説明

着粉除去装置及び錠剤検査装置

【課題】錠剤を搬送して検査する搬送用ベルトに付着した錠剤の余剰粉を効率的に排除し、長時間運転が可能な着粉除去装置及び錠剤検査装置を提供する。
【解決手段】錠剤を搬送して不良錠剤を検査する搬送用ベルト12、22の搬送面と搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝とが設けられ、搬送用ベルト12、22の吸引溝に付着した錠剤の余剰粉を除去する着粉除去装置10であり、圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、吸引溝に堆積した余剰粉を除去するための圧縮空気供給手段により圧縮空気を噴射する噴射ノズルと、吸引溝を撮影して得られる画像信号に基づいて吸引溝に付着する余剰粉を検出する検査カメラ11、21と、検査カメラ11、21による余剰粉の検出によって、圧縮空気供給手段を制御して圧縮空気を噴射ノズルから噴射するベルト清掃制御装置30、40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤等の表面の疵や汚れを検査する錠剤検査装置に組み込まれている搬送用ベルトに付着する薬剤粉(余剰粉)を効率良く除去する着粉除去装置及び着粉除去装置を備える錠剤検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤には薬剤の粉体を圧縮成形して固形化したものがあり、固形化した錠剤は錠剤検査装置に装填されてその表面の疵や汚れの検査が行われる。この種の錠剤ではその表面に余剰粉が付着しており、余剰粉を除去した後に錠剤をカメラで撮影して表面の疵や汚れの検査が行われる。
【0003】
図12は錠剤検査システムの概要を示すものであり、第1フィーダー吸引部1、錠剤検査装置2及びその周辺装置のサイクロン3及び集塵機4を示し、固形化した錠剤は、錠剤に付着する余剰粉を除去するべく第1フィーダートラフ内の第1フィーダー吸引部1に送り込まれ、可能な限り錠剤に付着する余剰粉を除去した後、錠剤を整列させて錠剤検査装置2に装填され、錠剤表面の疵や汚れの検査が行われる。一方、第1フィーダー吸引部1にて吸引された余剰粉は、エアーとともにサイクロン3に送り込まれて大半が捕捉され、エアーは集塵機4を通して浄化され排出される。
【0004】
錠剤検査装置2には錠剤の上面と下面を漏れなく検査するべく、錠剤の上面側と下面側を吸引して搬送する搬送用ベルトが用意され、その搬送過程で錠剤の検査が行われている。搬送用ベルトは、図13(a)〜(c)に示すように、その搬送用ベルト5の上面には吸引孔6が開口する吸引溝7を設けた搬送面8が形成され、その下面両側に案内溝9が設けられ、搬送板側にも吸引孔5aが設けられ、吸引孔5a,6から空気を吸引することにより、錠剤Tは搬送面8に吸引載置され搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−212908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例の錠剤検査装置は、錠剤を安定的に搬送用ベルトに吸引して搬送するのに有効であるが、錠剤検査装置の前段の第1フィーダー吸引部において錠剤に付着する余剰粉を完全に除去することが困難であり、その結果、長時間運転では搬送用ベルトの吸引溝に微量の余剰粉が徐々に付着して堆積し、検査カメラで錠剤を撮影して画像処理し表面の疵や汚れを検査する際に、堆積した余剰粉と錠剤との判別がし難くなり、検査に支障を与えるおそれがあり、錠剤検査装置の運転を停止して搬送用ベルトの吸引溝に堆積した余剰粉を定期的に清掃を行う必要があり、夜間等の無人運転ができなくなることもあり、また、生産性が悪化する要因となっていた。このようなことから搬送用ベルトの吸引溝に堆積する余剰粉による汚れを検出し、自動的に清掃する装置の開発が望まれていた。
【0007】
