説明

眼用レンズ用着色剤、及び該着色剤を用いた着色眼用レンズ材料

【課題】溶出することなく用いることのできる眼用レンズ用着色剤、及び該着色剤を用いた着色眼用レンズ材料を提供する。
【解決手段】式(I)


で示される眼用レンズ用着色剤(式中、YはHまたはCH3であり、nは1〜5までの整数である。)と、式(II)


で示される眼用レンズ用着色剤(式中、YはHまたはCH3であり、nは1〜5までの整数である。)と、レンズ用モノマーとを重合することにより得られる着色眼用レンズ材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズや眼内レンズ等の眼用レンズ用の着色剤、及び該着色剤を用いた着色眼用レンズ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、網膜光障害の低減や、眼内レンズ挿入後の青視症対策として400nm〜500nm付近の青色領域の光線透過を抑制した着色眼内レンズが知られている。このような着色眼内レンズは、PMMA等の硬い眼内レンズ用材料に赤色、黄色や橙色等の着色剤を練りこむことにより、眼内レンズ用材料に黄色や橙色等の着色を施している。また、折り曲げ可能な軟性の眼内レンズ用材料に少量の着色剤を添加することにより着色された軟性眼内レンズを得て、これにより青視症補正用の軟性着色眼内レンズを提供する発明も提案されている(特許文献1 参照)。
【特許文献1】特開平7−24052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、PMMA等の硬い眼内レンズ材料では、その分子構造が密であるために練りこんだ着色剤の溶出(ブリード)が起こり難かったが、折り曲げ可能な眼内レンズ用に用いる軟性の眼内レンズ材料に着色剤を添加しても、その分子構造が粗いために溶出が起こってしまうという問題があった。
上記従来技術の問題点に鑑み、溶出することなく用いることのできる眼用レンズ用着色剤、及び該着色剤を用いた着色眼用レンズ材料を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、式I及び式II
【化3】

【0005】
【化4】

(式I及び式II中、YはHまたはCH3であり、nは1〜5までの整数である。)
で示される化合物が、コンタクトレンズや眼内レンズ等の眼用レンズの着色剤として好適に用いることができることを見出した。また、式Iに示す化合物において、特にYがCH3、nが1となる化合物が、眼用レンズの着色剤として好適に用いることがでる。また、式IIに示す化合物において、特にYがCH3、nが2となる化合物が、眼用レンズの着色剤として好適に用いることができる。
また、式Iで表される眼用レンズ用着色剤が全量に対して0.003重量%以上0.03重量%以下、及び式IIで表される眼用レンズ用着色剤が全量に対して0.0003重量%以上0.003重量%以下含有された着色眼用レンズ材料は、400nm〜500nm付近の青色領域の光線透過を抑制し、人眼水晶体本来の光透過特性に近いものが得られる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の着色剤によれば、折り曲げ可能なコンタクトレンズや眼内レンズ等の眼用レンズに用いても、着色後の眼用レンズから溶出することなく好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態を以下に説明する。
<眼用レンズ用着色剤の製造>
初めに、本発明の式Iで表される眼用レンズ用着色剤となる化合物の合成手順の実施形態を以下に説明する。このような式Iで表される化合物は、眼用レンズを黄系色に着色可能であるとともに眼用レンズ用の材料(モノマー)に対して良好な共重合性を有しており、眼用レンズからの溶出がほとんどない。この式Iで表される化合物は、例えば以下の反応式にて製造することが可能である。
【0008】
【化5】

