説明

眼用及び医療用の重合性組成物及びそれを重合して得られる抗菌性組成物

【課題】比較的安価に、容易に、眼用機器および医療用機器へ抗菌性を付与できる重合性組成物、及びそれを重合して得られる抗菌性組成物を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基を有するε−ポリリシンを含んでなる眼用又は医療用の重合性組成物を提供する。この重合性組成物において、組成物全量に基づいて、(メタ)アクリロイル基を有するε−ポリリシンの含有量が、約0.1〜99重量%であることが好ましい。また、上記重合性組成物を含んでなる眼用又は医療用のコーティング剤、上記重合性組成物を重合して得られる眼用又は医療用の抗菌性組成物、上記抗菌性組成物を含んでなる眼用機器又は医療用機器、及び上記抗菌性組成物を含んでなるコンタクトレンズをも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイル基を有する新規なε−ポリリシン(以下「(メタ)アクリレート化ε−ポリリシン」という)及びこれと他の共重合性モノマーとを含む眼用及び医療用の重合性組成物、及びそれを重合することによって得られる眼用及び医療用の抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ε−ポリリシン(ポリリジンとも呼ばれる)は、食品用添加剤として広く使用されているもので、グラム陰性菌(gram-negative bacteria)、グラム陽性菌(gram-positive bacteria)、大腸菌(Escherichia coli; (E. coli))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa;(P. aeruginosa))、霊菌Serratia marcescens (S. marcescens)、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus;(S. aureus))、真菌 (fungi:(Candida albicans (C. albicans))など)、Fusarium solani(F.solani)などに対する幅広い抗菌活性を有し、かつ、生体にとって安全性も高く、他の抗菌性ペプチドと比べても安価なものである。
【0003】
このような安価で幅広い抗菌活性を有するε−ポリリシンを利用することが種々の技術分野で提案されている。
特許文献1(日本ペイント)は、ポリリジンを水不溶化させて含有するポリマーを含むことを特徴とする防汚塗料組成物に関する。この文献は、ポリリジンに不飽和結合を導入し、これに不飽和モノマーを共重合させることによって、ポリリジンが水不溶性ポリマーにグラフトしたポリリジン含有水不溶化ポリマーをバインダー樹脂として用いることを開示している。
【0004】
特許文献2(チッソ)は、抗菌性樹脂組成物及びそれを用いた成形品に関する。この文献は、ε−ポリリジン又はε−ポリリジン塩を担持したフィラーを含有することを特徴とする抗菌性樹脂組成物と、その成形品(医療衛生材、食器類、生活関連材、自動車内装材、家庭用電化製品、フィルム、シート、繊維製品等)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−346000号公報
【特許文献2】特開平11−60804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、比較的安価に、容易に、眼用機器および医療用機器へ抗菌性を付与できる重合性組成物、及びそれを重合して得られる抗菌性組成物を提供することである。重合性組成物及び抗菌性組成物は、例えば、眼用機器および医療用機器へのコーティング剤として有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は(メタ)アクリレート化ε−ポリリシンを含む重合性組成物、及びそれを重合して得られる抗菌性組成物に関する。この重合性組成物は、コーティング剤として使用することができる。この抗菌性組成物(例えば、抗菌性ヒドロゲル)は、眼用機器又は医療用機器の全部又は一部を形成し、あるいは、眼用機器又は医療用機器を保護し、コートするための幅広い抗菌性を備えている。本発明の重合性組成物及び抗菌性組成物は、その高い生体適合性、抗菌性及び良好な濡れ性に起因して、例えば、コンタクトレンズなどの生物医学的な機器;泌尿器用カテーテル、ペースメーカー、心臓弁、人工心臓、乳房補充物、眼内レンズ、創傷被覆材、人工器官、生理活性剤用の輸送担体、関節全置換物などの生体移植材料などの多くの眼用機器及び医療用機器に幅広く有用である。
【0008】
即ち、本発明は以下のものを提供する。
[1] (メタ)アクリロイル基を有するε−ポリリシンを含んでなる眼用又は医療用の重合性組成物。
【0009】
[2] 組成物全量に基づいて、(メタ)アクリロイル基を有するε−ポリリシンの含有量が、約0.1〜99重量%である[1]に記載の重合性組成物。
[3] [1]又は[2]に記載の重合性組成物を含んでなる眼用又は医療用のコーティング剤。
【0010】
[4] [1]又は[2]に記載の重合性組成物を重合して得られる眼用又は医療用の抗菌性組成物。
[5] [4]に記載の抗菌性組成物を含んでなる眼用機器又は医療用機器。
【0011】
[6] [4]に記載の抗菌性組成物を含んでなるコンタクトレンズ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、幅広い抗菌活性と優れた物性を有する重合性組成物、及びそれを重合して得られる抗菌性組成物が比較的安価に、容易に提供される。重合性組成物及び抗菌性組成物は、例えば、眼用機器および医療用機器へのコーティング剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ε-ポリリシン(EPL:上段のスペクトル)とメタクリレート化したε−ポリリシン(MA-EPL:下段のスペクトル)の1H NMRスペクトルである。
【図2】実施例で調製した本発明のヒドロゲルのヤング率を示す図である。図中、縦軸はヤング率を表し、横軸は共重合体中の対象成分の重量%を示す。 サンプルA:MA-EPL(X重量%)-DMA/PEGDA (2/1重量比100-X重量%) サンプルB:MA-EPL/DMA (1/10重量比 100-X重量%)-PEGDA(X重量%) サンプルC:MA-EPL(X重量%)-PEGA/PEGDA (1/1重量比 100-X重量%) サンプルD:MA-EPL/PEGA (1/5重量比 100-X重量%)-PEGDA(X重量%)
【図3】実施例で調製した本発明のヒドロゲルの強度を示す図である。図中、縦軸は強度を表し、横軸は共重合体中の対象成分の重量%を示す。 サンプルA:MA-EPL(X重量%)-DMA/PEGDA (2/1重量比100-X重量%) サンプルB:MA-EPL/DMA (1/10重量比 100-X重量%)-PEGDA(X重量%) サンプルC:MA-EPL(X重量%)-PEGA/PEGDA (1/1重量比 100-X重量%) サンプルD:MA-EPL/PEGA (1/5重量比 100-X重量%)-PEGDA(X重量%)