また、通常、搬送用ベルトにはベルト表面を清掃するブラシを設けたり、弱い圧縮空気をベルト表面に吹き付けて清掃するが、搬送用ベルトの吸引溝に堆積し、こびり付いた余剰粉が除去可能な程度に大量の圧縮空気を連続的に噴射することは、騒音やエアー消費量が膨大なものとなり困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、錠剤を搬送して検査する搬送用ベルトに付着した錠剤の余剰粉を効率的に排除し、長時間運転が可能な着粉除去装置及び着粉除去装置を備える錠剤検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を達成したものであり、請求項1の発明は、錠剤を搬送して検査する搬送用ベルトの搬送面と該搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝とが設けられ、該搬送用ベルトの該吸引溝に付着した錠剤の余剰粉を除去する着粉除去装置であって、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記吸引溝に堆積した余剰粉を除去するための前記圧縮空気供給手段により圧縮空気を噴射する噴射ノズルと、
前記吸引溝を撮影して得られる画像信号に基づいて該吸引溝に付着する余剰粉を検出する余剰粉検出手段と、
前記余剰粉検出手段による余剰粉の検出によって、前記圧縮空気供給手段を制御して圧縮空気を前記噴射ノズルから噴射し、剥離した余剰粉を吸引する余剰粉除去制御手段と
を備えることを特徴とする着粉除去装置である。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記噴射ノズルが、前記搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向及び順方向から前記吸引溝の中央部とその両側部とのそれぞれに圧縮空気を所定傾斜角度で噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項1に記載の着粉除去装置である。
【0011】
また、請求項3の発明は、前記余剰粉除去制御手段は、前記搬送用ベルトにより搬送される錠剤の検査運転時、該搬送用ベルトの前記吸引溝の両側部に低圧の圧縮空気を噴射するように制御し、かつ前記余剰粉検出手段が前記吸引溝に付着する余剰粉を検出し検出信号を出力した際、該検出信号に基づいて前記余剰粉除去制御手段が前記搬送用ベルトに錠剤の装填を中止した後、該搬送用ベルトを低速運転とし、該搬送用ベルトの前記吸引溝に検査運転時より高圧の圧縮空気を噴射するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の着粉除去装置である。
【0012】
また、請求項4の発明は、搬送用ベルトに錠剤を吸引して搬送する搬送過程で検査カメラで該錠剤を撮影し不良錠剤の有無を検査する錠剤検査装置において、
前記搬送用ベルトにはその搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝が設けられ、該搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向から該吸引溝に圧縮空気を噴射して余剰粉を除去する噴射ノズルを備えたベルト清掃部が該搬送用ベルトに隣接して設けられ、前記検査カメラが撮影した前記搬送面の画像信号に基づいて、前記搬送用ベルトの該吸引溝に堆積した余剰粉を検出し、前記噴射ノズルから高圧の圧縮空気を噴射して前記吸引溝に堆積した余剰粉を除去するように余剰粉除去制御手段が制御することを特徴とする錠剤検査装置である。
【0013】
また、請求項5の発明は、前記余剰粉除去制御手段が、前記搬送用ベルトの検査運転を一時停止した後、該搬送用ベルトを低速運転とし、前記噴射ノズルから前記吸引溝に検査運転時より高圧の圧縮空気を噴射するように制御することを特徴とする請求項4に記載の錠剤検査装置である。
【0014】
また、請求項6の発明は、前記噴射ノズルが、前記搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向から前記吸引溝の中央部とその両側部とのそれぞれに圧縮空気を所定傾斜角度で噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の錠剤検査装置である。
【0015】
また、請求項7の発明は、前記噴射ノズルが、高圧の圧縮空気を大量に噴射する大口径の噴射口を有するとともに、常時低圧の圧縮空気を噴射する小口径の噴射口を有することを特徴とする請求項4,5又は6に記載の錠剤検査装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、錠剤を搬送して検査する搬送用ベルトの搬送面と該搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝とが設けられ、該搬送用ベルトの該吸引溝に付着した錠剤の余剰粉を除去する着粉除去装置であって、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段(低及び高圧設定用レギュレータ,切替制御弁)と、
