説明

眼の遺伝子治療

脈絡膜血管新生に罹患した個体において、この個体の眼組織中のエンドスタチンタンパク質のインビボでの濃度を脈絡膜血管新生阻害有効量まで上昇させることにより、脈絡膜血管新生の処置のための方法が提供され、ここで、このエンドスタチンタンパク質は、インビボで抗脈絡膜血管新生活性を有する。本発明によれば、網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体における網膜剥離または網膜水腫の処置のための方法であって、以下の工程:網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体の眼組織中のエンドスタチンの量の、網膜剥離阻害有効量または網膜水腫阻害有効量への増加をもたらす工程を包含する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、遺伝子治療を用いて網膜の障害を処置するための方法に関する。本発明はまた、網膜障害を処置するために用いられ得るベクター(より詳細には、レトロウイルスベクター)に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(発明の要旨)
本発明は、網膜障害に罹患した個体における、この個体の眼組織中のインビボでのエンドスタチン濃度の、網膜障害を処置するために有効な量までの増加をもたらす工程を包含する、個体における網膜障害の処置のための方法を提供する。
【0003】
好ましい局面では、エンドスタチンは、エンドスタチンまたはエンドスタチンの活性なフラグメントである。
【0004】
別の好ましい局面では、本発明の方法において用いられるエンドスタチンは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドである。別の好ましい局面では、このエンドスタチンは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのポリペプチドフラグメント、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体、または配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの改変体である。このような活性なフラグメントおよび改変体の例は、例えば、本明細書中にその全体が参考として援用される、米国特許第6,174,861号に示される。
【0005】
別の好ましい局面では、本発明は、網膜障害に罹患した個体における、個体の眼組織(特に、網膜組織)中のインビボでのエンドスタチン濃度の、有効量への増加をもたらす工程を包含する、個体における網膜障害の処置のための方法に関し、ここで、この増加は、この個体へと外因性エンドスタチンを投与することによりもたらされる。
【0006】
なお別の好ましい局面では、本発明は、網膜障害に罹患した個体における、個体の眼組織(特に、網膜組織)中のインビボでのエンドスタチン濃度の、有効量への増加をもたらす工程を包含する、個体における網膜障害の処置のための方法に関し、ここで、この増加は、エンドスタチンをこの個体内で産生されることによりもたらされる。より好ましい局面では、この増加は、エンドスタチンをコードする核酸を含む有効量のウイルスベクターをこの個体へと投与することによりもたらされる。最も好ましい局面では、このウイルスベクターは、アデノウイルス(例えば、gutlessアデノウイルス)、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびレンチウイルスからなる群より選択され、そして眼内または眼周囲に投与される。
【0007】
なお別の好ましい局面では、本発明は、網膜障害に罹患した個体における、個体の眼組織(特に、網膜組織)中のインビボでのエンドスタチン濃度の、有効量への増加をもたらす工程を包含する、個体における網膜障害の処置のための方法に関し、ここで、この増加は、少なくとも1つのマイクロカプセルをこの個体内に移植することによりもたらされ、ここで、このマイクロカプセルは、エンドスタチンを分泌する細胞を含む。
【0008】
網膜障害としては、例えば、網膜剥離および網膜水腫(黄斑水腫が挙げられる)が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
エンドスタチンは、腫瘍新脈管形成および腫瘍増殖を阻害することが見出されている、XVIII型コラーゲンの切断産物である。インターフェロンα2もまた、腫瘍新脈管形成をブロックして、血管腫の後退を引き起こすが、脈絡膜血管新生(CNV)に対する効果は有さない。本発明者らは、驚くべきことに、そして予想外にも、個体の眼組織中のインビボでのエンドスタチン濃度の増加が、網膜障害(例えば、網膜剥離および網膜水腫(黄斑水腫が挙げられる))を処置し得ることを見出した。
【0010】
従って、本発明は、網膜障害(例えば、網膜剥離および網膜水腫(黄斑水腫が挙げられる)の予防的処置および治療的処置のための方法を提供する。「処置」とは、予防的処置および治療的処置の両方を包含する。「予防的」によって、網膜障害(例えば、網膜剥離および網膜水腫(黄斑水腫が挙げられる))に対する全体または部分での保護を意味する。「治療的」によって、網膜障害自体の改善、およびさらなる網膜障害または既存の障害の増悪に対する全体または部分での保護を意味する。本発明は、網膜剥離および網膜水腫(黄斑水腫が挙げられる)の処置において特に有用である。
【0011】
本明細書中で用いられる場合、エンドスタチンの「網膜障害阻害有効量」は、以下のいずれかまたは全てを引き起こすエンドスタチン量である:1)網膜脈管透過性の低下;2)網膜の厚さの低下;または3)網膜剥離の絶対的阻害もしくは程度低下。
【0012】
用語「エンドスタチンをコードするDNA配列」は、本明細書中で用いられる場合、全長エンドスタチンまたはエンドスタチンの活性なフラグメント、誘導体、もしくはアナログをコードするDNAを意味し、例えば、このようなDNAは、全長エンドスタチンをコードする全長遺伝子、またはエンドスタチン活性を有する、このようなエンドスタチンのフラグメントもしくは誘導体もしくはアナログをコードする、短縮遺伝子もしくは変異遺伝子であり得る。用語「DNA配列」とは、一般に、ポリデオキシリボヌクレオチド分子をいい、より詳細には、3’と隣接する五炭糖の5’炭素との間でのホスホジエステル結合によって互いに連結されたポリデオキシリボヌクレオチドの直鎖シリーズをいう。
【0013】
従って、1つの実施形態では、本発明は、エンドスタチン、またはエンドスタチン活性を有する、それらのフラグメント、誘導体、もしくはアナログをコードするDNA配列に関する。
【0014】
エンドスタチンおよびそれらのフラグメントまたは誘導体をコードするDNA配列は、その全体が本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,854,205号に示されて記載されている。
【0015】
用語「エンドスタチン」とは、それぞれ非還元ゲル電気泳動および還元ゲル電気泳動によって決定した場合にサイズが好ましくは18kDa〜20kDaであるタンパク質をいう。用語エンドスタチンはまた、活性な前駆体形態の18 kDa〜20kDaのタンパク質を包含する。全長ヒトエンドスタチンのアミノ酸配列を、配列番号1に示す。ヒトエンドスタチンをコードする核酸配列を、配列番号2に示す。マウスエンドスタチン+マウスIgκリーダー配列のアミノ酸配列を、配列番号3に示す。マウスIgκリーダー配列とともにマウスエンドスタチンをコードする核酸配列を、配列番号4に示す。
【0016】
用語エンドスタチンはまた、18kDa〜20kDaのタンパク質および改変タンパク質のフラグメント、ならびに実質的に類似のアミノ酸配列を有して内皮細胞の増殖を阻害し得るペプチドを包含する。例えば、構造的または化学的に類似のアミノ酸による特定のアミノ酸の置換が、タンパク質の構造もコンホメーションも活性も有意には変更しない、アミノ酸のサイレント置換は、当該分野で周知である。このようなサイレント置換は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0017】
用語「エンドスタチン」が、1以上のアミノ酸が全長エンドスタチン(すなわち、配列番号1を有するポリペプチド)のいずれかもしくは両方の末端から除去されているかまたはこのタンパク質の内部領域から除去されているが、得られる分子は内皮細胞の増殖を阻害するためにおよび/または網膜剥離、網膜水腫および/もしくは眼の血管新生を処置するために有効なままである、短縮タンパク質を包含することが認識される。このような短縮ポリペプチドは、本明細書中では、「フラグメント」と呼ばれる。用語「エンドスタチン」はまた、1以上のアミノ酸がエンドスタチンのいずれかもしくは両方の末端に付加されているかまたはこのタンパク質中の内部位置に付加されているが、得られる分子は、内皮増殖阻害活性を保持する、延長タンパク質または延長ペプチドを包含する。例えば、チロシンが1位に付加された、このような分子は、例えば、125Iを用いて標識するために有用である。他の放射性同位体を用いた標識は、エンドスタチンレセプターを含む標的細胞を破壊するための分子ツールを提供する際に有用であり得る。「標識」分子(例えば、リシン)を用いた標識は、エンドスタチンレセプターを有する細胞を破壊する機構を提供し得る。延長エンドスタチンポリペプチド、または共有結合により改変されたエンドスタチンポリペプチドは、本明細書中で集合的に、エンドスタチンの「誘導体」といわれる。
【0018】
「実質的配列相同性」とは、エンドスタチンアナログ配列中のアミノ酸残基配列と、エンドスタチンのアミノ酸残基配列との間の少なくとも約70%の相同性(好ましくは少なくとも約80%の相同性、より好ましくは少なくとも約90%の相同性)を意味する。
【0019】
用語エンドスタチンの定義にまた含まれるのは、エンドスタチンタンパク質およびそのペプチドフラグメントの改変物である。このような改変としては、他の分子(天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸が挙げられるがこれらに限定されない)による、特定の部位での天然に存在するアミノ酸の置換が挙げられる。このような置換は、エンドスタチンの生体活性を改変し得、そして生物学的または薬理学的なアゴニストまたはアンタゴニストを生成し得る。このような改変されたポリペプチドは、本明細書中で、「改変体」といわれる。抗腫瘍効果および/または抗脈管形成効果を有することが示された、エンドスタチンの改変体、誘導体、およびフラグメントが公知であり、例えば、公開された国際特許出願番号WO0067771、WO0063249、WO9931616、WO9929855、およびW09948924(これらの開示は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される)において報告されている。エンドスタチンのこのような改変体、誘導体、およびフラグメントもまた、本発明の方法において有用である。
【0020】
本発明の実施において有用なポリペプチドは、従来の薬学的処方物を用いて、処置の必要がある個体に送達され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、上記で考察した治療的効果のいずれかのための、薬学的に受容可能なキャリアに関連した、薬学的組成物の投与に関する。このような薬学的組成物は、エンドスタチン(例えば、エンドスタチン)、またはエンドスタチンに対する抗イディオタイプ抗体、またはエンドスタチンの模倣物からなり得る。この組成物は、単独で、少なくとも1つの他の薬剤(例えば、安定化化合物)とまたは組み合わせて投与され得、これらは、任意の無菌の生体適合性の薬学的キャリア(生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロースおよび水が挙げられるがこれらに限定されない)中で投与され得る。この組成物は、患者に、単独で、または他の薬剤、薬物もしくはホルモンと組み合わせて投与され得る。
【0022】
本発明によって包含される薬学的組成物は、以下を含むがこれらに限定されない任意の数の経路によって投与され得る:眼内手段、眼周囲手段、経口手段、静脈内手段、筋肉内手段、関節内手段、動脈内手段、髄内手段、クモ膜下腔内手段、心室内手段、経皮手段、皮下手段、腹腔内手段、鼻腔内手段、腸内手段、局所手段、舌下手段、または直腸手段。
【0023】
有効成分に加えて、これらの薬学的組成物は、薬学的に用いられ得る調製物への活性な化合物の処理を促進する、賦形剤および補助剤を含む、適切な約学的に受容可能なキャリアを含み得る。処方および投与に関する技術のさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,Pa.)の最新版に見出され得る。
【0024】
経口用途についての薬学的調製物は、活性な化合物と固体賦形剤との組み合わせ(必要に応じて、得られる混合物を粉砕する工程および(所望の場合、適切な補助剤を添加した後に)顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣丸のコアを得る工程を包含する)を通して入手され得る。適切な賦形剤は、以下である:糖質またはタンパク質の充填剤(例えば、糖(ラクトース、スクロース、マンニトールもしくはソルビトールが挙げられる);トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモまたは他の植物由来の澱粉;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム);ゴム(アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)。所望の場合、崩壊剤または可溶化剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))が添加され得る。
【0025】
糖衣丸コアは、適切なコーティング(例えば、濃縮した糖溶液)に関連して用いられ得、このコーティングはまた、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポール(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物を含む。染料または色素は、製品の識別または活性化合物の量(すなわち、投薬量)の特徴付けのために、錠剤または糖衣丸コーティングに添加され得る。
【0026】
経口的に用いられ得る薬学的調製物としては、ゼラチンから作製された押し込みばめ式カプセル剤、ならびにゼラチンおよびコーティング(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から作製された軟質のシールされたカプセル剤が挙げられる。押し込みばめカプセル剤は、充填剤または結合剤(例えば、ラクトースまたは澱粉)、滑沢剤(例えば、滑石またはステアリン酸マグネシウム)、および必要に応じて安定剤と混合された、活性成分を含み得る。軟質カプセル剤では、この活性な化合物は、安定剤を含むかまたは含まない、適切な液体(例えば、脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解または懸濁され得る。
【0027】
非経口投与に適切な薬学的処方物は、水溶液(好ましくは生理学的に適合性の緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的に緩衝化された生理食塩水))中に処方され得る。水性注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を上昇させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストラン)を含み得る。さらに、活性な化合物の懸濁物は、適切な油性注射用懸濁物として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)、またはリポソームが挙げられる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもまた、送達のために用いられ得る。必要に応じて、この懸濁物はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする、適切な安定剤または化合物の溶解度を上昇させる薬剤を含み得る。
【0028】
