説明

瞬低・停電補償装置

【課題】蓄電部の容量を低減でき小型化を図ることができる瞬低・停電補償装置の提供をする。
【解決手段】電源2の電圧低下が予め設定した設定値より小さい場合は、制御部8により、スイッチング部4を遮断するとともに、第1の変換部5から出力される直流電力及び蓄電部7の蓄電電力を第2の変換部6で交流電力に変換して負荷3側に出力し、電源2の電圧低下が設定値より大きいか又は停電の場合は、制御部8により、スイッチング部4及び第1の変換部5を遮断するとともに、蓄電部7の蓄電電力を第2の変換部6で交流電力に変換して負荷3側に出力するよう構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、瞬間的に電源電圧が低下又は停電した場合に電圧を補償し負荷への電力供給に影響が出ないようにする瞬低(瞬時電圧低下)・停電補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、生産設備等重要な負荷設備において、落雷等により瞬間的に電源電圧が低下又は停電し設備の稼動に障害が出るのを防止するため、瞬低補償装置が導入されている。
【0003】
瞬低補償装置としては、例えば図2に示す構成のものがある。この瞬低補償装置は、図2に示すように、入力10(系統電源)と出力11(負荷)との間に接続された交流スイッチ12(逆並列接続したサイリスタ)と、インバータとチョッパ(DC−DCコンバータ)とをそれぞれ有する第1変換器13及び第2変換器14と、蓄電部15(例えば電気二重層コンデンサ)とを備えている。
【0004】
そして、定常時においては、交流スイッチ12を交互に導通(オン)して系統電源10からの交流電力を負荷11に供給する。また、落雷等により系統電源10に瞬間的に電圧低下又は停電が発生すると、交流スイッチ12を遮断(オフ)し、蓄電部15の蓄電電圧(直流電圧)をチョッパ(DC−DCコンバータ)で昇圧し、さらにインバータで交流電圧に変換して交流電力を負荷11に供給することにより瞬低時や停電時の電力供給を補償する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−10528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の瞬低補償装置では、瞬低時において、電圧補償に必要な電力を全て蓄電部15から供給させるようにしているため、一定時間、負荷設備を駆動させるのに必要な全電力を蓄電部15のみで賄わなければならず、必然的に蓄電部15が大型化し、瞬低補償装置の小型化を図ることが困難であった。
【0007】
そこで、この発明は、上記の課題を解消して、蓄電部の容量を低減でき小型化を図ることができる瞬低・停電補償装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の瞬低・停電補償装置1は、電源2から交流電力が供給され負荷3側に交流電力を出力するスイッチング部4と、上記電源2から供給される交流電力を直流電力に変換する第1の変換部5と、この第1の変換部5から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷3側に出力する第2の変換部6と、上記第1の変換部5又は第2の変換部6からの直流電力で蓄電される蓄電部7と、上記スイッチング部4、上記第1の変換部5及び上記第2の変換部6を制御する制御部8とを具備し、上記電源2の電圧低下が予め設定した設定値より小さい場合は、上記制御部8により、上記スイッチング部4を遮断するとともに、上記第1の変換部5から出力される直流電力及び上記蓄電部7の蓄電電力を上記第2の変換部6で交流電力に変換して負荷3側に出力し、上記電源2の電圧低下が上記設定値より大きいか又は停電の場合は、上記制御部8により、上記スイッチング部4及び上記第1の変換部5を遮断するとともに、上記蓄電部7の蓄電電力を上記第2の変換部6で交流電力に変換して負荷3側に出力するよう構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の瞬低・停電補償装置によれば、電源の電圧低下が予め設定した設定値より小さい場合には、制御部により、スイッチング部を遮断するとともに、第1の変換部から出力される直流電力及び蓄電部の蓄電電力を第2の変換部で交流電力に変換して負荷側に出力する、すなわち、従来のように、電圧低下が生じた時点で、電源からの電力供給を断ち、蓄電部のみで負荷に電力供給を行うのではなく、電源に電源電圧低下が生じても、電圧低下が予め設定した設定値より小さい場合には、電源からの電力供給を断つことなく、第1の変換部に電力供給を行い、第1の変換部から出力される直流電力の不足分のみを、蓄電部の蓄電電力によって補う構成としていることから、電圧補償に必要な全電力を蓄電部のみから供給する従来のものに比べて、蓄電部が負担する電力を小さくすることができる。そのため、蓄電部の容量削減を図ることができ、その結果、蓄電部の小型化を図ることができるとともに、蓄電部の小型化に伴って瞬低・停電補償装置の小型化を図ることができる。