【0009】
具体的には、上記式IIIで表される化合物と式IV(式中、nは1〜5までの整数)で表される化合物とを酸性条件下へ仕込み、所定温度にて攪拌しながら所定時間還流させておく。その後、メタノール等のアルコール類やジエチルエーテル等の溶媒を所定量加え、さらに所定温度で攪拌し、反応させることにより、式Vで表される化合物を得る。
【0010】
次に、得られた式Vで表される化合物を脱水ジクロロメタンへ仕込み、さらに上記式VIで表される化合物(式中、YはHまたはCH3)と4-ジメチルアミノピリジンを加え、所定時間攪拌する。この溶液中にN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・ハイドロクロリドを所定時間かけて添加後、さらに所定時間攪拌し、反応させることにより、目的の眼用レンズ用着色剤となる上記式Iで表される化合物を得ることができる。
【0011】
次に、本発明の式IIで表される眼用レンズ用着色剤となる化合物の合成手順の実施形態を以下に説明する。このような式IIで表される化合物は、眼用レンズを赤系色に着色可能であるとともに眼用レンズ用の材料(モノマー)に対して良好な共重合性を有しており、眼用レンズからの溶出がほとんどない。この式IIで表される化合物は、例えば以下の反応式にて製造することが可能である。
【0012】
【化6】

【0013】
具体的には、上記式XIで表される化合物(式中、nは1〜5までの整数)を脱水ジクロロメタンへ仕込み、式VIで表される化合物(式中、YはHまたはCH3)と4-ジメチルアミノピリジンを加え、所定時間攪拌する。この溶液中にN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・ハイドロクロリドを所定時間かけて添加後、さらに所定時間攪拌し、反応させることにより、目的の眼用レンズ用着色剤となる上記式IIで表される化合物を得ることができる。
【0014】
なお、式XIで表される化合物は、以下の反応式
【化7】