局所投与または鼻腔投与については、透過されるべき特定の関門に適切な浸透剤が、この処方物中で用いられる。このような浸透剤は一般に当該分野で公知である。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、顆粒化プロセス、糖衣作製プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセスまたは凍結乾燥プロセスによって、当該分野で公知の様式で製造され得る。
【0030】
この薬学的組成物は、塩として提供され得、そして以下を含むがこれらに限定されない多くの酸を用いて形成され得る:塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸など。塩は、水性溶媒または他のプロトン溶媒中に、対応する遊離塩基形態よりも可溶性である傾向がある。他の場合には、好ましい調製物は、以下のうちのいずれかまたは全てを含み得る、使用前に緩衝液と合わされる、凍結乾燥粉末であり得る:4.5〜5.5のpH範囲にある、1〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、および2〜7%マンニトール。
【0031】
薬学的組成物が調製された後、これらは、適切な容器中に配置され得、そして処置について示した状態の処置に関してラベルされ得る。エンドスタチンの投与に関して、このようなラベル付けとしては、投与の量、頻度および方法が挙げられる。
【0032】
本発明における使用に適切な薬学的組成物としては、活性な成分が、意図される目的を達成するための有効量で含まれる組成物が挙げられる。有効量の決定は、充分に当業者の能力内である。
【0033】
治療的に有効な用量の活性薬剤は、(例えば、内皮細胞の)細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常、マウス、ウサギ、イヌまたはブタ)のいずれかで最初に評価され得る。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するために用いられ得る。次いで、このような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために用いられ得る。
【0034】
治療有効用量とは、症状または状態を改善する有効成分(例えば、エンドスタチンまたはそのフラグメント、エンドスタチンに対する抗体、エンドスタチンのアゴニスト、アンタゴニストもしくはインヒビター)の量をいう。治療効力および毒性は、細胞培養物または実験動物中の標準的な薬学的手順(例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量))によって決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、そしてこれは比LD50/ED50として表現され得る。大きな治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトでの使用について一定範囲の投薬量を処方する際に有用である。このような組成物中に含まれる投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどまたはまったくないED50を含め、一定の循環濃度範囲内にある。投薬量は、用いられる投薬形態、患者の感受性および投与経路に依存して、この範囲内で変化する。
【0035】
正確な投薬量は、処置を必要とする被験体に関連した因子に照らして、実施者によって決定される。投薬量および投与は、充分なレベルの活性部分を提供するように、または所望の効果を維持するように、調整される。考慮され得る因子としては、疾患状態の重篤度、被験体の一般的健康状態、被験体の年齢、体重および性別、食事、投与時間および投与頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する寛容/応答が挙げられ得る。長期作用性薬学的組成物は、特定の処方物の半減期およびクリアランス速度に依存して、3〜4日間毎に、毎週、または2週間に一度、投与され得る。
【0036】
正常な投薬量は、例えば、外因的に生成されたエンドスタチンが投与される場合、投与経路および投与方法に依存して、約0.1mg/kg/日〜約20mg/kg/日、好ましくは2.5mg/kg/日〜20mg/kg/日で変動し得る。特定の投薬量および送達方法についての指針は、文献に提供され、そして当該分野の実施者に一般的に利用可能である。当業者は、タンパク質またはそれらのインヒビターについてとは異なる、ヌクレオチドについての処方物を用いる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、条件、位置などについて特異的である。種々の生分解性ポリマーマトリクスおよび生体適合性ポリマーマトリクス(マイクロカプセル、ナノスフェアおよびインプラントが挙げられる)は、本発明の実施において有用である。
【0037】
マイクロスフェアは、活性薬物を含む細かい球状粒子である。これらは、主に粒子のサイズによってナノスフェアと区別される;マイクロスフェアは、約1000μm未満の直径を有し、一方、ナノスフェアは、サブミクロン(<1μm)である。マイクロスフェア系は、均質なモノリシックなマイクロスフェア(ここでは、薬物が、ポリマーマトリクス全体に均質に溶解または分散されている)またはレザバ型マイクロスフェア(ここでは、薬物が、ポリマーマトリクス膜殻によって取り囲まれている)のいずれかを含む。
【0038】
モノリシックな系およびレザバ系はまた、組み合わされ得る。例えば、活性な薬物は、レザバ型マイクロスフェア中のポリマー表面中に分散され得るかまたはこのポリマー表面に吸着され得る。
【0039】
生分解性ポリマーは、純度が様々な、天然物質または合成物質のいずれかから構成され得る。天然のポリマーとしては、以下が挙げられる:ポリペプチドおよびタンパク質(例えば、アルブミン、フィブリノーゲン、ゼラチン、コラーゲン)、多糖(例えば、ヒアルロン酸、澱粉、キトサン)、およびウイルスエンベロープおよび生存細胞(例えば、赤血球、線維芽細胞、筋芽細胞)。天然の物質は、マイクロカプセル化プロセスにおいて架橋を必要とし、このことは、ポリマーおよび包埋される薬物の変性をもたらす。その結果、合成ポリマーは、最も一般的に用いられる。頻繁に用いられる合成ポリマーとしては、ポリ(−ヒドロキシ)酸(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酪酸、およびコポリ(乳酸/グリコール酸)(PLGA)が挙げられる。これらの化合物は、生体適合性であり、免疫原性を欠き、そしてこれらが(生体侵食速度を制御するために)容易に成形されることを可能にする物理的特性を有する。
【0040】
コロイド粒子状キャリアもまた、エンドスタチンを送達するための本発明の方法において有用であり得る。リポソームは、好ましいコロイド状ビヒクルであり、親水性薬および疎水性薬の両方についてキャリアとして作用し得るリン脂質二重層から構成される。リポソームは、例えば、中性脂質、荷電したリン脂質、およびコレステロールから形成され得る。リポソームの表面への両染性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))の付加は、リポソームのクリアランスを緩慢にし得る。
【0041】
PEGで改変したエンドスタチンの投与もまた、本発明の範囲内にある。PEGは、反復するエチレンオキシドサブユニットおよび化学的に活性化され得る2つの末端ヒドロキシル基から構成されるポリマーである。PEG分子は、多数の異なる配置で入手される。PEG鎖は、1以上のPEG鎖がリンカー(例えば、リジンまたはトリアジン)によって連結された、直鎖構造および分枝構造を含む。PEGは、単一の部位または複数の部位において、エンドスタチンに結合(好ましくは共有結合)され得る。分枝鎖PEGが単一の部位または直鎖PEGよりも少ない部位において結合するので、分岐したPEGは、ネイティブな分子の生物学的活性と相互作用する可能性が、複数の小さな直鎖状PEGの結合よりも低いかもしれず、それゆえ、好ましい。タンパク質の経口投与に適切な薬学的処方物は、例えば、米国特許第5,008,114号;同第5,505,962号;同第5,641,515号;同第5,681,811号;同第5,700,486号;同第5,766,633号;同第5,792,451号;同第5,853,748号;同第5,972,387号;同第5,976,569号;および同第6,051,561号に開示され、これらの全ては、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0042】
エンドスタチンは、遺伝子治療法を用いて、処置の必要がある固体に送達され得る。当該分野で利用可能な遺伝子治療に関する方法のいずれかが、本発明に従って用いられ得る。例示的な方法は、以下に記載される。
【0043】
好ましい局面では、この治療剤は、エンドスタチンまたはそのフラグメントもしくはキメラタンパク質を適切な宿主中で発現する発現ベクターの一部である、エンドスタチンをコードする核酸を含む。特に、このような核酸は、ポリペプチドコード領域に作動可能に連結されたプロモーターを有し、このプロモーターは、誘導性または構成性であり、そして必要に応じて組織特異的である。別の特定の実施形態では、ポリペプチドコード配列および任意の他の所望の配列が、ゲノム中での所望の部位での相同組換えを促進する領域と隣接しており、従って、所望の核酸の染色体内発現を提供する、核酸分子が用いられる。
【0044】
エンドスタチンをコードする核酸の、患者への送達は、直接的(この場合、患者は、直接的にこの核酸または核酸保有ベクターに曝露される)または間接的(この場合、細胞が最初にこの核酸でインビトロにて形質転換され、次いで患者内に移植される)のいずれであってもよい。これらの2つのアプローチは、それぞれ、インビボでの遺伝子治療またはエキソビボでの遺伝子治療として公知である。
【0045】
特定の実施形態では、エンドスタチンをコードする核酸は、インビボで直接的に投与され、ここで、この核酸は発現されて、コードされた産物を生成する。これは、当該分野で公知の多数の方法のうちのいずれかによって(例えば、これを、適切な核酸配列を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、そしてこれを(例えば、欠損または減弱したレトロウイルスまたは他のウイルスベクターを用いた感染により)投与して細胞内になるようにすること(例えば、米国特許第4,980,286号および以下で言及する他のものを参照のこと)によって、または裸のDNAの直接注射(例えば、Blezingerら,Nature Biotechnology,17,343−348(1999)を参照のこと)によって、または微粒子ボンバードメントの使用(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)によって、または脂質または細胞表面レセプターまたはトランスフェクト剤でコーティングすることによって、リポソーム(例えば、Chenら,Cancer Research,59,3308−3312(1999)を参照のこと)、微粒子もしくはマイクロカプセル中にカプセル化することによって、またはこれを、核に侵入することが公知のペプチドに連結した状態で投与することによって、レセプター媒介エンドサイトーシスを受けるリガンドに結合した状態で投与すること(例えば、米国特許第5,166,320号;同第5,728,399号;同第5,874,297号;および同第6,030,954号(これらは全て、それらの全体が、本明細書中に参考として援用される))(これは、レセプターを特異的に発現する細胞型を標的化するために用いられ得る)などによって)達成され得る。別の実施形態では、リガンドがエンドソームを破壊して核酸がリソソーム分解を回避するのを可能にする膜融合性(fusogenic)ウイルスペプチドを含む核酸−リガンド複合体が形成され得る。なお別の実施形態では、この核酸は、特異的レセプターを標的化することにより、細胞特異的取り込みおよび発現にインビボで標的化され得る(例えば、PCT公報WO92/06180;WO92/22635;WO92/20316;WO93/14188;およびWO93/20221)。あるいは、この核酸は、細胞内に導入されて、相同組換えによって発現に関する宿主細胞のDNA内に取り込まれ得る(例えば、米国特許第5,413,923号;同第5,416,260号;同第5,574,205号を参照のこと)。
【0046】
特定の実施形態では、エンドスタチンをコードする核酸を含むウイルスベクターが用いられる。例えば、レトロウイルスベクターが用いられ得る(例えば、米国特許第5,219,740号;同第5,604,090号;および同第5,834,182号を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞のDNAへの組み込みに必要ではないレトロウイルス配列を欠失するように改変されている。遺伝子治療において用いられるべき、エンドスタチンをコードする核酸は、ベクター中にクローニングされ、このベクターは、患者へのこの遺伝子の送達を容易にする。
【0047】
アデノウイルスは、遺伝子治療において用いられ得る別の型のウイルスベクターである。アデノウイルスゲノムは、約36キロベース対の直鎖状の二本鎖DNA分枝である。ウイルスゲノムの各末端は、逆方向末端反復配列(すなわち、ITR)として公知の短い配列を有する。ITRは、ウイルス複製に必要である。アデノウイルスの十分に特徴付けられた分子遺伝学により、遺伝子移入についてこれを有利なベクターとする。このウイルスゲノムの一部は、外来起源のDNAで置換され得る。さらに、組換えアデノウイルスは、構造的に安定であり、再配置されたウイルスが、多量の増幅後に観察されない。
【0048】
アデノウイルスは、遺伝子を気道上皮に送達するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは天然において、気道上皮に感染し、この場所でこれらは、軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく系の他の標的は、肝臓細胞、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは、分裂していない細胞に感染し得るという利点を有する。アデノウイルスに基づく遺伝子治療を実施するための方法は、例えば、米国特許第5,824,544号;同第5,868,040号;同第5,871,722号;同第5,880,102号;同第5,882,877号;同第5,885,808号;同第5,932,210号;同第5,981,225号;同第5,994,106号;同第5,994,132号;同第5,994,134号;同第6,001,557号;および同第6,033,8843号に記載される。これらは全て、それらの全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0049】
特定の実施形態では、アデノウイルスベクターを用いて遺伝子治療の目的で導入されるべき核酸は、コード領域に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含み、その結果、この核酸の発現は、適切な転写インデューサーの存在または不存在を制御することによって制御可能である。
【0050】
アデノウイルスベクターへのゲノムエレメントの組み込みは、エンドスタチンをコードするDNA配列の増強された発現を提供し得る。従って、本発明の別の局面によれば、エンドスタチンをコードする少なくとも1つのDNA配列、およびこのようなDNA配列の発現に影響を与える少なくとも1つのゲノムエレメントを含むアデノウイルスベクターが提供される。用語「ゲノムエレメント」は、上記で定義されたとおりに用いられる。このようなゲノムエレメントとしては、イントロン、5’非翻訳領域、および3’非翻訳領域、ならびにイントロンならびに3’非翻訳領域および5’非翻訳領域の一部が挙げられるがこれらに限定されない。これらのアデノウイルスベクターは、本明細書中上記に記載の通りであり得る。このDNA配列を制御するプロモーターは、本明細書中に記載されるプロモーターおよび当業者に公知のプロモーターから選択され得る。
【0051】
エンドスタチンをコードする少なくとも1つのDNA配列を含む、感染性であるが複製欠損性のウイルス粒子からなるベクターは、宿主における脈絡膜血管新生を処置するために有効な量で、インビボで宿主に投与される。この宿主は、哺乳動物宿主(ヒト宿主および非ヒト霊長類宿主)であり得る。