【図4】実施例で調製した本発明のヒドロゲルの吸水率を示す図である。図中、縦軸は吸水性を表し、横軸は共重合体中の対象成分の重量%を示す。 サンプルA:MA-EPL(X重量%)-DMA/PEGDA (2/1重量比100-X重量%) サンプルB:MA-EPL/DMA (1/10重量比 100-X重量%)-PEGDA(X重量%) サンプルC:MA-EPL(X重量%)-PEGA/PEGDA (1/1重量比 100-X重量%) サンプルD:MA-EPL/PEGA (1/5重量比 100-X重量%)-PEGDA(X重量%)
【図5】本発明のヒドロゲルでコーティングしたポリマーディスク(II)を、コーティングしていないポリマーディスク(I)と比較する図である。Aは通常の外観の写真、Bは走査型電子顕微鏡(SEM)写真(Baは表面、Bbは断面の写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[(メタ)アクリレート化ε−ポリリシン]
本発明で使用するε−ポリリシンは(メタ)アクリロイル基を分子内に有することが重要である。この(メタ)アクリロイル基はポリリシンの分子内のアミノ基とアミド結合を介して共有結合によって強固に結合し、ポリリシン分子の一部となっている。このため、本発明で使用するε−ポリリシンは(メタ)アクリロイル基の炭素炭素二重結合を使用して他のモノマーと共重合を行うことができ、結果として生成する共重合体内にε−ポリリシンを容易に導入することができる。他のモノマーを適宜選択することによって種々の用途に適合した抗菌性組成物を提供することができる。
【0015】
ε-ポリリシンは、L-リシンのε位のアミノ基とカルボキシル基がアミド結合した直鎖状のアミノ酸ホモポリマーである。ε-ポリリシンは細菌から生化学的に製造することができ、本発明にはそのようなε-ポリリシンを使用することが眼用機器材料及び医療用機器材料として使用する観点からより好ましい。
【0016】
本発明では、ε−ポリリシンは遊離の形でも、塩の形でも使用することができる。
本発明の(メタ)アクリレート化ε−ポリリシンは、例えば、ε−ポリリシン中のアミノ基と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とを反応させることによって調製することができる。例えば、ε−ポリリシン中のアミノ基と(メタ)アクリル酸との脱水縮合によって調製することができる。
【0017】
[重合性組成物]
本発明の重合性組成物は、上述した(メタ)アクリレート化ε−ポリリシンを含んでなる。
【0018】
(メタ)アクリレート化ε−ポリリシンの量は、組成物全量に基づいて、好ましくは、約0.1〜99重量%、より好ましくは、1〜80重量%である。
重合性組成物を形成する他の成分としては、例えば、
(A)ウレタン結合含有モノマー、
(B)親水性モノマー、
(C)化合物(A)以外のシリコーンモノマー、
(D)アルキル(メタ)アクリレート、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレート、硬度調節モノマー、
(E)架橋性モノマー
等が挙げられる。
【0019】
重合性組成物を形成する他の成分として、例えば、ヒドロゲルコーティング剤を構成するための成分としては、上記記載の(B)および(E)が挙げられる。また眼用機器の一つであるコンタクトレンズに適用するための成分としては、上記記載の(A)〜(E)が挙げられる。
【0020】
(A)ウレタン結合含有モノマー
ウレタン結合含有モノマーは、ウレタン結合を介してエチレン型不飽和基およびポリシロキサン構造を有する化合物である(以下化合物(A)ということがある)。
【0021】
化合物(A)は、ウレタン結合という弾性力のある結合を有し、シロキサン部分により材料の柔軟性や酸素透過性を損なうことなく補強し、かつ弾力的反発性を付与して脆さをなくし、機械的強度を向上させるという性質を付与する成分である。また、化合物(A)は、分子鎖中にシリコーン鎖を有するので、製品に高酸素透過性を付与することができる。
【0022】
化合物(A)は、分子の両末端に重合性基であるエチレン型不飽和基を有し、かかる重合性基を介して他の共重合成分と共重合されるので、得られる共重合体に分子の絡み合いによる物理的な補強効果だけでなく、化学的結合(共有結合)による補強効果を付与するという優れた性質を有するものである。
【0023】
化合物(A)は、一般式(1):
1−U1−(−S1−U2−)n−S2−U3−A2 (1)
[式中、A1は一般式(2):
21−Z21−R31− (2)
(式中、Y21は(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基、Z21は酸素原子または直接結合、R31は直接結合または炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖もしくは芳香環を有するアルキレン基を示す)で表わされる基;
2は一般式(3):
−R34−Z22−Y22 (3)
(式中、Y22は(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基、Z22は酸素原子または直接結合、R34は直接結合または炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖もしくは芳香環を有するアルキレン基を示す)で表わされる基(ただし、一般式(2)中のY21および一般式(3)中のY22は同一であってもよく、異なっていてもよい);
1は一般式(4):
−X21−E21−X25−R32− (4)
(式中、X21およびX25は、それぞれ独立して直接結合、酸素原子およびアルキレングリコール基から選ばれ、E21は−NHCO−基(ただし、この場合、X21は直接結合であり、X25は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、E21はX25とウレタン結合を形成している)、−CONH−基(ただし、この場合、X21は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、X25は直接結合であり、E21はX21とウレタン結合を形成している)または飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(ただし、この場合、X21およびX25はそれぞれ独立して酸素原子およびアルキレングリコール基から選ばれ、E21はX21およびX25のあいだで2つのウレタン結合を形成している)、R32は炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基を示す)で表わされる基;
1およびS2はそれぞれ独立して一般式(5):
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、R23、R24、R25、R26、R27およびR28は、それぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、フッ素置換されたアルキル基またはフェニル基、Kは10〜100の整数、Lは0または1〜90の整数であり、K+Lは10〜100の整数である)で表わされる基;
2は一般式(6):
−R37−X27−E24−X28−R38−(6)
