説明

着色感光性樹脂組成物、硬化膜及びその製造方法、カラーフィルタ、並びに、表示装置

【課題】現像マージンが大きく、耐熱性、耐光性及び耐溶剤性に優れる着色感光性樹脂組成物、前記着色感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜、前記硬化膜を具備するカラーフィルタ、及び、前記カラーフィルタを具備する液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】(成分A)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)、並びに、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)、を少なくとも含む共重合体、(成分B)感放射線性ラジカル重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、並びに、(成分D)着色剤、を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色感光性樹脂組成物、硬化膜及びその製造方法、カラーフィルタ、並びに、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど種々の表示装置には不可欠な構成部品である。
近年、特にTV用途のカラーフィルタでは、従来のモニター用途に比べて、より高度な画質、すなわち、コントラスト、及び色純度の向上が求められている。また、主に消費電力を減少させる目的でカラーフィルタの輝度向上の検討も盛んになっている。
また、着色感光性樹脂組成物の信頼性を向上させるために、硬化膜の架橋をより強固にすることが有効と考えられ、例えば、薬品耐性を向上させるために、着色感光性樹脂組成物中にオキセタニル基とカルボキシル基やフェノール性水酸基とを含む樹脂を添加するといった試みがなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、現像マージンが大きく、耐熱性、耐光性及び耐溶剤性に優れる着色感光性樹脂組成物、前記着色感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜、前記硬化膜を具備するカラーフィルタ、及び、前記カラーフィルタを具備する液晶表示装置を提供することである。
なお、本発明において「現像マージン」とは、現像時における、現像される線幅変化の現像時間に対する余裕度のことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<9>、<10>、<11>又は<13>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<8>、<12>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)、並びに、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)、を少なくとも含む共重合体、(成分B)感放射線性ラジカル重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、並びに、(成分D)着色剤、を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物、
<2>前記構成単位(a1)が、式(A2)で表される構成単位である、上記<1>に記載の着色感光性樹脂組成物、
【0006】
【化1】

(式(A2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方が前記アルキル基又はアリール基であり、R3は、アルキル基又はアリール基を表し、R1又はR2とR3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R4は、水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。)
【0007】
<3>前記構成単位(a2)が、オキセタニル基を有する、上記<1>又は<2>に記載の着色感光性樹脂組成物、
<4>成分Bが、オキシムエステル化合物を少なくとも含む、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物、
<5>成分Bが、ヘキサアリールビイミダゾール化合物を少なくとも含む、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物、
<6>成分Dが、平均一次粒子径が10〜30nmの範囲である顔料を少なくとも含む、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物、
<7>成分Dが、染料を少なくとも含む、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物、
<8>波長300〜420nmの範囲のレーザー露光用である、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物、
<9>上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物により製造された硬化膜、
<10>上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の着色感光性樹脂組成物により基板上に膜を形成する膜形成工程、前記膜を活性光線により露光する露光工程、露光された前記膜を水性現像液により現像する現像工程、及び、現像された前記膜を熱硬化するポストベーク工程、を含む硬化膜の製造方法、
<11>上記<9>に記載の硬化膜、又は、上記<10>に記載の製造方法により得られた硬化膜を具備するカラーフィルタ、
<12>前記硬化膜をアレイ上に具備する、上記<11>に記載のカラーフィルタ、
<13>上記<11>又は<12>に記載のカラーフィルタを具備する表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現像マージンが大きく、耐熱性、耐光性及び耐溶剤性に優れる着色感光性樹脂組成物、前記着色感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜、前記硬化膜を具備するカラーフィルタ、及び、前記カラーフィルタを具備する液晶表示装置を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は、特に断りのない限り、「A以上B以下」を意味し、端点であるA及びBを含む数値範囲を意味する。
【0010】
I.着色感光性樹脂組成物
本発明の着色感光性樹脂組成物は、(成分A)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)、並びに、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)、を少なくとも含む共重合体、(成分B)感放射線性ラジカル重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、並びに、(成分D)着色剤、を含むことを特徴とする。
本発明の着色感光性樹脂組成物は、カラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。
また、本発明の着色感光性樹脂組成物は、必要に応じて、(成分E)溶剤、(成分F)密着改良剤、(成分G)重合禁止剤、(成分H)界面活性剤、(成分I)架橋剤等を含有してもよい。
以下、各成分について説明する。
【0011】
(成分A)前記共重合体
本発明の着色感光性樹脂組成物は、(成分A)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)、並びに、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)、を少なくとも含む共重合体を含有する。
成分Aは、アルカリ可溶性であることが好ましい。
【0012】
成分Aは、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位を含む重合体であることがより好ましい。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸、及び/又は、メタクリル酸」と同義である。なお、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンやビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
成分Aは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位を、全構成単位に対し、50モル%以上含有することが好ましく、90モル%以上含有することがより好ましく、100モル%含有することが特に好ましい。
【0013】
また、成分Aが含有する構成単位を導入する方法は、重合法でもよく、高分子反応法でもよく、これらの2方法を併用してもよい。
重合法では、例えば、酸基が熱分解性基で保護された残基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、エポキシ基又はオキセタニル基を有するエチレン性不飽和化合物、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するエチレン性不飽和化合物等を混合して付加重合して、目的とする共重合体を得ることができる。
高分子反応法では、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合した共重合体にエピクロロヒドリンを反応させてエポキシ基を導入することが例示できる。このように、反応性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合した後に、側鎖に残る反応性基を活用して、高分子反応によって、フェノール性水酸基若しくはカルボキシル基が熱分解性基で保護された残基、及び/又は、エポキシ基又はオキセタニル基のような官能基を側鎖に導入することができる。
【0014】
<構成単位(a1)>
成分Aは、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)(単に「構成単位(a1)」ともいう。他の構成単位についても同様である。)を含有する。成分Aが構成単位(a1)を有することにより、現像マージンと力学特性との両立が可能となる。
【0015】
(a1−1)カルボキシル基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位
カルボキシル基(以下、「カルボキシ基」ともいう。)が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1−1)としては、後述の(a1−1−1)、(a1−1−2)に記載の構成単位に含まれるカルボキシ基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位であることが好ましい。
【0016】
(a1−1−1)カルボキシ基を有する構成単位
カルボキシ基を有する構成単位(a1−1−1)としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの、分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロロアクリル酸、けい皮酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物であってもよく、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。また、不飽和多価カルボン酸は、多価カルボン酸のモノ(2−(メタ)アクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)などが挙げられる。更に、不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等も用いることができる。中でも、現像性の観点から、カルボキシ基を有する構成単位を形成するためには、(メタ)アクリル酸又は不飽和多価カルボン酸の無水物等を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸を用いることがより好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位(a1−1−1)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0017】
(a1−1−2)エチレン性不飽和基と酸無水物残基とを共に有する構成単位
エチレン性不飽和基と酸無水物残基とを共に有する構成単位(a1−1−2)は、エチレン性不飽和基を有する構成単位中に存在する水酸基と、酸無水物と、を反応させて得られたモノマーに由来する単位であることが好ましい。
酸無水物としては、公知のものが使用でき、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物などの酸無水物が挙げられる。これらの中では、現像性の観点から、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、又は、無水コハク酸が好ましい。
酸無水物の水酸基に対する反応率は、現像性の観点から、10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
【0018】
(a1−1)カルボキシ基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位
カルボキシ基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位とは、前記構成単位(a1−1−1)、前記構成単位(a1−1−2)に含まれるカルボキシ基が熱分解性基によって保護された残基を有する構成単位である。
【0019】
更に熱分解性基の中でもカルボキシ基が式(A1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基であることが、感度の観点からより好ましい。なお、カルボキシ基が式(A1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基である場合、残基の全体としては、−(C=O)−O−CR12(OR3)の構造となっている。
【0020】
【化2】

(式(A1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方が前記アルキル基、又は、アリール基であり、R3は、アルキル基、又は、アリール基を表し、R1又はR2とR3とが連結して環状エーテルを形成してもよい。)
【0021】
1、R2及びR3におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることが更に好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基(2,3−ジメチル−2−ブチル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
環状アルキル基としては、炭素数3〜12であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数4〜6であることが更に好ましい。
環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等を挙げることができる。中でも、単環状のものが好ましく、シクロヘキシル基が好ましい。
前記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基が例示できる。置換基としてハロゲン原子を有する場合、R1、R2、R3はハロアルキル基となり、置換基としてアリール基を有する場合、R1、R2、R3はアラルキル基となる。アラルキル基としては、ベンジル基が好ましい。
【0022】
1、R2及びR3におけるアリール基としては、炭素数6〜12であることが好ましく、炭素数6〜10であることがより好ましい。前記アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましく例示できる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、シリル基、クメニル基、1−ナフチル基等が例示でき、フェニル基が好ましい。
【0023】
また、R1、R2及びR3は互いに結合して、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成することができる。R1とR2、R1とR3又はR2とR3が結合した場合の環構造としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、テトラヒドロフラニル基、アダマンチル基及びテトラヒドロピラニル基等を挙げることができる。
【0024】
なお、式(A1)において、R1及びR2のいずれか一方が、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式(A1)で表される残基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、例えば、特開2009−098616号公報の段落0025〜0026に記載の方法等、公知の方法で合成したものを用いてもよい。
【0025】
カルボキシ基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1−1)としては、式(A2)で表される構成単位がより好ましい。
【0026】
【化3】

(式(A2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方が前記アルキル基又はアリール基であり、R3は、アルキル基又はアリール基を表し、R1又はR2とR3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R4は、水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。)
【0027】
式(A2)中、R1〜R3は、式(A1)におけるR1〜R3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(A2)中、R1及びR2は、水素原子、又は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子、又は、メチル基が好ましい。R3は、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数6以下のアルキル基、又は、炭素数7〜10のアラルキル基が好ましく、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基がより好ましい。R1又はR2とR3とが連結した環状エーテルとしては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基が好ましい。R4は、メチル基が好ましい。Xは単結合又はフェニレン基が好ましい。
【0028】
構成単位(a1−1)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0029】
【化4】

