真空蒸着装置及びその制御方法
【課題】真空蒸着装置において、蒸着材料の溶かし込み工程で付着した膜に起因する成膜への影響を除去する。
【解決手段】ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置された蒸着源、蒸着源に電子ビームを照射する電子銃、蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びにガス吸排気手段、電子銃、プラズマ発生手段及びシャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、(A)蒸着源に蒸着材料を充填し、基板保持手段に基板を設置する工程、(B)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、(C)プラズマ発生手段によって真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、(D)プラズマ雰囲気において電子銃を照射して蒸着材料を融解する溶かし込み工程、及び(E)シャッタを開いて成膜を開始する工程からなる制御方法である。
【解決手段】ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置された蒸着源、蒸着源に電子ビームを照射する電子銃、蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びにガス吸排気手段、電子銃、プラズマ発生手段及びシャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、(A)蒸着源に蒸着材料を充填し、基板保持手段に基板を設置する工程、(B)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、(C)プラズマ発生手段によって真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、(D)プラズマ雰囲気において電子銃を照射して蒸着材料を融解する溶かし込み工程、及び(E)シャッタを開いて成膜を開始する工程からなる制御方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空蒸着装置及びその制御方法に関し、特に、成膜開始前の蒸着材料の溶かし込みに関連する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に一般的な真空蒸着装置の構成を示す。図8において、真空蒸着装置1は、密閉容器から構成される真空槽2、図示しない真空ポンプなどの排気装置に接続され真空槽2内のガスを排気する排気口3、真空槽2内部にアルゴン(Ar)、酸素(O2)等の放電ガス、プロセスガス等、任意のガスを導入するガス導入口4、成膜対象となる基板5を保持する基板ドーム6、蒸着材料8を充填する坩堝9、坩堝9内の蒸着材料8に電子ビームを衝突させて蒸発温度まで加熱する電子銃10、並びに開閉可能に構成され蒸着開始前及び蒸着完了時に閉じ蒸着材料8を遮蔽するシャッタ11を具備する。また、必要に応じて防着板14が設けられる。なお、説明の便宜のため、排気口3及びガス導入口4並びにそれらに接続されるバルブ、ポンプ類をまとめてガス吸排気手段と称する。
【0003】
次に、動作について説明する。図9は図8に示した真空蒸着装置の動作を示すタイミングチャートである。処理動作は大きく分けて、蒸着動作開始前の成膜前段階及び蒸着動作開始後の成膜段階の2つに分けることができる。成膜前段階には、準備工程、雰囲気調整工程及び溶かし込み工程などが含まれる。
【0004】
準備工程S900において、基板ドーム6に基板5を設置し、坩堝9に形成する膜に応じた蒸着材料8を充填しておく。真空槽2内には、1バッチの成膜に必要な蒸着材料8を確保しておく必要があり、蒸着源位置に順次蒸着材料8を供給する蒸着材料供給機構が設けられることが一般的である。図示はしないが、真空蒸着装置1は、蒸着材料8を充填した複数の坩堝9と、蒸着材料供給機構とを備え、坩堝9を蒸着源位置に順次供給するものとする。なお、多層膜を積層する場合は複数種の蒸着材料を準備しておけばよく、坩堝9には、プロセスに応じた種々の蒸着材料8が充填される。
【0005】
雰囲気調整工程S901において、真空槽2内を排気口3から高真空領域まで排気する。なお、図9における工程S901の実線部は真空排気を意味し、破線部はガス導入口4からのガスの導入と排気による積極的な雰囲気の調整、及びその維持を意味する。なお、後述する雰囲気調整工程S201、S401、S701、S707においても、実線部と破線部は同内容を意味するものとする。
【0006】
溶かし込み工程S903において、シャッタ11を閉じた状態で電子銃10から電子ビームを坩堝9内の蒸着材料8へ照射し、蒸着材料8の溶かし込みを行う。溶かし込み工程S903は、成膜前段階の準備工程として、顆粒状の蒸着材料8を加熱溶融する工程である。予め溶かし込みをしておくことにより、蒸着材料が吸着する水分やガス、混入された不純物を成膜前に予め排出する効果や、成膜時における突沸を抑制する効果等も得られる。真空蒸着装置1では、図示しない蒸着材料供給機構を操作して蒸着源位置からの坩堝9の供給回収をし、複数の坩堝9内に充填した蒸着材料8の溶かし込みが全て終了した時点で溶かし込み工程S903を終了するものとする。
【0007】
そして、溶かし込み工程S903の後に成膜段階が開始される。まず、雰囲気調整工程S901において、ガス導入口4から真空槽2内にAr,O2等のガスを導入し、真空槽内を所定の成膜雰囲気に維持する。これに並行して、成膜準備工程S910において、蒸着材料8を加熱溶融する。工程S910は、溶かし込み後固体化した蒸着材料8を、成膜に必要な蒸着レートが得られるまで加熱する工程であり、シャッタ11を閉じた状態で電子銃10から電子ビームを坩堝9内の蒸着材料8へ照射する。真空槽2内が所定の成膜雰囲気に維持され、所定の蒸着レートが得られる加熱状態に到達した後、成膜工程S911でシャッタ11が開放され、蒸着材料8が真空槽2内に飛散し、成膜基板5上に堆積することで薄膜が形成される(以下、成膜段階開始後の各工程を1つにまとめて「成膜工程」という)。
【0008】
そして、特許文献1においては、成膜段階中に蒸着材料の不純物が飛散するのを防止するために、できるだけ溶かし込み工程中に不純物を放出しておく構成が開示されている。具体的には、溶かし込み工程においてイオンビームの照射出力を高くして、この工程中に不純物等をより多く蒸発させてシャッタに堆積させておくものである。
また、特許文献2では、溶かし込み工程で蒸着材料から発生した水分等が基板に付着してしまい、成膜段階において基板と蒸着材料Geとの付着強度が低下するのを防止するために、成膜前に真空槽外部で予め溶かし込みを行い、溶かし込みを完了した蒸着材料を真空槽内にセットして成膜を開始することを開示している。
【特許文献1】特開平9−228033号公報
【特許文献2】特開平6−25831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来例(図8及び図9並びに特許文献1)のような成膜前段階では、溶かし込み工程においてシャッタ11の表面や防着板14等に蒸着材料が付着してしまう。この付着物が堆積し、もろく充填密度の低い膜を形成するため、その後の成膜段階でその膜が剥れ落ち、真空槽内を汚染することが問題となっていた。また、成膜前段階においてこの付着物の膜の隙間にガスや水分が吸着されると、成膜段階中にこれが放出され、成膜の再現性に影響を及ぼすという問題もあった。
【0010】
また、特許文献2のような方法によると、溶かし込み工程に関連する不利益は確かに解消されるが、真空槽内に設けた成膜工程用の坩堝や電子銃の他に、真空槽外に溶かし込み工程用の加熱装置(坩堝や電子銃)などを別途設ける必要があり、コストアップ、スペース拡大をもたらし好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するための本発明の第1の側面は、ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びにガス吸排気手段、加熱手段、プラズマ発生手段及びシャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、(A)蒸着源に蒸着材料を充填し、基板保持手段に基板を設置する工程、(B)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、(C)プラズマ発生手段によって真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、(D)プラズマ雰囲気において加熱手段を用いて蒸着材料を融解する溶かし込み工程、及び(E)シャッタを開いて成膜を開始する工程からなる制御方法である。
【0012】
上記第1の側面において、真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段を備え、工程(C)が、(X)測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量をフィードバックするクリーニング工程を含むようにした。
ここで、測定手段が、真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及びガス吸排気手段における導入ガス流量を検出する流量モニタ手段からなり、工程(X)において、流量モニタ手段によって検出される導入ガス流量が所定値以上となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされるようにしてもよい。
また、測定手段が、ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段からなり、工程(X)において、圧力モニタ手段によって検出される圧力が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされるようにしてもよい。
【0013】