に従って得られることができる。
【0015】
具体的には、重亜硫酸ナトリウムを水に溶解し、ここにホルマリン水溶液を加えて攪拌した後、式VIIに示される化合物(式中、nは1〜5までの整数)を加え、所定時間攪拌して反応させ、溶液Aを得ておく。また、濃塩酸を水に溶解し、式VIIIで表される化合物(アニリン)を加えた後、冷却する。さらに、この溶液に亜硝酸ナトリウムが溶解した水溶液を所定時間かけて滴下して低温で攪拌し反応させ、溶液Bを得る。得られた溶液Bを前述した溶液Aへ一気に加え、所定温度、時間で反応させる。さらに、この溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応させ、反応物を析出させる。析出した反応物を精製し、式IXで表される化合物を得る。
【0016】
得られた式IXで表される化合物を塩酸へ仕込み、氷冷した後、この溶液に亜硝酸ナトリウムの水溶液を滴下し、所定時間攪拌する。得られた溶液を式Xで表される化合物(β-ナフトール)が溶解する水酸化ナトリウム水溶液中に一気に加え、反応させることにより、式XIで表される化合物が得られる。
【0017】
<着色眼内レンズの製造>
次に、上記で得られた式I及び式IIに示す着色剤を用いて着色眼内レンズを製造する方法を以下に説明する。
【0018】
本実施形態にて用いる眼内レンズ材料は、従来用いられているものが使用可能であるが、特に室温で柔らかく、折り曲げ可能な眼内レンズ材料が好適に用いることができる。折り曲げ可能な眼内レンズ材料としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ) アクリレート、 イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル(メタ)アクリレート類、等を挙げることができ、これらを1種類以上使用して得られる共重合物を軟性アクリル基材として使用することができる。なお、表記上「・・・(メタ)アクリレート」とあるのは「・・・アクリレート」または「メタクリレート」を表す。
【0019】
また、親水性表面を有する軟性材料を得ようとする場合には、例えば、以下に挙げるものを使用することができる。
N−ビニルピロリドン、α−メチレン−N−メチルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。
【0020】
また、これらの共重合物を利用する事も可能であり、例えば、エチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合物、2−エチルヘキシルメタクリレートとブチルメタクリレートの共重合物、2−エチルヘキシルメタクリレートとドデシルメタクリレートの共重合の組み合わせ等が挙げられる。
【0021】
このような眼内レンズ材料を用いて着色軟性基材(材料)を製造するには、所望する眼内レンズの硬さ、反発力、開放速度が得られるように、前述した(メタ)アクリレート類を主材料に種々のビニル系共重合性モノマーを組み合わせてもよく、さらに架橋剤、重合開始剤、紫外線吸収剤及び前述の合成で得られた着色剤を添加して型枠または反応容器内に入れた後、重合反応を行う。この重合反応により、(メタ)アクリレート類等の眼内レンズ材料に着色剤が共重合することにより、軟性基材から着色剤が溶出し難くなる。
【0022】
なお、前述した式Iで表される黄系色の着色剤、及び式IIで表される赤系色の着色剤は、各々単独で用いることも可能であるが、加齢に伴い黄味を帯びてくる人水晶体により近い色を得るためには、両着色剤を合わせて用いることが好ましい。両着色剤を合わせて用いる場合、式Iで表される黄系色の着色剤は、得られる眼内レンズ用の軟性基材の全量に対して、好ましくは0.001重量%以上0.1重量%以下程度、さらに好ましくは0.003重量%以上0.03重量%以下程度である。また、式IIで表される赤系色の着色剤は、得られる眼内レンズ用の軟性基材の全量に対して、好ましくは0.0001重量%以上0.01重量%以下程度、さらに好ましくは0.0003重量%以上0.003重量%以下程度である。着色剤がこの割合より少ないと、得られる着色済軟性基材の色が薄くなってしまい、着色剤を添加する意味がなくなってしまう。また、着色剤がこの割合より多いと、色が濃すぎてしまい実用的でなくなる。
また、軟性基材は室温にて柔らかく折り曲げる必要があるため、好ましくはガラス転移温度が10℃以下、さらに好ましくは5℃以下の軟性基材が得られるように種々の(メタ)アクリル系共重合性モノマーの配合比等を決定させる。
【0023】
重合反応に用いられる架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等に代表される架橋剤を用いることができる。また、重合開始剤としては2,2−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等を使用することが好ましい。
【0024】
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル−2H−ベンゾトリアゾールに代表されるベンゾトリアゾール系の結合性紫外線吸収剤や、2−ヒドロキシ−5−グリシジルベンゾフェノンに代表されるベンゾフェノン系の結合性紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0025】
重合は添加する重合開始剤によって異なるが、加熱による重合や紫外線による重合等によって行われる。得られた着色済軟性基材を凍結等により切削等ができる程度に硬化させた後、切削加工により所望する形状に加工し、着色眼内レンズを得ることができる。また、眼内レンズ形状に成型された型枠内に、主材料、架橋剤、重合開始剤、紫外線吸収剤、着色剤を添加して重合、硬化させることにより、着色済眼内レンズを得ることもできる。
【0026】
なお、本実施形態においては、着色を行う材料として室温にて折り曲げ可能な軟性基材を用いているが、これに限るものではない。室温にて折り曲げることができない硬い基材からなる眼内レンズに対して、本発明の着色剤を用いることもできる。また、本発明の着色剤は眼内レンズに限らず、コンタクトレンズ等の他の眼用レンズに用いることもできる。また、本眼用レンズ材料は、光学部と支持部とを一体成型する1ピースタイプ、光学部と支持部とを別々に作成しておき、その後一体化させる3ピースタイプの両方に用いることができる。
【0027】
(実施例1)
<黄系色の眼用レンズ用着色剤、4-(5'-ヒドロキシ-3'-メチル-1'-フェニル-4'-ピラゾリルメチレン)-1-(4'-メタクリロイルオキシメチルフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オンの製造>
アルゴン気流下、脱水DMF(ジメチルホルムアミド)(210mL)に3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン(150g、861mmol)を仕込み、氷冷する。2℃〜9℃でオキシ塩化リン(57.0mL、629mmol)を30分かけて滴下した後、40〜50℃で2.5時間反応させる。室温まで冷却した後、氷水(3.1kg)へ1時間かけて滴下する。24℃のウォーターバスに浸し、16時間攪拌した後、析出した結晶を濾取し、前記した式IIIで表される黄色結晶の化合物(139.5g、692mmol)を得た。
【0028】
4-(3-メチル-5-オキソ-2-ピラゾリン-1-イル)安息香酸(204.5g、937mmol)をアルゴン気流下で脱水クロロホルム(10.2L)へ仕込み、トリエチルアミン(1.02L、7.34mol)を加え氷冷する。1〜7℃でクロロ炭酸エチル(511mL、3.13mol)を20分かけて滴下後、16〜21℃で2時間反応させる。THFを加えて抽出し、これに水素化ホウ素ナトリウム(85.1g、2.25mol)水溶液(2.45L)を室温にて6分かけて加える。28〜35℃で2時間反応させた後、減圧下濃縮する。得られた水溶液に5%塩酸(900mL)を加えてpH=4とした後、クロロフォルム(4L×3)により抽出する。クロロホルム/メタノールを展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにより精製し、式XII
【0029】
【化8】

