスの排出に真空ポンプを用いることなく、安価で信頼性の高い不凝縮性ガス排出手段を具備する真空蒸発式蒸留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、熱源から直接又は間接に供給される熱で、減圧下で原水を加熱し、水蒸気を発生させ該水蒸気を凝縮して蒸留水を製造する蒸発蒸留器を備え、該製造された蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を装置外に排出する排液手段を1以上備えた真空蒸発式蒸留装置において、装置内の不凝縮性ガスを収集する抽気手段と、該抽気手段で収集された不凝縮性ガスを大気圧以下で貯留する抽気タンクを設けると共に、前記排液手段で排出する前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を該抽気タンク内に導入して該抽気タンク内を大気圧以上若しくは大気圧程度まで加圧する加圧手段を設け、前記抽気タンク内の不凝縮性ガスを排出する場合、前記加圧手段で該抽気タンク内に前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を前記抽気タンクに導入して加圧し、該不凝縮ガスを装置外に排出することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の真空蒸発式蒸留装置において、前記装置内の不凝縮性ガスを収集する抽気手段が前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水で駆動されるエゼクタであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の真空蒸発式蒸留装置において、前記蒸発蒸留器の高温部の不凝縮性ガスは抽気管を通して直接前記抽気タンクに導かれるようになっていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空蒸発式蒸留装置において、前記抽気タンクは、前記排液手段で排出する前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水の排水経路の途中に、該排水経路の一部として設けられると共に、前記不凝縮性ガスの排出は、該排水経路と同一の経路で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、抽気手段で集められた不凝縮性ガスを大気圧以下で貯留する抽気タンクに貯留するので、大気圧以下に減圧されている装置内の不凝縮性ガスを抽気するための抽気手段の動力が小さくて済む。また、該抽気タンク内を加圧して不凝縮性ガスを外部に排出するための加圧手段に真空蒸発式蒸留装置が備えている排液手段で排出する蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を用いるので、抽気タンク内に貯留された不凝縮性ガスを排出するのに格別の手段を別途設ける必要がない。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、装置内の不凝縮性ガスを収集する抽気手段に蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水で駆動されるエゼクタを用いることにより、該エゼクタで抽気した不凝縮性ガスを内部が大気圧以下である抽気タンク内に吐出させるので、該エゼクタを駆動するための流体の流量及び動力が少なくて済む。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、蒸発蒸留器の高温部の不凝縮性ガスは抽気管で直接抽気タンクに導かれるので、その分抽気手段の動力が少なくなる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、抽気タンクを排水経路の途中に、該排水経路の一部として設け、不凝縮性ガスの排出は蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水の排水と同一の経路で行うので、不凝縮性ガスの排出に別途排出経路を設ける必要がなく蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水及び不凝縮ガスの排出のための経路構成が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。図1において、10は減圧下で原水を加熱し、水蒸気を発生させ該水蒸気を凝縮して蒸留水を製造する蒸発蒸留器であり、該蒸発蒸留器10は、熱源から直接又は間接に供給される熱で原水を加熱し水蒸気を発生するようになっている。