前記吸引溝に付着する余剰粉を除去するための前記圧縮空気供給手段により圧縮空気を噴射する噴射ノズルと、
前記吸引溝を撮影して得られる画像信号に基づいて該吸引溝に堆積した余剰粉を検出する余剰粉検出手段(検査カメラ,画像レベル検出部)と、
前記余剰粉検出手段による余剰粉の検出によって、前記圧縮空気供給手段を制御して圧縮空気を前記噴射ノズルから噴射し、剥離した余剰粉を吸引する余剰粉除去制御手段(検査運転制御部,エアーブロー切り替え制御部)とを備えることを特徴とする着粉除去装置であるので、着粉除去装置が錠剤検査装置に組み込まれることにより、余剰粉検出手段が搬送用ベルトの吸引溝に余剰粉が付着して錠剤検査に支障が生じる程度の堆積したと判定し、搬送用ベルトの吸引溝に堆積した余剰粉を高圧の圧縮空気により自動的に効率良く除去することができる利点があり、錠剤検査にて錠剤の良不良の判定を誤認するといったおそれがなく、錠剤の検査効率を高める上で効果的であり、錠剤検査を長時間無人で運転することができる。
【0017】
また、請求項2の発明では、前記噴射ノズルが、前記搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向及び順方向から前記吸引溝の中央部とその両側部とのそれぞれに圧縮空気を所定傾斜角度で噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項1に記載の着粉除去装置であるので、搬送用ベルトの吸引溝に堆積した余剰粉を高圧の圧縮空気により自動的に効率良く除去することができる利点がある。
【0018】
また、請求項3の発明では、前記余剰粉除去制御手段は、前記搬送用ベルトにより搬送される錠剤の検査運転時、該搬送用ベルトの前記吸引溝の両側部に低圧の圧縮空気を噴射するように制御し、かつ前記余剰粉検出手段が前記吸引溝に付着する余剰粉を検出し検出信号を出力した際、該検出信号に基づいて前記余剰粉除去制御手段が前記搬送用ベルトに錠剤の装填を中止した後、該搬送用ベルトを低速運転とし、該搬送用ベルトの前記吸引溝に検査運転時より高圧の圧縮空気を噴射するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の着粉除去装置であるので、着粉除去装置が搬送用ベルトの吸引溝に堆積した余剰粉を自動的に検出して高圧の圧縮空気により除去し、錠剤検査にて錠剤を不良錠剤と誤認するといったおそれがなく錠剤の生産効率を高める上で効果的である。
【0019】
また、請求項4の発明では、搬送用ベルトに錠剤を吸引して搬送する搬送過程で検査カメラで該錠剤を撮影し不良錠剤の有無を検査する錠剤検査装置において、
前記搬送用ベルトにはその搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝が設けられ、該搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向から該吸引溝に圧縮空気を噴射して余剰粉を除去する噴射ノズルを備えたベルト清掃部が該搬送用ベルトに隣接して設けられ、前記検査カメラが撮影した前記搬送面の画像信号に基づいて、前記搬送用ベルトの該吸引溝に堆積した余剰粉を検出し、前記噴射ノズルから高圧の圧縮空気を噴射して前記吸引溝に堆積した余剰粉を除去するように余剰粉除去制御手段が制御することを特徴とする錠剤検査装置であるので、余剰粉除去制御手段が錠剤検査装置を制御して搬送用ベルトの吸引溝の汚れを自動的に検出し、清掃することが可能であり、錠剤検査装置を無人で連続運転可能となり、錠剤の検査効率が向上するとともに、夜間での連続運転も可能になり錠剤検査装置の稼働率も向上する利点がある。
【0020】
また、請求項5の発明では、前記余剰粉除去制御手段が、前記搬送用ベルトの検査運転を一時停止した後、該搬送用ベルトを低速運転とし、前記噴射ノズルから前記吸引溝に検査運転時より高圧の圧縮空気を噴射するように制御することを特徴とする請求項4に記載の錠剤検査装置であるので、搬送用ベルトの吸引溝に堆積した余剰粉による汚れを自動的に検出して着粉除去装置を制御しながら清掃をし、錠剤検査の誤判定が発生することがなく、錠剤検査装置の検査運転を行うことができる利点がある。
【0021】