【0052】
このアデノウイルスベクターは、哺乳動物宿主に、血液1mlあたり1,000,000ng/mlまでまたは血液1mlあたり1mgのエンドスタチンレベルを提供するために有効な量で投与され得る。このアデノウイルスベクターは、1,000,000ng/mlまでのエンドスタチンレベルを提供するに有効な量で哺乳動物宿主へと投与され得るが、いくつかのエンドスタチン(例えば、エンドスタチン)は、本発明のアデノウイルスベクターで形質導入された哺乳動物細胞によって発現された場合、非哺乳動物細胞(例えば、酵母細胞または細菌細胞(例えば、E.coli細胞)によって発現されたエンドスタチンよりも顕著に活性が高い(約1,000倍活性が高い)ことが見出されている。従って、所望の抗血管新生効果を得るためには、一般に、酵母または細胞によって発現された顕著により高いレベルのエンドスタチンを哺乳動物に提供することとは対照的に、アデノウイルスベクターを哺乳動物宿主に投与することにより、哺乳動物宿主にエンドスタチンをより低いレベルで提供し得る。
【0053】
1つの実施形態では、哺乳動物宿主に投与された場合、このアデノウイルスベクターは、宿主中の基底エンドスタチンレベルの約2〜20倍であるエンドスタチンレベルを提供するために有効な量で投与される。一般に、このような実施形態では、このアデノウイルスベクターは、血液1mlあたり少なくとも約300ng、好ましくは約300ng/ml〜約3000ng/ml、より好ましくは約500ng/m〜約1500ng/mlのレベルで活性なポリペプチドの発現を提供するために有効な量で哺乳動物宿主に投与される。
【0054】
別の実施形態では、ウイルスベクターは、約10プラーク形成単位〜約1014プラーク形成単位、好ましくは約10プラーク形成単位〜約1011プラーク形成単位、より好ましくは約10プラーク形成単位〜約1010プラーク形成単位の量で投与される。上記の量のアデノウイルスベクターが好ましい。
【0055】
感染性ベクター粒子は、(例えば、静脈内投与(例えば、末梢静脈注射を介して)によって)全身投与され得るか、または門脈を介して、胆管へと、筋肉内に、腹腔内にもしくは鼻腔内に投与され得る。あるいは、感染性ベクター粒子は、例えば、眼内注射または眼周囲注射によって局所的に投与され得る。このような注射は、前眼房または後眼房のいずれかに対して(例えば、眼房水または硝子体液に対して)であり得る。あるいは、この注射は、例えば、網膜の後ろへのベクター含有溶液のアリコート(例えば、1アリコートあたり1〜10マイクロリットル)の注射によって、網膜下においてであり得、その後、この溶液は吸収され、そしてこの感染性ベクター粒子は眼組織の局所細胞に感染して活性なポリペプチドを生成する。このような投与は、単回注射、同日に投与される複数回注射、数週間もしくは数ヶ月の期間にわたって投与される単回注射、または数週間もしくは数ヶ月の期間にわたって投与される複数回注射のいずれかを含み得る。
【0056】
このベクター粒子は、患者への投与に適切な、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて投与され得る。このキャリアは、液体キャリア(例えば、生理食塩水溶液)または固体キャリア(例えば、マイクロキャリアビーズ)であり得る。
【0057】
アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、腫瘍についてのエンドスタチン遺伝子治療(例えば、Nguyenら,Cancer Research,58,5673−5677(1998)を参照のこと)を含め、遺伝子治療における使用が提唱されている。AAVを生成して利用するための方法は、例えば、米国特許第5,173,414号;同第5,252,479号;同第5,552,311号;同第5,658,785号;同第5,763,416号;同第5,773,289号;同第5,843,742号;同第5,869,040号;同第5,942,496号;および同第5,948,675号に記載される。これらは全て、それらの全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0058】
遺伝子治療に対する別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法によって、組織培養中の細胞に遺伝子を移入することを含む。通常、移入の方法は、選択マーカーを細胞に移入することを含む。次いで、これらの細胞は選択下に配置されて、移入された遺伝子を取り込んで発現している細胞が単離される。次いで、これらの細胞は、患者に送達される。
【0059】
この実施形態では、この核酸は、得られる組換え細胞のインビボでの投与の前に細胞中に導入される。このような導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスベクターもしくはバクテリオファージベクターの感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、マイクロセル媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含むがこれらに限定されない、当該分野で公知の任意の方法によって実施され得る。多数の技術が、細胞内への外来遺伝子の導入について当該分野で公知であり、本発明に従って用いられ得る。ただし、レシピエント細胞の必要な発生機能および生理学的機能は破壊されない。この技術は、細胞へのこの核酸の安定な移入を提供すべきであり、その結果、この細胞は、この細胞によって発現可能であり、好ましくはその細胞の子孫に遺伝可能でかつ発現可能である。別の実施形態では、その細胞によって通常は発現されないかまたは低いレベルで発現される細胞において、内因性遺伝子は、強力なプロモーターをこの内因性遺伝子に作動可能に連結することによって活性化され得、従って、内因性遺伝子を高レベルで発現する細胞を提供し得、このことにより、その細胞によるエンドスタチンの合成および分泌がもたらされ得る。
【0060】
このような細胞(すなわち、内因性または外因性の遺伝子または核酸のいずれかから高レベルのタンパク質を生成する細胞)の生成および投与のための方法は、とりわけ、米国特許第5,641,670号;同第5,733,761号;同第5,968,502号;同第6,048,729号;同第6,054,288号;同第6,063,630号;および同第6,187,305号に記載される。好ましい実施形態では、エンドスタチン産生細胞は、マイクロカプセル化された形態で(例えば、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウムポリL−リジンアルギネート中にマイクロカプセル化された細胞の形態で)送達される(例えば、Readら,Nature Biotechnology 19,29−34(2001年1月)およびJokiら,Nature Biotechnology 19,35−39(2001年1月)を参照のこと)。マイクロカプセル化された細胞は、眼の近位に、またはこれらの細胞によって生成されたエンドスタチンが被験体の(例えば、肝臓における)血流に最も迅速に入る部位に移植され得る。使用が想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、そして当業者によって決定され得る。
【0061】
遺伝子治療の目的で核酸が導入され得る細胞は、任意の所望の、利用可能な細胞型を包含し、そして以下が挙げられるがこれらに限定されない:上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;血球(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核芽球、顆粒球);種々の幹細胞または前駆細胞(特に、(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られたような)造血幹細胞または造血前駆細胞)。
【0062】
好ましい実施形態では、遺伝子治療に用いられる細胞は、患者に対して自己である。
【0063】
組換え細胞が遺伝子治療に用いられる実施形態では、エンドスタチンをコードする核酸は細胞に導入され、その結果、この核酸は、この細胞またはその子孫によって発現され得、次いで組換え細胞は、治療効果についてインビボで投与される。特定の実施形態では、幹細胞または前駆体細胞が用いられる。単離されてインビトロで維持され得る、任意の幹細胞および/または前駆細胞は、本発明のこの実施形態に従って潜在的に用いられ得る。このような幹細胞としては、造血幹細胞(HSC)、上皮組織(例えば、皮膚および腸の内層)の幹細胞、胚性心臓筋肉細胞、肝臓幹細胞(例えば、WO94/08598を参照のこと)および神経幹細胞が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
上皮幹細胞(ESC)またはケラチノサイトは、皮膚および腸の内層のような組織から、公知の手順によって入手され得る。皮膚のような重層上皮組織では、基底膜に最も近い層である胚層内で幹細胞の有糸分裂によって更新が生じる。腸の内層内の幹細胞は、この組織の迅速な更新速度を提供する。患者またはドナーの皮膚または腸の内層から得られたESCまたはケラチノサイトは、組織培養において増殖され得る。ESCがドナーによって提供される場合、移植片対宿主反応性の抑制のための方法(例えば、照射、中程度の免疫抑制を促進する薬物投与または抗体投与)もまた用いられ得る。
【0065】
造血幹細胞(HSC)に関しては、単離、増殖および維持を提供する任意の技術が本発明のこの実施形態において用いられ得る。これが達成され得る技術としては、以下が挙げられる:(a)将来の宿主(すなわち、ドナー)から単離された骨髄細胞からのHSCの単離およびHSC培養物の確立、または(b)同種異系もしくは異種であり得る、以前に確立された長期HSC培養物の使用。非自己HSCは、好ましくは、詳細の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法に関連して用いられる。本発明の特定の実施形態では、
ヒト骨髄細胞は、針吸引によって後部腸骨稜から入手され得る(例えば、Kodoら,1984,J.Clin.Invest.73:1377−1384を参照のこと)。HSCは、高度に富化され得るかまたは実質的に純粋な形態にされ得る。この富化は、長期培養の前、間または後に達成され得、そして当該分野で公知の任意の技術によって実施され得る。骨髄細胞の長期培養物は、例えば、改変されたDexter細胞培養技術(Dexterら,1977,J.Cell Physiol.91:335)またはWitlock−Witte培養技術(WitlockおよびWitte,1982,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:3608−3612)を用いて確立および維持され得る。
【0066】
本明細書において参照した全ての特許、刊行物(公開された特許出願を含む)ならびにデータベース登録番号および寄託登録番号の全ての開示は、その全体が、あたかも各々のこのような個々の特許、刊行物、ならびにデータベース登録番号および寄託登録番号が具体的かつ個々に参考として援用されると示されたかのように、本明細書中に参考として特に援用される。
【0067】
しかし、本発明の範囲は、上記の特定の実施形態に限定されるべきではないことが理解される。本発明は、特に記載した以外にも実施され得、そして添付の特許請求の範囲の範囲に依然として存在し得る。
【0068】
なおさらなる局面は、網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体における網膜剥離または網膜水腫の処置のための薬の製造におけるエンドスタチンの使用に関し、ここで、このエンドスタチンは、特に、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、またはこのエンドスタチンは、この開示全体を通して定義され、そして記載される。
【実施例】
【0069】
(実施例1:アデノウイルスベクターの作製:方法1)
マウスエンドスタチン(mEndo)cDNAを、プライマー5’−ACT GGT GAC GCG GCC CAT ACT CAT CAG GAC TTT CAG CC−3’(配列番号6)および5’−AAG GGC TAT CGA TCT AGC TGG CAG AGG CCT AT−3’(配列番号7)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、Genome Systems(St.Louis,MO)からのマウスXVIII型コラーゲンクローンID 748987から増幅する(598bpのF1フラグメント)。このマウス免疫グロブリンk鎖リーダー配列(Ig−kリーダー)を、プライマー5’−CAC TGC TTA CTG GCT TAT CG−3’(配列番号8)および5’−CTG ATG AGT ATG GGC CGC GTC ACC AGT GG−3’(配列番号9)(147bpのF2フラグメント)を用いてpSecTag2(InVitrogen,Carlsbad,CA)からPCR増幅する。PCRを、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて、以下の条件下で35サイクル実施する:95℃のホットスタートを3分間、95℃の変性を1分間、55℃のアニーリングを1分間、および72℃の伸長を2分間。これらのDNAフラグメントをゲル精製する。sig−mEndoキメラDNA(718bp)を、上記で作製したF1 DNAフラグメントおよびF2 DNAフラグメントを、マウスIg−kリーダー配列およびマウスエンドスタチンcDNAをアセンブリするためのテンプレートとして用いて、PCRスプライスオーバーラップ伸長によって生成する。PCRを、プライマー5’−CAC TGC TTA CTG GCT TAT CG−3’(配列番号8)および5’−AAG GGC TAT CGA TCT AGC TGG CAG AGG CCT AT−3’(配列番号10)を用い、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて実施する。PCRを、以下の条件下で35サイクル行う:95℃のホットスタートを3分間、95℃の変性を1分間、60℃のアニーリングを1分間、および72℃の伸長を2分間。
【0070】
pAvmEndoLxrアデノウイルスシャトルプラスミドを、718−bpのsig−mEndoキメラDNAを、アデノウイルスシャトルプラスミドpAvF9lxrのNhel−Clal部位に挿入することによって構築する。Nhel−Clal部位は、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターの下流にあり、シミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナルの上流にある。AscIおよびNhe1で消化されたシミアンサイトメガロウイルス(sCMV)プロモーターフラグメントで、pAvmEndoLxc中のRSVプロモーターを置換する。これは、他の点では、pAvmEndoLxrと同一である。両方のシャトルプラスミドは、Cre/lox媒介組換えのためのLoxP部位を含む。pAvmEndoLxrアデノウイルスプラスミドおよびpAvmEndoLxcアデノウイルスプラスミドにおける導入遺伝子の配列は、直接的配列決定分析によって確認される。
【0071】
sig−mEndoキメラをコードする組換えAv3mEndo(E1、E2aおよびE3が欠失している)を、2つのプラスミドpSQ3およびpAvmEndoLxrのCre/lox媒介組換えによって作製する。pSQ3プラスミドは、loxP部位、続いてAv3ゲノムを含み、左末端の逆方向反復配列(ITR)からE1aの末端までの領域が欠失している。pAvmEndoLxrおよびpSQ3を、それぞれ、NotI制限酵素およびClaI制限酵素によって最初に線状化する。一過性トランスフェクションを、リン酸カルシウム哺乳動物トランスフェクション系(Promega,Madison,WI)を用いて、293細胞(6ウェルプレートの1ウェルあたり4×10細胞)を用いて実施する。リン酸化ルシム−DNA沈澱を、4.8mgの線状化pAvmEndoLxr、12mgの線状化pSQ3、6mgのpcmvCre、および6mgのpcmvE2aを、合計体積1.8mlにおいて調製する。0.6mlのリン酸カルシウム−DNA沈澱を各ウェルに添加する。293細胞を、リン酸カルシウム−DNA沈澱とともに37℃にて16時間インキュベートする。この沈澱を除去し、そして細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で線状する。トランスフェクションの15日後、細胞変性効果(CPE)を観察する。次いで、これらの細胞および培地を、掻き取りによって収集する。粗製ウイルス溶解産物を、5サイクルの凍結および解凍によって調製する。
