説明

着色樹脂粒子からなる粉体及びその製造方法

【課題】単分散性が高く、着色力があり、粒子同士の凝集が少なく、粒子の移動が均一で、帯電能を有する着色樹脂粒子からなる粉体を提供することにある。又、製造方法が簡単でコストが安く着色樹脂粒子からなる粉体を製造できる製造方法を提供することにある。
【解決手段】少なくともカーボンブラックと樹脂を用いて形成された着色樹脂粒子からなる粉体において、該粉体が下記一般式(1)に示すユニットDとフタロシアニン誘導体を含有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体。
一般式(1)
ユニットD=[P][D]k

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の着色樹脂粒子からなる粉体は、電子写真用トナー組成物、粉体ディスプレー用材料、液晶表示板のギャップ調節材料、粒径測定用標準粉体、粒子分散塗料等に用いることができ、その用途は広い。
【背景技術】
【0002】
単分散性の高い着色樹脂粒子からなる粉体は、分散重合法により作製する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、重合反応中に着色剤(顔料)が沈降し、樹脂粒子中に顔料を取り込むことは困難であった。
【0004】
又、着色樹脂粒子からなる粉体は、顔料分散剤と補助溶剤を用いる分散重合法により作製する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開昭61−273553号公報
【特許文献2】特開2003−215843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、得られた着色樹脂粒子からなる粉体は、単分散性が不十分であり、粒子の移動が不均一であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、単分散性が高く、着色力があり、粒子同士の凝集が少なく、粒子の移動が均一で、帯電性(以下、帯電能ともいう)を有する着色樹脂粒子からなる粉体を提供することにある。
【0007】
又、本発明は、製造方法が簡単でコストが安く着色樹脂粒子からなる粉体を製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記に記載の構成を取ることにより解消されるものである。
【0009】
1.少なくともカーボンブラックと樹脂を用いて形成された着色樹脂粒子からなる粉体において、
該粉体が下記一般式(1)に示すユニットDとフタロシアニン誘導体を含有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体。
【0010】
一般式(1)
ユニットD=[P][D]k
[P]は、CH3−(CH2m−(C=O)−
(式中mは、4〜20の整数を示す)
[D]は、−O−(CH2n−(C=0)−
(式中、nは1〜15の整数を示す)
kは、1〜200の整数
Rは、Hまたはアルキル基(炭素数は1〜20)、アミノ基、水酸基、エステル基(炭素数は1〜20)
を示す。
【0011】
2.少なくともカーボンブラックと樹脂を用いて形成された着色樹脂粒子からなる粉体において、
該粉体が下記一般式(2)に示すユニットDとフタロシアニン誘導体を含有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体。
【0012】
一般式(2)
ユニットD=R1−R2−R3−・・・−Ra−Rb
1、Rbは、Hまたはアルキル基(炭素数は1〜20)、アミノ基、水酸基、エステル基(炭素数は1〜20)
2、R3−・・・−Raは、P基またはアルキル基(炭素数は1〜20)が1つまたは2つ置換された炭素数が1〜20のアルキレン基
2〜Raの数は、4〜200の整数
P基は、CH3−(CH2m−(C=O)−O−(CH2n−(C=O)−
(式中、mは4〜20、nは1〜15の整数を示す)
を示す。
【0013】
3.着色樹脂粒子からなる粉体走査型電子顕微鏡から算出される個数基準におけるメディアン径(D50)が0.5〜20μmであり、下記式(1)で算出されるCV値が15以下であることを特徴とする前記1または2に記載の着色樹脂粒子からなる粉体。
【0014】
式(1)
CV値=(個数基準の粒度分布における標準偏差/個数基準におけるメディアン径(D50))×100
4.重合性単量体と重合開始剤とカーボンブラックと前記1または2に記載のユニットDとフタロシアニン誘導体とを混合して混合液を調製する工程、
この混合液中のカーボンブラックを分散装置を用いて分散して分散液を調製する工程、
この分散液を重合性単量体が可溶で且つ重合して形成された樹脂が不要な溶媒中に投入して反応液を調製する工程、
この反応液を加熱して重合を行い着色樹脂粒子を形成する工程
を有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法。
【0015】
5.重合性単量体と重合開始剤とカーボンブラックと前記1または2に記載のユニットDとフタロシアニン誘導体を混合し混合液を調製する工程、
この混合液を連続相が流れるマイクロチャンネル中に加圧して通しカーボンブラックの分散液滴を含有する分散液を調製する工程、
この分散液を重合性単量体が可溶で且つ重合して形成された樹脂が不要な溶媒中に投入して反応液を調製する工程、
この反応液を加熱して重合を行い着色樹脂粒子を形成する工程
を有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の着色樹脂粒子からなる粉体は、上記課題に鑑みなされたもので、単分散性が高く、着色力があり、粒子同士の凝集が少なく、粒子の移動が均一で、帯電能に優れた効果を有する。