また、請求項6の発明では、前記噴射ノズルが、前記搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向から前記吸引溝の中央部とその両側部とのそれぞれに圧縮空気を所定傾斜角度で噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の錠剤検査装置であるので、検査運転時は搬送用ベルトの吸引溝の両側に低圧の圧縮空気を噴射して清掃し、余剰粉による汚れを検出した場合は、さらに吸引溝の中央部分に高圧の圧縮空気を噴射することができ、搬送用ベルトの吸引溝を効率的に清掃することができる利点がある。
【0022】
また、請求項7の発明では、前記噴射ノズルが、高圧の圧縮空気を大量に噴射する大口径の噴射口を有するとともに、常時低圧の圧縮空気を噴射する小口径の噴射口を有することを特徴とする請求項4,5又は6に記載の錠剤検査装置であるので、通常の検査運転では低圧で少量の圧縮空気を噴射して清掃し、余剰粉が堆積した場合、大量の高圧の圧縮空気を噴射して清掃することができ、圧縮空気の消費量を抑え、高圧の圧縮空気の噴出による騒音を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る着粉除去装置及び着粉除去装置を備える錠剤検査装置について、実施の形態を図面を参照し説明する。なお、図1は本実施形態における着粉除去装置が組み込まれた錠剤検査装置の概略側面図であり、図2(a)はその錠剤検査装置の搬送用ベルトの要部斜視図であり、図2(b)はその着粉除去装置の概要を示す断面図及び系統図である。図3は本実施形態におけるベルト清掃部のブラシ機構を示す要部拡大図である。図4(a)は検査カメラによる錠剤の検査方法を説明するための概略側面図であり、図4(b)はその撮影画像を示している。図5(a)は錠剤表面の疵や汚れを検査する際の波形を示し、図5(b)が汚れ検出レベルを示す波形図である。図6は本実施形態の着粉除去装置の制御系を示す概略系統図である。図7は本実施形態の着粉除去装置の制御部を示すブロック図であり、図8はその制御フローの概要を示す図である。図9は本実施形態の搬送用ベルトを示す斜視図であり、図10(a),(b)はその具体例を示す断面図及び平面図である。図11(a)〜(c)は噴射ノズルの正面図、側面図、及び断面図である。
【0024】
図1は、本実施形態の錠剤検査装置10を示し、薬剤を圧縮成形して固形化した錠剤Tを装填して錠剤Tの表面及び側面の疵や汚れを、検査カメラ11,21で錠剤の下面と上面及び側面を撮影して検査する装置を示し、検査カメラ11の映像信号はベルト清掃制御装置30に入力され、また、検査カメラ21の映像信号はベルト清掃制御装置40に入力される。先ず、錠剤検査装置10の錠剤Tの下面側の検査を行う機構部分を説明すると、12は錠剤Tを搬送する搬送用ベルトを示し、搬送用ベルト12は駆動用モータ(図示無し)により矢印Y方向に駆動し、搬送用ベルト12の内輪側には搬送用ベルト12に隣接して錠剤Tの上面側を吸引するための吸引搬送用負圧室14が設けられ、吸引搬送用負圧室14が負圧になることにより搬送用ベルト12の搬送面に錠剤Tの上面側が吸引され、錠剤Tが矢印Y方向に搬送され、検査カメラ11の直上を通過し錠剤検査が行われる。この錠剤Tの下面側検査工程では錠剤Tの下面側の検査と同時に錠剤Tの側面検査が行われる。
【0025】
次に、錠剤検査装置10の錠剤Tの上面側の検査を行う機構部分を説明する。搬送用ベルト12で搬送された錠剤Tは錠剤Tの上面側の検査を行うために搬送用ベルト22に受け渡される。搬送用ベルト22は駆動用モータ(図示無し)により矢印Y方向に駆動し、搬送用ベルト22の内輪側には、搬送用ベルト22に隣接して錠剤Tの下面側を吸引するための吸引搬送用負圧室24が設けられ、搬送用ベルト12から移送された錠剤Tは、吸引搬送用負圧室24が負圧になることにより搬送用ベルト22の搬送面に錠剤Tの下面側が吸引され、錠剤Tは矢印Y方向に搬送されて検査カメラ21の直下を通過する過程で、錠剤Tの上面側の疵や汚れが検査され、次工程へと搬送される。この錠剤Tの上面側検査工程では錠剤Tの上面側の検査と同時に側面の検査が行われる。
【0026】
錠剤検査装置10の搬送用ベルト12は、図2(a)に示すように、その上面側に錠剤を載置するための搬送面12aが形成され、搬送用ベルト12の搬送方向中心線に沿った上面側に吸引溝12bが設けられ、吸引溝12bに搬送方向中心線に沿って吸引孔12cが所定の間隔で多数形成され、かつ搬送面12aの両側が傾斜面12eとなり、搬送用ベルト12の下面両側には案内溝12dが形成されている。また、上面側検査工程側の搬送用ベルト22も搬送用ベルト12と同様な構成であるので説明を省略する。