【0030】
(a1−2)フェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位
フェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1−2)としては、後述の(a1−2−1)に記載するフェノール性水酸基を有する構成単位を、熱分解性基によって保護した残基を有する構成単位が好ましい。
【0031】
(a1−2−1)フェノール性水酸基を有する構成単位
フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2−1)としては、ヒドロキシスチレン系構成単位やノボラック系の樹脂における構成単位が挙げられるが、これらの中ではα−メチルヒドロキシスチレンに由来する構成単位が透明性の観点から好ましい。フェノール性水酸基を有する構成単位の中でも、式(A4)で表される構成単位が透明性、感度の観点から好ましい。
【0032】
【化5】

(式(A4)中、R20は水素原子又はメチル基を表し、R21は単結合又は二価の連結基を表し、R22はそれぞれ独立にハロゲン原子又はアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。)
【0033】
20はメチル基であることが好ましい。
21は単結合、エステル結合であることが好ましい。また、前記二価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0034】
また、aは1〜5の整数を表すが、本発明の効果の観点や、製造が容易であるという点から、aは1又は2であることが好ましく、aが1であることがより好ましい。
また、ベンゼン環における水酸基の結合位置は、R21と結合している炭素原子を基準(1位)としたとき、4位に結合していることが好ましい。
22は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。中でも、製造が容易であることから、塩素原子、臭素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0035】
(a1−2)フェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位
フェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1−2)は、フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2−1)のフェノール性水酸基が、熱分解性基よって保護された残基を有する構成単位である。
フェノール性水酸基が式(A1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基であることが、感度の観点からより好ましい。この場合、残基の全体としては、−Ar−O−CR12(OR3)の構造となっている。なお、Arはアリーレン基を表す。
フェノール性水酸基のアセタールエステル構造の好ましい例としては、R1=R2=R3=メチル基やR1=R2=メチル基でR3=ベンジル基の組み合わせが例示できる。
【0036】
また、フェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、ヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、ヒドロキシスチレンのテトラヒドロピラニル保護体、ヒドロキシスチレンのテトラヒドロフラニル保護体、α−メチルヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、α−メチルヒドロキシスチレンのテトラヒドロピラニル保護体、α−メチルヒドロキシスチレンのテトラヒドロフラニル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートのテトラヒドロピラニル保護体などが挙げられる。これらの中で、α−メチルヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体が好ましい。
【0037】
フェノール性水酸基の熱分解性基保護の具体例としては、1−アルコキシアルキル基、テトラヒドロフラニル基が挙げられ、例えば、1−エトキシエチル基、1−メトキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−(2−クロルエトキシ)エチル基、1−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−(2−シクロヘキシルエトキシ)エチル基、1−ベンジルオキシエチル基などを挙げることができ、中でも、1−エトキシエチル基が好ましい。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
構成単位(a1−2)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させることにより合成することができる。上記の合成はフェノール性水酸基を有するモノマーをその他のモノマーと予め共重合させておき、その後に酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させてもよい。
【0039】
構成単位(a1−2)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0040】
【化6】

【0041】
成分Aを構成する構成単位中、構成単位(a1)の含有率は、耐熱性や信頼性と現像性の両立の観点から、成分Aの共重合体中、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。なお、本発明における「成分Aを構成する構成単位」とは、成分Aを構成する1つのモノマー由来の構成単位、すなわち、モノマー単位、又は、成分Aを構成する1つの前記モノマー単位を変性して得られた構成単位のことを指す。成分Aにおける各構成単位の含有率は、成分Aを合成するために共重合した各モノマーの共重合比に対応するものである。
【0042】
<構成単位(a2)>
成分Aは、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)を含有する。
エポキシ基及びオキセタニル基は、加熱処理で、カルボキシ基又はフェノール性水酸基と反応して共有結合を形成して架橋反応を起こす。
前記エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)としては、脂環エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位であることが好ましく、オキセタニル基を有する構成単位であることがより好ましい。
エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位は、1つの構成単位中にエポキシ基又はオキセタニル基を少なくとも1つ有していればよく、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を合計1〜3つ有することが好ましく、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を合計1又は2つ有することがより好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基を1つ有することが更に好ましい。
【0043】
エポキシ基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α−エチル(メタ)アクリル酸グリシジル、α−n−プロピル(メタ)アクリル酸グリシジル、α−n−ブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチル(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、特許第4168443号公報の段落0031〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物などが挙げられる。
オキセタニル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
本発明においては、構成単位(a2)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル構造を含有する単量体であることが好ましい。
【0044】
これらのモノマーの中で、更に好ましいものとしては、特許第4168443号公報の段落0034〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物及び特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいものとしては特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。これらの中でも好ましいものは、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルであり、最も好ましいものは(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルである。これらの構成単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
構成単位(a2)が、式(A5−1)〜式(A5−3)で表される構造から水素原子を1つ除いた残基、又は、式(A6−1)又は式(A6−2)で表される残基を有することが好ましい。
【0046】
【化7】

(式(A6−1)及び式(A6−2)中、R1b及びR6bはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R2b、R3b、R4b、R5b、R7b、R8b、R9b及びR10bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基を表す。)
【0047】
式(A6−1)及び式(A6−2)中、R1b及びR6bはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。
2b、R3b、R4b、R5b、R7b、R8b、R9b、R10bはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子及び塩素原子がより好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。直鎖状及び分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜8であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることが更に好ましい。環状アルキル基としては、炭素数3〜10であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数5〜7であることが更に好ましい。なお、直鎖状及び分岐鎖状のアルキル基は、環状アルキル基で置換されていてもよく、環状アルキル基は直鎖状及び/又は分岐鎖状アルキル基で置換されていてもよい。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基であることが更に好ましい。
前記アルキル基、アリール基は、更に置換基を有していてもよい。
これらの中でも、R2b、R3b、R4b、R5b、R7b、R8b、R9b及びR10bはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又は、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0048】
構成単位(a2)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0049】
【化8】

【0050】
本発明においては、輝度の観点から、構成単位(a2)がオキセタニル基を有すること好ましい。
【0051】
成分Aを構成する構成単位中、構成単位(a2)の含有量は、輝度と耐熱性や信頼性の観点から、10〜60モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましい。
【0052】
<構成単位(a3)>
成分Aは、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)を含有する。なお、本発明におけるカルボキシ基には、カルボン酸無水物残基も含む。
カルボキシ基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、カルボキシ基を有する構成単位(a1−1−1)の説明で記載したものを好ましく用いることができる。
フェノール性水酸基を有する構成単位としては、(a1−2−1)フェノール性水酸基を有する構成単位の説明で記載したものを好ましく用いることができる。
これらの中でも、構成単位(a3)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロロアクリル酸、けい皮酸、α−メチルヒドロキシスチレン、及び、ヒドロキシスチレンよりなる群から選ばれた不飽和カルボン酸由来の構成単位が好ましく例示できる。
これらの構成単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
構成単位(a3)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、Rは、水素原子、又は、メチル基を表す。
【0054】
【化9】

【0055】
構成単位(a3)の含有率は、現像性と信頼性の両立の観点から、10〜60モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましい。
【0056】
<その他の構成単位>
成分Aは、本発明の効果を妨げない範囲で、前記構成単位(a1)〜(a3)以外のその他の構成単位を含有してもよい。その他の構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、特開2004−264623号公報の段落0021〜0024に記載の化合物を挙げることができる(ただし、前記構成単位(a1)〜(a3)を形成する化合物を除く。)。
これらの中でも、輝度と耐熱性や信頼性の観点で、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環構造含有の(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。輝度の観点で(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。現像性の観点で(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アルキル末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。その他の構成単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
成分Aを構成する全構成単位中、その他の構成単位の含有率は、0〜30モル%が好ましく、5〜25モル%がより好ましい。
【0057】
成分Aの重量平均分子量は、3,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0058】
また、前記成分Aの共重合体の合成法についても、様々な方法が知られているが、一例を挙げると、少なくとも構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体混合物を有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を用いて重合することにより合成する方法が挙げられる。
【0059】
以下、本発明で用いられる成分Aとして、好ましいものを例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸共重合体
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル/メタクリル酸共重合体
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル/4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステル/メタクリル酸共重合体
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル/4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステル/メタクリル酸共重合体
メタクリル酸1−(シクロヘキシルオキシ)エチル/メタクリル酸/メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸/ヒドロキシスチレン/メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
アクリル酸1−エトキシエチル/アクリル酸/アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル/アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/スチレン共重合体
メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸ジシクロペンタニル共重合体
メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル/メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル/メタクリル酸/メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
成分Aは、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の着色感光性樹脂組成物中における成分Aの含有量は、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対して、1〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、5〜35重量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像マージンと耐熱性や信頼性が良好となる。なお、着色感光性樹脂組成物の固形分量とは、溶剤などの揮発性成分を除いた量を表す。
なお、本発明の着色感光性樹脂組成物中では、本発明の効果を妨げない範囲で成分A以外の樹脂を併用してもよい。ただし、成分A以外の樹脂の含有量は、耐熱性や信頼性の観点から成分Aの含有量より少ない方が好ましい。
【0061】
成分A以外の樹脂としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられ、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0062】
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。このほか、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0063】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
その他のアルカリ可溶のバインダー樹脂としては、特開平7−207211号公報、特開平8−259876号公報、特開平10−300922号公報、特開平11−140144号公報、特開平11−174224号公報、特開2000−56118号公報、特開2003−233179号公報、特開2009−52020号公報等に記載の公知の高分子化合物を使用することができる。
【0064】
(成分B)感放射線性ラジカル重合開始剤
感放射線性ラジカル重合開始剤(以下、単に「光重合開始剤」ともいう。)としては、露光光により感光し、前記(成分C)エチレン性不飽和化合物の重合を開始、促進する化合物である。波長300nm以上、好ましくは波長300〜450nmの活性光線に感応し、前記(成分C)エチレン性不飽和化合物の重合を開始、促進する化合物が好ましい。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない感放射線性ラジカル重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0065】
光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル化合物、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
これらの中でも、感度の点から、オキシムエステル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましい。
【0066】
オキシムエステル化合物としては、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2004−534797号公報、国際公開第2005/080337号、国際公開第2006/018973号、特開2007−210991号公報、特開2007−231000号公報、特開2007−269779号公報、特開2009−191061号公報、国際公開第2009/131189号に記載の化合物を使用できる。
【0067】
オキシムエステル化合物は、下記式(1)で表される化合物または下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。なお、オキシムエステル化合物は、E体、Z体のどちらであってもよく、また、E体及びZ体の混合物であってもよい。
【0068】
【化10】