本発明第2の側面は、ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びにガス吸排気手段、加熱手段、プラズマ発生手段及びシャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、(A)蒸着源に蒸着材料を充填する工程、(B)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、(C)プラズマ発生手段によって真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、(D)プラズマ雰囲気において加熱手段を用いて蒸着材料を融解する溶かし込み工程、(F)基板保持手段に基板を設置する工程、及び(H)シャッタを開いて成膜を開始する工程からなる制御方法である。
さらに、工程(F)の前に、(E)真空槽を大気開放する工程、及び、工程(F)の後に、(G)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程を含める構成とした。
【0014】
上記第1及び第2の側面において、プラズマ発生手段が、基板ドームからなる基板保持手段及び基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御されるようにしてもよい。
また、プラズマ発生手段が、真空槽の内部に備えられたコイル及びコイルに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御されるようにしてもよい。
また、加熱手段が、蒸着材料に電子ビームを照射する電子銃からなり、工程(D)がプラズマ雰囲気において電子銃を照射して蒸着材料を融解する溶かし込み工程であってもよい。
【0015】
本発明第3の側面は、ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置され蒸着材料がセットされる蒸着源、及び蒸着材料の溶かし込みを行う溶かし込み手段からなる真空蒸着装置であって、さらに、真空槽内でプラズマを発生させるプラズマ発生手段、及びプラズマ発生手段及び溶かし込み手段の動作を制御する制御手段を備え、少なくとも溶かし込み手段が動作状態にある間は、プラズマ発生手段も動作状態にあるように、溶かし込み手段及びプラズマ生成手段が制御手段によって制御される真空蒸着装置である。
【0016】
上記第3の側面において、真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段、及び測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量をフィードバックする手段を備える構成とした。
ここで、測定手段が、真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及びガス吸排気手段における導入ガス流量を検出するガス流量モニタ手段からなり、フィードバック手段によって、ガス流量モニタによって検出される導入ガス流量が所定値以上となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされる構成とした。
また、測定手段が、ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段からなり、フィードバック手段によって、圧力モニタによって検出される圧力が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされる構成とした。
【0017】
さらに、上記第3の側面において、プラズマ発生手段が、基板ドームからなる基板保持手段及び基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される構成とした。
また、プラズマ発生手段が、真空槽が内部に備えられたコイル及びコイルに高周波電圧を印加する高周波電源及び/又は導入ガス流量からなり、プラズマ発生量が高周波電源によって制御される構成とした。
【発明の効果】
【0018】
成膜前段階における溶かし込み工程及び成膜段階の成膜準備工程においてプラズマを発生させる構成としたので、シャッタ及び防着板に付着する堆積物が緻密かつ密着強度の高い膜となり、膜が剥れ落ちにくくなる。これにより、真空槽内の汚染が防止され、蒸着動作中における成膜性能(再現性等)の劣化を防止できるとともに、清掃周期を長くすることができる。
【0019】
また、シャッタ及び防着板に付着する堆積物が緻密かつ密着強度の高い膜となるので、膜内の隙間に水分が吸着されにくく、成膜時における堆積物からの水分放出を著しく軽減する。これにより、水分放出による成膜への影響を低減し、再現性を向上させる。なお、ガスについても同様に、緻密な膜が吸着を阻害し成膜時におけるガス放出を軽減して成膜への影響を低減する。また、放出ガスが少なくなるので排気時間の短縮にも貢献する。
【0020】
さらに、溶かし込み工程中にプラズマ発生によるクリーニング効果が得られるので、この工程中にもシャッタ及び防着板の付着・堆積物にイオンを衝突させて、水分やガスを放出させることができる。これにより、より不純物の少ない環境で成膜工程に移行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施形態1.
図1は本発明による第1の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。接地された密閉容器から構成される真空槽2、真空ポンプなどの排気装置に接続され真空槽2内のガスを排気する排気口3、真空槽2内部にアルゴン(Ar)、酸素(O2)等の放電ガス、プロセスガス等、任意のガスを導入するガス導入口4及びそのバルブ4a、成膜対象となる基板5を保持する基板ドーム6、蒸着材料8を充填する坩堝9、坩堝9内の蒸着材料8に電子ビームを衝突させて蒸発温度まで加熱する電子銃10、並びに開閉可能に構成され蒸着開始前及び蒸着完了時に閉じ蒸着材料8を遮蔽するシャッタ11を具備する。
【0022】
本実施形態では、さらに、高周波電源13及び制御手段15を備える。基板ドーム6の給電部7と真空槽2との間に接続された高周波電源13によって、導体から構成された真空槽2と高周波電極として機能する基板ドーム6との間に高周波電圧が印加される。そして、後述するプラズマ発生時の放電の着火と基板のチャージアップを防止するために電子を放出するニュートラライザ12を備える。制御手段15は、ガス吸排気手段、電子銃10、シャッタ11、ニュートラライザ12及び高周波電源13の動作タイミング等を制御する。
【0023】
なお、本実施形態では、基板ドーム6には成膜対象としてガラス基板5が載置される。本実施形態は耐熱温度の高い基板に有効であるため、ガラス基板を用いるものとするが、基板はこれに限られるものではない。なお、基板5を、基板ドーム6近傍に保持する構成でもよい。
【0024】
図2(a)は本発明の動作を示す図である。準備工程S200及び雰囲気調整工程S201までは従来例の図9におけるS900及びS901と同様である。
ここで、工程S202はプラズマ生成工程である。工程S202において、高周波電源13を起動して、給電部7を介して基板ドーム6に高周波電圧を印加すると共にニュートラライザ12から電子を放出し、プラズマを着火する。基板ドーム6と真空槽2との間に印加された高周波電圧は、ガス導入口4から導入したガスをイオン化し、真空槽2内にプラズマを発生させる。
【0025】
工程S203は溶かし込み工程である。プラズマ生成工程S202の開始と同時に溶かし込み工程S203が開始され、電子銃10から電子ビームを坩堝8内の蒸着材料8へ照射し、蒸着材料8の溶かし込みをプラズマ雰囲気中で行う。プラズマの生成量は高周波電源13とガス導入口4からの導入ガス流量の双方または一方を用いて制御する。実施例では、従来例同様、真空槽2内に蒸着材料8を充填する坩堝9を複数準備し、工程S203において真空槽2内に準備した全ての蒸着材料8の溶かし込みを行った。
【0026】
なお、本実施形態では高周波電源13の起動と溶かし込みとを同時に開始したが、図2(b)のように、溶かし込みの開始前に高周波電源13を起動させてもよい。
即ち、蒸着材料8の溶かし込みの際に真空槽2内にプラズマが生成されていればよく、溶かし込みの際に飛散した蒸着物質を、イオンによりアシストし、シャッタ11や防着板14等に緻密な膜として付着・堆積させればよい。これにより、シャッタ11や防着板14等に付着・堆積した膜が剥れて槽内を汚染する程度が下がり、膜が水分を吸着して放出する程度も少ない。また、プラズマ中のイオンが既に堆積した膜に衝突し、成膜工程前に槽内がクリーニングされるという効果も奏する。
【0027】
溶かし込みが終了した時点で成膜段階に移行し、成膜準備工程S210後、成膜工程S211を開始する。成膜準備工程S210は従来例の図9におけるS910と同様であるが、成膜準備工程S210の開始と同時にプラズマ生成工程S202を開始し、蒸着材料8の加熱溶融をプラズマ雰囲気中で行う。これにより、プラズマ雰囲気下における溶かし込み工程同様、シャッタ及び防着板に付着する堆積物を緻密かつ密着強度の高い膜とすることができる。工程S211において、シャッタ11を開くと蒸着材料8が真空槽2内に飛散し、イオンにアシストされて、成膜基板5上に堆積することで緻密な薄膜を形成する。なお、図2においては、成膜工程S211においてプラズマを生成しているが、ガス雰囲気の調整及びプラズマ生成は成膜仕様に応じて適宜必要な工程を適用すればよい。もちろん、プラズマを生成せず通常成膜することも考えられる。
【0028】
本実施形態では、蒸着材料の溶かし込み工程S203及び成膜準備工程S210における蒸着材料8の加熱溶融をプラズマ雰囲気下で行うことにより、真空槽内の放出ガス量を低減し、排気速度の短縮に貢献する。また、成膜前段階の雰囲気調整工程S201とプラズマ生成工程S202とが並行して行われるため、即ち真空排気中に真空槽内にプラズマが生成されるため、プラズマが排気性能を高めるという効果も奏する。本実施形態による排気時間の短縮により、目標真空度までの到達時間を縮め短時間で成膜段階に移行することができるため生産性の向上に貢献する。
【0029】
実施形態2.