で表される化合物(99.6g、488mmol)を得た。
【0030】
式IIIで表される化合物(98.7g、488mmol)と式XIIで表される化合物を酢酸(540mL)へ仕込み、30分かけて104℃まで昇温する。104〜113℃で15分灌流した後、室温まで冷却し、メタノール(1.43L)を加える。1〜3℃で2時間攪拌した後、析出した結晶を濾取する。クロロホルム/メタノールを展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーにより精製し、式XIII
【0031】
【化9】

で表される黄色結晶の化合物(78.6g、277mmol)を得た(前記式Vで表される化合物において、n=1のもの)。
【0032】
得られた式XIIIで表される化合物(78.6g、277mmol)を脱水ジクロロメタン(11.8L)へ仕込み、メタクリル酸(23.9g、277mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(44.5g、364mmol)を加える。N-エチル-N´-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・ハイドロクロリド(75.4g、394mmol)を17℃で20分かけて添加後、さらに19時間反応させた後、ジクロロメタンを展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにより精製した。精製により得られた化合物を室温で減圧下乾燥することにより、式XIV
【0033】
【化10】

で表される目的とする黄色結晶の眼用レンズ用着色剤(60.9g、133mmol)を得た(前記の式Iにおいて、YがCH3、n=1のもの)。
【0034】
<赤系色の眼用レンズ用着色剤、1-[4'-(4"-メタクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)フェニルアゾ]-2-ナフトールの製造>
室温で重亜硫酸ナトリウム(97.8g、940mmol)を水(4.37L)に溶解し、37%ホルマリン水溶液(76.3g、940mmol)を加えて10分間攪拌する。その後、4-アミノフェネチルアルコール(87.5g、940mmol)を加え、均一な溶液になったことを確認した後、室温でさらに1.5時間攪拌し、溶液Aを得る。
濃硫酸(175mL)を水(3.5L)に溶解し、アニリン(129g、940mmol)を加えた後、氷(875g)を加え、1℃まで冷却する。亜硝酸ナトリウム(69.7g、1.01mol)を水(350mL)に溶解し、これを−1〜1℃で20分かけて滴下し、−1〜1℃で30分反応させ、溶液Bを得る。
溶液Bを溶液Aへ一気に加え、20℃で30分反応させる。さらに、水酸化ナトリウム(347g、8.68mol)/水(2.28L)を加え、3時間かけて95℃まで昇温し、94〜101℃で2時間反応させる。室温まで冷却後、析出したタール状物を濾過する。水で洗浄後、メタノールで抽出する。減圧下濃縮により、黒褐色タール状物(105g)を得た。これを、トルエン/酢酸エチル=7/3を展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーによって精製し、式XV
【0035】
【化11】

で表される黄褐色結晶の化合物(39.8g、165mmol)を得た。
【0036】
式XVで表される化合物(75.6g、313mmol)を濃塩酸(90.9mL)/水(1.66L)へ仕込み、氷(600g)を加えて氷冷する。これに、亜硝酸ナトリウム(27.2g、394mmol)/水(150mL)を−1〜0℃で5分かけて滴下し、0〜1℃で30分間攪拌する。この溶液を、β−ナフトール(45.1g、313mmol)を水酸化ナトリウム(38.0g、950mmol)/水(3.8L)に溶解した溶液へ一気に加える。3時間反応させた後、析出した結晶を濾取し水洗する。TFHを展開溶媒としたカラムクロマトグラフィーにより、式XVI
【0037】
【化12】