【0010】
また、電源の電圧低下が設定値より大きいか又は停電の場合は、制御部により、スイッチング部及び第1の変換部を遮断するとともに、蓄電部の蓄電電力を第2の変換部で交流電力に変換して負荷側に出力する、すなわち、従来の瞬低補償装置と同様の動作を行うので、負荷設備の稼働に影響を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る瞬低・停電補償装置の実施形態を示す回路図である。
【図2】従来の瞬低補償装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の瞬低・停電補償装置1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の瞬低・停電補償装置1は、図1に示すように、系統電源2(以下、交流電源と称す)から交流電力が供給され負荷3側に交流電力を出力するスイッチング部4(逆並列接続したサイリスタ:以下、交流スイッチと称す)と、交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換する第1変換器5(コンバータ)と、この第1変換器5から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷3側に出力する第2変換器6(インバータ)と、第1変換器5又は第2変換器6からの直流電力で蓄電される蓄電器7(例えば電気二重層コンデンサ)と、交流スイッチ4、第1変換器5及び第2変換器6を制御する制御部8とから構成されている。
【0013】
また、交流スイッチ4、第1変換器5、第2変換器6、蓄電器7及び制御部8は、図1に示すように夫々接続されて、瞬低・停電補償装置1を構成している。具体的には、交流スイッチ4は、交流電源2と負荷3との間に接続され、第1変換器5は、交流電源2と交流スイッチ4との間から分岐した電力線に接続され、第2変換器6は、第1変換器5と、交流スイッチ4と負荷3との間から分岐した電力線とに接続され、蓄電器7は、第1変換器5と第2変換器6との間から分岐した電力線に接続されている。また、第1変換器5と第2変換器6との間から分岐した電力線には、蓄電器7に至る間に昇圧を行うチョッパ9が接続されている。また、制御部8は、交流スイッチ4、第1変換器5、第2変換器6及びチョッパ9に夫々接続されている。
【0014】
瞬低・停電補償装置1は、定常時においては、交流スイッチ4を交互に導通(オン)して交流電源2からの交流電力を負荷3に供給している。
【0015】
また、この際、第2変換器6をコンバータ運転させることによって、交流スイッチ4から供給された交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を蓄電器7に供給して蓄電を行っている。なお、第1変換器5によって、交流電源2から供給された交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を蓄電器7に供給して蓄電しても良い。
【0016】
落雷等により交流電源2に電圧低下又は停電が発生すると、一旦、制御部8の制御により、交流スイッチ4及び第1変換器5の両方を遮断するとともに、蓄電器7の蓄電電力を第2変換器6で交流電力に変換して負荷3側に出力するよう動作する停電モードに移行し、さらに、異常発生直後の2周期程度で交流電源2の電圧低下分を検出する。
【0017】
そして、この電圧低下分が予め設定した設定値より小さい場合、すなわち、交流電源2に相応の電圧が残存している場合、制御部8の制御により、交流スイッチ4を遮断するとともに、第1変換器5を動作状態にして第1変換器5から出力される直流電力及び蓄電器7の蓄電電力を第2変換器6で交流電力に変換して負荷3側に出力する瞬低モードに移行し、瞬低時の電力供給を補償する。なお、電圧低下分の設定値としては、例えば80%とし、定常時電圧の20%以上の電圧であれば、第1変換器5を通じて負荷3に電力を供給する。但し、設定値はあくまで例示であり、瞬低・停電補償装置1の使用状況に合わせて、適宜変更可能である。