(式(1)及び式(2)中、Arは芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、R1はアルキル基、芳香族基又はアルキルオキシ基を表し、R2は水素原子又はアルキル基を表し、更にR2はArと結合し環を形成してもよい。)
【0069】
Arは芳香族基又はヘテロ芳香族基を表し、ベンゼン環、ナフタレン環又はカルバゾール環から水素原子を1つ除いた基が好ましく、R2と共に環を形成するナフタレニル基、カルバゾイル基がより好ましい。
1は、アルキル基、芳香族基又はアルキルオキシ基を表し、メチル基、エチル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基又はメトキシ基がより好ましい。
2は、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又は置換アルキル基が好ましく、水素原子、Arと共に環を形成する置換アルキル基又はトルエンチオアルキル基がより好ましい。
【0070】
オキシムエステル化合物は、更に、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物又は下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0071】
【化11】

(式(3)〜式(5)中、R1はアルキル基、芳香族基又はアルキルオキシ基を表し、Xは−CH2−、−C24−、−O−又は−S−を表し、R3は水素原子又はハロゲン原子を表し、R4は水素原子、アルキル基、フェニル基、アルキル置換アミノ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を表し、R5は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R6はアルキル基を表す。)
【0072】
1は、アルキル基、芳香族基又はアルキルオキシ基を表し、式(1)又は式(2)におけるR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
4は、水素原子、アルキル基、フェニル基、アルキル置換アミノ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を表し、水素原子、アルキル基、フェニル基、アリールチオ基又はハロゲン原子が好ましく、水素原子、アルキル基、アリールチオ基又はハロゲン原子がより好ましく、水素原子、アルキル基また又はハロゲン原子が更に好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はフッ素原子が好ましい。
5は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
6は、アルキル基を表し、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0073】
以下に、本発明で好ましく用いられるオキシムエステル化合物の例を示す。しかしながら、本発明で用いられるオキシムエステル化合物がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。なお、下記化学式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0074】
【化12】

【0075】
有機ハロゲン化化合物の例としては、具体的には、若林等、「Bull Chem. Soc. Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Journal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0076】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物の例としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0077】
光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、露光波長に吸収を持たない開始剤を用いる場合には、増感剤を使用する必要がある。
【0078】
成分Bの総含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分に対して、0.5〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましい。この範囲内であると、露光時の感度が高く、また色特性も良好である。
【0079】
本発明の組成物には、光重合開始剤の他に、光増感剤を加えることもできる。本発明に用いる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J. V. Crivello, Adv. in Polymer Sci, 62, 1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、ベンゾフェノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。光増感剤は、光重合開始剤に対し、50〜200重量%の割合で添加することが好ましい。
【0080】
本発明の組成物には、光重合開始剤の他に、連鎖移動剤を加えることもできる。本発明に用いる連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどの複素環を有するメルカプト化合物、及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の添加量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.01〜15重量%の範囲であることが、感度ばらつきを低減するという観点から好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が特に好ましい。
【0081】
(成分C)エチレン性不飽和化合物
本発明の着色感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物を含有する。
本発明に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物である。
エチレン性不飽和化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
例えば、特開2006−23696号公報の段落0011に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落0031〜0047に記載の成分を挙げることができる。
【0082】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン付加重合性化合物も好適であり、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0083】
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0084】
これらのエチレン性不飽和化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
耐熱性や信頼性の点では、1分子あたり、3官能以上、より好ましくは4官能以上のエチレン性不飽和化合物が好ましい。更に、異なる官能数及び/又は異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン化合物、ビニルエーテル化合物)を有するエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を併用することで、力学特性を調節することも有効である。
また、現像性の調整の観点から、カルボキシ基を含有する重合性化合物も好ましい。この場合、成分Aの構成単位(a2)との架橋により、耐熱性や信頼性を向上させることができ、好ましい。
更に、基板との密着性、ラジカル重合開始剤との相溶性等の観点から、エチレンオキサイド(EO)変性体であることや、ウレタン結合を含有することも好ましい。
【0085】
以上の観点より、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートEO変性体などが、並びに、市販品としては、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、NKエステル A−TMMT、NKエステル A−TMPT、NKエステル A−TMM−3、NKオリゴUA−32P、NKオリゴUA−7200(以上、新中村化学工業(株)製)、アロニックス M−305、アロニックス M−306、アロニックス M−309、アロニックス M−450、アロニックス M−402、TO−1382(以上、東亞合成(株)製)、V#802(大阪有機化学工業(株)製)が好ましい。これらの中でも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレーが特に好ましい。
【0086】
成分Cの含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜60重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましく、15〜45重量%であることが更に好ましい。この範囲内であると、良好な現像性と耐熱性や信頼性を両立し、更に露光時の感度も高い。
【0087】
(成分D)着色剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、着色パターンを形成するために、(成分D)着色剤を含有する。
着色剤としては、顔料及び染料を適宜選択して用いることができる。
また、着色剤としては、平均一次粒子径が10nm以上30nm以下の顔料、及び/又は、染料が好ましい。上記態様であると、輝度が高く、コントラストの高いカラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物が得られる。
【0088】
有彩色系の顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を用いることができるが、信頼性の観点で有機顔料を用いることが好ましい。
本発明において有機顔料として、例えば、特開2009−256572号公報の段落0093に記載の有機顔料が挙げられる。
また特に、
C.I.Pigment Red 177、224、242、254、255、264、
C.I.Pigment Yellow 138、139、150、180、185、
C.I.Pigment Orange 36、38、71、
C.I.Pigment Green 7、36、58、
C.I.Pigment Blue 15:6、
C.I.Pigment Violet 23
が色再現性の観点で好適であるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
これら有機顔料は、単独で、または、色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。
【0089】
成分Dとして顔料を用いる場合、本発明の着色感光性樹脂組成物中における含有量は、該組成物の全固形分に対して、10〜55重量%であることが好ましく、15〜50重量%がより好ましい。顔料の含有量が前記範囲内であると、優れた色特性を確保するのに有効である。
【0090】
本発明に使用される顔料としては、平均一次粒子径が10nm以上30nm以下の範囲のものを用いることが好ましい。この範囲の平均一次粒子径の顔料を用いることにより、分散性安定性や着色力に優れ、かつ、輝度が高く、コントラストの高いカラーフィルタ用着色感光性樹脂組成物を得ることができる。
なお、本発明における平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成する顔料の一次粒子の400個につき、その長い方の径(長径)と短い方の径(短径)の平均値を各々求め、それを平均した値である。
【0091】
平均一次粒子径が10〜30nmの範囲である顔料の調製方法には、特に制限はなく、いずれの方法で微粒子化され、上記範囲に粒子径が調整されたものでもよいが、容易に結晶成長を抑制でき、かつ平均一次粒子径の比較的小さい顔料粒子が得られる点で、顔料を上記平均一次粒子径に調整する方法として、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
このソルベントソルトミリング処理とは、顔料と、無機塩と、有機溶剤とを混練摩砕する処理を指す。粒子径の大きい顔料は乾式摩砕してからソルベントソルトミリングを行ってもよい。なお、顔料の混練摩砕を行うに際して、顔料種によっては、無機塩と、有機溶剤に加え、結晶成長抑止の観点から色素誘導体を共存させることが好ましい。色素誘導体を共存させることで混練摩砕時の結晶成長が抑止され、色素誘導体を含まない場合と比較してより微細な顔料を得ることができる。
具体的には、顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。この際の混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0092】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。このような無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
平均一次粒子径が10〜30nmの範囲である顔料を得るに当たっては、ソルベントソルトミリングにおける顔料の使用量に対する無機塩使用量の比率を高くするのが好ましい。すなわち、当該無機塩の使用量は、重量換算で顔料1部に対して5〜20部とすることが好ましく、7〜15部とすることがより好ましい。
【0093】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましく、このような有機溶剤としては水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
この際の水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、重量換算で顔料1部に対して、0.01〜5部の範囲であることが好ましく、0.1〜2部の範囲であることがより好ましい。
【0094】
所望により無機塩と共存させる色素誘導体としては、混練摩砕する顔料の種類により適宜選択し得るが、キノフタロン化合物、フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ベンツイミダゾロン化合物などが挙げられる。中でも、結晶成長抑止と色相との観点から、キノフタロン化合物、フタロシアニン化合物、等が好ましい。
この際の色素誘導体の使用量は、特に限定されるものではないが、重量換算で顔料100部に対して、1〜20部であることが好ましく、1〜15部の範囲であることがより好ましい。
ソルベントソルトミリング時の温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。ソルベントソルトミリングの時間は、5〜20時間が好ましく、8〜18時間がより好ましい。
【0095】
こうして、顔料、無機塩、及び、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じて顔料を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、特定の平均一次粒子径となるように微細化された顔料の粉体を得ることができる。
混練摩砕後の洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返してもよい。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩とが除去される。
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等がある。
また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり、一次粒子の平均粒子径を小さくしたりするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等のとなった際に顔料を解して粉体化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。
【0096】
また、本発明では特に顔料の微細化工程あるいは分散工程において、顔料を高分子化合物で被覆したものを用いることが好ましい。すなわち、本発明に用いることができる顔料は、高分子化合物で被覆されたものであることが好ましい。顔料を高分子化合物で被覆することによって微細化された顔料であっても、二次凝集体の形成が抑制され、一次粒子の状態で分散させることができる分散性が向上された被覆顔料、分散させた一次粒子が安定的に維持される分散安定性に優れた被覆顔料を得て用いることができる。
【0097】
顔料の被覆に用いる高分子化合物は顔料への吸着性基を有するものなら何でもよいが、例えば、特開2008−83089号公報の段落0029〜0030、特開2009−62457号公報の段落0044〜0047、特開2009−256572号公報の段落0001〜0090に開示されているものが好適に使用できる。
【0098】
着色剤として顔料を使用する場合、上記した被覆処理した顔料を用いる場合であっても、分散剤の少なくとも1種を使用して顔料を分散し、顔料分散組成物として使用することが更に好ましい。この分散剤の含有により、顔料の分散性を向上させることができる。
分散剤としては、例えば、公知の顔料分散剤や界面活性剤を適宜選択して用いることができる。
【0099】
具体的には、多くの種類の化合物を使用可能であり、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株)製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(いずれもサンノプコ(株)製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)及びイオネットS−20(三洋化成工業(株)製)、DISPERBYK 101、103、106、108、109、111、112、116、130、140、142、162、163、164、166、167、170、171、174、176、180、182、2000、2001、2050、2150(ビックケミー社製)が挙げられる。その他、アクリル系共重合体など、分子末端もしくは側鎖に極性基を有するオリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。
【0100】
また、着色剤として有機顔料を用いる場合、必要に応じて顔料誘導体を添加してもよい。分散剤と親和性のある部分あるいは極性基を導入した顔料誘導体を、顔料表面に吸着させ、これを分散剤の吸着点として用いることで、顔料を微細な粒子として着色感光性樹脂組成物中に分散させ、その再凝集を防止することができ、コントラストが高く、透明性に優れたカラーフィルタを構成するのに有効である。
【0101】
顔料誘導体は、具体的には有機顔料を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物である。
有機顔料として、具体的には、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノリン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンゾイミダゾロン顔料等が挙げられる。一般に、色素と呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系、トリアジン系、キノリン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。
色素誘導体としては、特開平11−49974号公報、特開平11−189732号公報、特開平10−245501号公報、特開2006−265528号公報、特開平8−295810号公報、特開平11−199796号公報、特開2005−234478号公報、特開2003−240938号公報、特開2001−356210号公報等に記載されているものを使用できる。
【0102】
着色剤として顔料を用いる場合、上記の顔料、分散剤、顔料誘導体や溶剤等を含む顔料分散組成物として、着色感光性樹脂組成物の調製に用いることが好ましい。
分散剤の顔料分散組成物中における含有量としては、顔料の重量に対して、1〜100重量%が好ましく、3〜70重量%がより好ましい。この範囲であると、分散性安定性を維持しつつ、現像性も確保することができる。
顔料誘導体の顔料分散組成物中における含有量としては、顔料の重量に対して、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。この範囲内であると、粘度を低く抑えながら、分散を良好に行えると共に分散後の分散安定性を向上させることができ、透過率が高く優れた色特性が得られ、カラーフィルタを作製するときには良好な色特性を有する高コントラストに構成することができる。
【0103】
着色剤として染料を用いる場合、特に制限はなく、例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特許第2592207号公報、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報等に記載の色素が挙げられる。
化学構造としては、ピラゾールアゾ構造、アニリノアゾ構造、トリフェニルメタン構造、アントラキノン構造、アンスラピリドン構造、ベンジリデン構造、オキソノール構造、ピラゾロトリアゾールアゾ構造、ピリドンアゾ構造、ピロメテン構造、シアニン構造、フェノチアジン構造、ピロロピラゾールアゾメチン構造、キサンテン構造、フタロシアニン構造、ペンゾピラン構造、インジゴ構造等の染料が使用できる。
【0104】
また、水又はアルカリ現像を行うことでパターンを形成するレジスト系用途に適用する場合には、現像により光未照射部のバインダーや染料を完全に除去し得るという観点では、酸性染料及び/又はその誘導体が好適に使用できる場合がある。
その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、及び/又は、これらの誘導体等も使用目的に応じて適宜選択して使用することができる。
【0105】
酸性染料は、スルホン酸やカルボン酸等の酸性基を有するものであれば特に限定されないが、有機溶剤や現像液に対する溶解性、塩基性化合物との塩形成性、吸光度、組成物中の他の成分との相互作用、耐光性、耐熱性等の必要とされる性能の全てを考慮して選択される。
以下に酸性染料の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
例えば、Acid Black 24;Acid Blue 23,25,29,62,80,86,87,92,138,158,182,243,324:1;Acid Orange 8,51,56,63,74;acid red 1,4,8,34,37,42,52,57,80,97,114,143,145,151,183,217;Acid Violet 7;Acid Yellow 17,25,29,34,42,72,76,99,111,112,114,116,184,243;Acid Green 25等の染料及びこれらの染料の誘導体が好ましい。
また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料及びこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。
また、下記式(II)〜(IX)のいずれかで表される染料も好適である。
【0106】
【化13】