本実施形態では、第1の実施形態にプラズマ発生による真空槽内のクリーニング(以下、「RFクリーニング」という)の工程を追加した。本実施形態に係る真空蒸着装置を図3に、その動作を図4に示す。
図3の装置では、蒸着材料8からの放出ガスの量を測定する測定手段16、及び測定手段によって測定された放出ガスの量に対してプラズマ発生量をフィードバックするためのフィードバック手段18が付加されている。なお、放出ガスとは、主に、真空槽の内壁、シャッタ11、防着板14等に付着した膜に起因するガスであって、この膜に吸着されたガス(主に水分子)がその後吸着状態を脱して浮遊しているガス(水分子を含む)を意味するものとする。
【0030】
測定手段16は、具体的には、真空槽2内の圧力を一定に保つAPC(自動圧力コントローラ)16a、及びガス導入口4から導入される導入ガス流量を検出する導入ガス流量モニタ手段16bが付加され、導入ガス流量モニタ手段16bがフィードバック手段18に接続されている。APCは真空槽2内の圧力検出手段を備え、検出した圧力が一定になるように導入ガス流量を制御するコントローラである。なお、フィードバック手段18は説明の便宜上、制御手段15内に含めているが、制御手段15外に独立したブロックとして設けてもよい。また、図3においては、高周波電源の制御線はフィードバック手段18のみに接続されているが、実際には必要に応じて他の構成要素にも接続されるものとする。
【0031】
図4を参照すると、基板5及び蒸着材料8をセットする工程(S400)、真空槽2内の雰囲気を調整し所定のガス雰囲気に設定し維持する工程(S401)、高周波電源13を起動して真空槽2内にプラズマを生成する工程(S402)、蒸着材料8の溶かし込み工程(S403)は第1の実施形態の工程S200〜S203と同様である。第2の実施形態では、図の太い矢印で示した工程S404において、RFクリーニング工程としてこの状態を維持し、真空槽2内に付着した堆積物にプラズマ中のイオンを照射させ、イオンの衝撃および衝撃による昇温により防着板表面や堆積物からガスや水分を放出させる。
【0032】
RFクリーニング工程(S404)において、フィードバック手段18は導入ガス流量モニタ手段16bで検出される導入ガス流量に対して高周波電源13の電力量をフィードバック制御する。例えば、真空槽の内圧が一定であるという条件の下、フィードバック手段18は検出される導入ガス流量が少ないときは放出ガスが多いと判断して高周波電源13の電力量を増大させ、より多くのプラズマを発生させる。即ち、放出ガスの量が所定値以下になるように制御することによりクリーニング効果を高くする。
【0033】
また、図3の装置において、APC16a及びガス流量モニタ手段16bからなる測定手段16の代わりに、ガス導入口4から導入されるガス流量を一定に保つMFC(マスフローコントローラ)17a及び真空槽2内の圧力を検出する圧力モニタ手段17bからなる測定手段17に置き換え、圧力モニタ手段17bをフィードバック手段18に接続してもよい。
【0034】
この場合、RFクリーニング工程(S404)において、フィードバック手段18は圧力モニタ手段17bで検出される圧力に対して高周波電源13の電力量をフィードバック制御する。例えば、導入ガス流量が一定であるという条件の下、フィードバック手段18は検出される圧力が高いときは放出ガスが多いと判断して高周波電源13の電力量を増大させ、より多くのプラズマを発生させる。即ち、放出ガスの量が所定値以下になるように制御することによりクリーニング効果を高くする。
【0035】
なお、高周波電源13の電力量の増大方法は、クリーニング時間の増長及び/又は高周波電力の増大を行えばよい。また、フィードバック手段18は、誤差増幅器を用いた電気回路で構成してもよいし、コンピュータのソフトウェアで構成するものであってもよい。
【0036】
また、溶かし込みと同時に起動させた高周波電源13を、図5(a)に示すように、溶かし込み完了後も起動状態としてRFクリーニングを行うこと、図5(b)に示すように、RFクリーニング開始後これに並行して溶かし込みを始めること、図5(c)に示すように、RFクリーニングの終了間際に溶かし込みを行うこと等適宜選択して行えばよい。また、RFクリーニング工程S404におけるフィードバック手段18についても、例えばクリーニング工程S404の後半にのみフィードバック制御を行う等適宜選択して行えばよい。工程S404には、フィードバック制御しないクリーニングも含まれるものとする。ただし、工程S404におけるフィードバック制御の効果は非常に大きく、図5(d)に示すように溶かし込みに関わらずRFクリーニングのみを行ってもよい。放出ガス流量を検出しながらRFクリーニングを行うことで、最適な電力量を選択できるため、必要以上にクリーニングしてタクトタイムを長引かせることがない。また、十分なクリーニングがなされてない状態であるにも関わらずクリーニングを終了させて成膜に悪影響を及ぼすといったこともなくなる。なお、成膜工程S410及びS411は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0037】
本実施形態では、成膜前段階の雰囲気調整工程S401と溶かし込み工程S403とRFクリーニング工程S404とが同時に並行して行われるため、実施形態1よりも更に排気時間を短縮することができる。通常成膜前にRFクリーニングが行われる場合、溶かし込みとRFクリーニングは別工程として実施されるため、溶かし込みが終了してからRFクリーニングし真空槽2内が目標真空度に到達してから成膜段階に移行する、とうい工程を踏むが、本実施形態は排気中のプラズマ生成による効果と、各工程の並行処理による効果とを併せて、更なる排気時間の短縮を可能とし、生産性の向上に貢献する。
【0038】
実施形態3.
第1の実施形態においては、溶かし込み工程用のプラズマ発生手段と成膜工程用のプラズマ発生手段とを兼ねる構成として、基板ドーム6に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる構成を示したが、本実施形態では、成膜中にプラズマ発生が不要な場合を想定して、溶かし込み工程用に特化したプラズマ発生手段を設けたものを示す。
【0039】
図6は第3の実施形態を示す図である。図1と同様の符号を付したものは第1の実施形態のものと同様であるので説明を省略する。第1の実施形態との違いは、プラズマ発生手段として、シャッタ11と基板ドーム6との間に高周波コイル19を配置し、高周波電源13に接続した点にある。また、図3と同様にフィードバック系(測定手段16又は17及びフィードバック手段18)を付加してもよい。
【0040】
本実施形態は、基板ドーム2に高周波電圧を印加しないので基板5に耐熱温度の低い基板を用いる場合に有利である。もちろん、耐熱温度の高い基板を用いる場合にも適用できる。
【0041】
また、本実施形態によると、成膜工程用におけるプラズマ発生を考慮する必要がないので、プラズマ生成手段を、溶かし込み工程で飛散する蒸着物質をイオンによりアシストするのに最適な構成とすることができる。即ち、基板ドーム2の本来の目的は基板を保持することであり、ドーム上に配置された複数の基板と蒸着源との距離が変化しないようにしなければならない。従って、基板ドームにかかる重力、熱、(さらにドームを回転させる場合は)遠心力によって基板ドームが大きく変形しないように材質、形状、サイズ等を設計する必要がある。しかし、その結果として作製された基板ドームがプラズマ発生に最適な設計となっているとは限らない。一方、高周波コイル19を用いた構成では、その材質、位置、形状等プラズマ発生用に最適な設計を行うことができる。これにより、高周波電力の省電力化を図ることができ、また、実施形態2のようにフィードバック制御する場合にはフィードバック制御の応答性(応答速度など)を改善することができる。
【0042】
実施形態4.
