説明

着色剥離方法

【課題】被処理物の表面から着色物を効率よく確実に剥離除去することができる着色剥離方法を提供する。
【解決手段】小片状に破砕した合成樹脂よりなる被処理物Wに洗浄水Lを付加し、その被処理物Wにニーディングを施すことにより、被処理物Wの表面から着色物を剥離する。この場合、洗浄水Lとしてアルカリ水溶液を用いるとよい。また、被処理物Wに洗浄水Lを付加する際に、研磨材Aを添加するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばペットボトル等の無色透明な合成樹脂よりなる容器類を回収し、その材料を原料として再利用する際に、回収物の表面に施された着色物を剥離除去するための着色剥離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の着色剥離方法としては、例えば特許文献1に開示されるような方法が提案されている。この従来方法においては、樹脂片を水とともに洗浄槽内に投入し、樹脂片を洗浄槽内に設けられた粗面に衝突させて、その樹脂片の表面を削りながら同樹脂片を進行させることにより、樹脂片の表面に施された着色物を剥離除去するようになっている。
【特許文献1】特開2005−161779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来の着色剥離方法においては、樹脂片と洗浄槽内の粗面との衝突による樹脂片の表面の削り取り作用のみでは、樹脂片の表面から着色物を効果的に剥離することができないという問題があった。
【0004】
すなわち、ペットボトル等の回収物の表面には、複層皮膜紫外線重合、熱圧着、熱転写、ラミネート等の種々の方法により着色が施されている。また、昨今では食品安全等の観点から、着色物が簡単に剥離しないようにするための着色定着方法が採用されている。そのため、樹脂片を洗浄槽内の粗面に衝突させるという単純な作用のみでは、樹脂片の表面から着色物を完全に剥離することが困難であった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、被処理物の表面から着色物を効率よくかつ有効に剥離除去することができる着色剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、小片状に破砕した合成樹脂よりなる被処理物に洗浄水を付加し、その被処理物にニーディングを施すことにより、被処理物の表面から着色物を剥離することを特徴としている。
【0007】
従って、この着色剥離方法によれば、小片状の被処理物にニーディングが施されることにより、各被処理物の面が洗浄水を介して擦り合わされて、被処理物の表面から着色物を短時間に効率よく、かつ確実に剥離除去することができる。
【0008】
さらに、前記の方法において、洗浄水としてアルカリ水溶液を加えるとよい。このようにした場合には、ニーディング効果とアルカリ水溶液の洗浄効果とにより着色物の剥離効果を一層向上させることができる。
【0009】
さらに、前記の方法において、被処理物に洗浄水を付加する際に、研磨材を添加するとよい。このようにした場合には、研磨材により着色物の剥離効率をアップさせることができる。
【0010】
研磨材は、研磨粒が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、被処理物の表面から着色物を効率よく有効に剥離除去することができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、この実施形態の着色剥離方法においては、ニーディング装置11が用いられ、そのニーディング装置11内にペットボトル等の無色透明な合成樹脂よりなる容器類等の回収物が小片状(10数mm程度)に破砕した状態で、被処理物Wとして投入される。この場合、被処理物Wには洗浄水Lとして所定量の上水及び研磨材Aが混合されて付加される。洗浄効果を向上させるためには、カセイソーダ等のアルカリ水溶液Laが用いられ、前記洗浄水Lがニーディング装置11内において弱アルカリ水溶液となる。また、研磨材Aとしては、ホワイトアランダム等の研磨粒で、粒度が#54〜#120のもの、(例えば、(株)不二精機製造所製、商品名:フジホワイト、粒度:#100)が用いられる。この研磨粒の材質や粒度は、前記のものに限定されるものではなく、各種条件に応じて適宜に選択される。そして、このニーディング装置11内で、被処理物Wが研磨材Aを混合した洗浄水Lとともにニーディングされることにより、被処理物Wの表面から着色物が剥離除去される。洗浄水Lにカセイソーダ等のアルカリ水溶液Laを添加することにより、洗浄効果はさらに向上することが認められているが、これは、被処理物Wがニーディングによる摩擦熱により摂氏60度〜70度程度に発熱するため、加水分解等の反応作用や、酸性分の反応除去が促進すると考えられる。
【0013】
次に、着色剥離処理後の被処理物Wは比重選別機能を有する水洗処理装置12に投入され、その水洗処理装置12により水洗いされる。これにより、被処理物Wの表面から、研磨材A及び浮遊脱色物D1が分離除去される。その後、水洗処理装置12において沈殿した脱色物は遠心分離装置14に投入され、研磨材Aを含む処理水と、残滓となる脱色物(沈殿物)D2とに分離される。
【0014】
そして、研磨材Aを含む処理水中の研磨材Aは補充研磨材Aaとともにニーディング装置11に供給されて再利用される。また、処理水は補充のアルカリ水溶液Laとともに洗浄水Lとしてニーディング装置11に供給されて再利用される。
【0015】
次に、前記ニーディング装置11の構成について説明する。