(式中、R37およびR38は、それぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基;X27およびX28はそれぞれ独立して酸素原子またはアルキレングリコール基;E24は飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(ただし、この場合、E24はX27およびX28のあいだで2つのウレタン結合を形成している)で表わされる基;
3は一般式(7):
−R33−X26−E22−X22− (7)
(式中、R33は炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基、X22およびX26は、それぞれ独立して直接結合、酸素原子およびアルキレングリコール基から選ばれ、E22は−NHCO−基(ただし、この場合、X22は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、X26は直接結合であり、E22はX22とウレタン結合を形成している)、−CONH−基(ただし、この場合、X22は直接結合であり、X26は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、E22はX26とウレタン結合を形成している)または飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基(ただし、この場合、X22およびX26はそれぞれ独立して酸素原子およびアルキレングリコール基から選ばれ、E22はX22およびX26のあいだで2つのウレタン結合を形成している)で表わされる基;
nは0または1〜10の整数を示す]で表わされる重合性基が1個以上のウレタン結合を介してシロキサン主鎖に結合しているポリシロキサンマクロモノマーである。
【0026】
一般式(1)において、A1は、前記したように、一般式(2):
21−Z21−R31− (2)
(式中、Y21、Z21およびR31は前記と同じ)で表わされる基であり、またA2は一般式(3):
−R34−Z22−Y22 (3)
(式中、Y22、Z22およびR34は前記と同じ)で表わされる基である。
【0027】
21およびY22は、いずれも重合性基であるが、親水性モノマー(B)と容易に共重合しうるという点で、(メタ)アクリロイル基がとくに好ましい。
21およびZ22は、いずれも酸素原子または直接結合であり、好ましくは酸素原子である。
【0028】
31およびR34は、いずれも直接結合または炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖もしくは芳香環を有するアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。
1、U2およびU3は、いずれも化合物(A)の分子鎖中でウレタン結合を含む基を表わす。
【0029】
1およびU3において、E21およびE22は、前記したように、それぞれ−CONH−基、−NHCO−基または飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基を表わす。ここで、飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基としては、たとえばエチレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートプロパン、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの飽和脂肪族系ジイソシアネート由来の2価の基;1,2−ジイソシアネートシクロヘキサン、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式系ジイソシアネート由来の2価の基;トリレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートナフタレンなどの芳香族系ジイソシアネート由来の2価の基;2,2’−ジイソシアネートジエチルフマレートなどの不飽和脂肪族系ジイソシアネート由来の2価の基があげられる。これらのなかでは、比較的入手しやすく、かつ強度を付与しやすいので、ヘキサメチレンジイソシアネート由来の2価の基、トリレンジイソシアネート由来の2価の基およびイソホロンジイソシアネート由来の2価の基が好ましい。
【0030】
1において、E21が−NHCO−基である場合には、X21は直接結合であり、X25は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、E21はX25と式:−NHCOO−で表わされるウレタン結合を形成する。また、E21が−CONH−基である場合には、X21は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、X25は直接結合であり、E21はX21と式:−OCONH−で表わされるウレタン結合を形成する。さらにE21が前記ジイソシアネート由来の2価の基である場合には、X21およびX25はそれぞれ独立して酸素原子および好ましくは炭素数1〜6のアルキレングリコール基から選ばれ、E21はX21とX25とのあいだで2つのウレタン結合を形成している。R32は炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基である。
【0031】
2において、E24は、前記したように、飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基を表わす。ここで、飽和もしくは不飽和脂肪族系、脂環式系および芳香族系の群から選ばれたジイソシアネート由来の2価の基としては、たとえば前記U1およびU3における場合と同様の2価の基があげられる。これらのなかでは、比較的入手しやすく、かつ強度を付与しやすいので、ヘキサメチレンジイソシアネート由来の2価の基、トリレンジイソシアネート由来の2価の基およびイソホロンジイソシアネート由来の2価の基が好ましい。また、E24はX27とX28とのあいだで2つのウレタン結合を形成している。X27およびX28はそれぞれ独立して酸素原子または好ましくは炭素数1〜6のアルキレングリコール基であり、またR37およびR38はそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基である。
【0032】
3において、R33は炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖を有するアルキレン基である。E22が−NHCO−基である場合には、X22は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、X26は直接結合であり、E22はX22と式:−NHCOO−で表わされるウレタン結合を形成する。また、E22が−CONH−基である場合には、X22は直接結合であり、X26は酸素原子またはアルキレングリコール基であり、E22はX26と式:−OCONH−で表わされるウレタン結合を形成する。さらにE22が前記ジイソシアネート由来の2価の基である場合には、X22およびX26はそれぞれ独立して酸素原子および好ましくは炭素数1〜6のアルキレングリコール基から選ばれ、E22はX22とX26とのあいだで2つのウレタン結合を形成している。
【0033】