第4の実施形態では第3の実施形態で使用する基板よりも更に耐熱温度の低い基板を対象とする場合、即ち、蒸着源に設けたRFコイルによる放電であっても影響を受けるような基板を用いる場合に有効なものを示す。
【0043】
本実施形態に用いる装置は図6のものと同じであるが、その動作において溶かし込み時には基板5をセットしておかないことを特徴とする。図7はその動作を説明するタイミングチャートである。
準備工程S700において、基板5は真空槽2の外部に待機させておき、坩堝9に形成する膜に応じた蒸着材料8を充填しておく。そして、雰囲気調整工程S701において真空槽2内を所定のガス雰囲気に設定・維持し、プラズマ発生工程S702において、高周波電源13を起動して、高周波コイル19に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる。プラズマ発生工程S702の開始と同時に溶かし込み工程S703を開始する。溶かし込み工程S703において、電子銃10から電子ビームを坩堝9内の蒸着材料8へ照射し、蒸着材料8の溶かし込みをプラズマ雰囲気中で行う。
【0044】
その後、工程S705において真空槽2内を大気開放し、工程S706において基板ドーム6に基板5をセットし、雰囲気調整工程S707において、再度真空槽2内を所定のガス雰囲気に設定・維持し、成膜工程S710、成膜工程S711へ移行する。なお、当然に、本実施形態においても成膜工程においてプラズマを発生させる必要はない。
【0045】
あるいは、工程S705において槽内温度を一度低下させてから、工程S706において、真空槽に連結されるとともに排気手段を備える仕込室及び基板搬送ロボット等(図示せず)を用いて基板をセットすることも有効である。この場合、大気開放する必要がないので、処理時間の短縮、導入ガスの節約等に貢献することができる。槽内温度を低下させる方法は、導入ガスの通流、単なる待機(自然に温度が下がるのを待つこと)、又は別途の冷却装置による冷却であってもよい。
【0046】
本発明の作用・効果を図10及び図11を用いて説明する。
図10は、APC(自動圧力コントローラ)を用いて真空槽内の圧力を一定にした場合の、成膜工程中の導入ガス流量の変化を示す図である。横軸は時間であり、原点を成膜工程の開始時、即ち、シャッタ11を開いた瞬間とする。図中の線Nは溶かし込み工程においてプラズマを発生させなかった場合であり、線RFは本発明のように溶かし込み工程においてプラズマを発生させた場合である。図示するように、線Nにおいては、成膜工程開始後に放出ガスが発生し、この放出ガスによる槽内の圧力上昇を抑えるため導入ガスの流入量が徐々に減少していくことを示している。これは、真空槽の壁面に堆積したボソボソなもろい膜が水分を吸着し、成膜時に蒸着源の輻射熱や蒸発物質の熱によってじわじわと放出されてくるためである。この放出ガスが膜内に混入して膜質の再現性劣化を誘発する。一方、線RFにおいては、成膜工程開始後に放出ガスがほとんど発生しないので導入ガスの流入量が多く安定していることを示している。プラズマ雰囲気中で溶かし込み工程を行うことにより、水分を吸着しにくい環境をつくり、また吸着した水分を効率よく放出させたため、変動がほとんど見られず、酸素分圧が安定した雰囲気を作り出せていることがわかる。また、これにより排気時間が短くなり、作業時間の短縮に貢献する。
【0047】
図11(a)及び(b)は成膜終了後の素子(基板)について、1バッチ目に作成した素子の分光特性と、15バッチ目に作成した素子の分光特性とを比較するものである。図11(a)は溶かし込み工程においてプラズマを発生させなかった場合の分光特性であり、(b)は本発明のように溶かし込み工程においてプラズマを発生させた場合のものである。双方とも横軸は波長であり、縦軸は透過率である。バッチ数を重ねることで槽内が汚れてくると、分光特性は長波長側にシフトする。図11(a)では、15バッチ後に分光特性が大きく崩れているが、図11(b)では、本発明の効果により成膜工程において放出ガスがほとんどないという状態を常に得られるので、その結果成膜された素子の分光特性のばらつきが小さく、再現性が良いことが分かる。
【0048】
上記の実施形態1〜4では基板ドーム回転機構、基板加熱機構等を省略したが、これらの機構は必要に応じて追加すればよい。また、成膜段階での各工程は適切なものであればいずれの成膜方法を適用してもよい。また、蒸着材料を蒸発させるために電子銃を用いたが、抵抗加熱による蒸発を用いてもよい。また、溶かし込み工程中に真空槽を一度大気開放して蒸着材料を補充し、再度真空排気してから溶かし込み工程を再開させてもよい。
上記の実施形態3〜4では成膜準備工程におけるプラズマ生成を省力したが、本発明による効果とプラズマによる基板昇温への影響等を加味し、適宜選択すればよい。また、熱伝導率の低い材料等、溶かし込み工程のできない蒸着材料であっても、成膜直前の材料加熱時、即ち本発明における成膜準備工程において、プラズマを生成することにより本発明の効果を得ることができる。
上記の実施形態ではプラズマ生成手段としてRF放電を用いたが、イオンガン等を用いてもよい。この場合、溶かし込みと同時に、真空槽の壁面やシャッタ、防着板等に直接イオンビームを照射すればよい。また、クリーニング工程S404についても、RF放電に限らずイオンガン等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の動作を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の動作を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態の動作を説明する図である。
【図8】従来技術の真空蒸着装置を示す図である。
【図9】従来技術の動作を説明する図である。
【図10】成膜工程中の導入ガス流量を示す図である。
【図11】成膜処理の再現性を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1.真空蒸着装置
2.真空槽
3.排気口
4.ガス導入口
5.基板
6.基板ドーム
7.給電部
8.蒸着材料
9.坩堝
10.電子銃
11.シャッタ
12.ニュートラライザ
13.高周波電源
14.防着板
15.制御手段
16a.APC(自動圧力コントローラ)
16b.ガス流量モニタ手段
17a.MFC(マスフローコントローラ)
17b.圧力モニタ手段
18.フィードバック手段
19.高周波コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は真空蒸着装置及びその制御方法に関し、特に、成膜開始前の蒸着材料の溶かし込みに関連する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に一般的な真空蒸着装置の構成を示す。図8において、真空蒸着装置1は、密閉容器から構成される真空槽2、図示しない真空ポンプなどの排気装置に接続され真空槽2内のガスを排気する排気口3、真空槽2内部にアルゴン(Ar)、酸素(O2)等の放電ガス、プロセスガス等、任意のガスを導入するガス導入口4、成膜対象となる基板5を保持する基板ドーム6、蒸着材料8を充填する坩堝9、坩堝9内の蒸着材料8に電子ビームを衝突させて蒸発温度まで加熱する電子銃10、並びに開閉可能に構成され蒸着開始前及び蒸着完了時に閉じ蒸着材料8を遮蔽するシャッタ11を具備する。また、必要に応じて防着板14が設けられる。なお、説明の便宜のため、排気口3及びガス導入口4並びにそれらに接続されるバルブ、ポンプ類をまとめてガス吸排気手段と称する。
【0003】
次に、動作について説明する。図9は図8に示した真空蒸着装置の動作を示すタイミングチャートである。処理動作は大きく分けて、蒸着動作開始前の成膜前段階及び蒸着動作開始後の成膜段階の2つに分けることができる。成膜前段階には、準備工程、雰囲気調整工程及び溶かし込み工程などが含まれる。
【0004】
準備工程S900において、基板ドーム6に基板5を設置し、坩堝9に形成する膜に応じた蒸着材料8を充填しておく。真空槽2内には、1バッチの成膜に必要な蒸着材料8を確保しておく必要があり、蒸着源位置に順次蒸着材料8を供給する蒸着材料供給機構が設けられることが一般的である。図示はしないが、真空蒸着装置1は、蒸着材料8を充填した複数の坩堝9と、蒸着材料供給機構とを備え、坩堝9を蒸着源位置に順次供給するものとする。なお、多層膜を積層する場合は複数種の蒸着材料を準備しておけばよく、坩堝9には、プロセスに応じた種々の蒸着材料8が充填される。
【0005】
雰囲気調整工程S901において、真空槽2内を排気口3から高真空領域まで排気する。なお、図9における工程S901の実線部は真空排気を意味し、破線部はガス導入口4からのガスの導入と排気による積極的な雰囲気の調整、及びその維持を意味する。なお、後述する雰囲気調整工程S201、S401、S701、S707においても、実線部と破線部は同内容を意味するものとする。
【0006】
溶かし込み工程S903において、シャッタ11を閉じた状態で電子銃10から電子ビームを坩堝9内の蒸着材料8へ照射し、蒸着材料8の溶かし込みを行う。溶かし込み工程S903は、成膜前段階の準備工程として、顆粒状の蒸着材料8を加熱溶融する工程である。予め溶かし込みをしておくことにより、蒸着材料が吸着する水分やガス、混入された不純物を成膜前に予め排出する効果や、成膜時における突沸を抑制する効果等も得られる。真空蒸着装置1では、図示しない蒸着材料供給機構を操作して蒸着源位置からの坩堝9の供給回収をし、複数の坩堝9内に充填した蒸着材料8の溶かし込みが全て終了した時点で溶かし込み工程S903を終了するものとする。
【0007】