【0020】
また、11は凝縮器、12は蒸留水タンクであり、蒸発蒸留器10で発生し凝縮して得られた蒸留水は蒸留水流路13を通って蒸留水タンクに流れ込む。また、蒸発蒸留器10で凝縮しなかった水蒸気は蒸気流路14を通って凝縮器11に流れ込み、該凝縮器11で凝縮され蒸留水となって蒸留水流路15を通って蒸留水タンク12に流れ込む。
【0021】
また、16は真空蒸発式蒸留装置の運転中内部が減圧下にあり、不凝縮性ガスを大気圧以下で貯留する抽気タンクであり、該抽気タンク16には蒸発蒸留器10の高温部が抽気管17及び抽気制御弁18を介して接続されている。凝縮器11内の不凝縮性ガス及び蒸留水タンク12内の不凝縮性ガスは、それぞれ不凝縮性ガス流路19及び抽気制御弁20、不凝縮性ガス流路21及び抽気制御弁22を通ってエゼクタ23により抽気され、抽気タンク16内に吐出されるようになっている。
【0022】
24はエゼクタ23を駆動するエゼクタ駆動ポンプであり、25は抽気タンク16内に集められた不凝縮性ガスを排気するための排気弁、26は抽気タンク16内の圧力を検出する圧力計、27は抽気タンク16内に溜まる蒸留水の水位を検出する水位計、28は抽気タンク16内を加圧するための加圧弁である。蒸留水タンク12内には蒸留水排水路29が接続され、該蒸留水排水路29に蒸留水排液ポンプ30及び排液弁31が接続されている。
【0023】
蒸発蒸留器10の高温部(高圧部)の不凝縮性ガスは抽気管17及び抽気制御弁18を介して直接抽気タンク16に導かれるようになっている。また、蒸留水タンク12に連通する蒸発蒸留器10の低温部及び凝縮器11の不凝縮性ガスはエゼクタ23によって捕集され、抽気タンク16内に吐出される。なお、エゼクタ23はエゼクタ駆動ポンプ24で抽気タンク16の蒸留水を給水することにより駆動される。
【0024】
装置内の不凝縮性ガスは上記のように抽気タンク16に集められ、抽気タンク16内に不凝縮性ガスが一定量溜まったと判断された場合(抽気タンク内圧が一定以上になったとき、一定時間おき、蒸発蒸留器10に供給される原水供給量が一定以上になったとき、蒸留水タンク12に蒸留水が一定以上溜まったときなど)、排水排液ポンプ30を運転し、加圧弁28を開くことにより、抽気タンク16内が加圧され、該抽気タンク16内に集められた不凝縮性ガスが、抽気タンク16内の蒸留水と混合された状態で排気弁25を通して、点線に示す蒸留水排水路29’を通って排出される。
【0025】
抽気タンク16は上記のように真空蒸発式蒸留装置の蒸留運転中は、減圧下にあるので、凝縮器11や蒸留水タンク12内の不凝縮性ガスを抽気するためにエゼクタに流す流体が少なくて済む(容量の少ないエゼクタで済む)。また、抽気タンク16の加圧には蒸留水排液ポンプ30の吐出圧を用いるので、抽気タンク16内に集められた不凝縮性ガスを排出するために、新たに追加される機器が少なくて済む。
【0026】
上記真空蒸発式蒸留装置においては、加圧弁28は蒸留水の排水と不凝縮性ガスの排出とを分離するために設けているが、蒸留水を排出する排液弁31と加圧弁28を併せて3方向弁としてもよく、液封で代用してもよく、また無くてもよい。また、この場合、抽気タンク16の液面の低下を水位計27で検知することで、不凝縮性ガスが蓄積されていることを知ることができる。
【0027】
抽気タンク16内の不凝縮性ガスだけを排出するには、抽気タンク16内を加圧し、上昇する抽気タンク16内の液面を検知しながら、液面が抽気タンク16の上部に達したら排出を止めるか、図2に示すように、エアロックタンク33を設けてエアロック33aを形成し、抽気タンク16から出てきた蒸留水を再度吸わせるのがよい。なお、図2において、34は排気弁である。この場合エアロックタンク33のレベルスイッチ35が動作するまで不凝縮性ガスと蒸留水を吐き出した後、蒸留水排液ポンプ30を止め、レベルスイッチ35が復帰した後、排気弁34を閉める。
【0028】
また、蒸留水の混じった不凝縮性ガスを蒸留水排水路29(点線で示す蒸留水排水路29’)に流してもよい。この場合、蒸留水排水路29に空気が混入することになるが、必要であれば気液分離器を外部に設ければよい。
【0029】
蒸留水排液ポンプ30が逆流不可能なポンプ(ギアポンプ、ダイアフラムポンプ等)であれば、蒸留水排液ポンプ30に並列にバイパス弁32を取り付ける。
【0030】