ここで、前記X21、X25、X27、X28、X22およびX26における好ましくは炭素数1〜20のアルキレングリコールとしては、たとえば一般式(8):
−O−(Cx2x−O)y− (8)
(式中、xは1〜4の整数、yは1〜5の整数を示す)で表わされる基などがあげられる。
【0034】
1およびS2はいずれも、前記したように、一般式(5)で表わされる基である。
一般式(5)において、R23、R24、R25、R26、R27およびR28は、前記したように、それぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基、フッ素置換されたアルキル基またはフェニル基である。
【0035】
前記フッ素置換されたアルキル基としては、たとえば、−(CH2m−Cn2n+1(m=1〜10、n=1〜10)で表される基があげられ、その具体例としては、たとえば、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2−(ペルフルオロブチル)エチル基、2−(ペルフルオロオクチル)エチル基などの側鎖状または2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル基などの分枝鎖状のフッ素置換されたアルキル基などがあげられる。なお、本発明においては、かかるフッ素置換されたアルキル基を有する化合物(A)を用い、その配合量を多くすると、得られる眼用レンズ材料の抗脂質汚染性が向上する傾向がある。
【0036】
また、Kは10〜100の整数、Lは0または1〜90の整数であり、K+Lは、好ましくは10〜100の整数であり、より好ましくは10〜80である。K+Lが、100よりも大きい場合には、化合物(A)の分子量が大きくなり、これとピロリドン誘導体やこれ以外の親水性モノマーとの相溶性がわるくなり、配合時に均一に溶解しなかったり、重合時に相分離して白濁を呈し、均一で透明な眼用レンズ材料が得られない傾向があり、また10未満である場合には、得られる眼用レンズ材料の酸素透過性が低くなり、柔軟性も低下する傾向がある。
【0037】
さらに、nは0または1〜10の整数であることが好ましい。nが10よりも大きい場合には、化合物(A)の分子量が大きくなり、これとピロリドン誘導体やこれ以外の親水性モノマーとの相溶性がわるくなり、配合時に均一に溶解しなかったり、重合時に相分離して白濁を呈し、均一で透明な眼用レンズ材料が得られない傾向がある。nはより好ましくは0または1〜5の整数である。
【0038】
また、化合物(A)は、一般式(9):
1−U1−T1−U4−(−S1−U2−)n−S2−U5−T2−U3−A2 (9)
[式中、A1、A2、U1、U2、U3、S1、S2、nについては、一般式(1)と同一であり、U4、U5は、それぞれU1、U3と同一である。ただし、A1、A2中のY21、Y22については、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはアリル基である。
【0039】
1およびT2は、一般式(10):
−Q−(CH2CHD−Q−)n− (10)
(式中、Dは水素原子、メチル基または水酸基であり、Qは直接結合または酸素原子、nは5〜10,000である。)
あるいは、一般式(11):
―(M)x− (11)
((式中、Mは、1,3−メチルメチレンピロリドン、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン、オキセタン、オキサゾリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどから選択される親水性モノマー単位を示し、それらから構成されるポリマーの重合連鎖については、直鎖状でも分岐状でもよく、またランダム状、ブロック状に結合していてもよい。Xは5〜10,000である)で表される親水性ポリマー含有セグメントまたは親水性オリゴマー含有セグメントである)]で表わされる重合性基が1個以上のウレタン結合を介してシロキサン主鎖に結合しているポリシロキサンマクロモノマーである。
【0040】
化合物(A)は、さらに親水性ポリマー構造を有していてもよい。この構造により、化合物(A)と親水性モノマーとの相溶性が向上し、これらからなる材料の水濡れ性を向上させることができる。親水性ポリマー部分の構造としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリテトラヒドロフラン、ポリオキセタン、ポリオキサゾリン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリジエチルアクリルアミド、ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)などの双性イオン性基含有モノマーを重合して得られる1種以上のポリマーがあげられる。この親水性ポリマー構造部分の分子量は、100〜1,000,000であり、好ましくは1,000〜500,000である。分子量が100未満である場合、化合物(A)を親水性モノマーに溶解させるのに十分な親水性を付与できなくなる傾向がある。一方、分子量が1,000,000を超える場合、親水性・疎水性のドメインが大きくなり、透明な材料が得られなくなる傾向がある。
【0041】
化合物(A)の代表例としては、たとえば式:
【0042】
【化2】

【0043】
で表わされる化合物(以下、化合物(A−1)という)、式:
【0044】
【化3】

【0045】
(式中、nは0〜10である)
で表わされる化合物(以下、化合物(A−2)という)などがあげられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
化合物(A)の使用量は、全重合性成分に対して、好ましくは1〜80重量%であり、より好ましくは5〜60重量%である。
(B)親水性モノマー
シリコーン成分の相溶化剤として働き、かつ透明性に優れた均一な材料を得る上で重要な成分となり、使用量を多くすることで得られる共重合体眼用レンズ材料に優れた表面の水濡れ性と潤滑性/易潤性を付与することができる。
このような親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドンなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。全重合性成分に対して、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜55重量%である。(B)の使用量が5重量%未満である場合、所望の水濡れ性および表面の潤滑性/易潤性を達成できず、材料表面の水濡れ性が劣る傾向がある。一方、60重量%を超える場合、酸素透過性が含水率支配となり、連続装用時またはうたた寝時などにおける装用状態を考慮した場合、十分な酸素を角膜に供給できない傾向がある。
【0047】
得られる眼用レンズ材料の酸素透過性をさらに向上させ、かつ柔軟性を付与するために、前記化合物(A)以外のシリコーンモノマー(C)を眼用レンズ材料として含有させることが好ましい。
【0048】
シリコーンモノマー(C)としては、シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート、シリコーン含有スチレン誘導体およびシリコーン含有フマル酸ジエステルがあげられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