そして、溶かし込み工程S903の後に成膜段階が開始される。まず、雰囲気調整工程S901において、ガス導入口4から真空槽2内にAr,O2等のガスを導入し、真空槽内を所定の成膜雰囲気に維持する。これに並行して、成膜準備工程S910において、蒸着材料8を加熱溶融する。工程S910は、溶かし込み後固体化した蒸着材料8を、成膜に必要な蒸着レートが得られるまで加熱する工程であり、シャッタ11を閉じた状態で電子銃10から電子ビームを坩堝9内の蒸着材料8へ照射する。真空槽2内が所定の成膜雰囲気に維持され、所定の蒸着レートが得られる加熱状態に到達した後、成膜工程S911でシャッタ11が開放され、蒸着材料8が真空槽2内に飛散し、成膜基板5上に堆積することで薄膜が形成される(以下、成膜段階開始後の各工程を1つにまとめて「成膜工程」という)。
【0008】
そして、特許文献1においては、成膜段階中に蒸着材料の不純物が飛散するのを防止するために、できるだけ溶かし込み工程中に不純物を放出しておく構成が開示されている。具体的には、溶かし込み工程においてイオンビームの照射出力を高くして、この工程中に不純物等をより多く蒸発させてシャッタに堆積させておくものである。
また、特許文献2では、溶かし込み工程で蒸着材料から発生した水分等が基板に付着してしまい、成膜段階において基板と蒸着材料Geとの付着強度が低下するのを防止するために、成膜前に真空槽外部で予め溶かし込みを行い、溶かし込みを完了した蒸着材料を真空槽内にセットして成膜を開始することを開示している。
【特許文献1】特開平9−228033号公報
【特許文献2】特開平6−25831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来例(図8及び図9並びに特許文献1)のような成膜前段階では、溶かし込み工程においてシャッタ11の表面や防着板14等に蒸着材料が付着してしまう。この付着物が堆積し、もろく充填密度の低い膜を形成するため、その後の成膜段階でその膜が剥れ落ち、真空槽内を汚染することが問題となっていた。また、成膜前段階においてこの付着物の膜の隙間にガスや水分が吸着されると、成膜段階中にこれが放出され、成膜の再現性に影響を及ぼすという問題もあった。
【0010】
また、特許文献2のような方法によると、溶かし込み工程に関連する不利益は確かに解消されるが、真空槽内に設けた成膜工程用の坩堝や電子銃の他に、真空槽外に溶かし込み工程用の加熱装置(坩堝や電子銃)などを別途設ける必要があり、コストアップ、スペース拡大をもたらし好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するための本発明の第1の側面は、ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びにガス吸排気手段、加熱手段、プラズマ発生手段及びシャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、(A)蒸着源に蒸着材料を充填し、基板保持手段に基板を設置する工程、(B)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、(C)プラズマ発生手段によって真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、(D)プラズマ雰囲気において加熱手段を用いて蒸着材料を融解する溶かし込み工程、及び(E)シャッタを開いて成膜を開始する工程からなる制御方法である。
【0012】
上記第1の側面において、真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段を備え、工程(C)が、(X)測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量をフィードバックするクリーニング工程を含むようにした。
ここで、測定手段が、真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及びガス吸排気手段における導入ガス流量を検出する流量モニタ手段からなり、工程(X)において、流量モニタ手段によって検出される導入ガス流量が所定値以上となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされるようにしてもよい。
また、測定手段が、ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段からなり、工程(X)において、圧力モニタ手段によって検出される圧力が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされるようにしてもよい。
【0013】
本発明第2の側面は、ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びにガス吸排気手段、加熱手段、プラズマ発生手段及びシャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、(A)蒸着源に蒸着材料を充填する工程、(B)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、(C)プラズマ発生手段によって真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、(D)プラズマ雰囲気において加熱手段を用いて蒸着材料を融解する溶かし込み工程、(F)基板保持手段に基板を設置する工程、及び(H)シャッタを開いて成膜を開始する工程からなる制御方法である。
さらに、工程(F)の前に、(E)真空槽を大気開放する工程、及び、工程(F)の後に、(G)ガス吸排気手段によって真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程を含める構成とした。
【0014】
上記第1及び第2の側面において、プラズマ発生手段が、基板ドームからなる基板保持手段及び基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御されるようにしてもよい。
また、プラズマ発生手段が、真空槽の内部に備えられたコイル及びコイルに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御されるようにしてもよい。
また、加熱手段が、蒸着材料に電子ビームを照射する電子銃からなり、工程(D)がプラズマ雰囲気において電子銃を照射して蒸着材料を融解する溶かし込み工程であってもよい。
【0015】
本発明第3の側面は、ガス吸排気手段を有する真空槽、真空槽内部に配置された基板保持手段、基板保持手段に対向配置され蒸着材料がセットされる蒸着源、及び蒸着材料の溶かし込みを行う溶かし込み手段からなる真空蒸着装置であって、さらに、真空槽内でプラズマを発生させるプラズマ発生手段、及びプラズマ発生手段及び溶かし込み手段の動作を制御する制御手段を備え、少なくとも溶かし込み手段が動作状態にある間は、プラズマ発生手段も動作状態にあるように、溶かし込み手段及びプラズマ生成手段が制御手段によって制御される真空蒸着装置である。
【0016】
上記第3の側面において、真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段、及び測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量をフィードバックする手段を備える構成とした。
ここで、測定手段が、真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及びガス吸排気手段における導入ガス流量を検出するガス流量モニタ手段からなり、フィードバック手段によって、ガス流量モニタによって検出される導入ガス流量が所定値以上となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされる構成とした。
また、測定手段が、ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段からなり、フィードバック手段によって、圧力モニタによって検出される圧力が所定値以下となるようにプラズマ発生電力量がフィードバックされる構成とした。
【0017】
さらに、上記第3の側面において、プラズマ発生手段が、基板ドームからなる基板保持手段及び基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される構成とした。
また、プラズマ発生手段が、真空槽が内部に備えられたコイル及びコイルに高周波電圧を印加する高周波電源及び/又は導入ガス流量からなり、プラズマ発生量が高周波電源によって制御される構成とした。
【発明の効果】
【0018】
成膜前段階における溶かし込み工程及び成膜段階の成膜準備工程においてプラズマを発生させる構成としたので、シャッタ及び防着板に付着する堆積物が緻密かつ密着強度の高い膜となり、膜が剥れ落ちにくくなる。これにより、真空槽内の汚染が防止され、蒸着動作中における成膜性能(再現性等)の劣化を防止できるとともに、清掃周期を長くすることができる。
【0019】
また、シャッタ及び防着板に付着する堆積物が緻密かつ密着強度の高い膜となるので、膜内の隙間に水分が吸着されにくく、成膜時における堆積物からの水分放出を著しく軽減する。これにより、水分放出による成膜への影響を低減し、再現性を向上させる。なお、ガスについても同様に、緻密な膜が吸着を阻害し成膜時におけるガス放出を軽減して成膜への影響を低減する。また、放出ガスが少なくなるので排気時間の短縮にも貢献する。
【0020】
さらに、溶かし込み工程中にプラズマ発生によるクリーニング効果が得られるので、この工程中にもシャッタ及び防着板の付着・堆積物にイオンを衝突させて、水分やガスを放出させることができる。これにより、より不純物の少ない環境で成膜工程に移行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施形態1.