【0107】
前記式(II)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。
【0108】
以下、前記式(II)で表される化合物の具体例を列挙する。ただし、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0109】
【化14】

【0110】
【化15】

【0111】
【化16】

【0112】
【化17】

【0113】
【化18】

【0114】
前記式(II)で表される化合物は、米国特許第4,774,339号明細書、同5,433,896号明細書、特開2001−240761号公報、同2002−155052号公報、特許第3614586号明細書、Aust. J. Chem, 1965, 11, 1835-1845、J. H. Boger et al, Heteroatom Chemistry, Vol.1, No.5, 389(1990)等に記載の方法で合成することができる。
具体的な合成方法については、特開2008−292970号公報の段落0131〜0157の記載を参照することができる。
【0115】
【化19】

【0116】
前記式(III)において、A1は、5−ピラゾロン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ローダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、オキサゾリジンジオン、ピラゾリジンジオン、インダンジオン、ヒドロキシピリドン、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ〔d〕チオフェン−1,1−ジオキシド、及び、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ〔d〕チオフェン−1,1−ジオキシドよりなる群から選ばれる化合物由来の酸性核を表す。L1、L2及びL3はメチン基を表す。R33及びR34はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又は水素原子を表し、R35は、水素原子、メトキシ基、塩素原子、メチル基又はニトロ基を表す。nは、0又は1を表す。ただし、分子中にカルボキシル基、スルホンアミド基及びスルファモイル基から選ばれる少なくとも1つを有する。
【0117】
以下、前記式(III)で表される化合物の具体例を列挙する。ただし、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0118】
【化20】

【0119】
【化21】

【0120】
前記式(IV)において、R41は、ヘテロ環基を表し、R42は、水素原子又は置換基を表す。R43、R44、R45、R46、R47及びR48はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基又はスルファモイル基を表す。R43とR44、R45とR46、R47とR48は、互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。
【0121】
【化22】

【0122】
前記式(V)において、Ra1、Ra2、Ra3、Rb1、Rb2及びRb3はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の置換基を表し、Ra2とRa3とは互いに結合して5〜7員の複素環を形成していてもよい。A2は、置換若しくは無置換の脂肪族基、置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換の複素環基を表す。nは、0、1、2又は3を表し、nが2以上のとき、複数存在するRb2及びRb3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0123】
【化23】

【0124】
前記式(VI)において、R61、R62、R63及びR64はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、アリール基又は−SO2NH−Rを表し、R65は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、−SO3H又は−SO2NH−Rを表す。Rは、アルキル基、アルコキシアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアルキルカルボニルオキシ基を表す。nは、0又は1以上の整数を表すが、nが0のときには、R61〜R65の少なくとも1つは置換基として−SO2NH−Rを有するアリール基を表す。nが1以上の整数のときには、1以上の−SO2NH−Rは、[]内の構造中の任意の水素原子を1以上置換して結合しているものとする。
【0125】
【化24】

【0126】
前記式(VII)において、R71は、炭素数2〜20のアルキル基、アルキル鎖の炭素数が2〜12のシクロヘキシルアルキル基、アルキル鎖の炭素数が1〜4のアルキルシクロヘキシル基、炭素数2〜12のアルコキシル基で置換された炭素数2〜12のアルキル基、L71−CO−O−L72−で表されるアルキルカルボキシルアルキル基、L73−O−CO−L74−で表されるアルキルオキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基で置換されたフェニル基、又はフェニル基で置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。L71は、炭素数2〜12のアルキル基を表し、L72は、炭素数2〜12のアルキレン基を表し、L73は、炭素数2〜12のアルキル基を表し、L74は、炭素数2〜12のアルキレン基を表す。R72、R73、R74及びR75はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシル基又はハロゲン原子を表す。
【0127】
【化25】

【0128】
前記式(VIII)において、Z1及びZ2はそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。R81、R82、R83及びR84はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基が置換した炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシル基が置換した炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のチオアルコキシル基が置換した炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数2〜10のアシル基を表す。R85、R86、R87、R88、R89、R110a、R111a及びR112aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜10のハロゲン化飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜8のアルコキシル基、カルボキシル基、スルホ基、スルファモイル基又はN−置換スルファモイル基を表し、R85〜R89及びR110a〜R112aの少なくとも1つはN−置換スルファモイル基を表す。
【0129】
【化26】