【0017】
又、本発明の着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法は、製造方法が簡単で低コストで粉体を製造できる優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、カーボンブラックを含有する着色樹脂粒子からなる粉体がユニットDとフタロシアニン誘導体を含有しているとを特徴としている。
【0019】
カーボンブラックを含有する着色樹脂粒子からなる粉体を作製するとき、カーボンブラックの分散剤としてユニットDとフタロシアニン誘導体を含有させると、上記問題が解決できることを見出した。
【0020】
ユニットDとフタロシアニン誘導体はカーボンブラックの分散剤、すなわちシナージスとして作用し、分散剤をカーボンブラックに効率よく吸着させる作用を発揮する。その結果、良好な分散安定性を実現でき、上記問題を解消する着色樹脂粒子からなる粉体が得られたと推測している。
【0021】
その結果、着色樹脂粒子中にカーボンブラックを完全(取り込み量率が100%)に取り込むことができ、且つ着色樹脂粒子中でカーボンブラックが均一に分散し、粉体の粒度分布がそろい、単分散性に優れる着色樹脂粒子からなる粉体を作製することができる。
【0022】
尚、取り込み量率が100%であると、製造時に用いた溶液を排水するとき排水処理の脱色処理が必要無く、製造方法が簡単で低コストで粉体を製造でき好ましい。
【0023】
さらに、カーボンブラックの分散性、安定性を確保する目的で、分散助剤としてポリビニルアルコールあるいはポリアクリル酸ナトリウムの何れか一つ以上を含有させてもよい。
【0024】
本発明の着色樹脂粒子からなる粉体は、個数基準におけるメディアン径(D50)が0.5〜20μm、CV値が15以下であるものが好ましい。
【0025】
個数基準におけるメディアン径(D50)とCV値を上記範囲とすることで、移動性が良好(均一)に保てるようになる。
【0026】
個数基準におけるメディアン径(D50)の測定は、走査型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子社製)により行うことができる。CV値の算出は、走査型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子社製)により、個数基準におけるメディアン径(D50)が0.5μm以上2μm未満の場合は1万倍、2μm以上5μm未満の場合は5千倍、5μm以上20μm以下の場合は1千倍の倍率で写真撮影し、100個の粒子より下記式(1)により行う。
【0027】
式(1)
CV値=(個数基準の粒度分布における標準偏差/個数基準におけるメディアン径(D50))×100
着色樹脂粒子からなる粉体は、分散したカーボンブラックと重合性単量体と重合開始剤を含有する分散液を加熱し、重合性単量体を重合して作製することができ、種々の製造方法で製造することができる。
【0028】
具体的には、懸濁重合法、シード重合法、ソープフリー重合法等でも作製することはできるが、操作が簡単であり重合後に分級の必要のない下記の方法が好ましい。
【0029】
下記の方法とは、
(1)重合性単量体は可溶であるが重合後の樹脂が不溶である溶媒中で重合を行う分散重合法、(2)マイクロチャンネルを用いて単分散性の高い重合性単量体の油滴を形成し重合を行う方法である。
【0030】
以下、分散重合法、マイクロチャンネルを用いて着色樹脂粒子からなる粉体を作製する方法について説明する。
【0031】
(分散重合法による着色樹脂粒子からなる粉体を作製する方法)
この方法は、重合性単量体と重合開始剤とカーボンブラックとユニットDとフタロシアニン誘導体を混合し混合液を調製する工程、
この混合液中のカーボンブラックを分散装置を用いて分散して分散液を作製する工程、
この分散液を重合性単量体が可溶で且つ重合して形成された樹脂が不要な溶媒中に投入して反応液を調製する工程、
この反応液を加熱して樹脂粒子を形成する工程
を有する着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法である。
【0032】
(マイクロチャンネルを用いて着色樹脂粒子からなる粉体を作製する方法)
この方法は、重合性単量体と重合開始剤とカーボンブラックとユニットDとフタロシアニン誘導体を混合し混合液を調製する工程、
この混合液を連続相が流れるマイクロチャンネル中に加圧して通しカーボンブラックの分散液滴を含有する分散液を調製する工程、
この分散液を加熱して樹脂粒子を形成する工程
を有する着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法である。
【0033】
図1は、マイクロチャンネル中にカーボンブラックとユニットDとフタロシアニン誘導体を混合た混合液を加圧して通し、カーボンブラックの分散液滴を作製する装置の一例を示す模式図である。
【0034】
尚、マイクロチャンネルとは、幅、深さが数μmから数百μmの溝のことで、未分散のカーボンブラックを含有する混合液をこの溝を通すことでカーボンブラックを分散させることができる。
【0035】
具体的には、未分散のカーボンブラックとユニットDとフタロシアニン誘導体を混合した混合液を連続相として流しながらマイクロチャンネルに分散液を加圧して流してカーボンブラックの液滴を含む分散液を調製する。この液滴を有する分散液に重合性単量体や重合開始剤等を添加し重合を行い着色樹脂粒子の分散液を作製することができる。
【0036】
この後、この分散液を遠心分離機を用いて着色樹脂粒子を分離し、着色樹脂粒子を溶解膨潤させない溶剤と水で洗浄し、乾燥して着色樹脂粒子からなる粉体を作製することができる。