【0027】
また、錠剤検査装置10には搬送用ベルト12に隣接してベルト清掃部15が設けられ、搬送用ベルト12がベルト清掃部15を通過する際に清掃が行われる。ベルト清掃部15は、図2(b)に示すように、噴射ノズル16が搬送用ベルト12に隣接して互いに向かい合うように配置され、搬送用ベルト12がベルト清掃部15を通過する際、ベルト清掃部15に設けられた噴射ノズル16から常時低圧の圧縮空気が搬送用ベルト12の搬送面12aに噴射される。噴射ノズル16は、小口径の噴射口16aと大口径の噴射口16bが搬送用ベルト12に平行でかつ搬送面12aに対し概ね60°の傾斜角度に設けられている。噴射口16aからは、図2(a)に矢印Aで示したように、低圧の圧縮空気が搬送面12aに向かって噴射され、噴射口16bからは、矢印Bに示すように、大量の高圧の圧縮空気が吸引溝12bに向かって放射される。噴射ノズル16から噴射される圧縮空気は、その一方が搬送用ベルト12の搬送方向である矢印Yに抗する方向に所定の傾斜角度で噴射され、他方が搬送用ベルト12の矢印Yに沿って順方向に所定の傾斜角度で噴射される。また、ベルト清掃部15には、図3に示したように、搬送ベルト12が清掃ボックスで覆われ、清掃ボックス内にはブラシ機構15aが具えられ、ブラシ機構15aにより搬送ベルト12に付着する余剰粉を剥離する。ブラシ機構15aは清掃ボックスで覆われており、剥離した余剰粉が飛散するのを防止している。また、清掃ボックス内の負圧室14側に吸引孔が多数設けられ、剥離した余剰粉は吸引孔を通して負圧室14側に捕捉される。また、上面側検査工程側の搬送用ベルト22にも同様のベルト清掃部25が設けられ、前記と同様に搬送用ベルト22が清掃されている。
【0028】
また、噴射ノズル16には圧縮空気が供給される配管20a,20bがそれぞれ接続され、噴射口16aに接続された配管20aは低圧設定用レギュレータ18が接続され、噴射口16bに接続された配管20bは高圧設定用レギュレータ19が接続され、これら配管20a,20bが切替制御弁17に接続され、かつ切替制御弁17に配管20cが接続されて圧縮空気を供給するエアーポンプ又はエアーブローに接続されている。切替制御弁17は切替制御信号により、噴射ノズル16から高圧又は低圧の圧縮空気が噴射されるように切替制御することができる。なお、低圧の圧縮空気は常時供給するように制御することも可能である。
【0029】
次に、錠剤検査装置10の主要な機能である錠剤検査について、図4(a),(b)を参照し説明し、続いて図5の搬送用ベルト12(22)の余剰粉による汚れ検出について説明する。錠剤検査は、検査カメラ11(21)により、錠剤Tの上下表面及び側面の疵や汚れ等を検査する。図4(a)は検査カメラ11(21)による錠剤Tの表面と側面を撮影する光学系を示し、搬送用ベルト12(22)に錠剤Tが吸引載置され、検査カメラ11が錠剤Tの表面を撮影し画像処理することにより、図4(b)の表又は裏面画像が得られる。また、錠剤Tの側部近傍に互いに対向するようにプリズム50が配置され、錠剤Tの側面からの光がプリズム50を通過し、その光路上にミラー51,52が設けられ、ミラー51,52で反射した光が検査カメラ11に入射し撮影され、図4(b)の錠剤Tの側面画像が得られる。表又は裏面画像及び側面画像は、錠剤に疵や欠け、或いは汚れがあれば、欠陥のある表又は裏面画像及び側面画像と、正常な錠剤の表又は裏面画像及び側面画像とを比較することにより、不良錠剤を容易に検出することができる。
【0030】
また、図5(a)は錠剤を検査カメラで撮影して得られた表又は裏面画像及び側面画像の輝度レベルによる波形図であって、(イ)が錠剤の表又は裏面の画像による輝度レベル(白レベル)による波形であり、(ロ)が錠剤の側面の画像による輝度レベル(白レベル)による波形であり、この輝度レベルによる波形が観測されると、検査カメラの撮影範囲を錠剤が通過したことを検出できる。また、図5(b)は搬送用ベルト12の搬送面12aに錠剤Tがなく、吸引溝12bに余剰粉が付着している場合と付着していない場合とを示す波形図であり、表又は裏面画像及び側面画像の輝度レベルから搬送用ベルト12の搬送面12aの汚れ検出が可能であることを示している。図5(b)中の(イ)の波形は、搬送面12aに錠剤Tがなく、吸引溝12bに余剰粉が付着していない場合を示し、搬送用ベルト12の色彩(黒色系)の輝度レベルによる波形図であり、(ロ)の波形は吸引溝12bに余剰粉が付着し、主に吸引孔間(桟部)に付着した余剰粉が撮影され、余剰粉が堆積して輝度レベルが上昇したことを示す波形図である。即ち、搬送用ベルト12の吸引溝12bに余剰粉が堆積するに連れて輝度レベルが矢印Xに示すように上昇し、この輝度レベルにより錠剤検査において誤判定が生じる程度に吸引孔間(桟部)が汚れているか否かを検出することができる。従って、波形(ロ)の輝度レベルが所定閾値を超えると、汚れ検出信号を出力するようにし、吸引孔間(桟部)の汚れを自動的に清掃し得るように制御するための信号とすることができる。