図1は本発明による第1の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。接地された密閉容器から構成される真空槽2、真空ポンプなどの排気装置に接続され真空槽2内のガスを排気する排気口3、真空槽2内部にアルゴン(Ar)、酸素(O2)等の放電ガス、プロセスガス等、任意のガスを導入するガス導入口4及びそのバルブ4a、成膜対象となる基板5を保持する基板ドーム6、蒸着材料8を充填する坩堝9、坩堝9内の蒸着材料8に電子ビームを衝突させて蒸発温度まで加熱する電子銃10、並びに開閉可能に構成され蒸着開始前及び蒸着完了時に閉じ蒸着材料8を遮蔽するシャッタ11を具備する。
【0022】
本実施形態では、さらに、高周波電源13及び制御手段15を備える。基板ドーム6の給電部7と真空槽2との間に接続された高周波電源13によって、導体から構成された真空槽2と高周波電極として機能する基板ドーム6との間に高周波電圧が印加される。そして、後述するプラズマ発生時の放電の着火と基板のチャージアップを防止するために電子を放出するニュートラライザ12を備える。制御手段15は、ガス吸排気手段、電子銃10、シャッタ11、ニュートラライザ12及び高周波電源13の動作タイミング等を制御する。
【0023】
なお、本実施形態では、基板ドーム6には成膜対象としてガラス基板5が載置される。本実施形態は耐熱温度の高い基板に有効であるため、ガラス基板を用いるものとするが、基板はこれに限られるものではない。なお、基板5を、基板ドーム6近傍に保持する構成でもよい。
【0024】
図2(a)は本発明の動作を示す図である。準備工程S200及び雰囲気調整工程S201までは従来例の図9におけるS900及びS901と同様である。
ここで、工程S202はプラズマ生成工程である。工程S202において、高周波電源13を起動して、給電部7を介して基板ドーム6に高周波電圧を印加すると共にニュートラライザ12から電子を放出し、プラズマを着火する。基板ドーム6と真空槽2との間に印加された高周波電圧は、ガス導入口4から導入したガスをイオン化し、真空槽2内にプラズマを発生させる。
【0025】
工程S203は溶かし込み工程である。プラズマ生成工程S202の開始と同時に溶かし込み工程S203が開始され、電子銃10から電子ビームを坩堝8内の蒸着材料8へ照射し、蒸着材料8の溶かし込みをプラズマ雰囲気中で行う。プラズマの生成量は高周波電源13とガス導入口4からの導入ガス流量の双方または一方を用いて制御する。実施例では、従来例同様、真空槽2内に蒸着材料8を充填する坩堝9を複数準備し、工程S203において真空槽2内に準備した全ての蒸着材料8の溶かし込みを行った。
【0026】
なお、本実施形態では高周波電源13の起動と溶かし込みとを同時に開始したが、図2(b)のように、溶かし込みの開始前に高周波電源13を起動させてもよい。
即ち、蒸着材料8の溶かし込みの際に真空槽2内にプラズマが生成されていればよく、溶かし込みの際に飛散した蒸着物質を、イオンによりアシストし、シャッタ11や防着板14等に緻密な膜として付着・堆積させればよい。これにより、シャッタ11や防着板14等に付着・堆積した膜が剥れて槽内を汚染する程度が下がり、膜が水分を吸着して放出する程度も少ない。また、プラズマ中のイオンが既に堆積した膜に衝突し、成膜工程前に槽内がクリーニングされるという効果も奏する。
【0027】
溶かし込みが終了した時点で成膜段階に移行し、成膜準備工程S210後、成膜工程S211を開始する。成膜準備工程S210は従来例の図9におけるS910と同様であるが、成膜準備工程S210の開始と同時にプラズマ生成工程S202を開始し、蒸着材料8の加熱溶融をプラズマ雰囲気中で行う。これにより、プラズマ雰囲気下における溶かし込み工程同様、シャッタ及び防着板に付着する堆積物を緻密かつ密着強度の高い膜とすることができる。工程S211において、シャッタ11を開くと蒸着材料8が真空槽2内に飛散し、イオンにアシストされて、成膜基板5上に堆積することで緻密な薄膜を形成する。なお、図2においては、成膜工程S211においてプラズマを生成しているが、ガス雰囲気の調整及びプラズマ生成は成膜仕様に応じて適宜必要な工程を適用すればよい。もちろん、プラズマを生成せず通常成膜することも考えられる。
【0028】
本実施形態では、蒸着材料の溶かし込み工程S203及び成膜準備工程S210における蒸着材料8の加熱溶融をプラズマ雰囲気下で行うことにより、真空槽内の放出ガス量を低減し、排気速度の短縮に貢献する。また、成膜前段階の雰囲気調整工程S201とプラズマ生成工程S202とが並行して行われるため、即ち真空排気中に真空槽内にプラズマが生成されるため、プラズマが排気性能を高めるという効果も奏する。本実施形態による排気時間の短縮により、目標真空度までの到達時間を縮め短時間で成膜段階に移行することができるため生産性の向上に貢献する。
【0029】
実施形態2.
本実施形態では、第1の実施形態にプラズマ発生による真空槽内のクリーニング(以下、「RFクリーニング」という)の工程を追加した。本実施形態に係る真空蒸着装置を図3に、その動作を図4に示す。
図3の装置では、蒸着材料8からの放出ガスの量を測定する測定手段16、及び測定手段によって測定された放出ガスの量に対してプラズマ発生量をフィードバックするためのフィードバック手段18が付加されている。なお、放出ガスとは、主に、真空槽の内壁、シャッタ11、防着板14等に付着した膜に起因するガスであって、この膜に吸着されたガス(主に水分子)がその後吸着状態を脱して浮遊しているガス(水分子を含む)を意味するものとする。
【0030】
測定手段16は、具体的には、真空槽2内の圧力を一定に保つAPC(自動圧力コントローラ)16a、及びガス導入口4から導入される導入ガス流量を検出する導入ガス流量モニタ手段16bが付加され、導入ガス流量モニタ手段16bがフィードバック手段18に接続されている。APCは真空槽2内の圧力検出手段を備え、検出した圧力が一定になるように導入ガス流量を制御するコントローラである。なお、フィードバック手段18は説明の便宜上、制御手段15内に含めているが、制御手段15外に独立したブロックとして設けてもよい。また、図3においては、高周波電源の制御線はフィードバック手段18のみに接続されているが、実際には必要に応じて他の構成要素にも接続されるものとする。
【0031】
図4を参照すると、基板5及び蒸着材料8をセットする工程(S400)、真空槽2内の雰囲気を調整し所定のガス雰囲気に設定し維持する工程(S401)、高周波電源13を起動して真空槽2内にプラズマを生成する工程(S402)、蒸着材料8の溶かし込み工程(S403)は第1の実施形態の工程S200〜S203と同様である。第2の実施形態では、図の太い矢印で示した工程S404において、RFクリーニング工程としてこの状態を維持し、真空槽2内に付着した堆積物にプラズマ中のイオンを照射させ、イオンの衝撃および衝撃による昇温により防着板表面や堆積物からガスや水分を放出させる。
【0032】
RFクリーニング工程(S404)において、フィードバック手段18は導入ガス流量モニタ手段16bで検出される導入ガス流量に対して高周波電源13の電力量をフィードバック制御する。例えば、真空槽の内圧が一定であるという条件の下、フィードバック手段18は検出される導入ガス流量が少ないときは放出ガスが多いと判断して高周波電源13の電力量を増大させ、より多くのプラズマを発生させる。即ち、放出ガスの量が所定値以下になるように制御することによりクリーニング効果を高くする。
【0033】
また、図3の装置において、APC16a及びガス流量モニタ手段16bからなる測定手段16の代わりに、ガス導入口4から導入されるガス流量を一定に保つMFC(マスフローコントローラ)17a及び真空槽2内の圧力を検出する圧力モニタ手段17bからなる測定手段17に置き換え、圧力モニタ手段17bをフィードバック手段18に接続してもよい。
【0034】
この場合、RFクリーニング工程(S404)において、フィードバック手段18は圧力モニタ手段17bで検出される圧力に対して高周波電源13の電力量をフィードバック制御する。例えば、導入ガス流量が一定であるという条件の下、フィードバック手段18は検出される圧力が高いときは放出ガスが多いと判断して高周波電源13の電力量を増大させ、より多くのプラズマを発生させる。即ち、放出ガスの量が所定値以下になるように制御することによりクリーニング効果を高くする。
【0035】
なお、高周波電源13の電力量の増大方法は、クリーニング時間の増長及び/又は高周波電力の増大を行えばよい。また、フィードバック手段18は、誤差増幅器を用いた電気回路で構成してもよいし、コンピュータのソフトウェアで構成するものであってもよい。
【0036】
また、溶かし込みと同時に起動させた高周波電源13を、図5(a)に示すように、溶かし込み完了後も起動状態としてRFクリーニングを行うこと、図5(b)に示すように、RFクリーニング開始後これに並行して溶かし込みを始めること、図5(c)に示すように、RFクリーニングの終了間際に溶かし込みを行うこと等適宜選択して行えばよい。また、RFクリーニング工程S404におけるフィードバック手段18についても、例えばクリーニング工程S404の後半にのみフィードバック制御を行う等適宜選択して行えばよい。工程S404には、フィードバック制御しないクリーニングも含まれるものとする。ただし、工程S404におけるフィードバック制御の効果は非常に大きく、図5(d)に示すように溶かし込みに関わらずRFクリーニングのみを行ってもよい。放出ガス流量を検出しながらRFクリーニングを行うことで、最適な電力量を選択できるため、必要以上にクリーニングしてタクトタイムを長引かせることがない。また、十分なクリーニングがなされてない状態であるにも関わらずクリーニングを終了させて成膜に悪影響を及ぼすといったこともなくなる。なお、成膜工程S410及びS411は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0037】
本実施形態では、成膜前段階の雰囲気調整工程S401と溶かし込み工程S403とRFクリーニング工程S404とが同時に並行して行われるため、実施形態1よりも更に排気時間を短縮することができる。通常成膜前にRFクリーニングが行われる場合、溶かし込みとRFクリーニングは別工程として実施されるため、溶かし込みが終了してからRFクリーニングし真空槽2内が目標真空度に到達してから成膜段階に移行する、とうい工程を踏むが、本実施形態は排気中のプラズマ生成による効果と、各工程の並行処理による効果とを併せて、更なる排気時間の短縮を可能とし、生産性の向上に貢献する。
【0038】
実施形態3.