【0072】
このAv3mEndoベクターを、CPEが観察されるまで、5% FBSを含むRichter CM中で0.3mMデキサメタゾンを用いてS8細胞中で再増幅する。アデノウイルスベクター力価(1ミリリットルあたりの粒子)および生物学的力価(1ミリリットルあたりのプラーク形成単位[PFU])を、記載の通りに決定する(Mitterederら,1996)。CMVプロモーターによって駆動される、sig−mEndoを含む組換えAv3CsmEndoを、pSQ3およびpAvmEndoLxcのCre/lox媒介組換えによって同じ様式で作製する。精製されたAv3mEndo、Av3CsmEndo、およびコントロールAv3Nullの適切なゲノム構造を、制限消化およびサザンブロット分析によって確認する。Av3mEndoおよびAv3CsmEndoシードロットを、複製能力のあるアデノウイルス(RCA)についてネガティブであることを確認する。
【0073】
Av3mEndo形質転換S8細胞からの上清は、エンドスタチンの推定サイズである20kDaのタンパク質を含み、これは、HUVEC細胞のVEGF165誘導性移動を強力に阻害し、そしてELISAは、10個のAv3mEndo形質導入Hep3B細胞が、24時間あたり1〜2μgのマウスエンドスタチンを分泌することを実証した。
【0074】
(アデノウイルスベクターの作製:方法2)
マウスcDNAを、急速凍結した2週齡のC57BU6マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)の肝臓からRNAを単離(RNeasy Miniキット;Qiagen,Valencia,CA)し、そしてモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(Life Technologies,Inc.,Gaithersburg,MD)によって処理することによって入手する。マウスエンドスタチン遺伝子を、センスプライマー5’−GATCTCTAGACCACCATGCATACTCATCAGGACTT−3’(配列番号11)およびアンチセンスプライマー5’−ACTGGAGAAAGAGGTTTATCTAGCTACTAG−3’(配列番号12)を用いたPCRによってTAクローニングベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)中にクローニングする。18アミノ酸のE3/19Kシグナル配列MRYMILGLLALAAVCSAA(配列番号13)を、センスプライマー5’−GATCTCTAGACCACCATGAGGTACATGATTTTAGGCTTGCTCGCCCTTGCGGCAGTCTGCAGCGCGGCCCATACTCATACTCATCAGGACTTTCAG−3’(配列番号14)およびアンチセンスプライマー(上記の通り)を用いたPCRによってエンドスタチン配列から上流に挿入する。プラスミドDNAをDH5細胞(Life Technologies)中で増幅し、そしてシグナル配列−マウスエンドスタチン(ss−mEndo)配列を確認する(ABI Prism310自動シークエンサー;PE Applied Biosystems,Foster City,CA)。
【0075】
このss−mEndo構築物をEcoRIで消化し、そしてアデノウイルスシャトルプラスミドpAd/CMV.1のマルチプルクローニングサイトへの平滑末端連結によってクローニングする。得られたプラスミドを5型E1 A/B欠損Ad2と組換え、そしてこれを用いて293細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VA)に感染させる。プラークDNAを、プロテイナーゼK消化、フェノール抽出およびエタノール沈澱を用いて抽出し、そしてPCRによってss−mEndoについてスクリーニングする。得られたウイルスAd−ss−mEndoを、293細胞中で増幅する。類似のストラテジーを用いて、β−galについての遺伝子を含むコントロールの組換えウイルス(Ad−f3−gal)およびホタルルシフェラーゼについての遺伝子を含むコントロールの組換えウイルス(Ad−luc)を作製する。ウイルスを、293細胞において標準的なプラーク形成アッセイを用いて力価測定する。細胞を、10% FCS、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、50μg/mlゲンタマイシン、0.5μg/ml Fungizone、および4mMグルタミン(Biofluids,Rockville,MD)を含むDMEMからなる完全培地中で増殖させる。細胞を、Ad−ss−mEndo、Ad−lucまたはウイルスなしで0.1〜100の範囲のMOI(1.0mlの完全培地中10細胞あたり10〜10pfu)で感染させ、そして37℃にて24時間インキュベートする。上清を2×gにて5分間遠心分離し、そして競合EIA(Cytimmune Sciences,College Park,MD)を製造業者の指示に従って用いて、エンドスタチンについてアッセイする。293細胞の上清をセルロースカラム(Centricon YM−10;Millipore,Bedford,MA)において10倍濃縮し、そして570ng/mlのウサギ抗マウスエンドスタチンポリクローナルIgG抗体(Cytimmune Sciencesから贈与された)を用いたウェスタンブロッティング(NuPAGE;Novex,San Diego,CA)によって分析する。EIAマウスエンドスタチン標準をポジティブコントロールとして用いる。このマウス結腸腺癌細胞株MC38(Surgery Branch,National Cancer Instituteにおいて開発された)のアデノウイルス感染に対する感受性を、上記の通り細胞をAd−β−galに感染させ、そして染色キット(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)を用いて24時間後にβ−galについてアッセイすることにより試験する。マウス肝細胞株NMuLi(American Type Culture Collection)のAd−β−gal感染に対する感受性を、ポジティブコントロールとして用いる。
【0076】
(アデノウイルスベクターの作製:方法3)
BALB/cマウス由来の肝臓組織をホモジネートし、そして総RNAを抽出する(RNeasyキット;Qiagen,Chatsworth,CA)。第1鎖cDNAを、オリゴ(dT)プライマー(SuperScriptII;Life Technologies,Grand Island,NY)を用いた逆転写−PCRによって増幅する。全長マウスエンドスタチンcDNAを、pBluescript(Stratagene)へのサブクローニングのために、PCR(ClaIリンカーを有するセンスプライマー:5’−ATCGATCATACTCATCAGGACTTTCAGCC−3’(配列番号15);NotIリンカーを有するアンチセンスプライマー:5’−GCGGCCGCCTATTTGGAGAAAGAGGTCAT−3’(配列番号16))によって増幅する。ラットインスリンリーダー配列をコードする合成オリゴヌクレオチドを、エンドスタチン遺伝子の前にクローニングする。配列を確認した後、このラットインスリンリーダー−エンドスタチンcDNAを、Bautista,D.S.ら(1991)Virology 182,578−596によって記載される通り、組換えアデノウイルスのレスキューのために組換えアデノウイルス(ADV)シャトルベクターpADV.hEF1−α(ヒト伸長因子1−α)中にクローングする。ウイルス粒子を吸収(A260)によって測定し、そしてプラーク形成単位を、293細胞において標準的なアガロース重層プラークアッセイによって決定する。ADV.hVEGF165の構築のためのこのcDNAを、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)から単離したRNAの逆転写PCRによって入手する。JC細胞株およびLLC細胞株を、American Type Culture Collectionから入手する。細胞をRPMI培地1640(JC)およびDMEM(LLC)中で培養する。全ての培地に、10% FBS、0.2mMグルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充する。HUVECを、室温にて20分間のIV型コラゲナーゼ(Sigma)灌流(ハンクス平衡塩溶液中0.2%)によって臍帯から単離する。次いで、細胞を、20% FBS、0.2mMグルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および1ng/ml bFGFを補充したM199培地中で、コラーゲン(PBS中1%)でコーティングしたプレートで培養する。
【0077】
(実施例2:マウスへの遺伝子移入およびCNVの誘導)
ウイルスベクターを、成体C57BU6マウスの尾静脈に注射する。マウスに、Av3mEndo(n=18)もしくはAv3mNull(n=17)のいずれかを2×1011個の粒子、またはAv3CsmEndoもしくはAv3CsNullのいずれかを6×1010個の粒子を注射する。ウイルスベクター注射の4日後、これらのマウスに塩酸ケタミン(100mg/kg体重)を麻酔し、1%トロピカミドで瞳孔を拡大させ、そしてクリプトンレーザー光凝固を用いて、TobeらAm.J.Pathol.153,1641−1646(1998)によって以前に記載された通りに各マウスの各々の眼の3箇所でブルッフ膜を破断させる。手短に述べると、クリプトンレーザー光凝固(100μmのスポットサイズ、0.1秒間の持続時間、120mW)を、Coherent Model 920 Photocoagulatorの細隙灯送達系およびコンタクトレンズとして携帯型カバースライドを用いて送達する。熱傷を、視神経から2〜3ディスク直径にて、9時、12時および3時の位置において行う。ブルッフ膜の破断を示す、レーザーの際の気化泡の生成は、CNVを得る際に重要な因子であり、それゆえ、泡が生成された熱傷のみをこの研究に含める。泡は、Av3mEndoを注射したマウスにおける1つの熱傷、およびAv3mNullを注射したマウスにおける3つの熱傷については生成されない。Av3mEndoを注射したマウスの1つの眼の角膜は、角膜瘢痕を有し、このことが、レーザーの使用を妨げ、それゆえ、この眼を使用しない。
【0078】
(実施例3:レーザー誘発性CNV損傷のサイズ測定)
レーザー処置の2週間後、CNV損傷のサイズを、2つの異なる技術(Seoら,Amer.J.Pathol.154,1743−1753(1999)によって以前に報告された通りの連続切片についてのCNVの積分面積測定値またはEdelmanら,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.41,S834(2000)によって記載される通りの脈絡膜の平坦な積載のCNVの面積測定値)のうちの1つによって評価する。Av3mEndoを注射したマウスについては、10匹のマウスを、平坦積載技術によって評価し、そして8匹を連続切片によって評価し、そしてAv3mNullを注射したマウスについては、10匹のマウスを平坦積載技術によって評価し、そして7匹を連続切片によって評価する。
【0079】
平坦積載技術について使用するマウスを麻酔し、そしてTobeら,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.39,180−8(1998)によって以前に記載された通り、50mg/mlのフルオレセイン標識デキストラン(平均分子量2×10、Sigma,St.Louis,MO)を含む1mlのリン酸緩衝化生理食塩水で灌流する。眼を取り出し、そして10%リン酸緩衝化ホルマリン中で1時間固定する。角膜および水晶体を取り出し、そして網膜全体をアイカップから注意深く切開する。半径方向の切片(4〜7枚、平均5枚)を、このアイカップの縁部から赤道に向かって作製し、そしてこのアイカップを、強膜が下向きになり、脈絡膜が上向きになるようにAquamountに平坦に積載する。平坦積載物を蛍光顕微鏡によって検鏡し、そして3CCDカラービデオカメラおよびフレームグラッバーを用いて画像をディジタル化する。Image−Pro Plusを用いて、線維血管(fibrovascular)瘢痕の合計に対応する、各熱傷に関連した超蛍光の面積の合計を測定する。
【0080】
Av3mEndoを注射したマウスについては、合計19個の眼を評価(1つの眼は、レーザー処置を不可能にする既存の角膜瘢痕を有した)し、泡に関連していない1つの熱傷が存在し、それゆえ、56の損傷を測定する。Av3mNullを注射したマウスについては、合計20個の眼を評価し、そして泡に関連していない3つの熱傷が存在するので、57個の損傷を測定する。各眼内の面積を平均化し、そして対数変換後、一般化評価式(GEE)を用いた後退分析を実施する。この分析は、各マウスの右眼と左眼との間の補正を調整する。
【0081】
連続切片のCNVの積分面積を測定するために用いられるマウスを、レーザー処置の2週間後に屠殺し、そして眼を迅速に取り出し、そして最適な切断温度の包埋化合物(OCT;Miles Diagnostics,Elkhart,IN)中で凍結する。凍結した連続切片(10μm)を、各熱傷の全範囲を通して切断し、そして脈管細胞に選択的に結合するビオチン化griffonia simplicifoliaレクチンB4 (GSA,Vector Laboratories,Burlingame,CA)で組織化学的に染色する。スライドを、メタノール/H中で10分間、4℃にてインキュベートし、0.05M Tris緩衝化生理食塩水(pH7.6)(TBS)で洗浄し、そして10%正常ブタ血清中で30分間インキュベートする。スライドを、ビオチン化GSAとともに室温にて2時間インキュベートし、そして0.05M TBSでリンスした後、これらを、ペルオキシダーゼにカップリングしたアビジン(Vector Laboratories)とともに室温にて45分間インキュベートする。0.05M TBSで10分間洗浄した後、スライドを、Histomark Red(Kirkegaard and Perry)とともにインキュベートして、メラニンと区別できない赤色反応生成物を得た。いくつかのスライドをContrast Blue(Kirkegaard and Perry)で対比染色する。
【0082】
定量的評価を行うために、GSA染色した切片をAxioskop顕微鏡で検鏡し、そして3 CCDカラービデオカメラおよびフレームグラッパーを用いて画像をディジタル化する。Image−Pro Plusソフトウェアを用いて、網膜下腔中のGSA染色血管の面積を描写および測定する。各損傷について、面積の測定を、全ての切片について行い、この切片には損傷のいくつかが現れ、そして一緒に添加されて、積分面積測定値が得られる。各眼内の測定値を平均化し、そしてGEEを用いて後退分析を行う。
【0083】
最初の実験では、ブルッフ膜のレーザー誘発性破損部位でのCNV量を、Av3mEndoを注射したマウスおよびAv3mNullを注射したマウスにおいて比較する。CNVの量を、2つの異なる技術(脈絡膜平坦積載物についてフルオレセイン標識デキストランによって灌流されたCNV面積の測定および損傷全体を通しての連続切片についてのCNV面積の測定)によって評価する。脈絡膜平坦積載物におけるレーザー誘発性CNVの面積は、未注射のマウスまたはAv3Nullを注射したマウスと比較して、Av3mEndoを注射したマウスにおいて少ないようである。視覚的比較によって見られる相違を、処置群に関してマスクされた調査者によって行われる画像解析によって確認する。この画像解析は、Av3mEndoを注射したマウスにおいて、Av3Nullを注射したコントロールにおける平均面積よりも有意に小さい、灌流されたCNV損傷の平均面積を示した(表1)。
【0084】
【表1】