なお、本明細書にいう「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレートおよび/または〜メタクリレート」を意味し、他の(メタ)アクリレート誘導体についても同様である。
【0050】
シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリル(プロピルグリセロール)(メタ)アクリレート、ポリジメチルシロキサンジ(メタ)アクリレートなどがあげられる。シリコーン含有スチレン誘導体としては、たとえば一般式(12):
【0051】
【化4】

【0052】
(式中、pは1〜15の整数、qは0または1、rは1〜15の整数を示す)で表わされる化合物などがあげられる。一般式(12)で表わされるシリコーン含有スチレン誘導体においては、pまたはrが16以上の整数である場合には、その精製や合成が困難となり、さらには得られる眼用レンズ材料の硬度が低下する傾向があり、またqが2以上の整数である場合には、該シリコーン含有スチレン誘導体の合成が困難となる傾向がある。
【0053】
前記一般式(12)で表わされるシリコーン含有スチレン誘導体としては、たとえば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジメチルシリルスチレンなどがあげられる。シリコーン含有フマル酸ジエステルとしては、たとえば、一般式(13):
【0054】
【化5】

【0055】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立してメチル基または式:
【0056】
【化6】

【0057】
で表されるトリメチルシロキシ基、mおよびnはそれぞれ独立して1〜3の整数を示す)で表される化合物などがあげられる。
前記一般式(13)で表される化合物としては、たとえば、ビス(3−(トリメチルシリル)プロピルフマレート、ビス(3−(ペンタメチルジシロキサニル)プロピル)フマレート、ビス(3−(1,3,3,3−テトラメチル−1−(トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル)フマレート、ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル)フマレートなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
これらのうち、材料の柔軟性の付与、および化合物(A)や親水性モノマー(B)との共重合性の点からシリコーン含有アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、重合性、酸素透過性、柔軟性の付与の点から、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリル(プロピルグリセロール)モノ(メタ)アクリレート、ポリジメチルシロキサンジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0059】
シリコーンモノマー(C)のうちシリコーン含有アルキル(メタ)アクリレートを使用する場合の使用量は、全重合性成分に対して、好ましくは3〜80重量%であり、より好ましくは5〜65重量%である。シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレートの使用量が3重量%未満である場合、得られる眼用レンズ材料は、高弾性率で脆く、柔軟性に劣る傾向がある。一方、80重量%を超える場合、弾性率は低下するものの、材料の反発性は劣り、さらに表面の粘着性が増す傾向がある。
【0060】
シリコーンモノマー(C)のうちシリコーン含有スチレン誘導体を使用する場合の使用量は、全重合性成分に対して、好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは3〜20重量%である。シリコーン含有スチレン誘導体の使用量が1重量%未満である場合、得られる眼用レンズ材料の酸素透過性および機械的強度を充分に向上させることができない傾向がある。一方、30重量%を超える場合、得られる眼用レンズ材料の柔軟性が低下する傾向がある。
【0061】
シリコーンモノマー(C)のうちシリコーン含有フマル酸ジエステルを使用する場合の使用量は、全重合性成分に対して、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは3〜40重量%である。シリコーン含有フマル酸ジエステルの使用量が1重量%未満である場合、得られる眼用レンズ材料の酸素透過性を十分に向上させることができない傾向がある。一方、50重量%を超える場合、十分な機械的強度が得られない傾向がある。
【0062】
得られる眼用レンズ材料にさらに所望の特性を付与しようとする場合には、(D)アルキル(メタ)アクリレート、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレート、硬度調節モノマーを用いることもできる。
【0063】
アルキル(メタ)アクリレートは、眼用レンズ材料の硬度を調節して硬質性や軟質性を付与する成分である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル(メタ)アクリレートがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートは、抗脂質汚染性を向上させる成分である。
フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば一般式(14):
CH2=CR4COOCs(2s-t+1)t (14)
(式中、R4は水素原子またはCH3、sは1〜15の整数、tは1〜(2s+1)の整数を示す)で表わされる化合物があげられる。
【0065】
前記一般式(14)で表わされる化合物の具体例としては、たとえば2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロ−t−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−t−ヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−オクタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ノナデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−エイコサフルオロドデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
アルキル(メタ)アクリレートやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、化合物(A)および親水性モノマー(B)、さらには、シリコーンモノマー(C)および架橋性モノマー(E)などの重合成分による効果が充分に発現されるように、好ましくは全重合性成分の20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。また、アルキル(メタ)アクリレートやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレートの効果を充分に発現させるためには、前記重合成分の0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。