【0037】
次に、着色樹脂粒子からなる粉体の作製に用いる材料について説明する。
【0038】
(重合性単量体)
本発明に用いられる重合性単量体としては、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸、フマル酸等のカルボン酸モノマー等を挙げることができる。これらの重合性単量体は、単一でも、複数を混合して用いてもよい。
【0039】
又、架橋性単量体を混合して用いることも可能であり、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を挙げることができる。
【0040】
(重合開始剤)
本発明に用いられる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス−2−メチル−N−1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーブチルネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1′,3,3′−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類等を挙げることができる。
【0041】
(カーボンブラック)
本発明で用いられるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ガスブラック、チャンネルブラック、フレームブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、プラズマブラック、ランプブラック等を挙げることができる。
【0042】
又、DE19521565号に開示されるインバーションブラック(Inversionsruss)、WO98/45361号もしくはDE19613796号に開示されるケイ素原子含有カーボンブラック、WO98/42778号に開示の金属含有カーボンブラック、アーク放電ブラック(Lichbogenruss)や、化学的な製造方法で副生成物として作製されるカーボンブラック等も挙げられる。
【0043】
カーボンブラックはその比表面積の影響等により、カーボンブラック粒子同士が連鎖状にくっつき易い性質を有し、樹脂粒子中で分散しにくい性質を有している。
【0044】
本発明に用いられるカーボンブラックの平均粒径は10〜300nmのものが好ましい。
【0045】
着色樹脂粒子中に分散してなるカーボンブラックの平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真の観察結果より算出することが可能である。具体的には、倍率が10000倍の透過型電子顕微鏡を用いて100個の樹脂粒子粒子を撮影し、樹脂粒子粒子中に含有されるカーボンブラック粒子をランダムに一次粒子として観察し、画像解析により水平方向フェレ径を算出し、その平均値を平均粒径とするものである。
【0046】
本発明の着色樹脂粒子からなる粉体は、粉体中にカーボンブラックを粉体を構成する樹脂100質量部に対し5〜70質量部含有するものが好ましく、20〜50質量部含有するものがより好ましい。
【0047】
又、着色樹脂粒子に含有される前のカーボンブラックの平均粒径を界面活性剤水溶液中で分散させた状態で測定することも可能である。この場合、例えば、動的光散乱式ナノトラック粒度分布測定装置「マイクロトラックUPA150(マイクロトラック社製)」の様な動的光散乱法を利用した粒度分析装置による測定方法が挙げられる。「マイクロトラックUPA150」により測定を実施する際の測定手順を以下に示すが、下記測定条件は「マイクロトラックUPA150」本体の制御プログラムにて設定されるものである。
(1)測定条件
サンプル屈折率:1.59、サンプル比重:1.05、球状粒子換算
溶媒屈折率:1.33、溶媒粘度:0.797(30℃)、1.002(20℃)
(2)測定セルに純水を投入し、0点調整を行う。
(3)50mlの純水中に、後述するカーボンブラック分散液を添加し、透過濃度が適正範囲内になる様にカーボンブラック分散液の調整を行う。
(4)調整した分散液に約3分間超音波処理を行い、ソルベントショックによるカーボンブラックの凝集を解除する。
(5)超音波処理後の分散液を測定セルに写し、透過濃度が適正範囲内(強度で0.1乃至10.0)にあることを確認する。
(6)透過濃度が適正範囲内にあることを確認したら本体制御プログラムにより測定を開始する。尚、透過濃度が適正範囲内でなかった場合には樹脂粒子比率を下げる様に純水をさらに添加し、透過濃度が適正範囲内に入る様に調整する。
【0048】
尚、測定時間を180秒、測定回数を1回に設定し、平均粒径Mは下記式より算出される。
【0049】
平均粒径M=Σ(vi・di)/Σ(vi)
(ユニットD)
本発明に用いられるユニットDは、下記一般式(1)、一般式(2)で表される化合物である。
【0050】
一般式(1)
ユニットD=[P][D]k
[P]は、CH3−(CH2m−(C=O)−
(式中mは、4〜20の整数を示す)
[D]は、−O−(CH2n−(C=0)−
(式中、nは1〜15の整数を示す)
kは、1〜200の整数
Rは、Hまたはアルキル基(炭素数は1〜20)、アミノ基、水酸基、エステル基(炭素数は1〜20の整数)
を示す。
【0051】
一般式(2)
ユニットD=R1−R2−R3−・・・−Ra−Rb
1、Rbは、Hまたはアルキル基(炭素数は1〜20)、アミノ基、水酸基、エステル基(炭素数は1〜20)
2、R3−・・・−Raは、P基またはアルキル基(炭素数は1〜20)が1つまたは2つ置換された炭素数が1〜20のアルキレン基
2〜Raの数は、4〜200の整数