【0130】
前記式(IX)において、R91はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又はスルホン酸基を表し、nは、0〜5の整数を表し、A3は、下記(a)〜(d)のいずれかを表す。Lは、1又は2の整数を表す。R92はそれぞれ独立に、メチル基、ハロゲン原子、スルホン酸基又は−SO2N(R93)(R94)を表し、mは、0〜5の整数を表し、R93及びR94はそれぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を表す。R91及びR92の少なくとも1つはスルホン酸基を表す。なお、本発明において低級アルキル基とは、炭素原子数1〜8のアルキル基をいう。
【0131】
【化27】

【0132】
成分Dとして染料を用いる場合、本発明の着色感光性樹脂組成物中における含有量は、該組成物の全固形分に対して、10〜55重量%であることが好ましく、15〜50重量%がより好ましい。染料の含有量が前記範囲内であると、優れた色特性を確保するのに有効である。
また、成分Dとしては、顔料単独、染料単独、顔料と染料との併用の何れであってもよいが、顔料と染料とを併用することが好ましい。
顔料と染料を併用する場合、本発明の着色感光性樹脂組成物中における含有量は、該組成物の全固形分に対して、10〜55重量%であることが好ましく、15〜50重量%がより好ましい。顔料と染料とを併用し、成分Dの総量が前記範囲内であると、優れた色特性を確保し、更に高い信頼性を得るのに有効である。
【0133】
<任意成分>
本発明の着色感光性樹脂組成物には、成分A〜成分Dの他に、必要に応じて、任意成分として、以下に述べる添加剤を加えることができる。
【0134】
(成分E)溶剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。本発明の感光性樹脂組成物は、必須成分である成分A、成分B、成分C及び成分Dと、後述の任意成分とを、溶剤に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に使用される溶剤としては、公知の溶剤を用いることができ、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、ラクトン類等が例示できる。これらの溶媒の具体例としては、特開2009−098616号公報の段落0062を参照できる。
本発明に用いることができる溶剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、2種を併用することが好ましく、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類と他の溶媒とを併用することがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとジエチレングリコールエチルメチルエーテルとの併用が特に好ましい。
本発明の着色感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、特にスリットコートに適した粘度に調整するという観点から、溶剤以外の構成成分の合計100重量部に対し、100〜1,000重量部であることが好ましく、150〜850重量部であることがより好ましく、200〜700重量部であることが更に好ましい。
【0135】
なお、本発明の着色感光性樹脂組成物の粘度は、1〜50mPa・sが好ましく、1〜30mPa・sがより好ましく、1〜20mPa・sが最も好ましい。
粘度は、例えば、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用いて、25±0.2℃で測定することができる。測定時の回転速度は、5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上は10rpmで、それぞれ行う。
【0136】
(成分F)密着改良剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、密着改良剤を含有してもよい。
密着改良剤は、基材となる無機物、例えば、ガラス、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、金、銅、アルミニウム等と硬化膜との密着性を向上させる化合物である。具体的には、シランカップリング剤、チオール系化合物等が挙げられる。密着改良剤としてのシランカップリング剤は、界面の改質を目的とするものであり、特に限定することなく、公知のものを使用することができる。
シランカップリング剤としては、特開2009−98616号公報の段落0048に記載のシランカップリング剤が好ましく、中でもγ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましい。これらは1種単独又は2種以上を併用できる。これらは基板とのテーパ角の調整にも有効である。
本発明の着色感光性樹脂組成物における密着改良剤の含有量は、溶剤以外の密着改良剤を含む構成成分の合計、すなわち、着色感光性樹脂組成物の全固形分量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、0.2〜5重量%がより好ましい。
【0137】
(成分G)重合禁止剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤とは、光や熱により着色感光性樹脂組成物中に発生したラジカル等の重合開始種に対して水素供与(又は、水素授与)、エネルギー供与(又は、エネルギー授与)、電子供与(又は、電子授与)などを実施し、重合開始種を失活させ、重合が意図せず開始されることを抑制する役割をはたす物質である。特開2007−334322号公報の段落0154〜0173に記載された重合禁止剤などを用いることができる。
これらの中でも、重合禁止剤としてはp−メトキシフェノールが好ましく挙げられる。
本発明の着色感光性樹脂組成物における重合禁止剤の含有量は、エチレン性不飽和化合物の全重量に対して、0.0001〜5重量%が好ましく、0.001〜5重量%がより好ましく、0.001〜1重量%が特に好ましい。
【0138】
(成分H)界面活性剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。具体的には、特開2009−098616号公報の段落0058に記載のノニオン系界面活性剤が挙げられ、中でもフッ素系界面活性剤が好ましい。これら界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、界面活性剤として、下記式(1)で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、THFを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0139】
【化28】

(式(1)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R4は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す重量百分率であり、pは10重量%以上80重量%以下の数値を表し、qは20重量%以上90重量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、nは1以上10以下の整数を表す。)
【0140】
前記Lは、下記式(2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(2)におけるR5は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100重量%であることが好ましい。
【0141】
【化29】