CNV損傷を通しての連続切片はまた、Av3mEndoを注射したマウスにおける、Av3Nullを注射したマウスと比較して、より小さな損傷を示した。3次元でのサイズを評価する、各連続切片についてCNV面積と一緒に添加することにより得られるCNVの積分面積により、Av3mEndoを注射したマウスにおいて、Av3Null注射マウスと比較して有意に少ないCNVがブルッフ膜破損部位に存在することが確認された(表1)。両方の測定技術は非常に類似の情報を提供するので、脈絡膜平坦積載物のみが、次の実験で用いられる。
【0085】
エンドスタチン血清レベルと、CNVの面積との間には、逆の相関が存在する。エンドスタチンの血清レベルは、ベクターの静脈内注射の4〜7日後に最適である。一群のマウスに、Av3mEndo、Av3CsmEndo、Av3Null、またはAv3CsNullを注射する。レーザー処置を4日目に行い、そして血清を注射の7日後に得る。調査者にはベクター群およびエンドスタチン血清に関してマスクした状態で、CNVのレベルを、レーザー光凝固の14日後に脈絡膜平坦積載物について測定する。Av3CsmEndoを注射したマウスは、未注射のマウスまたはAv3CsNullを注射したマウスよりも少ないCNVを有するようである。画像解析により、CNV損傷の面積が、Av3CsmEndoまたはAv3mEndoのいずれかを注射したマウスにおいて、コントロールと比較して有意に小さいことを確認する(表2)。
【0086】
【表2】

各マウスにおけるエンドスタチン血清レベルに対してCNV損傷の平均面積をプロットすることにより、r=−0.66という強い逆の相関が示される。
【0087】
(実施例4:眼および肝臓におけるエンドスタチンの発現分析)
アデノウイルスベクターの全身投与が眼の有意な形質導入をもたらすか否かを決定するために、一群のマウスにAv3nBgを注射する。このベクターは、RSVプロモーターからβ−ガラクトシダーゼを発現する。5日後、これらのマウスを屠殺し、そしてβ−ガラクトシダーゼ活性を、化学発光アッセイを用いて眼および肝臓のホモジネートにおいて測定する。肝臓および眼を、マウスからの取り出し後、急速凍結する。アッセイの当日に、肝臓または眼を溶解緩衝液(40:1 v/v 1× Reporter Lysis Buffer(Promega,Madison Wl):Protease Inhibitor Cocktail(Sigma,St Louis MO))中でホモジネートする。タンパク質含有量を、Bradford Assay(Biorad,Hercules CA)によって決定する。β−ガラクトシダーゼ活性を、Galacto−Light系(Tropix,Bedford MA)を用いて決定する。
【0088】
ベクターを受けたマウスの肝臓において、β−ガラクトシダーゼ活性のレベルは、未注射のコントロールよりも約1000倍高く、一方、眼では、この酵素活性のレベルは、ベクターを注射した動物とコントロール動物との間で同様である。この酵素を発現するアデノウイルスの投与後に、検出可能なβ−ガラクトシダーゼ活性が眼に存在しないことは、エンドスタチンベクターの脈管内注射後の抗血管新生効果が、局所産生されたエンドスタチンというよりも、全身で産生されたエンドスタチンに起因することを示唆する。
【0089】
(実施例5:Av3mEndoを注射したマウスと、Av3CsmEndoを注射したマウスとの比較)
マウスに、Av3mEndo(n=10)もしくはAv3mNull(n=9)を2×10粒子、尾静脈に注射するか、またはこれらにAv3CsmEndo(n=11)もしくはAv3CsmNull(n=11)を6×1010粒子注射する。注射なしのコントロール群(n=11)もまた含める。注射の4日後、ブルッフ膜を、各々のマウスの各眼において3箇所、レーザーで破断する。注射の7日後、血液を各マウスの尾静脈から採血し、そして血清を、ELISAのために−80℃にて保存する。注射の18日後およびレーザーの14日後、CNVの面積を、脈絡膜平坦積載物について上記の通り評価する。
【0090】
エンドスタチン血清レベルを、マウスエンドスタチン酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(ACCUCYTEマウスエンドスタチン:Cytlmmune Sciences,College Park,MD)を製造業者の指示に従って用いて決定する。
【0091】
第2のベクター構築物Av3CsmEndoの特徴付けは、その脈管内注射が、Av3mEndo粒子の最大耐性用量(2×1011pfu)を注射したマウスにおけるレベルと比較して約10倍高い最大エンドスタチンレベルをもたらすことを実証した。エンドスタチンの血清レベルは、Av3mEndoを注射したマウスおよびAv3CsmEndoを注射したマウスにおいて、注射をしないかまたはヌルのベクター注射をしたコントロールにおいてよりも有意に高い。マウスにおけるエンドスタチンの規定レベルは、血清1mlあたり約30〜150ngであることが見出される。
【0092】
従って、sig−mEndo発現がラウス肉腫ウイルスプロモーターによって駆動される構築物を注射するマウスは、エンドスタチンの中程度に高い血清レベルおよびヌルウイルスを注射したマウスよりも有意により低いCNV損傷を、ブルッフ膜のレーザー誘発性破損の部位に有する。sig−mEndoがシミアンサイトメガロウイルスプロモーターによって駆動される構築物を注射したマウスは、ほぼ10倍高いエンドスタチン血清レベルを有し、そして有意に低いCNVを有し、ほぼ完全に阻害される。
【0093】
(実施例6:ヒトエンドスタチンをコードする組換えアデノウイルスベクターの作製)
ヒトエンドスタチンcDNAを、ヒトα1(XVIII)コラーゲンのcDNAからPCR増幅する。ヒト肝臓cDNAを、ヒト肝臓ポルA RNA(Clonetech,Palo Alto,CA)から、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって作製する。逆転写を、プライマー5’−TTT TTT TTT CAG TGT AAA AGG TC−3’(配列番号17)を用い、Perkin Elmer RT−PCRキット(Perkin Elmer Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、以下の条件で1サイクル実施する:室温にて10分間、42℃で逆転写を3分間、99℃で変性を5分間、5℃での冷却を5分間、そしてcDNAをエタノール沈殿して再懸濁するまでは、4℃で保つ。790bpのヒトエンドスタチンcDNAフラグメントを、プライマー5’−CAG ATG ACA TCC TGG CCA G−3’(配列番号18)および5’−CTA TAC AGG AAA GTA TGG CAG C−3’(配列番号19)を用いて、この調製されたcDNAからPCR増幅する。PCRを以下の条件で35サイクル実施する:95℃でのホットスタートを3分間、80℃にて3分間、続いてPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene,La Jolla,CA)の添加、95℃での変性を1分間、55℃でのアニーリングを1分間、および72℃での伸長を3分間。790bpのヒトエンドスタチンcDNAフラグメントをゲル精製し、そして58℃のアニーリング温度であること以外は記載の通りに再度増幅する。790bpのヒトエンドスタチンcDNAフラグメントをゲル精製し、そしてPCR−Script Cloning Kits(Stratagene)を製造業者の手順に従って用いてPCR−Script Amp SK+中にクローニングして、pcrhendIを作製する。pcrhendIプラスミドのヒトエンドスタチンcDNA領域を、Genetic Therapy,Inc.Gaithersburg,MDにおけるGene Therapy Core Technologies Molecular Core Laboratoryによって直接的配列決定分析を用いて確認する。
【0094】
ヒトエンドスタチンcDNAフラグメントを、以下の手順に従ってヒトBM40基礎タンパク質リーダーを用いてアセンブリする。BM40基礎タンパク質リーダーを、2片の合成オリゴヌクレオチド5’−GCC AAG CTT CCA TGA GGG CCT GGA TCT TCT TTC TCC TTT GCC TGG CCG GGA GGG CTC TGG CAG CCC CTC AGC AAG AAG CGC TCG CTC ACA GCC ACC GCG ACT TCC AGC CGG TGC TCC A−3’(センス)(配列番号20)および5’−CCA GGT GGA GCA CCG GCT GGA AGT CGC GGT GGC TGT GAG CGA GCG CTT CTT GCT GAG GGG CTG CCA GAG CCC TCC CGG CCA GGC AAA GGA GAA AGA AGA TCC AGG CCC TCA TGG AAG CTT GGC−3’(アンチセンス)(配列番号21)をアニーリングし、続いてHindIIIおよびSex A1で消化することにより作製する。消化したBM40基礎タンパク質リーダーをpcrhend IのHindIII−Sex A1部位に挿入してpBmpcrhenプラスミドを作製する。pBmpcrhenプラスミドのsig−hEndo領域全体を、直接的配列決定分析を用いて確認する。
【0095】
アデノウイルスシャトルプラスミドpAV1bmhend1xを、以下の手順でpAvF9Lxrアデノウイルスシャトルプラスミド中のsig−Endo含有配列での第IX因子(F9)含有配列の置換によって作製する。sig−hEndo配列を含む800bpのフラグメントを、SacI消化、続いてKlenowフィルインおよびSalI消化によってpBmpcrhenから作製する。pAvF9Lxrプラスミドを、BamHI制限酵素を用いて消化し、続いてKlenowフィルインをし、そしてSalI制限酵素で消化して、F9含有配列を除去する。消化されたこれらの2つのフラグメントをゲル精製し、そして連結してpAV1bmhendlxを作製する。
【0096】
ヒトエンドスタチンcDNAを、ヒト肝臓ポリA RNA由来のヒトα1(XVIII)コラーゲンのcDNAのC末端からRT−PCRによって作製する。このヒトBM40基礎タンパク質リーダーを、2片の合成オリゴヌクレオチドから作製する。アニーリングしたヒトBM40基礎タンパク質リーダーをヒトエンドスタチンcDNAの5’にクローニングして、ヒトエンドスタチンタンパク質の分泌のために、sig−hEndoキメラタンパク質を作製する。sig−hEndoキメラDNAを、アデノウイルスシャトルプラスミドpAvF9lxr中にクローニングして、pAV1bmhendlxを作製する(図12A)。sig−hEndoキメラ配列全体を、自己配列決定分析によって確認する。
【0097】
sig−hEndoキメラタンパク質をコードする組換えAv3bmhendlx(E1、E2aおよびE3が欠失している)を、以下の手順に従って「Quick Cre/Lox2プラスミド系」によって作製する。プラスミドpAV1bmhendlxおよびpSQ3を、それぞれ、Not IおよびCla I制限酵素で最初に線状化する。S8細胞を0.3μMデキサメタゾンで24時間前処理し、その後、一過性トランスフェクションを、LipofectAMINE PLUS Reagent(Life Technologies,Rockville,MD)を用いて、1ウェルあたり4×10個のS8細胞において6ウェルプレートで行う。リポフェクトアミン複合体化DNAを、1μgの線状化pSQ3、0.5μg pCre、0.5μgの線状化pAV1bmhendlxおよび6μlのリポフェクトアミン(Life Technologies)製造業者の手順に従って用いて調製する。S8細胞を、リポフェクトアミン複合体化DNAとともに37℃で4.5時間にわたって遺伝子キュベートする。リポフェクトアミン複合体化DNAを除去し、そして細胞をPBSで洗浄(ish)する。トランスフェクトしたS8細胞を、細胞変性効果が観察されるまで、5% COを用い、37℃にて培養する。細胞および培地を掻き取りによって収集する。粗製ウイルス溶解産物を、5サイクルの凍結および解凍によって調製する。Av3bmhendlxを、細胞変性効果が観察されるまで、5% FBS含有Richter CM培地中で0.3μMデキサメタゾンを用いてS8細胞中で再増幅する。
【0098】
Av3bmhendlx媒介ヒトエンドスタチンの発現および分泌を、ベクターを形質導入したS8細胞中で特徴付けする。Av3bmhendlxに感染させた細胞の上清タンパク質、すなわち、ヒトエンドスタチンをSDS−PAGEによって分析する。各20μgの上清タンパク質を、4〜12%の線形勾配事前成形ゲルで分析する。SDS−PAGEをポリフッ化ビニリデン膜に転写する。この膜をクーマシーブルーR−250で染色する。ヒトエンドスタチンの正確なサイズに対応する20kDaのタンパク質バンドを膜ブロットから切り出し、そしてN末端タンパク質配列決定分析に供する。3つの主な分泌タンパク質のタンパク質配列を決定したところ、50%は、ヒトエンドスタチン+さらなるアミノ酸残基APQQEALAのアミノ酸配列(配列番号5)を含み、25%は残基LAを含み、そして25%はヒトBM40基礎タンパク質シグナルペプチド由来の残基を含まない。20kDaのタンパク質は、Av3Null細胞由来の上清タンパク質中に見出されない。この結果は、Av3bmhendlxで形質導入したS8細胞が、ヒトBM40基礎タンパク質シグナルペプチドからヒトエンドスタチンをプロセシングした後にヒトエンドスタチンを発現および分泌することを実証する。
【0099】
(実施例7:BIVベクター媒介抗新脈管形成遺伝子の発現による、インビボでの網膜漏出、網膜肥厚化、網膜剥離、および網膜血管新生の阻害)
eGFPをコードするウシ免疫不全ウイルス(BIV)ベクターを、3成分系(その開示全体が本明細書中に参考として援用される、公開された国際特許出願番号W00144458に記載される)から作製する。移入ベクターBIVエンドスタチンを、Takahashi,K.ら,Hum.Gene Ther.13,1305−1316(2002)に従って、MND U3プロモーターの下でeGFPをコードするBIVに基づく移入ベクター構築物であるpBSV4MGpptGAGから誘導した。このeGFPコード配列を、マウスエンドスタチン(mEndo)で置換した。具体的には、eGFPを親プラスミドpBSV4MGpptGAGから欠失させるために、eGFPおよびいくつかの隣接配列をPCRによって増幅した。用いたプライマーは以下であった:eGFP1FOR5’−GCGCATGTCGACAGAATATGGGCCAAAC−3’(これは、PCR産物の5’末端にSalI部位を組み込む)およびeGFP1REV 5’−GCGCTACTGCAGAGCTAATGAGCTACAC−3’(これは、PCR産物の3’末端にPstI部位を組み込む)。このフラグメントをSalIおよびPstIで切断し、そしてpBSII(KS+)と連結して、pBS2eGFPを作製した。pBSII(KS+)もまた、SalIおよびPstIで予め消化した。ExSite PCR−Based Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene,LaJolla,CA)を用いて、eGFPをpBS2eGFPから欠失させた。eGFP遺伝子の外側の部分に隣接して外側に向き、従ってeGFP以外の隣接配列およびプラスミドの全体を含む全体を増幅するPCRプライマーを設計した。用いたプライマーは以下であった:DELeGFP1FOR:5’−CCGGCTAGCTTAAGGGTGGCGACCGGT−3’(これは、NheI制限部位およびAflII制限部位を付加した)およびDELeGFPIREV:5’−GCTTCGAACGCGTAGCGGCCAACCCTC−3’(これは、BstBI制限部位およびMluI制限部位を付加した)。このアンプリコンを、製造業者の指示に従って処理し、そして連結して、eGFPが欠失しているが、親プラスミド由来の隣接配列が残っているpBS2deleGFPを形成した。このストラテジーはまた、4つの新たな制限部位を中間部に作製した。このフラグメントを配列決定して、変異が導入されていないことを確認した。mEndo遺伝子挿入物をアデノウイルスシャトルプラスミドpAVmEndolxrから、Mori,K.ら,Amer.J.Pathol.159,313−320(2001)に従って調製した。このプラスミドをNheIおよびClaIで消化して、mEndoフラグメントを遊離させた。このフラグメントを、NheIおよびBstBI(ClaIと適合性の末端)で予め消化したpBS2deleGFPと連結して、pBS2deleGFPmEndoを作製した。ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を、MluI部位においてmEndoの下流に挿入して、pBS2deleGFPmEndoPREを作製した。最後に、このプラスミドpBS2deleGFPmEndoPREをBsu36IおよびBbvClによって消化して、mEndoコード配列および元々のeGFP隣接配列を放出し、そしてこのフラグメントを、Bsu36IおよびBbvCIで予め消化したpBS4MGpptGAGと連結して、pBvMNDmEndoPREを作製した。ヌルBIVベクターであるpBvMNDPREもまた作製し、そしてネガティブコントロールベクターとして供した。PBvMNDPREは、mEndoコード配列が存在しないこと以外、pBvMNDmEndPREと同一であった。