図2に示すように、ニーディング装置11には管路としての横方向に延びる円筒状の処理管17が装備されている。処理管17の一端上壁には投入口18が形成され、その投入口18上にはホッパ19が取り付けられている。そして、小片状に破砕した被処理物Wに対して適量の研磨材混合水と、アルカリ水溶液Laを付加した状態で、このホッパ19を介して投入口18から処理管17の内部に投入されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、前記処理管17内には回転軸20が回転可能に貫通支持され、処理管17外において回転軸20の一端には、同回転軸20を一方向へ回転させるための駆動用モータ21が接続されている。処理管17内において、回転軸20の一端側の外周には、送り手段としての送りスクリュー22が固定されている。そして、この送りスクリュー22の回転により、投入口18から投入された被処理物Wが処理管17の一端側から他端側(図2の右端側から左端側)に圧送されるようになっている。
【0017】
図2及び図3に示すように、前記送りスクリュー22の下流側において回転軸20の他端側の外周には、複数のニーディング部材23が並設されている。各ニーディング部材23は、回転軸20の角柱部20aに外嵌される角筒部23aと、その角筒部23aの外周に異なったピッチ及び位相で突設された1〜4枚の第1または第2ニーディングブレイド23b,23cとから構成されている。この第1、第2ニーディングブレイド23b,23cは、回転軸20の回転方向に対して所定角度で相反する方向、つまり被処理物送り方向及びその反対方向に傾斜して配置されている。そして、回転軸20の回転時には、各ニーディング部材23の第1ニーディングブレイド23bにより被処理物Wに対して送り込み作用を伴うニーディングが行われるとともに、第2ニーディングブレイド23cにより被処理物Wに対して送り返し作用を伴うニーディングが行われるようになっている。
【0018】
図2及び図3に示すように、前記各ニーディング部材23のニーディングブレイド23b,23c間に位置するように、処理管17の上部内面には阻止手段を構成する複数の阻止金具24が所定間隔おきに突設されている。そして、ニーディング部材23の回転に伴って、被処理物Wが複数のニーディングブレイド23b,23cにより回転軸20の軸線に沿う送り方向及びそれと反対方向に往復動されながらニーディングされるとき、阻止金具24により被処理物Wの回動が阻止されて、被処理物Wに対するニーディング作用が増強されるようになっている。
【0019】
図2及び図4に示すように、前記ニーディング部材23の下流側において、回転軸20の端部のネジ部20bには戻し部材25が螺着され、その外周には前記第2ニーディングブレイド23cと同様に、原材料の送り方向と反対方向に傾斜した3枚の戻しブレード25aが120度おきに突設されている。ニーディング部材23の下流側において、処理管17の下部には排出口26が形成され、図示しないが、この排出口26にはエアダンパにより開放圧力が調整される蓋体が取り付けられている。そして、処理管17内で被処理物Wがニーディング部材23及び戻し部材25の回転により排出口26に導かれるとともに、処理管17の内部圧力が所定値以上に高くなったときに、その被処理物Wがエアダンパの圧力に抗して閉鎖状態の蓋体を開放させながら排出されるようになっている。
【0020】
従って、このニーディング装置11により小片状の被処理物Wにニーディングが施され、各被処理物Wの表面が相互に擦り合わされて、その被処理物Wの表面から着色物が短時間に効率よく有効に剥離除去される。この場合、被処理物Wに付加する洗浄水Lとしてアルカリ水溶液を用いると、そのアルカリ水溶液の洗浄効果により、被処理物Wの表面が滑らかになって、着色物のみが剥離対象となり、着色物の剥離効果が一層向上する。また、被処理物Wに洗浄水Lを付加する際に、研磨材Aを添加すると、その研磨材Aの研磨作用により着色物の剥離効率が一層アップする。
【0021】
以上のように、実施形態においては、次の効果がある。
(1) ニーディングにより被処理物Wの表面が相互に擦り合わされて、その被処理物Wの表面から着色物が効率よく除去される。
【0022】
(2) 洗浄水Lとしてアルカリ水溶液を用いているため、洗浄効果により、着色物の剥離作用が一層向上する。
(3) 洗浄水Lに研磨材Aを添加されているため、研磨作用により着色物の剥離効率が一層アップする。
【0023】
(4) 研磨材Aや処理水が再利用されるため、ランニングコストを低減できる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0024】
・ 前記実施形態とは異なった構成のニーディング装置を用いて、被処理物Wにニーディングを施すようにすること。
・ 前記実施形態とは異なった洗浄水L及び研磨材Aを被処理物Wに付加すること。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態の着色剥離方法を示すフローチャート。
【図2】図1のフローチャートにおけるシーディング装置を示す断面図。
【図3】図2の3−3線における拡大断面図。
【図4】図2の4−4線における拡大断面図。
【符号の説明】
【0026】
11…ニーディング装置、W…被処理物、L…洗浄水、La…アルカリ水溶液、A…研磨材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小片状に破砕した合成樹脂よりなる被処理物に洗浄水を付加し、その被処理物にニーディングを施すことにより、被処理物の表面から着色物を剥離することを特徴とした着色剥離方法。
【請求項2】
前記洗浄水としてアルカリ水溶液を用いることを特徴とした請求項1に記載の着色剥離方法。
【請求項3】
前記被処理物に洗浄水を付加する際に、研磨材を添加することを特徴とした請求項1または請求項2に記載の着色剥離方法。
【請求項4】
前記研磨材は研磨粒である請求項3に記載の着色剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−229930(P2007−229930A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50526(P2006−50526)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(391011814)株式会社大善 (9)
【Fターム(参考)】