P基は、CH3−(CH2m−(C=O)−O−(CH2n−(C=O)−
(式中、mは4〜20、nは1〜15の整数を示す)
(フタロシアニン誘導体)
本発明に用いられるフタロシアニン誘導体は、金属/無金属フタロシアニンの塩である。具体的には、スルホン酸フタロシアニンのジオクタデシルジメチルアンモニウム塩、スルホン酸フタロシアニンのセチルトリメチルアンモニウム塩を挙げることができる。
【0052】
フタロシアニン誘導体が分散剤、すなわちシナージスとして作用し、分散剤をカーボンブラックに効率よく吸着させる作用を発揮し、その結果、良好な分散安定性を実現できたものと推測している。
【0053】
本発明に係るフタロシアニン誘導体は、公知の方法、例えば、濃硫酸等と反応させる方法、特開昭59−168070号、特公平7−2911号、特開昭53−85823号、特表2000−513396号等に記載の方法を用いて作製することが可能である。
【0054】
以下、本発明に用いることのできるフタロシアニン誘導体として、下記の一般式(A)〜(C)で表される銅フタロシアニン化合物を挙げることができる。
【0055】
一般式(A)
CuPc−(SO3H)n
上記一般式(A)において、Pcはフタロシアニン、nは1〜4の整数を示す。
【0056】
一般式(B)
CuPc−(X−NR12n
上記一般式(B)において、Pcはフタロシアニン、Xは2価の連結基を示す。R1、R2は各々異なっていても良いアルキル基を表し、R1とR2で環を形成していても良い。該環はヘテロ原子を含んでいていも良い。nは1〜4の整数を示す。
【0057】
Xとしては、例えば、−SO2−、−CO−、−CH2−基等が挙げられる。
【0058】
1、R2としては、例えば、メチル基、エチル基、ピペリジノメチル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジエチルアミノプロピル基、ジブチルアミノプロピル基、ピペリジノエチル基、モルホリノエチル基、ピペリジノプロピル基、ジエチルアミノヘキシル基、ジエチルアミノエトキシプロピル基、ジエチルアミノブチル基、ジメチルアミノアミル基、2−エチルヘキシルアミノエチル基、ステアリルアミノエチル基、オレイルアミノエチル基、p−ジメチルアミノエチルスルファモイルフェニル基、p−ジエチルアミノエチルスルファモイルフェニル基、p−ジメチルアミノプロピルスルファモイルフェニル基、p−ジエチルアミノエチルカルバモイルフェニル基等が挙げられる。
【0059】
一般式(C)
CuPc−(N=N−Ph−Z)n
上記一般式(C)において、Pcはフタロシアニン、Phはフェニル基を表し、Zはアミノ基、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、置換されていてもよいカルバモイル基、または置換されていてもよいスルファモイル基を表す。nは1〜4の整数を示す。
【0060】
Zとしては、例えば、置換されていてもよいアミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基)、アニリノ基、カルボン酸もしくはその塩、スルホン酸もしくはその塩、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基等が挙げられる。nは1〜4の整数を示す。
【0061】
本発明に係るフタロシアニン誘導体は、組成物の分散時に添加してもよく、可溶な溶媒で溶解させた後、フタロシアニン系顔料を添加し、懸濁液として溶媒を除去して、処理フタロシアニン系顔料として使用することも可能である。
【0062】
フタロシアニン誘導体の添加量としては、カーボンブラックに対して0.5〜20質量%の範囲にあることが好ましく、1〜5質量%の範囲にあることがより好ましい。使用量が0.5質量%以上とすることで本発明の目的効果が得られ、20質量%以下とすることでフタロシアニン誘導体が単分子の染料としての特性を示さず堅牢性も確保できる。
【0063】
(溶媒)
本発明で用いる溶媒としては、重合性単量体を溶解し、重合性単量体を重合して得られた樹脂を溶解しないもので、具体的には、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。
【0064】
分散重合法、マイクロチャンネルを用いる方法で着色樹脂粒子からなる粉体を形成する場合には、必要に応じてさらに高分子系分散剤、界面活性剤を添加することができる。
【0065】
(分散補助剤)
本発明では、一般式(1)、一般式(2)の他に、分散補助剤を用いることが好ましい。分散補助剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシプリピルセルローズ等を挙げることができ、好ましくは重合度300〜3000、ケン化度80〜95の部分ケン化型ポリビニルアルコール、重合度1000〜10000のポリアクリル酸ナトリウム等である。
【0066】
分散補助剤の添加量は、溶媒に対して0.1〜50質量%が好ましい。
【0067】
(界面活性剤)
本発明に用いられる界面活性剤としては、種々のものが使用可能である。
【0068】
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むもの、非イオン界面活性剤としては、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系等、陽イオン界面活性剤としては、アルキルアミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0069】
界面活性剤の添加量は、水に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0071】
《ユニットDの準備》