【0018】
このように、瞬低又は停電が発生した直後、直ちに停電モードに移行し、負荷3への電力供給を行うので、瞬低又は停電発生から、電圧低下に応じた瞬低モードの又は停電モードを設定するまでの初期期間に、補償の遅れを伴うことなく電力供給を確実に行うことができる。また、電圧低下分が予め設定した設定値より小さい場合は、負荷3に対して電圧低下した交流電源2の電力エネルギーを第1変換器5を介して供給するとともに、電圧低下による不足分のみを蓄電器7から供給する構成としているため、瞬低時における蓄電器7の蓄電エネルギーの消費を抑えることができる。
【0019】
一方、交流電源2の電圧低下分が設定値より大きいか又は停電の場合は、交流電源2に相応の電圧が残存していないため、制御部8の制御により、上記停電モードの動作を継続する。すなわち、交流スイッチ4及び第1変換器5(変換器を構成するトランジスタ)の両方を遮断するとともに、蓄電器7の蓄電電力を第2変換器6で交流電力に変換して負荷3側に出力し、瞬低時又は停電時の電力供給を補償する。なお、蓄電器7の蓄電電圧は、瞬低モードであるか停電モードであるかに関らず、チョッパ9で適宜昇圧される。
【0020】
このように、負荷設備稼働に必要な全エネルギーを蓄電器7から第2変換器6を通じて供給するため、負荷3に瞬低や停電の影響を与えることは無い。
【0021】
なお、交流電源2の交流電圧は、定常時、瞬低モード時、停電モード時に関らず、常に測定されており、その測定結果を元に、モードの切替や定常運転への切替が随時行われる。
【0022】
そのため、蓄電容量が同一の蓄電器7であれば、蓄電器7の蓄電容量を全て消費する時間、連続して電圧低下分が設定値より大きいか又は停電となった場合を除いて、従来の瞬低補償装置よりも長く負荷設備の稼働を補償することができる、すなわち、同時間、負荷設備の稼働を補償させるようにすれば、蓄電容量を低減することができる。これにより、蓄電器7を小型にすることができ、瞬低・停電補償装置1の小型化及び低コスト化を図ることができるのである。
【0023】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施例においては、蓄電器7として、電気二重層コンデンサが用いられていたが、電解コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ、電池等種々のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
2・・交流電源、3・・負荷、4・・交流スイッチ、5・・第1変換器、6・・第2変換器、7・・蓄電器、8・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(2)から交流電力が供給され負荷(3)側に交流電力を出力するスイッチング部(4)と、上記電源(2)から供給される交流電力を直流電力に変換する第1の変換部(5)と、この第1の変換部(5)から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷(3)側に出力する第2の変換部(6)と、上記第1の変換部(5)又は第2の変換部(6)からの直流電力で蓄電される蓄電部(7)と、上記スイッチング部(4)、上記第1の変換部(5)及び上記第2の変換部(6)を制御する制御部(8)とを具備し、上記電源(2)の電圧低下が予め設定した設定値より小さい場合は、上記制御部(8)により、上記スイッチング部(4)を遮断するとともに、上記第1の変換部(5)から出力される直流電力及び上記蓄電部(7)の蓄電電力を上記第2の変換部(6)で交流電力に変換して負荷(3)側に出力し、上記電源(2)の電圧低下が上記設定値より大きいか又は停電の場合は、上記制御部(8)により、上記スイッチング部(4)及び上記第1の変換部(5)を遮断するとともに、上記蓄電部(7)の蓄電電力を上記第2の変換部(6)で交流電力に変換して負荷(3)側に出力するよう構成したことを特徴とする瞬低・停電補償装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−16178(P2012−16178A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150790(P2010−150790)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】