【0100】
手短に述べると、mEndoをコードするBIVベクター粒子(BIVエンドスタチン)を作製するために、150mmディッシュ(2×10細胞/ディッシュ)中の293T細胞を、45μgのpBvMNDmEndoPRE、45μgのBIVベースのパッケージング構築物pBIVminipack、および13.5μgのシュードタイピングエンベロープ発現構築物pVSV−Gでトランスフェクトした。BIVヌルベクター(BIVNull)を作製するために、pBvMNDmEndoPREを、pBvMNDPRE構築物で置換した。トランスフェクションの48時間後、このベクターを収集し、そし0.45μmフィルターを通して濾過した。次いで、このベクター上清を、超遠心分離によって濃縮した。この濃縮したベクターをアリコートに分け、そして使用するまで−80℃で保存した。
【0101】
この濃縮したベクターを、ベクター粒子の尺度である逆転写酵素(RT)活性についてアッセイした。BIVエンドスタチンベクターおよびBIVNullベクターの両方は、1mlあたり約15μgのRT活性とスコア付けされた。本発明者らは以前に、eGFPをコードするBIVベースのベクターについて、1ngのRTが、約1×10形質導入単(T.U.)に等しいことを示した。それゆえ、BIVエンドスタチンベクターの評価された力価は、1.5×10T.U./mlであった。このBIVエンドスタチンベクターがmEndoの効率的な産生を媒介し得るか否かを調べるために、6ウェルプレート中のCf2Th細胞(4×10細胞/ウェル)を、1μl(15ngのRT当量ベクター粒子)のBIVNullベクターまたは同じ量のBlVエンドスタチンベクターのいずれかで形質導入した。形質導入の48時間後、細胞上清を、市販のエンドスタチンアッセイキットAccucyteマウスエンドスタチンアッセイ系を製造業者の指示(Cytimmune Sciences Inc.,College Park,MD)に従って用いてエンドスタチン発現についてアッセイした。BIVエンドスタチンベクターで形質導入した細胞は、412ng/mlのエンドスタチンを産生し、一方、BIVNullベクターは、検出可能なレベルのエンドスタチンのスコアが得られなかった。
【0102】
O’Reillyら,Cell;88(2):277−85(1997)に従って調製したマウスエンドスタチンをコードするBIVベクターを、ドキシサイクリンを用いて誘導した際にマウス光受容体細胞由来の脈管内皮増殖因子を発現する、単一のトランスジェニックマウス(IRBP/rtTA−TRE/VEGF tgMICE)の網膜下注射を介して投与する。BIVベクターをマウスの右眼に注射し、一方、ベクターの注射を伴わずに左眼をコントロールとして供する。ベクター注射の3週間後、0.5mg/mlのドキシサイクリンを、トランスジェニックマウスについて飲料水中に配置する。フルオレセイン血管造影図の検査によって、ドキシサイクリン誘発性VEGF発現が、トランスジェニックマウスの左眼において重篤な血管新生をもたらすことが見出される。VEGF誘発性血管新生は、同じ動物の右眼において、BIVベクター媒介エンドスタチン発現によって完全にブロックされる。
【0103】
1.5×10形質導入単位(TU)のBIVエンドスタチンの網膜下注射を右眼に与え、そして1.5×10TUのBIVNullを左眼に与え、ベクター注射の4週間後に安楽死させた成体C57BU6マウス由来の免疫組織化学的に染色した眼の凍結切片は、BIVエンドスタチンを注射した眼が、RPE細胞においてエンドスタチンについて重度の染色を示し、いくつかの血管壁の内部核層全体が濃く染色されることを示した。内部網状層中の線形に染色された構造体は、ミューラー細胞突起の典型である。BIVNullを注射した眼は、内部の境界膜およびブルッフ膜に沿って反応産物を示した(これは、コラーゲンXVIIIとの交差反応性に起因するようである)。
【0104】
1.5×10形質導入単位(TU)のBIVエンドスタチンの網膜下注射を右眼に与え、そして1.5×10TUのBIVNullを左眼に与え、そしてベクター注射の4週間後にその飲料水中2mg/mlのドキシサイクリンを開始した成体二重トランスジェニックrho/rtTA−TRE/VEGFマウスを、3日間のドキシサイクリン後に[3H]マンニトールを用いて網膜脈管透過性についてアッセイした。網膜対肺(RLLR)は、ヌルベクターを注射した同様の眼と比較して、エンドスタチンを発現する眼では有意に低下する。このことは、2つの異なるベクター系のいずれかを用いてのエンドスタチンの発現が、網膜におけるVEGF誘発性脈管透過性の抑制をもたらすことを示す。
【0105】
右眼に1.5×10TUのBIVエンドスタチンの網膜下注射を与え、そして左眼に1.5×10TUのBIVNullを与え、そしてベクター注射の4週間後にそれらの飲料水中での0.5mg/mlのドキシサイクリンを開始した成体rho/rtTA−TRE/VEGFマウスを、ドキシサイクリン開始の4日後にフルオレセイン血管造影法に供する。BIVエンドスタチンを注射したマウスは、別個の壁を有する、正常に見える網膜結果を示し、このことは、BIVエンドスタチンを注射した眼においてフルオレセインの浸透がほとんどまたは全くないことを示す。一方、BIVNullを注射した眼は、網膜全体に拡散した蛍光を示す。このことは、フルオレセインの多量の血管外遊出を示す。ドキシサイクリンの開始7日後に、BIVNullを注射した眼における大量の漏出と比較して、BIVエンドスタチンを注射した眼においてフルオレセイン漏出の証拠は依然としてほとんど存在しない。網膜脈管透過性が増大した場合、流体は、網膜中に集まり、網膜の肥厚化をもたらす。黄斑における肥厚化は、黄斑水腫と呼ばれ、そして異常な肥厚化と視力との間には逆の相関が存在する。従って、網膜肥厚化は、評価するために生理学的に適切な変数であり、インビボでの画像化技術(例えば、光学コヒーレンス断層撮影法(OCT)または網膜の厚さの分析(RTA))を用いて、それ自体を正確な定量とする。VEGF発現を誘導する飲料水中での0.5mg/mlのドキシサイクリンの開始の7日後に、BIVエンドスタチンを注射した眼の凍結切片は、BIVNullを注射した眼よりも程度の低い肥厚化を示す。8匹のrho/rtTA−TRE/VEGFマウスを用いて、VEGF誘発性網膜厚さに対するエンドスタチンの効果を定量的に評価する。右眼での1.5×10TUのBIVエンドスタチンおよび左眼での1.5×10TUのBIVNullの網膜下注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中の0.5mg/mlドキシサイクリンについて開始した。ドキシサイクリンを開始してから7日後、網膜の厚さを、水平子午線に沿った視神経の各縁部から300μmでの画像解析によって測定し、そして平均化して、各眼について単一の実験値を得る。平均網膜厚さは、BIVエンドスタチンを注射した眼においてよりも、BIVNullを注射した眼において有意に厚い。
【0106】
右眼での1.5×10TUのBIVエンドスタチンおよび左眼での1.5×10TUのBIVNullの網膜下注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中での0.5mg/mlのドキシサイクリンについて開始する。ドキシサイクリンを開始してから7日後、網膜血管新生の量は、BIVエンドスタチンを注射した眼と比較して、BIVNullを注射した眼において顕著に多い。
【0107】
rho/rtTA−TRE/VEGFマウスにそれらの飲料水中に2mg/mlのドキシサイクリンを5日以上与えた場合、これらは、高レベルのVEGFを発現し、そして重篤な血管新生および網膜剥離を発症する。11匹のrho/rtTA−TRE/VEGFマウスを用いて、高レベルの網膜VEGFからもたらされるそれらの重篤な表現型に対するBIVベクター化エンドスタチンの効果を評価する。右眼における1.5×10TUのBIVエンドスタチンおよび左眼における1.5×10TUのBIVNullの網膜下注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中での2mg/mlのドキシサイクリンについて開始する。ドキシサイクリンを開始してから7日後、マウスを安楽死させる。そして眼を2%パラホルムアルデヒド中で固定した。肉眼により病理学的検査の後、これらをOCT中で凍結し、そして切片にする。連続切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。ベクター群に関してマスクした観察者が、各眼が全体的網膜剥離を有するか、部分的網膜剥離を有するか、または網膜剥離を有さないかを決定する。BIVエンドスタチンを注射した眼においては、BIVNullを注射した眼よりも有意に少ない全体的網膜剥離が存在する。ほんの1つのBIVNullを注射した眼と比較して、BIVエンドスタチンを注射した4つの眼は、網膜剥離を有さない。
【0108】
(実施例8:眼内注射)
アデノウイルスベクターを用いた研究のために、成体マウスに、一方の眼にはAGVC7mEndoおよびAGVas521の1:1混合物を6×10粒子、他方の眼にはAGVnullを6×10粒子、網膜下注射によって与えた。レンチウイルスベクターを用いた研究については、これらのマウスは、5×10形質導入単位(TU)のBIVエンドスタチンを一方の眼に、そして5×10TUのBIVNullを他方の眼に受け取った。引っ張ったガラスマイクロピペットを、足踏みスイッチを踏んだ際に1μlのビヒクルを送達するために較正した。解剖顕微鏡における集光レンズ系(condensing lens system)およびコンタクトレンズを用いて注射を行った。このことは、注射の間の網膜の可視化を可能にした。これらのマウスを麻酔し、瞳孔を拡大させ、そして解剖顕微鏡下で、マイクロピペットの尖らせた先端を、縁部の前の強膜を通して通過させ、そして網膜のすぐ上に配置した。足踏みスイッチを踏むことにより、注射流体のジェットを網膜に浸透させた。この技術は非常に無外傷性であり、直接的可視化は、小さな網膜剥離(小水胞)の出現により、この注射が成功したかの確認を可能にする。この小水胞は、サイズが極めて均一であり、そして網膜の半分よりわずかに少なく含まれていた。
【0109】
(実施例9:眼における、gutlessアデノウイルスベクター媒介性の調節されたエンドスタチン発現)
アデノウイルスベクター送達系を用いたインビボでのエンドスタチンの調節された発現を、Xuら,Molecular Therapy;3:262(2001)によって記載された方法に従って達成する。タモキシフェン誘導性キメラ転写因子をコードするAGVベクターであるAGVas521および調節性エンドスタチン導入遺伝子をコードするAGVベクターであるAGVC7mEndoを、それぞれ、プラスミドpAGVas521およびpAGVC7mEndoから作製した。導入遺伝子発現カセット(以下を参照のこと)に加え、AGVプラスミドは、独特のPacI部位が隣接した左および右のITR(Ad5のパッケージングシグナル)およびReddy,P.S.ら,Molec.Ther.5,63−73(2002)による約25kbのヒトαシヌクレイン(synuclein)イントロン領域をDNA「スタッファー(stuffer)」として含む。プラスミドpAGVas521は、独特のジンクフィンガーDNA結合ドメイン、ヒトエストロゲンレセプターに基づく改変されたリガンド結合ドメイン、およびVP16由来のトランス活性化領域から構成され、CMVプロモーターによって駆動される、タモキシフェン誘導性キメラ転写因子を含む。pAGVas521を構築するために、キメラ転写因子発現カセットを、NruIおよびBamHIを用いた消化によってpAvCv−C7LBDから単離し、そしてpBLSV2中に挿入した。このプラスミドpBLSV2を、pBluescript(Strategene,La Jolla,CA)から誘導した。このプラスミドpBLSV2は、2つのマルチプルクローニングサイトポリリンカーを含む。得られたプラスミドpBLSV2as521をBspeIで消化し、そしてXmaIで消化したpGTI.24aPL2に連結して、pGTI24as521を作製した。pGTI24aPL2は、ヒトシヌクレインスタッファーDNAが隣接したマルチプルクローニング部位ポリリンカーを含む。次にpGTI24as521をPacIで消化して、プラスミド骨格を遊離させ、そしてPmeI−MluIで消化したpBV2と組み合わせ、Toietta,G.ら,Mol.Ther.5,204−210(2002)に従ってBJ5138 E.coliにおける相同組換えを用いて、pAGVas521を作製した。プラスミドpBV2は、26625bpのヒトシヌクレインスタッファーDNAを含む。
【0110】
プラスミドpAGVC7mEndoは、マウスエンドスタチンの発現を駆動する、リガンド誘導性転写因子調節性プロモーターを含む。pAGVC7mEndoを構築するために、プラスミドpav−6X2C7tatamendoをAscI(平滑化)およびBamHIで消化し、そしてpBLSV2C7endo中に挿入した。プラスミドpBLSV2C7endoをBamHIおよびEcoRIで消化し、末端をフィルインし、そしてSmaIで消化したpGT1245.aPL2に連結して、pGTI24C7endoを作製した。最終的に、pGTI245.aPL2をPacIで消化してプラスミド骨格を遊離させ、そしてPmeIおよびMluIで消化したpBV4と組み合わせ、Toietta,前出によるBJ5138 E.coliにおける相同組換えを用いて、pAGVC7mEndoを作製した。プラスミドpBV4は、27191bpのヒトシヌクレインスタッファーDNAを含む。
【0111】
gutlessベクター作製および大規模産生および大規模精製を、Reddyらによって記載された通りに実施した。粒子の力価を、光学密度測定によって決定した。CsCl精製ベクターから抽出したDNAを、制限酵素消化によって分析して、ベクターの完全性を確認した。ヘキソンに基づく定量的PCRアッセイを用いて、AGV調製物におけるヘルパーウイルス夾雑のレベルを決定した。本研究で用いたAGVNull調製物、AGVas521調製物、およびAGVC7mEndo調製物のヘルパー夾雑レベルは、それぞれ、0.09%、1.9%、および1.4%であった。
【0112】
このタモキシフェン誘導性系は、誘導性転写因子または調節性エンドスタチン導入遺伝子のいずれかをコードする初期世代のE1/E2a/E3欠損ベクターの全身投与後に、C57BU6マウスの血清において、高レベルの誘導性エンドスタチン発現を示す。
【0113】
この調節系は、誘導性転写因子と、マウスエンドスタチンの発現を駆動する応答性プロモーターという2成分から構成される。この転写因子は、タモキシフェンに対して応答性である、改変されたヒトエストロゲンリガンド結合ドメイン、独特のシステイン2−ヒスチジン2ジンクフィンガーDNA結合モチーフ、およびVP16由来の最小トランス活性化ドメインからなる。この応答性プロモーターは、転写因子DNA結合ドメイン(DBD)によって認識されるDNA配列の6個の繰返しおよびエンドスタチンをコードするDNAからなる。タモキシフェンの存在下では、この転写因子は、最小プロモーターに連結された独特の標的核酸配列からの転写を活性化する。インビトロでルシフェラーゼレセプターを用いて評価された場合、タモキシフェンは、発現を250倍まで誘導する。この系を、2つのgutlessアデノウイルスベクター中に組み込む。gutlessアデノウイルスには、全てのウイルスコード領域がない。1つのベクターはこの転写因子をコードし、そして第2のベクターは、エンドスタチンをコードする核酸の転写を駆動する標的プロモーターをコードする。これらの2つのベクターをマウス中に注射する。このことは、効率的な肝臓形質導入をもたらす。これらのマウスに対するタモキシフェンの投与は、エンドスタチンの誘導性発現をもたらし、20μg/mlまでの極めて高い血漿レベルを生じる。タモキシフェン誘導を、2ヶ月間の期間にわたって4回達成する。タモキシフェンの不存在下では、エンドスタチンのバックグラウンドレベルが観察される。