〈ユニットD1の準備〉
一般式(1)において、mが10、nが5、kが50、Rが−NH3の化合物を「ユニットD1」として準備した。
【0072】
〈ユニットD2の準備〉
一般式(2)において、R1が−CH3、R2〜Raが−(P)−(CH24−、Rb=−OH、mが10、nが5、R2〜Raの数が100、
PがCH3−(CH2m−(C=O)−O−(CH2n−(C=O)−の化合物
を「ユニットD2」として準備した。
【0073】
〈ユニットD3の準備〉
ユニットD1/ユニットD2の質量比率が、2/3の混合物を「ユニットD3」として準備した。
【0074】
〈ユニットD4の準備〉
一般式(1)において、mが16、nが4、kが70、Rが−OHの化合物を「ユニットD4」として準備した。
【0075】
〈ユニットD5の準備〉
一般式(2)において、R1が−CH3、R2〜Ra=−(P)−(CHCH24−、Rbが−NH3、mが15、nが4、R2〜Raの数が130、PがCH3−(CH2m−(C=O)−O−(CH2n−(C=O)−の化合物を「ユニットD5」として準備した。
【0076】
〈ユニットD6の準備〉
ユニットD4/ユニットD5の質量比率が、3/7の混合物を「ユニットD6」として準備した。
【0077】
〈ユニットD7の準備〉
一般式(1)において、mが20、nが3、kが190、Rが−OHの化合物を「ユニットD7」として準備した。
【0078】
〈ユニットD8の準備〉
一般式(2)において、R1が−CH3、R2〜Ra=−(P)−(CHCH24−、Rbが−NH3、mが4、nが11、R2〜Raの数が7、PがCH3−(CH2m−(C=O)−O−(CH2n−(C=O)−の化合物を「ユニットD5」として準備した。
【0079】
〈ユニットD9の準備〉
ユニットD4/ユニットD5の質量比率が、1/9の混合物を「ユニットD9」として準備した。
【0080】
〈ユニットD10の準備〉
一般式(1)において、mが26、nが5、kが50、Rが−NH3の化合物を「ユニットD1」として準備した。
【0081】
《着色樹脂粒子からなる粉体の作製》
(着色樹脂粒子からなる粉体1の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1は、分散重合法により作製した。
【0082】
径1mmのガラスビーズ入りポリボトルに下記材料を投入し、ペントシェーカーで4時間分散した後、メッシュにてガラスビーズを分離し、「着色剤分散液1」を調製した。
【0083】
カーボンブラック(PH=2、数平均一次粒径=24nm) 6.00質量部
スルホン酸フタロシアニンのジオクタデシルジメチルアンモニウム塩0.80質量部
ユニットD1 1.64質量部
スチレン 100.00質量部
次に、撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置及び原料仕込み装置を備えた反応容器に、ポリビニルピロリドン6.3質量部をエタノール242質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を70℃に昇温させた。
【0084】
この溶液に「着色剤分散液1」72.25質量部とアゾビスイソブチルニトリル1.60質量部を投入し、24時間重合を行い着色樹脂粒子からなる粉体の分散液を作製した。
【0085】
この分散液を遠心分離機により着色樹脂粒子からなる粉体を分離し、エタノールで2回洗浄した後、水で5回洗浄した。この分散液中の着色樹脂粒子からなる粉体は個数基準におけるメディアン径(D50)は5.0μm、CV値は5.3であった。
【0086】
この分散液から水を除去後、乾燥して「着色樹脂粒子からなる粉体1」を得た。この着色樹脂粒子からなる粉体1は黒色であり、示差熱重量測定装置(TG/DTA)によりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率がほぼ100質量%であることを確認した。
【0087】
尚、カーボンブラックの取り込み量率は、下記の方法で求めた。
【0088】
示差熱重量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)を用い、粉体を20℃/分の昇温速度で温度を上げ、800℃で1分間保持した後の残渣量を測定した。カーボンブラックがない粉体の残渣量を100としてカーボンブラックが含まれた粉体の残渣量を質量%で計算した。
【0089】
(着色樹脂粒子からなる粉体2の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD2、PH2で数平均一次粒径24nmのカーボンブラックをPH7で数平均一次粒径20nmのカーボンブラックに変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体2」を作製した。
【0090】
(着色樹脂粒子からなる粉体3の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD3に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体3」を作製した。
【0091】
(着色樹脂粒子からなる粉体4の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD4に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体4」を作製した。
【0092】
(着色樹脂粒子からなる粉体5の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD5、PH2で数平均一次粒径24nmのカーボンブラックをPH7で数平均一次粒径20nmのカーボンブラックに変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体5」を作製した。