【0031】
次に、本実施形態の錠剤検査装置における搬送用ベルトの吸引溝の清掃運転について図6〜図8を参照し説明する。搬送用ベルト12は、図6に示すように、駆動用モータ13により矢印Y方向に駆動し、錠剤Tが搬送用ベルト12に吸引されて搬送される。検査カメラ11はこの搬送過程で錠剤Tの下面側及び搬送用ベルト12の搬送面(錠剤間の吸引溝)を撮影し、撮影信号がベルト清掃制御装置30に入力される。ベルト清掃制御装置30は画像処理部31と制御部32が設けられ、検査カメラ11からの撮影信号が画像処理部31に入力されて微分処理、輪郭強調処理、2値化処理等の画像処理が行われ、その画像信号が所定のタイミングで抽出されて制御部32に入力される。制御部32には、図7に示すように、画像レベル検出部33、検査運転制御部34、及びエアーブロー切り替え制御部35が設けられている。錠剤検査装置には、制御部32による図8の制御フローに従って清掃運転を行う清掃モードを備えられている。
【0032】
また、ベルト清掃部15は、小口径及び大口径の噴射口16a,16bが設けられた噴射ノズル16が搬送用ベルト12の上部に二箇所配置され、噴射ノズル16に配管20aが接続されて低圧設定用レギュレータ18に接続され、かつ噴射ノズル16に配管20bが接続されて高圧設定用レギュレータ19に接続され、それぞれの配管20a,20bが切替制御弁17に接続され、切替制御弁17に接続された配管20cを介してエアーブロー又はエアーポンプに接続されている。なお、図6では、噴射ノズル16は、搬送用ベルト12に対し、搬送用ベルト12の搬送方向に抗する方向と、順方向に噴射されるように配置されているが、搬送用ベルト12の搬送方向に抗する方向のみとしてもよい。また、
検査運転時は低圧の圧縮空気を2方向から噴射し、清掃運転時は高圧の圧縮空気を搬送方向と逆向きとを1方向から噴射するように配置してもよい。なお、ベルト清掃部25の噴射ノズルも同様な構成である。
【0033】
続いて、ベルト清掃制御装置30による清掃運転について図8の制御フローを参照し説明する。先ず、ステップS1にて、搬送用ベルト12の吸引溝12bの桟部に堆積した余剰粉による白レベル(輝度レベル)を画像レベル検出部33で検知し、白レベルが所定閾値を超えているか否かを検知し所定閾値を超えている場合、汚れ検出信号を出力し、ステップS2に進む。なお、吸引溝12bの桟部とは、余剰粉が堆積し易い部分を指し、吸引溝12bに設けられた吸引孔12c間の部分或いは吸引孔12cの周辺部分であり、検査カメラ11が撮影する錠剤T間の吸引溝12b部分の映像に基づく画像信号の輝度レベルにより余剰粉の堆積を検出し、汚れ検出を行う。
【0034】
ステップS2では、汚れ検出信号が検査運転制御部34に入力されて錠剤の疵や欠け或いは汚れ検出する検査運転を停止し、搬送用ベルト12への錠剤供給を停止し、ステップS3に進む。ステップS3では検査運転制御部34が搬送用ベルト12の搬送速度を1m/分程度の低速に切り替えるための切替制御信号を駆動用モータ13に供給し、搬送用ベルト12を低速運転とし、ステップS4に進む。なお、搬送用ベルト12は検査運転時、例えば30m/分程度の速度で運転している。ステップS4では、汚れ検出信号に基づく切替制御信号により切替制御弁17を切り替え、低圧の圧縮空気の供給から高圧の圧縮空気の供給に切り換え、高圧の圧縮空気を高圧設定用レギュレータ19を介して大口径の噴射口16bから大量の高圧圧縮空気が矢印Aに示すように桟部へ噴射され、桟部に堆積した余剰粉を除去し清掃し、ステップS5に進む。ステップS5では、画像レベル検出部33が白レベルが所定閾値を超えている場合、ステップS4に戻り、所定閾値を超えていない場合、ステップS6に進み、検査運転制御部34により駆動信号を送出し、搬送用ベルト12を検査運転に切り替え、錠剤検査装置10の検査運転を再開し、画像レベル検出部33が汚れ検出信号を出力するまで検査運転を継続する。なお、検査運転時、噴射ノズル16からは矢印Bに示すように低圧の圧縮空気が常時桟部に噴射されて清掃が行われている。また、ベルト清掃制御装置40も同様の制御フローによりベルト清掃部25の噴射ノズルから圧縮空気が噴射させて搬送用ベルト22の桟部の汚れが自動的に清掃されている。