【0114】
誘導性の系を構成するAGVC7mEndoおよびAGVas521のベクター対を注射し、タモキシフェンで処置されたマウスは、網膜全体にわたって、エンドスタチンについての顕著な染色を示した。このことは、網膜におけるエンドスタチン発現の強力な誘導を実証する。
【0115】
網膜脈管透過性を、右眼においてAGVC7mEndoおよびAGVas521の1:1混合物を6×10粒子、そして左眼においてAGVNullを6×10粒子、網膜下注射で与え、続いてタモキシフェンで6日間処置して(最後の3日間は、マウスは、VEGF発現を誘導するためにドキシサイクリンもまた受けた)エンドスタチン発現を誘導した成体IRBP/rtTA−TRE/VEGFマウスにおいてトレーサーとして[3H]マンニトールを用いて測定した。網膜対肺漏出比(RLLR)および網膜対腎臓漏出比(RRLR)は、エンドスタチンおよびVEGFの両方の発現が誘導された眼において、同BEGFのみの発現が誘導された様の眼と比較して有意に低下する。これは、エンドスタチンが、網膜血管の透過性のVEGF誘発性の増加を抑制することを実証する。
【0116】
(実施例10 :トランスジェニックマウスおよびアッセイ方法)
Ohno−Matsui,K.らAm.J.Pathol.160,711−719 (2002)によって作製された網膜におけるVEGFの誘導性発現を有する2系統の二重トランスジェニックマウスを本研究に用いた。これらの系統のうちの1つにおいて、内部光受容体レチノイド結合タンパク質(IRBP)プロモーターを、逆テトラサイクリントランスアクチベーター(rtTA)系と合わせて、光受容体におけるVEGFのドキシサイクリン誘導性発現を指向する。これらを、IRBP/rtTA−TRE/VEGFマウスという。第2系統の二重トランスジェニックマウスにおいて、IRBPプロモーターというよりはロドプシンプロモーターを逆テトラサイクリントランスアクチベーター系と合わせて、光受容体におけるVEGFのドキシサイクリン誘導性発現を指向する。これらを、rho/rtTA−TRE/VEGFマウスという。
【0117】
(1)エンドスタチンについての免疫組織化学)
眼に穿刺し、そして4%パラホルムアルデヒド/5%スクロース中に配置し、次いで0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)中で一晩、4℃にて1.5時間インキュベートする。次いで、眼をリンスし、そしてOCT中の0.1Mリン酸緩衝液/20%スクロースの2:1混合物において迅速に凍結する。10μmの凍結切片を乾燥し、そして冷4%パラホルムアルデヒド中で30分間事後固定した。リンス後、スライドを、6.25% H含有冷メタノールで15分間ブロックし、次いででTris緩衝化生理食塩水(TBS)中の2%スキムミルクで室温にて30分間ブロックした。スライドを、2%乳汁/TBS中のマウスエンドスタチンに対するポリクローナルヤギgG(R & D Systems,Minneapolis,MN)(1.5μg/ml)中で室温にて1時間インキュベートした。0.1%乳汁/TBS中で10分間洗浄した後、スライドを、2%乳汁/TBS中の2μg/mlビオチン結合体化抗ヤギIgG(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)中で室温にて30分間インキュベートした。0.1%乳汁/TBS中で10分間洗浄した後、スライドを、ストレプトアビジン−ホスファターゼ(KirkegaardおよびPerry,Cabin John,MD)中で室温にて30分間インキュベートした。0.05M Tris HCl中での3回の5分間の洗浄後、スライドを、HistoMark Red(KirkegaardおよびPerry)を用いて発色させ、積載した。
【0118】
(2)[H]マンニトールをトレーサーとして用いた網膜脈管透過性の測定)
成体二重トランスジェニックIRBP/rtTA−TRE/VEGFマウス(n=11)に、右眼にはAGVC7mEndoおよびAGVas521の1:1混合物を6×10粒子、そして左眼にはAGVNullを6×10粒子、網膜下注射によって与えた。翌日、マウスを、ヒマワリ油中5% DMSO中の500μgのタモキシフェンの毎日の腹腔内注射を開始し、そして3日後に、これらにそれらの飲料水中で2mg/mlのドキシサイクリンを与えた。ドキシサイクリンを開始してから3日後、網膜脈管透過性を、[H]マンニトールを用いて測定した。手短に述べると、マウスに、1μCi/g体重の[3H]マンニトール(New England Nuclear,Boston,MA)の腹腔内注射を与えた。1時間後、マウスを屠殺し、そして眼を取り出した。角膜および水晶体を取り出し、そして網膜全体をアイカップから注意深く切開し、そして予め計量したシンチレーションバイアル中に配置した。胸腔を開け、そして左の上葉を取り出し、そして別の計量したシンチレーションバイアル中に配置した。左の背側切開部を作製し、そして腹腔に入ることなく腹膜後隙に入った。腎臓脈管を鉗子でとめ、そして左腎臓を取り出し、全ての脂肪を除去し、そして予め計量したシンチレーションバイアル中に配置した。全ての液体をバイアルから除去し、そして残りの小滴を20分間かけてエバポレートさせた。バイアルを計量し、そして組織の重量を記録した。1mlのNCSII可溶化溶液(Amersham,Chicago,IL)を各バイアルに添加し、そしてこれらのバイアルを50℃の水浴中で一晩インキュベートした。可溶化した組織を室温にし、そして50℃の水浴においてトルエン中の20%過酸化ベンゾイルで脱色した。これらのバイアルを室温にし、そして5mlのCytoscint ES(ICN,Aurora,OH)および30μlの氷酢酸を添加した。これらのバイアルを暗所で4℃にて数時間保存して、化学発光を除去した。Wallac 1409 Liquid Scintillation Counter(Gaithersburg,MD)を用いて放射能をカウントした。
【0119】
(3)フルオレセイン漏出を用いた網膜脈管透過性の評価)
成体rho/rtTA−TRE/VEGF二重トランスジェニックマウスに、右眼には1.5×10形質導入単位(TU)のBIVエンドスタチンを、そして左眼には1.5×10TUのBIVNullを網膜下注射によって与えた。ベクター注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中0.5mg/mlのドキシサイクリンを開始した。7日後、マウスに、12μl/g体重の1%フルオレセインナトリウム(Alcon,Fort Worth,Texas)の腹腔内注射を与え、そして1分後、インビボでの蛍光顕微鏡法を用いて各眼の写真を撮った。VEGF発現を開始してから7日後に、別のマウスを安楽死させ、そして網膜凍結切片を、各眼において同じ位置にある視神経に隣接する網膜の後ろ部分全体を通して切断した。これらの切片をGriffonia simplicifoliaレクチン、ヘマトキシリン、およびエオシンで染色した。BIVNullを注射した眼における網膜(FおよびH)は、BIVエンドスタチンを注射した眼における網膜(EおよびG)よりもずっと厚い。
【0120】
(4)網膜の厚さの測定)
成体rho/rtTA−TRE/VEGF二重トランスジェニックマウスに、右眼には1.5×10TUのBIVエンドスタチンを、そして左眼には1.5×10TUのBIVNullを網膜下注射によって与えた。ベクター注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中0.5mg/mlのドキシサイクリンについて開始した。ドキシサイクリンを開始してから7日後、マウスを安楽死させ、そして10μmの網膜凍結切片を、各眼において同じ位置にある視神経に隣接する網膜の後ろ部分全体を通して切断した。これらの切片を、ビオチン化Griffonia simplicifoliaレクチンB4(GSA,Vector Laboratories,Burlingame,CA)で染色した。このレクチンは、脈幹細胞22に選択的に結合する。スライドを、4℃にてメタノール/H中で10分間インキュベートし、0.05M Tris緩衝化生理食塩水(pH7.6)(TBS)で洗浄し、そして10%正常ブタ血清中で30分間インキュベートした。スライドを、ビオチン化GSAとともに室温にて2時間インキュベートし、そして0.05M TBSでリンスした後、これらをペルオキシダーゼに結合したアビジン(Vector Laboratories)とともに室温いて45分間インキュベートした。これらのスライドをHistoMark Red(Kirkegaard and Perry)で発色させて、赤色反応産物を得て、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで対比染色した。網膜の厚さを、視神経の各縁部から300μmの部分での画像解析によって測定し、そして平均化して単一の実験値を得た。
【0121】
(5)二重トランスジェニックマウスにおける網膜血管新生の評価)
3匹のrho/rtTA−TRE/VEGFマウスを用いて、VEGF誘発性網膜血管新生に対するエンドスタチンの効果を評価した。右眼での1.5×10TUのBIVエンドスタチン、そして左眼での1.5×10TUのBIVNullの網膜下注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中0.5mg/mlのドキシサイクリンについて開始した。ドキシサイクリンを開始してから7日後、マウスを安楽死させ、そして各眼を、虹彩の末梢縁部から180°離れた他の末梢縁部への切片(10μm切片)とした。切片を、Griffonia simplicifoliaレクチン(GSA)、ヘマトキシリン、およびエオシンで染色した。
【0122】
光受容体層におけるGSA染色の面積は、血管新生量の指標であり、そして虹彩の1つの縁部から他の縁部に対して100μm離れた切片について測定した(一般に、1つの眼あたり13切片)。これらの13の測定値の平均は、1切片あたりの血管新生の面積という、単一の実験値を構成した。
【0123】
(6)二重トランスジェニックマウスにおける網膜剥離の評価)
11匹の成体rho/rtTA−TRE/VEGF二重トランスジェニックマウスに、右眼には1.5×10TUのBIVエンドスタチンを、そして左眼には1.5×10TUのBIVNullを網膜下注射によって与えた。ベクター注射の4週間後、マウスを、それらの飲料水中にて2mg/mlのドキシサイクリンについて開始した。4日後、マウスに麻酔し、瞳孔を拡大させ、そして全網膜剥離もしくは部分的網膜剥離が存在するかまたは剥離が存在しないかに注目する検眼鏡検査を各眼について、2人の独立した観察者によって実施した。
【配列表】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体における網膜剥離または網膜水腫の処置のための方法であって、以下の工程:
網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体の眼組織中のエンドスタチンの量の、網膜剥離阻害有効量または網膜水腫阻害有効量への増加をもたらす工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記エンドスタチンが、請求項1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンドスタチンが、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのポリペプチドフラグメント、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体、または配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの改変体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記増加が、外因性エンドスタチンを前記個体に投与することによってもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記増加が、エンドスタチンを前記個体内で産生させることによってもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記増加が、エンドスタチンをコードする核酸を含む有効量のウイルスベクターを前記個体に投与することによってもたらされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびレンチウイルスからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記増加が、前記個体内に、少なくとも1つのマイクロカプセルを移植することによってもたらされ、ここで、該マイクロカプセルが、エンドスタチンを分泌する細胞を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロカプセルが、アルギン酸塩を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロカプセルが、アルギン酸ナトリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロカプセルが、アルギン酸カルシウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロカプセルが、ポリL−リジンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、外因性エンドスタチンをコードする核酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、内因性エンドスタチンコード遺伝子を過剰発現する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
約2.5mg/kg/日と約20mg/kg/日との間のエンドスタチンが、前記個体に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記アデノウイルスベクターが、前記個体の血清中で1,000,000ng/mlまでのエンドスタチン濃度をもたらす、該個体によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記アデノウイルスベクターが、前記個体の血清中で少なくとも約300ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらす、該個体によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約3000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1500ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ベクターが、約10プラーク形成単位〜約1014プラーク形成単位の量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクターが、約10プラーク形成単位〜約1014プラーク形成単位の量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項23】
マイクロカプセルが、前記個体の血清中で1,000,000ng/mlまでのエンドスタチン濃度をもたらす、前記細胞によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で移植される、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
マイクロカプセルが、前記個体の血清中で少なくとも約1,000,000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらす、該個体によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で移植される、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロカプセルが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1,000,000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量で該個体中に移植される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