第1の実施形態においては、溶かし込み工程用のプラズマ発生手段と成膜工程用のプラズマ発生手段とを兼ねる構成として、基板ドーム6に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる構成を示したが、本実施形態では、成膜中にプラズマ発生が不要な場合を想定して、溶かし込み工程用に特化したプラズマ発生手段を設けたものを示す。
【0039】
図6は第3の実施形態を示す図である。図1と同様の符号を付したものは第1の実施形態のものと同様であるので説明を省略する。第1の実施形態との違いは、プラズマ発生手段として、シャッタ11と基板ドーム6との間に高周波コイル19を配置し、高周波電源13に接続した点にある。また、図3と同様にフィードバック系(測定手段16又は17及びフィードバック手段18)を付加してもよい。
【0040】
本実施形態は、基板ドーム2に高周波電圧を印加しないので基板5に耐熱温度の低い基板を用いる場合に有利である。もちろん、耐熱温度の高い基板を用いる場合にも適用できる。
【0041】
また、本実施形態によると、成膜工程用におけるプラズマ発生を考慮する必要がないので、プラズマ生成手段を、溶かし込み工程で飛散する蒸着物質をイオンによりアシストするのに最適な構成とすることができる。即ち、基板ドーム2の本来の目的は基板を保持することであり、ドーム上に配置された複数の基板と蒸着源との距離が変化しないようにしなければならない。従って、基板ドームにかかる重力、熱、(さらにドームを回転させる場合は)遠心力によって基板ドームが大きく変形しないように材質、形状、サイズ等を設計する必要がある。しかし、その結果として作製された基板ドームがプラズマ発生に最適な設計となっているとは限らない。一方、高周波コイル19を用いた構成では、その材質、位置、形状等プラズマ発生用に最適な設計を行うことができる。これにより、高周波電力の省電力化を図ることができ、また、実施形態2のようにフィードバック制御する場合にはフィードバック制御の応答性(応答速度など)を改善することができる。
【0042】
実施形態4.
第4の実施形態では第3の実施形態で使用する基板よりも更に耐熱温度の低い基板を対象とする場合、即ち、蒸着源に設けたRFコイルによる放電であっても影響を受けるような基板を用いる場合に有効なものを示す。
【0043】
本実施形態に用いる装置は図6のものと同じであるが、その動作において溶かし込み時には基板5をセットしておかないことを特徴とする。図7はその動作を説明するタイミングチャートである。
準備工程S700において、基板5は真空槽2の外部に待機させておき、坩堝9に形成する膜に応じた蒸着材料8を充填しておく。そして、雰囲気調整工程S701において真空槽2内を所定のガス雰囲気に設定・維持し、プラズマ発生工程S702において、高周波電源13を起動して、高周波コイル19に高周波電圧を印加してプラズマを発生させる。プラズマ発生工程S702の開始と同時に溶かし込み工程S703を開始する。溶かし込み工程S703において、電子銃10から電子ビームを坩堝9内の蒸着材料8へ照射し、蒸着材料8の溶かし込みをプラズマ雰囲気中で行う。
【0044】
その後、工程S705において真空槽2内を大気開放し、工程S706において基板ドーム6に基板5をセットし、雰囲気調整工程S707において、再度真空槽2内を所定のガス雰囲気に設定・維持し、成膜工程S710、成膜工程S711へ移行する。なお、当然に、本実施形態においても成膜工程においてプラズマを発生させる必要はない。
【0045】
あるいは、工程S705において槽内温度を一度低下させてから、工程S706において、真空槽に連結されるとともに排気手段を備える仕込室及び基板搬送ロボット等(図示せず)を用いて基板をセットすることも有効である。この場合、大気開放する必要がないので、処理時間の短縮、導入ガスの節約等に貢献することができる。槽内温度を低下させる方法は、導入ガスの通流、単なる待機(自然に温度が下がるのを待つこと)、又は別途の冷却装置による冷却であってもよい。
【0046】
本発明の作用・効果を図10及び図11を用いて説明する。
図10は、APC(自動圧力コントローラ)を用いて真空槽内の圧力を一定にした場合の、成膜工程中の導入ガス流量の変化を示す図である。横軸は時間であり、原点を成膜工程の開始時、即ち、シャッタ11を開いた瞬間とする。図中の線Nは溶かし込み工程においてプラズマを発生させなかった場合であり、線RFは本発明のように溶かし込み工程においてプラズマを発生させた場合である。図示するように、線Nにおいては、成膜工程開始後に放出ガスが発生し、この放出ガスによる槽内の圧力上昇を抑えるため導入ガスの流入量が徐々に減少していくことを示している。これは、真空槽の壁面に堆積したボソボソなもろい膜が水分を吸着し、成膜時に蒸着源の輻射熱や蒸発物質の熱によってじわじわと放出されてくるためである。この放出ガスが膜内に混入して膜質の再現性劣化を誘発する。一方、線RFにおいては、成膜工程開始後に放出ガスがほとんど発生しないので導入ガスの流入量が多く安定していることを示している。プラズマ雰囲気中で溶かし込み工程を行うことにより、水分を吸着しにくい環境をつくり、また吸着した水分を効率よく放出させたため、変動がほとんど見られず、酸素分圧が安定した雰囲気を作り出せていることがわかる。また、これにより排気時間が短くなり、作業時間の短縮に貢献する。
【0047】
図11(a)及び(b)は成膜終了後の素子(基板)について、1バッチ目に作成した素子の分光特性と、15バッチ目に作成した素子の分光特性とを比較するものである。図11(a)は溶かし込み工程においてプラズマを発生させなかった場合の分光特性であり、(b)は本発明のように溶かし込み工程においてプラズマを発生させた場合のものである。双方とも横軸は波長であり、縦軸は透過率である。バッチ数を重ねることで槽内が汚れてくると、分光特性は長波長側にシフトする。図11(a)では、15バッチ後に分光特性が大きく崩れているが、図11(b)では、本発明の効果により成膜工程において放出ガスがほとんどないという状態を常に得られるので、その結果成膜された素子の分光特性のばらつきが小さく、再現性が良いことが分かる。
【0048】
上記の実施形態1〜4では基板ドーム回転機構、基板加熱機構等を省略したが、これらの機構は必要に応じて追加すればよい。また、成膜段階での各工程は適切なものであればいずれの成膜方法を適用してもよい。また、蒸着材料を蒸発させるために電子銃を用いたが、抵抗加熱による蒸発を用いてもよい。また、溶かし込み工程中に真空槽を一度大気開放して蒸着材料を補充し、再度真空排気してから溶かし込み工程を再開させてもよい。
上記の実施形態3〜4では成膜準備工程におけるプラズマ生成を省力したが、本発明による効果とプラズマによる基板昇温への影響等を加味し、適宜選択すればよい。また、熱伝導率の低い材料等、溶かし込み工程のできない蒸着材料であっても、成膜直前の材料加熱時、即ち本発明における成膜準備工程において、プラズマを生成することにより本発明の効果を得ることができる。
上記の実施形態ではプラズマ生成手段としてRF放電を用いたが、イオンガン等を用いてもよい。この場合、溶かし込みと同時に、真空槽の壁面やシャッタ、防着板等に直接イオンビームを照射すればよい。また、クリーニング工程S404についても、RF放電に限らずイオンガン等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の動作を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の動作を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の真空蒸着装置を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態の動作を説明する図である。
【図8】従来技術の真空蒸着装置を示す図である。
【図9】従来技術の動作を説明する図である。
【図10】成膜工程中の導入ガス流量を示す図である。
【図11】成膜処理の再現性を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1.真空蒸着装置
2.真空槽
3.排気口
4.ガス導入口
5.基板
6.基板ドーム
7.給電部
8.蒸着材料
9.坩堝
10.電子銃
11.シャッタ
12.ニュートラライザ
13.高周波電源
14.防着板
15.制御手段
16a.APC(自動圧力コントローラ)
16b.ガス流量モニタ手段
17a.MFC(マスフローコントローラ)
17b.圧力モニタ手段
18.フィードバック手段
19.高周波コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吸排気手段を有する真空槽、該真空槽内部に配置された基板保持手段、該基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、該蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びに該ガス吸排気手段、該加熱手段、該プラズマ発生手段及び該シャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、
(A)前記蒸着源に蒸着材料を充填し、前記基板保持手段に基板を設置する工程、
(B)前記ガス吸排気手段によって前記真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、
(C)前記プラズマ発生手段によって前記真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、
(D)前記プラズマ雰囲気において前記加熱手段を用いて前記蒸着材料を融解する溶かし込み工程、及び
(E)前記シャッタを開いて成膜を開始する工程
からなる制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の制御方法であって、該真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段を備え、前記工程(C)が、
(X)前記測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量をフィードバックするクリーニング工程
を含む制御方法。
【請求項3】
請求項2記載の制御方法であって、前記測定手段が、前記真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及び前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を検出する流量モニタ手段からなり、
前記工程(X)において、前記流量モニタ手段によって検出される導入ガス流量が所定値以上となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる制御方法。
【請求項4】
請求項2記載の制御方法であって、前記測定手段が、前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び前記真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段からなり、
前記工程(X)において、前記圧力モニタ手段によって検出される圧力が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる制御方法。
【請求項5】
ガス吸排気手段を有する真空槽、該真空槽内部に配置された基板保持手段、該基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、該蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びに該ガス吸排気手段、該加熱手段、該プラズマ発生手段及び該シャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、
(A)前記蒸着源に蒸着材料を充填する工程、
(B)前記ガス吸排気手段によって前記真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、
(C)前記プラズマ発生手段によって前記真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、
(D)前記プラズマ雰囲気において前記加熱手段を用いて前記蒸着材料を融解する溶かし込み工程、
(F)前記基板保持手段に基板を設置する工程、及び
(H)前記シャッタを開いて成膜を開始する工程
からなる制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の制御方法において、