【0067】
硬度調節モノマーは、共重合体の硬度を調節して硬質性や軟質性を付与する成分である。
硬度調節モノマーとしては、たとえば、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;エチルチオエチル(メタ)アクリレート、メチルチオエチル(メタ)アクリレートなどのアルキルチオアルキル(メタ)アクリレート;スチレン;α−メチルスチレン;メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、イソブチルスチレン、ペンチルスチレンなどのアルキルスチレン;メチル−α−メチルスチレン、エチル−α−メチルスチレン、プロピル−α−メチルスチレン、ブチル−α−メチルスチレン、t−ブチル−α−メチルスチレン、イソブチル−α−メチルスチレン、ペンチル−α−メチルスチレンなどのアルキル−α−メチルスチレンなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
重合成分中の硬度調節モノマーの含有量は、眼用レンズ材料に所望の硬質性や軟質性を充分に付与するためには、1重量%以上であり、好ましくは3重量%以上である。また、眼用レンズ材料の酸素透過性や機械的強度が低下しないようにするには、30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0069】
(E)架橋性モノマー
材料の柔軟性や硬質性の調節のために架橋性モノマー(E)を添加することができる。
架橋性モノマー(E)としては、たとえば、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチルアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0070】
架橋性モノマー(E)の含有量は、共重合体が脆くならないようにするには、架橋性モノマー以外の重合性成分の合計量100重量部(以下、部という)に対して1部以下であり、好ましくは0.8部以下である。また、眼用レンズ材料の機械的強度をさらに向上させ、耐久性を付与する効果を充分に発現させるためには、架橋性モノマー以外の重合成分の合計量100部に対して0.05部以上であり、好ましくは0.1部以上である。
【0071】
架橋性モノマー(E)を用いる場合、化合物(A)と架橋性モノマー(E)とが、架橋性成分として同時に使用されることになり、眼用レンズ材料の共重合性を著しく向上させ、得られる眼用レンズ材料の各種物性を向上させることができる。
【0072】
(F)その他の成分
その他、重合性組成物には、所望の用途により、適宜、着色剤、UV吸収剤等加えることができる。
【0073】
着色剤及びUV吸収剤の使用量は、好ましくは重合成分全量100部に対して3部以下であり、より好ましくは0.01〜2部である。これらの量が3部を超える場合、共重合体の機械的強度などが低下する傾向がある。さらに、紫外線吸収剤や色素の毒性も考慮すると、生体組織に直接接触する材料や機器に適さなくなる傾向がある。とくに色素の場合、その量が多すぎると、レンズの色が濃くなって透明性が低下し、レンズが可視光線を透過しにくくなる傾向がある。
【0074】
[抗菌性組成物]
抗菌性組成物は、上述した重合性組成物を重合して得られる。
抗菌性組成物は、例えば、以下の手順によって製造することができる。
【0075】
本発明の(メタ)アクリレート化ε−ポリリシン及び上述した他のモノマー成分の混合液を適宜水で希釈し、当該混合液にUV光を照射するか、および/または加熱することにより所望の抗菌性組成物が得られる。ここで得られる当該混合液は、眼用機器や医療用機器の表面改質用コーティング剤として使用できる他、そのまま種々の用途に合わせた成形品を得る場合には、例えば、下記工程の中で、b)工程で用途に応じた成形用型を使用することが可能である。
【0076】
a)本発明の(メタ)アクリレート化ε−ポリリシン及び上述した他のモノマー成分ならびに光重合開始剤および/または熱重合開始剤を含む混合液を得る工程、
b)前記混合液を成形用型へ導入する工程、
c)前記成形用型内の混合液にUV光を照射するか、および/または加熱することにより、硬化した成形体を得る工程、
d)前記成形体を成形用型から取り出す工程、
e)前記成形体から未反応物を取り除く工程、および
f)前記成形体を水和させる工程。
【0077】
重合性組成物構成成分中の成分の均一性を向上させるために、前記混合液中に水溶性有機溶媒を含むことが好ましい。具体的には、重合性組成物構成成分に対して、ごくわずかな非重合性の有機溶媒を存在させることにより、重合反応が進行した後も未反応のモノマーを系中に拡散させて重合反応に関与させ得る。すなわち、水溶性有機溶媒を使用することによって、残留する重合性成分を低減できる。
【0078】
水溶性有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの炭素数1〜4のアルコールまたはアセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルおよびN−メチル−2−ピロリドンなどである。この有機溶媒は、重合性成分の種類に応じ、用いた重合性成分を溶解し得るものを適宜選択して用いればよい。また、これらは単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
水溶性有機溶媒の前記混合液中におけるその使用量は5重量%以下であることが好ましく、0.1〜5重量%で含有させることがより好ましく、0.2〜4重量%がさらに好ましい。使用量が0.1重量%未満である場合、重合時の残留成分の量が増加する傾向がある。一方、5重量%を超える場合、希釈剤を添加した重合性成分の混合液は不均一となり、後に行われる重合反応時において相分離が生じ、得られる材料は白濁する傾向がある。
【0080】
また、使用する有機溶媒は水溶性のため、後に行われる溶出処理の工程において容易に水と置換し得る。
バルク重合法においては重合性成分のみを混合して重合に共するため、重合の進行と共に系の粘度が極端に上昇し、高粘度の系中で拡散できず、重合反応に関与できなくなったモノマーが多く残留する。医療機器の製造においては、この残留するモノマーを極力減量させるべく水または有機溶媒による溶出処理が施されることが好ましい。
【0081】
抗菌性組成物は鋳型法による重合プロセスでも得ることができる。
重合性組成物構成成分を加熱して鋳型法にて重合させる場合には、所望の形状に対応した鋳型内に重合成分およびラジカル重合開始剤を配合したのち、該鋳型を徐々に加熱して重合成分の重合を行ない、得られた成形体に必要に応じて切削加工、研磨加工などの機械的加工を施す。
【0082】
前記ラジカル重合開始剤の具体例としては、たとえば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。該ラジカル重合開始剤の量は、重合成分100部に対して約0.001〜2部であり、好ましくは0.01〜1部である。