【0093】
(着色樹脂粒子からなる粉体6の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD6に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体6」を作製した。
【0094】
(着色樹脂粒子からなる粉体7の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD7に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体7」を作製した。
【0095】
(着色樹脂粒子からなる粉体8の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD8、PH2で数平均一次粒径24nmのカーボンブラックをPH7で数平均一次粒径20nmのカーボンブラックに変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体8」を作製した。
【0096】
(着色樹脂粒子からなる粉体9の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD9に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体9」を作製した。
【0097】
(着色樹脂粒子からなる粉体10の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1をユニットD10に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体10」を作製した。
【0098】
(着色樹脂粒子からなる粉体11の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体11は、マイクロチャンネルを用いる方法により作製した。
【0099】
下記材料を混合し混合液を調製した。
【0100】
カーボンブラック(PH=7、数平均一次粒径=20nm) 6.00質量部
スルホン酸フタロシアニンのジオクタデシルジメチルアンモニウム塩0.80質量部
ユニットD2 1.64質量部
スチレン 100.00質量部
この混合液72.25質量部にアゾビスイソブチルニトリル1.60質量部を投入し、「着色剤混合液2」を調製した。
【0101】
ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(SDS)2%水溶液を連続相として流しながらスリット幅40μm、深さ2μmのマイクロチャンネルに「着色剤混合液2」を20mPaの圧力で押し出して4.5μmの液滴を有する「着色剤分散液2」を作製した。この「着色剤分散液2」100質量部に対してポリビニルアルコール10質量部を添加した後、撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置及び原料・原料仕込み装置を備えた反応容器に、ポリビニルピロリドン6.3質量部をエタノール242質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を70℃に昇温させて重合を行い、着色樹脂粒子からなる粉体の分散液を作製した。
【0102】
この分散液を遠心分離機により着色樹脂粒子からなる粉体を分離し、エタノールで2回洗浄した後、水で5回洗浄した。この分散液中の着色樹脂粒子からなる粉体は個数基準におけるメディアン径(D50)が4.3μm、CV値が6.1であった。
【0103】
この分散液から水を除去後、乾燥して「着色樹脂粒子からなる粉体11」を得た。この着色樹脂粒子からなる粉体11は黒色であり、TG/DTAによりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率がほぼ100質量%であることを確認した。
【0104】
(着色樹脂粒子からなる粉体12の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体12は分散重合法により作製した。
【0105】
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたスルホン酸フタロシアニンのジオクタデシルジメチルアンモニウム塩をスルホン酸フタロシアニンのセチルトリメチルアンモニウム塩に、ユニットD1をユニットD3に変更した以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体12」を作製した。
【0106】
この着色樹脂粒子からなる粉体12は黒色であり、TG/DTAによりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率がほぼ100質量%であることを確認した。
【0107】
(着色樹脂粒子からなる粉体13の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたスルホン酸フタロシアニンのジオクタデシルジメチルアンモニウム塩とユニットD1、分散補助剤を添加しなかった以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体13」を作製した。
【0108】
しかし、重合途中でカーボンブラック凝集体が生成し、樹脂粒子中にはカーボンブラックがほとんど取り込まれず、TG/DTAによりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率が5質量%であることを確認した。