抽気タンク16に送り込む液、及びエゼクタ23などの駆動流体としては、蒸留水の代わりに濃縮原水、原水等を用いてもよい(但し、不純物が少なくて動作不良の原因となりにくく、逆流した場合でも、装置内の汚染等のトラブルを最小限にとどめるには蒸留水がよい)。蒸発蒸留器10、凝縮器11の抽気個所には特に限定しない。例えば蒸発蒸留器10の集熱系等でもよい。
【0031】
抽気タンク16内の圧力が大気圧まで上昇したことを検知するには、圧力計26で抽気タンク16内の圧力を検出するのがよいが、蒸留水排液ポンプ30の運転後一定の時間が経過したことを以って大気圧に達したと判断してもよい。抽気タンク16が1個のみだと、排気中は不凝縮性ガスの抽気ができないので、2系統設けて交互に使用するなどの方法も考えられる。
【0032】
図3は本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。本真空蒸発式蒸留装置では、サイクル内の蒸気流によって凝縮器11に集められた不凝縮性ガス(蒸留水タンク12内の不凝縮性ガスも不凝縮性ガス流路36を通って凝縮器11に集められる)を抽気タンク16に不凝縮性ガス流路19及び逆止弁37を通してエゼクタ23で捕集して導いている。エゼクタ23はエゼクタ駆動ポンプ24により蒸留水タンク12内の蒸留水によって駆動される。該エゼクタ23を駆動した蒸留水は、蒸留水排液ポンプ30を逆流して蒸留水タンク12に戻る。なお、38はエゼクタ23とエゼクタ駆動ポンプ24の間に配置された逆止弁である。
【0033】
本真空蒸発式蒸留装置では、抽気タンク16を加圧する加圧手段は蒸留水排液ポンプ30であり、また抽気タンク16を蒸留水排水路29の一部として構成しているので、装置から蒸留水を排出するときに、同時に抽気タンク16内に集められた不凝縮性ガスも排出される。
【0034】
本真空蒸発式蒸留装置の運転方法を、以下に述べる。抽気タンク16内に不凝縮性ガスを集める場合、エゼクタ駆動ポンプ24を運転する。これにより、装置内の不凝縮性ガスは抽気タンク16内に集められる。エゼクタ23を駆動した液(蒸留水)は上記のように蒸留水排液ポンプ30を逆流して蒸留水タンク12に戻る。
【0035】
抽気タンク16内に不凝縮性ガスが集まるにつれ、該抽気タンク16内の圧力が上昇し液面が降下し、水位計27が動作した場合、蒸留水排液ポンプ30を運転して、抽気タンク16内を加圧し、排出弁39を開き、不凝縮性ガスを蒸留水と一緒に排出する。この場合、排出弁は内圧が上昇するまで開かなくてもよい。また、排出弁に代えて逆止弁を用いてもよい。
【0036】
上記蒸留水の排出に伴い、蒸留水タンク12内の液面が降下する。蒸留水タンク12内の液面が規定位置まで降下したことを水位計40で検知すると、排出弁39を閉じ、蒸留水排液ポンプ30を停止する。この時、蒸留水タンク12から抽気タンク16までの蒸留水排水路29等にある蒸留水量は常に一定であるので、前回排出したときから蒸留水タンク12に貯留された蒸留水量に相当する蒸留水が、装置外に排出されたことになる。
【0037】
抽気タンク16と蒸留水排液ポンプ30の間には、液(蒸留水)の戻り量を調整する調整弁や、液封を設けたりしてもよい。蒸留水排液ポンプ30が逆流させにくいポンプ(ダイアフラムポンプやギアポンプ等)の場合、バイパス弁を設けてもよい。排水中に若干の空気が混入することになるので、必要であれば、気液分離器を装置外に設けてもよい。またはエゼクタ駆動ポンプ24と蒸留水排液ポンプ30を兼用してもよい。
【0038】
図4は本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。本真空蒸発式蒸留装置では、蒸発蒸留器10の高温部(高圧部)の不凝縮性ガスは抽気管17で直接抽気タンク16に導き、蒸発蒸留器10の低温部及び凝縮器11の不凝縮性ガスは不凝縮性ガス流路19及び逆止弁37を通してエゼクタ23で捕集して抽気タンク16内に吐出している。エゼクタ23の駆動流体には蒸留水タンク12内の蒸留水を用い、蒸留水排液ポンプ30により駆動するようになっている。蒸留水排水路29に3方弁43を設け、該3方弁43の1端と蒸留水タンク12の間に蒸留水戻流路44を設けている。
【0039】
抽気タンク16には高水位を検出する高水位計41と低水位を検出する低水位計42を設けている。抽気タンク16内に不凝縮性ガスを集める場合、3方弁43で抽気タンク16への蒸留水排水路29を閉鎖し、蒸留水排液ポンプ30によりエゼクタ23に蒸留水を送り、エゼクタ23を駆動する。これにより、装置内の不凝縮性ガスはエゼクタ23で抽気され、抽気タンク16内に吐出される。エゼクタ23を駆動した液(蒸留水)は3方弁43及び蒸留水戻流路44を通って蒸留水タンク12に戻る。