【0083】
鋳型内の重合成分を加熱する際の加熱温度は、重合時間の短縮および残留モノマー成分の低減という点から、50℃以上であり、好ましくは60℃以上である。また、各重合成分の揮発を抑制するという点および型の変形を防止するという点から、150℃以下であり、好ましくは140℃以下である。また、鋳型内の重合成分を加熱する際の加熱時間は、重合時間の短縮および残留モノマー成分の低減という点から、10分間以上であり、好ましくは20分間以上である。また、型の変形を防止するという点から、120分間以下であり、好ましくは60分間以下である。なお、かかる加熱は、段階的に昇温させて行なってもよい。
【0084】
重合成分を紫外線照射して鋳型法にて重合させる場合には、所望の形状に対応した鋳型内に重合成分および光重合開始剤を配合したのち、該鋳型に紫外線を照射して重合成分の重合を行ない、得られた成形体に必要に応じて切削加工、研磨加工などの機械的加工を施す。かかる紫外線照射のかわりに電子線照射を行なうこともできる。この場合、光重合開始剤なしで重合成分が重合される。 重合は、たとえば塊状重合法でなされてもよく、溶媒などを用いた溶液重合法でなされてもよい。
【0085】
紫外線照射による重合に用いられる鋳型の材質は、材料硬化に必要な紫外線を透過しうる、たとえばポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステルなどの汎用樹脂が好ましく、ガラスであっても良い。これらを成形、加工することによって所望の形状とする。眼用レンズの形状に対応した、または対応していない鋳型内に重合性成分および光重合開始剤、色素、紫外線吸収剤、有機希釈剤を配合した後、該鋳型に紫外線を照射して重合性成分の重合を実施する。眼用レンズ材料の機能に応じて、照射されるUVの波長域を選択することができる。ただし、照射するUV波長域によって、使用する光重合開始剤の種類を選択する必要がある。
【0086】
鋳型内の重合成分を紫外線照射する際の好ましい紫外線照度は、材料を十分に硬化させるためには、1.0mW/cm2以上で、材料の劣化を防ぐという目的から50mW/cm2以下である。また照射時間は、材料を十分に硬化させるためには、1分以上が好ましい。紫外線の照射は、一段階にて行っても良く、また、異なる照度の紫外線を段階的に照射しても良い。さらに、重合時には紫外線の照射と同時に加熱をしてもよく、このことにより重合反応は促進され、効果的に眼用レンズを成形しうる。
【0087】
前記加熱温度は、反応促進の点から、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、鋳型の変形を抑制するためには好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。
【0088】
前記光重合開始剤の具体例としては、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系光重合開始剤;メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノンなどのフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジルなどがあげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0089】
また、光重合開始剤とともに、光増感剤を用いてもよい。これら光重合開始剤および光増感剤の含有量は、重合成分100部に対して約0.001〜2部であり、好ましくは0.01〜1部である。
【0090】
コーティング方法としては、例えば、本発明の(メタ)アクリレート化ε-ポリリシン、前記親水性モノマー(B)および前記架橋性モノマー(E)、水系溶媒を含む混合液中に所望の眼用機器や医療用機器を接触させ、光(紫外線)照射および/または加熱することで、表面に所望のコーティングができる。効率よくコーティングを施すために、当該混合液に予め超音波等を照射して脱気したり、窒素ガスなどの不活性ガスをバブリングするなどして、当該混合液に溶解した酸素を取り除くことで、重合反応が促進でき、より効率よくコーティングを施すことができる。
【実施例】
【0091】
本発明を以下の例により具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の例により限定的に解釈されるものではない。
1.(メタ)アクリレート化ε−ポリリシンマクロモノマーの合成例
原材料:
数平均分子量(Mn)3000のε-ポリリシン(Handary Bio-Engineering製)、
N,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC(Sigma-aldrich製))、
N-ヒドロキシサクシンイミド(HoSu(Sigma-aldrich製))、
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF(Sigma-aldrich製))、
メタクリル酸(MA(Sigma-aldrich製))、
より以下のスキームで(メタ)アクリレート化したポリリシンマクロモノマーを合成した。
【0092】
【化7】

【0093】
各試薬の使用量など詳細な手順は下記の通りである。
メタクリル酸0.63g(7.34mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド0.93g (8.1mmol)をDMF10ml中に溶解し、0℃に冷却した。この溶液中に、別途DMF10ml中にDCC 1.51g (7.34mmol)を溶解させておいたものを30分以上かけて添加し、0℃、2時間攪拌しながら反応させた。その後、室温にて4時間放置し、濾過した。得られたろ液をε-ポリリシン溶液20g (6.67mmol)(水200mlとDMF 100mlの混合溶媒に溶解したもの)に加え、24時間攪拌した。反応後、溶媒除去して、アセトン中に沈澱物を生成させ、40℃で1晩真空乾燥した。乾燥した沈殿物を再度、蒸留水100ml中に溶解、不溶解物をろ過にて除去した後、アセトン500ml中で沈澱精製し、40℃で一晩真空乾燥した。収率は、80%超であった。
【0094】
2.NMR測定
(メタ)アクリレート化ε−ポリリシンマクロモノマーの生成、重合基の導入は、1HのNMRにて確認した。例えば、図1のNMRスペクトルに示すように、5.4ppmと5.64ppmの位置にメタクリル基の二重結合の存在を確認できるので、この部分のピークの有無で確認した。
【0095】
3.最小発育抑制濃度(MIC)の測定
ミューラーヒントン液体培地(MHB)中、標準的なマイクロタイター希釈法で測定した。細菌培養条件は、MHB中、37℃、一晩培養して、10コロニー形成単位(CFU)/mlの細菌濃度になるように希釈した。サンプルの調製は、10〜1μg/mlに希釈したポリリシン水溶液の100μl に、上記の条件で培養した細菌懸濁液100μlを添加することにより、5×105 CFU/mlの細菌濃度に調整して行った。そのサンプルを37℃で18時間インキュベートし、18時間後のMIC(細胞増殖を妨げた最も低いポリリシン濃度)を測定した。波長600nmにおける吸光度(A600)で光学濃度測定し、MICは、18時間の培養期間において細菌増殖しない最小ポリリシン濃度と定義した。結果を表1に示す。