【0035】
なお、錠剤Tは、図9に示すように、搬送用ベルト12に投入され、搬送板側にも吸引孔10aが設けられ、吸引孔10a及び搬送用ベルト12の吸引溝12bに開口する吸引孔12cからエアーを吸引搬送用負圧室14により吸引することにより、錠剤Tは搬送面12aに吸引載置されて搬送される。錠剤Tは搬送用ベルト12の搬送速度と錠剤Tの投入間隔で所定の間隔で吸引載置される。なお、搬送用ベルト22も同様な構成であり、吸引搬送用負圧室24によりエアーを吸引することによって、搬送用ベルト22の搬送面に錠剤Tが吸引されて錠剤検査が行われる。
【0036】
また、搬送用ベルト12(22)は、図10(a),(b)に図示したように、吸引溝12bの幅は2又は3mm程度であり、吸引孔12cは上記実施形態のように円形である必要はなく、四角形であってもよく、吸引孔12cの幅は図10(a),(b)の何れも1.5mm程度である。また、吸引孔12c間の間隔は1mm程度である。
【0037】
また、噴射ノズルは、上記実施形態に限定されることなく、錠剤検査装置が搬送用ベルトが2列並列に配設された場合、図11に示すように、管路50cに連通する噴射口群50a,50bが設けられた噴射ノズル50であってもよい。この噴射ノズル50は、搬送用ベルトに対応する切欠部50dが二箇所設けられ、それぞれの切欠部50dに大口径の噴射口50eと小口径の噴射口50fとが設けられ、噴射口50fは噴射口50eを中心に左右に複数設けられている。噴射口50eの口径はφ2又はφ3程度の大きめの孔であり、噴射口50fはφ0.5が噴射口50eの左右に二個設けられている。また、管路50cの両端は固定用ビス50hが螺合して封止されている。また、図11(b)の噴射口50e,50fは搬送用ベルトに平行でかつ搬送面の垂直方向に対して概ね60°の傾斜角度で圧縮空気が搬送用ベルトに噴射されるように構成されている。ネジ孔50gには圧縮空気が供給される配管が接続される。この噴射ノズル50では、大口径の噴射口50eと小口径の噴射口50fとが管路50cに連通しており、通常の検査運転時は低圧の圧縮空気が噴射ノズル50に供給され、余剰粉の堆積による汚れが検出された際は噴射ノズル50には高圧の圧縮空気が供給される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の活用例の一例としては、錠剤などの表面に余剰粉が付着し、錠剤の検査工程で余剰粉が搬送路に付着して検査に支障を与える可能性がある錠剤検査装置に着粉除去装置を組み込んで利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態における着粉除去装置が組み込まれた錠剤検査装置の概略側面図である。
【図2】(a)は本実施形態における錠剤検査装置の搬送用ベルトの要部斜視図であり、(b)はその着粉除去装置の概要を示す断面図及び系統図である。
【図3】本実施形態におけるベルト清掃部のブラシ機構を示す要部拡大図である。
【図4】(a)は検査カメラによる錠剤の検査方法を説明するための概略側面図であり、(b)は撮影画像を示す図である。
【図5】本実施形態における錠剤表面の疵や汚れを検査する際の波形を示す図である。
【図6】本実施形態の着粉除去装置の制御系を示す概略系統図である。
【図7】本実施形態の着粉除去装置の制御部を示すブロック図である。
【図8】本実施形態における着粉除去装置の制御フローの概要を示す図である。
【図9】本実施形態の搬送用ベルトを示す斜視図である。
【図10】(a),(b)はその具体例を示す断面図及び平面図である。
【図11】(a)〜(c)は本実施形態における噴射ノズルの他の形態を示す正面図、側面図、及び断面図である。
【図12】従来の錠剤検査装置を示す概要図である。
【図13】(a)〜(c)は従来の錠剤検査装置に使用される搬送用ベルトの断面図、正面図、及び斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10 錠剤検査装置
11,21 検査カメラ
12,22 搬送用ベルト
12a 搬送面
12b 吸引溝
12c 吸引孔
12d 案内溝
12e 傾斜面
13 駆動用モータ
14,24 吸引搬送用負圧室
15 ベルト清掃部
15a ブラシ機構
16 噴射ノズル
16a,16b 噴射口
17 切替制御弁
18 低圧設定用レギュレータ
19 高圧設定用レギュレータ
20a〜20c 配管