【0040】
抽気タンク16内に不凝縮性ガスが集まるにつれ、該抽気タンク16内の圧力が上昇し液面が降下し、低水位計42が動作した場合、3方弁43で蒸留水戻流路44を閉鎖し、蒸留水排液ポンプ30の吐出液を抽気タンク16へ送り込む。排出弁39を開くことにより、抽気タンク16内の不凝縮性ガスは排気される。液面が上昇し高水位計41が動作したら排出弁39を閉じ、3方弁43で蒸留水戻流路44を閉鎖する。これにより上記と同様の動作により抽気タンク16内に装置内の不凝縮性ガスが集められる。
【0041】
また、蒸留水タンク12の蒸留水を排出する場合は、3方弁43で蒸留水戻流路44を閉鎖すると同時に蒸留水排液ポンプ30を運転し、更に排出弁39を開くことにより、抽気タンク16の不凝縮性ガスと蒸留水は排出される。蒸留水の排出に伴い、蒸留水タンク12内の液面が降下する。蒸留水タンク12内の液面が規定位置まで降下したことを水位計40で検知すると、排出弁39を閉じ、3方弁43で抽気タンク16への蒸留水排水路29を閉鎖する。
【0042】
なお、上記真空蒸発式蒸留装置において、各部の弁やポンプはそれに代わる手段で置き換えても構わない。例えば逆止弁と2方弁を置き換えたり、3方弁と同一の作用を2方弁を組合せて構成してもよい。
【0043】
図5は本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。本真空蒸発式蒸留装置では、蒸発蒸留器10の低温部及び凝縮器11の不凝縮性ガスは逆止弁37を通してエゼクタ23によって捕集され抽気タンク16に吐出している。なお、その他の蒸発蒸留器10の低温部(蒸留水タンク12等を含む)などの不凝縮性ガスは、蒸発濃縮サイクルの蒸気流によって、全て凝縮器11に運ばれるようになっている。また、必要があれば,蒸発蒸留器10の高温部(高圧部)の不凝縮性ガスは、抽気配管によって抽気タンク16に直接送ることもできる。46は蒸留水タンク12の高水位を検出する高水位計、47は低水位を検出する低水位計である。
【0044】
エゼクタ23の駆動液及び駆動源は、蒸留水排液ポンプ30の吐出液(蒸留水)を用いている。ここでの加圧手段としては、エゼクタ23の駆動液の戻りの制御弁、即ち排出制御弁45を閉じることで、抽気タンク16の内圧を上げ、不凝縮性ガスと、駆動液である蒸留水と同時に排出逆止弁48を通して装置外に排出できる。
【0045】
上記構成の真空蒸発式蒸留装置の運転制御は、例えば下記のように行えばよい。水位計27が、抽気タンク16内の液面の低下を検知した場合、排出制御弁45を閉じる。この時、エゼクタ23を通って送り込まれる蒸留水により、抽気タンク16内は加圧される。切換後、抽気タンク16内の圧力が大気圧以上になると、排出逆止弁48を通して不凝縮性ガスと、蒸留水が排出される。
【0046】
なお、この時蒸留水の戻り配管49に流量制限手段(オリフィス等)を設けると、抽気中の抽気タンク16内の圧力を上昇させ、抽気タンク16の容積を小さくすることができる。この場合、流量制限手段の容量は、エゼクタ23の排気能力とポンプの特性とから導かれる。抽気タンク16の抽気中の最大圧力において、相当する流量を戻すことのできる程度の容量とするとよい。
【0047】
また、例えば抽気タンク16内の圧力を圧力計26等で計測し、これに応じて排出制御弁45を開度制御することにより、抽気タンク16内への不凝縮性ガスの蓄積量を適宜制御することでもできる。具体的には、例えば次のように運転(制御)を行えばよい。例えばエゼクタ23の排気能力に合わせ、抽気タンク16内の圧力が、設定値となるように排出制御弁45の開度を開度調整する(圧力が上昇した場合は開き、下降した場合は閉じる)。ここで、設定圧力で液面の低下が水位計で検出された場合、不凝縮性ガスの限界量蓄積されたと判断し、排出制御弁45を全閉し、不凝縮性ガスと蒸留水とを排出する。これにより、エゼクタの駆動流量を最小としながら、抽気タンクの容積を最小とすることができる。
【0048】
真空蒸発式蒸留装置を図5に示すように構成することにより、装置を構成する機器の数を全体的に減らして装置の低コスト化を図ることができる。
【0049】
また、図1、3、4、5では蒸留水タンク12や抽気タンク16等を別置きに構成しているが、生産、設計上は蒸留水タンク12や抽気タンク16、更に図示しない原水タンクを蒸発蒸留器10や凝縮器11と一体装置として構成してもよい。
【0050】