【0142】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
本発明の着色感光性樹脂組成物における界面活性剤の添加量は、溶剤以外の構成成分の合計100重量%に対して、0.01〜1.0重量%が好ましく、0.02〜0.7重量%が特に好ましい。この範囲であると、塗布性及び硬化膜の均一性が良好となる。
【0143】
また、本発明に用いることができる界面活性剤としては、例えば、市販品である、メガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781、同R30、同R08、同F−472SF、同BL20、同R−61、同R−90(DIC(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431、Novec FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105,7000,950,7600、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(三菱マテリアル電子化成(株)製)などが挙げられる。
【0144】
(成分I)架橋剤
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要に応じ、架橋剤を添加する。
架橋剤としては、分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有架橋剤などが挙げられる。架橋剤を添加することにより、硬化膜を強固な膜とすることができる。
【0145】
架橋剤としては、例えば、多官能エポキシ化合物等を挙げることができる。
本発明に使用できる多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物などである。
例えばビスフェノールA型エポキシ化合物としては、エポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上東都化成(株)製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上ナガセケムテックス(株)製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上ダイセル化学工業(株)製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型も挙げることができる。また、EBECRYL 3700、3701、600(以上ダイセルユーシービー(株)製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。
クレゾールノボラック型エポキシ化合物としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上東都化成(株)製)、エピクロンN−660、N−670、N−680、N−690、N−695、YDCN−704L(以上DIC(株)製)、デナコールEM−125など(以上ナガセケムテックス(株)製)、ビフェニル型エポキシ化合物としては3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジグリシジルビフェニルなどがあげられる。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上ダイセル化学工業(株)製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上東都化成(株)製)などを挙げることができる。他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0146】
これらのエポキシ樹脂の中で、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が好ましく、エポキシ当量が180〜250のものが特に好ましい。このような素材としては、エピクロンN−660、N−670、N−680、N−690、N−695、YDCN−704L(以上DIC(株)製)、EHPE3150(ダイセル化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0147】
本発明の組成物においては、2種以上の多官能エポキシ化合物を含有してもよい。
優れた硬化膜の耐熱性、耐溶剤性及び硬度が得られるという観点から、本発明に用いることができる多官能エポキシ化合物の着色感光性樹脂組成物中における含有量としては、溶剤以外の構成成分の合計100重量%に対して、0〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、膜の耐溶剤性を効果的に向上させることができる。
【0148】
<その他の成分>
本発明の着色感光性樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤、熱ラジカル発生剤、現像促進剤、酸化防止剤等のその他の成分を添加することができる。これらの成分については、例えば、特開2009−098616号公報、特開2009−244801号公報に記載のもの、その他公知のものを用いることができる。また、“高分子添加剤の新展開((株)日刊工業新聞社)”に記載の各種紫外線吸収剤や、金属不活性化剤等を本発明の着色感光性樹脂組成物に添加してもよい。
【0149】
II.表示装置用カラーフィルタの製造方法
本発明の着色感光性樹脂組成物及びパターン形成方法は、表示装置用カラーフィルタに好適である。以下、本発明のパターン形成方法を、液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における着色パターンの形成用組成物及び形成方法として説明するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
本発明のカラーフィルタは、光透過性基板上に、本発明の着色感光性樹脂組成物を用いて着色パターンを形成することで製造するが、必要に応じて更に他の工程を設けることもできる。
【0150】
本発明の着色パターン(硬化膜)の形成方法は、本発明の着色感光性樹脂組成物により基板上に膜を形成する膜形成工程、前記膜を活性光線により露光する露光工程、露光された前記膜を水性現像液により現像する現像工程、及び、現像された前記膜を加熱処理するポストベーク工程、を含むことが好ましい。
また、前記膜形成工程においては、本発明の着色感光性樹脂組成物に溶剤を使用することが好ましく、前記膜形成工程が、本発明の着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程、及び、塗布された前記着色感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程であることがより好ましい。
すなわち、本発明の着色パターン(硬化膜)の形成方法は、以下の(1)〜(5)の工程を含むことがより好ましい。
(1)本発明の着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(2)塗布された前記着色感光性樹脂組成物から溶剤を除去し膜を形成する溶剤除去工程
(3)塗布された前記膜を活性光線により露光する露光工程
(4)露光された前記膜を水性現像液により現像する現像工程
(5)現像された前記膜を加熱処理するポストベーク工程
以下に各工程を順に説明する。
【0151】
(1)の塗布工程では、本発明の着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布して溶剤を含む湿潤膜とすることが好ましい。
(2)の溶剤除去工程では、塗布された上記の膜から、減圧(バキューム)及び/又は加熱等により、溶剤を除去して基板上に乾燥塗膜を形成させることが好ましい。
(3)の露光工程では、得られた塗膜に波長300nm以上450nm以下の活性光線を照射することが好ましい。
【0152】
(4)の現像工程では、アルカリ性現像液を用いて現像する。硬化していない非露光部領域を除去することにより、ネガ画像が形成することが好ましい。
(5)のポストベーク工程において、得られたネガ画像を加熱することにより、成分A中のアセタール又はケタールを熱分解しカルボキシ基又はフェノールを生成させ、エポキシ基及び/又はオキセタニル基と架橋させることにより、より強固な硬化膜を形成することができる。この加熱は、150℃以上の高温に加熱することが好ましく、180〜250℃に加熱することがより好ましく、200〜250℃に加熱することが特に好ましい。加熱時間は、加熱温度などにより適宜設定できるが、10〜90分の範囲内とすることが好ましい。
ポストベーク工程の前に活性光線、好ましくは紫外線を、現像パターンに全面照射することができる。
次に、本発明の着色感光性樹脂組成物を用いた着色パターンの形成方法を具体的に説明する。
【0153】
<着色感光性樹脂組成物の調製方法>
成分A〜成分Dの必須成分を所定の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して着色感光性樹脂組成物を調製する。例えば、成分A〜成分Dを、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、これらを所定の割合で混合して樹脂組成物を調製することもできる。以上のように調製した組成物溶液は、孔径0.2μmのフィルタ等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0154】
<塗布工程及び溶剤除去工程>
本発明の着色感光性樹脂組成物を、所定の基板に塗布し、減圧及び/又は加熱(プリベーク)等により溶剤を除去することにより、所望の乾燥塗膜を形成することができる。前記の基板としては、例えば、液晶表示素子の製造においては、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたもの等の光透過性基板が挙げられ、固体撮像素子の製造においては、光電変換素子基板等が挙げられる。更に、プラスチック基板も可能である。これらの基板は、格子状やストライプ状等にブラックマトリックスを形成し、格子やストライプの空いた部分に着色パターンが形成される。
また、これらの基板上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
(1)基板への塗布工程の方法は特に限定されず、例えば、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の方法を用いることができる。中でも、スリットコート法が大型基板に適するという観点で好ましい。ここで大型基板とは、各辺が1m以上5m以下の大きさの基板をいう。また、(2)溶剤除去工程の加熱条件は、好ましくは80〜130℃で30〜120秒間程度である。
【0155】
着色感光性樹脂組成物層の(乾燥)膜厚は、充分な色再現領域を得ることができ、かつ充分なパネルの輝度を得るために、0.5〜4.0μmとなるように形成することが好ましく、1.0〜3.5μmとすることがより好ましい。
【0156】
<露光工程>
(3)露光工程では、塗膜を設けた基板に所定のパターンに、活性光線を照射する。波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。
活性光線による露光には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、レーザー発生装置などを用いることができる。
水銀灯を用いる場合にはg線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長を有する活性光線が好ましく使用できる。
【0157】
また、レーザー発生装置を用いた露光方式では、光源として紫外光レーザーを用いる。レーザーは英語のLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出により光の増幅)の頭文字である。反転分布をもった物質中でおきる誘導放出の現象を利用し、光波の増幅、発振によって干渉性と指向性が一層強い単色光を作り出す発振器及び増幅器、励起媒体として結晶、ガラス、液体、色素、気体などがあり、これらの媒質から固体レーザー、液体レーザー、気体レーザー、半導体レーザーなどの公知の紫外光に発振波長を有するレーザーを用いることができる。その中でも、レーザーの出力及び発振波長の観点から、固体レーザー、ガスレーザーが好ましい。
【0158】
本発明に用いることのできる波長としては、300nm〜380nmの範囲である波長の範囲の紫外光レーザーが好ましく、300nm〜360nmの範囲の波長である紫外光レーザーが、着色感光性樹脂組成物の感光波長に合致しているという点でより好ましい。
具体的には、特に出力が大きく、比較的安価な固体レーザーのNd:YAGレーザーの第三高調波(355nm)や、エキシマレーザーのXeCl(308nm)、XeF(353nm)を好適に用いることができる。
露光量としては、1〜500mJ/cm2の範囲が好ましく、1〜100mJ/cm2の範囲がより好ましい。露光量がこの範囲であると、パターン形成の生産性の点で好ましい。
【0159】
本発明に使用可能な装置としては、特に制限はないが市販されているものとしては、Callisto((株)ブイ・テクノロジー製)やAEGIS((株)ブイ・テクノロジー製)やDF2200G(大日本スクリーン製造(株)製などが使用可能である。また上記以外の装置も好適に用いられる。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を露光源として用いることも可能である。特に、紫外LED及び紫外LDが好適である。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書には、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示されている。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の活性光線を照射することができる。本発明で特に好ましい露光源は、UV−LEDであり、340〜370nmにピーク波長を有するUV−LEDが最も好ましい。
【0160】
(3)露光工程では、所定のマスクを介してパターン露光しても良いし、露光光の焦点を絞ってパターン状に露光してもよい。生産性の観点からは、マスクを用いて露光することが好ましい。
【0161】
<現像工程>
(4)現像工程では、露光後の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化部のみを残存させる。
現像液としては、未硬化部における着色感光性樹脂組成物の膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
前記有機溶剤としては、顔料分散組成物又は本発明の着色感光性樹脂組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤として列挙したものが挙げられる。
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜1重量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。
なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、一般に現像後に水で洗浄(リンス)が行われる。
【0162】
現像温度としては、20℃〜35℃が好ましく、23℃〜30℃がより好ましい。
現像時間は、10〜100秒が好ましく、20〜80秒がより好ましい。
また、シャワー圧は、0.01〜0.5MPaが好ましく、0.05〜0.3MPaがより好ましく、0.1〜0.3MPaが更に好ましい。
これらの条件を選択することによって、パターンの形状を、矩形にしたり、順テーパにしたり任意に設計することができる。
【0163】
<ポストベーク工程>
(5)ポストベーク工程では、現像により得られた露光領域に対応するパターンについて、ホットプレートやオーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば、180℃〜250℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜60分間、オーブンならば30〜90分間、加熱処理をすることにより、成分Aにおけるアセタール又はケタールを分解させ、カルボキシ基及び/又はフェノール性水酸基を発生させ、成分A中の前記官能基と架橋させることにより、信頼性に優れたカラーフィルタを形成することができる。
【0164】
なお、RGB3色相の着色パターンを形成するときは、感光性樹脂組成物層の形成、露光、現像、及びベークのサイクルを、所望の色相数だけ繰り返してもよいし、各色相毎に感光性樹脂組成物層の形成、露光、及び現像を行ってから、最後に全色相分まとめてポストベークを行ってもよい。これにより、所望の色相よりなる着色画素を備えたカラーフィルタが作製される。
【0165】
また、本発明の硬化膜は、本発明の着色感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜であり、前記硬化膜の形成方法により得られた硬化膜であることが好ましい。
本発明の着色感光性樹脂組成物により、各種信頼性に優れ、高温でベークされた場合においても色特性の優れた硬化膜が得られる。本発明の着色感光性樹脂組成物を用いてなるカラーフィルタは、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用であり、特に液晶表示装置の用途に有用である。
本発明の有機EL表示装置や液晶表示装置としては、前記本発明の着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタを有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとる公知の各種有機EL表示装置や液晶表示装置を挙げることができる。
【0166】
III.液晶表示装置
本発明の着色パターン形成方法で作製した表示装置用カラーフィルタは、液晶表示装置の作製に好適であり、該カラーフィルタを用いた液晶表示装置は、高品位の画像を表示することができる。
表示装置の定義や各表示装置の説明は、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)、平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0167】
本発明のカラーフィルタは、中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載されている。更に、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、IPS、OCS、FFS、及び、R−OCB等にも適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、特に耐熱性、耐光性及び耐溶剤性等の信頼性に優れることから、明るく高精細なCOA(Color−filter On Array)方式にも好適である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタ層に対する要求特性は前述のような通常の要求特性に加え、層間絶縁膜に対する要求特性、すなわち、低誘電率及び剥離液耐性等の信頼性が必要である。本発明のカラーフィルタは、ポストベーク工程において、成分A中のアセタール又はケタールを熱分解しカルボキシ基又はフェノールを生成させ、エポキシ基及び/又はオキセタニル基と架橋させることにより、より強固な硬化膜を形成することができるため、信頼性の高く、COA方式の液晶表示装置に有用である。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−((株)東レリサーチセンター調査研究部門、2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0168】
本発明の液晶表示装置は、本発明のカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサー、視野角保障フィルムなど様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。
これらの部材については、例えば、「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉、(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18〜24ページ(島 康裕)、同25〜30ページ(八木 隆明)などに記載されている。
【0169】
本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高輝度、高コントラストを実現できるが、更に、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって、より輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0170】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0171】
実施例及び比較例に用いた、(成分A)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)、並びに、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)、を少なくとも含む共重合体、(成分A’)その他の共重合体、(成分B)感放射線性ラジカル重合開始剤、(成分C)エチレン性不飽和化合物、(成分D)着色剤、(成分F)密着改良剤、(成分G)重合禁止剤、(成分H)界面活性剤、(成分I)架橋剤は以下の通りである。
【0172】
(成分A、成分A’)
<共重合体A−1の合成>
エチルビニルエーテル144.2部(2モル当量)にフェノチアジン0.5部を添加し、反応系中を10℃以下に冷却しながらメタクリル酸86.1部(1モル当量)を滴下後、室温(25℃)で4時間撹拌した。p−トルエンスルホン酸ピリジニウム5.0部を添加後、室温で2時間撹拌し、一夜室温放置した。反応液に炭酸水素ナトリウム5部及び硫酸ナトリウム5部を添加し、室温で1時間撹拌し、不溶物を濾過後40℃以下で減圧濃縮し、残渣の黄色油状物を減圧蒸留して沸点(bp.)43〜45℃/7mmHg留分のメタクリル酸1−エトキシエチル134.0部を無色油状物として得た。
得られたメタクリル酸1−エトキシエチル(42部(0.36モル当量))、メタクリル酸(13部(0.21モル当量))、グリシジルメタクリレート(GMA)(32部(0.30モル当量))、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(13部、(0.13モル等量))及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(132.5部)の混合溶液を窒素気流下、70℃に加熱した。この混合溶液を撹拌しながら、ラジカル重合開始剤V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業(株)製、12.4部)及びPGMEA(100.0部)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、70℃で4時間反応させることにより共重合体A−1のPGMEA溶液(固形分濃度:40重量%)を得た。得られた共重合体A−1のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、20,000であった。
【0173】
<共重合体A−2〜A−13及びA’−1〜A’−5の合成>
モノマー種及びその使用量を表1に示すものに変更した以外は、共重合体A−1の合成と同様にして、共重合体A−2〜A−13及びA’−1〜A’−5をそれぞれ合成した。ラジカル重合開始剤V−65の添加量は、表1に記載の分子量となるように調整した。
【0174】
【表1】