30,40 ベルト清掃制御装置
31 画像処理部
32 制御部
33 画像レベル検出部
34 検査運転制御部
35 エアーブロー切り替え制御部
50 プリズム
51,52 ミラー
T 錠剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送し検査する搬送用ベルトの搬送面と該搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝とが設けられ、該搬送用ベルトの該吸引溝に付着した錠剤の余剰粉を除去する着粉除去装置であって、
圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記吸引溝に堆積した余剰粉を除去するための前記圧縮空気供給手段により圧縮空気を噴射する噴射ノズルと、
前記吸引溝を撮影して得られる画像信号に基づいて該吸引溝に付着する余剰粉を検出する余剰粉検出手段と、
前記余剰粉検出手段による余剰粉の検出によって、前記圧縮空気供給手段を制御して圧縮空気を前記噴射ノズルから噴射し、剥離した余剰粉を吸引する余剰粉除去制御手段と
を備えることを特徴とする着粉除去装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルが、前記搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向及び順方向から前記吸引溝の中央部とその両側部とのそれぞれに圧縮空気を所定傾斜角度で噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項1に記載の着粉除去装置。
【請求項3】
前記余剰粉除去制御手段は、前記搬送用ベルトにより搬送される錠剤の検査運転時、該搬送用ベルトの前記吸引溝の両側部に低圧の圧縮空気を噴射するように制御し、かつ前記余剰粉検出手段が前記吸引溝に付着する余剰粉を検出し検出信号を出力した際、該検出信号に基づいて前記余剰粉除去制御手段が前記搬送用ベルトに錠剤の装填を中止した後、該搬送用ベルトを低速運転とし、該搬送用ベルトの前記吸引溝に検査運転時より高圧の圧縮空気を噴射するように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の着粉除去装置。
【請求項4】
搬送用ベルトに錠剤を吸引して搬送する搬送過程で検査カメラで該錠剤を撮影し不良錠剤の有無を検査する錠剤検査装置において、
前記搬送用ベルトにはその搬送面に錠剤を吸引するための吸引孔を設けた吸引溝が設けられ、該搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向から該吸引溝に圧縮空気を噴射して余剰粉を除去する噴射ノズルを備えたベルト清掃部が該搬送用ベルトに隣接して設けられ、前記検査カメラが撮影した前記搬送面の画像信号に基づいて、前記搬送用ベルトの該吸引溝に堆積した余剰粉を検出し、前記噴射ノズルから高圧の圧縮空気を噴射して前記吸引溝に堆積した余剰粉を除去するように余剰粉除去制御手段が制御することを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項5】
前記余剰粉除去制御手段が、前記搬送用ベルトの検査運転を一時停止した後、該搬送用ベルトを低速運転とし、前記噴射ノズルから前記吸引溝に検査運転時より高圧の圧縮空気を噴射するように制御することを特徴とする請求項4に記載の錠剤検査装置。
【請求項6】
前記噴射ノズルが、前記搬送用ベルトの搬送方向に抗する方向から前記吸引溝の中央部とその両側部とのそれぞれに圧縮空気を所定傾斜角度で噴射する噴射口を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の錠剤検査装置。
【請求項7】
前記噴射ノズルが、高圧の圧縮空気を大量に噴射する大口径の噴射口を有するとともに、常時低圧の圧縮空気を噴射する小口径の噴射口を有することを特徴とする請求項4,5又は6に記載の錠剤検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−143653(P2008−143653A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332853(P2006−332853)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000209751)池上通信機株式会社 (123)
【Fターム(参考)】