前記工程(F)の前に、(E)前記真空槽を大気開放する工程、及び
前記工程(F)の後に、(G)前記ガス吸排気手段によって前記真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程
を含む制御方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6いずれか一項に記載の制御方法において、前記プラズマ発生手段が、基板ドームからなる前記基板保持手段及び該基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される制御方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6いずれか一項に記載の制御方法において、前記プラズマ発生手段が、前記真空槽の内部に備えられたコイル及び該コイルに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される制御方法。
【請求項9】
請求項1から請求項6いずれか一項に記載の制御方法において、前記加熱手段が、前記蒸着材料に電子ビームを照射する電子銃からなり、前記工程(D)が、
(d)前記プラズマ雰囲気において前記電子銃を照射して前記蒸着材料を融解する溶かし込み工程
である制御方法。
【請求項10】
ガス吸排気手段を有する真空槽、該真空槽内部に配置された基板保持手段、該基板保持手段に対向配置され蒸着材料がセットされる蒸着源、及び前記蒸着材料の溶かし込みを行う溶かし込み手段からなる真空蒸着装置であって、さらに、
前記真空槽内でプラズマを発生させるプラズマ発生手段、及び
前記プラズマ発生手段及び前記溶かし込み手段の動作/非動作を制御する制御手段
を備え、
少なくとも前記溶かし込み手段が動作状態にある間は、前記プラズマ発生手段も動作状態にあるように、該溶かし込み手段及び該プラズマ生成手段が前記制御手段によって制御されることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項11】
請求項10記載の真空蒸着装置であって、さらに、
前記真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段、及び
前記測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量をフィードバックする手段
を備えた真空蒸着装置。
【請求項12】
請求項11記載の真空蒸着装置において、前記測定手段が、
前記真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及び
前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を検出するガス流量モニタ手段
からなり、
前記フィードバック手段によって、該ガス流量モニタによって検出される導入ガス流量が所定値以上となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる真空蒸着装置。
【請求項13】
請求項11記載の真空蒸着装置において、前記測定手段が、
前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び
前記真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段
からなり、
前記フィードバック手段によって、該圧力モニタによって検出される圧力が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる真空蒸着装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13いずれか一項に記載の真空蒸着装置において、前記プラズマ発生手段が、基板ドームからなる前記基板保持手段及び該基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される真空蒸着装置。
【請求項15】
請求項10から請求項13いずれか一項に記載の真空蒸着装置において、前記プラズマ発生手段が、前記真空槽が内部に備えられたコイル及び該コイルに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される真空蒸着装置。
【請求項1】
ガス吸排気手段を有する真空槽、該真空槽内部に配置された基板保持手段、該基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、該蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びに該ガス吸排気手段、該加熱手段、該プラズマ発生手段及び該シャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、
(A)前記蒸着源に蒸着材料を充填し、前記基板保持手段に基板を設置する工程、
(B)前記ガス吸排気手段によって前記真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、
(C)前記プラズマ発生手段によって前記真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、
(D)前記プラズマ雰囲気において前記加熱手段を用いて前記蒸着材料を融解する溶かし込み工程、及び
(E)前記シャッタを開いて成膜を開始する工程
からなる制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の制御方法であって、該真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段を備え、前記工程(C)が、
(X)前記測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量をフィードバックするクリーニング工程
を含む制御方法。
【請求項3】
請求項2記載の制御方法であって、前記測定手段が、前記真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及び前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を検出する流量モニタ手段からなり、
前記工程(X)において、前記流量モニタ手段によって検出される導入ガス流量が所定値以上となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる制御方法。
【請求項4】
請求項2記載の制御方法であって、前記測定手段が、前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び前記真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段からなり、
前記工程(X)において、前記圧力モニタ手段によって検出される圧力が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる制御方法。
【請求項5】
ガス吸排気手段を有する真空槽、該真空槽内部に配置された基板保持手段、該基板保持手段に対向配置され加熱手段を備える蒸着源、該蒸着源を開閉するシャッタ、プラズマ発生手段、並びに該ガス吸排気手段、該加熱手段、該プラズマ発生手段及び該シャッタを制御する制御手段からなる真空蒸着装置の制御方法であって、
(A)前記蒸着源に蒸着材料を充填する工程、
(B)前記ガス吸排気手段によって前記真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程、
(C)前記プラズマ発生手段によって前記真空槽内にプラズマ雰囲気を生成する工程、
(D)前記プラズマ雰囲気において前記加熱手段を用いて前記蒸着材料を融解する溶かし込み工程、
(F)前記基板保持手段に基板を設置する工程、及び
(H)前記シャッタを開いて成膜を開始する工程
からなる制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の制御方法において、
前記工程(F)の前に、(E)前記真空槽を大気開放する工程、及び
前記工程(F)の後に、(G)前記ガス吸排気手段によって前記真空槽内を所定のガス雰囲気に設定及び維持する工程
を含む制御方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6いずれか一項に記載の制御方法において、前記プラズマ発生手段が、基板ドームからなる前記基板保持手段及び該基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される制御方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6いずれか一項に記載の制御方法において、前記プラズマ発生手段が、前記真空槽の内部に備えられたコイル及び該コイルに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される制御方法。
【請求項9】
請求項1から請求項6いずれか一項に記載の制御方法において、前記加熱手段が、前記蒸着材料に電子ビームを照射する電子銃からなり、前記工程(D)が、
(d)前記プラズマ雰囲気において前記電子銃を照射して前記蒸着材料を融解する溶かし込み工程
である制御方法。
【請求項10】
ガス吸排気手段を有する真空槽、該真空槽内部に配置された基板保持手段、該基板保持手段に対向配置され蒸着材料がセットされる蒸着源、及び前記蒸着材料の溶かし込みを行う溶かし込み手段からなる真空蒸着装置であって、さらに、
前記真空槽内でプラズマを発生させるプラズマ発生手段、及び
前記プラズマ発生手段及び前記溶かし込み手段の動作/非動作を制御する制御手段
を備え、
少なくとも前記溶かし込み手段が動作状態にある間は、前記プラズマ発生手段も動作状態にあるように、該溶かし込み手段及び該プラズマ生成手段が前記制御手段によって制御されることを特徴とする真空蒸着装置。
【請求項11】
請求項10記載の真空蒸着装置であって、さらに、
前記真空槽内の放出ガスの量を測定する測定手段、及び
前記測定手段によって測定された放出ガスの量が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量をフィードバックする手段
を備えた真空蒸着装置。
【請求項12】
請求項11記載の真空蒸着装置において、前記測定手段が、
前記真空槽の内圧を一定に保つ圧力コントローラ、及び
前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を検出するガス流量モニタ手段
からなり、
前記フィードバック手段によって、該ガス流量モニタによって検出される導入ガス流量が所定値以上となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる真空蒸着装置。
【請求項13】
請求項11記載の真空蒸着装置において、前記測定手段が、
前記ガス吸排気手段における導入ガス流量を一定に保つ流量コントローラ、及び
前記真空槽の内圧を検出する圧力モニタ手段
からなり、
前記フィードバック手段によって、該圧力モニタによって検出される圧力が所定値以下となるように前記プラズマ発生電力量がフィードバックされる真空蒸着装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13いずれか一項に記載の真空蒸着装置において、前記プラズマ発生手段が、基板ドームからなる前記基板保持手段及び該基板ドームに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される真空蒸着装置。
【請求項15】
請求項10から請求項13いずれか一項に記載の真空蒸着装置において、前記プラズマ発生手段が、前記真空槽が内部に備えられたコイル及び該コイルに高周波電圧を印加する高周波電源からなり、プラズマ発生量が該高周波電源及び/又は導入ガス流量によって制御される真空蒸着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−144192(P2008−144192A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329672(P2006−329672)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】
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