【0175】
なお、表1に記載の共重合比はモル比であり、表1中の略号は以下の通りである。
MAEVE:メタクリル酸1−エトキシエチル
MATHF:メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル
【0176】
<メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(MATHF)の合成>
メタクリル酸(86g、1mol)を15℃に冷却しておき、カンファースルホン酸(4.6g,0.02mol)添加した。その溶液に、2−ジヒドロフラン(71g、1mol、1.0当量)を滴下した。1時間撹拌した後に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)を加え、酢酸エチル(500mL)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、不溶物を濾過後40℃以下で減圧濃縮し、残渣の黄色油状物を減圧蒸留して沸点(bp.)54〜56℃/3.5mmHg留分のメタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(MATHF)125gを無色油状物として得た(収率80%)。
【0177】
【化30】

【0178】
【化31】

【0179】
GMA:グリシジルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)
OXE−30:メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(大阪有機化学工業(株)製)
ECHMMA:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(CYCLOMER M100、ダイセル化学工業(株)製)
MAA:メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬工業(株)製)
DCPM:メタクリル酸ジシクロペンタニル(FA−513M、日立化成工業(株)製)
BZMA:メタクリル酸ベンジル(和光純薬工業(株)製)
【0180】
(成分A’)その他の共重合体
(A’−6)ベンジルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体(モル比=70/30、重量平均分子量=5,000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液(固形分40重量%)
(A’−7)アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=80/20)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液(固形分40重量%)
(A’−8)サイクロマーP ACA230AA(ダイセル化学工業(株)製、固形分40重量%)
【0181】
(成分B)
(B−1)PI−1:IRGACURE OXE−01(BASF社製)
(B−2)PI−6:カルバゾイルカルボオキシムアセチルエステル
(B−3)PI−10:2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’、5,5’−テトラフェニルビイミダゾール(保土谷化学工業(株)製)
なお、PI−1及びPI−6は、前述したものと同じ構造の化合物であり、PI−10は、下記に示す化合物である。
【0182】
【化32】

【0183】
(成分C)
(C−1)KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬(株)製)
【0184】
(成分D)
1.顔料分散液
実施例及び比較例に用いた被覆顔料1〜6に用いる重合体1及び重合体2について、詳細を以下に示す。
【0185】
<重合体1の合成>
単量体1(下記構造) 27.0部、メチルメタクリレート 126.0部、メタクリル酸 27.0部及び1−メトキシ−2−プロパノール 420.0部を、窒素置換した三つ口フラスコに導入し、撹拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温した。これに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、V−65)を1.69部加え、90℃にて2時間加熱撹拌を行った。2時間後、更にV−65を1.69部加え、3時間加熱撹拌の後、重合体1の30重量%溶液を得た。得られた重合体1の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)により測定した結果、2.0万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、重合体1の30重量%溶液の固形分あたりの酸価は、98mgKOH/gであった。
【0186】
<重合体2の合成>
単量体2(下記構造) 27.0部、メチルメタクリレート 126.0部、メタクリル酸27.0部及び1−メトキシ−2−プロパノール 420.0部を、窒素置換した三口フラスコに導入し、撹拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温した。これに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、V−65)を1.80部加え、90℃にて2時間加熱撹拌を行った。2時間後、更にV−65を1.80部加え、3時間加熱撹拌の後、重合体2の30重量%溶液を得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)により、得られた重合体2の重量平均分子量を測定した結果、2.1万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、重合体2の30重量%溶液の固形分あたりの酸価は、99mgKOH/gであった。
【0187】
【化33】

【0188】
実施例及び比較例に用いた各顔料分散液を調製するために用いる、被覆顔料1〜7について、詳細を以下に示す。
【0189】
<被覆顔料1の調製>
顔料(C.I.Pigment Red 254、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL RED BP) 50部、塩化ナトリウム 500部、上記の重合体1の溶液 20部、及び、ジエチレングリコール 100部をステンレス製ニーダー((株)井上製作所製)に仕込み、9時間混練した。次に、この混合物を約3,000部の水中に投入し、ハイスピードミキサーで約1時間撹拌した後に、ろ過、水洗して塩化ナトリウム及び溶剤を除き、乾燥して被覆顔料1を調製した。
【0190】
<被覆顔料2の調製>
被覆顔料1の調製において、C.I.Pigment Red 254の代わりに、C.I.Pigment Red 177(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、CROMOPHTAL RED A2B)を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料2を調製した。
【0191】
<被覆顔料3の調製>
被覆顔料1の調製において、C.I.Pigment Red 254の代わりに、C.I.Pigment Green 36(日本ルーブリゾール(株)製、Monastral Green 6Y−CL)を用いて、また、重合体1の代わりに重合体2を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料3を調製した。
【0192】
<被覆顔料4の調製>
被覆顔料1の調製において、C.I.Pigment Red 254の代わりに、C.I.Pigment Blue 15:6を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料4を調製した。
【0193】
<被覆顔料5の調製>
被覆顔料1の調製において、C.I.Pigment Red 254の代わりに、Yellow Pigment E4GN−GT(ランクセス社製)を用いて、また、重合体1の代わりに重合体2を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料5を調製した。
【0194】
<被覆顔料6の調製>
被覆顔料1の調製において、C.I.Pigment Red 254の代わりに、C.I.Pigment Violet 23を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料6を調製した。
【0195】
<被覆顔料7の調製>
被覆顔料1の調製において、C.I.Pigment Red 254の代わりに、C.I.Pigment Yellow 138を用いて、また重合体1の代わりに重合体2を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料7を調製した。
【0196】
実施例及び比較例に用いた顔料分散液D−1−1〜D−1−8について、詳細を以下に示す。
【0197】
<顔料分散液D−1−1の調製>
被覆顔料1を56部、分散剤としてDISPERBYK161(BYK−CHEMIE社製)29部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 340部の組成にて、ホモジナイザーを用いて回転数3,000r.p.m.で3時間撹拌して混合し、混合溶液を調製し、更に0.1mmφジルコニアビーズを用いたビーズ分散機ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)にて6時間分散処理を行い、顔料分散液D−1−1を調製した。
【0198】
<顔料分散液D−1−2の調製>
顔料分散液D−1−1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料2を用いて、他は顔料分散液D−1−1の調製と同様にして、顔料分散液D−1−2を調製した。
【0199】
<顔料分散液D−1−3の調製>
顔料分散液D−1−1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料3を用いて、他は顔料分散液D−1−1の調製と同様にして、顔料分散液D−1−3を調製した。
【0200】
<顔料分散液D−1−4の調製>
顔料分散液D−1−1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料5を用いて、他は顔料分散液D−1−1の調製と同様にして、顔料分散液D−1−4を調製した。
【0201】
<顔料分散液D−1−5の調製>
顔料分散液D−1−1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料4と被覆顔料6を、被覆顔料4/被覆顔料6=100/40の重量比となり、その総量が顔料分散液1の調製における被覆顔料1と同量となるように用いて、他は顔料分散液D−1−1の調製と同様にして、顔料分散液D−1−5を調製した。
【0202】
<顔料分散液D−1−6の調製>
顔料分散液D−1−6の調製に用いる顔料の合成法と、それを用いた分散液の調製法を以下に示す。
【0203】
〔ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の合成〕
フタロジニトリル、塩化亜鉛を原料として亜鉛フタロシアニンを製造した。
亜鉛フタロシアニンのハロゲン化は、塩化スルフリル 3.1部、無水塩化アルミニウム 3.7部、塩化ナトリウム 0.46部、亜鉛フタロシアニン 1部を40℃で混合し、臭素 2.2部を滴下して行った。80℃で15時間反応し、その後、反応混合物を水に投入し、部分臭素化亜鉛フタロシアニン粗顔料を析出させた。この水性スラリーを濾過し、80℃の湯洗浄を行い、90℃で乾燥させ、2.6部の精製された部分臭素化亜鉛フタロシアニン粗顔料を得た。
【0204】
この部分臭素化亜鉛フタロシアニン粗顔料 1部、粉砕した塩化ナトリウム 7部、ジエチレングリコール 1.6部、キシレン 0.09部を双腕型ニーダーに仕込み、100℃で6時間混練した。混練後80℃の水100部に取り出し、1時間撹拌後、濾過、湯洗、乾燥、粉砕した部分臭素化亜鉛フタロシアニン顔料を得た。
得られた部分臭素化亜鉛フタロシアニン顔料は、質量分析によるハロゲン含有量分析から、平均組成はZnPcBr10Cl42で(Pc;フタロシアニン)、1分子中に平均10個の臭素を含有するものであった。
【0205】
〔緑色顔料:ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの分散液の調製〕
直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだ五十嵐機械製造(株)製高速分散機「TSC−6H」に、前記で得た部分臭素化亜鉛フタロシアニン顔料 50部、ビックケミー社製アクリル系分散剤「BYK−2001」 35部、プロピレングリコールメチルエ
ーテルアセテート 340部を仕込み、毎分2,000回転で8時間撹拌して、顔料分散液D−1−6を調製した。
【0206】
<顔料分散液D−1−7の調製>
顔料分散液D−1−1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料4を用いて、他は顔料分散液D−1−1の調製と同様にして、顔料分散液D−1−7を調製した。
【0207】
<顔料分散液D−1−8の調製>
顔料分散液D−1−1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料7を用いて、他は顔料分散液D−1−1の調製と同様にして、顔料分散液D−1−8を調製した。
【0208】
2.染料
前述した式(II)〜(IX)に記載の染料のうち、実施例及び比較例に用いた下記(D−2−1)〜(D−2−12)について以下に示す。
【0209】
(D−2−1)染料:前記式(II−3)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の例示化合物III−90
(D−2−2)染料:前記式(II−3)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の例示化合物IV−A
(D−2−3)染料:前記式(III)で表される化合物の具体例46
(D−2−4)染料:下記式(4)で表される化合物
【0210】
【化34】