【0109】
(着色樹脂粒子からなる粉体14の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたスルホン酸フタロシアニンのジオクタデシルジメチルアンモニウム塩を添加しなかった以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体14」を作製した。しかし、重合途中でカーボンブラック凝集体が生成し、樹脂粒子中にはカーボンブラックがあまり取り込まれず、TG/DTAによりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率が60質量%であることを確認した。
【0110】
(着色樹脂粒子からなる粉体15の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体1の作製で用いたユニットD1を添加しなかった以外は同様にして「着色樹脂粒子からなる粉体15」を作製した。しかし、重合途中でカーボンブラック凝集体が生成し、樹脂粒子中にはカーボンブラックがほとんど取り込まれず、TG/DTAによりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率が20質量%であることを確認した。
【0111】
(着色樹脂粒子からなる粉体16の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体16は分散重合法により作製した。
【0112】
径1mmのガラスビーズ入りポリボトルに下記材料を投入し、ペントシェーカーで4時間分散した後、メッシュにてガラスビーズを分離し、「着色剤散液16」を調製した。
【0113】
カーボンブラック(PH=2、数平均一次粒径=24nm) 6.00質量部
ビニルフェニル−n−ブチルアクリレート 1.80質量部
n−プロパノール 36.00質量部
次に、撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置及び原料・原料仕込み装置を備えた反応容器に、ポリビニルピロリドン6.3質量部をエタノール242質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、スチレン70質量部、アゾビスイソブチルニトリル1.60質量部を投入し、15分後に着色剤分散液5を投入し、内温を70℃に昇温させ、24時間重合を行い着色樹脂粒子からなる粉体の分散液を作製した。この分散液を遠心分離機により着色樹脂粒子からなる粉体を分離し、エタノールで2回洗浄した後、水で5回洗浄した。
【0114】
この分散液中の着色樹脂粒子からなる粉体は個数基準におけるメディアン径(D50)が6.1μm、CV値が20.4であった。
【0115】
この分散液から水を除去、乾燥して「着色樹脂粒子からなる粉体16」を得た。この着色樹脂粒子からなる粉体は、TG/DTAによりカーボンブラック仕込み量に対する取り込み量率が8質量%であることを確認した。
【0116】
(着色樹脂粒子からなる粉体17の作製)
着色樹脂粒子からなる粉体17はマイクロチャンネルを用いる方法により作製した。
【0117】
着色樹脂粒子からなる粉体11の作製で用いたスルホン酸フタロシアニンのセチルトリメチルアンモニウム塩とユニットD3を添加しなかった以外は同様にして分散液を作製した。
【0118】
この分散液72.25質量部にアゾビスイソブチルニトリル1.60質量部を投入し、「着色剤分散液17」を調製を試みた。
【0119】
SDS2%水溶液を連続相として流しながらスリット幅40μm、深さ2μmのマイクロチャンネルに「着色剤分散液17」を20mPaの圧力で押し出して液滴を作製したが、数分間でカーボンブラックがマイクロチャンネルに詰まり、連続して液滴を作製できなかった。
【0120】
表1に、粉体の作製方法、作製に用いた材料、カーボンブラックの取り込み量率を示す。
【0121】
【表1】

【0122】
《評価》
(粒径)
着色樹脂粒子からなる粉体の粒径は、前記の測定方法で個数基準におけるメディアン径(D50)を求めた。尚、個数基準におけるメディアン径(D50)が0.5〜20μmの粉体は、移動性が良好に保て好ましい。
【0123】
(単分散性(CV値))
着色樹脂粒子からなる粉体の単分散性は、CV値で評価した。
【0124】
CV値は、前記の測定方法で求めた。尚、CV値は15以下であると移動性に優れ、好ましい。
【0125】
(着色力)
着色樹脂粒子からなる粉体の着色力は明度L*で評価した。
【0126】
白色紙の上に厚さ250μmのPETシートを載せ、その上にスパチュラを用いて上記で作製した「着色樹脂粒子からなる粉体」を順番に載せ、アルミ板で単粒子層になるように粒子を配列した。
【0127】
これを分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)にて測定し、明度L*の値を調べた。明度L*の値が30以下であれば黒としての着色力があると判断できる。
【0128】
(帯電性(帯電量))
帯電性は、下記の方法で求めた帯電量で評価した。上記で作製した「着色樹脂粒子からなる粉体」100質量部に対してシリカ粒子「H−2000」(ヘキストジャパン社製)0.1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合処理して「外添剤処理着色樹脂粒子からなる粉体」を調製した。「外添剤処理着色樹脂粒子からなる粉体」6質量部と「シリコーンアクリル樹脂コートキャリア」94質量部を混合して帯電量測定用の「測定試料」を調製した。
【0129】
帯電量は、下記の帯電量測定装置で測定した。
【0130】