で表される赤色結晶の化合物(107.7g、271mmol)を得た(前記式XIで表される化合物において、n=2のもの)。
【0038】
式XVIで表される化合物(107.7g、271mmol)を脱水ジクロロメタン(9.96L)へ仕込み、メタクリル酸(21.6g、251mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(36.8g、301mmol)を加える。これに、N-エチル-N´-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・ハイドロクロリド(62.5g、326mmol)を10分かけて添加する。18時間反応させた後、トルエン/酢酸エチル=50:1を展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーにて精製し、式XVII
【0039】
【化13】

で表される目的とする赤色結晶の眼用レンズ用着色剤(27.9g、61.1mmol)を得た(前記の式IIにおいて、YがCH3、n=2のもの)。
【0040】
得られた黄色着色剤を0.006重量%、赤色着色剤を0.0008重量%、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレートを53.9重量%、n−ブチルメタクリレートを39.7重量%、n−ブチルアクリレートを4.0重量%、架橋剤として1,4−ブタンジオールジメタクリレート2.0重量%、紫外線吸収剤として2-(2´-ヒドロキシ-5´-メタクリリロキシプロピル-3´-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールを0.3重量%、重合開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリルを微量、混合し、試験管に入れた。これを60℃の恒温槽で24時間、95℃のエアオーブン中で24時間、95℃の真空オーブン中で重合させ、橙色に着色された軟性の眼内レンズ基材(眼用レンズ基材)を得た。
【0041】
得られた眼内レンズ基材をφ6mm、厚さ1mmのプレートに加工した後、透過率を測定した。(日立製作所製分光光度計 U−4000)その結果を図1に示す。図1に示すように、紫外域の波長350nm〜400nmの光線をほとんど吸収するとともに、波長400nm〜500nmにおける光線の吸収が認められ、人眼水晶体本来の光線吸収特性に近いものであった。
また、得られたプレートをアセトン中に浸漬した状態で、60℃のエアオーブンで72時間保管した。72時間の加熱保管後、プレートを取り出し外観を検査したが、色の抜けは認められなかった。また、透過率を測定したが、透過率の変化はほとんどみられなかった。
【0042】
(比較例1)
黄色着色剤をYellow AG(日本化薬(株)製)、赤色着色剤をSudanI(キシダ化学(株)製)とした以外は、実施例1と同一条件として橙色に着色された軟性の眼内レンズ基材を得た。得られた眼内レンズ基材をφ6mm、厚さ1mmのプレートに加工した後、実施例1と同様にアセトン処理を行った。アセトン処理後のプレートは色が完全に抜け落ちていた。
【0043】
(比較例2)
着色剤をKayalon Polyster Navy Blue ES-SF300 R-822(日本化薬(株)製)とした以外は、実施例1と同一条件として青色に着色された軟性の眼内レンズ基材を得た。得られた眼内レンズ基材をφ6mm、厚さ1mmのプレートに加工した後、実施例1と同様にアセトン処理を行った。アセトン処理後のプレートは色が完全に抜け落ちていた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態の着色剤を用いて得られる眼内レンズ用基材の透過率を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で示される眼用レンズ用着色剤。(式中、YはHまたはCH3であり、nは1〜5までの整数である。)
【請求項2】
請求項1の眼用レンズ用着色剤において、式中、YはCH3であり、nが1であることを特徴とする眼用レンズ用着色剤。
【請求項3】
式(II)
【化2】

で示される眼用レンズ用着色剤。(式中、YはHまたはCH3であり、nは1〜5までの整数である。)
【請求項4】
請求項3の眼用レンズ用着色剤において、式中、YはCH3であり、nが2であることを特徴とする眼用レンズ用着色剤。
【請求項5】
請求項1及び請求項2記載の眼用レンズ用着色剤を用いて得られることを特徴とする着色眼用レンズ材料。
【請求項6】
請求項5の着色眼用レンズは、請求項1記載の眼用レンズ用着色剤が全量に対して0.003重量%以上0.03重量%以下であるとともに、請求項2に記載の眼用レンズ用着色剤が全量に対して0.0003重量%以上0.003重量%以下含有されていることを特徴とする着色眼用レンズ材料。






【図1】
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【公開番号】特開2006−138920(P2006−138920A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326341(P2004−326341)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】