マイクロカプセルが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1500ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量で該個体中に移植される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
エンドスタチンをコードする核酸が、配列番号2に示す配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスベクターが、眼内に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスベクターが、網膜下に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ウイルスベクターが、硝子体内に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項7に記載の方法。
【請求項32】
前記レンチウイルスベクターが、前記個体の血清中で少なくとも約1,000,000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらす、該個体によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項33】
前記レンチウイルスベクターが、前記個体の血清中で少なくとも約300ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらす、該個体によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約3000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1500ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記レンチウイルスベクターが、ウシ免疫不全ウイルスベクターである、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、眼内に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、網膜下に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、硝子体内に投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項40】
前記増加が、エンドスタチンをコードする核酸の発現を誘導する、該個体中での産生を引き起こし得るウイルスベクターの、前記個体への投与によって誘導的にもたらされる、請求項6に記載の方法。
【請求項41】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、眼周囲に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスベクターが、眼周囲に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項43】
網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体における網膜剥離または網膜水腫の処置のための医薬の製造におけるエンドスタチンの使用であって、該エンドスタチンが、特に、番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドである、使用。
【請求項44】
前記エンドスタチンが、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのポリペプチドフラグメント、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体、または配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの改変体である、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
眼組織におけるエンドスタチン量の増加がもたらされる、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
前記増加が、エンドスタチンをコードする核を含む有効量のウイルスベクターを投与することによってもたらされる、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびレンチウイルスからなる群より選択される、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記増加が、網膜剥離または網膜水腫に罹患した前記個体内に、少なくとも1つのマイクロカプセルを移植することによってもたらされ、該マイクロカプセルが、エンドスタチンを分泌する細胞を含む、請求項46に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体における網膜剥離または網膜水腫の処置のための薬学的組成物であって、以下の工程:
膜剥離阻害有効量または網膜水腫阻害有効量のエンドスタチン、エンドスタチンをコードする核酸を含むウイルスベクター、またはエンドスタチンを分泌する細胞を含む少なくとも1つのマイクロカプセルを含む薬学的組成物
【請求項2】
前記エンドスタチンが、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項3】
前記エンドスタチンが、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのポリペプチドフラグメント、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体、または配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの改変体である、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項4】
前記エンドスタチンが、外因性エンドスタチンである、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項5】
前記エンドスタチン、前記個体内で産生される、請求項1に記載の薬学的組成物
【請求項6】
前記エンドスタチンが、エンドスタチンをコードする核酸を含む有効量のウイルスベクターによって産生される、請求項5に記載の薬学的組成物
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびレンチウイルスからなる群より選択される、請求項6に記載の薬学的組成物
【請求項8】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項7に記載の薬学的組成物
【請求項9】
前記エンドスタチン、少なくとも1つのマイクロカプセルによって産生され、ここで、該マイクロカプセルが、エンドスタチンを分泌する細胞を含む、請求項5に記載の薬学的組成物
【請求項10】
前記マイクロカプセルが、アルギン酸塩を含む、請求項9に記載の薬学的組成物
【請求項11】
前記マイクロカプセルが、アルギン酸ナトリウムを含む、請求項10に記載の薬学的組成物
【請求項12】
前記マイクロカプセルが、アルギン酸カルシウムを含む、請求項11に記載の薬学的組成物
【請求項13】
前記マイクロカプセルが、ポリL−リジンを含む、請求項12に記載の薬学的組成物
【請求項14】
前記細胞が、外因性エンドスタチンをコードする核酸を含む、請求項9に記載の薬学的組成物
【請求項15】
前記細胞が、内因性エンドスタチンコード遺伝子を過剰発現する、請求項9に記載の薬学的組成物
【請求項16】
前記外因性エンドスタチンが、約2.5mg/kg/日と約20mg/kg/日との間のエンドスタチンの濃度で前記個体に投与されるように処方される、請求項4に記載の薬学的組成物
【請求項17】
前記アデノウイルスベクターが、前記個体の血清中で1,000,000ng/mlまでのエンドスタチン濃度をもたらすエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与のために処方される、請求項8に記載の薬学的組成物
【請求項18】
前記アデノウイルスベクターが、前記個体の血清中で少なくとも約300ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与のために処方される、請求項8に記載の薬学的組成物
【請求項19】
前記エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約3000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項18に記載の薬学的組成物
【請求項20】
前記エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1500ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項19に記載の薬学的組成物
【請求項21】
前記ベクターが、約10プラーク形成単位〜約1014プラーク形成単位の量で投与のために処方される、請求項6に記載の薬学的組成物
【請求項22】
前記ベクターが、約10プラーク形成単位〜約1014プラーク形成単位の量で投与のために処方される、請求項8に記載の薬学的組成物
【請求項23】
マイクロカプセルが、前記個体の血清中で1,000,000ng/mlまでのエンドスタチン濃度をもたらす、前記細胞によるエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で移植のために処方される、請求項9に記載の薬学的組成物
【請求項24】
マイクロカプセルが、前記個体の血清中で少なくとも約300ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で移植のために処方される、請求項に記載の薬学的組成物
【請求項25】
前記マイクロカプセルが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約3000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量で該個体中での移植のために処方される、請求項24に記載の薬学的組成物
【請求項26】
マイクロカプセルが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1500ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量で該個体中での移植のために処方される、請求項25に記載の薬学的組成物
【請求項27】
エンドスタチンをコードする核酸が、配列番号2に示す配列を有する、請求項6に記載の薬学的組成物
【請求項28】
前記ウイルスベクターが、眼内での投与のために処方される、請求項6に記載の薬学的組成物
【請求項29】
前記ウイルスベクターが、網膜下での投与のために処方される、請求項28に記載の薬学的組成物
【請求項30】
前記ウイルスベクターが、硝子体内での投与のために処方される、請求項28に記載の薬学的組成物
【請求項31】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項7に記載の薬学的組成物
【請求項32】
前記レンチウイルスベクターが、前記個体の血清中で約1,000,000ng/mlまでのエンドスタチン濃度をもたらすエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与のために処方される、請求項31に記載の薬学的組成物
【請求項33】
前記レンチウイルスベクターが、前記個体の血清中で少なくとも約300ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすエンドスタチンの発現を提供するに有効な量で投与のために処方される、請求項32に記載の薬学的組成物
【請求項34】
エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約3000ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項33に記載の薬学的組成物
【請求項35】
エンドスタチンが、前記個体の血清中で約300ng/ml〜約1500ng/mlのエンドスタチン濃度をもたらすに充分な量にて該個体中で発現される、請求項34に記載の薬学的組成物
【請求項36】
前記レンチウイルスベクターが、ウシ免疫不全ウイルスベクターである、請求項31に記載の薬学的組成物
【請求項37】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、眼内での投与のために処方される、請求項36に記載の薬学的組成物
【請求項38】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、網膜下での投与のために処方される、請求項37に記載の薬学的組成物
【請求項39】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、硝子体内での投与のために処方される、請求項37に記載の薬学的組成物
【請求項40】
ンドスタチンをコードする核酸の発現を誘導する因子の該個体中での産生を引き起こし得るウイルスベクターをさらに含む、請求項6に記載の薬学的組成物
【請求項41】
前記ウシ免疫不全ウイルスベクターが、眼周囲での投与のために処方される、請求項36に記載の薬学的組成物
【請求項42】
前記ウイルスベクターが、眼周囲での投与のために処方される、請求項6に記載の薬学的組成物
【請求項43】
網膜剥離または網膜水腫に罹患した個体における網膜剥離または網膜水腫の処置のための医薬の製造におけるエンドスタチンの使用であって、該エンドスタチンが、特に、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドである、使用。
【請求項44】
前記エンドスタチンが、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのポリペプチドフラグメント、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体、または配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの改変体である、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
眼組織におけるエンドスタチン量の増加がもたらされる、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
前記増加が、エンドスタチンをコードする核を含む有効量のウイルスベクターを投与することによってもたらされる、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、およびレンチウイルスからなる群より選択される、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記増加が、網膜剥離または網膜水腫に罹患した前記個体内に、少なくとも1つのマイクロカプセルを移植することによってもたらされ、該マイクロカプセルが、エンドスタチンを分泌する細胞を含む、請求項45に記載の使用。

【公表番号】特表2006−516112(P2006−516112A)
【公表日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−532124(P2004−532124)
【出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009497
【国際公開番号】WO2004/020469
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】