【0211】
(D−2−5)染料:下記式(5)で表される化合物
【0212】
【化35】

【0213】
(D−2−6)染料:下記式(6)で表される化合物
【0214】
【化36】

【0215】
(D−2−7)染料:下記式(7)で表される化合物
【0216】
【化37】

【0217】
(D−2−8)染料:下記式(8)で表される化合物
【0218】
【化38】

【0219】
(D−2−9)染料:下記式(9)で表される化合物
【0220】
【化39】

【0221】
(D−2−10)染料:下記式(10)で表される化合物
【0222】
【化40】

【0223】
(D−2−11)染料:下記式(11)で表される化合物
【0224】
【化41】

【0225】
(D−2−12)染料:下記式(12)で表される化合物
【0226】
【化42】

【0227】
(成分F)密着改良剤
(F−1)KBM−503(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)
【0228】
(成分G)重合禁止剤
(G−1)p−メトキシフェノール
【0229】
(成分H)界面活性剤
(H−1)メガファックF−554(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製)
【0230】
(成分I)架橋剤
(I−1)EHPE3150(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ダイセル化学工業(株)製)
【0231】
<着色感光性樹脂組成物CB−1の調製>
以下の組成の成分を、撹拌混合して実施例に用いた着色感光性樹脂組成物CB−1を調製した。
・成分A:A−1 5.8部
・成分B:B−1 2.0部
・光増感剤:なし
・連鎖移動剤:なし
・成分C:C−1 4.9部
・成分D:D−1−7 51.0部
・成分F:F−1 0.3部
・成分G:G−1 0.002部
・成分H:H−1 0.02部
・成分I:I−1 0.3部
・溶剤(成分E):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 11.7部
・溶剤(成分E):エトキシプロピオン酸エチル 24.0部
【0232】
<着色感光性樹脂組成物CB−2〜42、CG−1〜34及びCR−1〜6の調製>
表2及び表3に記載の成分A〜Dと、着色感光性樹脂組成物CB−1と同じ成分で同じ量の成分F〜I並びに同じ量のエトキシプロピオン酸エチルを用い、更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて着色感光性樹脂組成物の固形分濃度が20重量%になるよう調整し、撹拌混合し、実施例に用いた着色感光性樹脂組成物CB−2〜30、CG−1〜30及びCR−1〜4、比較例に用いた着色感光性樹脂組成物CB−31〜42、CG−31〜34及びCR−5〜6をそれぞれ調製した。
また、CB−15、CB−28及びCG−11には、光増感剤としてカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)、連鎖移動剤としてアクセルM(川口化学工業(株)製)を、それぞれ成分Bと等量ずつ更に添加した。
【0233】
【表2】

【0234】
【表3】

【0235】
(実施例1)
着色感光性樹脂組成物CB−1を用いて、下記の評価を行った。
【0236】
<現像マージンの評価>
無アルカリガラス基板(Corning社、1737、550mm×660mm)の表面上に、スリットコーター(平田機工(株)製、HC−6000)を用いて塗布したのち、90℃のクリーンオーブン内で120秒間乾燥ベークを行って、膜厚2.3μmの塗膜を形成した。
得られた塗膜に、20.0μmのライン・アンド・スペース(1対1)のパターンを有するマスクを介して波長365nmにおいて60mJ/cm2(照度20mW/cm2)となる露光量で露光し、露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液を用いて、シャワー圧を0.20MPaで、50秒現像し、純水で洗浄後、風乾した。このとき、マスクを介して露光されていない部分が除去されるまでの最低現像時間の1.2倍を最適現像時間とした。
最適現像時間から更に現像を続けた際のラインパターンが剥がれるまでの時間を測定し、現像マージンとした。現像マージン30秒以上が実用上問題のないレベルである。
A:現像マージン60秒以上
B:現像マージン45秒以上60秒未満
C:現像マージン30秒以上45秒未満
D:現像マージン30秒未満
【0237】
<画素の形成>
無アルカリガラス基板(Corning社、1737、550mm×660mm)の表面上に、スリットコーター(平田機工(株)製、HC−6000)を用いて塗布したのち、90℃のクリーンオーブン内で120秒間乾燥ベークを行って、膜厚2.3μmの塗膜を形成した。
得られた塗膜に、100μmのラインパターンを有するマスクを介して波長365nmにおいて60mJ/cm2(照度20mW/cm2)となる露光量で露光し、露光後の塗膜をアルカリ現像液CDK−1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液を用いて、シャワー圧を0.20MPaで、上記最適現像時間にて現像し、純水で洗浄後、風乾した。
次に、オーブンにより230℃で60分間加熱処理を行い、ガラス基板上に単色のカラーフィルタを作製した。
【0238】
<信頼性(耐熱性)の評価>
画素が形成された基板を、220℃のクリーンオーブン内で60分間追加ベークし、追加ベーク前後での単色のカラーフィルタの色変化(ΔE*ab)を、大塚電子(株)製分光測光器MCPD−2000を用いて評価した。ここでΔE*abとは、L***表色系における色差を意味する。色差の変化ΔE*abの値で評価した。
評価基準は下記の通りである。
A:1.5以下である。
B:1.5より大きく、かつ2.5以下である。
C:2.5より大きく、かつ3.5以下である。
D:3.5より大きい。
【0239】
<信頼性(耐溶剤性)の評価>
画素が形成された基板を、25℃のN−メチル−ピロリドンに30分間浸漬し、浸漬前後での単色のカラーフィルタの色変化(ΔE*ab)を、大塚電子(株)製分光測光器MCPD−2000を用いて評価した。ここでΔE*abとは、L***表色系における色差を意味する。色差の変化ΔE*abの値で評価した。
評価基準は下記の通りである。
A:1.5以下である。
B:1.5より大きく、かつ2.5以下である。
C:2.5より大きく、かつ3.5以下である。
D:3.5より大きい。
【0240】
<信頼性(耐光性)の評価>
画素が形成された基板を、キセノンランプ12万lux(ルクス)で40時間照射(480万lux・h相当)した。キセノンランプ照射の前後での単色のカラーフィルタの色変化(ΔE*ab)を、大塚電子(株)製分光測光器MCPD−2000を用いて評価し、耐光性の指標とした。ここでΔE*abとは、L***表色系における色差を意味する。
評価基準は下記の通りである。
A:1.5以下である。
B:1.5より大きく、かつ2.5以下である。
C:2.5より大きく、かつ3.5以下である。
D:3.5より大きい。
【0241】
(実施例2〜64、及び、比較例1〜18)
表4〜表6に記載の着色感光性樹脂組成物をそれぞれ用いて、実施例1と同様に各評価を行った。
【0242】
(実施例65〜67)
着色感光性樹脂組成物CB−14、CG−3及びCR−2をそれぞれ用いて、パターン露光を以下のレーザー露光にしたこと以外は、実施例1と同様に処理し、評価した(なお、基板サイズは適宜調整した。)。
実施例1と同様に、基板上に着色感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させ、塗膜から150μmの間隔を介して、所定のフォトマスクをセットし、レーザーを20mJ/cm2照射した。なお、レーザー露光装置は、(株)ブイ・テクノロジー製の「AEGIS」を使用し(波長355nm、パルス幅約10nsec)、露光量はOPHIR社製の「PE10B−V2」を用いて測定した。
【0243】
【表4】

【0244】
【表5】

【0245】
【表6】

【0246】
表4〜表6に示すように、本発明の着色感光性樹脂組成物は、現像マージンと信頼性とを両立することができ、特に熱処理を施しても色特性を損なうことがない。
【0247】
更に、実施例及び比較例で作製したカラーフィルタをそれぞれ用いて、液晶表示装置を組み立てたところ、実施例で作製したカラーフィルタのほうが暗所での光漏れも少なく、画質が向上していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基が熱分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1)、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2)、並びに、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位(a3)、を少なくとも含む共重合体、
(成分B)感放射線性ラジカル重合開始剤、
(成分C)エチレン性不飽和化合物、並びに、
(成分D)着色剤、を含むことを特徴とする
着色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記構成単位(a1)が、式(A2)で表される構成単位である、請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(A2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方が前記アルキル基又はアリール基であり、R3は、アルキル基又はアリール基を表し、R1又はR2とR3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R4は、水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。)
【請求項3】
前記構成単位(a2)が、オキセタニル基を有する、請求項1又は2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
成分Bが、オキシムエステル化合物を少なくとも含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
成分Bが、ヘキサアリールビイミダゾール化合物を少なくとも含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
成分Dが、平均一次粒子径が10〜30nmの範囲である顔料を少なくとも含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
成分Dが、染料を少なくとも含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
波長300〜420nmの範囲のレーザー露光用である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物により製造された硬化膜。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物により基板上に膜を形成する膜形成工程、
前記膜を活性光線により露光する露光工程、
露光された前記膜を水性現像液により現像する現像工程、及び、
現像された前記膜を加熱処理するポストベーク工程、を含む
硬化膜の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化膜、又は、請求項10に記載の製造方法により得られた硬化膜を具備するカラーフィルタ。
【請求項12】
前記硬化膜をアレイ上に具備する、請求項11に記載のカラーフィルタ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のカラーフィルタを具備する表示装置。

【公開番号】特開2012−22048(P2012−22048A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158053(P2010−158053)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】