また、蒸留水排液ポンプ30に好ましい特性は、抽気中は低ヘッドでもエゼクタ23の駆動に必要な大流量の運転を行い、排出中は低流量でも、大気相当までの高ヘッドで排水の運転ができるものがよい。例えば、遠心渦巻きポンプなどが好ましい。
【0051】
上記実施形態例で用いる原水とは、海水、地下水等の塩や不純物を多く含んだ水を指す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の抽気タンクから不凝縮性ガスを排出する手段の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。
【図5】本発明に係る真空蒸発式蒸留装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 蒸発蒸留器
11 凝縮器
12 蒸留水タンク
13 蒸留水流路
14 蒸気流路
15 蒸留水流路
16 抽気タンク
17 抽気管
18 抽気制御弁
19 不凝縮性ガス流路
20 抽気制御弁
21 不凝縮性ガス流路
22 抽気制御弁
23 エゼクタ
24 エゼクタ駆動ポンプ
25 排気弁
26 圧力計
27 水位計
28 加圧弁
29 蒸留水排水路
29’ 蒸留水排水路
30 蒸留水排液ポンプ
31 排液弁
32 バイパス弁
33 エアロックタンク
34 排気弁
35 レベルスイッチ
36 不凝縮性ガス流路
37 逆止弁
38 逆止弁
39 排出弁
40 水位計
41 高水位計
42 低水位計
43 3方弁
44 蒸留水戻流路
45 排出制御弁
46 高水位計
47 低水位計
48 排出逆止弁
49 蒸留水戻り配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から直接又は間接に供給される熱で、減圧下で原水を加熱し、水蒸気を発生させ該水蒸気を凝縮して蒸留水を製造する蒸発蒸留器を備え、該製造された蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を装置外に排出する排液手段を1以上備えた真空蒸発式蒸留装置において、
装置内の不凝縮性ガスを収集する抽気手段と、該抽気手段で収集された不凝縮性ガスを大気圧以下で貯留する抽気タンクを設けると共に、前記排液手段で排出する前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を該抽気タンク内に導入して該抽気タンク内を大気圧以上若しくは大気圧程度まで加圧する加圧手段を設け、
前記抽気タンク内の不凝縮性ガスを排出する場合、前記加圧手段で該抽気タンク内に前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水を前記抽気タンクに導入して加圧し、該不凝縮性ガスを装置外に排出することを特徴とする真空蒸発式蒸留装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空蒸発式蒸留装置において、
前記装置内の不凝縮性ガスを収集する抽気手段が前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水で駆動されるエゼクタであることを特徴とする真空蒸発式蒸留装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空蒸発式蒸留装置において、
前記蒸発蒸留器の高温部の不凝縮性ガスは抽気管を通して直接前記抽気タンクに導かれるようになっていることを特徴とする真空蒸発式蒸留装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空蒸発式蒸留装置において、
前記抽気タンクは、前記排液手段で排出する前記蒸留水若しくは濃縮原水或いは原水の排水経路の途中に、該排水経路の一部として設けられると共に、前記不凝縮性ガスの排出は、該排水経路と同一の経路で行うことを特徴とする真空蒸発式蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−851(P2006−851A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231124(P2005−231124)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【分割の表示】特願2001−57090(P2001−57090)の分割
【原出願日】平成13年3月1日(2001.3.1)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】