帯電量測定装置は、ブローオフ帯電量測定装置「TBー200」(東芝ケミカル社製)を用いた。
【0131】
上記で調製した測定試料を、400メッシュのステンレス製スクリーンを装着した前記帯電量測定装置にセットし、ブロー圧50kPaの条件で10秒間窒素ガスにてブローし、電荷を測定した。測定された電荷を飛翔したトナー質量で割ることにより帯電量(−μC/g)を算出した。尚、帯電量は、−13.0〜−22.0μC/gであると、帯電を付与して用いる粉体に適用しやすく好ましい。
【0132】
(移動性)
上記で作製した「着色樹脂粒子からなる粉体」100質量部にシリカ粒子「H−2000」(ヘキストジャパン社製)0.1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合処理して「外添剤処理粉体」を調製した。
【0133】
この外添剤処理粉体を、100μmの間隔で配置したインジウムスズ酸化物(ITO)電極を蒸着したガラスセル中に順次入れ、50vの電圧をかけて外添剤処理粉体の移動挙動を調べた。尚、◎、○の移動性を示すものは、移動性が求められる粉体として好ましく用いられる。
【0134】
評価基準
◎:外添剤処理粉体が全て動くもの
○:外添剤処理粉体が若干残るがほぼ動くもの
△:外添剤処理粉体が少し残るもの
×:外添剤処理粉体が一部しか移動しないもの。
【0135】
表2に、作製した着色樹脂粒子からなる粉体の粒径、CV値、及び評価結果(着色力、帯電量、移動性)を示す。
【0136】
【表2】

【0137】
表2にから、実施例の着色樹脂粒子からなる粉体は全ての評価項目で好ましい評価が得られ、本発明の目的が達成されていることが判る。一方、比較例の着色樹脂粒子からなる粉体は評価項目の何れかが好ましくない評価となっており、本発明の効果が達成されていないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】マイクロチャンネル中にカーボンブラックとユニットDとフタロシアニン誘導体を混合た混合液を加圧して通し、カーボンブラックの分散液滴を作製する装置の一例を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカーボンブラックと樹脂を用いて形成された着色樹脂粒子からなる粉体において、
該粉体が下記一般式(1)に示すユニットDとフタロシアニン誘導体を含有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体。
一般式(1)
ユニットD=[P][D]k
[P]は、CH3−(CH2m−(C=O)−
(式中mは、4〜20の整数を示す)
[D]は、−O−(CH2n−(C=0)−
(式中、nは1〜15の整数を示す)
kは、1〜200の整数
Rは、Hまたはアルキル基(炭素数は1〜20)、アミノ基、水酸基、エステル基(炭素数は1〜20)
を示す。
【請求項2】
少なくともカーボンブラックと樹脂を用いて形成された着色樹脂粒子からなる粉体において、
該粉体が下記一般式(2)に示すユニットDとフタロシアニン誘導体を含有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体。
一般式(2)
ユニットD=R1−R2−R3−・・・−Ra−Rb
1、Rbは、Hまたはアルキル基(炭素数は1〜20)、アミノ基、水酸基、エステル基(炭素数は1〜20)
2、R3−・・・−Raは、P基またはアルキル基(炭素数は1〜20)が1つまたは2つ置換された炭素数が1〜20のアルキレン基
2〜Raの数は、4〜200の整数
P基は、CH3−(CH2m−(C=O)−O−(CH2n−(C=O)−
(式中、mは4〜20、nは1〜15の整数を示す)
を示す。
【請求項3】
着色樹脂粒子からなる粉体の走査型電子顕微鏡から算出される個数基準におけるメディアン径(D50)が0.5〜20μmであり、下記式(1)で算出されるCV値が15以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の着色樹脂粒子からなる粉体。
式(1)
CV値=(個数基準の粒度分布における標準偏差/個数基準におけるメディアン径(D50))×100
【請求項4】
重合性単量体と重合開始剤とカーボンブラックと請求項1または2に記載のユニットDとフタロシアニン誘導体とを混合して混合液を調製する工程、
この混合液中のカーボンブラックを分散装置を用いて分散して分散液を調製する工程、
この分散液を重合性単量体が可溶で且つ重合して形成された樹脂が不要な溶媒中に投入して反応液を調製する工程、
この反応液を加熱して重合を行い着色樹脂粒子を形成する工程
を有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法。
【請求項5】
重合性単量体と重合開始剤とカーボンブラックと請求項1または2に記載のユニットDとフタロシアニン誘導体を混合し混合液を調製する工程、
この混合液を連続相が流れるマイクロチャンネル中に加圧して通しカーボンブラックの分散液滴を含有する分散液を調製する工程、
この分散液を重合性単量体が可溶で且つ重合して形成された樹脂が不要な溶媒中に投入して反応液を調製する工程、
この反応液を加熱して重合を行い着色樹脂粒子を形成する工程
を有することを特徴とする着色樹脂粒子からなる粉体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−155505(P2009−155505A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336141(P2007−336141)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】