【0096】
合成したポリリシンマクロマー(以下、MA-EPLということがある)と原材料であるポリリシン(EPL)とでのMICには、大差なかった。
表1.EPLとMA-EPLのMIC比較(単位:μg/mL)
【0097】
【表1】

【0098】
4.ヒドロゲルの合成
MA-ε-ポリリシン(0.1g)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)(0.2g)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)(0.1g)(Mn=700、Sigma-Aldrich)、水(3.6ml)、水溶性光重合開始剤(Irgacure 2959(0.05%))を攪拌混合し、当該混合溶液(10wt%)を水平ガラスのプレートの上に注ぎ、紫外線(365nm、±10mW/cm2、SUSS MicroTecGmbH製Osram 350-W水銀灯、モデルMA6)を15分間露光することでヒドロゲルを調製した。
同様に、MA-EPL、DMA、PEGDA及びポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGA)(Mn=526、Sigma-Aldrich)を使用し、適宜モノマーの配合を変えて4種類のヒドロゲル(サンプルA〜D)を調製した。
【0099】
5.機械的特性
インストロン引張圧縮試験機により、円柱形状試験片:径20mm、高さ10mmを使用して、加圧速度:0.5mm/secでヤング率および材料強度を求めた。
【0100】
その結果を図2及び3に示す。図2より、MA-EPLマクロマーの増量により、ヤング率を低下させる傾向があることがわかる。図2Aにおいて、MA-EPL量が6.25重量%のとき、ヤング率は197KPaであった。
【0101】
6.吸水性測定
光架橋されたヒドロゲルを大量の蒸留水に浸し、25℃にて平衡膨潤時の重量を測定した。その後、水中より取り出し、48時間放置、表面を吸水紙により拭い乾燥させ、乾燥重量を測定した。吸水性を以下の式により求めた。
吸水性=((ヒドロゲル重量−乾燥重量)/乾燥重量)×100
結果を図4に示す。架橋剤(PEGDA)量を多くすることにより、吸水量(含水量)を減らすことができることがわかる。
【0102】
7.ポリリシンヒドロゲルの抗菌性試験
4.の方法で培養ポリスチレンプレート上にポリリシンヒドロゲル試験体を生成させて、以下の抗菌性試験を行った。ヒドロゲルの配合組成は以下のとおりであった。
【0103】
サンプルA1:MA-EPL(6.25重量%)-DMA(62.5重量%)-PEGDA(31.25重量%)の配合比(重量比で1:10:5)
サンプルA2:MA-EPL(11.8重量%)-DMA(58.8重量%)-PEGDA(29.4重量%)の配合比(重量比で2:10:5)
各ポリリシンヒドロゲル試験体を蒸留水で2日間洗浄した。各々の細菌をトリプトソイ寒天培地(Trypticase Soy Agar)の上で24時間培養後、当該培養した細菌懸濁液をリン酸緩衝液(pH 7.2)で、3回遠心懸濁させた。得られた細菌懸濁液各10μlを、上記用意したポリリシンヒドロゲル試験体の中央に接種し、24℃、2時間維持した。その後、細菌懸濁液中に残存する菌数を確認するため、中和剤にて10倍に希釈した検体をトリプトソイ寒天培地中にて、35℃、48時間培養後、形成されたコロニー数をカウントした。コロニー数の減少率は以下の式により評価した。
LOG(減少率) = LOG(初期コントロール値)−LOG(2時間接触後のコロニー数)
結果を表2に示す。本発明のヒドロゲルは、大腸菌、緑膿菌、霊菌(セラチア)、黄色ブドウ球菌、カンジダアルビカンス(C. albicans)、Fusarium solani(F.solani)のいずれに対しても優れた抗菌活性を示した。
【0104】
【表2】

【0105】
8.コンタクトレンズへのコーティング例
フルオロアルキル(シリコーン含有アルキル)フマレート共重合体からなるコンタクトレンズ材料ディスク表面を、ガス種としてアルゴンガスを用い、出力50Wで、13.56MHz高周波誘導プラズマ放電処理(機種:March PX-500)を1分間おこなった。15分間大気中に放置した後、その上に、先に調製したコーティング組成物(配合組成:MA-EPL 25重量%、DMA 50重量%、PEGDA 25重量%)の10重量%水溶液を滴下し、その上にポリエステルフィルム(デュポン製 Melinex453)をかぶせてUV照射(365nm、100mW/cm、30分間)した。ポリエステルフィルムを取り除き、当該コンタクトレンズ材料ディスクを1晩、脱イオン交換水中で超音波処理することで未反応のコーティング組成物を取り除いた。得られたコンタクトレンズ材料ディスク表面に無色透明な薄いゲル膜が全面に均一にグラフトされていることが確認された。
【0106】
これを蛍光色素(フルオロセイン)で染色し、ε-ポリリシンヒドロゲル膜が表面に形成されていることを確認した。(図5の(I)コーティングする前、及び(II)コーティングした後の写真を参照。)
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、その高い生体適合性、抗菌性及び良好な濡れ性に起因して、例えば、コンタクトレンズなどの生物医学的な機器;泌尿器用カテーテル、ペースメーカー、心臓弁、人工心臓、乳房補充物、眼内レンズ、創傷被覆材、人工器官、生理活性剤用の輸送担体、関節全置換物などの生体移植材料などの多くの眼用機器及び医療用機器に幅広く有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を有するε−ポリリシンを含んでなる眼用又は医療用の重合性組成物。
【請求項2】
組成物全量に基づいて、(メタ)アクリロイル基を有するε−ポリリシンの含有量が、約0.1〜99重量%である請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合性組成物を含んでなる眼用又は医療用のコーティング剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の重合性組成物を重合して得られる眼用又は医療用の抗菌性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の抗菌性組成物を含んでなる眼用機器又は医療用機器。
【請求項6】
請求項4に記載の抗菌性組成物を含んでなるコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245053(P2011−245053A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121700(P2010−121700)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(506076891)ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー (14)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】